(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
認知症の中ではアルツハイマー病Alzheimer’s Disease、(以下AD)が約半数を占める。このADの早期診断のバイオマーカーとして脳波などの神経生理学的バイオマーカーが期待されている。バイオマーカーとは、「通常の生理学的過程、病理学的過程もしくは治療的介入に対する薬理学的応答の指標として、客観的に測定され評価される特性」アメリカ国立衛生研究所の定義のことである。
【0011】
脳波技術は、fMRIfunctional magnetic resonance imaging、磁気共鳴機能画像法やMEG(Magneto Encephalo Graphy)、脳磁図などの脳検査技術と比較し、比較的安価な装置で測定でき、また頭部表面の電位を測定するのみで測定時の体への負荷や拘束性が少ないため、医療分野だけでなく、コンシューマ、ヘルスケア・福祉、ロボット、車載など幅広い分野での適用が見込まれている。
【0012】
脳波におけるバイオマーカーの1つに事象関連電位がある。事象関連電位とは、外的あるいは内的な事象に時間的に関連して生じる脳の電気的活動である。視覚や聴覚刺激などを用いた外的事象の関連電位がADや軽度認知障害の検査に応用されている。特に事象関連電位の陽性方向の3番目の波形の頂点であるP300の頂点潜時刺激が呈示されてからP300が出現するまでの時間はADや軽度認知障害の検査の際のバイオマーカーとして活用されている。また、このP300を誘発するためのツールとしてオドボール課題が使用される。オドボール課題とは、被検者に2種類の刺激をランダムに呈示し、呈示頻度の低い刺激に注意を向けさせ、ボタンを押すなどの反応を行わせる課題のことである。オドボール課題において低頻度刺激を標的刺激(以下「ターゲット」と表記)といい、頻度の高い方の刺激を標準刺激(以下「スタンダード」と表記)という。
【0013】
以下、本発明の実施形態として、認知症検査のための情報としてのオドボール課題を脳波測定とは異なる目的を有する動作の実行時に被検者に対して呈示し、そのときの被検者の脳波を解析して認知機能の指標を抽出する脳波データ分析システム、情報処理端末、電子機器について説明する。以下の説明において、電子機器の例として主にスマートフォンを例に説明するが、後述する各実施形態において説明するように、情報処理端末及び電子機器はスマートフォンに限定されるものではない。本発明は、PC、タブレット、電子書籍、家庭用ロボット、テレビ、ラジオ等のオーディオ機器、ウェアラブル機器等の電子機器にも同様に適用可能である。
【0014】
<第1実施形態>
第1実施形態は、電子機器(ハードウェア)としてスマートフォンを用い、これに本発明に係る認知機能検査装置を実装した例である。
【0015】
(認知機能検査装置の機能ブロックの説明)
図1は認知機能検査装置の機能ブロック図である。
【0016】
認知機能検査装置101は、認知機能測定・判定部102、操作部114、表示部115、通信部116、音声出力部117、音声入力部118、タイマー119を含んで構成される。
【0017】
操作部114は、認知機能検査装置101に対してユーザ(被検者に相当する)からの操作入力を受け付け、操作信号を出力する。
【0018】
表示部115は、ユーザに対して操作画面や各種情報を表示する制御を行う。
【0019】
通信部116は、各種ネットワーク電話網、WiFi、Blutooth(登録商標)等を介して外部の機器と通信を行う制御を行う。
【0020】
音声出力部117及び音声入力部118は後述するスピーカ225及びマイク226を介して音声の出力、入力制御を行う。
タイマー119は、時間情報を生成して認知機能測定・判定部102に出力する。
【0021】
認知機能測定・判定部102は、オドボール課題データ格納部103、呼び出し者判定部104、脳波測定部105、脳波データ格納部106、検査データ作成部107、検査用データ格納部108、認知機能検査制御部109、分析用データ格納部110、認知機能分析部111、分析結果格納部112、認知機能低下通知部113を含んで構成される。
【0022】
オドボール課題データ格納部は103、オドボール課題用のデータを格納する。オドボール課題データ格納部103には、たとえば認知機能検査対象のユーザを見守る人(見守り者)に関する情報、例えば、見守り者の電話番号、名前、メールアドレス、音声、写真などの情報を格納する。
【0023】
本実施形態では、このオドボール課題データ格納部103に主に見守り者に関する情報を格納した場合の例について説明する。
【0024】
呼び出し者判定部104は、通信部116を介して電話やメールを受信する際、電話の相手がオドボール課題データ格納部103に登録された見守り者であるか否かを判定する。
【0025】
脳波測定部105は、認知機能検査対象のユーザ(被検者)の脳波データを取得するための脳波データ取得部として動作する。この脳波測定部105は、脳波データ取得のための脳波検出センサ(本実施例では、後述するように脳波測定用電極221)を備えている。
【0026】
脳波データ格納部106は、脳波測定部105が取得した脳波データを格納する。
【0027】
検査データ作成部107は、オドボール課題データ格納部103に格納された見守り者の音声や写真、スマートフォンにあらかじめ格納されている絵文字などの画像や着信音などを用いて、認知機能検査用のデータを自動生成する。
【0028】
検査用データ格納部108は、検査データ作成部107で作成した検査用データを格納する。
【0029】
認知機能検査制御部109は、脳波測定部105において脳波検出センサである脳波測定用電極221から電位が検出され脳波が測定可能になったことを検知し、検査用データ格納部108に格納された検査データを用いて検査を開始し、測定された脳波を脳波データ格納部106に格納する。また認知機能検査制御部109は、認知機能測定・判定部102を構成する全部分の制御を実行する。尚、ここでは脳波検出センサとして脳波測定用電極221を用いているが、磁気センサを用いてもよい。
【0030】
分析用データ格納部110は、認知機能を分析評価するためのデータを格納する。
【0031】
認知機能分析部111は、脳波データ格納部106に格納された脳波データを分析し、あらかじめ算出されている分析用データ格納部110のデータと比較することにより、認知機能分析を行う。
【0032】
分析結果格納部112は、認知機能分析部111の分析結果を格納する。
【0033】
認知機能低下通知部113は、認知機能分析部111において、認知機能の低下が検出され、認知症の兆候が検出された場合に(予め定められた通知基準を満たす場合に相当する)、オドボール課題データ格納部103にあらかじめ登録された見守り者に通知する。
【0034】
オドボール課題データ格納部103に登録する見守り者とは、認知機能検査対象のユーザ高齢者の生活や健康をさりげなく見守る人のことであり、例えばユーザの家族やケアマネージャなどのことである。見守り者は、認知機能検査装置101が適用されたスマートフォンを使用すれば、遠隔地からでもユーザ高齢者の日常生活における認知機能の状態を見守ることができる。
【0035】
オドボール課題データ格納部103に登録するデータは、スマートフォンの既存アドレス帳のデータ電話番号、名前、住所、メールアドレス等や、内蔵メモリやSDカードに格納されている写真、データ電話番号、名前、メールアドレス、音声を用いてもよいし、新たに見守り者から送付されたデータを使用して登録してもよい。
【0036】
(ハードウェア構成の説明)
図2は
図1で説明した認知機能検査装置101が適用されたスマートフォンのハードウェア構成を示す図である。
【0037】
スマートフォン201は、スマートフォン201の全体のシステムを制御するCPU(Central Processing UnitCPU)211、スマートフォン内部で使用するOSなどの基本プログラムを保存する、ROM(Read Only Memory)212、プログラム及び各種データを一時的に記憶し、キャッシュやワークメモリとして使用するRAM(RandomAccess Memory)213、認知機能検査装置101の機能を実現するプログラム及び各機能ブロックで使用する各種データ、脳波の測定結果を保存する記憶装置214、脳波測定時の時刻の取得やタイマー設定などに使用するためのタイマー215(
図1のタイマー119に対応)、及び外部の機器と接続する外部I/F216を含む。ここで、記憶装置214は、例えばHDD(Hard Disk Drive)またはフラッシュメモリ等の不揮発性メモリにより構成される。この例ではスマートフォンに本実施例に係る認知機能検査装置101が適用されているので、記憶装置214が不揮発性メモリで構成されていることが好ましい。また、本実施例に係る認知機能検査装置101をPCに適用する場合は、記憶装置214はHDD或いはフラッシュメモリ等の半導体メモリを備えたSSD(Solid State Drive)で構成される。
【0038】
更にスマートフォン201は、脳波の電位を測定するための脳波測定用電極221、脳波測定用電極221から導出した電位信号からノイズを除去し、ノイズを除去した信号を増幅する信号処理装置222、信号処理装置222で処理したアナログ信号をディジタル信号に変換するADC(Analog to Digital Converter)223、ユーザの操作を受け付け又は入力するための図示しないタッチパネルを含み、かつ画像を表示してユーザに情報を提供するための操作/表示用ディスプレイ224(
図1の操作部114及び表示部115に対応)、着信音や音声を再生するスピーカ225(
図1の音声出力部117に対応)、音声を入力するマイク226(
図1の音声入力部118に対応)、外部機器と通信するための有線/無線の通信モジュール227(
図1の通信部116に対応)、傾きや動き、振動や衝撃に関するデータを検出する加速度センサ228、方位を計測するための地磁気センサ229、受信者の位置情報を取得するGPS(Global Positioning System)230、回転や向きの変化を検知するジャイロセンサ231、体温などを測定する温度計232、CPU211とスマートフォン201内の各コンポーネントとの間でデータの送受信を行うためのデータ通信路であるシステムバス233、電気を供給するバッテリ234、及び通話モジュール235を含んで構成される。
【0039】
通信モジュール227には、3Gや4G、Wi-Fi、Bluetooth、赤外線通信、放送サービス用通信などの無線通信機能と有線LANなどの有線通信機能が含まれる。
【0040】
ここで、
図1に示した各機能ブロックの内、脳波測定用電極221、信号処理装置222、ADC223、CPU211、ROM212、RAM213、記憶装置214は、認知機能測定・判定部102を構成するハードウェア210であり、これらのハードウェア210と認知機能測定・判定機能を実現するプログラムとが協働して
図1に示す認知機能測定・判定部102の各機能ブロックが構成される。
【0041】
(スマートフォンにおける脳波測定用電極の実装例)
次に
図3を参照して、脳波測定用電極221のスマートフォン201への実装例を説明する。
【0042】
一般に脳波は、頭皮上に設置した電極から導出して計測するものであるが、近年、脳波を腕や手の皮膚表面から読み取る技術例えばBodyWave Technologyが開発されている。このため、その技術を活用して実装した場合の例を
図3A及び
図3Bに示している。
【0043】
図3Aは、スマートフォン201の背面301に2極の脳波測定用電極302、303を配置した場合の例である。誘導方法は双極誘導であり2つの電極から導出した電位差により脳波を測定する。電極の位置は、背面の手が触れ易い部分に配置する。
図3Aでは2つの電極を搭載しているが、2つ以上の電極を配置し、手が触れた部分の2か所を自動選択して測定してもよい。
【0044】
図3Bは、スマートフォンの前面に対する左側面304、及び前面に対する右側面305の其々に脳波測定用電極306、307の其々を配置した例である。
【0045】
図3Aと同様に双極誘導での電極配置である。スマートフォンを握った際の、手の表面2箇所から導出した電位差により脳波を測定する。2つ以上の電極を配置し、電極に手が触れられることにより検出される電位により、電極に手が触れられたこを検知し、手が接触した電極2か所を自動選択して測定してもよい。
【0046】
ここで、
図3Aと
図3Bの両方の電極をすべて実装するようにしても良いし、それらを混在させた形態にしても良い。例えば、背面に1箇所+側面に1箇所、あるいは背面に1箇所+側面に2箇所等混在させて配置してもよい。
【0047】
図3Cは、非接触の状態で電位を検出可能な電極を用いた際の電極の配置である。スマートフォン前面308のスピーカ309付近に電極310、311を配置している。近年、ボディーエリアネットワーク用の非接触電極が開発されている。そのため、その技術を使用した場合の電極配置の例を示した。着信があった時に耳の付近にスマートフォン前面308のスピーカ309を近づけることで電位を導出できる。非接触電極のため頭部に電極を接触させる必要はない。電極310、311には、アンプADC、通信モジュールを備えており導出した電位を片方の電極から片方の電極に送信することができる。この電極では電極と頭部の間に絶縁物があっても電位を導出できる。
【0048】
ここで、
図3A、3B、3Cの電極をすべて実装してもよいし、
図3A、3B、3Cを混在させた形態にしても良い。例えば、
図3Cと
図3B、あるいは
図3Cと
図3Aの組み合わせでもよい。
【0049】
(脳波と事象関連電位の基本波形、P300の特徴の説明)
次に
図4を参照して、本実施形態で取得する脳波データについて説明する。そもそも脳波とは、脳のニューロンの電気的活動を格納したものであり、主に頭皮に取り付けた電極から導出した電位変化を時間経過に従って波形として格納したものである。脳波には、自発性脳波と誘発性脳波の2種類がある。自発性脳波は、特定の事象生起に関係なく常にゆらいでいる電位であり、持続的な状態の脳波である。これに対して、誘発性脳波は、事象生起に関連して発生する電位(以下事象関連電位と表記)であり、知覚視覚・聴覚・体性感覚を起源とする外因性のものと期待、注意、意思決定などといった心的事象に関わる内因性のものがある。ここで、
図4を用いて脳波の事象関連電位の基本波形について簡単に説明する。
図4は、脳波の事象関連電位の基本波形を示す説明図である。
【0050】
事象関連電位は、縦軸を電位μV、横軸を時間msとして示される。事象関連電位の波形は、上側をマイナス、下側をプラスとして表記されることが多い。事象発生のポイントは外部刺激によるものの場合グラフ上の横軸の0msで示される。0μV付近の波形を基線という401。脳波の陰性方向の図では上向き振れをN(Negative)、陽性方向の図では下向き振れをP(Positive)と呼び、それぞれの波形の発生順に番号を付加するか(図中のP1、P2など)、あるいは標準的な頂点潜時ms単位をつけて区別する。頂点潜時は、刺激を受けてから頂点が出現するまでにかかる時間である。
【0051】
前述したオドボール課題で誘発されるP300(符号402)は、陽性方向の3番目の波形の頂点であり、頂点潜時がおよそ300msであるため、P300とも呼ばれる。脳波の特徴を分析する際には、頂点潜時のほかに頂点間の振幅404、基線をベースにした頂点振幅の値405も使用される。
【0052】
P300の頂点潜時403はADのバイオマーカーとして知られている。P300(符号402)の頂点潜時403は一般に加齢とともに遅延するがADの患者においては年齢によるものと比較して更に遅延することが知られている。またADの患者においては頂点潜時が遅延するほど、認知機能の低下が強くなることがわかっている。また、遺伝的にADのリスクが高い健常者においてもP300(符号402)の頂点潜時403が遅延することがわかっている。
【0053】
オドボール課題においては、ユーザに対して複数の画像や音声などの刺激を与える際に、低頻度で呈示する刺激をターゲットといい、高頻度で呈示する刺激をスタンダードという。
【0054】
P300(符号402)は、呈示する刺激の内、ターゲットの頻度が相対的に高くなると出現頻度が低下し、ターゲットの頻度が低いと出現しやすくなることがわかっている。これらのターゲット頻度に対するP300(符号402)の出現状況には個人差があるため、1人1人の特性に合わせてターゲット頻度(ユーザへのターゲットの呈示頻度)の調整が必要である。
【0055】
また、P300(符号402)はオドボール課題の実行中のターゲットへの注意が低下すると出現しなくなることがあり、課題実行時のターゲットに対する注意の維持も重要である。
【0056】
また、P300の頂点潜時403は、主に事象関連電位を加算平均して算出することが多い。誘発性脳波にも自発性脳波の成分が含まれておりこれらの成分がランダムに発生しているためである。自発性脳波の影響を取り除くため、加算平均して求める。しかし1つの事象関連電位からP300(符号402)の頂点潜時403を算出する方法もあるため算出方法が加算平均に限定されるわけではない。
【0057】
本実施形態では、上記P300(符号402)を出現させるためのオドボール課題を、脳波計側とは異なる目的を持つ操作、例えばかかってきた通話に出るための操作を実行する時に被検者に対して呈示し、被検者に認知機能検査を課すことによる心的な負担感を与えることなく、P300(符号402)を出現させるための検査を行う。以下、そのために用いるデータについて説明する。
【0058】
(見守り者テーブルの構成例)
次に、
図5Aを用いて、オドボール課題データ格納部に見守り者に関するデータを格納した場合のテーブル501(以下「見守り者テーブル」という)の構成を示す。
【0059】
見守り者テーブル501は、見守り者の電話番号502[Tel_Num]、名前503[Name]、メールアドレス504[Mail_Address]、ユーザとの関係505[Relation]、連絡レベルデータ506[Information_Level]、写真データ項目507、音声データ項目508、選択感覚刺激517 [Select_Stimulus]を含む。
【0060】
ユーザとの関係505は、ユーザとの関係を示すデータ、例えば、家族関係(息子や娘)、ケアマネージャや係り付けの医師などの見守りサービスの担当者などの情報を記述する。
【0061】
連絡レベルデータ506には、測定結果の分析結果等の通知のレベルを格納する。例えば、家族であれば、兆候の検出の有無にかかわらず、分析結果が出るたびに結果を通知するように設定し、ケアマネージャのような関係者に対しては兆候が検出された場合においてのみ、通知するようにしてもよい。
【0062】
写真データ項目507は、見守り者の写真を格納したファイルの番号509[Picture_ File_No]、後述の初期テストにおいてP300が検出されたかどうかを示す変数510[Validity]、オドボール課題における呈示頻度511[Frequency](初期テストの結果に基づき格納、20%以下が目安)、写真を表示する間隔512[SInterval](初期テストの結果に基づき格納、単位はms、1.5 msが目安)、オドボール課題で表示する写真サイズ518[Size]のデータを保持する。
【0063】
音声データ項目508も同様に、見守り者の音声を格納したファイルの番号513[Voice_File_No]、後述の初期テストにおいてP300が検出されたかどうかを示す変数514[Validity]、オドボール課題における呈示頻度515[Frequency](初期テストの結果に基づき格納、20%以下が目安)、音声を再生する間隔516[SInterval](初期テストの結果に基づき格納、単位はms、1.5 msが目安)、オドボール課題で音声を再生するボリューム519[Volume]のデータを保持する。
【0064】
選択感覚刺激517には、認知機能の検査を実施する時の感覚刺激を保持する。
図5Aの例では視覚写真が選択された場合には、「P」を入力し、聴覚音声が選択された場合には「V」を入力する。
【0065】
選択感覚刺激517は、選択後はどの見守り者に対しても同じものが適用される。
【0066】
検査で使用する感覚の設定は、認知機能検査装置の使用開始時にスマートフォンとのインタフェースとして優先して使用する感覚刺激(映像あるいは音声、あるいはバイブレーション)としてユーザが設定するか、後述する第2実施形態の方法により設定する。
【0067】
この処理は、認知機能検査装置の使用開始時に行う場合は、
図7の初期設定フローを実行した直後に実施する。ただし、それ以降でも変更可能である。
【0068】
(スタンダードテーブルの構成例)
次に
図5Bを用いて、オドボール課題データ格納部103にスタンダードのデータを格納するテーブル520(以下「スタンダードテーブル」という)の構成を示す。
【0069】
スタンダードテーブル520には、オドボール課題で使用する、スタンダードに関するデータを保存する。スタンダードテーブル520は、ファイル識別番号521[File _ID _No]、刺激種類522 [Stimulus_Type]、データ使用可否523[Validity]を含む。
【0070】
ファイル識別番号521は、スタンダードとなる、写真データや音声データのファイルの識別番号である。
【0071】
刺激種類522は、ユーザに呈示する刺激の種類を示し、視覚刺激である、画像データであれば「P」、聴覚刺激である、音声データであれば聴覚データを示す「V」を入力する。
【0072】
データ使用可否523[Validity]は後述する、初期テストの際に、スタンダードとして問題なく使用できた場合に「1」を設定し、本来は発生しないはずのP300が出現するなどして使用に適さなかった場合には「0」を設定する。
【0073】
(認知機能検査装置を実装したスマートフォンの着信時の使い方の説明)
次に、
図6を用いて、本発明の認知機能検査装置101を実装したスマートフォンの電話着信時の使い方を示す。
【0074】
図6は、
図3Aに示した背面に脳波測定用電極302、303を配置したスマートフォン201の例を用いて説明する。
【0075】
スマートフォン201に見守り者テーブルに登録された見守り者から電話がきた場合、スマートフォン201は着信音、あるいは振動で着信を知らせる(
図6A)。ユーザがスマートフォン201を掌握し、スマートフォン201の背面301にある2つの脳波測定用電極302、303に手の表面が触れると、スマートフォン201は認知機能検査を開始する(
図6B、符号601)。
【0076】
認知機能検査が「視覚による検査」と設定されている場合、即ち、見守り者テーブル501の選択感覚刺激517[Select_Stimulus]の値が「P」に設定されている場合、ユーザは画面を見て呼び出し者を確認する(
図6C)。
【0077】
すなわち、スマートフォンの画面602に、スタンダードとして選定した絵文字などの画像603と、ターゲットである呼び出し者の顔写真(顔画像に相当する)604がランダムに表示される。
【0078】
ユーザは表示される一連の画像605から画面602に表示された顔写真604を見て呼び出し者を確認する。
【0079】
一方、認知機能検査が「聴覚による検査」と設定されている場合、見守り者テーブル501の選択感覚刺激517[Select_Stimulus]の値が「V」に設定されている。この場合は、ユーザは呼び出し音を聴いて呼び出し者を確認する(
図6D)。すなわち、ユーザがスマートフォンの背面301にある脳波測定用電極302、303に手の表面を接触させると、着信音606と呼び出し者の音声による名前の読み上げ音607がランダムに再生される。ユーザは一連の呼び出し音608を聴いて呼び出し者を確認する。
【0080】
ユーザは呼び出し者の顔写真604あるいは名前の読み上げ音607により、呼び出し者が誰であるかを確認した後、受信ボタンを押し通話を開始する。
【0081】
オドボール課題で使用するスタンダードの音声はスマートフォンにあらかじめ保存されている着信でもよいし、ユーザが保存している着信音の中から任意の音声を選択するようにしてもよい。
【0082】
(初期設定テストのフロー)
ここで、
図7を用いて初期設定時のテストフローを示す。
図7は初期設定時のテストフローチャートである。本フローは、本発明の認知機能検査装置101の使用を開始する際の初期設定時の処理フローである。
【0083】
本テストフローは、スタンダードとターゲットのデータを選定し、ユーザの認知機能検査に使用できるか否かを確認することを目的とする。
【0084】
検査に影響を与える要素には、刺激データ(スタンダードとターゲット)の両方のデータとしての適性、検査におけるターゲットの頻度、ターゲットとスタンダードをユーザに呈示する間隔、刺激の質(画像のサイズや音声のボリュームなど)がある。本テストフローは、これらの要素を適切に設定/調整する役割を果たす。
【0085】
本初期設定テストフローは、認知機能検査制御部109が実施する。
【0086】
本テストフローで検査がきちんと実行されるか確認されたことを受け、認知機能検査制御部109は、テストで使用したターゲットの有効性を、見守り者テーブルの写真データ項目507のValidity510、あるいは音声データ項目508のValidity514に格納する。
【0087】
またこのテスト処理フローの結果は見守り者テーブル501の写真データ項目507、音声データ項目508に保存される。
【0088】
見守り者テーブル501とスタンダードテーブル520は、検査データ作成部107が、検査用データを作成するのに使用される。
【0089】
また、検査データ作成部107が作成した検査用データは、認知機能検査制御部109により検査実施の際に使用される。
【0090】
本テストフローでは、見守り者テーブル501の見守り者に関するデータはあらかじめユーザにより設定されていることを前提とする。
【0091】
これは、たとえば本テストフロー実行前に見守り者登録画面等をユーザに表示し、スマートフォンの電話帳などに予め登録されているメンバーの電話番号、メールアドレス、写真などを使用し、その中から見守り者を選択することで実現する。選択した結果は、
図5Aの電話番号502、名前503、メールアドレス504、ユーザとの関係505、に登録する。以下、初期設定時のテストフローについて詳述する。
【0092】
図7のフローでは、検査用のデータの種類として視覚データと聴覚データを想定している。ただし、これらのほかにも検査用のデータの種類としてバイブレーションなどの体性感覚用の刺激データがあり、これらに限定されるわけではない。
【0093】
はじめに、認知機能検査制御部109が、見守り者テーブル501の中から見守り者を一人(Xn)選択し、写真データ項目507(視覚データP)あるいは音声データ項目508(聴覚データV)を選択する(ステップ701)。
【0094】
次に認知機能検査制御部109は、ステップ701で選択した視覚データPあるいは聴覚データVの中から1つの画像あるいは音声を選択する(ステップ702)。視覚データの場合は、見守り者テーブル501に保存されている写真データ509[Picture_ File_No]を、聴覚データの場合は、見守り者テーブル501に格納されている音声データ513[Voice_ File_No]を選定する。
【0095】
次に、認知機能検査制御部109は、スマートフォンなどにあらかじめ登録されている、絵文字やアイコン、着信音などの中からスタンダードを選定する(ステップ703)。視覚データの場合は絵文字やアイコンDPnを、聴覚データの場合は着信データDVnを選定する。
【0096】
次に認知機能検査制御部109は、初期テストにおけるターゲット刺激測定回数Znの初期値を設定する(ステップ704)。ターゲット刺激の回数は、刺激に対する反応の再現性を確認するために複数回例えば、3回など設定する。また、P300の出現回数Nに初期値=<Zn、例えば、2回を設定する。
【0097】
次に認知機能検査制御部109は、ターゲットの頻度Fnの初期値を設定する(ステップ705)。ターゲットの頻度は一般的に20%程度とされている例えば、画像を5枚準備する場合、その内の1枚をターゲット刺激用の画像とする。一般にターゲットの頻度ユーザに呈示する、注意を向ける刺激の頻度は低い方がP300が出現しやすい。P300の刺激に対する出方には個人差があるため、20%からテストを実施してP300の出方が悪い場合はこれより頻度を下げる。
【0098】
次に認知機能検査制御部109は、刺激をユーザに呈示する刺激間隔SInの初期値を設定する(ステップ706)。刺激間隔とは、ターゲットとスタンダードの刺激をユーザに呈示する間隔のことである。オドボール課題においては、ユーザに呈示する、スタンダードとターゲットの刺激間隔の時間は1.5sが目安である。人によって刺激に対する反応が異なるため、この間隔も調整が必要である。
【0099】
次に、認知機能検査制御部109は、脳波測定部105を用いてスマートフォン背面の脳波測定用電極302、303より電位が検出されているか確認し(ステップ707)、電極から電位が検出されていなければ(ステップ707/No)、脳波測定用電極302、303に触れるように、ユーザに注意を促す(ステップ708)。注意の方法は、画像を用いた検査であれば、操作/表示用ディスプレイ224を用いてスマートフォンの画面上で注意を促し、音声を用いた検査であれば、スマートフォンのスピーカ225により音声で注意を促す。
【0100】
電極より電位を検出されていれば(ステップ707/Yes)、認知機能検査制御部109は初期テストを開始する(ステップ709)。
【0101】
初期テスト処理(ステップ709)は、ステップ702、703で選択したスタンダードとターゲット、設定したターゲット刺激測定回数、ターゲット頻度、刺激間隔を用いてテスト用の検査を実行するテストである。具体的には、
図6A〜
図6Cに図示したような一連の動作を疑似的に実施する。
【0102】
次に、認知機能検査制御部109は、初期テスト処理(ステップ709)で測定した脳波データを用いてP300の分析を実施する(ステップ710)。
【0103】
テスト実行中のターゲット刺激ごとの波形及びP300の解析結果(波形発生の有無)は認知機能検査制御部109が一時的にバッファRAM、213に格納する。
【0104】
テスト中のすべてのターゲット刺激に対してユーザからP300が出現している場合(ステップ711/Yes)、認知機能検査制御部109が、見守り者テーブル501に登録した画像あるいは音声を使用可設定にする(ステップ712)。具体的には見守り者テーブル501のValidity変数510又は514の値を1に設定する。Validity変数510又は514の値1は使用可を意味する。
【0105】
そして、ターゲット頻度Fn(ステップ705で設定)と刺激間隔SIn(ステップ706で設定)写真のサイズ、音声を再生するボリュームの値を、見守り者テーブル501のターゲットの属性である呈示頻度[Frequency]変数511又は515、[SInterval]変数512又は516、写真サイズ518[Size]の変数、ボリューム519[Volume]の変数としてそれぞれ保存する(ステップ713)。
【0106】
写真サイズ518[Size]とボリューム519[Volume]の各変数の値は、初期設定値あるいは、ステップ716で調整した後値を入力する。
【0107】
最後にテストで使用したスタンダードに関するデータをスタンダードテーブル520に保存する。すなわち、スタンダードのファイル番号を、スタンダードテーブルのファイル識別番号[File _ID _No]に保存し、スタンダードデータの種類を、スタンダードテーブル520の刺激種類[Stimulus_Type]522に保存し(そのスタンダードが画像データであれば「p」を入力し、そのスタンダードが音声データであれば「v」を保存)、データ使用可否[Validity]523に「1」を入力する。
【0108】
次に別の登録済の画像あるいは音声を選択する(ステップ702)。
【0109】
前記ステップ711において、全てのターゲット刺激に対してユーザからP300が出現しなかった場合(ステップ711/No)、P300がN回以上出現したか調べ(ステップ714)、出現していなければ(ステップ714/No)テストに集中するように注意を促す(ステップ715)。P300は、注意が散漫になることにより出現しなくなる場合があるため、このような注意を促すためのステップを設けている。その後、画像あるいは音声のサイズやボリュームを調整し(ステップ716)、再度初期テストを実行する(ステップ709)。
【0110】
前記ステップ714において、ターゲット刺激に対するP300の出現がN回確認できた場合(ステップ717/Yes)、認知機能検査制御部109は刺激間隔SIn=>2.0か否かを判定し(ステップ717)、SIn=>2.0でなければ(ステップ717/No)、刺激間隔SInをS増加させる(ステップ718)。変数Sは、たとえば0.1に設定する。
【0111】
前記ステップ717において、刺激間隔SIn=>2.0の場合(ステップ717/Yes)、認知機能検査制御部109はその時のターゲット頻度<=0.05であるか否かを判定し(ステップ719)、ターゲット頻度<=0.05でなければ(ステップ719/No)、ターゲット頻度をT低減する(ステップ720)。たとえば、変数Tは、たとえば−0.05%に設定する。
【0112】
前記ステップ719において、ターゲット頻度<=0.05である場合は(ステップ719/Yes)、認知機能検査制御部109はスタンダードに対してP300が出現しているか否かを判定し(ステップ721)、スタンダードにP300が出現していれば、別の画像あるいは音声がスマートフォンにあらかじめ記憶されている、絵文字やアイコンあるいは着信音を選定し(ステップ722)、ステップ703に戻る。
【0113】
通常はスタンダードにはP300の波形は出ないが、スタンダードの刺激が原因でターゲットにP300が出ていない可能性もないとは言えないため、最後にスタンダードにおける脳波の波形を確認している。
【0114】
スタンダードにP300が出現していなければ(ステップ721/Yes)、認知機能検査制御部109は、登録した画像あるいは音声を使用不可に設定し、ユーザに結果を通知する(ステップ723)。
【0115】
具体的は、見守り者テーブル501のValidity変数510又は514の値を0に設定する。Validity変数510又は514の値0は使用不可を意味する。
【0116】
ユーザに通知するのは、登録した見守り者のデータが、検査に適切でないことを通知するためである。この通知を受け、ユーザは見守り者に対するデータを新たに登録する必要がある。結果の通知にはその内容も含まれる。
【0117】
すべての写真と音声をチェックしたか調べ(ステップ724)、チェックされていなければ(ステップ724/No)、前記ステップ702に戻り、ターゲットを新たに選定する。
【0118】
すべての写真と音声についてチェックされていれば(ステップ724/Yes)、すべての見守り者についてテストを実施したか確認し(ステップ725)、テストを実施していなければ(ステップ725/No)、前記ステップ701に戻り、別の見守り者を選定する。すべての見守り者についてテストを実施していれば(ステップ725/Yes)テスト処理を終了する。
【0119】
ここで、ステップ717において、SInの境界値を2.0としたがこれに限定されるものではない。
【0120】
ステップ721においてスタンダードにP300が出現した場合には、スタンダードテーブル520のファイル識別番号521[File _ID _No]にスタンダードとして使用したデータのファイル番号を、スタンダードテーブル520の刺激種類[Stimulus_Type]522には、そのスタンダードが画像データであれば「p」を入力し、そのスタンダードが音声データであれば「v」を入力する。
【0121】
また、スタンダードテーブル520のデータ使用可否[Validity]523に「0」を入力する。
【0122】
(検査用データ(テーブル)の構成例)
図10は、検査用データ格納部108で保存する検査用データテーブルの構成例である。
【0123】
検査用データ格納部108のテーブル1001(以下「検査用データ格納テーブル」という)は、検査用データのID No.1002, 使用画像あるいは音声ファイルの番号1003、ターゲット頻度1004[Target_Frequency]、刺激の種類1005[Stimulus_Type]、視覚刺激Pあるいは聴覚刺激V、ターゲットとスタンダードの刺激順番1006[Or1,Or2,Or3,Or4,Or5・・, OrN]ターゲットとスタンダードの並び順、刺激呈示間隔1007[SInt]を含む。
【0124】
使用画像及び音声ファイルの番号1003は、ターゲットファイル番号1008[Target_File_No]とスタンダードのファイル番号1009[Standard_File_No]を含む。
【0125】
(検査データ作成部フロー)
次に、
図8を用いて、検査データ作成部107の処理フローを示す。本処理フローは、
図7のテストフローの結果を受け、
図7のテストフロー実行直後あるいは、見守り者からの通話の呼び出しを受けた際に、認知機能検査制御部109が実行する。
【0126】
見守り者からの呼び出しがあった時に実行する場合は、見守り者からの呼び出しがあった直後でもよいし、見守り者からの通話が終わった後でもよい。
【0127】
図8のフローでは見守り者からの呼び出しがあった直後に実施する場合の例を示している。
【0128】
認知機能検査制御部109は、検査用データ格納テーブル内に検査用データが保存されているか調べ、初回作成かを確認し(ステップ801)、初回作成であれば(ステップ801/Yes) 見守り者テーブル501の見守り者Xnを選定する(ステップ802)。最初の検査用データの作成は、
図7のテストフロー実行直後に実施する。
【0129】
次に検査データ作成部107は、作成するテストの刺激種類を選定する(ステップ803)。刺激種類は、オドボール課題データ格納部103の見守り者テーブル501とスタンダードテーブル520の選択感覚刺激517と刺激種類522を参照して、登録されている刺激の種類の内の1つを選択する。視覚データである映像データと聴覚データの音声データが格納されていた場合は、「P」か「V」を選択する。
【0130】
次に検査データ作成部107は、オドボール課題データ格納部103内にある、見守り者テーブル501を参照し、ターゲットとなる画像あるいは音声データファイル番号、写真の場合は509、音声の場合は513を選定する(ステップ804)。
【0131】
ステップ803で視覚を選定した場合は見守り者の写真データ項目507を、聴覚を選定した場合は見守り者の音声データ項目508を選定する。その際、[Validity]写真の場合は510、音声の場合は514の値が1であるものを選択する。
【0132】
次に、検査データ作成部107は、オドボール課題データ格納部103内にある、スタンダードテーブル520を参照し、スタンダードとなる画像あるいは音声を選定する(ステップ805)。ステップ803で視覚データ「P」を選定した場合は、スタンダードテーブル520の刺激種類[Stimulus_Type]522の値が「P」であり、かつデータ使用可否[Validity]523の値が1であるものを選択する。
【0133】
次に検査データ作成部107は、見守り者テーブル501を参照し、選定したターゲットのターゲット頻度Fn(写真の場合はFrequency511、音声の場合はFrequency515)を設定する(ステップ806)。
【0134】
次にターゲットが、ステップ806で設定した頻度Fnで出現するように、オドボール課題のスタンダードとターゲットの呈示順を決定する(ステップ807)。
【0135】
次にステップ807で決定した、ターゲットとスタンダードの呈示順を検査用データ格納部108の検査用データ格納テーブル1001の刺激順番1006に保存する(ステップ808)。
【0136】
刺激順番1006では、たとえば、ターゲットを示す記号「T」と、スタンダードを示す期記号「S」を用いてそれらの並びの順を刺激の順番として格納してもよい。
【0137】
次に選定したターゲットの刺激呈示間隔(写真の場合はSInterval 512、音声の場合はSInterval 516)を検査用データ格納部108の検査用データ格納テーブル1001の刺激呈示間隔[SInt]1007に保存する(ステップ809)。
【0138】
その他検査用データを検査用データ格納部108の検査用データ格納テーブル1001に保存する(ステップ810)。
【0139】
具体的にはステップ804で選定したターゲットのファイル番号を、検査用データ格納テーブル1001の、使用画像あるいは音声のファイル番号1003のTarget_File_No1008に保存する。また、ステップ805で選定したスタンダードのファイル番号を、検査用データ格納テーブル1001の、使用画像あるいは音声のファイル番号1003のStandard_File_No1009に保存する。
【0140】
ステップ806で設定したターゲット頻度Fnを検査用データ格納テーブル1001のターゲット頻度[Target_Frequency]1004に保存する。
【0141】
ステップ803で設定した刺激種類を検査用データ格納テーブル1001の刺激種類[Stimulus_Type]1005に保存する。写真の場合は「P」を音声の場合は「V」を保存する。
【0142】
見守り者テーブル501のの選択感覚刺激517を参照し、登録されているすべての感覚刺激で実行したか確認し(ステップ811)、すべての感覚で実行していたら(ステップ811/Yes)、見守り者テーブルに登録されているすべての登録者で実行したか確認する(ステップ812)。
【0143】
すべての登録者で実行していたら(ステップ812/Yes)、処理を終了する。すべての登録者で実行していなければ(ステップ812/No)、別の見守り者を選定する(ステップ802)。
【0144】
ステップ811に戻り、すべての感覚で実行したか確認し、すべての感覚で実行していなければ(ステップ811/No)、別な刺激種類を選定する(ステップ803)。
【0145】
ステップ801に戻り、初回作成か確認し初回でなければ(ステップ801/No)、見守り者Xnを識別し(ステップ813)、見守り者テーブル501の選択感覚刺激517を参照し、選択感覚刺激を確認する(ステップ814)。
【0146】
次に、ステップ813で選択した選択刺激の[File_NumberPicture_ File_No]509か、[Voice_File_No]513のいずれか検索し、その結果に基づき使用画像あるいは音声のファイル番号1003の[Target_File_No]1008を参照し、検査データ[ID No]1002でIDを調べる(ステップ815)。調べた検査データIDの検査データ基づき(主にターゲット頻度1004)、スタンダードとターゲットの呈示順を再度決定する(ステップ816)。
【0147】
ステップ816の結果を検査用データ格納テーブル1001の刺激順番1006として保存更新して(ステップ817)処理を終了する。
【0148】
(認知機能検査全体処理フロー)
次に
図9を用いて認知機能検査全体の処理フローについて説明する。
図9のフローは、スマートフォンが起動された際に、認知機能検査制御部109が実行する。
【0150】
誰かがユーザのスマートフォンに電話をかけると、スマートフォンが着信の状態になる。
これを受けて、本処理フローは、着信を受け取り(ステップ901)、この着信をイベントにして呼び出し者判定処理を実行する(ステップ902)。
【0151】
具体的には、見守り者テーブル501を参照し、着信時の電話番号に基づき、その電話がテーブルに登録されているかを調べることにより、見守り者であるか確認し(ステップ903)、見守り者でなかったら(ステップ903/No)処理を終了する。
【0152】
呼び出し者が見守り者であれば(ステップ903/Yes)、前述した検査データ作成処理を実行し、検査用データを生成する(ステップ904)。
【0153】
次に、脳波電位が検出されたか調べ(ステップ905)、検出されていなければ(ステップ905/No)画面での表示や音声などにより電極に触れるように促す(ステップ906)。なお、ユーザが、呼び出し者を確認せずに受信することを防ぐため、呼び出し者が見守り者であることが判明した時点あるいは脳波電位が検出された時点で、呼び出し者を確認するよう注意を促すための表示あるいはアナウンスを流すようにしてもよい。
【0154】
ステップ905で脳波電位が検出されたら(ステップ905/Yes)、検査実行及び脳波測定処理を実行する(ステップ907)。
【0155】
具体的には、認知機能検査制御部109が検査用データ格納部108の検査用データ格納テーブル1001を参照し検査を実行するとともに、脳波測定部105に指示して脳波測定を開始する。
【0156】
次に受信ボタンが選択されたか確認し(ステップ908)、受信ボタンが選択されていたら(ステップ908/Yes)、検査及び脳波測定処理を終了し、認知機能分析を実行する(ステップ909)。
【0157】
ステップ909の認知機能分析は認知機能分析部111が担当し、認知機能検査制御部109が、受診ボタンが押されたことによるイベントを受け、認知機能分析部111に指示を出すことにより実行される。
【0158】
また、ステップ909の認知機能分析では、脳波の測定結果からP300の値を算出し、その値をあらかじ設定されている分析用データと比較することにより、認知機能の低下の兆候を検出する。
【0159】
なお、ステップ908で受信ボタンが選択されなければ(ステップ908/No)、検査テスト実行及び脳波測定をそのまま継続する(ステップ907)。
【0160】
次にステップ909の分析結果から知機能低下の兆候が検出されたか確認し(ステップ910)、検出されなかったら(ステップ910/No)処理を終了する。認知機能低下の兆候が検出されていたら(ステップ910/Yes)認知機能低下通知処理を実行し(ステップ911)、処理を終了する。
【0161】
ステップ911の認知機能低下通知は認知機能低下通知部113が担当し、認知機能分析部111が、認知機能の低下の兆候が検出されたことを受けて認知機能低下通知部113に指示を出すことにより、実行される。
【0162】
また、ステップ911の認知機能低下通知では、見守り者テーブルに登録されている見守り者に、登録されているメールアドレスを用いて分析結果を送信する。あるいは、ユーザ本人に対して分析結果を表示部115に表示して通知する。
【0163】
図9のフローでは認知機能低下通知部113は、認知機能低下の兆候の検出がされたことを受け、認知機能低下通知を実施しているが、これを兆候の検出結果にかかわらず、分析結果が通知されるようにしてもよい。
【0164】
なお、本実施形態では、見守り者への連絡方法としてメールを使用したがこれに限定されるものではない。
【0165】
またADの患者のP300の値に近い結果が出た場合には、ユーザに直接病院での受診を促したり、あるいは、地方自治体などの専門部署に自動通知できるようにしてもよい。
【0166】
ここで、本フローにおいて、ステップ905の脳波電位の検出確認は、ステップ904の検査データ作成の前、あるいはステップ902の呼び出し者判定の前に実行しても良い。
【0167】
また、ステップ904の検査データ作成は、前回の電話着信時/後に次回の着信時に使用する検査用データを予め生成して検査用データ格納部108に格納しておき、その検査データを読み出すようにしても良い。
【0168】
(オドボール課題のテストデータの例)
次に、
図11を用いて、
図9のステップ907の、検査と脳波測定の実行で使用するオドボール課題の実行例について説明する。
【0169】
図11Aは、検査データの種類が視覚データ、すなわち画像視覚刺激による、オドボール課題の例である。本例では、検査用データとして、スタンダードとなる画像(
図11A)の星マークと、ターゲットとなる画像(
図11A、1104)の人物を、所定の時間間隔で表示していく例を示している。
【0170】
図11Aにおいて、横軸は時間ms、縦軸は電位μVを示す。グラフ上部がマイナスの電位、グラフ下部がプラスの電位を示す。グラフ上部1101は検査用データ画像の呈示タイミングを示している。
【0171】
画像の呈示間隔は1.5s(符号1102)とする。この時間は、目安とされている時間であり、この時間に限定されるわけではない。呈示間隔は、検査用データ格納テーブル1001の刺激呈示間隔1007に記述されている値に基づき設定される。
【0172】
ターゲットとスタンダードの刺激画像に対する脳波の測定範囲は、これらの刺激が呈示される前の100msを含め1.5sの期間(符号1103、目安する時間でありこの時間に限定されるわけではない)とする。
【0173】
なお、検査の結果の妥当性を後で検証可能にするために、脳波の測定は、ターゲットだけではなくスタンダードに対しても実施し、その結果を保存する。保存可能なデータ容量の関係でターゲットに対する脳波だけを測定し保存することも可能である。
【0174】
スタンダードとターゲットの画像は、
図10の検査用データ格納部108の検査用データ格納テーブル1001に保存されている刺激順番1006と、同テーブル1001の刺激呈示間隔1007に従って再生する。
図11Aは、刺激呈示間隔1007が1.5sに設定されている場合の例である。
【0175】
グラフ下部は、検査用データの画像が呈示されている時に測定されている脳波の例を示す。
図11Aの例は、3番目にターゲット見守り者の写真が呈示されその直後に受信ボタンが押された場合の例である。
図11Aの例では、脳波は受信ボタンが選択されるときまで測定されるようにしているので、4番目と5番目のスタンダードに対する脳波は測定されていない。
【0176】
図11Aの例では、3番目にターゲットとなる画像が呈示されたとき1104の脳波(符号1105で示す期間の波形)にP300が出現している1107が、1、2番目にスタンダードとなる画像が呈示された場合の脳波にはP300は出現していない。
【0177】
図11Aの例では、ターゲット呈示のときの脳波の測定結果として、ターゲット刺激が呈示される前100msから次のスタンダード刺激提示前の100ms(ポイント1108)までの1.5sの期間の波形(符号1105で示す期間の波形)を、認知機能分析部111で使用するものとする。
【0178】
図11Aの例では、脳波の測定はユーザが受信ボタンを選択した時点で終了としているが、少なくともターゲットに対する脳波の測定期間の終了ポイント1108までは測定を継続する。そのため、終了ポイント1108の前に受信ボタンが選択された場合でも、終了ポイント1108までは測定を継続する。
【0179】
図11Bは、検査データの種類が聴覚データ、すなわち音声聴覚刺激によるオドボール課題の例である。
【0180】
本例では、検査用データとして、スタンダードとなる音声(
図11B)である「リーン」という呼びだし音と、ターゲットとなる音声(
図11B、1114)である見守り者の名前を読み上げた音声を、所定の時間間隔で出力していく例を示している。
【0181】
図11Aと同様に、横軸は時間ms、縦軸は電位μVを示す。グラフ上部がマイナスの電位、グラフ下部がプラスの電位を示す。グラフ上部の画1111は検査用データ音声の呈示タイミングを示している。
【0182】
刺激の呈示間隔は1.5s(符号1112)とする。この時間は目安とされている時間であり、この時間に限定されるわけではない。
【0183】
呈示間隔は、検査用データ格納テーブル1001の刺激呈示間隔1007に記述されている値に基づき設定される。
【0184】
ターゲットとスタンダードの刺激音声に対する脳波の測定範囲は、刺激が呈示される前の100msを含め1.5sの期間とする(符号1113)。この時間は、目安する時間でありこの時間に限定されるわけではない。
【0185】
なお、検査の結果の妥当性を後で検証可能にするために、脳波の測定はターゲットだけではなくスタンダードに対しても実施し、その結果を保存する。保存可能なデータ容量の関係でターゲットに対する脳波だけを測定し保存することも可能である。
【0186】
スタンダードとターゲットの音声は検査用データ格納テーブル1001に保存されている刺激順番1006と、同テーブル1001の刺激呈示間隔1007に従って再生する。尚、
図11Bは、刺激呈示間隔1007が1.5sに設定されている場合の例である。
【0187】
図10の検査用データ格納部108の検査用データ格納テーブル1001で保存されている刺激順番1006に従って再生する。
【0188】
グラフ下部は、検査用データが呈示されている時に測定されている脳波を示す。
【0189】
図11Bの例は、3番目にターゲット見守り者の名前を読み上げた音声が呈示されその直後に受信ボタンが押された場合の例である。
【0190】
図11Bの例では、脳波は受信ボタンが選択されるときまで測定されるようにしているので、4番目と5番目に呈示されたスタンダードに対する脳波は測定されていない。
図11Bの例では、3番目にターゲットとなる音声1114が呈示されたときの脳波(1115で示す期間の波形)にP300が出現している(符号1117)が、1、2番目にスタンダードとなる音声が呈示された場合の脳波にはP300は出現していない。
【0191】
ターゲット呈示のときの脳波として認知機能分析部111で使用する部分は、ターゲット刺激1114が呈示される前100msから次のスタンダード刺激提示前の100ms(ポイント1108)までの1.5sの期間の波形となる(符号1115で示す期間の波形)。
【0192】
図11Bの例では、脳波の測定はユーザが受信ボタンを選択した時点で終了としているが、少なくともターゲットに対する脳波の測定期間の終了ポイント1118までは測定を継続する。そのため、終了ポイント1118の前に受信ボタンが選択された場合でも終了ポイント1118までは測定を継続する。
【0193】
(脳波データ格納部のテーブル構成例)
次に、
図12を用いて脳波データ格納部106で格納する脳波データテーブルの構成例について説明する。
【0194】
脳波データテーブル1201は、ID No.1202、呼び出し者(見守り者)の名前1203 [Name]、 刺激種類1204[画像[P]あるいは音声[V]]、測定時刻1205[測定開始時刻1206と測定終了時刻1207]、測定データ1208(μV, per 5ms)、ターゲットとスタンダードのファイル番号1209[Target_File_No1210, Standard_File_No1211]、ターゲット頻度1212[Target_Frequency]、刺激順番1213[Or1,Or2,Or3,Or4,Or5・・, OrN]、刺激間隔1214[SInt]を含む。
【0195】
測定データ1208は、脳波測定部105で測定した結果を受け、認知機能検査制御部109がリアルタイムに5msの間隔で格納する(ただしこれと同等以上の波形が測定できればよくこの間隔に限定されるわけではない)。
【0196】
ターゲットとスタンダードのファイル番号1209[Target_File_No1210, Standard_File_No1211]には検査の際に使用したターゲットとスタンダードのファイル番号を格納する。
【0197】
ターゲット頻度1212は、検査時のターゲット頻度を格納する。
【0198】
刺激順番1213はターゲットとスタンダードファイルの再生の順番を格納する。例えば、ターゲットを「t」、スタンダードを「s」とした場合の記号の順番で示してもよい。
【0199】
刺激間隔1214は、検査時に刺激を呈示した間隔を格納する。
【0200】
(分析用データ格納部のテーブル構成例)
次に、
図13を用いて、分析用データ格納部110で格納する分析用データ格納テーブルの構成例について説明する。
【0201】
分析用データ格納テーブル1301は、ID No.1302、データ種類1303、 分析用データを算出したデータの測定期間1304、P300の頂点潜時平均値1305(ms)、過去の頂点潜時の期間平均値からの遅延率1306(%)、兆候有無の判定で使用されるP300の頂点潜時1307(ms)、必要となるサンプル数1308を含む。ここで、必要となるサンプル数1308は、ターゲットの脳波のP300を加算平均で求める際に必要となる脳波データのサンプル数を示す。
【0202】
図13の例では、分析用データ種類[DataType]1303として3種類を設定している。
【0203】
1つはユーザの過去の検査結果から導かれる分析用データである。変数[DataType]の値1(SelfLogで定義)で示される(符号1309)。この分析用データを算出するためのデータの測定期間を示したものが分析用データを算出したデータの測定期間1304である。この測定期間のP300の頂点潜時平均値を格納するのが、P300の頂点潜時平均値1305である。認知機能低下の兆候は、このP300の頂点潜時平均値1305に一定の遅延比率を設定した値に基づき算出する。この遅延比率が過去の頂点潜時の期間平均値からの遅延率1306(%)である。また、P300の頂点潜時平均値1305に過去の頂点潜時の期間平均値からの遅延率1306(%)をかけて求めた値が、兆候有無の判定で使用されるP300の頂点潜時1307(ms)となる。
【0204】
残りの2つは一般的なデータとして設定されるものである。
【0205】
1つは、ユーザの年齢の平均値である。変数[DataType]の値2(AgeAveで定義)で示される(符号1310)。この値は兆候有無の判定で使用されるP300の頂点潜時1307に格納される。分析用データを算出したデータの測定期間1304、P300の頂点潜時平均値1305、平均頂点潜時の期間平均値からの遅延率1306(%)、必要となるサンプル数1308はSelfLog1309に関するものであるので、それらの値はすべて0に設定する。
【0206】
もう1つはADの患者の年齢平均値である変数[DataType]の値3(ADAgeAveで定義)で示される(符号1311)。
【0207】
この値は兆候有無の判定で使用されるP300の頂点潜時1307に格納される。
【0208】
分析用データを算出したデータの測定期間1304、P300の頂点潜時平均値1305、平均頂点潜時の期間平均値からの遅延率1306(%)、必要となるサンプル数1308はSelfLog1309に関するものであるので、それらの値はすべて0に設定する。
【0209】
分析用データを算出したデータの測定期間1304は開始日1312[Start:YYYY-MM-DD]と終了日1313[YYYY-MM-DD]より成る。
【0210】
データ種類1303のSelfLog1309のデータ記入例を1314に示す。
【0211】
データ種類1303のAgeAve1310のデータ記入例を1315に示す。
【0212】
データ種類1303のADAgeAve1311のデータ記入例を1316に示す。
【0213】
ここで、年齢ごとの平均値1310[AgeAve]やアルツハイマー病患者の年齢平均1311[ADAgeAve]は、最初から装置内部に保存しておいた平均値データから、ユーザの年齢に合わせて選択したデータを格納しておいてもよいし、ネットワークに接続可能な時に、医療用のデータベースにアクセスしユーザの年齢に合わせて検索した結果を格納するようにしてもよい。
【0214】
なお、前記比較対象とするデータ種類1303は、初期設定あるいはモード変更等であらかじめ設定することとする。
【0215】
(認知機能分析結果格納部のテーブル構成例)
図14を参照して、分析結果格納部112で格納するテーブルの構成例について説明する。
【0216】
認知機能分析結果格納部のテーブル1401は、分析結果のID No.1402、P300の頂点潜時の平均時間を算出するデータの算出期間1403、呼び出し者1404、刺激種類1405、P300の平均頂点潜時1406、兆候検出の際に使用した分析用データ種類1407、兆候有無判定結果1408を含む。
【0217】
P300の頂点潜時の平均時間を算出するデータの算出期間1403は、開始日時1409と終了日時1410より成る。
【0218】
また刺激種類1405は、視覚刺激:[P]1411又は聴覚刺激 [V]1412である。
【0219】
P300の平均頂点潜時1406は、データ算出期間内の平均で単位はmsである。
【0220】
分析用データ種類1407の[DataType]には、自分の過去のP300の頂点潜時を使用した場合、(SelfLog1413)値1を格納し、ユーザ年齢のP300頂点潜時の平均値を使用した場合(AgeAve1414)値2を格納し、アルツハイマー病患者の年齢平均のP300頂点潜時の平均値を使用した場合(ADAgeAve1415)値3を格納する。
【0221】
兆候有無判定結果1408の[Result]1416には、兆候有の場合には1を設定し1417、無しの場合には0を設定する(符号1418)。
【0222】
(認知機能分析部の処理フロー)
次に、
図15を用いて、本発明の認知機能分析部111の処理内容について説明する。
【0223】
本実施形態では、データの分析期間があらかじめ決められていることを前提に説明する。例えば、月末の最終日にしてもよいし、ユーザが定めた期間における最終日にしてもよい。
【0224】
認知機能分析部111は、脳波データに対して認知機能のデータ分析を実行するために、タイマー119を用いてスケジュール管理を行う。例えば、次に実行すべきデータ分析期間に到達したか否かを確認(ステップ1501)し、到達していない場合は(ステップ1501/No)処理を終了する。
【0225】
データ分析期間に到達した場合は(ステップ1501/Yes)、前記分析期間内に格納データのある見守り者Xnを選定する(ステップ1502)。
【0226】
次に、前記分析期間内の格納データから格納データ種類ごとのデータを抽出する(ステップ1503)。具体的には、脳波データテーブル1201の呼び出し者(見守り者)の名前1203から選択した見守り者を検索し該当する結果から刺激種類1204ごとにデータを抽出する(ステップ1503)。
【0227】
次に、ステップ1503で抽出したデータの中に、必要最小限のデータサンプルが有るか否かを判定する(ステップ1504)。
【0228】
必要最小限のデータサンプルは、分析用データ格納テーブル1301でSelfLog1309を選択し、必要となるサンプル数1308の値を参照して調べる。
【0229】
サンプルがあれば(ステップ1504/Yes)、刺激データの順番を参照し、格納された脳波データからターゲット刺激に対して出現した測定波形データを抽出してバッファに一時的に格納する(ステップ1505)。
【0230】
刺激データの順番は脳波データテーブル1201の刺激順番1213を参照し「t」の順番を調べ、刺激間隔の時間から、その「t」が出現する時間を計算する。そして測定データ1208からその時間帯のデータを抽出する。たとえば、「t」が3番目で、刺激間隔が1.5sであれば、およそ3s後にターゲットが呈示されたことになるため、測定データの3秒〜4.5秒が該当するデータとなる。実際は分析の対象となるデータは、刺激呈示前から0.1msであるが、測定データも刺激呈示0.1秒前から測定しているため、測定データの3秒〜4.5秒を抽出すればよい。
【0231】
バッファはRAM213上に備えられており認知機能分析部111が管理する。
【0232】
次に、ステップ1503による抽出した結果の中から、対象期間の波形抽出が完了したか確かめ(ステップ1506)、完了していなければ(ステップ1506/No)、ターゲットの測定波形データを抽出しその結果をバッファに一時的に格納する(ステップ1505)。バッファには、波形識別番号[Wave_No]、呼び出し者見守り者[Name]、刺激種類 [P]or[V]、測定時間(測定開始時刻:[Start_Time]、測定終了時刻:[Start_Time])、対象波形データμV, per 5ms、刺激間隔[SInt]を格納して保存する。
【0233】
前記ステップ1506において、ステップ1503で抽出した結果の中から、対象期間の波形の抽出が完了していれば(ステップ1506/Yes)、抽出されたバッファ上に蓄積したターゲット刺激の脳波データを使用してP300頂点潜時の加算平均を算出する(ステップ1507)。
【0234】
次に設定期間内のP300の加算平均の算出結果を分析結果格納部112のP300の平均頂点潜時1406に保存する(ステップ1508)。
【0235】
次に、分析用データ格納部110の分析用データ格納テーブル1301から比較対象とするデータ種類1303を選定する(ステップ1509)。
【0236】
次に、選定したデータ種類1303の兆候有無の判定で使用されるP300の頂点潜時1307の値とステップ1507で算出した、分析期間内のP300の頂点潜時の平均時間を比較する(ステップ1510)。
【0237】
ステップ1510において、選択したデータ種類1303の兆候有無の判定で使用されるP300の頂点潜時1307の値以下の場合は(ステップ1511/No)、兆候なしと判断し、比較対象とした分析用のデータの種類とともにその結果を分析結果格納部112のテーブル1401に保存する(ステップ1512)。
【0238】
ステップ1510において、選択したデータ種類1303の兆候有無の判定で使用されるP300の頂点潜時1307の値よりも大きい場合は(ステップ1511/Yes)、兆候有りと判断し、比較対象とした分析用のデータの種類とともにその結果を分析結果格納部112のテーブル1401のP300の平均頂点潜時1406を保存する(ステップ1513)。
【0239】
分析用データ格納テーブル1301のすべてのデータ種類1303と比較したか調べ(ステップ1514)、比較していなければ(ステップ1514/No)分析用データ格納部110の比較対象とするデータの種類を選定する(ステップ1509)。
【0240】
図13の例では、3つのデータ種類を登録している。この場合、ステップ1514ではこれら3つのデータ種類と比較したか調べる。
【0241】
すべてのデータ種類1303と比較したか調べ、比較していれば(ステップ1514/Yes)すべての見守り者のデータを分析したか確かめ(ステップ1515)、分析していれば(ステップ1515/Yes)処理を終了する。
【0242】
脳波データテーブル1201の呼び出し者(見守り者)の名前1203を参照し、すべての見守り者のデータを分析したか確かめ(ステップ1515)分析していなければ(ステップ1515/No)、分析期間内に格納データのある見守り者Xn選定する(ステップ1502)。
【0243】
見守り者ごとに脳波測定データ分析するのは、測定時に使用するデータ刺激としてユーザに呈示する写真や音声が見守り者ごとに異なるためである。また、刺激視覚あるいは聴覚ごとに脳波測定データを分析するのは、使用する刺激の種類によってP300の頂点潜時の傾向が異なるためである。
【0244】
(認知機能分析結果の例)
図16に特定の見守り者に対する認知機能分析結果の例を示す。
図16の例では頂点潜時の平均の算出期間を1ヶ月で設定1601し、1ヶ月ごとのP300の頂点潜時を分析した例である。横軸は測定時月単位、縦軸はP300の頂点潜時を示している。
【0245】
図16の例では、月単位のP300の頂点潜時の平均時間が過去3ヶ月の結果と比較して15%以上遅くなった場合に認知機能の低下の兆候とすることを分析用データ格納部110にあらかじめ設定している。
【0246】
2016年5月(符号1602)は、過去3ヶ月のP300の平均頂点潜時1603より15%以上遅くなっている(符号1604)ため、兆候有として判断される。
【0247】
なお、
図16の結果は見守り者ごとに算出される。このため同じ期間でも見守り者によって兆候有と判断される場合と無と判断される場合があるが、だれか一人でも、兆候有と判断された場合は、兆候有と判断してもよいし、登録された見守り者全員に対する結果が兆候有となった時に、最終的に兆候有と判断するようにしてもよい。
【0248】
図16に示したようなP300の頂点潜時の分析結果は、兆候が検出された際に、あるいは月ごとの分析により結果を算出するたびに、特定の見守り者に通知するようにしてもよい。
【0249】
本実施形態によれば、オドボール課題を自動で生成し、その課題を自動で実行するとともに、その課題を実行中の脳波を自動で測定する機能を搭載することにより、日常の生活の中でユーザ(被検者)の認知機能の状態を検査することができる。その際、認知機能検査とは異なる目的の動作、例えば電話の応答動作中にオドボール課題を呈示してそれに対する脳波データを取得するので、ユーザには認知機能検査を実行していることが自覚されにくい。これにより、ユーザが認知機能検査を受ける際の心理的な負担感を低減することができる。
【0250】
更に自動で検査結果を分析する機能を備えることで、ユーザの認知機能の状態を定期的にチェックすることができる。
【0251】
また本実施形態によれば、オドボール課題用の刺激を格納するDBを用いて認知機能検査用のデータを自動生成することができる。また、脳波測定部において脳波が測定可能になったことを検出し、それを受けて自動生成した認知機能検査用データを実行するとともに、その時の脳波を測定して格納することができる。また、認知機能検査をユーザの優先感覚刺激を用いて実施することができる。これらにより高齢者が日常生活において認知機能の検査を容易にかつ継続的に実施することができる。また、認知機能の低下が検出された場合には、検査の結果を本人あるいはあらかじめ登録しておいた関係者ユーザの見守り者に通知することができる。
【0252】
<第2実施形態>
第1実施形態で記載した認知機能検査の機能を備えたスマートフォンは、電話の着信時、受信者は電話の呼び出し者が誰であるかに注意を向け、着信画像や着信音などで呼び出し者が知人であることを確認してから電話に出る、という一般的な電話の使用上の動作をオドボール課題に見立て活用し、見守り者からの電話の着信時に、オドボール課題に基づき自動生成した着信画像あるいは着信音声をユーザに対して表示あるいは再生し、それに反応して誘発されるユーザの脳波P300を測定/分析することで、ユーザの認知機能を検査することを特徴としている。
【0253】
前述した通り、オドボール課題でP300を誘発する刺激には、聴覚や視覚、体性感覚がある。一般的に、人はこれらの中で優先的に使用している感覚(優位性感覚)があり、それは一人一人異なる。このため聴覚に優位性がある人には音声を、視覚に優位性がある人には画像をオドボール課題で使用することでユーザの利便性を高め、より頻度高く認知機能検査を実施することが期待できる。
【0254】
前記3つの感覚の優位性は普段使用する言語の叙述語(動詞、形容詞、副詞)を分析することで分かるといわれている。本発明ではこれを活用して、個々人の優先感覚の違いを分析した上で、認知機能検査で使用する刺激の種類例えば視覚あるいは聴覚を選定できるようにする。より具体的には、被検者が過去に行った発話内容、送信メールの少なくとも一つに含まれる叙述語を抽出し、叙述語に示す視覚表現の使用頻度及び聴覚表現の使用頻度を算出し、視覚表現の使用頻度が多い場合は被検者に呈示する検査データの刺激の種類として視覚刺激を用いることを決定し、聴覚表現の使用頻度が多い場合は被検者に呈示する検査データの刺激の種類として聴覚刺激を用いることを決定する。
【0255】
上記叙述語を分析するために、インターネット上で利用可能な「コーパス」と呼ばれる言語研究用のテキストデータベースを利用して叙述語を分析し、ユーザの感覚の優位性を分析する。
【0256】
本実施形態では、メールあるいは通話などのデータを、叙述語に着目して分析することにより、ユーザの感覚優位性を判断し、その結果から検査で用いる感覚データの種類を決定する例えば、視覚と聴覚が使用できる装置では、視覚画像か聴覚音声のどちらを使用するかを決定する仕組みを搭載することを特徴とする。
【0257】
(認知機能分析結果の例)
図17は、本実施形態で使用する認知機能検査装置(スマートフォン)の機能ブロック図である。
【0258】
第1実施形態の
図1との違いは、通信部116を通して外部にネットワーク接続された情報機器(スマートフォン1702、PCやタブレット1703)内のメモリあるいはクラウド1704上に格納されたメールや通話に関するユーザデータ(送信メールや通話記録)を取得し、ユーザの優先感覚を分析する優先感覚分析部1701を内部に備えているところである。
【0259】
スマートフォンやPC、タブレットなど、個人で複数の端末を所有するケースが増えてきている。これに伴い、端末の機種変更や端末間で各種データを共有するために、クラウドサービスを利用してメールやアドレス帳、画像や音声などの情報をアップロードするケースが増えている。また機種変更などで使用しなくなったスマホの通話記録やコンテンツ再生履歴など、今までのユーザの行動履歴が残っているケースがある。本実施形態では、ユーザの優位性感覚を決定するために、これらの情報を使用する。
【0260】
なお、叙述語(動詞、副詞、形容詞)により優先感覚を分析する際には、前述したコーパス1705を使用する。
【0261】
優先感覚分析部1701の処理は、初期設定時に実行する。
【0262】
本実施形態の認知機能検査装置1706は、通信部116を通して外部に接続された情報機器(1702、1703)内あるいは、クラウド1704上のメールや通話に関するユーザデータ(送信メールや通話記録)からユーザの優先感覚を分析する優先感覚分析部1701を備える。それ以外の機能ブロックは
図1と同様のブロック構成である。
【0263】
なお、
図17の例ではコーパス1705はインターネット上のものを使用しているが、インターネット上の汎用のコーパスでは語彙の検索に時間がかかるため、インターネット上のコーパスなどを活用して視覚や聴覚用の語彙分析用のコーパスを作成し、それを装置内に備えるようにしてもよい。
【0264】
オドボール課題データ格納部103へのデータの登録は、ユーザがすでにスマートフォンに記録されているアドレス帳のデータや、アルバムに記録されている写真や通話記録に記録されているデータから、オドボール課題データ格納部103に登録するデータ(見守り者の電話番号、名前、メールアドレス、音声、写真)を抽出して登録してもよいし、新たに見守り者から送付されたデータを使用して登録してもよい。
【0265】
また、ネットワークで接続可能な他のスマートフォンやクラウド上に保存されたデータを使用して登録できるようにしてもよい。
【0266】
(優先感覚分析処理フロー)
次に、
図18を用いて、本発明の特徴である優先感覚分析部1701で実行する優先感覚分析処理の内容について説明する。
【0267】
本実施形態の初期設定時に、優先感覚分析部1701は、通信部116を経由して外部の機器(1702、1703)あるいはクラウド1704に接続を試みる(ステップ1801)。優先感覚分析部1701は外部機器やクラウドに接続可能か確かめ(ステップ1802)、接続可能でなければ(ステップ1802/No)、N回以上失敗したか調べ(ステップ1803)、N回以上でなければ(ステップ1803/No)、外部の機器あるいはクラウドに接続を試みる(ステップ1801)。N回以上失敗した場合は(ステップ1803/Yes)、処理を終了する。
【0268】
優先感覚分析部1701は接続可能か確かめ(ステップ1802)、接続した外部の機器あるいはクラウド上に(ステップ1802/Yes)、ユーザの過去の送信メールが存在するか否かを確かめ(ステップ1804)、送信メールが存在する場合は(ステップ1804/Yes)その送信メールを対象にして品詞分析を行う(ステップ1805)。そして、品詞分析の結果から叙述語(動詞、形容詞、副詞)を抽出する(ステップ1806)。
【0269】
次に、インターネット上のコーパス1705を参照し、視覚、聴覚表現の語彙を抽出し、それらを視覚、聴覚感覚ごとに分類してそれらの感覚ごとの出現頻度を分析する(ステップ1807)。
【0270】
ここで、視覚表現には、例えば、見る、映す、明るい、輝く、まぶしいなどの表現がある。聴覚表現には、例えば、聞く、言う、響く、うるさい、静かなどの表現がある。コーパスは、インターネット上で使用できるものをそのまま使用してもよいし、インターネット上のコーパスのデータを使用して視覚及び聴覚表現用の専用データベースを作成しそれらを装置1706内部に備えてもよい。
【0271】
次に優先感覚分析部1701は、ステップ1807において視覚、聴覚表現語彙の出現頻度の分析の結果を受け、視覚表現語彙の出現頻度が高いか否かを調べ(ステップ1808)、高ければ(ステップ1808/Yes)、認知機能検査制御部109に対して画像による検査に設定し処理を終了する(ステップ1809)。一方、視覚表現語彙の出現頻度が高くなければ(ステップ1808/No)音声による検査に設定し(ステップ1810)処理を終了する。
【0272】
前記ステップ1804において、ユーザの過去の送信メールが存在しなければ(ステップ1804/No)、過去の通話音声記録が存在するか否かを調べる(ステップ1811)。過去の通話音声記録が存在する場合は(ステップ1811/Yes)、品詞分析を行い(ステップ1805)、優先感覚を分析する。通話分析を行う前には、テキストに変換する必要があるが、テキストデータへの変換は音声データが記録されているスマートフォン1702、PCやタブレット1703やクラウド1704上の音声のテキスト変換ソフトを使用してもよいし、本発明の装置にテキスト変換ソフトを実装して変換してもよい。
【0273】
ステップ1811においてユーザの過去の通話音声記録が存在しなければ(ステップ1811/No)作成文章の有無を調べる(ステップ1812)。作成文章があれば(ステップ1812/Yes)文章を対象に品詞分析を行い(ステップ1805)、優先感覚を分析する。ステップ1812において作成文章が存在しなければ(ステップ1812/No)処理を終了する。この場合は、装置出荷時にあらかじめ決めてあるデフォルトの刺激による認知機能の検査を実施してもよい。デフォルトの刺激は視覚刺激であっても、聴覚刺激であってもよい。
【0274】
ここで、
図18では、叙述語の分析により優先感覚を分析したが、コンテンツの再生頻度によって優先感覚を分析してもよい。すなわち、映像コンテンツと音声コンテンツの再生頻度をそれぞれ調べ、映像コンテンツの再生頻度が高ければ画像による検査に設定し処理を終了する。また、音声コンテンツの再生頻度の方が高ければ音声による検査に設定する。
【0275】
また、優先感覚を分析するための質問票を呈示し、その質問の回答を分析することによって優先感覚を判定し、その結果に基づき認知機能検査で使用する刺激データの種類を選定するようにしてもよい。
【0276】
上記のように優先感覚に基づいて、認知機能検査で使用する刺激データの種類を設定するが、周囲の状況によって認知機能検査で使用する刺激データの種類(画像か音声)を自動で変更できるようにしてもよい。たとえば、音を出すことで周囲に迷惑をかけるような状況では、視覚(画像)データを使用するように変更する。周囲の状況は、ユーザが手動で設定するようにしてもよいし、GPSなどの情報を使用して場所情報から設定できるようにしてもよい。
【0277】
以上から、本実施形態の認知機能検査装置1706は、優先感覚分析部1701を搭載することにより、ユーザが優先的に使用する感覚のデータを使用して、認知機能の検査を実施することができる。
【0278】
<第3実施形態>
第1、2実施形態で記載した認知機能検査の機能を備えたスマートフォンは、見守り者からの電話着信という、誰もが日常的に行動する場面/タイミングを利用して認知機能検査を実施していた。これにより、ユーザ、特に高齢者に認知機能検査を受けることについての心的な負荷をかけることなく、日常の動作の中で容易に認知症の早期検出が可能となる。
【0279】
本実施形態では、電話の着信以外の日常の動作で、認知機能検査を実施する例について説明する。なお、本実施形態で使用するスマートフォンは、
図1及び
図17に記載した構成を備えるものとする。
【0280】
(アラームの使い方の例)
図19を用いて、アラーム(目覚まし時計、スケジュールを含む)の操作を用いた認知機能検査の使い方イメージを示す。アラームの機能は、タイマー119で実行する。ユーザは、タイマー119を使用するアプリケーション(例えば、目覚ましアプリ、スケジューラー等)を用いてアラーム設定を行う。
【0281】
ユーザがあらかじめ設定した時間(あるいはイベント)に到達すると、タイマー119は音声出力部117を介してアラーム音が再生あるいは振動を発生させ、認知機能検査制御部109に通知する(
図19A)。
【0282】
ユーザがスマートフォンを掌握し、スマートフォンの背面にある脳波測定用電極302、303あるいは側面にある脳波測定用電極306、307に手の表面が触れると、認知機能検査制御部109は電極経由で脳波測定部105を用いて脳波が測定可能であることを検出し、また検査データ作成部107を用いて検査データを作成し、この検査データを表示部115に表示することで認知機能検査を開始する(
図19B)。
【0283】
ユーザは、アラーム音を切るために、検査データ作成部107で作成した検査データが表示部115に表示された画面を見る(
図19C)。画面では、オボドール課題のスタンダード刺激となる絵文字などの画像1901とターゲットとなるスイッチOFFのアイコン1902をランダムに表示する。スイッチOFFのアイコン1902は、前記第1実施形態と同様に、低頻度で表示される。ユーザは表示される一連の画面1903からスイッチOFFのアイコン1902の表示に注目し、スイッチOFFのアイコン1902が表示されると、画面のスイッチOFFのアイコン1902にタッチしアラーム音をOFFにする(
図19D)。アラーム音がOFFされると、タイマー119はその旨を認知機能検査制御部109に通知することで、認知機能検査制御部109は認知機能検査を終了する。測定した結果を用いて認知症の兆候分析する方法については、第1実施形態と同様である。
【0284】
以上のアラーム操作の他にも認知機能の検査が可能である。
【0285】
本発明のスマートフォンにインストールした電子書籍アプリなどを用いて、ユーザがページをめくる操作をするたびに、ユーザが関心のありそうなページあるいは特定のページ(目次や節/章の見出し、挿絵や写真が挿入されたページ等)にあらかじめ決めておいたキャラクターやポップアップを表示、あるいは別な色に変化させる。そして、書籍をオープンしてからクローズするまでの読書中の全てあるいは一部の脳波を測定し、ページに変化があった時の脳波のP300を分析する。この場合、関心のありそうなページの頻度は一定値以下に設定する必要がある。
【0286】
この場合、ターゲットとして利用する画像は、あらかじめ決めておいたキャラクターやポップアップをいっしょに表示するページ画面であり、スタンダードとして利用する画像は、キャラクターやポップアップを表示しないページ画面である。
【0287】
また、認知機能検査は、スマートフォンで電子書籍アプリが実行されて脳波測定用電極302、303、306、307のいずれか2つに手を添えられてから、電子書籍のアプリが終了するまでである。
【0288】
また、本実施形態のスマートフォン上で映像コンテンツの視聴の際に、再生開始時に視聴コンテンツとは関係のない、オドボール課題格納部内のスタンダードの映像の間に視聴しようとしているコンテンツに関する映像(例えば、コンテンツのタイトルなど)を低頻度で混ぜて再生する。
【0289】
視聴しているコンテンツを変更する時も同様にコンテンツ変更直後に同様の映像再生の仕方を行う。上記のようにスマートフォン内の映像再生アプリケーションを設定しておいた時の視聴時の脳波を測定し、視聴しようとしたコンテンツに関する映像を再生した時の脳波のP300を分析して認知機能を検査する。
【0290】
この場合、ターゲットとして利用する画像は、例えばユーザが視聴しようとしているコンテンツのタイトルであり、スタンダードとして利用する画像はオドボール課題データ格納部に保存されたスタンダード管理テーブル内のデータである。スタンダードはその他にスマートフォンにあらかじめ記憶されている映像を使用してもよい。
【0291】
また、認知機能検査は、コンテンツ再生アプリ起動時に脳波測定用電極302、303、306、307のいずれか2つに手を添えられてから、コンテンツの再生あるいはコンテンツの変更が完了するまでとなる。
【0292】
また、お気に入りの画像や音声を起動時の壁紙や起動音として登録し、それらを起動終了時に関係のない画像や音声の後に再生する。上記のようにスマートフォン内の起動処理方法を設定しておいた時の、起動時の脳波を測定し、上記お気に入りの壁紙や起動音が再生された時の脳波のP300を分析して認知機能を分析する。
【0293】
この場合、ターゲットとして利用する画像や音声は、既に壁紙として設定されている画像や音声であり、スタンダードとして利用する画像や音声はオドボール課題データ格納部に保存されたスタンダード管理テーブル内のデータである。スタンダードはその他にお気に入りには登録されていない、スマートフォンにあらかじめ記憶されている映像や音声を使用してもよい。
【0294】
また、認知機能検査は、スマートフォン起動時に脳波測定用電極302、303、306、307のいずれか2つに手を添えられてから起動終了時にお気に入りの壁紙や起動音が表示あるいは再生されるまでとなる。
【0295】
また、体温計などの測定の際、測定結果が表示される少し前に関係のない画面や音声を表示あるいは再生してから結果を表示する画面を出す、あるいは結果を読み上げる音声を再生する。上記のようにスマートフォン内の体温測定アプリを設定しておいた時の体温測定中の脳波を測定して、測定結果が表示されたあるいは測定結果が読み上げられた時の脳波のP300を分析し検査する。温度センサはスマートフォンに接続して使用するものを使用してもよいし内部に実装されていてもよい。
【0296】
この場合、ターゲットとして利用する画像又は音声は、体温の測定結果(画像又は音声)であり、スタンダードとして利用されるのは、オドボール課題データ格納部103に保存されたスタンダード管理テーブル内のデータ(画像又は音声)となる。スタンダードはその他スマートフォンにあらかじめ記憶されている画像又は音声を使用してもよい。
【0297】
また、認知機能検査は、体温測定開始時に脳波測定用電極302、303、306、307のいずれか2つに手を添えられてから、体温の測定結果が表示あるいは再生されるまでとなる。
【0298】
また、ゲームとして、記号などの画像の合間にキャラクターなどの画像を低頻度でランダムに混ぜて表示し、キャラクターが出た時に画面にタッチするか機器に装備されているボタンを押すようにする。スマートフォンでこのゲームをしている時の脳波を測定し、キャラクターが画面に表示された時の脳波のP300を分析して認知機能を検査する。
【0299】
ゲームとして、単一音の合間に異質な音声(楽器の音や人の声、鳥の鳴き声、乗り物のクラクションなど)を低頻度でランダム混ぜて再生し、異質な音声が再生された場合にボタンを押したり、手足を動かすようにする。スマートフォン上でこのゲームをしている時の、脳波を測定し、異質な音声が再生された時の脳波のP300を分析して認知機能を検査する。
【0300】
この場合、ターゲットとして利用するのは、キャラクターなどの画像であり、スタンダードとして利用されるのは、オドボール課題データ格納部に保存されたスタンダード管理テーブル内の画像である。スタンダードはその他スマートフォンにあらかじめ記憶されている画像でもよい。
【0301】
また、認知機能検査は、ゲーム開始時に脳波測定用電極302、303、306、307のいずれか2つに手を添えてからゲームが終了するまでである。
【0302】
以上では、本発明を適用可能なスマートフォン上のアプリケーションについて主に述べたが、本発明の適用範囲が上記に限定されるわけではない。例えば、固定電話でもスマートフォンと同様のことができる。また、玄関のインターホンなどの外来者確認用の表示機能でも本発明のスマートフォンの電話着信時と同様のことができる。
【0303】
<第4実施形態>
前記した実施形態では、認知機能検査装置としてスマートフォンをベースとした形状を用いていた。本実施形態では、以下、別の形状及び形態について説明する。
【0304】
はじめに
図1の脳波測定部105を測定装置に実装した、本発明の認知機能検査システムの機能ブロック図について説明する。
【0305】
図27は認知機能測定装置と脳波測定装置からなる認知機能検査システムの機能ブロック図である。
【0306】
図27に脳波測定機能を持つ、スマートフォンケース(
図20)、メガネ又はサングラスのフレーム(
図21A)、ヘッドホン(
図22A)、補聴器(
図23A及び
図23B)、マウス(
図24A)、TVリモートコントローラ(以下TVリモコン:
図25A)と、認知機能検査機能を持つ、スマートフォン (
図21B)、タブレットPC(2110)、デスクトップPC、ノートPC、電子書籍TV本体(2111)、ラジオ本体(2214)などから成るシステムとして本発明を実現した場合の機能ブロック図を示す。マウスは、情報入力装置の一例であり、これと連携する機器は、マウスから入力された操作情報に従って動作する情報処理装置、例えばPC等である。
【0307】
第1実施形態に係る機能ブロック図(
図1)との主な違いは、脳波測定部105を外部の装置からなる測定装置2703に備えるようにしたことである。また、脳波測定部2705を備えた測定装置2703にも通信部2704を備えるようにし、スマートフォンなどの認知機能検査装置2701と脳波測定部2705を備えた測定装置2703とを、通信部2704を介して連携するように構成しているところである。
【0308】
以下では認知機能検査装置としてスマートフォン(
図21B)を使用した場合を例に説明する。
【0309】
なお、認知機能検査装置2701と脳波測定部2705を備えた測定装置2703との間の通信は、有線であっても無線であってもよい。
【0310】
本発明の認知機能検査システムは、認知機能検査装置2701と測定装置2703から構成される。
【0311】
認知機能検査装置2701は、認知機能測定・判定部2702、操作部114、表示部115、通信部116、音声出力部117、音声入力部118、タイマー119を含んで構成される。
【0312】
操作部114は、本認知機能検査装置2701に対してユーザが操作入力を行う。
【0313】
表示部115は、ユーザに対して操作画面や各種情報を表示する。
【0314】
通信部116は、各種ネットワーク(電話網、WiFi、Blutooth等)を介して外部の機器と通信を行う。本実施例では、通信部116が脳波データ取得部としての動作も行う。
【0315】
音声出力部117及び音声入力部118は、マイクやスピーカを介して音声の出力・入力を行う。
【0316】
タイマー119は、時計やアラーム、ストップウォッチなど、時間を計測する。
【0317】
認知機能測定・判定部2702は、オドボール課題データ格納部103、呼び出し者判定部104、脳波データ格納部106、検査データ作成部107、検査用データ格納部108、認知機能検査制御部109、分析用データ格納部110、認知機能分析部111、分析結果格納部112、認知機能低下通知部113を含んで構成される。
【0318】
オドボール課題データ格納部は103、オドボール課題用のデータを格納する部分である。
【0319】
オドボール課題データ格納部103には、たとえば認知機能検査対象のユーザを見守る人(見守り者)に関する情報、例えば、見守り者の電話番号、名前、メールアドレス、音声、写真などの情報を格納する。
【0320】
呼び出し者判定部104は、通信部116を介して電話やメールを受信する際、電話の相手が前記オドボール課題データ格納部103に登録された見守り者であるか否かを判定する。
【0321】
脳波データ格納部106は、測定装置2703で測定した脳波を記録する。
【0322】
検査データ作成部107は、前記オドボール課題データ格納部103に格納された見守り者の音声や写真、スマートフォンにあらかじめ記録されている絵文字などの画像や着信音などを用いて、認知機能検査用のデータを自動生成する。
【0323】
検査用データ格納部108は、前記検査データ作成部107で作成した検査用データを格納する。
【0324】
認知機能検査制御部109は、前記測定装置2703において電極から電位が検出され脳波が測定可能になったことを検知し、検査用データ格納部108に格納された検査データを用いて検査を開始し、測定された脳波を脳波データ格納部106に記録する部分であり、また認知機能測定・判定部2702を構成する全部分の制御を実行する。
【0325】
分析用データ格納部110は、認知機能を分析評価するためのデータを格納する。
【0326】
認知機能分析部111は、前記脳波データ格納部106に記録された脳波測定結果を分析し、あらかじめ算出されている分析用データ格納部110のデータと比較することにより、認知機能分析を行う。
【0327】
分析結果格納部112は、前記認知機能分析部111の分析結果を記録する。
【0328】
認知機能低下通知部113は、前記認知機能分析部111において、認知機能の低下が検出され、認知症の兆候が検出された場合に、前記オドボール課題データ格納部103にあらかじめ登録された見守り者に通知する。
【0329】
ここで、前記オドボール課題データ格納部103に登録する見守り者とは、認知機能検査対象のユーザ(高齢者)の生活や健康をさりげなく見守る人のことであり、例えばユーザの家族やケアマネージャなどのことである。見守り者は、本認知機能検査装置2701(スマートフォン)を使用すれば、遠隔地からでもユーザ(高齢者)の日常生活における認知機能の状態を見守ることができる。
【0330】
オドボール課題データ格納部103に登録するデータは、スマートフォンの既存アドレス帳のデータ(電話番号、名前、住所、メールアドレス等)や、内蔵メモリやSDカードに記録されている写真、通話記録に記録されているデータ(電話番号、名前、メールアドレス、音声、写真)を用いてもよいし、新たに見守り者から送付されたデータを使用して登録してもよい。
【0331】
測定装置2703は、通信部2704と脳波測定部2705を含んで構成される。
【0332】
通信部2704は、各種ネットワーク(WiFi、Blutooth等)を介して外部の機器と通信を行う。
【0333】
脳波測定部2705は、認知機能検査対象のユーザの脳波を測定する。
【0334】
上述したように、本実施形態の認知機能検査システムにおいては、認知機能検査装置2701は、例えばスマートフォン(
図21B)やタブレットPC2110、デスクトップPC、ノートPC、電子書籍、TV本体2111、ラジオ本体2214などである。
また測定装置2703は、スマートフォンケース(
図20A、
図20B、
図20C)、メガネ又はサングラスのフレーム(
図21A)、ヘッドホン(
図22A)、補聴器(
図23A及び
図23B)、マウス(
図24A)、TVリモートコントローラ(以下TVリモコン:
図25A)などである。
【0335】
また本実施形態の認知機能検査システムにおいては、
図2で説明した認知機能検査・判定部102を構成するハードウェア、例えば脳波測定用電極221、信号処理装置222、ADC223、CPU211、ROM212、RAM213、記憶装置214は認知機能検査装置2701又は測定装置2703のいずれかに搭載される。また通信モジュール227は両装置に搭載される。
【0336】
ただし、本実施形態に係る認知機能検査システムを構成する認知機能検査装置2701と測定装置2703が、上記の機器に限定されるわけではない。また、認知機能検査装置と脳波測定装置との間の通信は、無線であっても有線であってもよい。
【0337】
以下では個々の実装例ごとに機能ブロックとハードウェアの構成を説明する。
【0338】
(スマートフォンケースの例)
図20は、脳波測定部2705をスマートフォンケースに実装した場合の例である。
図1の脳波測定部2705以外の部分は、スマートフォンに備える。
【0340】
スマートフォンケース(背面2001、左側面2007、右側面2008、前面2015)には脳波測定用電極(背面に設置された電極2002、2003、側面に設置された電極2009、2010)及び、信号処理装置222、ADC223、検出した電位を送信する通信モジュール227を備える。この通信モジュール227は無線通信モジュールである。
【0341】
信号処理装置222、ADC223、検出した電位を送信する通信モジュール227は、背面に実装する(符号2006)。ただし実装する場所は、2006の位置に限定されるものではない。
【0342】
脳波測定用電極は、スマートフォンケースの背面2001の2箇所に電極2002、2003を実装する。また、左側面2007、右側面2008の2箇所に電極2009、2010を実装する。
【0343】
上記4箇所の脳波測定用電極、すなわち背面に設置された電極2002、2003、左右側面に設置された電極2009、2010は、電位の検出状況により組み合わせ可能である(双極誘導で測定するため2つの電極が必要である)。
【0344】
更に電極を縁取るようにスマートフォンケースの背面2001、左側面2007、右側面2008、前面2015にライトを備える。図では、背面に設置されたライト2004、2005、側面に設置されたライト2011、2012、2013、2014、前面に設置されたライト2016、2017で示す。ライトには色のバリエーションを持たせることができる。ライトは、着信とともに点灯し、脳波測定用電極(背面に設置された電極2002、2003、右側面2008、左側面2007に設置された電極2010、2009)の位置を明確にする。またライティングにより暗がり等においても脳波測定用電極の場所をわかりやすく示すことができるため、ユーザは、間違いなく脳波測定用電極が配置された部分、すなわち側面に設置された電極2002、2003、又は背面に設置された電極2009、2010を掌握することができる。また、背面に設置されたライト2004、2005、側面に設置されたライト2011、2012、2013、2014、前面に設置されたライト2016、2017は、スマートフォンケースの背面2001、左側面2007、右側面2008、及び前面2015に実装されているため、スマートフォンがどのような状態で置かれていても着信及び、電極の場所を正確にユーザに知らせることができる。
【0345】
図20Dは、スマートフォンケース(背面2001、右側面2008、左側面2007、前面2015)をスマートフォン2018に装着し、前面から見た図である。
【0346】
スマートフォン2018とスマートフォンケース(背面2001、右側面2008、左側面2007、前面2015)とによる認知機能検査システムでは、第3実施形態で示したアラーム、電子書籍のページめくり、映像コンテンツの再生、スマートフォンの起動処理、温度の測定、ゲームが実施可能である。
【0347】
(メガネフレームの例)
図21Aは、本発明の認知機能検査装置101における脳波測定部105を、メガネやサングラスのフレーム2101に実装した場合の例である。
【0348】
以下ではメガネを例に説明する。脳波測定部2705を実装したメガネは、フレーム2101に脳波を測定するための電極(2102、2103、2104、2105)及び信号処理装置222、ADC223、検出された電位を無線で送信する通信モジュール227を備える。
【0349】
ここで、メガネフレーム上の4つの電極は、装着時の体との接触状況により、双極用の電極として組み合わせて使用することができる。少なくとも2箇所が体と接触していることにより脳波を測定できる。4つの電極(2102、2103、2104、2105)により、最大3チャンネルの脳波(例えば、2102と2103の組み合わせで1チャンネル、2104と2105の組み合わせで1チャンネル、2102と2104あるいは2105の組み合わせで1チャンネル)を測定することが可能である。3チャンネルの脳波を測定するためには、すべての電極が体に接している必要がある。
【0350】
ADでは側頭葉の部分から悪化することが知られているため、2102と2103の電極の組み合わせ、あるいは2104と2105の電極の組み合わせを優先して測定する。あるいはそれらの組み合わせによる測定結果を優先する。信号処理装置222、ADC223、検出された電位を無線で送信する通信モジュール227は、フレームの末端の部分に備える(2106、2107)。信号処理装置222、ADC223、通信モジュール227の実装場所は、2106、2107に限定されるものではない。
【0351】
測定された脳波の電位は、信号処理し増幅した後、ディジタル信号に変換し、あらかじめペアリングしておいたスマートフォン2109に転送し処理する。メガネの装着の仕方により、すべての電極で電位が検出されなかった場合には、スマートフォン2109の画面に警告を出してユーザに知らせる。電気の供給には、フレーム2101に備えた小型電池2108を使用する。
【0352】
フレーム2101と連携する、認知機能検査装置にはスマートフォンの他にもたとえば、電子書籍、タブレットPC2110、TV、PCがある。
【0353】
図21Cにフレーム2101と連携するタブレットPC2110、
図21Dにフレーム2101と連携するTVセット(TV本体2111、リモコン2112)の例を示した。TVセットは、TV本体2111とリモコン2112を含んで構成される。
【0354】
フレーム2101とスマートフォン2109、電子書籍、タブレットPC2110、TVセット(TV本体2111、リモコン2112)、PC(デスクトップPC、ノートPC等。ここでは図示せず)などから成る認知機能検査システムでは、第3実施形態で示したアラーム、電子書籍のページめくり、映像コンテンツの再生、起動処理、温度の測定、ゲームが実施可能である。
【0355】
(ヘッドホンの例)
図22は、本発明の認知機能検査装置101における脳波測定部105を、ヘッドホンに実装した場合の例である。ヘッドホンのヘッドバンド2201に脳波測定用電極(2202、2203、2204、2205、2206)を備える。また、イヤーバッド(2207、2208)にも電極2209を備える。イヤーバッド(2207、2208)の電極には布タイプの電極を使用する。電極を多数設置することにより頭部の広範囲において脳波を測定することができる。両方のハウジング(2210、2211)内に信号処理装置、電位増幅器、アナログディジタルコンバータ、無線モジュールを備える(例えば2212の部分に実装。2211のハウジングにも同様に実装)。
【0356】
検出された電位は、ハウジング(2210、2211)に備えられた信号処理装置222、ADC223により処理され、同じくハウジング(2210、2211)に備えられた通信モジュール227からスマートフォン2109に送信される。
【0357】
複数チャネルの脳波を同時に測定するためヘッドホン側にバッファ用のメモリを設け測定した脳波を一旦バッファリングしてからスマートフォン2109に送信するようにしてもよい。
【0358】
図22Aのヘッドホンでは、脳波の電位の検出の仕方により、測定時に使用する電極を選択できる。
【0359】
単極誘導と双極誘導の両方が可能である。
【0360】
単極誘導では耳たぶに接する電極2209、2212を基準電位とし、ヘッドバンドに取り付けられた5つの電極のとの組み合わせが可能である。この場合最大、5チャンネルの脳波測定可能である(2209と、2202、2203、2204、2205、2206の組み合わせ)。
【0361】
双極誘導では、最大4チャンネルの脳波は測定可能である(2202と2203の組み合わせにより1チャンネル、2203と2204との組み合わせで1チャンネル、2204と2205の組み合わせで1チャンネル、2205と2206の組み合わせで1チャンネル)。
【0362】
ヘッドホンでは、上記のような電極2極の組み合わせに脳波の測定が複数チャネル測定可能である。電位の検出がよい状態の電極を2つ使用して脳波を測定する。
【0363】
上述したように、ヘッドホンでは電位が検出された複数の電極の組み合わせから最大5チャンネルの脳波を測定可能である。
【0364】
ADでは頭頂葉の部分から悪化することが知られているため、2203、2204、2205の電極からの脳波の測定を優先する。すなわち、2203と2204の組み合わせ、2204と2205の組み合わせの測定か、2209と、2203、2204、2005の電極の組み合わせによる測定を優先する。またその時の測定結果を優先して検査で使用する。
【0365】
パッド2207部分の電極2209は、同様に2208にも備えてもよい。
【0366】
その場合、装着状態に応じて2209の電極を基準電極として使用するか、2208側の電極を基準電極として使用するかを選択できる。ヘッドホン(
図22A)と連携する、認知機能検査装置にはスマートフォンの他にもたとえば、
図22Bに示すラジオ(ラジオ本体2214、リモコン2215)、タブレットPC2110、TVセット(TV本体2111、リモコン2112)、PCがある。
【0367】
ヘッドホンを用いた認知機能検査システムでも、第3実施形態で示したアラーム、電子書籍のページめくり、映像コンテンツの再生、起動処理、温度の測定、ゲームが実施可能である。
【0368】
(補聴器の例)
図23は本発明の脳波測定装置2703を、補聴器に実装した場合の例である。
【0369】
図23の補聴器が連携可能な機器にはスマートフォン以外に、ラジオセット(ラジオ本体2214、リモコン2215)、TVセット(TV本体2111、リモコン2112)、タブレットPC2110、PC等がある。
【0370】
図23Aは、脳波測定部2705を実装した耳かけ型補聴器2301の表面である。
図23Bは、耳かけ型補聴器2301の背面である。
図23Aは、耳かけ型補聴器2301装着時の図である。耳かけ型補聴器2301は、耳輪部分に機器をかけて使用する。
【0371】
耳かけ型補聴器2301は、補聴器本体2302とイヤーモールド2303とを含む。
【0372】
耳かけ型補聴器本体の(頭部に接する)背面に、脳波測定用電極(2304、2305)を備える。また補聴器本体2302には、検出した電位を処理し、増幅する信号処理装置222、ADC223、通信モジュール227を備える(これらの部品は補聴器本体2302に実装する。たとえば2306の部分に実装する)。
【0373】
電極2極(2304、2805)により双極誘導で1チャンネルの脳波が測定可能である。
【0374】
補聴器はペアで使用する場合もあるし、片方だけで使用する場合もある。ペアで使用した場合は、電位の検出状況により測定時の使用する電極を選定してもよい。ペアで使用した場合は最大2チャンネルの脳波が測定できる。
【0375】
図23Cに耳掛け型補聴器の装着例を示す。耳かけ型補聴器2301は、片方で使用してもよいしペアで使用してもよいが、片方だけで使用した場合においても脳波を測定しその測定結果をあらかじめペアリングしたスマートフォンに送信する。耳かけ型補聴器2301とスマートフォン等を連携させた認知機能検査システムでも、第3実施形態で示したアラーム、映像コンテンツの再生、起動処理、温度の測定、ゲームが実施可能である。
【0376】
(マウスの例)
図24A及び
図24Bは、本発明の脳波測定装置2703における脳波測定部2705を、無線マウス2401に実装した場合の例である。マウスは、無線であっても有線であってもよい。以下では、無線マウス2401を例に説明する。
【0377】
図24A及び
図24Bに示すように、無線マウス2401の表面には、脳波測定用電極(2402、2403)が、PC操作時に手の内側の皮膚の2箇所にしっかりと接触するように配置されている。
【0378】
(脳波測定部105をTVリモコン2501に実装した例)
脳波測定部2705を実装したTVリモコン(
図25A、
図25B)2501は、脳波測定用電極(2502、2503、2504、2505)を、TVリモコン使用時に手が接触しやすい場所に配置されている。リモコン操作時に手が接触している2箇所の電極(2502、2503、2504、2505の組み合わせのいずれか)から電位を検出し脳波を測定する(双極誘導で測定)。
【0379】
TVリモコン2501は、リモコンにより操作するテレビ本体と連携する。具体的には、測定された脳波の電位は、信号処理し増幅した後、ディジタル信号に変換し、あらかじめペアリングしておいたTV本体に転送し処理する。
【0380】
TVリモコン2501の持ち方により、脳波測定用電極2502、2503、2504、2505により電位が検出されなかった場合には、TV本体の画面に警告を出してユーザに知らせる。
【0381】
TVリモコン2501とTV本体からなる認知機能検査システムでは、第3実施形態で示したアラーム、映像コンテンツの再生、ゲームが実施可能である。
【0382】
(小型ロボットの例)
図26は本発明の認知機能検査装置101を対話型の小型のロボット2601に実装した場合の例である。
【0383】
図26Aはロボット2601の構成、
図26Bはロボット2601を使用して脳波を測定する際の例である。ロボット2601の頭部2602に脳波測定用電極2603、2604を備える。ロボット2601の内部にはCPU等のハードウェアからなる制御装置が内蔵され、その制御装置が認知機能検査装置として機能する。
【0384】
脳波測定用電極が実装された部分(符号2605)は、立体的になっており手を添えやすくなっている。この立体的な部分(符号2605)の表面に脳波測定用電極2603、2604が実装されている。双極誘導で脳波の電位を測定する。設置される電極は2極に限定されるわけではない。インタフェースとして動作しやすい(こどもの頭をなでるようなしぐさで手を添えるようにする)ようにする。日常の生活で違和感なく、楽しくユーザが操作できるような場所に電極を配置する。
【0385】
ロボット2601の頭部2602の正面には、操作/表示用のディスプレイ2606、音声再生用スピーカ(2607、2608)、ユーザからの音声を収集するマイク2609、ユーザを識別するための小型カメラ2610を備える。
【0386】
頭部2602の立体部分2605に手が添えられと、脳波電位が検出され、ロボット2601の表情を表示しているディスプレイ2606にオドボール課題を表示する。あるいは、スピーカ(2607、2608)からオドボール課題用の音声を再生する。音声の方向性を判断する課題を呈示できるようにするため、スピーカ(2607、2608)は操作/表示用のディスプレイ2606を挟んで左右2箇所に備える。また、マイク2609をディスプレイ2606下部に実装する。マイクやスピーカの場所は一例であり、これに限定されるわけではない。
【0387】
図26Bは、脳波測定時の動作を示している。ロボット2601の頭部2602の脳波測定用電極2603、2604に手を添えることにより脳波の電位が手の皮膚から検出され測定が開始される。オドボール課題実行中は脳波測定用電極2603、2604に手を添え続けるようにする。
【0388】
ロボットがユーザと会話しながら、着信やゲームなどに際し、オドボール課題を実行する際に頭の電極に手を添えるようにガイドするようにしてもよい。
【0389】
小型のロボット2601では、第3実施形態で示したアラーム、電子書籍のページめくり、映像コンテンツの再生、起動処理、温度の測定、ゲームが実施可能である。
【0390】
<第5実施形態>
第5実施形態では、前記実施形態の脳波技術を使用した認知機能検査装置を活用したサービスの例を示す。
【0391】
(見守り/予防サービス及び医療サービスへの適用例)
図28は、見守り/予防サービス及び医療サービスの概要を示す。本サービスのユーザは、認知機能の状態のモニタ及び維持・改善に関するサービスを受ける本人(以下本人、2801)とその家族2802である。本発明の認知機能検査装置により提供されるサービスの目的は2つである。
【0392】
1つは認知症が発症していない健常者の認知機能を定期的に測定することにより、認知機能の低下を早期に発見し認知症の発症を事前に防ぐための対策を実施できるようにすることである。このように疾患の発症前から対策を打つ医療のことを先制医療といい医療行為に含まれる。今日、先制医療においては、本発明の認知機能検査装置で測定したデータのみならず、遺伝子データや生活習慣などを含むビッグデータ活用により、疾患の原因や改善事項に対する新たな知見の発見が期待されている。
【0393】
もう1つの目的は、認知機能の低下が認められた場合、あるいは、認知症の罹患が認められた場合に、症状の経過や治療的な施策や治療に対する経過を観察するために認知機能を定期的に測定することである。
【0394】
前者の目的を達成するために見守り/予防サービスを提供する。見守り/予防サービスは認知症予防サービス会社2803、サービスを受ける本人2801とその家族2802から成る。状況によっては、この構成に介護サービス機関2804が加わる。
【0395】
本人2801とその家族2802(両方あるいは本人、あるいは家族のみ)は、認知機能に関する測定結果により、認知機能の状況をモニタし認知機能に異常がないかを見守る認知症予防サービス会社2803に加入する。更に、必要に応じて本人2801及びその家族2802は介護サービス機関2804にも加入する。認知症予防サービス会社に対してのサービス料は本人2801が負担してもよいし、家族2802が負担してもよい。家族2802は本人2801を見守る位置づけである。本人2801が見守られているか把握していてもよいし把握していなくもよい。
【0396】
認知症予防サービス会社2803は、本発明の認知機能検査装置から測定したデータを収集し、それらのデータを分析することにより本人2801の認知機能の状態把握し、本人2801あるいは、その家族2802に分析結果及びそれに対するアドバイスを提供する。本人2801あるいはその家族2802から相談を受けそれに対しての回答も行う。
【0397】
本人2801が介護サービス機関2804に加入している場合、介護サービス機関2804は、本人2801あるいはその家族2802の許可を得て、認知症予防サービス会社2803に対して本人2801の日常生活などのデータや情報を提供し、本人2801の介護に対するアドバイスを受けることができる。また、必要に応じて認知症予防に対する対策などに対する相談をし、認知症予防サービス会社2803から相談に対する回答を得ることができる。
【0398】
介護サービス機関2804は、認知症予防サービス会社2803より得たアドバイスに基づき本人2801に対して、ケアサービスを提供する。たとえば、日々の運動やレクリエーションが認知機能の改善に役立つようであればそのようなケアサービスを実施する。更に実施したケアサービス後の認知機能に対する効果を確認するために、本発明の認知機能検査装置で認知機能を測定した結果を認知症予防サービス会社2803に提供するとともに、その家族にも情報を提供する。本人に家族がいない場合、あるいは本人の希望があれば、直接本人2801に情報を提供してもよい。
【0399】
介護サービス機関2804はまた、本人2801に関する日常的な情報を家族2802に提供することにより、ケアサービス内容についての具体的な依頼を家族から受けることができる。
【0400】
以上は、本発明の認知機能検査装置及び認知機能検査システムを見守りサービスに適用した場合の例である(
図28の破線右側がこれにあたる)。
【0401】
次に、上述後者の目的を達成するため医療サービスを提供する。
医療サービスは認知症予防サービス会社2803、認知症及びその前段階にある軽度認知障害や認知機能の低下している健常者に対して検査及び治療を実施する医療機関2805により提供される。状況によっては、この構成に介護サービス機関2804が加わる。
【0402】
認知症予防サービス会社2803及び医療機関2805は、本人2801及びその家族2802の同意を得て本人に関する情報を共有しサービスを提供する。
本人2801とその家族2802(両方あるいは本人、あるいは家族のみ)は、認知機能に異常が認められた場合に、医療機関2805と連携し、対策のためアドバイスを本人2801及びその家族2802に提供する認知症予防サービス会社2803に加入する。
【0403】
医療機関2805は、認知機能の低下が認められた場合に精密検査を実施し診断を行う。また、診断の結果に応じて治療及び予防のための施策を実施する。
【0404】
先に説明した見守りサービスは主に問題となる認知機能の低下が認められない場合のサービスである。見守りサービスでは認知機能の低下を検知し、異常が検知された場合に初めて医療機関2805との連携を開始する。見守りサービスはスクリーニング的な位置づけであり診断を実施するものではない。しかし認知機能の低下が検知されかつこれが認知症発症の段階には至っていない場合においては、医療機関2805と連携し積極的に対策を講じる。
【0405】
認知症予防サービス会社2803はサービスの会員(本人2801とその家族2802)から入手した膨大なデータに基づき、会員に対して適切なサービスを実施する。ただし、医療行為に関しては医療機関2805と連携して実施する。
【0406】
認知症予防サービス会社2803は医療行為及び提供したサービスに対する効果についてもデータを収集し、そのデータの解析から未だ解明されていない認知症発症のメカニズムやその対策についての仮説を生成し、医療機関2805に提供することができる。今日ビッグデータの解析にはAIが担いつつあり、新たな知見の発掘や仮説の生成が期待されている。
【0407】
医療機関2805はAIによる膨大なデータ及び情報の解析結果に基づき、診断及びその対策や治療についての決定を行う。
【0408】
データ及び情報の解析結果から得られた知見は医療行為とならない範囲のものであれば、会員(本人2801及びその家族2802)に直接提供することもできる。医療行為に当たるものは、医療機関2805から提供する。医療行為と非医療行為の境界は、認知症に対する医療行為の範囲に応じて変化するものであり明確ではない。医療行為の範囲は、時間の経過とともに変化する可能性があるためである。
【0409】
本発明の認知機能検査装置のその他の適用例は、主に高齢者を対象とした自動車運転能力(認知機能をベースにした)検査/定期的モニタサービスである。例えば、高齢者の運転免許の更新時以外にも定期的に刺激に対する反応や状況に対する判断能力などを確かめる必要がある。