特許第6871370号(P6871370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871370
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】微細構造化通路ノズル
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/00 20060101AFI20210426BHJP
   B05B 1/02 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   A61M11/00 D
   B05B1/02
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-521021(P2019-521021)
(86)(22)【出願日】2017年11月6日
(65)【公表番号】特表2019-532739(P2019-532739A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(86)【国際出願番号】CN2017109589
(87)【国際公開番号】WO2018082699
(87)【国際公開日】20180511
【審査請求日】2019年4月19日
(31)【優先権主張番号】62/418,195
(32)【優先日】2016年11月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/418,174
(32)【優先日】2016年11月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511030530
【氏名又は名称】微邦科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MICROBASE TECHNOLOGY CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シュ−ピン・シェ
(72)【発明者】
【氏名】イ−トン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】イ−ティン・リン
(72)【発明者】
【氏名】ポ−チュアン・チェン
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−529754(JP,A)
【文献】 特表2001−518377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00
B05B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入り口及び出口と、板状体と、複数の突起体と、複数のピラーとを備え、エアアトマイザーに使用される微細構造化通路モジュールであって、
前記入り口は、液体が入るためのものであり、前記入り口から前記出口に向かう方向が液体流れ方向と定義され、
前記板状体は、前記出口と前記入り口との間に配置される第1の領域と第2の領域を含み、
前記複数の突起体は、前記液体流れ方向に延在する複数の列をなすように前記第1の領域に配列され、前記複数の列は、前記第1の領域にわたって、前記液体流れ方向と実質的に垂直する方向に配列され、前記複数の列同士の間に通路が定義され、
前記通路は、前記液体流れ方向に沿って幅が実質的に同じように延在し、かつ、前記複数の列毎における何れか2つの前記突起体は、トンネルによって互いに離間され、
複数のピラーは、前記第2の領域と、前記通路における前記第2の領域に近接する位置とに配置され、前記複数のピラーの間に複数のチャネルが構成され、前記通路における前記複数のピラーは、前記複数の通路を流れる液体の流れ抵抗を増加し、
前記複数の突起体と前記複数のピラーとは、前記板状体の一部であり、前記板状体から突出するように形成される、ことを特徴とする、微細構造化通路モジュール。
【請求項2】
前記液体は、前記複数のトンネルを通じて前記複数の通路を流れる、ことを特徴とする、請求項1に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項3】
前記トンネル毎は幅よりも長さが大きい、かつ、各前記トンネル毎の長さは、前記突起体毎の長さ又は幅に等しい、ことを特徴とする、請求項1に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項4】
前記複数のトンネルは、異なる幅を有する、ことを特徴とする、請求項1に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項5】
前記複数のトンネルは同じ幅を有する、ことを特徴とする、請求項1に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項6】
前記第1の領域における前記突起体と前記ピラーとの間の空間は、前記チャネルの一部である、ことを特徴とする、請求項1に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項7】
前記複数のピラーはマトリックス状に配置されている、ことを特徴とする、請求項1に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項8】
前記複数のピラーは、六角形状に配置されている、ことを特徴とする、請求項1に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項9】
前記第2の領域のピラー密度が複数の前記通路におけるピラー密度よりも大きい、ことを特徴とする、請求項1に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項10】
スプレー速度が167〜170m/sである、ことを特徴とする、請求項1に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項11】
前記複数の通路の総表面積に対する、前記複数のピラーが前記複数の通路内で占める総表面積の比は、5〜6%である、ことを特徴とする、請求項1に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項12】
前記総表面積の比が約5.5%である、ことを特徴とする、請求項11に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項13】
任意の2つの隣接するピラー間の最短距離が1μmより大きい、ことを特徴とする、請求項1に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項14】
前記板状体が、前記第2の領域に位置され前記出口に向かって傾斜している2つの側壁を備える、ことを特徴とする、請求項1に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項15】
前記複数のピラーは、前記液体が前記板状体を横切って流れる流速を調整するために用いられる、ことを特徴とする、請求項1に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項16】
前記複数の列は互いに平行に形成される、ことを特徴とする、請求項1に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項17】
前記複数の列毎における前記複数の突起体は、前記液体流れ方向と実質的に垂直する方向に延在する、ことを特徴とする、請求項1に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項18】
前記第2の領域における任意の2つの隣接するピラー間の最短距離が少なくとも8μmである、ことを特徴とする、請求項1に記載する微細構造化通路モジュール。
【請求項19】
液体が入るための入り口と、液体が出るための出口と、板状体と、複数の壁部と、複数のピラーとを備え、エアアトマイザーに使用される微細構造化通路モジュールであって、
前記入り口から前記出口に向かう方向が液体流れ方向と定義され、
前記板状体は、前記出口と前記入り口との間に位置される第1の領域と第2の領域を含み、
前記複数の壁部は、前記第1の領域の上壁の幅にわたって配置され、前記複数の壁部の間に複数の通路が定義され、前記複数の通路は、前記液体流れ方向に沿って幅が実質的に同じように延在し、
前記複数のピラーは、前記第2の領域と、前記通路における前記第2の領域に近接する位置とに配置され、前記複数のピラーの間に複数のチャネルが定義され、
前記複数のピラーは、前記液体が前記板状体を横切って流れる流速を調整するために用いられ、前記複数の通路における前記複数のピラーは、前記複数の通路を流れる前記液体の流れ抵抗を増加するために用いられ、前記複数の通路の総表面積に対する、前記複数のピラーが前記複数の通路内で占める総表面積の比は、5〜6%であり、
前記複数の壁部と前記複数のピラーとは、前記板状体の一部であり、前記板状体から突出するように形成される、微細構造化通路モジュール。
【請求項20】
前記複数のピラーは、前記液体の方向を変更させ、それにより、液体の流れ抵抗を増大させる、ことを特徴とする、請求項19に記載する微細構造化通路モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2016年11月6日に出願された米国特許仮出願第62/418,147号および2016年11月6日に出願された米国仮出願第62/418,195号の優先権を主張し、それらのすべての内容を引用し本開示に盛り合わせる。
【0002】
本発明は、微細構造化通路モジュールに関し、具体的には、エアアトマイザーに使用される微細構造化通路モジュールに関する。
【背景技術】
【0003】
エアアトマイザー(Aerosolizer)は、噴霧器(Nebulizer)又は霧化装置(Atomizer)としても知られる。吸入のために患者に薬物を送達するように使用される。特に、薬液は、より容易かつより効率的な吸入および吸収のために微粒子又は液滴を有するエアロゾルに分解される。粒径は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)または喘息、あるいは液体薬剤自体の要件などの様々な呼吸状態に応じて調整することができる。各治療において同じ正確な量の薬物を投与することもまた患者にとって非常に重要である。言い換えれば、優れたエアロゾル化剤は、薬剤の無駄又は過剰投与の危険性を減らすために、それぞれの操作ごとに固定平均粒径を有する正確な投薬量の薬剤を送達することができなければならない。
【0004】
図1を参照する。図1を参照すると、例示的なエアアトマイザーは、上部ケーシング、下部ケーシング、ノズル組立体、パイプ、付勢要素および貯蔵容器を含む。準備中、ばねなどの付勢要素は、上部ケーシングと下部ケーシングとの相対的な動きによって引っ張られる。その間に、一定量の薬液がパイプによって貯蔵容器からノズル組立体に引き出され、エアロゾル化する準備が整う。エアロゾル化装置が作動されると、張力がかけられていない付勢要素によって生成された力がノズル組立体に向かって一定量の薬液をノズル組立体を通過するように押し、それによって吸入用のエアロゾルを生成する。別の例示的なエアアトマイザーおよびその動作機構は、米国特許第5964416号明細書(米国特許出願第08/726219号)の開示を参照することができる。
【0005】
図1に示すように、加圧薬液は、AからA’の方向、すなわち高圧点から低圧点へ移動する。液体薬剤はノズル組立体内に引き込まれて強制的に送り込まれ、それを通してエアロゾルが生成されて排出される。エアロゾル化の間、エアロゾル化装置内の構成要素間で適切なシール状態が維持されることが重要です。そうでなければ、結果としてエアロゾル化効果が損なわれる可能性がある。例えば、ノズル組立体での漏れは圧力損失を招く可能性があり、それは不正確な投与量または不適切なエアロゾル粒子サイズの送達をもたらし得る。適切なシール状態を達成するために、エアアトマイザーの構成要素は、慎重かつ正確に製造および組み立てられなければならない。しかしながら、エアアトマイザーは、通常ミリメートル以下の規模の小型サイズに形成されるため、適切なシール状態を達成することは困難であり、費用がかかる傾向もある。さらに、異なる幾何学的形状の小型構成要素は、高圧(通常5〜50MPa、即ち、約50〜500(Bar))環境で磨耗しやすくなる可能性がある。
【0006】
別の態様では、ノズル組立体は、加圧薬液をエアロゾル化して微粒子/液滴にしてエアアトマイザーから一定の速度で出ることができるかどうかにおいて極めて重要な役割を果たす。図1に示すように、加圧薬液は中央接続管を通ってノズル組立体に至ってノズルを通って移動する。 加圧薬液は高速でノズルに流入する。該ノズルは、正確な投与量を所望のエアロゾル形態にエアロゾル化するように、制御された方法で液体薬剤の流速を濾過して低下させる。上述のことは、ノズル内部構造の特別設計を通して達成され得る。該ノズルの不適切な設計は、エアロゾル化プロセス全体の閉塞を招く可能性があり、これはエアアトマイザーの寿命を短くする可能性があり、または投与量精度に影響を与える可能性もある。
【0007】
エアアトマイザーにおいて使用される典型的なノズルは、異なる幾何学的形状を有する複数の要素を含む。例えば、細長い突起などの特定の形状を有するいくつかの要素がフィルターとして使用される。異なる形状を有するいくつかの他の要素、例えば円筒形の突起は、ノズル内の液体の流れを制御するための案内システムを構成するために使用される。要するに、関連技術で使用されるノズルは、所望のエアロゾル化効果を達成するために、異なる構造的および/または機能的特性を有する複数の要素の組み合わせおよび相互作用を必要とする。しかしながら、ノズルのサイズが小さいため、その中の流体制御は容易ではない。ノズル内の要素の構造、寸法および配置は、ノゼルを効果的にするために注意深く設計および実施される必要がある。結果として、ノズルの設計および製造のためのコストは高くなる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5964416号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、より複雑でない構造、設計および配置の要素を有するノズル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エアアトマイザーにおいて使用される微細構造化通路モジュールについて開示している。前記通路モジュールは、上部ケーシングが被せられた板状体により形成される。
【0011】
前記板状体は、さらに第1の領域及び第2の領域を含む。また、下記において、前記液体の流れ方向とは、入り口の側面に対して垂直である方向である。前記板状体における第1の領域は、液体が入る入り口を含む。かつ、前記第1の領域は、複数の突起体を含み、複数の突起体は液体流れ方向に沿って複数の行に配置され、かつ、複数の突起体は前記第1の領域の全幅にわたって複数の列に配置される。かつ、前記複数の列の間に、複数の通路が画定される。また、前記複数の突起体は、長尺状に互いに実施的に平行に形成される。また、複数の列の間の複数の通路は、液体の流れ方向に対応するように配置され、液体流れ方向に沿えて配置する突起体同士では互いにトンネルにより離間される。前記第2の領域は、複数のピラーを含む。第1の領域において、通路の少なく一部でも、複数のピラーを含む。前記ピラーの間に形成された複数のチャネルは、薬液が流れるように使用される。それらの通路における複数のピラーは、自身に流れる液体の流れ抵抗を増大することができる。前記突起体とピラーは、前記板状体に一部であり、前記板状体から突出するように形成される。
【0012】
特定の実施形態において、前記液体はトンネルを介して複数の通路を通って流れる。
【0013】
特定の実施形態において、前記トンネルの長さはその幅よりも大きい。また、前記トンネルの長さは、前記突起体の長さ又は幅に等しいとなる。
【0014】
特定の実施形態において、前記複数のトンネルは異なる幅を有する。
【0015】
特定の実施形態において、前記複数のトンネルは同じ幅を有する。
【0016】
特定の実施形態において、第1の領域における前記突起体とピラーとの間の空間では、前記チャネルの一部である。
【0017】
特定の実施形態において、前記複数のピラーは、マトリックス状に配置されている。
【0018】
特定の実施形態において、前記複数のピラーは、六角形状に配置されている。
【0019】
特定の実施形態において、前記第2の領域におけるピラーの密度は、通路におけるピラーの密度よりも大きい。
【0020】
特定の実施形態において、前記スプレー速度は、167 m/sから170m/sの間である。
【0021】
特定の実施形態において、通路の総表面積に対する、前記通路内における複数のピラーの総表面積の比は、5〜6%である。
【0022】
特定の実施形態において、通路の総表面積に対する、前記通路内における複数のピラーの総表面積の比は、およそ5.5%である。
【0023】
特定の実施形態において、任意の2つの隣接するピラー間の最短距離は1μmより大きい。
【0024】
特定の実施形態において、前記板状体は、第2の領域に、前記出口に向かって傾斜する2つの側壁を有する。
【0025】
特定の実施形態において、前記複数のピラーは、前記液体の流速を調整するために用いられる。
【0026】
特定の実施形態において、前記複数の列は平行である。
【0027】
特定の実施形態において、前記液体流れ方向に配置される複数の突起体は互いに平行に形成されると共に、液体の流れ方向に直線に配置される。
【0028】
特定の実施形態において、第2の領域における任意の2つ隣接するピラー間の最短距離は少なくとも8umである。
【0029】
本発明はさらに、エアアトマイザーに適用する微細構造化通路モジュールを提供する。前記通路モジュールは、上部ケーシングが被せられた板状体によって形成される。前記板状体は、第1の領域及び第2の領域を備える。それにおいて、液体の流れ方向は、入り口の面に対して垂直である方向と定義される。前記板状体における第1の領域は、液体が入るための入り口を含む。前記第1の領域は、全幅にわたって配置された複数の壁をさらに含む。なかでも、第1の領域における複数の壁の間に複数の通路が画定される。また、複数の通路は液体の流れ方向に対応している。前記第2の領域は、複数のピラーを含む。第1の領域における通路の少なくとも一部も複数のピラーを含む。前記ピラーの間に薬液が流れるための複数のチャネルが画定される。通路の総表面積に対する通路における複数のピラーで占められる総表面積の比は、5〜6%の間である。それらの通路における複数のピラーは、さらに液体の流速を調整するように用いられる。前記突起体及びピラーは、前記板状体から突出して前記板状体の一部に構成される。
【0030】
特定の実施形態において、通路の総表面積に対する、通路における複数のピラーで占められる総表面積の比は、およそ5.5%である。
【発明の効果】
【0031】
結果として本発明が提供するノズルは、そのようなノズルを製造するためのコストが下げられる一方で、全体のエアロゾル化の質および効率を改善するであろう。したがって、患者はより費用対効果の高い治療法を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】従来のエアアトマイザーを示す側面模式図である。
図2】本発明による1つの実施形態に係るエアアトマイザーを示す断面模式図である。
図3A】本発明の実施形態による微細構造化通路モジュールを示す断面模式図である。
図3B】本発明の実施形態による微細構造化通路モジュールを示す断面模式図である。
図3C】本発明の実施形態による微細構造化通路モジュールを示す断面模式図である。
図3D】本発明の実施形態による微細構造化通路モジュールを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明における複数の実施形態は、添付の図面の図に限定ではなく例として示されており、要素は全体を通して同じ参照番号で指定される。特に説明されない限り、図面は一定の縮尺ではない。
【0034】
図面は概略的なものにすぎず、限定的なものではない。図面において、要素のいくつかのサイズは誇張されていることがあり、説明の目的のために一定の縮尺で描かれていない。寸法および相対寸法は、本発明の実施に対する実際の縮小に必ずしも対応しない。本発明における参照符号は、本願請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。各図面における同様の参照記号は、同様の要素を示している。
【0035】
本開示の実施形態の作成および使用は、以下に詳細に論じられる。しかしながら、以下の実施形態は、多種多様な特定の状況で具体化することができる多くの適用可能な発明の概念を提供することを理解されたい。説明した特定の実施形態は、実施形態を製造および使用するための特定の方法の単なる例示であり、本開示の範囲を限定するものではない。
【0036】
様々な図および例示的な実施形態において、同じ参照番号は同じ要素を示すために使用される。ここで、添付の図面に示されている例示的な実施形態を詳細に参照する。可能な限り、同じまたは類似の部分を指すために図面および説明において同じ参照番号が使用されている。図面において、形状および厚さは明瞭さおよび便利さのために誇張されていることがある。本発明における説明によれば、その説明は、特に本開示による装置の一部を形成するか、またはより直接的に協働する要素に向けられる。具体的に図示または説明されていない要素は様々な形態を取り得ることを理解されたい。本明細書を通して「実施形態」または「特定の実施形態」と言及した場合、その実施形態に関連して説明した特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所での「実施形態」または「特定の実施形態」という句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。以下の図は一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。むしろ、これらの図は単に説明のためのものである。
【0037】
図面における様々な模式図において、類似の参照番号を使用して類似または類似の要素を指定し、本開示の例示的な実施形態を図示および説明する。図面は必ずしも原寸に比例して描かれているわけではなく、場合によっては、図面は例示目的で誇張されおよび/または簡略化されている。当業者であれば、本開示の以下の例示的な実施形態に基づいて、本開示の多くの可能な用途および変形形態を理解するである。
【0038】
[定義]
【0039】
ある要素が別の要素の「上に」あると言及されるとき、それは他の要素の上に直接あることができ、または介在要素が存在することができることが理解されるであろう。対照的に、ある要素が別の要素の「直上に」あると言われるとき、介在する要素は存在しないと理解されたい。
【0040】
単数形「1つ」、「ある物」および「前記」は、文脈が明確に示さない限り、複数形も含むことを意図していることが理解されるであろう。さらに、「底部」および「上部」などの相対的な用語は、本明細書では、図に示されるように、1つの要素と他の要素との関係を説明するために使用され得る。
【0041】
ある要素が他の要素上に配置されると説明されているのは、ある要素が他の要素の「上」または「下」などのいずれの方位に配置されることが理解されるであろう。したがって、「上に」という例示的な用語は、上および下の両方の向きを包含することができる。
【0042】
本明細書で使用される「非対称」という用語は、区画の断面の形状が長手方向平面によって同様の半分に分割できないことを指す。したがって、前述の定義によれば、非対称形状の範囲は、円形、楕円形、および正多角形を除いた形状を含む。
【0043】
本明細書で使用される「トンネルの幅」又は「通路の幅」などの用語「幅」は、通路の側面(例えば、トンネル或いは通路)における長さが最短の距離を指す。
【0044】
本明細書で使用される「およそ」、「約」という用語は、量、持続時間などの測定可能な値を指すとき、指定された値から±10%、より好ましくは±5%の変動を包含することを意味する。そのような例示で、は開示された方法を実行するのに適切である。
【0045】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらによく理解されるように、一般的に使用される辞書に定義されているものなどの用語は、関連技術および本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであると共に、ここで明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0046】
[詳細な説明]
図2は、本発明の実施形態に係るエアアトマイザーを例示する側面断面模式図である。前記エアアトマイザー90は、ポンプ室904とバネ室906とを有するケース902を含む。付勢要素9062(例えば、バネ)では、ケース902結合され、より具体的にはばね室906に取り付けられる。バネ室906はまた、薬液912が貯蔵される貯蔵容器908を保持する。薬液912は、エアアトマイザー90の事前作動に応答して、パイプ910を介して貯蔵容器908から引き出されることができる。特に作動の前に、ケース902は回転される。バネ9062は、ケース902の回転による張力によって緊張状態になるように引っ張られている。それに対応して、薬液912は貯蔵容器908からポンプ室904に引き込まれ、エアロゾル化する準備が整う。エアロゾル化プロセスは、エアアトマイザー90が作動したときに開始する。作動されると、解放機構(図示せず)が作動し、バネ9062が緊張状態から非緊張状態に解放される。上そのような動作は、ポンプ室904において、微細構造化通路モジュール1(すなわち、ノズル)が存在する輸液装置950を通って液体薬剤912に押す力をもたらす。言い換えれば、薬液は、微細構造化通路モジュール1を通過することによってエーロゾル化される。微細構造化通路モジュール1制御された正確な送達方法で所望の粒径を有するエアロゾルを生成することができるように特に設計されている。その結果、水溶液またはエタノール溶液などのエアロゾル化薬液は、輸液装置950から出て、次に患者吸入のためにエアアトマイザー90から出る。
【0047】
微細構造化通路モジュール1は、薬液を微細粒子又は液滴を有するエアロゾルに分解することができるエアアトマイザー90の重要な構成要素である。前記エアアトマイザー90における微細構造化通路モジュール1は、微細構造濾過及び案内システムを有する構成要素であり、これは複数のマイクロスケール要素と、マイクロスケール要素によって画定される複数の通路とからなる。薬液が高速で前記微細構造化通路モジュール1内に移動すると、マイクロスケール要素は流れ薬剤を部分的に遮断し、それを小粒子に分解する。さらに、マイクロスケール要素および通路の構成は流れ抵抗を増大させ、それによって液体の流速を低下させる。しかしながら、薬液が出口を出るとき、薬液の流速は微細構造化通路モジュール1の漏斗形出口のために即座に増加し、それ故に特定サイズの粒子及び量を有する濾過された薬液はエアロゾル化され噴霧される。
【0048】
図3A〜3Dを参照する。図3A〜3Dは、それぞれ本発明のいくつかの実施形態による微細構造化通路モジュールを示す断面模式図である。
【0049】
図3Aを参照する。図3Aを参照すると、微細構造化通路モジュール1が開示されている。前記微細構造化通路モジュール1は、板状体10を含み、それはシリコンから作ることができ、幅が約2.5mm、長さが約2mm、深さが約700μmである。板状体10は、上幅約2.5mm、長さ約2mm、深さ約625μmのガラス上部ケーシング(図示せず)で覆われており、かくしてチャンバーが画定されている。薬液(図示せず)は、そのチャンバーの一端で入り口102を介して該チャンバーに入る。得られたエアロゾル50は、反対側の端部で出口104を介して該チャンバーから出る。前記入り口102は約2mmの幅を有し、これは出口104よりも広い。チャンバー内の薬液は、入り口102から出口104へ実質的に一般的な方向に沿って流れる。微細構造化通路モジュール1内の薬液の流れ方向は、入り口102の側面に対して垂直であり、図面ではAからA’への方向によって定義される。薬剤の少なくとも一部は流路モジュール1の傾斜壁106に沿って流れ、液体流を互いに、好ましくは約90°で衝突させる。その結果、エアロゾル50が患者の吸入用に生成される。
【0050】
板状体10は一般に、境界線Bによって2つの部分に分割することができ、それらは、入り口102に近接する第1の領域と、出口104に近接する第2の領域である。板状体10はまた中央ブロック2のようないくつかの構成要素、例えば、中央ブロック2、スペーサーブロック3、ピラー4、及び突起体5を含む。特に、第1の領域に、突起体5、ピラー4、及びスペーサーブロック3が配置され、第2の領域にピラー4のみが配置される。突起体5、ピラー4、スペーサーブロック3、及び中央ブロック2は、液体の流れ方向に対して横切れ方向に板状体10から突出するようになっている。1つの選択肢としては、これらの構成要素は、微細構造化通路モジュール1をエッチングすることによって板状体10の1つの部分として形成されてもよい。特定の実施形態では、板状体10の約5〜6μmの深さがエッチングされてそのような一体構成要素を形成する。なお、板状体10の製造方法は、これに限定されない。板状体10は、成形、溶接または印刷のような関連技術において知られている他の手段によって製造することができる。不可欠な構成要素のさらなる特徴および構成は、以下でさらに説明される。
【0051】
同じように図3Aを参照する。中央ブロック2は、第2の領域における出口104に近接する位置に配置される。中央ブロック2は略球形に形成され、約37.35μmの曲率半径を有する。中央ブロック2は、液体が2つの狭い通路15を介して中央ブロック2と傾斜壁106との間を迂回することによって出口104のみに流れることができる程度まで、出口104に近接した区画のかなりの部分を閉塞する。前述の構成は、液体を互いに反対方向、すなわち2つの対向通路15に沿って反対方向の流れに向ける。言い換えれば、微細構造通路モジュール1は、所望のエアロゾル化の目的で2つの出口を含むと理解することができる。その結果、微細構造化通路モジュール1を出る対向する液体ジェットは、通路モジュール1の外部であるが出口104に近い位置で他の場所に衝突し、エアロゾル50を形成する。中央ブロック2は、各通路15が幅約8μm、長さ53.8μmとなるように寸法決めされている。さらに、各通路15の総面積は約44μm2である。
【0052】
第1の領域における入り口102に近接する位置にそれぞれの幅が約50μm、長さが約200μmの複数のスペーサーブロック3が配置される。スペーサーブロック3細長い形状をしており、その方向は液体の流れ方向AからA’に沿っている。さらに、スペーサーブロック3は、第1の領域の入り口102の全幅にわたって複数の列に配置されてもよい。図示のように、複数の突起体5が第1の領域の全幅にわたって平行な列52に配置されている。線形列に形成される突起体5からなる複数の平行な列52は、第1の領域に配置されている。なかでも、各平行列52の間には、薬液が流れるための通路18がある。液体は複数の通路を介してAからA’の方向に流れる。通路18の寸法は、幅約77μm、長さ1.3mmである。列52は、幅約22μm、長さ1.3mmの一般寸法を有することができる。列52は、液体の流れ方向AからA’と平行になるように配置されてもよい。通路18は、2つの平行な列52の間の領域として定義されるので、列52との長さは同じである。
【0053】
2つの隣接するスペーサーブロック3の間の距離は約150μmであり、これは通路18の幅の約2倍である。微細構造化通路モジュール1に入る未濾過の薬液については、2つのスペーサーブロック3の間のスペースは予備フィルターとして使用される。2つの列52の間の空間は二次フィルタとして使用される。例えば、150μmより大きい任意の粒径は、2つのスペーサーブロックの間の空間によって最初に濾過されており、そして、8μmよりも大きいいかなる粒子サイズも、通路内の2つの隣接する三角柱の間の空間によって後で濾過される。また、通路は粒子によって完全に遮断されないので、濾過機能は液体の流れ方向に影響を及ぼさない。
【0054】
図3Aが示すように、突起体5は、幅約2.5μm、長さ22μmの細長い要素である。好ましい実施形態では、突起体5は、突起体5の幅が液体の流れ方向AからA’に平行である向きに位置決めされる。しかしながら、突出部5の向きは限定的ではない。各列52において、複数の突起体5はさらにAからA’の方向に線状に配列されてもよい。
【0055】
線状に形成される突起体5同士はトンネル17によって隔てられている。各トンネルの幅は、エアロゾル化装置または薬剤の要件に応じて同じであっても同じでなくてもよい。ある実施形態では、図3Cに示すように、各トンネル17の幅は同じである。トンネル17の寸法は、幅約3μm、長さ約22μmである。特定の実施形態では、トンネル17は、図3Aおよび図3Bに示すように、それぞれ約3μmおよび11μmの少なくとも2つの異なる幅を含む。なお、好ましい実施形態では、トンネルの幅は1μm以上でなければならない。
【0056】
トンネル17と通路18の方向は互いに平行ではない。本発明では、トンネル17と通路18とは互いに垂直である。薬液はトンネル17を通って通路18間を流れることができる。
【0057】
ある実施形態では、各突起体5の長さは各トンネル17の長さに等しく形成されると共に、トンネル17の幅よりも大きいとなる。別の実施形態では、各突起体5の幅は各トンネル17の長さに等しい。本発明の図面では、側壁108に側壁108と接触して配置された列52があることを示しているが、それは限定的であることを意味しないことに留意されたい。例えば、側壁108は、独立した要素であり得る、すなわち、一体的な構成要素のいずれとも接触しない。
【0058】
本発明はさらに、トンネル17を含まないように構成された別の微細構造化通路モジュール1を提供する。すなわち、図3Dに示すように、列52は1つの中実の連続突出部または壁54でできている。このような壁54の設計および配置は、壁54がトンネル17によって分離された個々の突起体5から作られていないことを除いて、柱52のそれと類似している。壁54は方向AからA’に延びる1つの中実構造である。トンネルではないため、通路18内の薬液は互いに連絡しないことがある。各壁54は、幅が約22μm、長さが1.3mmである。
【0059】
図3A図3Dに示すように、微細構造化通路モジュール1は、複数のピラー4をさらに含む。ピラー4は、第2の領域、すなわち出口104に近い位置に配置されている。特定の実施形態では、ピラー4は第1の領域にも延在して、通路18の領域の一部を占めてもよい。ピラー4は、約5〜6μmの高さで板状体10から突出するマイクロスケールの要素である。
【0060】
本ピラー4は、濾過機能を提供するのに適した任意の幾何学的形状であり得る。ある実施形態において、ピラー4は少なくとも3つの側壁を含み、板状体と平行な方向におけるピラー4の断面は、非対称または対称であり得る。さらに、ピラー4のそのような断面は、入口102に面する少なくとも1つの頂点を含むと共に、交差する2つの壁によって形成される角度が90°未満である。したがって、ピラー4の断面は、円形、三角形、菱形などであり得る。本発明による実施形態では、ピラー4の断面は、約8μmの長さの側壁と入口102に面する頂点とを有する三角形である。入口に面する頂点の2つの壁によって形成される角度は約60°である。特定の実施形態では、ピラー4の断面は、正三角形、二等辺三角形、またはスカレントライアングルであり得る。
【0061】
本開示の別の実施形態では、ピラー4の断面は、図3Bに示すように、その球端部が出口104に面している液滴である。さらに特定の実施形態では、ピラー4の断面は、約10μmの直径を有する円である。微細構造化通路モジュール1内の複数のピラー4は、全て同じ形状および寸法を有することができる。しかしながら、図3Cを参照すると、特定の実施形態では、ピラー4は異なる形状および寸法を有することができる。例えば、第2の領域内のピラー4は、第1の領域内のピラー4とは異なる形状および寸法を有する。さらに、第1および第2の領域におけるピラー4の密度もまた異なり得る。
【0062】
別の態様では、ピラー4は、液体の流れを少なくとも部分的に妨げるようにマトリックス状に配置されてもよく、それにより、流れ抵抗が増大し、流速が低下する。好ましい実施形態では、ピラー4は六角形に配置されている。具体的には、六角形デザインは、1つの中心ピラーと、六角形の6つの頂点を形成する6つの隣接ピラーとを含む。そのような配置は、液体に対する適切な流れ抵抗を提供する一方で、全体的な液体閉塞の可能性を減らすことができる。
【0063】
特定の実施形態では、複数のピラー4間のスペース/経路はチャネル16として定義される。そのようなチャネル16はまた、第1の領域における、ピラー4と突起体5との間のスペース及び経路を含む。好ましい実施形態では、任意の2つの隣接するピラー間の最短距離は、任意のトンネルの幅よりも大きくなるようにされている。
【0064】
ここで、本発明におけるピラー4の特定の配置、より具体的にはその密度に注目する。ここでは、ピラー4が一定の空間内で占める総表面積と、そのような一定の空間の総表面積との比をピラー密度と定義する。第2の領域のピラー密度は、およそ13.9%であることが好ましい。
【0065】
特に、通路内のピラー密度は、通路内のピラー4によって占められる総表面積と通路の総表面積との間の比として定義される。また、第2の領域におけるピラー密度が、第2の領域においてピラー4が占める総表面積と第2の領域の総表面積との間の比である。ある実施形態において、通路18では一部みがピラー4を含むので、通路18内のピラー密度は、第2の領域内のピラー密度よりも小さい。通路18内のピラー密度は、5〜6%、好ましくは約5.5%であるべきである。
【0066】
ピラー密度の差のために、液体が第1の領域から第2の領域に入るとき、流れ抵抗は増加する。本発明におけるエアロゾル化装置は、約1.4から1.5秒の有効スプレー持続時間を有し、斯くしてエアロゾル50を送達することができ、これはエアロゾル速度が比較的遅いので望ましい。エアロゾルの速度が遅いと、患者の口やのどにたまる残留物が少なくなるため、エアロゾルの送達が改善され、より制御される。逆に、エアロゾルの速度が速すぎると、望ましい吸入効果が得られないことがある。例えば、エアロゾル50は、患者が適切かつ完全に吸入するには速すぎる移動をすることがあり、あるいはエアロゾル50が患者の口/のどによって遮断されることがある。エアロゾル50の速度およびスプレー持続時間は、ビデオ記録またはレーザー光回折などの異なる方法によって測定することができることに留意されたい。測定方法が異なると、結果が異なる場合がある。
【0067】
ここで、ピラー4およびトンネル17の配置および構成に注目する。ピラー4は、(i)薬液の流れの方向を調整及び案内し、(ii)薬液の流路抵抗および流速を変えるために役立ち、(iii)エアロゾルの質が影響を受けないように、液体薬剤をより小さい粒子に濾過する。ピラー4による流れの方向の調整は、異なるチャネル16を通って流れる液体をもたらす。液体の流れの少なくとも一部がピラー4と衝突すると、流れ抵抗の増大および流速の低下により、ピラー4の周りに乱流が生じる可能性がある。トンネル17は、少量の薬液が通路18を横切って横方向に流れることを可能にし、それによって薬剤の全体的な流速も低下させる。本発明は、以下の表1に示されるように、ピラー4のいくつかの設計およびそれらの効果を提供する。
【0068】
【表1】
【0069】
表1は、本発明の微細構造化通路モジュールの第1の領域内の通路18に配置されたピラー4の4つの異なる構成およびそれらの対応するスプレー速度を示す。そのような微細構造化通路モジュールの構成は複数の突起体5によって形成された複数のトンネル17も含む。以下の説明における用語「チャンネル幅」は、通路18内の任意の2つの隣接するピラー4間の最短距離を表す。ここでは、ピラーの形状と配置が第2ゾーンのスプレー速度に与える影響については説明しない。噴霧速度は、計算流体力学(ComputationalFluidDynamics;CFD)ソフトウェアによって測定される。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、通路内の最適ピラー密度は約5.46%であり、所望のスプレー速度は167から170m/sの間である。
【0071】
ここで、1番のノズル(以下「1番」)と2番のノズル(以下「2番」)を比較する。表1によれば、1番と2番との差は、通路16の幅、および通路18内でピラー4が占める総表面積である。具体的には、2番の通路16の幅は1番のよりも大きいとなるが、2番では通路内のピラー4の全表面積は1番よりも小さい。表1によれば、1番のスプレー速度は2番よりも小さいことがわかり、それは上記本開示の内容と一致している。
【0072】
さらに、2番と3番のノズル(以下、3番)を比較する。2番と3番との間の違いは、チャネル16の幅、および通路内のピラーによって占められる総表面積である。3番は、約12μmと約9.2μmの2つの異なるチャネル幅を含むことに留意されたい。表1によれば、3番の通路18内でピラーが占めている総面積は2番のそれよりも大きく、ピラー密度がより高くなる。結果として、3番におけるスプレー速度は2番よりも遅く、これは上記本発明の開示と一致している。
【0073】
次に、1番と3番に目を向ける。違いは、3番が2つの異なるチャネル幅を有することである。しかしながら、結果として生じる液体噴霧速度は類似している(168.5m/sおよび168.0m/s)。したがって、第1の領域において異なるチャネル幅を有することは、ピラー4の総表面積および形状が同じである限り、スプレー速度に影響を及ぼさない。言い換えれば、適切なピラー密度を維持することは適切なスプレー効率を生み出し、それは本開示の精神と一致している。
【0074】
さらに、3番のノズルと4番のノズル(以下、4番)とを比較した。4番における複数の柱の断面は円形である。表1によれば、4番が最大のチャネル幅を有し、4番のピラーの総数は、1番、2番または3番のピラーの総数よりも著しく少ない。4番の通路で占められているピラーは、1番および3番のピラー密度と同様である。したがって、4番のピラー密度は、1番および3番のピラー密度と同様である。従って、4番の噴霧速度は、1番および3番の場合と同様である。このような結果は、スプレー速度が第1の領域のピラー密度に関係していることを示しており、これは本開示の教示を裏付けるものである。そして、チャネルの幅はスプレー速度を制御する要素ではないかもしれない。
【0075】
【表2】
【0076】
表2は、本発明の他の構成およびそれらがスプレー速度に及ぼす影響を示す。具体的には、データは、中実壁54構成を有する微細構造化通路モジュールを突起体5/トンネル17構成と比較する。ここで、5〜8番のノゼルは全て円柱を有する。5、6および8番は壁54の構成を有し、7番はトンネル17の構成によって分離された突起体5を有する。
【0077】
表1に関連して、特に4番および5番を見ると、5番のスプレー速度は4番よりも高いが、他のデータは比較的類似したままである。4番と5番との間の顕著な違いは、4番がトンネルを有し、5番が中実壁54の配置を有することである。この結果は、トンネル17の存在がスプレー速度を低下させることによってエアロゾル化を促進することを実証している。トンネルはある量の液体が通路を横切って横方向に流れることを可能にし、それによって流れ抵抗を増加させそして流速を減少させるので、これは上記本発明の教示と一致している。
【0078】
6番および7番のデータは、トンネル17の存在がスプレー速度を低下させ、所望のエアロゾル持続時間を提供し得ることをさらに支持する。
【0079】
5番および8番のデータは、第2の領域における適切なピラー密度もまた所望のスプレー速度を達成し得ることを裏付けている。他のすべての要因は同じままですが、8番でピラー密度を上げると、169m/sのより望ましいスプレー速度を達成するのに役立つ。
【0080】
6番と8番は、6番の第2の領域のチャネルの幅が8番の第2の領域のチャネルよりも大きい(15um対8μm)ことを除いて、ほぼ同一の構成を共有する。結果として生じるスプレー速度は、第2の領域内の2つの隣接するピラー間の最短距離、すなわちチャネルの幅が、好ましくは約8μmであることを示唆している。
【0081】
以上に開示される内容は本発明の好ましい実施可能な実施例に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではないので、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき為された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0082】
1 通路モジュール
2 中央ブロック
3 スペーサーブロック
4 ピラー
5 突起体
10 板状体
102 入り口
104 出口
106 傾斜壁
108 側壁
15 狭い通路
16 チャネル(Channel)
17 トンネル(Tunnel)
18 通路(Passage)
912 薬液
50 エーロゾル
52 突起列
54 壁
90 エアアトマイザー
902 ケース
904 ポンプ室
906 バネ室
9062 バネ
908 貯蔵容器
910 パイプ
950 輸液装置
A−A’ 液体流れ方向
B 境界線
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D