(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0035】
本明細書において援用され、かつ本明細書の一部を成す添付の図面は、実施形態を例証し、説明と共に、本方法およびシステムの原理を説明する役割を果たすものである。
【
図1】
図1は、TCR CDR3配列を特定する、ショートリピートのランダムシーケンシングおよびマッピングされなかったリードのネガティブセレクションの方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、治療後の腫瘍内CD8+ T細胞における有意なクローン性増殖を示す。
【
図3】
図3は、単剤療法と比較してaGITR/aPD1の併用療法後の腫瘍内CD8+ T細胞における有意なクローン性増殖を示す棒グラフである。
【
図4】
図4は、単一T細胞シーケンシングにより観察されたクローン性増殖後のT細胞系統を例示する。
【
図5】
図5は、単一細胞ソーティングしたRNAseqデータに基づく腫瘍内CD8 T細胞クローン分析を例示する。
【
図9A】
図9A〜
図9Eは、併用療法が腫瘍内高頻度CD8
+ T細胞クローンを増殖することを示す。
図9aは、腫瘍免疫療法および単一細胞ソーティング試験デザインの概略図である。
図9bは、腫瘍攻撃後8日目および11日目の単一細胞ソーティングしたRNAseqデータに基づく腫瘍内CD8
+ T細胞クローン分析を例示する。各円は単一のCD8
+ T細胞を表す。同じTCR配列を共有するT細胞を色分けし、数は、TCRβ鎖のCDR3領域の配列が続く個別のクローンの頻度を示す。8日目は、アイソタイプが配列番号290、抗GITRが配列番号269、抗PD1が配列番号270であり;11日目は、アイソタイプが配列番号291、配列番号292(それぞれ、はじめから終わりの方へ)、抗GITRが配列番号271〜273(それぞれ、はじめから終わりの方へ)、抗PD1が配列番号274〜279(それぞれ、はじめから終わりの方へ)、抗GITR+抗PD1が配列番号280〜289(それぞれ、はじめから終わりの方へ)である。
図9cは、T細胞クローン性の定量的解析である。データは、各群からの増殖したCD8
+T細胞クローンの累積頻度を示す(*、p<0.05、**、p<0.01、***、p<0.001、フィッシャーの検定)。
図9d、
図9eは、腫瘍内CD8
+ T細胞クローンからのTCRの特定、発現および機能的検証である。高頻度のTCRクローンは、AP−1ルシフェラーゼレポーター遺伝子とともにJ.RT3−T3.5 Jurkat T細胞系統にクローン化され(
図9d)、それらの反応性が、MC38(腫瘍特異的)対無関連腫瘍細胞(B16F10.9またはTRAMP−C2)に対してin vitroで試験された。
図9eは、併用療法から単離されたMC38特異的CD8
+T細胞クローンによるAP−1ルシフェラーゼレポーターバイオアッセイの代表的結果を示し、抗CD3および抗CD28刺激をポジティブコントロールとして使用した。
【
図10A】
図10A〜
図10Dは、クローン性増殖したCD8
+ T細胞における固有の遺伝子シグネチャの特定を示す。
図10aは、併用療法からのクローン性増殖したCD8
+T細胞内で上方調節された遺伝子の、アイソタイプ治療によるCD8
+T細胞または併用療法による非増殖CD8
+T細胞との比較である(11日目)。ベン図は、有意に増加した遺伝子の数を示し(p<0.01、倍率変化≦2)、図示されたCD8
+ T細胞集団と比較している。ヒートマップは、比較の間に重複する30個の遺伝子を示す。
図10bは、併用療法からのクローン性増殖したCD8 T細胞において特異的に上方調節された遺伝子の特定である。概略図およびベンズ図は、異なる比較を示す。
図10cは、累積分布関数(CDF)プロットが、合計の、クローン性増殖または非増殖のCD8
+ T細胞における、併用療法による固有に調節された遺伝子CD226の発現を示す。
図10dは、図示されたCD8
+ T細胞集団間のCD226発現レベルの倍率変化である(数字は倍率変化(fold change)を示す;NSは、有意でない)。
【
図11A】
図11A〜
図11Dは、抗腫瘍免疫性を好むCD226/TIGIT経路を相乗的に調節する併用療法を示す。
図11aは、脾臓および腫瘍の抗原特異的CD8
+ T細胞集団におけるCD226発現(MFI)のFACS分析であり、FACSプロットで示されるゲーティング戦略である。データは、二つの独立した実験のうちの代表的な一つの実験を示す(群当たりn=9〜10マウス)。グラフでは、合計CD8は左側の四本の棒であり、非特異的CD8は中央にある四本の棒であり、Ova特異的CD8は右側の四本の棒である。
図11bは、概略図が、リン酸化共刺激受容体によって採用されることが知られている細胞質チロシンキナーゼlck、Zap70、およびSLP76、PI3K(p85a)の主要な成分と一緒になって、リポソーム上のT細胞シグナル伝達に関与する様々な成分(CD3およびCD226)を再構築する、LUV(大きな単層膜リポソーム(large unilamellar vesicle))を示している。
図11cにおいて、CD226は、Shp2と結合したPD−1に対して感受性が高いが、CD3ζはそうではない。PD−1濃度を増加させながらのShp2含有反応は30分で終了し、SDS−PAGEおよびホスホチロシンウエスタンブロット(WB)にかけた。
図11dは、脾臓および腫瘍のT細胞サブセット(腫瘍移植8日後)におけるTIGIT発現のFACS分析である。データは、二つの独立した実験のうちの代表的な一つの実験を示す(群当たりn=9〜10マウス)。(*、p<0.05、**、p<0.01、***、p<0.001、一方向ANOVA、テューキーの多重比較検定)。
【
図12A】
図12A〜
図12Hは、併用療法によって誘発された抗腫瘍応答を媒介する際において重要な役割をするCD226シグナル伝達経路を示す。
図12aで、抗GITR+抗PD−1またはアイソタイプIgGを用いた免疫療法の前に、MC38腫瘍担持マウスを、CD226阻害AbまたはアイソタイプIgGのいずれかにより治療した。ここでは生存率を示している。データは、三つの独立した実験のうちの代表的な一つの実験を示す(群当たりn=5マウス)。
図12bでは、CD226 KOマウスまたはWT同腹仔をMC38腫瘍細胞で攻撃し、腫瘍移植後の6、13日目に抗GITR + 抗PD−1 AbまたはアイソタイプAbのいずれかで治療した。データは、二つの独立した実験のうちの代表的な一つの実験を示す(群当たりn=7〜8マウス)。(
図12c〜
図12e)併用療法の有効性は、CD28、OX40および4−1BB経路に依存しない。
図12cは、CTLA−4−Ig(10mg/kg)を用いたCD28伝達の阻害である。
図12dは、OX40L阻止抗体(10mg/kg)を用いたOX40シグナル伝達の阻害である。
図12eは、4−1BBL阻止抗体(10mg/kg)を用いた4−1BBシグナル伝達の阻害である。図示されるデータは生存曲線(群当たりn=10マウス)である。
図12fは、抗PD1臨床試験の概略図である。
図12gでは、腫瘍生検のRNA−seq解析が、進行した癌患者の抗PD−1 Ab治療後にCD226の転写物が著しく増加したことを示している(n=43、対応のあるt−検定)。
図12hは、図示する癌タイプの患者におけるCD226転写物発現レベルおよび全生存についてのTCGAデータ解析である。(*、p<0.05、**、p<0.01、***、p<0.001、生存分析のためのログランク検定)。
【
図13】
図13は、TCR陰性の癌または非癌細胞株を、MiTCR、TCRklass、およびrpsTCRパイプラインに関する負の対照、ネガティブコントロール:ヒトおよびマウス非T細胞株(2×100bp)として用いられたことを示す表である。
【
図14】
図14は、TCR標的シーケンシングと単一細胞シーケンシングにおけるrpsTCRパイプラインとの間のTCR検出率の比較を示す表である。
【
図15】
図15は、11日目の抗体治療により、クローン性増殖したCD8
+T細胞中で特異的に上方調節された経路を示す表である。
【
図16A】
図16A〜
図16Jは、抗GITR+抗PD−1の併用が、定着した腫瘍を相乗的に拒絶し、機能障害性T細胞を再活性化することを示す。
図16aでは、抗GITRおよび/または抗PD−1 Abで治療(6日目、13日目)した野生型C57BL/6マウスにおけるMC38腫瘍増殖である。結果は、個々のマウスの腫瘍増殖曲線を示す(二つの実験からの累積データ、群当たりn=17マウス)。上部の数字は、治療群のマウスの合計数に対する腫瘍のないマウスの数を表す。
図16bは、図示された治療での累積生存曲線である。
図16c、
図16dでは、CD8
+ T細胞依存性の長期的な腫瘍保護が、併用療法によって媒介された。C57BL/6マウスを、抗CD8、CD4、または抗CD25の枯渇抗体を用いて治療し、その後抗GITR + 抗PD−1 AbまたはコントロールAbを用いた療法を行った(方法の項を参照)。
図16cは代表的なFACSプロットが、別のAbによる枯渇効率を示す。
図16dは、異なる枯渇Abを用いた治療に伴う平均腫瘍増殖曲線であり、二つの実験のうち代表的な一つを示している(群当たりn=5マウス)。
図16e、
図16fでは、併用療法により、腫瘍内のエフェクターT細胞/T
reg比が増加している。
図16eは、代表的なFACSプロットであり、11日目の腫瘍T細胞のサブセットを示す(FoxP3対CD8、生存/単一細胞/CD45
+/CD3
+上で予めゲーティングされた細胞)。
図16fは、腫瘍攻撃後の8日目および11日目における、FACS結果の腫瘍内CD8
+ T細胞/T
reg比およびCD4
+ T
Eff 細胞/T
reg比をまとめている。データは、三つの独立した実験のうちの代表を示す(群当たりn=6〜7マウス)。
図16g〜
図16iでは、併用療法が、腫瘍内機能障害性T細胞を再活性化している。移植後11〜12日目に腫瘍を採取し、BFAの存在を用いてPMA/イオノマイシンで再刺激した単一細胞懸濁液中に解離させた。細胞を固定し、透過処理し、その後Ki67(
図16g)、グランザイムA(
図16h)、およびグランザイムB(
図16i)で細胞内染色を行った。示されるデータは、陽性細胞の割合である。(群当たりn=5〜10マウス)。
図16jでは、抗GITR+抗PD−1が、定着したマウスRENCA腫瘍を相乗的に拒絶している。Balb/cマウスを1x10
6個のRENCA腫瘍細胞を用いて0日目に皮下で攻撃し、腫瘍移植後6日目、13日目、および20日目に抗GITR(5mg/kg)および、または抗PD−1(5mg/kg)のAbで治療した。示されるデータは生存率である(群当たりn=10マウス)。(*、p<0.05、**、p<0.01、***、p<0.001、****、p<0.0001;
図16b、
図16jはログランク検定;
図16f、
図16gは、一方向ANOVA、テューキーの多重比較検定)。
【
図17】
図17は、rpsTCRパイプラインの概要を示す。ランダムプライミングのショートRNA−seqデータを使用した、TCRレパートリー分析用のバイオインフォマティクスパイプラインであるrpsTCRパイプラインの概略図である。
【
図18】
図18は、ヒトおよびマウスの初代血液細胞を使用したrpsTCRパイプラインプラットフォームの検証を示す。健康なヒトPBMCサンプルまたはマウス全血からの標的TCR−seqデータを、TCRklass単独と比較した偽陽性または偽陰性率を評価するポジティブコントロールとして使用した。固有のCDR3配列の大部分は、ベン図内の数字で示されるように、rpsTCRパイプライン、MiTCR、およびTCRklassによって検出された。rpsTCRパイプライン、MiTCRおよびTCRklass間における二乗の相関関係(R
2)を図に示した。
【
図19】
図19は、LCMV特異的T細胞クローン(P14)からのTCRが、バイオアッセイプラットフォームに対するポジティブコントロールとして使用されたことを示している。P14 TCR組換えレポーター細胞株は、LCMV感染細胞に対する特異性を示すが、腫瘍細胞株に対しては示さない。抗CD3およびCD28刺激をTCR複合体シグナル伝達のポジティブコントロールとして使用した。
【
図20-1】
図20は、併用療法からのクローン性増殖したCD8+ T細胞中で著しく強化された30個の遺伝子の発現レベルを示すバイオリンプロットを示す。示されるデータは、個別に配列決定されたCD8+ T細胞(cExp、併用療法、クローン性増殖したT細胞;cNon、併用療法、非増殖;アイソタイプ、アイソタイプ治療群からの合計CD8)中の遺伝子発現(Log2 RPMK)である。
【
図21A】
図21A〜
図21Cは、併用療法により、エフェクター機能を伴う腫瘍抗原特異的CD8
+ T細胞を増殖させることを示す。
図21aは、FACSによるMC38−OVA−β
2m−K
b細胞上のOVAペプチド−Kb複合体の表面発現の検証である。MC38−OVA−β
2m−K
bまたは空ベクターコントロールMC38細胞は、アイソタイプまたは抗Kb−SIINFEKL Abで染色される。代表的なヒストグラムを示している。
図21bは、抗GITRおよび/または抗PD−1 Abで治療されたMC38−OVA−β
2m−K
b担持マウスからの、腫瘍および脾臓のOVA特異的CD8
+ T細胞の、頻度(左側)および腫瘍重量に対して正規化された数(数/mg、右側)である。(二つの実験の代表。群当たりn=9〜10マウス)。
図21cは、併用療法による脾臓および腫瘍のCD8
+T細胞におけるOVA特異的リコール応答の増加である。BFAの存在下でSIINFEKLペプチドを用いてまたはこれを用いずに、細胞を再刺激した。IFNγの細胞内発現をFACSによって分析した。データは二つの実験を代表するものであり、群当たりn=9〜10マウスとした(*、p<0.05、**、p<0.01;***、p<0.001、
図21bでは一方向ANOVA、
図21cは双方向ANOVA、テューキーの多重比較検定)。
【
図22A】
図22A〜
図22Dは、様々なT細胞サブセットにおけるTIGIT/CD226発現レベルの単一細胞RNAレベルおよびFACS分析におけるTIGIT発現を示す。累積分布関数(CDF)プロットにより、TIGIT RNA発現(
図22a)およびFACS分析(
図22b)を示し、二つの実験の代表であり(群当たりn=9〜10マウス)、合計の、クローン性増殖(OVA特異的)または非増殖(OVA非特異的)のCD8
+ T細胞におけるTIGITの発現を示している。
図22c、MC38野生型腫瘍移植後の8日目の脾臓および腫瘍のT細胞のサブセットに対するTIGIT発現のFACS分析、各集団内のTIGIT
+細胞の割合が示されている。
図22dでは、MC38野生型腫瘍移植後の11日目の脾臓および腫瘍のT細胞サブセットにおけるCD226発現のFACS分析、各集団内のCD226
+細胞の割合が示されている。データは二つの実験を代表するものであり、群当たりn=9〜10マウスとした(*、p<0.05、**、p<0.01;***、p<0.001、一方向ANOVA、テューキーの多重比較検定)。
【
図23A】
図23A〜
図23Fは、正常なT細胞発生および恒常性機能を示すCD226
−/−マウスを示す。
図23aは、ターゲティング戦略である。マウスCD226のマウスのコーディングエクソン1〜2を、自己欠失eGFP−Neoカセット(eGFP−polyA−hUb−EM7−neo−polyA−Prm−Crei−polyA)で置換したが、それはコーディングエクソン1内の開始ATGに対するちょうど3’ではじまり、コーディングエクソン2の3’末端の13bp前までである。コーディングエクソン1〜2の間のイントロンも欠失している。カセット欠失後は、eGFP、polyA LoxP、およびクローニング部位(1141bp)は残存している。
図23bは、T細胞サブセットにおけるCD226欠失のFACS検証である。
図23cは、胸腺におけるT細胞発生のFACS解析(Tconvは、従来のT細胞;DPは、CD4/CD8二重陽性;SPは、単一陽性;DNは、CD4/CD8二重陰性)である。
図23dは、FACSによって分析された脾臓および血液中のT細胞サブセットである。
図23eは、TCR刺激に伴う炎症性サイトカイン分泌である。CD226
−/−マウスまたは野生型(WT)マウスからの脾細胞を16時間、ex vivoで抗CD3 + 抗CD28 Abで刺激した。図示されたサイトカイン放出のために上清を収集した。
図23fは、CD226
−/−マウスまたはWTマウス由来の脾臓および血液のT細胞のサブセット上のPD1およびGITRの発現レベルである。示されるデータは、平均蛍光強度(MFI)である(群当たりn=3マウス)。
【
図24A】
図24A〜
図24Gでは、CD226シグナル伝達経路が、TIGIT
−/−マウスにおける腫瘍監視の強化に必要であったことを示す。野生型マウスまたはTIGIT
−/−マウスをMC38腫瘍で攻撃し、抗CD226またはコントロールIgGで予め治療し、アイソタイプコントロール(
図24a)または抗GITR +抗PD−1いずれかでの併用療法(
図24b)を受けた。示されるデータは、二つの実験を代表する平均腫瘍増殖曲線を示す(群当たりn=4〜5マウス)。
図24cでは、FACSにより、組換えMC38腫瘍細胞上のCD155の過剰発現を検証する。
図24dでは、MC38腫瘍細胞上でCD226/TIGITのリガンド、CD155が過剰発現することが、腫瘍増殖を減速し、腫瘍拒絶反応および長期生存を促進の点で抗GITRまたは抗PD−1 Abの単剤療法(3、6、10および13日目での)と相乗効果を発揮する。示されるデータは、平均腫瘍増殖曲線(群当たりn=10マウス)である。
図24eでは、in vivoでの組換えMC38腫瘍細胞上のCD155の過剰発現が維持されている。
図24fでは、MC38腫瘍細胞上のCD155の過剰発現が、腫瘍内ではあるが脾臓ではない、FACSによって検出されたT細胞サブセットにおいて遊離CD226受容体を減少させる。
図24gでは、マウスをMC38コントロールまたはCD155過剰発現細胞で攻撃した。腫瘍攻撃後9日目に、T細胞活性化のためにFACSによって腫瘍細胞および脾臓細胞を分析した。IFNγ発現に関して、細胞内染色の前に、細胞をPMA/イオノマイシンで再刺激した(群当たりn=10マウス)。(**、p<0.01;***、p<0.001;****、p<0.0001、一方向ANOVA、テューキーの多重比較検定)。
【
図25-1】
図25は、大きい定着したMC38腫瘍に対して効能を示す、抗GITR+抗PD−1 Ab療法と局所放射線照射を組み合わせることを示す。大きい定着したMC38腫瘍担持マウスを、0または8Gyの局所放射線照射(18日目)と組み合わせて、100μgの抗GITRおよび/または抗PD−1 AbまたはアイソタイプAbで治療した(17、20、24および27日目)。aは平均腫瘍増殖曲線であり、bは個別のマウス腫瘍増殖曲線である。腫瘍のないマウスの数は、左上パネルに示されている。cは、bからの生存曲線である。データは、二つの独立した実験のうちの代表である(群当たりn=5〜6マウス)。(*、p<0.05、**、p<0.01、ログランク検定)。
【
図26】
図26は、TCRα/βレパートリーシーケンシングのためのライブラリの準備で使用されるプライマーの一覧である。
【
図27】
図27は、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールのデータセットを使用した三つの方法の比較を示す。
【
図28】
図28は、50bpのプライミングリードを使用した、miTCR、TCRklass、及びrpsTCRパイプラインによって見出された上位のCDR3を示す。
【
図29】
図29は、50bpのプライミングリードを使用した、完全VI−Nextデータセットにおいて見られる上位のCDR3を示す。
【
図30】
図30は、100bpのプライミングリードを使用した、miTCR、TCRklass、及びrpsTCRパイプラインによって見出された上位のCDR3を示す。
【
図31】
図31は、100bpのプライミングリードを使用した、完全VI−Nextデータセットにおいて見られる上位のCDR3を示す。
【
図32】
図32は、単一細胞シーケンシング及びバルクRNAシーケンシングの両方におけるCDR3の検出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本方法およびシステムに関する開示および説明に先立って、本方法およびシステムが特定の方法、特定の構成要素または特定の実装形態に限定されないことを理解すべきである。本明細書中で使用されている用語は、もっぱら特定の実施形態の説明を目的としたものであって、限定することを意図するものではないこともまた、理解すべきである。
【0037】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上に他の意味に解釈されることが明白な場合を除き、複数の指示対象を含む。本明細書中では、範囲を「約」の或る特定の値から且つ/または「約」の別の特定の値までとして表現する場合がある。そのような範囲を表現する場合、別の実施形態では、或る特定の値から且つ/または別の特定の値までが包含される。同様に、値が近似値として表現されている場合には、先行する「約」を使用することにより、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。各範囲の終点は、他の終点と関連して且つ他の終点とは独立に有意であることが、更に理解されるであろう。
【0038】
「任意選択的な」または「任意選択的に」は、後述されている事象または状況が起こる場合もあれば起こらない場合もあることを意味すると共に、この記載には、前述の事象または状況が起こる場合の例および起こらない場合の例が包含されることを意味する。
【0039】
この明細書の記載および特許請求の範囲を通じて、語「含む(comprise)」およびこの語の変形、例えば「含む(comprising)」や「含む(comprises)」などは、「〜を含むがこれに限定されない」を意味し、例えば、他の構成要素、整数、または工程を除外することを意図するものではない。「例示的」とは、「の一例(an example of)」を意味するものであって、好ましい実施形態または理想的な実施形態の指標を伝達することを意図するものではない。「〜など(such as)」は、制限的な意味で使用されるものではなく、説明を目的に使用される。
【0040】
免疫チェックポイント阻害剤を用いた単剤または併用療法は、癌患者において有意な治療効果を示している開示に関連して観察されている。しかしながら、患者の大部分は応答しない、または一過性的にのみ応答するものであり、次世代の免疫療法の設計に関する基本的な問題を提起する。腫瘍内微小環境の免疫抑制性の性質を克服し、持続的な応答を促進するために、より強いT細胞活性化を誘発する共阻害性経路および共刺激経路の二重標的化を行うことができる。一部のシナリオでは、抗体を併用することが、例えば恒常性調節因子のバランスを回復し、CD8
+ T細胞エフェクター機能を相乗的に増強する可能性があり、腫瘍拒絶反応および長期応答がもたらされる。治療の結果としてのクローン性増殖の正確な測定が、単剤または併用療法に対する対象の応答を示すシグネチャを提供することができる。一態様では、対象の一つ以上のT細胞を配列決定することから得られたショートリードからの一つ以上のTCR配列を生成できる方法およびシステムが本明細書に開示される。この方法およびシステムは、一つ以上のTCR配列の生成に基づいてクローン性増殖を決定し、対象の応答および/または潜在的応答を示すシグネチャを提供することができる。
【0041】
「rpsTCR」パイプラインとも称する、本開示の方法およびシステムの実施に使用可能な構成要素を開示する。これらおよび他の構成要素が本明細書に開示されるものであって、これらの構成要素の組み合わせ、サブセット、相互作用、群等が開示されているとき、これらの多様な個別および集合的な組み合わせならびにこれらの並べ替え(permutation)の各々の具体的な言及が、明示的には開示されていないかもしれないが、それぞれは、全ての方法およびシステムに関して本明細書中で具体的に考慮され、且つ説明されているということが理解される。これは、本開示の方法における工程を含むが、これらに限定されない、本出願の全ての態様に当てはまる。したがって、実施可能である種々の付加的工程が存在する場合には、当然のことながら、これらの付加的工程の各々を、本開示の方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組み合わせを用いて実施できる。
【0042】
下記の好ましい実施形態およびそれに含まれる実施例についての発明を実施するための形態、ならびに図面およびその前後の説明を参照することによって、本方法およびシステムについての理解を容易にすることができる。
【0043】
当業者がいずれ理解するように、この方法およびシステムは、全体がハードウェアである実施形態、全体がソフトウェアである実施形態、またはソフトウェアおよびハードウェアの態様を組み合わせた実施形態の形態を取ることができる。更に、本方法およびシステムは、記憶媒体に具体化されるコンピュータ可読プログラム命令を有するコンピュータ可読記憶媒体上のコンピュータプログラム製品(例えば、コンピュータソフトウェア)の形態を取ることができる。より具体的には、本方法およびシステムは、ウェブで実行されるコンピュータソフトウェアの形態を取ることができる。ハードディスク、CD−ROM、光学式記憶デバイス、または磁気記憶デバイスを含めた、あらゆる適切なコンピュータ可読記憶媒体を利用してよい。
【0044】
本方法およびシステムの実施形態については、方法、システム、装置およびコンピュータプログラム製品のブロック図およびフローチャート図を参照しながら、以下に説明する。ブロック図およびフローチャート図の各ブロック、ならびにブロック図およびフローチャート図中のブロックの組み合わせはそれぞれ、コンピュータプログラム命令によって実施できることが理解されるであろう。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、特殊用途向けコンピュータ、または他のプログラム可能データ処理装置にロードして、マシンを生成することが可能であり、それによって、コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置上で実行される命令によって、フローチャートのブロック内に特定されている機能を実行する手段が作り出される。
【0045】
これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置に対し特定の方法で機能するように指示可能なコンピュータ可読メモリに格納されて、それによって、コンピュータ可読メモリ内に格納された命令によって、フローチャートブロック内に特定された機能を実行するためのコンピュータ可読命令を含む、製造品が生産されるようにすることもできる。コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置にロードし、コンピュータまたは他のプログラム可能装置上で一連の動作工程を実行させて、コンピュータに実行される処理を生成して、それによって、コンピュータまたは他のプログラム可能装置上で実行される命令によって、フローチャートブロック内に特定された機能を実行するための工程が提供されるようにすることもできる。
【0046】
したがって、ブロック図およびフローチャート図のブロックは、特定された機能を実行するための手段の組み合わせ、特定された機能を実行するための工程の組み合わせ、および特定された機能を実行するためのプログラム命令手段を支持している。また、ブロック図およびフローチャート図中の各ブロック、ならびにブロック図およびフローチャート図中のブロック同士の組み合わせは、特定された機能または工程を実行する特殊用途向けハードウェアベースのコンピュータシステムまたは特殊用途向けハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせによって実行することが可能であるということもまた理解されたい。
【0047】
様々な例において、この詳細な開示は、一部の動作を実施する所与の実体を指す場合がある。当然のことながら、この文言は、一部の場合に、所与の実体によって所有および/または制御されるシステム(例えば、コンピュータ)が、実際には動作を実施することを意味する場合がある。
【0048】
一態様では、
図1に図示するように、T細胞受容体(TCR)を配列決定するためのrpsTCR法100を開示する。この方法100の工程は、任意の順序で、または同時に実行できる。方法100は、110において、核酸サンプルを配列決定して配列データを生成すること及び/又は配列データを受信することを含むことができる。核酸サンプルのシーケンシングは、対象のT細胞から得られた約100塩基対未満のRNAのショートリード(例えば、単一末端75塩基対のリード)を配列決定することを含むことができる。T細胞はヒトまたはマウスから取得することができる。対象に対して一つ以上の治療を施す前または後に、T細胞を取得および/または配列決定することができる。ショートリードは、RNAのランダムプライミングから取得することができる。ランダムプライマーの長さは4〜40ヌクレオチドであり得る。一部の実例では、ランダムプライマーの長さは4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20ヌクレオチドであり得る。核酸サンプルを配列決定することは、データ構造に格納され得る配列データを生成することができる。データ構造は、一つ以上の核酸配列および/またはサンプル識別子を含むことができる。
【0049】
一部の実施形態では、配列データは、任意の方法を通して取得または受信することができる。例えば、配列データは、サンプル上で配列決定処理を実行することによって直接取得することができる。別の方法として、または追加的に、配列データは、例えば、第三者、データベースおよび/または刊行物から間接的に取得することができる。一部の実施形態では、配列データは、例えばデータ記憶装置から、または別のコンピュータシステムから、コンピュータシステムで受信する。
【0050】
一部の実施形態では、配列データはバルクシーケンスデータを含むことができる。「バルクシーケンシング」または「次世代シーケンシング」または「超並列シーケンシング」という語は、DNAおよび/またはRNAシーケンシング処理を平行化する任意のハイスループットなシーケンシング技術を指す。例えば、バルクシーケンシング法は一般に、単一アッセイにおいて、百万個を超えるポリ核酸単位複製配列を産生することができる。「バルクシーケンシング」、「超並列シーケンシング」、および「次世代シーケンシング」という語は通常の方法のみを意味し、1回の実行で百万個を超える配列タグの獲得を必ずしも意味するものではない。任意のバルクシーケンシング法は、可逆的ターミネータ法の化学(例えば、イルミナ社)、ポロニーエマルジョン液滴を使用するパイロシーケンシング(例えば、Roche社)、イオン半導体シーケンシング(IonTorrent社)、単分子シーケンシング(例えば、Pacific Bioscience社)、超並列シグネチャシーケンシングなど、開示された方法およびシステムで実施できる。
【0051】
一部の実施形態では、配列データは複数のシーケンシングリードを含むことができる。一部の実施形態では、シーケンシングリードは、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、400、500、600、700、800、900、または1000個以下のヌクレオチドの平均リード長を持つ。一部の実施形態では、シーケンシングリードは、少なくとも30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200または250ヌクレオチドの平均リード長を持つ。いくつかの実施形態では、シーケンシングリードのカバレッジは、100x、90x、80x、70x、60x、50x、40x、30xまたは20x以下である。いくつかの実施形態では、シーケンシングリードのカバレッジは、少なくとも50x、45x、40x、35x、30x、25x、20x、19x、18x、17x、16x、15x、14x、13x、12x、11xまたは10xである。
【0052】
一部の実施形態では、配列データは、当該技術分野で公知の任意のシーケンシング法によって生成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、配列データは、Chain terminationシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、合成によるシーケンシング、パイロシーケンシング、イオン半導体シーケンシング、単分子リアルタイムシーケンシング、Tag−basedシーケンシング、Dilute−`n`−Goシーケンシング、及び/又は454シーケンシングを用いて生成される。
【0053】
一部の実施形態では、配列データは、一つ以上のゲノム遺伝子座または転写物の少なくとも一部を増幅するために核酸増幅プロセスが実施され、その後、結果として生じる増幅産物のシーケンシングによるプロセスの結果である。本明細書に開示される方法の実行に有用な核酸増幅プロセスの例には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、LATE−PCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、ストランド置換増幅(SDA)、転写物を介した遺伝子増幅(TMA)、自家持続配列複製法(3SR)、Qβ反復性増幅、NASBA法(NASBA(nucleic acid sequence−based amplification))、RCR法(RCR(repair chain reaction)、BDA法(BDA(boomerang DNA amplification ))、および/またはローリングサークル増幅(RCA(rolling circle amplification))が含まれるが、これに限定されない。
【0054】
一部の実施形態では、方法は、サンプル上でシーケンシングプロセスを実施する工程を含む。TCRをコードすることができるDNAおよび/またはRNAを含有する限り、任意のサンプルを使用することができる。一部の実施形態では、サンプルは、器官、細胞または組織のドナーからのものである。一部の実施形態では、サンプルは、器官、細胞または組織のレシピエントからのものである。サンプル源は、例えば、新鮮で凍結および/もしくは保存された器官、組織サンプル、生検、または吸引液からの固形組織;血液または任意の血液成分、血清、血液;脳脊髄液、羊水、腹水または間質液、尿、唾液、便、涙などの体液;または、対象の妊娠または発育におけるあらゆる時点の細胞でもよい。
【0055】
方法100は、120において、ショートリードを基準配列と並列させることを含むことができる。基準配列は、種特異的RNA配列の基準データセットを含むことができる。基準データセットは、データ構造に格納することができる。データ構造は、一つ以上の核酸配列および/または識別子を含むことができる。基準配列は、TCR遺伝子配列を含まない(例えば、適応免疫細胞受容体の遺伝子座位に対応する基準配列を除外する)。アラインメントによって、マッピングされたショートリードおよびマッピングされなかったショートリードから構成されるリードセットが生成される。一態様では、ショートリードを基準配列と並列させることは、Trapnell C.,et al.TopHat:discovering splice junctions with RNA−Seq,Bioinformatics(2009)25(9):1105−1111に記載されている一つ以上の技術を含むことができる。マッピングされたショートリードは、130において破棄することができる。得られるデータ構造は、マッピングされなかったショートリードを含んで生成することができる。方法の残りの工程は、正常に廃棄され、TCR文脈内でさらなる分析を受けないものであるマッピングされなかったショートリードに対して実施できる。こうしたマッピングされたショートリードの除外は、当該技術分野のTCR分析の現状から逸脱していることを表すものであり、結果として正確性と精度の両方の下流の改善をもたらす。
【0056】
方法100はさらに、一つ以上のマッピングされなかったショートリードに対する精度管理プロセスを実施することをさらに含むことができる。一つ以上のマッピングされなかったショートリードに対する精度管理プロセスを実施することは、低品質ヌクレオチドの除去または非常に短いリードの除去のうちの一つ以上を含むことができる。非常に短いリードを除去することは、35塩基対未満の長さのあらゆるリードを除去することを含むことができる。
【0057】
一態様では、方法100は、一つ以上のマッピングされなかったショートリードを、140におけるさらなる処理のために一つ以上のロングリードに構築することができる。一態様において、さらなる処理のために一つ以上のマッピングされなかったショートリードを一つ以上のロングリードに構築することは、一つ以上のマッピングされなかったショートリードを、TCR配列の参照データベースからの一つ以上のTCR配列に対して並列することと、一つ以上のマッピングされなかったショートリードを、TCR配列を参照データベースに基づいてロングリード(候補TCR配列)に構築することを含むことができる。別の態様において、さらなる処理のために一つ以上のマッピングされなかったショートリードを一つ以上のロングリードに構築することは、一つ以上のマッピングされなかったショートリードを、TCR配列の参照データベースを用いずに、ロングリード(候補TCR配列)に構築することを含むことができる。
【0058】
一態様では、さらなる処理のために一つ以上のマッピングされなかったショートリードを一つ以上のロングリードに構築することは、Warren,R.L.,B.H.Nelson,and R.A.Holt.2009.Profiling model T−cell metagenomes with short reads.Bioinformatics 25:458−464に記載の一つ以上の技術を含むことができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる(iSSAKEプラットフォーム)。一態様では、さらなる処理のために一つ以上のマッピングされなかったショートリードを一つ以上のロングリードに構築することは、一つ以上のマッピングされなかったショートリードを、所望の適応免疫細胞受容体の既知のキュレーターによるV遺伝子に対して並列させることを含むことができる。Vアライメントの一致しなかったヌクレオチド3’を有するV遺伝子の3’末端に対して、最良のフォワードまたはリバースの相補鎖を有する一つ以上のマッピングされなかったショートリードは、de novoアセンブリのシードとして標識されうる。受容体V遺伝子もしくは定常領域に対して、またはJ遺伝子と定常領域との間の可能性のある接合部に対して完全にアラインされる一つ以上のマッピングされなかったショートリードは、将来の構築から破棄することができる。
【0059】
各シード配列は、構築物の核をなすために用いることができる。たとえば、部分列長さ(k)は、構築されていない最長のリード長で開始できる。そのため、長さkの3’末端部分列を生成することができる(k−mer)。k−merが、一つ以上のフォワードまたはリバース相補鎖のリードrの5’末端塩基と一致する場合、一致するリードrを、構築を伸長するために使用できる(ヌクレオチドの伸長が突出することでrにわたって合致しない場合、多数決法を使用してコンセンサス構築配列を構築することができる)。一致がなく、kがユーザによって指定された最小配列長より長い場合、一塩基短い新しいkでマッチングを繰り返すことができる。一致がなく、kがユーザによって指定された最小配列長と等しい場合、構築は完了である。すべてのシード配列および得られる構築配列が最大の伸長(例えば、ユーザーに規定された)に達すると、構築は完了である。上記の工程は、新しい構築配列を用いて繰り返すことができる。一つ以上のロングリードを含むリードセットが結果物である。
【0060】
別の態様では、さらなる処理のために一つ以上のマッピングされなかったショートリードを一つ以上のロングリードに構築するための代替的なアプローチは、Grabherr MG,Haas BJ,Yassour M,Levin JZ,Thompson DA,Amit I,et al.Full−length transcriptome assembly from RNA−Seq data without a reference genome.Nature biotechnology.2011;29(7):644−52に開示の一つ以上の技術を含むことができ、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる(トリニティプラットフォーム)。さらなる処理のために一つ以上のマッピングされなかったショートリードを一つ以上のロングリードに構築することは、多段階工程のアプローチを含むことができる。第一の工程は、一つ以上のマッピングされなかったショートリードを、最長マッチを行うk−merに基づく、転写物構築のためのアプローチを用いて、転写物の固有の配列に構築すること、k−merを共有する一組の代替的変異体(代替的スプライシング、遺伝子重複または対立遺伝子変異による)に関して単一(最良)の代表物を回収することを含むことができる。このk−merに基づくアプローチは、すべての候補TCR配列(例として、k=25)からのk−merのフォワードおよびリバース相補鎖配列のディクショナリーを作成することを含むことができる。ディクショナリーのうち最も頻度の高いk−merが、コンティグ構築物をシードするために選択され得、複雑性が低いまたは一回観察されただけのk−merは除外される。シードは、現在の構築物と重複するk−1をもつ最もよく発生するk−merを見つけること、または、その突出するヌクレオチドを現在の構築配列に連結することによっていずれかの方向に伸長することができる。k−merが伸長のために使用されると、ディクショナリーから削除できる。構築物がそれ以上伸長できなくなるまで、シードエクステンションを繰り返すことができる。最も頻度の高いk−merの選択およびシードエクステンションは、ディクショナリーが枯渇するまで、次に頻繁の高いk−merを用いて繰り返すことができる。
【0061】
多段階工程アプローチの第二の工程は、代替的にスプライシングされた転写物の部分に、またはそうでなければパラロガス遺伝子の固有の部分に対応する、関連するコンティグをクラスタリングすることを含むことができる。次いで、関連するコンティグの各クラスターについてde Bruijnグラフを構成することができるが、各グラフは変異体間の重複の複雑さを反映する。コンティグ間でk−1ヌクレオチドの重複が存在する場合、および(k−1)−mer接合部の各側で(k−1)/2のヌクレオチドが一致するコンティグの両方にわたる接合部に架かる最小数のリードがある場合に、コンティグがクラスタリングされ得る。コンティグをそれ以上どのグループにも追加できなくなるまで、グループ化を繰り返すことができる。代表的なノードおよびkに対するある語長のk−1を使用して、各グループについてde Bruijnグラフを構成して、ノードを接続するエッジを画定することができる。de Bruijnグラフの各エッジは、それを支持する本来のリードセット内に複数のk−merを含むことができる。各リードは、それが最大数のk−merを共有するグループに割り当てることができ、また該グループにk−merを寄与する各リード内の領域を決定することができる。
【0062】
多段階工程アプローチの第三の工程は、対応するde Bruijnグラフのコンテキストにおけるリードおよびリードペアリングによって得られる経路を分析してもっともらしい転写配列を出力すること、代替的にスプライシングされたアイソフォームおよびパラロガス遺伝子から誘導された転写物を分析することを含むことができる。続いてノードの融合およびエッジの枝刈り(pruning)を反復することにより、リードまたはリードペアによってサポートされる経路を特定して、これらの経路をロングリード(候補TCR配列)として返すために実行することができる。ノードを融合することは、より長い配列を表すノードを形成するために、de Bruijnグラフにおいて線形経路に連続的なノードを融合することを含むことができる。エッジを枝刈りすることは、シーケンシングエラーに対応する可能性がある比較的少ないリードによってサポートされるわずかな偏差を表すエッジを枝刈りすることを含むことができる。第三の工程はもっともらしい経路の採点を実行することをさらに含むことができるものであって、それは実際のリードおよびリードペアによってサポートされる、de Bruijnグラフ内において、それらをサポートするリード(およびリードペア)を保持しながら当該グラフ内の潜在的な経路を横切る動的プログラミング手順を使用して、それらの経路を特定することによる。リードおよび配列断片(ペアリード)は通常、kよりもずっと大きいため、それらは曖昧性を分析し、そして経路の組み合わせ数を、線形配列として列挙されたずっと少ない数の実際の転写物まで減少させることができる。一つ以上のロングリードを含むリードセットが結果物である。
【0063】
TCR配列構築は、iSSAKEプラットフォームおよびトリニティプラットフォームなどであるがこれらに限定されないいくつかのプラットフォームのうちの一つを使用して実施できる。表1は、本開示の方法およびシステムの構成要素として、単一細胞シーケンシングに関してトリニティプラットフォームおよびiSSAKEプラットフォームが効果的に同等であることを示しているが、iSSAKEプラットフォームはバルクシーケンシングで上回っていた。iSSAKEプラットフォームは、TCRのシード配列を利用し、バルク構築でのrpsTCRパイプラインの性能を向上させることができる。
【0064】
【表1】
方法100は、150において、一つ以上のロングリードから一つ以上のTCR配列を生成することができる。一態様において、一つ以上のロングリードからの一つ以上のTCR配列を生成することは、Yang、X.et al.TCRklass:a new K−string−based algorithm for human and mouse TCR repertoire characterization.J.Immunol.194,446−454(2015)に開示される一つ以上の技術を含むことができ、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。一つ以上のロングリードから一つ以上のTCR配列を生成することは、六フレームすべてにおいて一つ以上のロングリードのそれぞれを翻訳することと、各翻訳フレームを基準の可変(V)および結合(J)アミノ酸配列の3文字列プロファイルと比較することと、最大数の一致k−ストリングをもつ翻訳フレームを特定することと、最大数の一致k−ストリングをもつ翻訳フレームからのロングリードにおいて残基毎に保存残基支持スコア(S
cr)を決定することによってロングリードにおける保存残基の位置を決定することと、翻訳フレームからのロングリードのVおよびJ遺伝子セグメントにおける最大のS
crをもつ候補保存残基を特定することと、TCR配列として、VおよびJ遺伝子セグメントにおける二つの保存残基間に位置するCDR3領域を特定することとを含むことができる。一態様では、方法100は、TCR C領域核酸配列をTCR配列に付加することをさらに含むことができる。
【0065】
別の態様では、一つ以上のロングリードから一つ以上のTCR配列を生成することは、一つ以上のロングリードを対応するアミノ酸配列に翻訳することを含むことができる。TCR V領域およびTCR J領域のアミノ酸基準配列を、約六アミノ酸のk−ストリングに分けることができる。k−ストリングは、対応するアミノ酸配列と並列させることができる。一つ以上の保存されたTCR CDR3残基を、対応するアミノ酸配列に対してマッピングする、k−ストリングにおいて検出することができる。検出された保存レベルを採点し、閾値保存スコアより高い保存スコアを有する対応するアミノ酸配列を選択することができる。次いで、選択された対応するアミノ酸配列において、候補CDR3領域アミノ酸配列を検出することができる。
【0066】
一つ以上のロングリードにおいて、候補CDR3領域アミノ酸配列の核酸配列を特定することができる。候補CDR3領域核酸配列の上流にある一つ以上のロングリードの核酸配列を、一つ以上のTCR V遺伝子基準配列と並列させることができる。アラインメント度を採点することができ、閾値アライメントスコアより高いロングリードを、候補TCR V遺伝子配列を含むとして特定することができる。
【0067】
候補CDR3領域核酸配列の下流にある一つ以上のロングリードの核酸配列を、一つ以上のTCR J遺伝子基準配列と並列させることができる。アラインメント度を採点することができ、閾値アライメントスコアより高いロングリードを、候補TCR J遺伝子配列を含むとして特定して、それによってTCR配列を生成できる。一態様では、方法100は、TCR C領域核酸配列をTCR配列に付加することをさらに含むことができる。
【0068】
方法100は、一つ以上のTCR配列を、既知のTCR配列と一つ以上の治療に対して対応する治療応答とであるTCR配列ライブラリと比較することと、一つ以上のTCR配列のうち、TCR配列ライブラリにおいて高度に対応する治療応答と一致するのはどれかを特定することと、当該一つ以上のTCR配列を有する対象が応答する可能性が高い一つ以上の治療を特定することをさらに含み得る。対象が、ある特定の治療に応答する可能性が高いTCR配列を有するとして特定されると、対象に当該特定の治療を施すことができる。
【0069】
方法100は、クローン性増殖を評価するために対象の疾患に治療を施す前および後に、方法100を実施することをさらに含むことができる。例えば、治療を施す前に、対象の第一の複数のT細胞を収集することができる。第一の複数のT細胞を配列決定することができ、そして方法100を実施することができる。存在する固有のTCR配列の発生数を決定することができる。対象に治療を施すことができ、そして対象の第二の複数のT細胞を収集することができる。第二の複数のT細胞を配列決定することができ、そして方法100を実施することができる。存在する固有のTCR配列の発生数を決定することができる。次いで、第一の複数のT細胞と第二の複数のT細胞との間の発生数を決定することができる。一部の実例では、特定のTCR配列は、クローン性増殖を経験しているか判断されうる。他の例では、第一の複数のT細胞と第二の複数のT細胞との間でクローン性増殖を経験したTCR配列の一部もしく全部が、同じTCR配列であるか、または当該TCR配列には同じTCR配列であるものはなかった。T細胞クローン性増殖シグネチャが結果物である。T細胞クローン性増殖シグネチャは、クローン性増殖を経験するT細胞の数、クローン性増殖を経験するT細胞の識別子、クローン性増殖の全体量、T細胞当たりのクローン性増殖の量、その組み合わせ等のうち一つ以上を含むことができる。治療に対する対象の応答を記録し、T細胞クローン性増殖シグネチャと関連付けることができる。複数の対象に対してプロセスを繰り返して、それによってT細胞クローン性増殖シグネチャと対応する治療応答とであるデータベースを生成することができる。開示された方法およびシステムは、その後、新しい対象のT細胞クローン性増殖シグネチャをデータベースと比較して、当該対象に関して治療に応答する可能性を確認することができる。
【0070】
方法100の一部の態様では、対象は、シーケンシング用のT細胞の収集前に免疫療法を施すことができる。免疫療法は単剤療法または併用療法とすることができる。例えば、免疫療法は、共刺激性アゴニストおよび共阻害性拮抗薬の併用とすることができる。一部の態様では、PD1、PDL1、CTLA4、LAG3、およびTIM3を含むがこれに限定されない腫瘍細胞上のT細胞阻害性受容体は、免疫療法中に標的とすることができる。したがって、一部の態様では、免疫療法は、PD1、PDL1、CTLA4、LAG3、およびTIM3のうちの一つ以上に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を含むことができる。免疫療法レジメンの一部として、対象に、PD1、PDL1、CTLA4、LAG3、およびTIM3のうちの一つ以上に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を投与してもよく、または二つ以上のそうした抗体またはその抗原結合性断片の任意の組み合わせを投与してもよい。
【0071】
一部の態様では、免疫療法は、PD1に結合する抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与することを含む。一部の好ましい実施形態では、PD1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、少なくとも、配列番号21の重鎖可変領域(HCVR)配列および配列番号22の軽鎖可変領域(LCVR)配列を含む。態様では、PD1に結合する抗体またはその抗原結合性断片のいずれかは、米国特許出願第14/603,776号(米国特許出願公開第2015−0203579号)に記載される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかであることが可能であり、これは参照により本明細書に組み込まれる。例えば、一部の実施形態では、PD1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表2に列挙された配列の中からのアミノ酸配列を有するHCVRおよびLCVRを含む。一部の実施形態では、PD1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表2に列挙された配列の中からのアミノ酸配列を有するLCVRおよびHCVRを含む。一部の実施形態では、PD1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表2に示すようなHCVRおよびLCVRの対を含む。PD1に結合するその他の抗体(またはその抗原結合性断片)を使用することができ、これらは、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、ピジリズマブ(Pidilizumab)、カムレリズマブ、PDR001、MED10680、JNJ−63723283、およびMCLA−134を含むがこれに限定されない。
【0072】
【表2】
一部の態様では、免疫療法は、LAG3タンパク質(CD223としても知られる)に結合する抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与することを含む。一部の態様では、LAG3に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、少なくとも、配列番号93のHCVR配列および配列番号94のLCVR配列を含む。一部の態様では、LAG3に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、米国特許出願第15/289,032号(米国特許出願公開第 2017−0101472号)に記載される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかであることが可能であり、これは参照により本明細書に組み込まれる。例えば、一部の態様では、LAG3に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表3に列挙された配列の中からのアミノ酸配列を有するHCVRおよびLCVRを含む。一部の態様では、LAG3に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表3に列挙された配列の中からのアミノ酸配列を有するLCVRおよびHCVRを含む。一部の実施形態では、LAG3に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表3に示すようなHCVRおよびLCVRの対を含む。LAG3に結合するその他の抗体(またはその抗原結合性断片)を使用することができ、これらは、BMS−986016及びGSK2381781を含むがこれらに限定されない。
【0073】
【表3】
一部の態様では、免疫療法は、PDL1に結合する抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与することを含む。一部の好ましい態様では、PDL1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、少なくとも、配列番号122のHCVR配列および配列番号123のLCVR配列を含む。一部の態様では、PDL1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、米国特許出願第14/603,808号(米国特許出願公開第2015−0203580号)に記載される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかであることが可能であり、これは参照により本明細書に組み込まれる。例えば、一部の態様では、PDL1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表4に列挙された配列の中からのアミノ酸配列を有するHCVRおよびLCVRを含む。一部の態様では、PDL1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表4に列挙された配列の中からのアミノ酸配列を有するLCVRおよびHCVRを含む。一部の態様では、PDL1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表4に示すようなHCVRおよびLCVRの対を含む。PDL1に結合するその他の抗体(またはその抗原結合性断片)を使用することができ、これらは、アベルマブ、アテゾリズマブ、およびデュルバルマブを含むがこれらに限定されない。
【0074】
【表4】
一部の態様では、免疫療法は、CTLA4に結合する抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与することを含む。一部の態様では、CTLA4に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、2017年7月27日出願の米国仮特許出願第62/537,753号に記載される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかであることが可能であり、これは参照により本明細書に組み込まれる。例えば、一部の態様では、CTLA4に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表5に列挙された配列の中からのアミノ酸配列を有するHCVRおよびLCVRを含む。一部の態様では、CTLA4に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表5に列挙された配列の中からのアミノ酸配列を有するLCVRおよびHCVRを含む。一部の態様では、CTLA4に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表5に示すようなHCVRおよびLCVRの対を含む。CTLA4に結合するその他の抗体(またはその抗原結合性断片)を使用することができ、これらは、イピリムマブおよびトレメリムマブのみならず、その全てが参照により本明細書に援用される米国特許第6,984,720号、第7,605,238号、または第7,034,121号に開示の抗体またはその抗原結合性断片のいずれかのうちの一つ以上を含むがこれらに限定するものではない。
【0075】
【表5】
一部の態様では、免疫療法は、GITRに結合する抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与することを含む。一部の好ましい実施形態では、GITRに結合する抗体またはその抗原結合性断片は、少なくとも、配列番号261のHCVR配列および配列番号259のLCVR配列を含む。態様では、GITRに結合する抗体またはその抗原結合性断片のいずれかは、米国特許出願第15/619,068号に記載される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかであることが可能であり、これは参照により本明細書に組み込まれる。例えば、一部の態様では、GITRに結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表6に列挙された配列の中からのアミノ酸配列を有するHCVRおよびLCVRを含む。一部の実施形態では、GITRに結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表6に列挙された配列の中からのアミノ酸配列を有するLCVRおよびHCVRを含む。一部の態様では、GITRに結合する抗体またはその抗原結合性断片は、表6に示すようなHCVRおよびLCVRの対を含む。GITRに結合するその他の既知の抗体(またはその抗原結合性断片)を使用することができる。
【0076】
【表6】
一部の態様では、TCR配列は、特定の治療に応じて増殖するT細胞クローン中に存在する配列として特定されうる。これらの特定されたTCR配列は、T細胞療法に使用できる。例えば、特定されたTCR配列を使用して、この特定のTCR配列を含有するT細胞を生成することができる。次に、特定されたTCR配列を含有するこれらのT細胞を対象に投与することができ、該対象は、その後、TCR配列が応答するように決定された特定の治療で治療され得る対象である。一部の態様では、T細胞療法は、特定の治療に応答するT細胞の数を増やすために、TCR配列が特定された同一の対象に施すことができる。一部の態様では、T細胞療法は、TCR配列が特定された対象以外の対象に対して施すことができる。TCR配列が特定された対象以外の対象にT細胞療法を施すことは、特定の治療に必ずしも応答しないかもしれない他の対象に、特定の治療に応答する能力を与える。
【0077】
一部の態様では、TCRシグナル伝達は、特定されたTCR配列を含有するそれらのT細胞に対する特定の薬剤に対して試験できる。特定の治療に対して増殖するT細胞中に存在する特定のTCR配列を有するそれら受容体のTCRシグナル伝達は、腫瘍免疫監視に対する洞察を提供する。
【0078】
特定されたTCR配列の別の使用は、特定されたTCR配列を用いて対象に存在する腫瘍を治療するための標的を決定するためのものであり得る。特定されたTCR配列に結合する抗原が、その対象に存在する腫瘍の標的である。標的が特定されると、その後、治療を決定することができる。
【0079】
一部の態様では、クローン性増殖におけるTCR配列の特定は、ウイルス感染および細菌感染の両方の予後に使用でき、癌および感染症の疾患進行を監視するために使用できる。
【0080】
図27〜
図33に示されるように、工程130でのマッピングされたショートリードを破棄することは、当技術分野のTCR分析技術の現状と比較して、正確性と精度の両方の改善に寄与する。
【0081】
図27〜
図33の方法は、TCRがないと予想されるネガティブコントロールのデータセットを使用する。これらサンプルはすべて、長さ100塩基対(bp)のリードを伴うランダムプライミングRNA−Seqである。五つのデータセットは様々なマウス腫瘍細胞株からのものである(これらは表7に示されている)。二つのデータセットは、TCRの形成に必要な遺伝子であるRag1/2をノックアウトしたマウスの脾臓サンプルからのものである。二つのデータセットは、ヒト細胞株からであり、一方が神経前駆細胞(NeuProgCell)であり、もう一方が筋芽細胞(LHCN−M2)である。ポジティブコントロールのデータセット(VI−next−マウス−T細胞)は、長さ300bpのリードを持つ健康なB6マウスサンプルの標的TCRシーケンシングである。このデータセットを操作して、様々なシーケンシング深度(1000万リード、5000万リード、1億リード、2億リード、または5億リード)およびリード長(50bpまたは100bp)のシミュレーションされた試験データセットを作成した。
【0082】
別の試験データセットは、マウス腫瘍サンプルからのソーティングしたT細胞のうちリード長80bpを有するバルクランダムプライミングRNA−Seqである。対応するポジティブコントロールデータセットは、バルクデータセットと同一のソーティングしたT細胞のC1 Fluidigmプラットフォームからのリード長75bpを有する単一細胞RNA−Seqからなる。
【0083】
TCRパイプラインベンチマーク用のデータセットを表7に示す。
【0084】
【表7】
図27は、rpsTCRパイプラインの感度が、TCRklassに極めて類似し、またmiTCRよりも良好であることを示す。たとえあったとしても非常に少ない偽陽性が、rpsTCRパイプラインにより検出される。rpsTCRパイプラインは、ネガティブコントロールデータセットのいずれかにおいてTCRがないことを特定する。比較すると、TCRklassでは非常に少数のTCRが特定され、MiTCRでは各データセットにおいて平均数十のTCRが特定される。rpsTCRパイプラインおよびTCRklassは、VI−next−マウス−T細胞のポジティブコントロールデータセットにおけるTCR CDR3を特定するにあたり、約80%の同等の感度を示しており、一方でMiTCRは75%に近い、より低い感度を有する。
【0085】
図18は、MiTCRまたはTCRklassによって検出されないポジティブデータを特定するためのrpsTCRパイプラインの能力を示す。三つのすべての方法(MiTCR、TCRklass、及びrpsTCRパイプライン)の間でポジティブコントロールVI−nextデータセットにおいて特定されたTCR数に強力な相関関係があり、総TCRのうちの約10%が、MiTCRによってではなく、rpsTCRパイプライン法及びTCRklassによって特定された。
【0086】
図28および
図30では、マウスT細胞のそれぞれ50bpまたは100bpのランダムプライミングリードを使用した、MiTCR、TCRklass、およびrpsTCRパイプライン間のCDR3検出比較を示す。見つかった上位CDR3のそれぞれの配列を列記している。
図29および
図31は、それぞれ50bpまたは100bpを使用した、完全なVI−nextデータセットで発見された上記のCDR3を示している。rpsTCRパイプラインはより高い感度を示す。
【0087】
図28および
図29は、VI−nextのポジティブコントロールデータセットをサブサンプリングすることによって形成される、シミュレートされた50塩基対(bp)のリード長のデータセットで発見されたCDR3の比較の概要である。MiTCRおよびTCRklassとは異なり、rpsTCRパイプラインは、TCR配列をより良好に特定するために、短い50bpのリードをより長いコンティグに構築することを実施する。5億リード(MP−50bp−500M)のデータセットにおいてMiTCRによって発見された上位のCDR3は、ポジティブコントロールデータセットにおいていずれかの方法によって、すなわちMP−50bp−500MにおいてTCRklassまたはrpsTCRパイプラインによっては発見されなかった(
図28、左表)。MP−50bp−500MにおけるTCRklassによって発見された上位のCDR3は、試験データセットおよびVI−nextデータセットの両方における他の方法によって発見された(
図28、中央表)。rpsTCRパイプラインによって特定された上位のCDR3は、VI−nextデータセットにおいてすべての方法によってより多数で特定され、MP−50bp−500Mデータセットにおいて他の二つの方法によっては一部特定された(
図28、右表)。VI−nextデータセットにおいて発見された上位のCDR3は、最も多くの場合、50bpのリード長の1000万〜5億リードに対するサブサンプリングされたMPにおけるrpsTCRパイプラインによって発見された(
図29)。
【0088】
図30および
図31は、VI−nextポジティブコントロールデータセットからの2億リードをサブサンプリングして、構築工程なしのrpsTCRパイプライン法をMiTCRおよびTCRklassと比較することによって形成された、シミュレーションされた100bpのデータセットにおいて発見されたCDR3の比較の概要である。ここでも、リード長100bpの5億リード(MP−100bp−500M)におけるMiTCRによって発見された上位のCDR3は、その他任意の方法では発見されなかった(
図30、左表)。TCRklassによって発見された上位二つのCDR3は、他の方法のいずれかによって発見されなかった偽陽性と見なされる(
図30、中央表)が、他のものはrpsTCRパイプラインによって発見された上位のCDR3に良好に対応する(
図30、右表)。すべての方法は、VI−nextデータセットからの上位CDR3を特定する際にこのリード長で同等の感度を持つ(
図31)。
【0089】
図32は、単一細胞シーケンシングで検出されたCDR3の半分以上もまた、バルクRNAシーケンシングで検出できることを示す。三つの方法を最終的に比較するためには、同じサンプルからのバルクRNA−Seqデータにおいて、単一細胞データにおいて発見されたTCRの数がいくつ発見されるかを定量化することが関与する。単一細胞データにおいて特定された上位CDR3は、三つのすべての方法によってほとんど特定され、かつバルクデータセットでは一貫してすべての方法にわたって特定される(
図32)。
【0090】
rpsTCRパイプライン法は、配列構築が不必要な場合、100bpのリード長のデータセットにおける既存の方法と同等である。しかしながら、rpsTCRパイプラインが配列構築を実施するショートリードのデータセットでは、感度は他の方法に対して大きく向上する。
【0091】
図2には、腫瘍移植マウスの腫瘍またはマウスの脾臓(同一の腫瘍担持マウスから)からの単離されたT細胞から決定されたCDR3配列を示す(実施例1)。3つ以上の単一T細胞から検出された同一のCDR3配列が、クローン性増殖したT細胞であると判定された。併用治療群(aGITR + aPD−1)は、治療後11日目までに、クローン性増殖したT細胞の多様な断片を示す腫瘍を有した(3つ以上のクローンを有するT細胞からの様々なTCR配列の数で示されるように)。この実施例では、特異的なTCR配列の数ではなく、増殖したT細胞クローンの総数が、治療後のクローン性増殖を決定するために使用される。一部の態様では、クローン性増殖は、アミノ酸レベルで同一であるが、核酸配列が変化を含むことができるTCRによって決定される。脾臓から単離されたT細胞は、クローン性増殖しなかった。注目すべきは一部のPD−1治療マウスにおいて、同じTCR CDR3配列が検出されたことであり、またそれらは、クローン性増殖したものとみなされなかった(検出数は<3)。
【0092】
図2は、既知のTCR配列と、一つ以上の治療に対して対応する治療応答とであるTCR配列ライブラリの一例を示す。
図2に示されるように、TCR配列1〜TCR配列10は、aGITRとaPD1との併用療法に対して、3以上のクローン性増殖値である。クローン性増殖値は、複数の細胞のうちの特定のTCR配列の発生数を表し、細胞がクローニングされる回数を示している。TCR配列11〜TCR配列17は、aPD1単剤療法に対して、3以上のクローン性増殖値である。TCR配列18〜TCR配列20は、aGITR単剤療法に対して、3以上のクローン性増殖値である。その細胞配列データが得られた対象と特定されたTCR配列とについて、特定されたTCR配列を、
図2に示すようにTCRライブラリと比較して、一致を決定する。一態様では、一致の数が、特定の治療に対する潜在的な応答を表すことができる。別の態様では、一治療あたりの一致に関連するクローン性増殖値の合計を使用して、対象にとってより高い累積クローン性増殖値と関連付けられる治療はどれかを決定することができる。一例として、TCR配列1、TCR配列2、TCR配列13、TCR配列14、TCR配列15、およびTCR配列16を有する患者の配列データは、aGITRおよびaPD1の併用では累積クローン性増殖値14であり、aPD1単独では累積クローン性増殖値は16である。したがって、対象は、aPD1単独に応答する可能性がより高い。
【0093】
図3は、
図2に含まれる結果のグラフィカル図である。
図3は棒グラフであり、aGITRおよびaPD1の併用についての増殖したクローンの割合は、治療後11日目で31.9%であり、aPD1単独についての増殖したクローンの割合は、治療後11日目で26.7%であり(治療後8日目で4.8%)、aGITR単独についての増殖したクローンの割合は、治療後11日目で20.3%であることを示している。一態様では、
図2の結果および
図3のグラフは、一人以上の対象に対して一つ以上の治療を施した後に得られたデータを基にすることができる。方法100は、対象に対して一つ以上の治療を施すことをさらに含むことができる。方法100は、TCR配列と一つ以上の治療に関連付けられた対応するクローン性増殖とであるTCR配列ライブラリを生成することをさらに含むことができる。
図3は、抗PD1(aPD1)または抗GITR(aGITR)のいずれかを投与する単剤(モノ)療法と比較した腫瘍担持マウスの併用療法で特定されたクローン性増殖したT細胞の数の有意性を示す。抗PD1(aPD1)および抗GITR(aGITR)の両治療は、アイソタイプコントロールで治療したマウスからの腫瘍と比較して、増殖したクローンの割合に関して有意に増加する。
【0094】
図4は
図1の方法100の一実施形態の例示的な出力を示す。
図4は、クローン性増殖後のT細胞系統を示す。治療タイプ(例えば、aGITRおよびaPD1の併用、aPD1単独、aGITR単独)の範囲内で、例えば未感作、T細胞メモリー(Tcm)、T細胞エフェクターメモリー(Tem)、T細胞エフェクター(Teff)などの様々な細胞サブタイプにわたってクローン性増殖が発生する。
図4は、計数(例えば、クローン性増殖値)に加えて特定の治療に関連付けられた配列を示し、またクローン性増殖値に関連付けられた細胞サブタイプの表示を含む。
図4は、クローンの各セットにおけるT細胞のプロファイルを示す。発現したTCR CDR3配列によって特定される各T細胞クローンはまた、a)エフェクターメモリー細胞(Tem)(Cd62L−Cd44+Gzmb+)、b)エフェクターT細胞(Teff)(Cd62L−Cd44−Gzmb+)、c)未感作T細胞(Cd62L+Cd44−Gzmb−)、またはd)中央メモリT細胞(Tcm)(Cd62L+Cd44+Gzmb−)、または別の未分類の細胞(白抜きの楕円)として特性決定した(例えば、細胞表面のマーカーによって分類した)。
【0095】
対象の第一の細胞からの単一細胞の未加工リードを含む第一の配列データを、複数の非T細胞受容体転写物を含む第二の配列データに対して第一の配列データをマッピングするバイオインフォマティクスツールを使用して取得することにより、第一の配列データにおいて一つ以上のマッピングされなかったリードを特定することと、マッピングされなかったリードから一つ以上のTCR配列を決定することとを含む、一つ以上のTCR配列を決定する方法を開示する。一部の態様では、対象の第一の細胞から単一細胞の未加工リードを含む第一の配列データを取得することは、第一の細胞から得られた転写物に対してランダムプライマーRNAシーケンシングを実施することを含む。ランダムプライマーの長さは4〜40ヌクレオチドであり得る。一部の実例では、ランダムプライマーの長さは4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20ヌクレオチドであり得る。一部の態様では、第一の配列データを取得する前に、対象は免疫療法を施される。免疫療法は単剤療法または併用療法とすることができる。例えば、免疫療法は、共刺激性アゴニストおよび共阻害性拮抗薬の併用とすることができる。
【0096】
TCRβ鎖のCDR3配列を含むベクターを開示する。一部の態様では、ベクターはウイルスベクターまたはプラスミドとすることができる。ウイルスベクターの例としては、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びアデノ関連ウイルスベクターが挙げることができるがこれらに限定されない。一部の態様では、CDR3配列は、CASSRNTEVFF(配列番号269)、CASSIGNTEVFF(配列番号270)、CASSQPGKNTEVFF(配列番号271)、CASSLGQGNNSPLYF(配列番号272)、CASSQGQGGAETLYF(配列番号273)、CASSPPMGGQLYF(配列番号274)、CASSQEGANTEVFF(配列番号275)、CASSQVQGTGNTLYF(配列番号276)、CASSQEGDGYEQYF(配列番号277)、CTSAEGGGTEVFF(配列番号278)、CASSPPGGGTEVGG(配列番号279)、CASSGTDNQDTQYF(配列番号280)、CASSPGTGGYEQYF(配列番号281)、CASSLELGFYEQYF(配列番号282)、CASSLGGAPNERLFF(配列番号283)、CASSQEGDSYEQYF(配列番号284)、CASSRNTEVFF(配列番号285)、CASGDAMGGRDYAEQFF(配列番号286)、CGAREGQDTQYF(配列番号287)、CGARTGGEQYF(配列番号288)、またはCTCSAGNQAPLF(SEQ ID NO:289)をコードする核酸配列である。したがって、いくつかの態様では、配列番号:269〜289のいずれか一つの配列をコードする核酸配列を含むレンチウイルスベクターが開示される。
【0097】
一態様においては、類似の結合特異性を有するTCR配列は、Gupta N.T.,et al.Hierarchical clustering can identify B cell clones with high confidence in Ig repertoire sequencing data.J.Immunol.198(6),2489−2499(2017)に開示されているようにクラスター化することが可能である。簡潔に述べると、TCR配列のCDR3領域を、単一連鎖の階層クラスタリングを使用してクラスター化することができ、二つのCDR3配列間の距離は、二つの配列間のヌクレオチドの相違の絶対数と、一態様においては前述の参考文献に開示されるように配列データセットから推測されることが可能である閾値として規定できる。
【0098】
配列番号269〜289のいずれか一つの配列をコードする核酸配列を含むベクターを含む組換え細胞もまた開示される。
TCRβ鎖のCDR3配列を含む組換え細胞を開示する。一部の態様では、CDR3配列は、CDR3配列を含む組換え細胞とは異なる細胞型、細胞株、または異なる種に由来する。例えば、CDR3配列は、初代ヒトT細胞由来とすることが可能であり、CDR3配列を含む細胞は、CDR3配列が誘導される細胞とは別のT細胞から誘導されるT細胞株とすることができる。別の例として、CDR3配列はヒト細胞由来とすることが可能であり、CDR3配列を含む細胞は非ヒト細胞であり得る。一部の態様では、組換え細胞は、CASSRNTEVFF(配列番号269)、CASSIGNTEVFF(配列番号270)、CASSQPGKNTEVFF(配列番号271)、CASSLGQGNNSPLYF(配列番号272)、CASSQGQGGAETLYF(配列番号273)、CASSPPMGGQLYF(配列番号274)、CASSQEGANTEVFF(配列番号275)、CASSQVQGTGNTLYF(配列番号276)、CASSQEGDGYEQYF(配列番号277)、CTSAEGGGTEVFF(配列番号278)、CASSPPGGGTEVGG(配列番号279)、CASSGTDNQDTQYF(配列番号280)、CASSPGTGGYEQYF(配列番号281)、CASSLELGFYEQYF(配列番号282)、CASSLGGAPNERLFF(配列番号283)、CASSQEGDSYEQYF(配列番号284)、CASSRNTEVFF(配列番号285)、CASGDAMGGRDYAEQFF(配列番号286)、CGAREGQDTQYF(配列番号287)、CGARTGGEQYF(配列番号288)、またはCTCSAGNQAPLF(SEQ ID NO:289)を含むCDR3配列を含む。
【0099】
一部の態様では、開示される、ランダムプライミングRNAシーケンシングからTCR配列を特定する方法を使用して、B細胞受容体(BCR)を同様に特定することができる。パイプラインの工程は、以下の手順を除いてほぼ同じである:1)ネガティブセレクション工程であって、BCRを特定することが、複数の種特異的な非B細胞受容体RNA転写物を含む第二の基準データセットに対してショートリードをアラインメントすることに関与するものである、ネガティブ選択工程、2)構築工程であって、BCRを特定することが、さらなる処理のために一つ以上のマッピングされなかったショートリードを一つ以上のロングリードに構築することに関与するものである構築工程が、一つ以上のマッピングされなかったショートリードを、BCR配列の参照データベースからの一つ以上のBCR配列に対して並列させることと、BCR配列の参照データベースに基づいて、一つ以上のマッピングされなかったショートリードをロングリード(候補BCR配列)に構築することとを含みものである、構築工程、3)アラインメント工程であって、BCRを特定することが、候補BCR配列を、BCR VおよびJ遺伝子の基準に対してアラインメントすることと共に、BCR CDR3領域を特定することに関与するものである、アラインメント工程。一態様において、一つ以上のロングリードからの一つ以上のBCR配列を生成することは、Alamyar,E.,et al.IMGT tools for the nucleotide analysis of immunoglobulin(IG)and t cell receptor(TR)V−(D)−J repertoires,polymorphisms,and IG mutations:IMGT/V−QUEST and IMGT/HighV−QUEST for NGS.Methods in Mol.Biol.882,569−604(2012)に開示される一つ以上の技術を含むことができる。
【0100】
例示的な態様において、方法およびシステムは、
図8に図示され以下に説明されているように、コンピュータ801上で実施できる。同様に、開示する方法およびシステムは、一つ以上のコンピュータを利用して、一つ以上の場所で一つ以上の機能を実行できる。
図8は、本開示の方法を実行するための例示的な運用環境を図示したブロック図である。この例示的な運用環境は、あくまで運用環境の一例にすぎず、運用環境アーキテクチャの使用または機能の範囲に関する何らかの制限を示唆することを意図したものではない。また、如何なる運用環境も、例示的な運用環境において図示される構成要素のいずれか一つもしくは組み合わせに関連する何らかの依存性または要件を有するものとして解釈すべきではない。
【0101】
本方法およびシステムは、多数の他の汎用もしくは特殊用途向けコンピューティングシステム環境または構成で動作可能でありうる。このシステムおよび方法を用いた使用に適するものとし得る周知のコンピューティングシステム、環境、および/または構成の例としては、以下に限定されないが、パーソナル・コンピュータ、サーバ・コンピュータ、ラップトップ・デバイス、およびマルチプロセッサ・システムが挙げられる。追加的な例には、セットトップボックス、プログラマブル大衆消費電子製品、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、上記のシステムまたはデバイスのいずれかを含む分散コンピューティング環境等が含まれる。
【0102】
本開示の方法およびシステムの処理は、ソフトウェアコンポーネントを介して実行できる。本開示のシステムおよび方法は、一つ以上のコンピュータまたは他のデバイスを介して実行されるプログラムモジュールなどの、コンピュータ実行可能命令の一般的なコンテキストで記述できる。概して、プログラムモジュールは、コンピュータコード、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含み、それらによって特定のタスクが実行されるかまたは特定の抽象データ型が実施される。また、本開示の方法は、通信ネットワーク経由でリンクされたリモートプロセシングデバイスを介してタスクが実行されるグリッドベースおよび分散コンピューティング環境においても実施することができる。分散コンピューティング環境において、プログラムモジュールは、記憶装置を含むローカルおよびリモートコンピュータストレージ媒体の両方に配置できる。
【0103】
さらに、当業者は、本明細書に開示されるシステムおよび方法を、コンピュータ801の形態の汎用コンピューティング・デバイスを介して実施できることを認識することになる。コンピュータ801の構成要素には、限定されるものではないが、一つ以上のプロセッサ803と、システムメモリ812と、一つ以上のプロセッサ803を含む様々なシステムコンポーネントをシステムメモリ812に連結するシステムバス813と、を含めることができる。システムは並列処理を利用できる。開示された方法を実施するために並列処理を活用することができる。例えば、開示された方法の一つ以上の工程の少なくとも一部分を実行することは、ジョブとして分類することができる。例えば、本開示の方法は、複数のサンプルについて並列に実行することができる。そのためそれぞれのジョブに対する作業負荷が、いくつかのプロセッサ全体に分散されうる。ソフトウェアアプリケーションを使用して、ジョブを設計および実行してデータを処理することができる。ジョブは、例えば、一つ以上のデータソースからデータを抽出し、該データを変換し、データを一つ以上の新しい場所にロードする(例えば、別のジョブで処理するためのデータをステージする)ことができる。並行処理トポロジでは、各ジョブの作業負荷を、ノードコンピュータ(compute node)と呼ばれる一つ以上のコンピュータ上の複数のプロセッサ全体に分散することができる。一態様において、ユーザは、構成ファイルを修正するか、または複数の処理ノードを画定するように構成されたソフトウェアとのインタフェースを変更できる。これらのノードは、各ジョブを迅速かつ効率的に完了するために同時に作業する。コンダクターであるノードコンピュータは、作業を調整することができる。並列処理環境は、対称型マルチプロセッシング(SMP)システムまたは超並列処理(MPP)システムとして分類することができる。対称型マルチプロセッシング(SMP)環境では、複数のプロセッサが他のハードウェアリソースを共有する。たとえば、複数のプロセッサは同じメモリおよびディスク容量を共有できるが、単一のオペレーティングシステムを使用できる。そのため、並列ジョブの作業負荷がシステム内のプロセッサ全体に分散される。ジョブが完了する際の実際の速度は、システム内の共有リソースによって制限されることとなる。システムをスケールさせるために、プロセッサの数を増やすことができ、メモリを追加することができ、またはストレージを増やすことができる。超並列処理(MPP)システムでは、多数のコンピュータが同じシャーシ内に物理的に収容されうる。一つのMPPシステムを、物理的に分散させることができる。MPP環境では、物理的なコンピュータ間でリソースを共有する必要がないため、パフォーマンスが改善される。システムをスケールさせるために、関連するメモリとディスクリソースに加えてコンピュータを追加できる。MPPシステムでは、ファイルシステムは通常、ネットワーク全体で共有される。この構成では、プログラムファイルを、システム内の個々のノードにインストールする代わりに、共有することができる。
【0104】
システムバス813は、多様なバスアーキテクチャのいずれかを用いた、メモリバスもしくはメモリコントローラ、周辺機器用バス、アクセラレーテッドグラフィックスポート、またはローカルバスをはじめとする、幾つかの可能なタイプのバス構造のうちの一つ以上を表す。一例として、こうした構造は、産業標準アーキテクチャ(ISA)バス、マイクロチャネルアーキテクチャ(MCA)バス、Enhanced ISA(EISA)バス、VESA(Video Electronics Standards Association)ローカルバス、アクセラレーテッドグラフィックスポート(AGP)バス、およびペリフェラルコンポーネントインターコネクト(PCI)、PCI−Expressバス、PCMCIA(Personal Computer Memory Card Industry Association)、ユニバーサルシリアルバス(USB)および同種のものを含むことができる。バス813、および本明細書中に指定されている全てのバスはまた、有線または無線ネットワーク接続経由で実装することもでき、一つ以上のプロセッサ803、大容量記憶装置804、オペレーティングシステム805、T細胞パイプラインソフトウェア806、T細胞パイプラインデータ807、ネットワークアダプタ808、システムメモリ812、入出力インタフェース810、ディスプレイアダプタ809、ディスプレイデバイス811、およびヒューマンマシンインタフェース802を含む各サブシステムは、この形態のバスを介して接続された物理的に別個の位置にある一つ以上のリモートコンピューティングデバイス814a、b、c内に収容され、事実上完全に分散されたシステムを実装しうる。
【0105】
コンピュータ801は、様々なコンピュータ可読媒体を含むのが通例である。例示的な可読媒体は、コンピュータ801によりアクセスできる任意の利用可能な媒体であってよく、例えば、揮発性および不揮発性媒体であり、リムーバブルおよび非リムーバブル媒体の両方が挙げられるが、これらに限定されるものではない。システムメモリ812は、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの揮発性メモリ、および/またはリードオンリメモリ(ROM)などの不揮発性メモリの形態のコンピュータ可読媒体を含む。システムメモリ812は、典型的には、T細胞パイプラインデータ807のようなデータ、および/または一つ以上のプロセッサ803によって直ちにアクセス可能であり、且つ/または現在操作されているオペレーティングシステム805およびT細胞パイプラインソフトウェア806などのプログラムモジュールを含む。
【0106】
別の態様では、コンピュータ801はまた、他のリムーバブル/非リムーバブルな、揮発性/不揮発性コンピュータストレージ媒体を含むこともできる。一例として、
図8は、コンピュータコード、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、およびコンピュータ801用の他のデータの不揮発性ストレージを提供できる、大容量記憶装置804が図示されている。例えば、限定されるものではないが、大容量記憶装置804は、ハードディスク、リムーバブル磁気ディスク、リムーバブル光学式ディスク、磁気カセットまたは他の磁気ストレージデバイス、フラッシュメモリカード、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)または他の光学式ストレージ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)等でありうる。
【0107】
任意選択的に、例えばオペレーティングシステム805およびT細胞パイプラインソフトウェア806を含む、任意の数のプログラムモジュールを大容量記憶装置804に格納できる。オペレーティングシステム805およびT細胞パイプラインソフトウェア806(またはそれらの幾つかの組み合わせ)の各々には、プログラミングおよびT細胞パイプラインソフトウェア806の要素を含めることができる。T細胞パイプラインデータ807はまた、大容量記憶装置804に格納できる。T細胞パイプラインデータ807を、当技術分野で公知の一つまたは複数のデータベースのいずれかに記憶することができる。そのようなデータベースの例としては、DB2(登録商標)、Microsoft(登録商標)Access、Microsoft(登録商標)SQL Server、Oracle(登録商標)、mySQL、PostgreSQLなどが挙げられる。データベースは、集中型とすることができ、または複数のシステムにわたって分散することができる。
【0108】
別の態様では、ユーザは、入力デバイス(図示せず)を介して、コンピュータ801内にコマンドおよび情報を入力することができる。そのような入力デバイスの例としては、限定されるものではないが、キーボード、ポインティングデバイス(例えば、「マウス」)、マイクロフォン、ジョイスティック、スキャナー、グローブ等の触覚入力デバイス、および他のボディカバー等が含まれる。上記および他の入力デバイスは、システムバス813に接続されているヒューマンマシンインタフェース802を介して一つ以上のプロセッサ803に接続できるが、他のインタフェースおよびバス構造、例えば、パラレルポート、ゲームポート、IEEE1394ポート(別称:ファイヤーワイヤー(FireWire)ポート)、シリアルポートまたはユニバーサルシリアルバス(USB)を介して接続できる。
【0109】
更に別の態様において、ディスプレイデバイス811はまた、ディスプレイアダプタ809等のインタフェースを介してシステムバス813に接続できる。コンピュータ801に複数のディスプレイアダプタ809を設けることもできるし、コンピュータ801に複数のディスプレイデバイス811を設けることもできることが想到される。例えば、ディスプレイデバイス811は、モニター、液晶ディスプレイ(LCD)、またはプロジェクターとすることができる。ディスプレイデバイス811に加えて、他の出力周辺デバイスには、入出力インタフェース810を介してコンピュータ801に接続できるスピーカ(不図示)およびプリンタ(不図示)等の構成要素を含めることができる。本方法の任意の工程および/または結果は、任意のフォーマットで出力デバイスに出力できる。そのような出力は、テキスト、グラフィカル、アニメーション、オーディオ、触覚(tactile)等を含むが、これらに限定されない任意のフォーマットの視覚的表象でありうる。ディスプレイ811およびコンピュータ801は、一つのデバイスの一部である場合もあれば、別々のデバイスである場合もある。
【0110】
コンピュータ801は、一つ以上のリモートコンピューティングデバイス814a、b、cへの論理的接続を使用してネットワーク環境で動作できる。一例として、リモートコンピューティングデバイスは、パーソナルコンピュータ、ポータブルコンピュータ、スマートフォン、サーバー、ルーター、ネットワークコンピュータ、ピアデバイスまたは他の共通ネットワークノード等でありうる。コンピュータ801とリモートコンピューティングデバイス814a、b、cとの間の論理的接続は、ローカルエリアネットワーク(LAN)および/または一般的なワイドエリアネットワーク(WAN)等のネットワーク815を介して行うことができる。そのようなネットワーク接続は、ネットワークアダプタ808経由でありうる。ネットワークアダプタ808は、有線および無線の両方の環境で実装できる。そのようなネットワーキング環境は、住宅、職場、企業全体のコンピュータネットワーク、イントラネット、およびインターネットでは、従来からあるありふれたものである。
【0111】
そのようなプログラムおよびコンポーネントは、コンピューティングデバイス801の異なるストレージコンポーネント内に様々な時間に存在し、コンピュータの一つ以上のプロセッサ803を介して実行されることが認識されるが、例証の便宜上、アプリケーションプログラムおよびオペレーティングシステム805等の他の実行可能プログラムコンポーネントは、本明細書中では離散的ブロックとして図示されている。T細胞パイプラインソフトウェア806の実装形態は、何らかの形態のコンピュータ可読媒体上に格納される場合もあれば、またはそのコンピュータ可読媒体を介して伝送される場合もある。本開示の方法のいずれも、コンピュータ可読媒体上に具現化されたコンピュータ可読命令によって実行できる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータによってアクセス可能な任意の利用可能媒体とすることができる。コンピュータ可読媒体の例としては、限定されるものではないが、「コンピュータストレージ媒体」および「通信媒体」を挙げることができる。「コンピュータストレージ媒体」は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュールもしくは他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法または技術で実装される揮発性および不揮発性のリムーバブル媒体および非リムーバブル媒体を具備する。例示的なコンピュータストレージ媒体は、限定されるものではないが、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリもしくは他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、または他の光学式ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置もしくは他の磁気記憶装置、または、所望の情報を格納する目的に使用でき、且つコンピュータがアクセスできる任意の他の媒体を具備する。
【0112】
以下の実施例は、本明細書に請求される化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法がどのようになされて評価されるのかに関して、当業者に完全な開示および説明を提供するように示されており、単に例示的であることを意図しており、この方法およびシステムの範囲を限定することを意図していない。数字(例えば量、温度など)に関する正確性を確保するために取り組みがなされているが、いくらかの誤差および偏差が考慮されるべきである。特に明示がない限り、部分は重量部であり、温度は℃単位であるか、または周囲温度であり、圧力は大気圧またはその近傍である。
【0113】
方法およびシステムは、機械学習や反復学習などの人工知能手法を採用することができる。そのような手法の例としては、以下に限定されないが、エキスパート・システム、事例に基づく推論、ベイジアン・ネットワーク、ビヘイビアベースAI、ニューラル・ネットワーク、ファジーシステム、進化的計算法(例えば遺伝的アルゴリズム)、群知能(例えばアント・アルゴリズム)、およびハイブリッド知能システム(例えば、ニューラル・ネットワークを通じて生成されるエキスパート推論ルール、または統計的学習から得られるプロダクション・ルール)が挙げられる。
【0114】
以下の実施例は、より詳細に実施形態を説明するために提供される。これらは、請求される実施形態を例示することを意図しており、これに限定することを意図していない。
実施例1
In vivoマウス試験
MC38腫瘍試験のため、3x10
5個または5x10
5個のMC38細胞をそれぞれ、C57BL/6またはヒト化GITR/GITRL二重ノックインマウスの右脇腹に皮下注射した(0日目)。腫瘍移植後6日目に、マウスを腫瘍サイズに基づいてグループ化し、示した用量で5mg/kg−1の抗GITR(DTA1)および/または抗PD−1(RPM1−14)AbまたはアイソタイプコントロールIgG(ラットIgG2b、LTF−2およびラットIgG2a、2A3)を用いた腹腔内注射で治療した(AbはBio X Cell社から得た)。抗体を13日目に再投与した。抗PD−1(aPD−1)と抗GITR(aGITR)Abマウスの併用で治療したマウスは、80日以上にわたり腫瘍を有しないままであった。これらのマウスを3x10
5個のMC38細胞および2.5x10
5個のB16F10.9細胞の双方で再攻撃した。未感作マウスを腫瘍移植コントロールとして使用した。
【0115】
T細胞サブセット枯渇実験については、併用療法またはアイソタイプコントロールIgGのいずれかで治療されたマウスを、抗CD4、クローンGK1.5を含む300μgの枯渇mAbで治療し;抗CD8クローン2.43およびラットIgG2bアイソタイプ(BioX Cell社)および抗CD25、クローンPC61(eBioscience社)、ラットIgG1アイソタイプ(HPRN、Bio X Cell社)枯渇Abを、腫瘍攻撃の一日前(−1日目)と、週に二回、合計八投与量とを与えた。枯渇効率は、末梢血サンプルのFACS解析によって確認された。腫瘍の垂直直径は、デジタルキャリパー(VWR社、ペンシルバニア州ラドナー)を使用して週当たり2〜3回盲検的に測定された。式L×W×0.5を使用して体積を計算したが、式中、Lは最長寸法であり、Wは垂直寸法である。カプラン・マイヤー法による各々の群に対して生存率の差異が決定され、Prismバージョン6(GraphPad Software Inc社)による生存率解析を使用したログランク検定によって全体的にP値が計算された。腫瘍量が、罹患を最小化する最大腫瘍体積のプロトコル指定のサイズ2000mm
3に達したら、事象を死亡として規定した。
【0116】
実施例2
単一細胞ソーティングRNA−seq分析
腫瘍攻撃後8日目および11日目に、腫瘍の単一細胞懸濁液をマウス腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec社)によって調製し、脾臓をgentleMACS Octo Dissociatorで分散した。同じ治療群からの腫瘍および脾臓をプールし、生存可能なCD8+ T細胞をFACSによってソーティングした。FACSでソーティングしたT細胞を、5−から10−μmのC1集積流体回路(IFC;フルーダイム社)にロードする前にC1細胞懸濁試薬(フルーダイム社)と混合した。LIVE/DEAD(生/死)染色溶液(Thermo Fisher)を、2.5μLエチジウムホモダイマー−1、及び0.625μLカルセインAM(Life Technologies社)を1.25mLのC1細胞洗浄緩衝液(フルーダイム社)に添加して調製し、20μLをC1 IFCにロードした。各捕捉部位は、細胞のダブレットおよびバイアビリティについて、明視野、緑色蛍光タンパク質(GFP)、テキサスレッドチャネルのZeiss顕微鏡下で注意深く調べた。細胞溶解、逆転写、およびcDNA増幅は、メーカーにより指定されるとおり(プロトコル100−7168 E1)、C1シングルセルオートプレップIFCシステム上で実施された。SMARTer Ultra Low RNAキット(Clontech社)を、単一細胞からのcDNA合成に使用した。メーカーの推奨事項(プロトコル100−7168 E1)に従い、Nextera XT DNAサンプル調製キット(イルミナ社)を使用して、イルミナNGSライブラリを作成した。合計2,222個の単一細胞を、75サイクルの多重化シングルリードランでイルミナNextSeq(イルミナ社)において配列決定した。
【0117】
【表8】
これらの細胞のそれぞれからの未加工の配列データ(BCLファイル)を、イルミナCasava 1.8.2を介してFASTQ形式に変換した。リードはそのバーコードに基づいて解読された。FastQC(www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/fastqc/)を使用してリード品質を評価した。TCR解析については、TCR配列、特にランダムプライミングショートRNAシーケンシングリードからのTCR−CDR3配列を再構築および抽出するための、ランダムプライミングショートリードTCR(rpsTCR)分析を含む開示された方法を使用した。(
図1を参照されたい)。rpsTCR法は、ペアエンドおよびシングルエンドのショートリードを提供し、デフォルトパラメータによるTopHat43を使用して、これらリードをマウスまたはヒトのゲノムおよびトランスクリプトームにマッピングするが、TCR遺伝子座位および転写物に対してはマッピングしない。したがって、ネガティブセレクションにより、マッピングされたリードの廃棄が可能になり、マッピングされなかったリードがTCR配列の抽出にリサイクルされる。マッピングされなかったリードの低品質ヌクレオチドをトリミングした(すなわち、35bp未満の長さのリードは、HTQCツールキットを使用して除外した)。QCが合格であったショートリードを、iSSAKEのデフォルト設定を使用して、より長いリードに構築した。TCRklassを使用して、デフォルトで1.7〜2に設定されたScr(保存された残基の支持スコア)を持つCDR3配列を特定した。
【0118】
実施例3
腫瘍担持マウスから単離された腫瘍浸潤性T細胞の分析。
開示された方法(パイプライン)は、単一細胞ソーティングしたRNAseqデータを使用してTCR配列を再構築し、抽出し、分析するために利用し、腫瘍反応性と患者生存と潜在的に関連する高頻度T細胞クローンの特定を可能にした。パイプラインは、腫瘍担持マウスから単離された1379 CD8
+T細胞のトランスクリプトームをプロファイルするために使用された。早期時点(8日目)では、高頻度T細胞の非常に少ないクローンが(同一のTCR配列を共有する少なくとも3個のT細胞として規定される)、すべての治療群で検出された(
図2)。11日目までに、アイソタイプコントロールサンプル由来の配列決定された単一CD8+ T細胞の5.7%を表す2つの高頻度T細胞クローンを特定し、抗GITRサンプルについては3クローン/20.3%、抗PD−1サンプルについては6クローン/26.7%、併用療法サンプルについては10クローン/31.9%であった。この結果は、8日目〜11日目の間で、腫瘍内CD8+ T細胞の強いクローン性増殖が主に抗PD−1治療によって駆動されたことを示す。
図3には、抗PD1(aPD1)または抗GITR(aGITR)のいずれかを投与する単剤(モノ)療法と比較した、腫瘍担持マウスの併用療法で特定されたクローン性増殖T細胞の数の有意性を示す。抗GITRおよび/または抗PD−1は、末梢または脾臓T細胞のクローン性に影響を与えず(
図2)、抗PD−1(ペムブロリズマブ)治療が末梢血T細胞のクローン性に影響を与えなかったことを示す患者データと一致する。単剤療法は腫瘍内CD8
+ T細胞クローンを増殖させ、危険な遺伝子経路を調節したが、完全な腫瘍拒絶反応には不十分であった。データは、併用療法による機能障害性腫瘍浸潤性T細胞の大幅な初期化が、完全な腫瘍拒絶反応のために必要であることを示唆する。
【0119】
実施例4
腫瘍由来TCRに対するT細胞活性化アッセイ
特定されたCDR3配列を含む単離されたTCRを発現するJRT3細胞株におけるルシフェラーゼ発現によって、T細胞活性化アッセイを測定した(
図6A〜6D)。高度に増殖した(すなわち、10クローンが特定された)抗GITR治療された腫瘍T細胞から単離されたCDR3配列を含むTCR(TCR配列Seq.17)が、JRT3細胞株で発現された。JRT3は、元の抗原、MC38(
図6A)を発現する腫瘍の存在下で活性化に至り、トランスフェクト細胞株が抗原を認識することを示している。TCR配列Seq.17発現細胞株もまた、抗CD3/抗CD28で刺激した場合に活性化に至る(
図6B)。アナログ試験は、TCR配列Seq.12発現細胞株(TCR CDR3配列をクローンサイズが8であるaPD−1刺激T細胞から単離した)を用いた。TCR配列Seq.12発現細胞株は、元の抗原を発現する腫瘍の存在下で活性化されて(
図6C)、抗CD3/抗CD28の存在下で活性化された(
図6D)。
【0120】
実施例5
遺伝子発現解析
腫瘍担持マウスから単離された1379CD8+T細胞のトランスクリプトーム(配列のマッピングされた部分)をプロファイルするために、遺伝子発現解析ツールもまた利用された。併用療法サンプルからのクローン性増殖CD8
+T細胞における固有の遺伝子シグネチャを特定するために、治療群間で比較を実施した。クローン性増殖後のT細胞系統を、細胞表面マーカーの発現パターンに相関する、発現したTCR CDR3配列により特定した。
図4を参照されたい。したがって、クローン性T細胞は、エフェクターメモリー細胞(Tem)(Cd62L−Cd44+Gzmb+)、エフェクターT細胞(Teff)(Cd62L−Cd44−Gzmb+)(または未分類の細胞、すなわち未感作TCR細胞(Cd62L+Cd44−Gzmb−)または中央メモリーT細胞(Tcm)(Cd62L+Cd44+Gzmb−)等である、発現したTCRを有するT細胞が3個未満であれば、非クローン性発現)として分類された。
【0121】
遺伝子発現解析ではまた、各治療群において、クローン性増殖した細胞および非クローン性増殖した細胞にわたって異なるように発現した遺伝子プロファイルが得られた。CD226は、異なる比較対間で共有される二つの遺伝子のうちの一つとして特定された(
図5)。
図5は、治療の11日目にaGITR+aPD1治療群の増殖した腫瘍内CD8+ T細胞で好ましく発現されることが遺伝子を示すベン図である。ベン図は、治療群間のクローン性増殖/非増殖のCD8+ T細胞の遺伝子シグネチャ解析を要約する。CD226およびPDE4Dは、異なる比較対間で共有される二つの遺伝子として特定された。
【0122】
図5は、aGITRおよびaPD1を用いた併用療法で発現された遺伝子を他のすべての治療と比較した場合に、二つの遺伝子が好ましく発現されることを示す。二つの遺伝子はCD226とPde4dである。ベン図の下の表は、aGITRおよびaPD1での併用療法で発現された遺伝子を他のすべての治療と比較したときの、各遺伝子の発生を提供する。したがって、開示された方法は、腫瘍細胞に対する免疫応答の役割を果たす特異的な遺伝子を特定するために使用することができる。
【0123】
CD226は、抗腫瘍応答に重要な役割を果たす共刺激分子である。各治療群にわたる腫瘍内CD8
+T細胞の異なるサブセット(合計、クローン性増殖、または非増殖)における発現解析によって、CD226 mRNAのレベルがクローン性増殖T細胞における併用療法によって著しく増加した(
図7A)一方で、この相違は合計および非増殖のCD8
+ T細胞では希薄であったということが明らかになった。この観察は、推定の腫瘍反応性クローン(高頻度T細胞クローン)におけるゲノムプロファイリングを実施する重要性を強調するものであり、重要な遺伝子の変化を明らかにし、またT細胞活性に影響を及ぼす有効な治療について有益であるバイオマーカーの特定を可能にする。
【0124】
図7Aに合計の、クローン性増殖または非増殖のCD8 T細胞における、重要な調節遺伝子CD226の発現を示す累積分布関数(CDF)プロットを図示している。クローン性増殖CD8細胞は、CD226の最も高い発現を示す。本開示の方法は、特定の遺伝子とより良い相関関係またはその発現を示す対象を分類するために有用である。これらのデータはまた、特定の治療中に発現がT細胞増殖と相関しているかどうかを知らせる予後徴候の遺伝子を特定する方法の有用性を示し、従って効能の可能性を示唆する。黒色腫、肺扁平上皮細胞癌および肉腫を有する患者のT細胞から分析された場合、CD226は生存の改善と有意に相関する(
図7B)。
図7Bは、黒色腫、肺扁平上皮細胞癌、および肉腫を有する患者のCD226発現レベルおよび全生存のTCGAデータ解析を例示する。(*、P<0.05、**、P<0.01;***、P<0.001、****、P0.0001選択された関連する比較の間において)。示されるように、CD226は生存の改善と相関する。
【0125】
実施例6A
PD−1およびGITR併用免疫療法における持続的な抗腫瘍応答を媒介するCD226/TIGIT軸
はじめに
免疫チェックポイントPD−1およびCTLA−4を標的とする単剤療法または併用療法は、特定の癌患者集団において有意な臨床利益を示す。しかしながら、患者の大部分は抵抗性であるか、または一過性的にのみ応答し、患者特異的な腫瘍感度に対処するために最適な免疫調節性標的の選択について根本的な問題を提起する。強力なT細胞活性化を誘発するための特定の共阻害性および共刺激性経路を標的とする併用療法は、より持続的な抗腫瘍応答をもたらしうる。ここで、現在早期臨床試験において前臨床的に検証されたモダリティである、PD1およびGITR併用療法は、長期的な応答を駆動する分子経路を特徴付けるために使用された。2,000個以上の腫瘍浸潤性CD8
+ T細胞から調製された単一細胞RNA−seqライブラリを配列決定し、GITR抗体とPD−1抗体の組み合わせが、重要な恒常性調節因子CD226およびTIGITのバランスを回復することによって、相乗的にCD8
+ T細胞エフェクター機能を増強し、結果として著しい生存利益がもたらされるということがわかった。実際に、抗PD−1治療がCD226細胞表面発現を強化した。しかしながら、PD−1単剤療法は、TIGITによって媒介される阻害シグナル伝達を克服するのには不十分であった。抗GITR抗体は、T細胞上のTIGIT発現を減少させた。従って、併用療法はCD8
+ T細胞応答の強度を相乗的に調節し、強力な適応免疫性を誘発した。実際に、CD226の遺伝的不活性化または薬理学的阻害が、併用療法によって媒介された腫瘍退縮を逆行させたことから、CD226を介した共刺激は抗腫瘍免疫に不可欠であるが、一方で、その他のTNF受容体またはB7スーパーファミリーメンバーの阻害は影響がなかった。重要なことに、抗PD−1治療の前後の43例の進行癌患者からの腫瘍生検に対するRNA−seq解析は、抗PD−1治療後にCD226発現が著しく増加したことを明らかにした。さらなる高レベルのCD226は、異なるタイプの癌を有する患者のより良好な予後と相関した。このようなバイオマーカーは、PD−1/PDL−1に加えて患者選定を改善する可能性がある。恒常性調節因子を再調節することによって持続的な抗腫瘍応答を駆動する分子経路を明らかにさせる体系的なアプローチは、併用免疫療法を最適化するために重要であり得る。
【0126】
PD−1およびCTLA4抗体治療の臨床的成功に続いて、免疫療法における薬剤の治療的な手段は急速に拡大している。主な目標は、癌患者の単剤療法アプローチで達成された抗腫瘍応答の限定的奏功率および/または持続性を改善することである。強力なT細胞活性化を誘発する、特異的な共阻害性(PD−1)および共刺激性(GITR、グルココルチコイド誘発性TNFR関連タンパク質、TNFRSF18)経路を標的とする併用療法が現在、転移性黒色腫および他の固形腫瘍を持つ患者のための早期臨床試験で評価されている。実際に、ヒトの癌の多様なセットの制御におけるT細胞の臨床的関連性は、現在のところ疑いの余地がない。GITRは、T
reg細胞上で高レベルで恒常的に発現され、活性化して他のリンパ球上で誘発されうる。DTA−1、拮抗的な抗マウスGITR Abは腫瘍内T
reg細胞を減少させて、FcγR依存性腫瘍拒絶反応を媒介する。さらに、GITR受容体を拮抗的Abと係合させることで、エフェクターT細胞に直接共刺激性信号を送達する。抗GITRおよび抗PD−1 Abの単剤療法は大きな免疫原性腫瘍または不十分な免疫原性腫瘍において効能が制限される一方、併用療法は卵巣および乳房腫瘍モデルの長期生存を促進する。しかしながら、こうした相乗効果の下にある分子機構はわかっていない。ここで、PD1とGITRの併用療法を使用して、マウスMC38結腸腺癌モデルにおける2000個以上の腫瘍浸潤性CD8
+T細胞を、遺伝子的にプロファイリングした。体系的なアプローチにより、持続的な抗腫瘍応答を駆動する分子経路を明らかにし、既存の併用免疫療法を最適化し、患者の層別化および腫瘍感度を高める新しい潜在的バイオマーカーを特定する基礎が提供された。
【0127】
方法
細胞株および組織の培養。MC38マウス結腸癌細胞およびRENCAマウス腎腺癌細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手され、37℃、5%CO
2で、10% FBS、100U mL
−1のペニシリンおよび100μg ml
−1のストレプトマイシン、2mM
L−グルタミン、100μM NEAA(ThermoFisher Scientific社)を補ったDMEM 培地中で培養した。内因性TCR発現を欠いているJ.RT3−T3.5変異Jurkat細胞株を、ATCCから入手し、10%FBSを含むRPMI−1640培地中で維持した。腫瘍細胞株を、インパクト試験(IMPACT test)によりマイコプラズマ病原体および齧歯類の一般的な病原体に対して陰性試験した。MC38−OVA−β
2m−K
bは、MC38腫瘍細胞を、SIINFEKLペプチド−スペーサーβ
2マイクログロブリン−スペーサーMHCクラスI(K
b)重鎖からなる単一三量体をコードするレンチウイルスベクター(LV)で形質導入することによって生成された。単一三量体の表面発現は、25D−1.16 Ab(eBioscience社、
図21A)により確認した。MC38− OVA−β
2m−K
b は、1.25μg ml
−1のピューロマイシン(ThermoFisher Scientific社)を含む選択培地で維持された。CD155を過剰発現するMC38腫瘍細胞は、マウス完全長CD155をコードするLVで形質導入することによって生成し、FACSで上位5%の発現細胞をソーティングした。CD155の発現レベルは、FACS解析によって確認された(
図24C)。
【0128】
マウス。六〜八週齢のメスのC57BL/6マウスをJackson Laboratory社から入手した。C57BL/6バックグラウンドのCD226
−/−およびTIGIT
−/−マウスを、VelociGene(登録商標)法を使用してリジェネロン社(Regeneron)において生成した。簡潔に述べると、遺伝子本体の転写を妨害し、結果としてCD226またはTIGITヌル対立遺伝子を生じさせる選択カセットが続くEGFP(CD226用)またはLacZ cDNA(TIGIT用)を、開始コドンに対してインフレームに挿入した。ヘテロ接合性の標的マウスを異種交配させ、試験のためにホモ接合性ノックアウトマウスを作製した。すべての動物は、病原体のない条件下で維持され、Regeneron Pharmaceuticals社の実験動物委員会(IACUC)によって承認されたプロトコルに従って実験が実施された。
【0129】
In vivoマウス試験。MC38腫瘍試験のため、3x10
5個のMC38細胞を、同年齢のC57BL/6マウスの右脇腹に皮下注射した(0日目)。腫瘍移植後6日目に、マウス(異なる群にランダムに分配した)を腫瘍サイズに基づいてグループ化し、示した用量で5mg/kg
−1の抗GITR(DTA1)および/または抗PD−1(RPM1−14)AbまたはアイソタイプコントロールIgG(ラットIgG2b、LTF−2およびラットIgG2a、2A3)を用いた腹腔内注射で治療した(抗体はBio X Cell社から得た)。13日目に抗体を再投与した。抗体枯渇実験については、併用療法またはアイソタイプコントロールIgGのいずれかで治療されたマウスを、抗CD4(クローンGK1.5);抗CD8(クローン2.43)およびラットIgG2bアイソタイプ(クローンLTF−2)、ラットIgG1アイソタイプ(クローンHPRN、Bio X Cell社)および抗CD25(クローンPC61、eBioscience社)を含む、300μgの枯渇またはアイソタイプコントロールmAbで治療した。枯渇Abを、腫瘍攻撃の一日前(−1日目)と、週に二回、合計八投与量とを与えた。枯渇効率は、末梢血サンプルのFACS解析によって確認された(
図16C)。この試験で使用される阻止抗体には、抗CD226 Ab(クローン10E5、ラットIgG2b、eBioscience社、25mg/kg)、CD28阻止(CTLA4−Fc、オレンシア(Orencia)、BMS社、10 mg/kg)、抗OX40L(クローンRM134L、ラットIgG2b、Bio X Cell社、10mg/kg)および抗4−1BBL(クローンTKS−1、ラットIgG2a、Bio X Cell社、10mg/kg)が含まれる。阻止Abを、免疫療法の1〜2日前に二週間、腹腔内注射により週二回投与した。腫瘍の垂直直径は、デジタルキャリパー(VWR社、ペンシルバニア州ラドナー)を使用して週当たり2〜3回盲検的に測定された。式L×W×0.5を使用して体積を計算したが、式中、Lは最長寸法であり、Wは垂直寸法である。カプラン・マイヤー法による各々の群に対して生存率の差異が決定され、Prismバージョン6(GraphPad Software Inc社)による生存率解析を使用したログランク検定によって全体的にp値が計算された。腫瘍量が、罹患を最小化する最大腫瘍体積のプロトコル指定のサイズ2000mm
3に達したら、事象を死亡として規定した。
【0130】
フローサイトメトリー。in vivo実験のフローサイトメトリー解析については、血液、脾臓、胸腺、リンパ節および腫瘍を、治療後の示した日に採取した。単一細胞懸濁液を調製し、赤血球をACK溶解緩衝液(ThermoFisher Scientific社)を使用して溶解した。Live/dead fixable blue dead cell染色キット(ThermoFisher Scientific社)を使用して、生/死細胞を判別した。はじめに、細胞を、4℃で20〜30分間、表面マーカー用Abで染色した。細胞内染色を固定/透過キット(eBioscience)を用いて行った。OVA特異的CD8 T細胞を定量化するために、表面マーカーを染色する前に、はじめに室温で10分間、H−2Kb/SIINFEKL−ペンタマー(ProImmune社)で単一細胞懸濁液を染色した。細胞内サイトカイン染色(ICS)については、SIINFEKLペプチドを用いて、または用いずに細胞を36時間刺激し、最後の4時間、タンパク質輸送阻害剤(BD Bioscience社)を用いて細胞を刺激した。刺激後、細胞を表面および細胞内タンパク質について上述のように染色した。組織中の細胞数を定量化するために、取得前に固定数のCountBright細胞絶対数計数用ビーズ(ThermoFisher Scientific社)を各サンプルに添加した。サンプルはFortessa X20またはLSR II(BD Bioscience社)上で取得され、FlowJoソフトウェア(TreeStar社)を使用して解析された。使用される抗体リストについては、補足的方法を参照のこと。
【0131】
単一細胞ソーティングRNA−seq分析。腫瘍攻撃後8日目および11日目に、腫瘍の単一細胞懸濁液をマウス腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec社)を用いて調製し、脾臓をgentleMACS Octo分散・破砕装置で分散した。同じ治療群からの腫瘍および脾臓をプールし、生存可能なCD8
+ T細胞をFACSによってソーティングした。FACSでソーティングしたT細胞を、5−から10−μmのC1集積流体回路(IFC;フルーダイム社)にロードする前にC1細胞懸濁試薬(フルーダイム社)と混合した。LIVE/DEAD(生/死)染色溶液を、2.5μLエチジウムホモダイマー−1、及び0.625μLカルセインAM(Life Technologies社)を1.25mLのC1細胞洗浄緩衝液(フルーダイム社)に添加して調製し、20μLをC1 IFCにロードした。各捕捉部位は、細胞のダブレットおよびバイアビリティについて、明視野、GFP、テキサスレッドチャネルのZeiss顕微鏡下で注意深く調べた。細胞溶解、逆転写、およびcDNA増幅は、メーカーにより指定されるとおり(プロトコル100−7168 E1)、C1シングルセルオートプレップIFCシステム上で実施された。SMARTer Ultra Low RNAキット(Clontech社)を、単一細胞からのcDNA合成に使用した。メーカーの推奨事項(プロトコル100−7168 E1)に従い、Nextera XT DNAサンプル調製キット(イルミナ社)を使用して、イルミナNGSライブラリを作成した。合計2,222個の単一細胞を、75サイクルの多重化シングルリードランでイルミナNextSeq(イルミナ社)において配列決定した。未加工の配列データ(BCLファイル)を、イルミナCasava 1.8.2を介してFASTQ形式に変換した。リードはそのバーコードに基づいて解読された。FastQC(bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/fastqc/) を使用してリード品質を評価した。
【0132】
LUV(大きな単層膜リポソーム)。リン脂質(79.7%のPOPC+10%のPOPC+10%のDGS−NTA−Ni + 0.3%のローダミン−PE)を、アルゴン雰囲気下で乾かし、少なくとも1時間乾燥させ、1x反応緩衝液(50mMの HEPES−NaOH、pH7.5、150mMのNaCl、10mMのMgCl2、1mMのTCEP)中で懸濁させた。LUVは、前述の通り、200nmの空孔サイズを持つ一対のポリカーボネートフィルターを通して20回押し出すことによって調製された。
【0133】
LUV再構成およびホスホチロシンウェスタンブロット。関心のタンパク質を、0.5mg/mlのBSAを含有する1×反応緩衝液中で所望の比で予混合し、次いでLUV(1mM総脂質)と混合した。タンパク質−LUV混合物は、室温で1時間インキュベートされたが、その間、Hisタグ付きタンパク質がリポソームに結合し、一方、その他のタンパク質は小胞外(extravesicular)液中に残った。次いで、2mMのATPを注入し、急速に混合し、膜表面でリン酸化、脱リン酸化およびタンパク質相互作用を誘発した。室温で30〜60分間反応させて、SDS試料緩衝液で終了させた。サンプルを95℃で5分間加熱し、SDS−PAGEに供した。タンパク質を、iBlotTM Dryブロッティングシステム(ThermoFisher Scientific社)を使用してニトロセルロース膜に移した。膜を0.1%Tween−20を含むトリス緩衝生理食塩水(pH7.4)中で5%BSAでブロッキングし、所望のホスホチロシン特異的抗体と共にインキュベートし、HRPベースの増強化学発光を用いて検出した。以下の一次抗体を使用した:抗pY142−CD3ζ(BD Biosciences社、#558402)、抗pY20(Santa Cruz Biotechnology社、#sc−1624、再構成アッセイでチロシンリン酸化CD28の検出用)、抗pY418−Src(BD Biosciences社 #560095、pY394−Lckの検出用)、抗pY505−Lck(Cell Signaling社、#2751)、抗pY315−ZAP70(Abcam社、#ab60970)、抗pY493−ZAP70(Cell Signaling社、#2704)。
【0134】
臨床生検の取り扱い、RNA抽出およびRNA配列(RNA−seq)。生検材料は、Omni Shredder(Omni−Inc社)で、22,000 RPMで1分間、メルカプトエタノール添加の少なくとも600uLのRLTPlus(Sigma Aldrich)でホモジナイズした。RNAおよびDNAは、Qiagen Allprep DNA/RNAミニキット(Qiagen社)を用いて、「AllPrep DNA/RNA Mini Handbook」(2005年11月)の第26頁の「Protocol:Simultaneous Purification of Genomic DNA and Total RNA from Animal Tissues.(プロトコル:動物組織からのゲノムDNAおよび全RNAの同時精製)」にあるプロトコルにあるメーカーの指示に従って注出した。 RNA抽出中、付録Eに概説されている任意のDNAse消化を使用した。2分間のスピンでさらに500uLの70%エタノール洗浄を、緩衝液AW2洗浄の後に実行したが、最後の乾燥のためのスピンの前に、DNA抽出物から過剰な塩を除去した。RNAをNanodrop(ThermoFisher Scientific社)で定量化し、その品質を、メーカーのプロトコルに従い「標準感度RNA分析キット」(Advanced Analytical社)により断片分析器(Advanced Analytical社)で評価した。DNAは、カスタムプロトコル「Using the Tecan Microplate Reader for DNA Quantification(BR dsDNAアッセイ)」に従って、Infinite M200 Pro(テカン社)でQubit dsDNA BRアッセイキット(ThermoFisher Scientific社)により定量化した。完了したサンプルをバーコード付きスクリューキャップチューブ中で−80℃で保存した。RNA−seqについては、鎖特異的RNA−seqライブラリを、KAPA鎖mRNA−Seqキット(KAPA Biosystems社)を使用して100ngの全RNAから調製し、400〜600bpのサイズのライブラリをPippinシステム(Sage Science社)を用いて選択した。ペアエンド2×100bpのシーケンシングを、Illumina 2500を使用して行った。RNA−seqリードをQCして、基準ゲノムに対して並列させ、アレイスタジオ(Omicsoft社)を使用して遺伝子発現を定量化した。
【0135】
統計分析。サンプルサイズは、適切な統計的出力を確保するように経験的に選択され、試験で用いられる技術の分野の標準と合っていた。P<0.05レベルの有意性で不等分散があると仮定して、ANOVAまたは対応のない両側スチューデントt検定で、統計的有意性が決定された(または図の凡例に示されている)。
【0136】
結果
併用免疫療法効果を調べるために、不完全な免疫原性腫瘍モデル(MC38およびRENCA)を使用した。腫瘍体積の可変性の縮小およびわずかに延びた生存時間が報告されてきたが、抗PD−1または抗GITR Abでの単剤療法は、定着腫瘍における完全かつ持続性の腫瘍退縮の誘発には効果的ではない。ここで、腫瘍が触知可能であったときに、腫瘍攻撃の6〜13日後に抗体を投与した。公開されているデータと一致して、抗GITRまたは抗PD−1治療単独では、効果はないか又はほぼなかった。併用療法により、マウスの大部分において相乗的に腫瘍が根絶され(17例のうち12例で腫瘍が無い)(
図16A)、CD8
+ T細胞依存的な様式(
図16Cおよび
図16D)で、長期生存を促進し(マウスの約70%が>80日間無腫瘍であった)(
図16B)、以前のデータと一致して、腫瘍内CD8
+/T
regおよびCD4
+ Tエフェクター(T
eff)/T
reg細胞の比が増加した(
図16E、
図16F)。50日後、単剤療法治療群では、17例のマウスのうち0〜2例のみが腫瘍が無く、0〜10%が生存した(
図16A、
図16B)。さらに、回復したex vivo増殖力(Ki67の発現、
図16G)およびエフェクター機能(グランザイムAおよびグランザイムBの発現、
図16Hおよび
図16I)が示すように、腫瘍内CD8
+ T細胞の機能異常状態が、併用療法のみで有意に逆行した。より良好な生存率に関連する併用療法の相乗的抗腫瘍効果も、第二のマウスRENCA腫瘍モデルで確認された(
図16J)。
【0137】
併用療法サンプルからのクローン性増殖CD8
+ T細胞(11日目に採取した腫瘍)における固有の遺伝子シグネチャを特定するために、異なる治療群間で包括的な比較を実施した。第一に、併用療法後の30個の遺伝子におけるRNAシグネチャの変化が観察されたが、これは増殖したCD8T細胞集団内でより顕著であった(
図10Aおよび
図20)。次に、併用療法対単剤療法の比較で特異的に調節されている遺伝子を特定するために、すべての群にわたって四方向の比較を行った(
図10B)。CD226は、異なる比較対間で共有される二つの遺伝子のうちの一つとして特定された(
図10B)。CD226は、抗腫瘍応答で重要な役割を果たす共刺激分子である。各治療群にわたる腫瘍内CD8
+T細胞の異なるサブセット(合計、クローン性増殖、または非増殖)の発現解析によって(
図10C)、CD226 mRNAレベルがクローン性増殖T細胞における併用療法によって著しく増加した(倍率変化=10.7)一方で、この相違はバルク(倍率変化=3.5)および非増殖(有意でない)のCD8
+ T細胞では希薄であった(
図10D)。さらに、CD226 mRNAレベルは、抗PD−1(倍率変化=6.5)および抗GITR(倍率変化=9.2)と比較すると、クローン性増殖CD8 T細胞に対する併用療法によって著しく増加した(
図10D)。この観察は、推定の腫瘍反応性クローン(高頻度T細胞クローン)におけるゲノムプロファイリングを実施する重要性を強調し、重要な遺伝子の変化を明らかにしている。
【0138】
併用療法後、腫瘍内CD8 T細胞上のCD226の発現レベルを評価するために、MC38特異的TCRクローンを、最近公表された変異型MC38腫瘍エピトープを使用してin vivoで追跡した。このアプローチは成功しなかった。これらのT細胞クローンが以前に特徴付けられたMC38腫瘍ネオエピトープを認識できないことは、ラボ間の腫瘍細胞株の異なる突然変異ステータスを反映している可能性があり、腫瘍細胞のゲノム不安定性に起因する可能性がある。所見を機能的に検証するために、SIINFEKLペプチドおよびβ
2m(OVA−β
2m−K
b)を含む、MHCクラスIのH−2Kb単鎖三量体を発現するMC38腫瘍細胞株を生成して(
図21A)、SIINFEKLを代用腫瘍エピトープとして使用した。TCRクローン性分析と一致して、抗PD−1 Abまたは抗GITRとの併用療法が、腫瘍浸潤性T細胞において、OVA特異的CD8
+ T細胞の著しいクローン性増殖を誘発したが(K
b/OVAペンタマー染色を使用)、併用療法のみがAg特異的なCD8
+ T細胞クローンの腫瘍内密度を著しく増加させた(
図21B)。さらに、併用療法のみが脾臓内のOVA特異的CD8
+ T細胞を、コントロール群と比較して著しく増殖させたが(
図21B)、それによって以前の所見が拡張される。これらのクローン性増殖したOVA特異的T細胞は機能的であり、コントロールよりもOVAペプチドで再刺激に際してより高いレベルのIFNγを産生した(
図21C)。重要なことは、MC38−OVA−β
2m−K
bモデルを使用して、抗PD1治療後のCD226のベースラインレベルが脾臓OVA特異的CD8
+ T細胞において最も高く(
図11A)、さらに、抗GITRおよび抗PD−1 Abを用いた併用療法によって高められたということが見出された。同じ療法で、非特異的CD8
+ T細胞のCD226レベルに対する有意な効果はなかった。全体的な抗PD−1治療は、CD226(
図11A)を増加させることにおいて主要な役割を果たし、抗腫瘍免疫性における抗PD−1の作用モードに関する重要な情報を提供する。
【0139】
次に、PD1分子およびCD226分子間の会合を調査した。最近のデータが、T細胞の細胞膜を模倣するLUV(大きな単層膜リポソーム)の表面にPD1の細胞質領域が結合するものである細胞遊離再構成系において、蛍光エネルギー移動(FRET)ベースのアッセイを使用して、PD1によるShp2の非常に特異的な補充(recruitment)を実証した。CD226が、PD1−Shp2複合体による脱リン酸化の標的であるかどうかを調べるために、T細胞シグナル伝達に関与する様々な成分(CD3、CD226、および凡例/方法)を、リポソーム上で再構成した(
図11B)。LUV上のPD−1滴定に対する各成分の感度を、ホスホチロシン(pY)ウエスタンブロットによって測定した。TCR/CD3ζが、PD−1−Shp2による脱リン酸化に対して感度の高い標的でなかったことを示した以前に公表されたデータが確認された(
図11C)。重要なことに、CD226は、用量依存的様式でPD1−Shp2によって非常に効率的に脱リン化されたことが見出された(
図11C)。データは、PD−1とCD226との間の会合を示す。
【0140】
最近、CD8
+ T細胞応答の強度が、CD226と共阻害受容体TIGITとの間の全体的バランスによって影響を受けるということが証明された。興味深いことに、単一細胞RNA−seqを使用することで、抗GITR Ab治療が高頻度T細胞クローンにおけるTIGIT転写物が増加させたことが見出され(
図22A)、一方、FACS分析により、OVA特異的CD8
+ T細胞上でのTIGITの発現で著しい減少を示した(
図22B)。この結果は、転写後レベルでTIGIT発現が厳しく調節されるという以前の所見と一致している。TIGIT/CD226シグナル伝達経路に関してシス阻害機構およびトランス阻害機構の両方が提案されてきたため、正味結果は、CD8
+ T細胞上のCD226と、両方のCD8
+ T細胞上のTIGITとの発現レベルのバランスに起因し得、リンパ球のそばに存在し得る。実際に、併用療法によってTIGIT
+細胞の割合と、大きい腫瘍浸潤性のCD8
+、CD4
+ T
eff およびT
reg 細胞において細胞一個あたりの発現レベルとが著しく減少し、その効果は、主に抗GITR Ab治療によって駆動された(
図11Dおよび
図22C)。驚くべきことに、この効果はまた、脾臓T細胞のサブセットでも見つかった(
図11Dおよび
図22C)。併用療法および/または単剤療法は、バルクCD226
+ 腫瘍浸潤性のまたは脾臓のCD4
+およびT
reg細胞には効果がなかった(
図22D)。全体的な単一細胞ソーティングしたRNA−seqおよびFACS表現型データは、抗PD−1がCD226の発現を助ける一方で、抗GITR治療は、TIGITの表面発現を下方制御し、恒常性T細胞機能を相乗的に回復することを示した。
【0141】
CD226阻止mAbを使用して、併用療法によって媒介される抗腫瘍免疫性に対してCD226を通した共刺激シグナル伝達が必要であることが示された(
図12A)。しかしながら、CD226 Abは、CD8 T細胞のサブセットに対して潜在的な枯渇効果がある可能性があるため、CD226はC57BL/6バックグラウンドマウスにおいて遺伝学的に不活性化され、この試験が繰り返された(
図23A、B)。CD226
−/−マウスは、T細胞(CD4
+、CD8
+、T
regs)の恒常性における欠損を示さず(
図23C〜E)、野生型マウスと同様にTCR活性化に対して応答した(
図23F)。重要なことに、併用療法は、CD226
−/−マウスにおいて、抗腫瘍効果または生存利益を最早もたらさず、併用の観察された抗腫瘍効果に対してCD226が不可欠であることを示すということが見出された(
図12B)。さらに、併用療法によって媒介された抗腫瘍効果を保存したCTLA4−Igを用いて、TNF受容体スーパーファミリー(OX40Lまたは4−1BBL)の他のメンバーの阻害またはB7共刺激性分子(CD28)の遮断として、効果を媒介するCD226経路の特異性が検証された(
図12C〜E)。
【0142】
さらに、CD226シグナル伝達経路は、TIGIT
−/−マウスにおける腫瘍監視の強化に必要であった(
図24A、B)。興味深いことに、CD226、CD155/PVRに対する主要なリガンドを過剰発現するMC38腫瘍細胞を担持するマウスが(
図24C)、MC38−エンプティベクター(MC38−EV)の腫瘍細胞またはアイソタイプコントロールで治療したマウスと比較して、抗PD−1もしくは抗GITR、または併用療法において腫瘍増殖の著しい遅延を示した(
図24D)。MC38−CD155が移植されたマウスの免疫プロファイリング解析により、移植後のM38−EV(空のベクター)に対するMC38−CD155細胞上のCD155発現レベルが持続的に高かったことが確認された(
図24E)。MC38腫瘍細胞上でのCD155の過剰発現は、CD4
+、CD8
+ TおよびT
regs細胞における検出可能なCD226発現の減少と関連し、一方で、増強されたIFNγによって示されるようなT細胞活性化と、腫瘍内T細胞上の4−1BBの発現とを押し上げた(
図24F、24G)。予想されるとおり、末梢では効果は観察されなかった。
【0143】
次に、臨床環境でPD−1阻害とCD226発現との関係を調査した。PD−1標的治療の前および後に、43例の進行癌患者から採取された腫瘍生検に対して、RNA−seq解析を行った(
図12F)。重要なことに、CD226発現は、癌患者において二回投与量の抗hPD−1治療の後で著しく増加した(
図12G)。さらに、TCGA(The Cancer Genome Atlas)からの臨床データは、CD226発現レベルが全体的なT細胞活性化強度と相関し、癌患者におけるより良好な予後が予測できるかどうかを調べるために調査された。実際に、高いベースラインのCD226発現を有する患者は、ここで評価した20種類の異なるタイプの癌のうち、5種類(皮膚の皮膚黒色腫、肺腺癌、頭頸部扁平上皮癌、子宮体部扁平上皮ガン、および肉腫)において生存可能性が著しく高い(
図12Hおよび
図25)。全体的に、これらの結果は、最大のT細胞活性化に対して同時にTIGITを阻害しながら、CD226シグナル伝達を押し上げる免疫療法戦略をサポートする。
【0144】
ここで、共刺激性アゴニストおよび共阻害性拮抗薬の強力な相乗効果を駆動する分子機構を明らかにする技術プラットフォームの使用により、持続的な抗腫瘍応答に必要かつ、次世代の腫瘍特異的併用療法を形成する可能性のある主要な機能性T細胞調節経路に光明を投じる、パラメータが解明された。
【0145】
実施例6B
TCRレパートリー分析バイオインフォマティクスパイプラインrpsTCRおよびその検証
TCR配列の抽出と構築。VおよびJ対立遺伝子情報、およびCDR3アミノ酸配列を考慮に入れて、VおよびJ対立遺伝子のアミノ酸配列をIMGTデータベース(imgt.org)から抽出した。次に、CDR3配列をV配列のC末端およびJ配列のN末端と並列させ、連続するVDJアミノ酸配列を作製した。それぞれのV対立遺伝子について、それが利用可能であり、VDJ配列のC末端にそれが付加される場合、その後リーダー配列(L)をIMGTから特定した。リーダー配列が利用可能でなかった場合には、最も頻度の高いリーダー配列を使用した。次いで、LVDJアミノ酸配列を、EMBOSS Backtranseqツール(ebi.ac.uk/Tools/st/emboss_backtranseq)を使用して、コドン最適化ヌクレオチド配列に逆翻訳した。最後に、TCRA/TCRB(IMGT由来)の定常(C)領域のヌクレオチド配列を、LVDJヌクレオチド配列のN末端に付加して、それによってクローニングのための完全LVDJC配列を得た。
【0146】
バイオインフォマティクスパイプラインは、ソーティングした単一細胞から生成したランダムプライミングRNAseqデータを使用して、TCR配列を抽出し、再構築し、分析するために開発および検証され、腫瘍反応性および患者生存と潜在的に関連する高頻度T細胞クローンの特定を可能にした。ロングリード(2×300bp)との標的TCRアンプリコンシーケンシングを使用した従来のTCR−seq方法とは異なり、ランダムプライミングRNA−seqリードの非常に小さい部分がTCR配列であり、リード長は短く(通常=<100bp)、それは通常、TCRのV(D)J領域の一部のみをカバーするものである。これらの問題に対処するために、TCR配列のネガティブセレクション工程が、パイプライン内のショートリード構築工程に組み込まれた。簡潔にいえば、このパイプラインは、ペアエンドおよびシングルエンドのショートリードを取り出して、これらリードをヒトまたはマウスのゲノムおよびトランスクリプトームにマッピングするが、TCR遺伝子座位および転写物に対してはマッピングしない(
図17および方法の項)。結果は、この方法が、高感度であり、ランダムプライミングRNA−seqデータのための正確なCDR3アセンブラーであることを示した(
図18、
図13および上記の実施例6Aの方法)。最後に、パイプラインを、1,379個のCD8+単一細胞RNA−seqデータのライブラリに適用した。TCRB−CDR3(86%)、TCRA−CDR3(78.2%)および対のTCRBおよびTCRA(73.1%)の検出率は、単一T細胞からの標的TCRシーケンシングを使用して報告された検出率と同等であった(
図14)。
【0147】
ここで、腫瘍が触知可能であったときに、腫瘍攻撃後6日目に抗体を投与した(
図9A)。上記バイオインフォマティクスツールを使用して、腫瘍攻撃後8日目および11日目に腫瘍担持マウスからソーティングした1379個のCD8
+ T細胞の単一細胞のトランスクリプトームをプロファイリングした。早期時点(8日目)では、高頻度T細胞の非常に少ないクローンが(同一のTCR配列を共有する少なくとも3個のT細胞として規定される)、すべての治療群で検出された(
図9B)。11日目までに、二つの高頻度T細胞クローンを特定し、アイソタイプコントロールサンプル由来の配列決定された単一CD8
+ T細胞の5.7%を表した。抗GITRサンプルについては3クローン/20.3%、抗PD−1サンプルについては6クローン/26.7%、併用療法サンプルについては10クローン/31.9%であった。実際、8日目〜11日目の間、腫瘍内CD8
+ T細胞の著しいクローン性増殖は、抗PD−1単剤療法により誘発された。この結果は、抗PD−1治療(ペムブロリズマブ)後のTCRクローン性の増加を検出した、公表されたデータと一致している。この結果は、抗PD−1 Abがクローン性増殖の主要な駆動源となるようであり、PD−1およびGITRの二重標的化が腫瘍内CD8 T細胞TCRクローン性をさらに増強することを示すということによって、これらの所見を拡張している(
図9Bおよび
図9C)。抗GITRおよび/または抗PD−1は、末梢/脾臓T細胞のクローン性に影響を与えず(
図9C)、ペムブロリズマブ治療による患者データと一致していた。
【0148】
併用療法の際にMC38腫瘍内で強化されるTCRの腫瘍抗原特異性を検証するために、完全長の対のTCRアルファ/ベータ配列を抽出して構築するためにバイオインフォマティクス解析を実施した(実施例6Aの方法)。増殖したCD8
+ T細胞に由来する完全長TCRペアをレンチウイルス構築物にクローニングし、内因性TCR発現を欠いているJurkat T細胞株に形質導入した。AP−1により駆動されるルシフェラーゼレポーターを、これらの改変T細胞株のTCR特異性のリードアウトとして使用した(
図9D)。このアッセイは、良好に特徴付けられたLCMV TCR(P14)を使用して検証された(
図19)。高頻度クローン(同じTCRを共有する5細胞)からのTCRは、野生型MC38腫瘍細胞によって特異的に提示されるが、無関係な同系C57BL/6腫瘍細胞株(B16F10.9またはTRAMP−C2)によっては提示されないエピトープを認識でき(
図9Eが代表的なTCRクローンを示す)、それによってそれらの特異性を検証する。
【0149】
さらに、抗GITRおよび抗PD−1は、これらのクローン性増殖CD8
+ T細胞において別個の分子経路を調節することが判断された(
図15)。併用療法は、単剤療法によって調節される経路を相乗的に組み込み、強い適応免疫応答と、細胞サイクルおよび代謝活性に関連する経路における応答とを促進した。単剤療法は腫瘍内CD8
+ T細胞クローンを増殖させ、危険な遺伝子経路を調節したが、これは完全な長期的な腫瘍拒絶反応には不十分であった。この知見は、併用療法による機能障害性腫瘍浸潤性T細胞の大幅な初期化が、完全な腫瘍拒絶反応のために必要であることを示唆する。この結果は、CD8
+ T細胞は腫瘍発生の初期段階で機能不全となり、徐々に柔軟性が少ない状態に進展するということを示す最近の研究によって支持される。
【0150】
次世代シーケンシング技術は、全ゲノムおよびトランスクリプトームシーケンシングルーチンを作製し、全ゲノム遺伝子発現の検出およびTCR配列の同時抽出の機会を提供している。しかしながら、ロングリード(2×300bp)での標的TCRアンプリコンシーケンシングを使用した従来のTCR−seq方法とは異なり、ランダムプライミングRNA−seqリードの非常に小さい部分がTCR配列であり、またリード長は短く(通常=<100bp)、それは通常、TCRのV(D)J領域の一部のみをカバーするものである。ランダムプライミングRNAシーケンシングのショートリードからTCR−CDR3配列を構築および抽出するためのrpsTCRパイプラインが開発され、この問題に対処された(
図17)。rpsTCRは、ペアエンドおよびシングルエンドのショートリードを取り出し、デフォルトパラメータによるTophatを使用して、これらリードをマウスまたはヒトのゲノムおよびトランスクリプトームにマッピングしたが、TCR遺伝子座位および転写物に対してはマッピングしなかった。マッピングされたリードは廃棄し、マッピングされなかったリードをTCR配列の抽出用に再利用した。マッピングされなかったリードの低品質ヌクレオチドはトリミングした。その後、35bp未満の長さのリードを、HTQCツールキットを使用して除外した。QCが合格であったショートリードを、iSSAKEのデフォルト設定を使用して、より長いリードに構築した。TCRklassを使用して、デフォルトで1.7〜2に設定されたScr(保存された残基の支持スコア)を持つCDR3配列を特定した。パイプラインに導入された余分な工程がTCRklass単独と比較してより高い偽陽性または偽陰性率をもたらすかどうかを評価するために、健康なヒトPBMCサンプルからの標的TCR−seqデータをポジティブコントロールとして使用した。TCRB(64,031)またはTCRA(51,448)由来の固有のCDR3配列の大部分は、rpsTCRおよびTCRklass両方によって検出された。rpsTCRとTCRklassとの間の二乗の相関関係は、TCRB−CDR3およびTCRA−CDR3について、それぞれ、0.9999および0.9365であった(
図17)。六つのTCR陰性癌または非癌細胞株をネガティブコントロールとして使用した。rpsTCRはCDR3配列を何も検出しなかったが、TCRklassはこれらTCR陰性癌細胞株の一部からCDR3配列をいくつか抽出した(
図13)。パイプラインの性能をさらに検証するために、標的TCR−seqおよびランダムプライミングRNA−seqのアプローチの両方を使用して、健康なマウスのPBMCサンプルを配列決定した(200M、2×100bp)。RNA−seqデータから構築されたCDR3配列の数は標的TCR−seqアプローチからのものよりもずっと少ないが、rpsTCRを使用したRNA−seqデータから特定されたCDR3配列のうちの約45%がまた、標的TCR−seqからのCDR3配列の中でも観察された。標的TCR−seqに技術的制限があるため、RNA−seqデータから抽出されたCDR3配列の断片がTCR−seqの結果に存在しなかったことは驚くべきことではない。例えば、標的TCR−seqに使用される5’レースアダプタの効率は概して低く、多数のPCRは高頻度TCRを増幅する傾向があり、従ってTCRの小さな部分のみを標的とすることができる。予想されるように、rpsTCRを用いてRNA−seqデータから特定されたCDR3配列のうちはるかに高い割合がまた(約70%)、標的TCR−seqからの高頻度CDR3配列のうちで観察されたが(>=0.1%)、一方、TCRklass単独を使用して抽出されたのはほんの約40%であった。さらに、100bpのリード長を50bpのセグメントに切断し、200Mのリードをランダムに選択した。標的TCR−seqアプローチによってランク付けされたCDR3配列の上位10個のうち、8個のCDR3配列がrpsTCRによって検出され、その一方で3つのみがTCRklassによって検出された。次いで、異なる抗体で治療されたMC38の腫瘍内CD8 T細胞から生成された単一細胞RNA−seqデータからCDR3配列を抽出するために、rpsTCRパイプラインを適用した。T細胞の単一細胞シーケンシングからTCR配列を検出する標的TCR−seqアプローチによる、CDR3_βおよびCDR3_α配列の検出率は、公表されたデータに匹敵した(
図14)。
【0151】
方法およびシステムは、好ましい実施形態および特定の実施例に関連して記載されているが、その範囲は、記載されている特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。この理由は、本明細書中の実施形態が、全ての点において限定的ではなく寧ろ例示的であることを意図したものであるからである。
【0152】
別途明記しない限り、本明細書中に記載されている方法は、その工程を特定の順序で実行することを必須としていると解釈すべきものではない。したがって、方法についてのある請求項が、実際にその工程に従うべき順序を列挙していない場合、または、特許請求の範囲もしくは明細書において特定の順序に限定されることが別途明記されていない場合には、如何なる点においても、順序を推定することは決して意図されない。これは、工程の配置または操作の流れの配列に関するロジックの問題;文法的な編成または句読法から導き出される明白な意味;本明細書中に記載されている実施形態の数またはタイプ等を解釈するための、あらゆる可能な非明示的基礎に対して成り立つ。
【0153】
本出願全体を通して、様々な刊行物が参照される。これらの全体的な刊行物の開示は、方法およびシステムが関連する当該技術分野の状態をより完全に説明するために、本出願への参照により本明細書に組み込まれる。
【0154】
様々な改変および変形が、範囲または趣旨から逸脱することなく成され得ることが、当業者に明らかになろう。他の実施形態は、本明細書に開示される明細書および実践を考慮することにより、当業者に明らかになろう。本明細書および実施例は、もっぱら例示を目的としたものとして見なされ、真の範囲および趣旨は下記の特許請求の範囲によって示されることが意図される。