【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの1段静翼は、
圧力面、負圧面および後縁を含む翼型を部分的に形成する第1部分と、
前記第1部分に対して前記翼型の前縁側に位置し、凹部又は凸部を有する第2部分と、を備え、
前記第2部分の前記凹部又は前記凸部は一対の側壁面を有し、
前記一対の側壁面の間に形成される角度が90度未満である。
【0012】
燃焼器とは別体として設けられた1段静翼を用いることにより、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減可能である反面、燃焼器の出口部と1段静翼との間の隙間を介した複数の燃焼器の出口部間の音響伝搬により、複数の周波数で燃焼振動が発生する場合がある。
この点、上記(1)の構成によれば、1段静翼の前縁側に位置する凹部又は凸部を、燃焼器側の相手側部材(例えば燃焼器又は燃焼器と1段静翼との間に設けられる部材)と嵌合させたときに、1段静翼の凹部または凸部の一対の側壁面と、相手側部材とを、軸方向においてオーバーラップさせることができる。また、1段静翼の凹部又は凸部の一対の側壁面の間に形成される角度が90度未満であるので、ガスタービンの運転中の相対的な軸方向の位置関係が設計時に意図したものとずれた場合等に起因して、燃焼器に対して1段静翼が主として軸方向に相対変位しても、隣り合う燃焼器の出口部間を連通させる1段静翼の凹部または凸部の一対の側壁面と相手側部材との間の周方向における間隙の拡大を抑制可能である。これにより、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬を阻害することができる。よって、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。これにより、対処が必要な燃焼振動の周波数が少なくなり、ガスタービンの安定運転が可能となる。
【0013】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記第2部分は、
前記凹部又は前記凸部の隣に設けられる少なくとも一つの平坦面と、
前記少なくとも一つの平坦面と前記第1部分の前記翼型の表面との間にそれぞれ設けられ、前縁側端が前記平坦面に接続され、後縁側端が前記翼型の前記表面に連続的に接続される少なくとも一つの接続面と、
を含む。
【0014】
上記(2)の構成によれば、1段静翼の第2部分の凹部又は凸部の幅方向における隣に平坦面が設けられているので、1段静翼の凹部又は凸部と相手側部材との間に形成される音響伝搬経路が、1段静翼の凹部又は凸部の側壁面と平坦面とにより屈曲した形状を有する。これにより、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬を効果的に抑制することができる。また、上述の平坦面と翼型の表面との間に設けられる接続面は、後縁側端が翼型の表面に連続的に接続されるので、平坦面と翼型の表面とが連続的に接続されない場合に比べて、燃焼ガスの流れが乱れにくくなる。これにより、ガスタービンにおける流体損失を低減することができる。
【0015】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
各々の前記接続面は、前記平坦面との接続点における接線方向が、前記一対の側壁面の間に形成される角度の二等分線に対してなす角度が20度以下である。
【0016】
上記(1)で述べたように、1段静翼の凹部または凸部を燃焼器側の相手側部材に嵌合させれば、凹部又は凸部の一対の側壁面が相手側部材に対して軸方向にオーバーラップし、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動が小さくなる。
この場合において、上記(3)の構成のように、接続面と平坦面との接続点における接続面の接線方向が、一対の側壁面の間に形成される角度の二等分線に対してなす角度を20度以下(即ち、接続面の上記接線方向が上記二等分線に概ね沿っている)に設定しておけば、燃焼器の出口部を通過した軸方向に沿った燃焼ガスの流れを接続面によって翼型の表面へと案内することで、燃焼ガス流れの乱れを抑制することができる。これにより、ガスタービンにおける流体損失を低減することができる。
【0017】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記第2部分は、前記1段静翼の内部に形成される冷却通路に一端が開口し、前記凹部又は前記凸部の外表面に他端が開口する少なくとも一つの冷却孔を含む。
【0018】
上記(4)の構成によれば、冷却孔を介して、1段静翼の凹部又は凸部と、該凹部又は凸部が嵌合する相手側部材との間の隙間に冷却通路からの冷却流体を供給することができる。このように1段静翼の凹部又は凸部と相手側部材との間の隙間に供給される冷却流体の流れによって、1段静翼を冷却しながら、前述の隙間を介した燃焼器の出口部間での音響伝搬を抑制することができる。これにより、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を効果的に低減することができる。
【0019】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の構成において、
前記凹部又は前記凸部は、翼高さ方向における前記1段静翼の根本部とチップ部との間の長さの半分以上の長さにわたって前記翼高さ方向に沿って延在する。
【0020】
上記(5)の構成によれば、1段静翼の凹部又は凸部は、翼高さ方向における根本部とチップ部との間の長さの半分以上の長さにわたって翼高さ方向に沿って延在するように設けられているので、該凹部又は凸部を、燃焼器側の相手側部材に嵌合させることで、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬を効果的に抑制することができる。
【0021】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記凹部又は前記凸部は、前記1段静翼の根本部からチップ部に亘って翼高さ方向に沿って設けられている。
【0022】
上記(6)の構成によれば、1段静翼の凹部又は凸部は、1段静翼の根本部からチップ部に亘って翼高さ方向に沿って設けられているので、該凹部又は凸部を、燃焼器側の相手側部材に嵌合させることで、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬をより効果的に抑制できる。
【0023】
(7)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、
径方向に沿った径方向壁部を含む出口部を有するとともに、周方向に配置される複数の燃焼器と、
前記周方向に隣り合う前記燃焼器の前記出口部のうち互いに対向する一対の前記径方向壁部の下流側に位置する、上記(1)乃至(6)の何れかに記載の1段静翼と、を備える。
【0024】
上記(7)の構成によれば、1段静翼の前縁側に位置する凹部又は凸部を、燃焼器側の相手側部材(例えば燃焼器又は燃焼器と1段静翼との間に設けられる部材)と嵌合させたときに、1段静翼の凹部または凸部の一対の側壁面と、相手側部材とを、軸方向においてオーバーラップさせることができる。また、1段静翼の凹部又は凸部の一対の側壁面の間に形成される角度が90度未満であるので、ガスタービンの運転中の相対的な軸方向の位置関係が設計時に意図したものとずれた場合等に起因して、燃焼器に対して1段静翼が主として軸方向に相対変位しても、隣り合う燃焼器の出口部間を連通させる1段静翼の凹部または凸部の一対の側壁面と相手側部材との間の周方向における間隙の拡大を抑制可能である。これにより、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬を阻害することができる。よって、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。これにより、対処が必要な燃焼振動の周波数が少なくなり、ガスタービンの安定運転が可能となる。
【0025】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、
前記一対の前記径方向壁部は、軸方向において、前記1段静翼の前記凹部若しくは前記凸部又は該1段静翼と前記一対の前記径方向壁部との間に保持される中間部材に対してオーバーラップしており、
前記1段静翼は、該1段静翼の内部に形成された冷却通路に一端が開口し、少なくとも一方の前記径方向壁部又は前記中間部材と前記1段静翼との間の隙間に他端が開口する少なくとも一つの冷却孔を含む。
【0026】
上記(8)の構成によれば、燃焼器の一対の径方向壁部は、軸方向において、1段静翼の凹部若しくは凸部又は中間部材に対してオーバーラップしている。このため、ガスタービンの運転中の相対的な軸方向の位置関係が設計時に意図したものとずれた場合等に起因して、燃焼器に対して1段静翼が主として軸方向に相対変位しても、隣り合う燃焼器の出口部間を連通させる1段静翼の凹部または凸部の一対の側壁面と、径方向壁部又は中間部材との間の周方向における間隙の拡大を抑制し、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬を阻害することができる。
また、上記(8)の構成によれば、冷却孔を介して、1段静翼の凹部又は凸部と、径方向壁部又は中間部材との間の隙間に冷却通路からの冷却流体を供給することができる。このように、1段静翼の凹部又は凸部と、径方向壁部又は中間部材との間の隙間に供給される冷却流体の流れによって、1段静翼を冷却しながら、前述の隙間を介した燃焼器の出口部間での音響伝搬を抑制することができる。これにより、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を効果的に低減することができる。
【0027】
(9)幾つかの実施形態では、上記(7)又は(8)の構成において、
前記燃焼器から離れる方向に前記1段静翼が前記軸方向にて第1距離だけ変位したとき、前記側壁面の法線方向に沿った前記隙間の大きさの増加量が前記第1距離よりも小さい。
【0028】
上記(9)の構成によれば、ガスタービンの相対的な軸方向の位置関係が設計時に意図したものとずれた場合等により、燃焼器から離れる方向に1段静翼が軸方向に変位しても、隣り合う燃焼器の出口部間を連通させる1段静翼の凹部または凸部の一対の側壁面と相手側部材との間の上記法線方向における間隙の拡大を抑制可能である。これにより、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬を阻害することができる。よって、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。
【0029】
(10)幾つかの実施形態では、上記(7)乃至(9)の何れかの構成において、
前記周方向に隣り合う前記燃焼器の対の各々について、前記一対の前記径方向壁部の下流側に前記1段静翼が設けられ、
前記周方向に隣り合う一対の前記1段静翼の間の周方向位置に設けられる他の1段静翼をさらに備え、
前記1段静翼は、前記他の1段静翼の前縁よりも上流側まで延在している。
【0030】
通常、ガスタービンにおいて、周方向に沿った静翼列を構成する静翼の枚数は、周方向に配列される複数の燃焼器の個数よりも多い。
この点、上記(10)の構成によれば、周方向に隣り合う燃焼器の対の各々について1段静翼が設けられるとともに、周方向に隣り合う一対の1段静翼の間には他の1段静翼が設けられるので、静翼列を構成する静翼の枚数を確保できる。よって、静翼列としての性能低下を抑制しながら、上記(7)で述べたように、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。
【0031】
(11)幾つかの実施形態では、上記(7)乃至(10)の何れかの構成において、
前記1段静翼は、前記燃焼器とは別に設けられ、
前記1段静翼と前記一対の前記径方向壁部との間に保持される中間部材又は前記1段静翼の前記凹部又は前記凸部が、軸方向と平行又は前記軸方向に対してなす角度が45度未満である壁面を有し、
前記一対の前記径方向壁部の少なくとも一方は、前記軸方向において、前記壁面に対してオーバーラップしている。
【0032】
上記(11)の構成によれば、軸方向において、燃焼器出口部の一対の径方向壁部に対して1段静翼又は中間部材の軸方向と平行又は45度未満の傾斜角の壁面がオーバーラップしている。このため、ガスタービンの運転中の相対的な軸方向の位置関係が設計時に意図したものとずれた場合等に起因して、燃焼器に対して1段静翼が主として軸方向に相対変位しても、隣り合う燃焼器の出口部間を連通させる径方向壁部と1段静翼又は中間部材との間の周方向における間隙の拡大を抑制し、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬を阻害することができる。よって、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。これにより、対処が必要な燃焼振動の周波数が少なくなり、ガスタービンの安定運転が可能となる。
【0033】
(12)幾つかの実施形態では、上記(7)乃至(11)の何れかの構成において、
前記1段静翼の前記凸部は、前記一対の前記径方向壁部の少なくとも一方により形成される凸部受入空間に嵌合される。
【0034】
上記(12)の構成によれば、1段静翼の凸部が、一対の径方向壁部の少なくとも一方により形成される凸部受入空間に嵌合されることにより、一対の径方向壁部の少なくとも一方が、軸方向において、1段静翼の凸部の壁面に対してオーバーラップする。よって、(11)で述べたように、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。
【0035】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)の構成において、
前記1段静翼の前記凸部は、前記一対の前記径方向壁部のそれぞれに設けられたハーフ溝によって形成される前記凸部受入空間に嵌合される。
【0036】
上記(13)の構成によれば、1段静翼の凸部が、一対の径方向壁部のそれぞれに設けられたハーフ溝によって形成される凸部受入空間に嵌合されることにより、一対の径方向壁部のそれぞれが、軸方向において、1段静翼の凸部の壁面に対してオーバーラップする。よって、(11)で述べたように、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。
【0037】
(14)幾つかの実施形態では、上記(12)の構成において、
前記1段静翼の前記凸部は、前記一対の前記径方向壁部の前記軸方向における長さの違いによって形成される前記凸部受入空間に嵌合される。
【0038】
上記(14)の構成によれば、1段静翼の凸部が、一対の径方向壁部の軸方向における長さの違いによって形成される凸部受入空間に嵌合されることにより、一対の径方向壁部の一方が、軸方向において、1段静翼の凸部の壁面に対してオーバーラップする。よって、(11)で述べたように、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。
【0039】
(15)幾つかの実施形態では、上記(7)乃至(11)の何れかの構成において、
前記ガスタービンは、
前記一対の前記径方向壁部の少なくとも一方により形成される中間部材受入空間に嵌合するように、前記1段静翼と前記一対の前記径方向壁部との間に設けられる前記中間部材を備える。
【0040】
上記(15)の構成によれば、1段静翼の凹部又は凸部が、中間部材受入空間に嵌合する中間部材に嵌合されることにより、中間部材が、軸方向において、1段静翼の凹部又は凸部の壁面に対してオーバーラップする。よって、(11)で述べたように、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。
【0041】
(16)幾つかの実施形態では、上記(7)乃至(11)の何れかの構成において、
前記1段静翼の前記凹部には、前記一対の前記径方向壁部の少なくとも一方により形成される突出部、または、前記1段静翼と前記一対の前記径方向壁部との間に保持される中間部材が嵌合される。
【0042】
上記(16)の構成によれば、1段静翼の凹部に、一対の径方向壁部の少なくとも一方により形成される突出部、又は、中間部材が嵌合されることにより、突出部又は中間部材が、軸方向において、1段静翼の凹部の壁面に対してオーバーラップする。よって、(7)で述べたように、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。
【0043】
(17)幾つかの実施形態では、上記(16)の構成において、
前記1段静翼の前記凹部には、前記一対の前記径方向壁部の下流側端にそれぞれに設けられた前記突出部が嵌合される。
【0044】
上記(17)の構成によれば、
1段静翼の凹部に、一対の径方向壁部の下流側端にそれぞれ設けられた突出部が嵌合されることにより、軸方向において、突出部が1段静翼の凹部の壁面に対してオーバーラップする。よって、(7)で述べたように、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。
【0045】
(18)幾つかの実施形態では、上記(16)の構成において、
前記一対の前記径方向壁部は、
前記周方向に隣り合う前記燃焼器のうち第1燃焼器の前記出口部に属する第1径方向壁部と、
前記周方向に隣り合う前記燃焼器のうち第2燃焼器の前記出口部に属し、前記第1径方向壁部よりも軸方向にて下流側まで延在する第2径方向壁部と、
を含み、
前記1段静翼の前記凹部には、前記突出部としての前記第2径方向壁部の下流側端が嵌合される。
【0046】
上記(18)の構成によれば、1段静翼の凹部に、突出部としての第2径方向壁部の下流側端が嵌合されることにより、軸方向において、突出部が1段静翼の凹部の壁面に対してオーバーラップする。よって、(7)で述べたように、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。
【0047】
(19)幾つかの実施形態では、上記(7)乃至(18)の何れかの構成において、
前記ガスタービンは、前記1段静翼と前記一対の前記径方向壁部との間に保持されるシール部材を備える。
【0048】
上記(19)の構成によれば、シール部材によって、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬をより効果的に抑制することができる。
【0049】
(20)幾つかの実施形態では、上記(19)の構成において、
前記1段静翼の前記第2部分は、少なくとも一つの前記凹部を含み、
前記1段静翼の前記凹部の各々には、一の前記シール部材が嵌合される。
【0050】
上記(20)の構成によれば、1段静翼の前縁側に位置する凹部に、該1段静翼と一対の径方向壁部との間に保持されるシール部材が嵌合されるので、シール部材による音響伝搬の抑制効果が向上し、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を効果的に低減することができる。
また、ガスタービンの運転中の相対的な軸方向の位置関係が設計時に意図したものとずれた場合等に起因して、シール部材に対して1段静翼が軸方向に変位しても、シール部材が1段静翼の凹部に嵌合して凹部の側壁面とシール部材とが軸方向にオーバーラップしているため、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬をより一層抑制可能である。
【0051】
(21)幾つかの実施形態では、上記(20)の構成において、
前記シール部材は、該シール部材のうち前記1段静翼の前記凹部に嵌合する一端部とは反対側の他端部が、前記一対の前記径方向壁部の少なくとも一方により形成されるシール受入空間に嵌合される。
【0052】
上記(21)の構成によれば、シール部材の一端部は1段静翼の凹部に嵌合されるとともに、シール部材の他端部は一対の径方向壁部により形成されるシール受入空間に嵌合されるので、シール部材による音響伝搬の抑制効果が向上し、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を効果的に低減することができる。
また、ガスタービンの運転中の相対的な軸方向の位置関係が設計時に意図したものとずれた場合等に起因して、燃焼器の径方向壁部に対してシール部材が軸方向に変位しても、シール部材が燃焼器のシール受入空間に嵌合して該シール受入空間の側壁面とシール部材とが軸方向にオーバーラップしているため、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬をより一層抑制可能である。
【0053】
(22)幾つかの実施形態では、上記(21)の構成において、
前記シール部材の前記他端部は、前記一対の前記径方向壁部のそれぞれに設けられたハーフ溝によって形成される前記シール受入空間に嵌合される。
【0054】
上記(22)の構成によれば、シール部材の一端部は1段静翼の凹部に嵌合されるとともに、シール部材の他端部は一対の径方向壁部のそれぞれに設けられたハーフ溝により形成されるシール受入空間に嵌合されるので、シール部材による音響伝搬の抑制効果が向上し、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を効果的に低減することができる。
また、ガスタービンの運転中の相対的な軸方向の位置関係が設計時に意図したものとずれた場合等に起因して、燃焼器の径方向壁部に対してシール部材が軸方向に変位しても、シール部材が燃焼器のシール受入空間に嵌合して該シール受入空間の側壁面とシール部材とが軸方向にオーバーラップしているため、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬をより一層抑制可能である。
【0055】
(23)幾つかの実施形態では、上記(21)の構成において、
前記シール部材の前記他端部は、前記一対の前記径方向壁部の一方に設けられた溝によって形成される前記シール受入空間に嵌合される。
【0056】
上記(23)の構成によれば、シール部材の一端部は1段静翼の凹部に嵌合されるとともに、シール部材の他端部は一対の径方向壁部の一方に設けられた溝により形成されるシール受入空間に嵌合されるので、シール部材による音響伝搬の抑制効果が向上し、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を効果的に低減することができる。
また、ガスタービンの運転中の相対的な軸方向の位置関係が設計時に意図したものとずれた場合等に起因して、燃焼器の径方向壁部に対してシール部材が軸方向に変位しても、シール部材が燃焼器のシール受入空間に嵌合して該シール受入空間の側壁面とシール部材とが軸方向にオーバーラップしているため、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬をより一層抑制可能である。
【0057】
(24)幾つかの実施形態では、上記(19)乃至(23)の何れかの構成において、
前記シール部材は、金属クロスを含む。
【0058】
上記(24)の構成によれば、金属クロスを用いた簡素な構成を有するシール部材により、上記(19)乃至(23)の構成を実現することができる。
【0059】
(25)幾つかの実施形態では、上記(19)の構成において、
前記シール部材は、前記一対の前記径方向壁部の少なくとも一方により形成されるシール受入空間を上流側室と下流側室とに仕切るように、前記シール受入空間内に設けられ、
前記1段静翼は、凸部が設けられた上流側端部を含み、
前記1段静翼の前記凸部は、前記シール部材に対して摺接するように前記シール受入空間の前記下流側室に少なくとも部分的に挿入されている。
【0060】
上記(25)の構成によれば、1段静翼の凸部は、一対の径方向壁部により形成されるシール受入空間に設けられたシール部材に対して摺接するように、該シール受入空間に少なくとも部分的に挿入されているので、1段静翼の凸部の一対の側壁面とシール部材とが、軸方向においてオーバーラップする。よって、上記(19)で述べたように、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。
【0061】
(26)幾つかの実施形態では、上記(25)の構成において、
前記シール部材は、前記1段静翼の前記凸部を受け入れる凸部受入空間を有し、
前記1段静翼の前記凸部は、前記シール部材の前記凸部受入空間内において前記シール部材に対して軸方向に摺動可能に構成されている。
【0062】
上記(26)の構成によれば、1段静翼の凸部は、シール部材の凸部受入空間内においてシール部材に対して摺動可能であるので、軸方向における1段静翼のシール部材に対する相対変位、すなわち、燃焼器に対する相対的変位が許容されやすくなる。よって、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を効果的に低減することができる。
【0063】
(27)幾つかの実施形態では、上記(26)の構成において、
前記シール部材は、
前記凸部受入空間を形成するとともに前記1段静翼の前記凸部に対して前記軸方向に摺動自在に構成されたスライド部と、
前記周方向において前記1段静翼の前記凸部の両側にそれぞれ位置するように、前記スライド部の下流側端から前記周方向に突出して設けられる一対のフランジ部と、
を含み、
前記一対の前記径方向壁部は、それぞれ、前記シール部材の前記一対のフランジ部の下流側に位置し、前記シール部材の下流側への移動を規制するための規制部を含む。
【0064】
上記(27)の構成によれば、シール部材のスライド部は、1段静翼の凸部に対して軸方向に摺動自在であるとともに、シール部材のフランジ部は、径方向壁部の規制部によって、下流側への移動が規制されている。これにより、軸方向における1段静翼のシール部材に対する相対変位、すなわち、燃焼器に対する相対的変位を許容しながら、燃焼器からのシール部材の脱落を防止できる。
【0065】
(28)幾つかの実施形態では、上記(26)の構成において、
前記シール部材は、
前記凸部受入空間を形成するとともに前記凸部を挟持するピンチ部を有する板バネ部と、
前記周方向において前記1段静翼の前記凸部の両側にそれぞれ位置するように、前記板バネ部の前記ピンチ部から下流側に向かって前記周方向にて互いに離れるように設けられる一対の脚部と、
を含み、
前記一対の前記径方向壁部は、それぞれ、前記シール部材の前記一対の脚部の下流側に位置し、前記シール部材の下流側への移動を規制するための規制部を含む。
【0066】
上記(28)の構成によれば、1段静翼の凸部は、シール部材のピンチ部によって挟持されて、凸部受入空間内を軸方向に移動可能であるとともに、シール部材は、規制部において下流側への移動が規制されている。これにより、軸方向における1段静翼のシール部材に対する相対変位、すなわち、燃焼器に対する相対的変位を許容しながら、燃焼器からのシール部材の脱落を防止できる。
【0067】
(29)幾つかの実施形態では、上記(19)の構成において、
前記1段静翼は、凸部が設けられた上流側端部を含み、
前記1段静翼の前記凸部は、前記一対の前記径方向壁部により形成される凸部受入空間に嵌合し、
前記シール部材は、前記凸部受入空間を形成する前記一対の前記径方向壁部の軸方向に沿った壁面と前記凸部との間に設けられる。
【0068】
上記(29)の構成によれば、シール部材は、凸部受入空間を形成する一対の径方向壁部の軸方向に沿った壁面と1段静翼の凸部との間に設けられるので、径方向壁部と、1段静翼の凸部又はシール部材との間の周方向における間隙の拡大を抑制し、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬を阻害することができる。よって、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を効果的に低減することができる。
【0069】
(30)幾つかの実施形態では、上記(29)の構成において、
前記シール部材は、前記一対の前記径方向壁部の前記軸方向に沿った前記壁面または該壁面に対向する前記凸部の壁面に固定されるワイヤシールを含む。
【0070】
上記(30)の構成によれば、一対の径方向壁部の軸方向に沿った壁面又は該壁面に対向する1段静翼の凸部の壁面に固定されるワイヤシールを用いた簡素な構成により、径方向壁部と、1段静翼の凸部又はシール部材との間の周方向における間隙の拡大を抑制し、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬を阻害することができる。
【0071】
(31)幾つかの実施形態では、上記(29)の構成において、
前記シール部材は、前記一対の前記径方向壁部の前記軸方向に沿った前記壁面または該壁面に対向する前記凸部の壁面に固定されるガスケットを含む。
【0072】
上記(31)の構成によれば、
一対の径方向壁部の軸方向に沿った壁面または該壁面に対向する1段静翼の凸部の壁面に固定されるガスケットを用いた簡素な構成により、径方向壁部と、1段静翼の凸部又はシール部材との間の周方向における間隙の拡大を抑制し、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬を阻害することができる。
【0073】
(32)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの静翼ユニットは、
上記(1)乃至(6)の何れかに記載の少なくとも一つの1段静翼と、
前記1段静翼の径方向内側又は径方向外側の少なくとも一方に設けられるシュラウドと、を備え、
前記1段静翼の前記第2部分は、軸方向において、前記シュラウドの上流側端面の位置まで延在し、
前記1段静翼は、周方向において前記凹部又は前記凸部の隣に設けられ、前記シュラウドの前記上流側端面に連なる平坦面を形成する平坦部を含む。
【0074】
上記(32)の構成によれば、1段静翼の前縁側に位置する凹部又は凸部を、燃焼器側の相手側部材(例えば燃焼器又は燃焼器と1段静翼との間に設けられる部材)と嵌合させたときに、1段静翼の凹部または凸部の一対の側壁面と、相手側部材とを、軸方向においてオーバーラップさせることができる。また、1段静翼の凹部又は凸部の一対の側壁面の間に形成される角度が90度未満であるので、ガスタービンの運転中の相対的な軸方向の位置関係が設計時に意図したものとずれた場合等に起因して、燃焼器に対して1段静翼が主として軸方向に相対変位しても、隣り合う燃焼器の出口部間を連通させる1段静翼の凹部または凸部の一対の側壁面と相手側部材との間の周方向における間隙の拡大を抑制可能である。これにより、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬を阻害することができる。よって、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。これにより、対処が必要な燃焼振動の周波数が少なくなり、ガスタービンの安定運転が可能となる。
また、上記(32)の構成によれば、1段静翼の第2部分の凹部又は凸部の隣に、シュラウドの上流側端面に連なる平坦面を形成する平坦部が設けられているので、1段静翼の凹部又は凸部と相手側部材との間に形成される音響伝搬経路が、1段静翼の凹部又は凸部の側壁面と平坦面とにより屈曲した形状を有する。これにより、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬を効果的に抑制することができる。また、上述の平坦面と翼型の表面との間に設けられる接続面は、後縁側端が翼型の表面に連続的に接続されるので、平坦面と翼型の表面とが連続的に接続されない場合に比べて、燃焼ガスの流れが乱れにくくなる。これにより、ガスタービンにおける流体損失を低減することができる。
【0075】
(33)幾つかの実施形態では、上記(32)の構成において、
前記1段静翼の上流側端部は、前記1段静翼の内部に形成される冷却通路に一端が開口し、前記凹部若しくは前記凸部の外表面又は前記平坦面に他端が開口する少なくとも一つの冷却孔を含む。
【0076】
上記(33)の構成によれば、1段静翼の上流側端部に設けられた冷却孔を介して、1段静翼の凹部若しくは凸部の外表面又は平坦面と、これらの外表面又は平坦面が対向する相手側部材との間の隙間に冷却通路からの冷却流体を供給することができる。このように1段静翼と相手側部材との間の隙間に供給される冷却流体の流れによって、1段静翼を冷却しながら、前述の隙間を介した燃焼器の出口部間での音響伝搬を抑制することができる。これにより、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を効果的に低減することができる。
【0077】
(34)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、
径方向に沿った径方向壁部を含む出口部を有するとともに、周方向に配置される複数の燃焼器と、
前記燃焼器とは別に設けられ、前記周方向に隣り合う前記燃焼器の前記出口部のうち互いに対向する一対の前記径方向壁部の下流側に位置する少なくとも一つの1段静翼と、を備えるガスタービンであって、
前記一対の前記径方向壁部は、軸方向において、前記1段静翼と前記一対の前記径方向壁部との間に保持される中間部材又は前記1段静翼の上流側部に対してオーバーラップしており、
前記1段静翼は、該1段静翼の内部に形成された冷却通路に一端が開口し、前記上流側部の外表面に他端が開口する少なくとも一つの冷却孔を含む。
【0078】
上記(34)の構成によれば、軸方向において、一対の径方向壁部が、1段静翼と一対の前記径方向壁部との間に保持される中間部材又は1段静翼の上流側部に対してオーバーラップしている。このため、ガスタービンの運転中の相対的な軸方向の位置関係が設計時に意図したものとずれた場合等に起因して、燃焼器に対して1段静翼が主として軸方向に相対変位しても、隣り合う燃焼器の出口部間を連通させる径方向壁部と1段静翼又は中間部材との間の周方向における間隙の拡大を抑制し、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬を阻害することができる。よって、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。これにより、対処が必要な燃焼振動の周波数が少なくなり、ガスタービンの安定運転が可能となる。
また、上記(34)の構成によれば、冷却通路からの冷却流体を、冷却孔を介して1段静翼の上流側部の外表面に向けて供給することができる。これにより、1段静翼を効果的に冷却することができる。
【0079】
(35)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、
径方向に沿った径方向壁部を含む出口部を有するとともに、周方向に配置される複数の燃焼器と、
前記燃焼器とは別に設けられ、前記周方向に隣り合う前記燃焼器の前記出口部のうち互いに対向する一対の前記径方向壁部の下流側に位置する少なくとも一つの1段静翼と、を備えるガスタービンであって、
前記1段静翼は、凹部が設けられた上流側端部を含み、
前記1段静翼の前記凹部には、前記一対の前記径方向壁部の少なくとも一方、または、前記1段静翼と前記一対の前記径方向壁部との間に保持される中間部材が嵌合される。
【0080】
上記(35)の構成によれば、1段静翼の上流側端部に設けられた凹部には、一対の径方向壁部の少なくとも一方又は中間部材が嵌合されるので、1段静翼の凹部と、一対の径方向壁部の少なくとも一方又は中間部材とを、軸方向においてオーバーラップさせることができる。
このため、ガスタービンの運転中の相対的な軸方向の位置関係が設計時に意図したものとずれた場合等に起因して、燃焼器に対して1段静翼が主として軸方向に相対変位しても、隣り合う燃焼器の出口部間を連通させる1段静翼の凹部と一対の径方向壁部の少なくとも一方又は中間部材との間の周方向における間隙の拡大を抑制し、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬を阻害することができる。よって、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。これにより、対処が必要な燃焼振動の周波数が少なくなり、ガスタービンの安定運転が可能となる。
【0081】
(36)本発明の少なくとも一実施形態に係る燃焼器アセンブリは、
径方向に沿った径方向壁部および周方向に沿った周方向壁部を含む出口部を有するとともに、周方向に設けられる複数の燃焼器を備え、
軸方向における前記径方向壁部及び前記周方向壁部の下流側端の位置は一致しており、
前記周方向に隣り合う前記燃焼器の前記出口部のうち互いに対向する一対の前記径方向壁部の少なくとも一方の下流側端に前記径方向に沿って延在する溝が形成されている。
【0082】
上記(36)の構成によれば、一対の径方向壁部の少なくとも一方の下流側端に形成された溝に対して、静翼側の相手側部材(例えば1段静翼又は1段静翼と径方向壁部との間に設けられる部材)と嵌合させたときに、溝を形成する壁面と、相手側部材とを、軸方向においてオーバーラップさせることができる。
このため、ガスタービンの運転中の相対的な軸方向の位置関係が設計時に意図したものとずれた場合等に起因して、燃焼器に対して1段静翼が主として軸方向に相対変位しても、隣り合う燃焼器の出口部間を連通させる径方向壁部の溝と1段静翼との間の周方向における間隙の拡大を抑制し、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬を阻害することができる。よって、ガスタービンの運転時に燃焼器に生じる熱応力を低減しながら、複数の燃焼器の出口部間における音響伝搬に起因した燃焼振動を低減することができる。これにより、対処が必要な燃焼振動の周波数が少なくなり、ガスタービンの安定運転が可能となる。