(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
得られたポリマーラテックスを、工程(b)において、少なくとも1種のチオカルボニル官能性化合物の存在下に、少なくとも3分の期間、好ましくは、30分から20時間の範囲の期間、熟成させる、請求項1に記載の方法。
得られたポリマーラテックスを、工程(b)において、少なくとも1種のチオカルボニル官能性化合物の存在下に、40℃から90℃の範囲の温度で、熟成させる、請求項1または2に記載の方法。
チウラムスルフィド化合物が、テトラアルキルチウラム モノ−もしくはジスルフィド、テトラアルキルアリールチウラム モノ−もしくはジスルフィド、テトラアリールアルキルチウラム モノ−もしくはジスルフィド、テトラアリールチウラム モノ−もしくはジスルフィド、またはそれらの混合物もしくは組み合わせであり、好ましくは、テトラメチルチウラム ジスルフィドまたはテトラベンジルチウラム ジスルフィドである、請求項6に記載の方法。
少なくとも1種のチオカルボニル官能性化合物が、工程(b)において、工程(a)におけるフリーラジカル乳化重合に供されるモノマーの総量に基づいて、0.05〜3.0重量%、好ましくは、0.10重量%〜1.0重量%、より好ましくは、0.20重量%〜0.80重量%、最も好ましくは、0.25重量%〜0.50重量%の量で存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
モノマーが、シードラテックスの存在下で重合され、シードラテックスがその場で調製されるか、または予め形成された外部シードラテックスである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
乳化重合工程後に水性ポリマー分散液から残留モノマーを除去すること、および/または乳化重合工程後に水性ポリマー分散液の固形分含有量を、水性ポリマー分散液の総重量に基づいて、8〜60重量%に調整することをさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
pH調整剤、界面活性剤、保護コロイド、湿潤剤、増粘剤、レオロジー調整剤、充填剤、顔料、分散剤、蛍光増白剤、染料、安定剤、殺生物剤、消泡剤またはそれらの組み合わせから選択される、少なくとも1種の追加成分をさらに含む、請求項18に記載の硬化性ポリマーラテックス組成物。
8〜11の範囲のpH値および/または組成物の全重量に基づいて、8〜50%の範囲の固形分含有量を有する、請求項18または19に記載の硬化性ポリマーラテックス組成物。
手袋、特に手術用手袋、検査用手袋、工業用手袋および家庭用手袋、コンドームおよびカテーテルから選択される、請求項21から23のいずれか一項に記載のゴム製品。
金型を凝固剤浴に浸漬する前に、金型の形状に適合する取り外し可能なライナーを金型上に配置し、そして、形成されたゴム物品は取り外し可能なライナーを含み、好ましくは、そのライナーが織物材料を含む、請求項25に記載の方法。
水性反応媒体中でフリーラジカル乳化重合により少なくとも1種の共役ジエンと少なくとも1種のエチレン性不飽和ニトリルとを含むモノマー混合物から形成される、未加工のポリマーラテックスに、
チオカルボニル官能性化合物の添加なしで、ポリマーラテックスを含む、対応する硬化性組成物から同様にして得られるゴム物品に関する引張強度および/または破断点伸びを実質的に劣化させることなく、形成されたポリマーラテックスを含む硬化性組成物を硬化することによって得られ得るゴム物品のモジュラス値、M300および/またはM500を低減するための未加工のポリマーラテックスの熟成のための添加物として、チオカルボニル官能性化合物の使用、但し、前記チオカルボニル官能性化合物が、下記式の構造を有する、
A−C(=S)−(S)x−C(=S)−B
式中、Xは、1から10の範囲の整数であり、AおよびBは、それぞれ独立して、NR’R’ ’およびOR’ ’ ’から選択され、ここで、R’、R’ ’およびR’ ’ ’は、それぞれ独立に、水素および1〜20個の炭素原子を有する一価の有機基から選択される、前記使用。
ポリマーラテックスの引張特性の経時安定性を増加させるために、ポリマーラテックスと添加された前記チオカルボニル官能性化合物との混合物を熱処理することをさらに含む、請求項29または30に記載の使用。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、チオカルボニル官能性化合物の存在下で、熟成(mature)することによって変性される、フリーラジカル乳化重合によって得られ得る、ある種の合成ポリマーラテックス、およびゴム物品、特に、手袋などの浸漬成形品の製造のための、そのような熟成(mature)ポリマーラテックスを含む硬化性組成物に関する。
本発明はまた、それぞれ、そのような硬化性ポリマーラテックス組成物またはゴム物品を製造する方法に関する。
浸漬成形品の製造または基材の被覆および含浸(impregnating)のための、そのような硬化性ポリマーラテックス組成物の使用も同様に本発明の範囲内である。
さらに、本発明は、引張強度および/または破断点伸び(elongation at break)を低下させることなく、硬化性ポリマーラテックス組成物から誘導可能なゴム製品の柔軟性を高めるための添加剤としてのチオカルボニル官能性化合物の使用に関する。
【0002】
発明の背景
天然ゴムラテックスから、手袋、コンドームおよびカテーテルなどの薄膜ゴム製品の製造は長年知られている。
典型的には、このような物品は、浸漬成形法によって製造され、その浸漬成形法は、天然ゴムラテックスと、硫黄および加硫促進剤のような架橋物質および/または多価金属化合物とを含む組成物中に、適切な前処理の後に、所望の形状の金型を、1回または数回、浸漬することを含む。
そして、続いて乾燥して所望の厚さのゴムフィルムを形成する。
次いで、形成されたゴムフィルムを高温で硬化させて、フィルムに弾性特性を付与し、そして続いてゴム物品を金型から取り出す。
ほとんどの従来の用途に適した機械的特性およびバリア特性を有する、薄膜ゴム製品は、天然ゴムラテックスから製造することができるが、天然ゴムラテックスはラテックスタンパク質を含み、皮膚に接触すると感作者にアレルギー反応を引き起こす可能性がある(I型過敏症)。
ニトリルラテックス(NBR)またはカルボキシル化ニトリルラテックス(XNBR)のような合成ポリマーラテックスはタンパク質を含まず、そして、したがって、皮膚適合性を改善するためにゴム製品の製造において天然ゴムラテックスの代替物として確立されてきた。
合成ポリマーラテックスは、典型的には、開始剤、乳化剤および/または連鎖移動剤などの補助剤を含有する水性反応媒体中で、各モノマーのフリーラジカル乳化重合によって製造される。
合成ポリマーラテックスからのゴム製品の製造は、天然ゴムラテックスからのゴム製品の製造と同様にして達成される。
したがって、合成ポリマーラテックスは、典型的には、1種以上の架橋添加剤と配合されて、硬化性ポリマーラテックス組成物を形成し、それから所望の形状のゴム物品が、たとえば、浸漬成形によって形成される。
手袋などの、天然ゴムラテックスおよび合成ポリマーラテックスから製造された膨大な量のゴム製品が世界中で製造および消費されている。
したがって、ゴム製品を製造するのに必要とされる原材料の量を減らすことに対する強い経済的および生態学的推進力(impetus)がある。
薄膜ゴム製品のフィルム厚さの減少は、原材料の消費量、および、それによる製造コストの低下に伴い、さらに廃棄されるべき廃棄物の量を減少させる。
他方では、ゴム製品の種類およびその用途によって決定される物理的性質に対する厳しい要求があり、それらは満たされなければならない。
【0003】
ラテックス製手袋は、たとえば、不快な臭いがなく、そして、良好なバリア特性、高い破断点伸びおよび高い引張強度を有する好適な機械的特性、十分な触感を有する良好な着用および快適な着用特性、ならびに審美的に快適な非汚染性を示すべきである。これらの特性は長期間保存しても安定に保存されるべきである。
フィルムの厚さを薄くすることは、一般に、使用時に遭遇する機械的応力に耐えるために、比較的高い引張強度を与えるポリマーラテックスの使用を必要とする。
しかしながら、より高い引張強度は、通常、材料のより高い剛性および低減された柔らかさと関連しており、その結果、着用者にとってより快適でない感触および低減された触感をもたらし、これは満足できるものではない。
したがって、低減されたフィルムの厚さの最適化されたゴム物品の製造を容易にするために、それに由来するラテックスフィルムに、適度に高い引張強度と組み合わせて、向上された柔軟性を付与するポリマーラテックスを提供することが望ましいであろう。
そのような望ましい機械的性質の組み合わせは、理想的には、それぞれのゴム製品が、たとえば、長期間にわたるエージングを含む、製品寿命の間に遭遇することが予想される条件下で維持されるべきである。
元素状硫黄および他の架橋剤は、ゴム製品の製造のための所望の硬化特性を有するポリマーラテックス組成物を配合するための加硫剤および加硫促進剤として広く使用されてきた。
この目的のために、形成された未加工のポリマーラテックスは、ラテックスの加硫のために、硫黄および/または他の加硫剤を用いて、いかなる先行する(preceding)変性(modification)なしで従来通りに配合される。
次いで、所望の形状の物品を、配合ポリマーラテックス組成物から形成し、そして続いて、典型的には、100℃〜250℃の範囲の温度で熱処理することにより硬化させる。
チウラム化合物を含むチオカルボニル官能性化合物は、乳化重合によるポリマーラテックスの製造における補助剤として以前から使用されてきた。
したがって、たとえば、米国特許第2,662,876号は、1,3−ブタジエンおよび共重合性モノマーの乳化重合を停止させるため、硫黄および、とりわけ、チウラム スルフィド化合物を含む硫黄供与体から選択される化合物と、水溶性のジチオカルバミン酸の塩との組み合わせを開示する。
そのような組み合わせは、2つの成分のそれぞれについて、硫黄またはその等価物に基づいて、0.01〜0.1%という低いレベルで効果的であることが見出されている。
したがって、チオカルボニル官能性化合物は、重合反応を短時間で停止(short stopping)させるために使用され、そして、柔軟性の向上と共に、高い引張強度および/または破断点の伸びの組み合わせを達成するために、その機械的性質を変性して、形成された未加工ポリマーラテックス(raw polymer latex)を処理するためには使用していない。
さらに、米国特許第2,662,876号によって証明されているように、エマルジョンの初期モノマー含有量を基準にして、0.2重量%以上の量の硫黄供与物質を使用することは、従来、ポリマーラテックスの強い汚染および劣った貯蔵安定性などの望ましくない副作用を伴う。
したがって、本発明は、前述の、先行技術の欠点および不利を克服または少なくとも、軽減することを目的とし、特に、手袋のようなゴム物品のラテックスフィルムの厚さを減少させるのに有利な、機械的性質の経時安定性の組み合わせ(既存のポリマーラテックスの製造および加工技術に匹敵する費用対効果の態様で、容認できない態様の臭気および色のようなゴム物品の意図する用途に関連する他の特性に影響を与えずに、特に、高い引張強度と組み合わさった、向上した柔軟性)を付与する硬化性ポリマーラテックス組成物を提供することを目的とする。
【0004】
発明の要約
驚くべきことに、本発明者らは、上記の目的が、以下を含む方法によって製造された硬化性ポリマーラテックス組成物によって達成され得ることを見出した。
(a)未加工ポリマーラテックス(raw polymer latex)を形成するために、以下を含むモノマー混合物を、水性反応媒体中で、フリーラジカル乳化重合に供すること
i. 少なくとも、1種の共役ジエン;
ii. 少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリル;
iii. 所望により、少なくとも、1種のエチレン性不飽和酸;そして
iv. 所望により、化合物(i)〜(iii)のいずれとも異なる、少なくとも、1種のさらなるエチレン性不飽和化合物;
(b)得られた未加工ポリマーラテックス(raw polymer latex)を、少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物の存在下で、熟成(mature)させ、ここで、少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物は、工程(a)のフリーラジカル乳化重合に供したモノマーの総量に基づいて、少なくとも、0.05重量%の量で存在し;そして
(c)所望により、熟成されたポリマーラテックスを1種以上の架橋剤と配合する。
【0005】
このような硬化性ポリマーラテックス組成物から製造されたゴム物品もまた、本発明の範囲内である。
さらなる態様によれば、本発明は、そのようなゴム物品を製造するための方法に関し、その方法は、以下を含む:
(a)最終物品の所望の形状を有する金型を提供する;
(b)金型を凝固剤浴に浸す;
(c)凝固剤浴から金型を取り出し、そして、所望によりそれを乾燥する;
(d)工程(b)および(c)にしたがって処理された金型を、本発明による硬化性ポリマーラテックス組成物中に浸漬する;
(e)ポリマーラテックス組成物から金型を取り除く;
(f)ラテックス被覆金型を水性洗浄浴に浸漬すること、および/またはラテックス被覆金型を乾燥すること;
(g)工程(e)または(f)から得られたラテックス被覆金型を、80℃〜200℃の範囲の温度で熱処理して、金型上にラテックス物品を形成する;そして
(h)成形品を金型から取り出す。
【0006】
本発明のさらなる態様は、以下に関する。
−浸漬成形品、特に手袋、の製造のために、本発明による硬化性ポリマーラテックス組成物の使用;
−基材を被覆および含浸するために、本発明による硬化性ポリマーラテックス組成物の使用;
−少なくとも、1種の共役ジエンと少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリルとを含むモノマー混合物、または、
水性反応媒体中でフリーラジカル乳化重合によりそれから形成される、未加工のポリマーラテックスに、
チオカルボニル官能性化合物の添加なしで、ポリマーラテックスを含む、対応する硬化性組成物から同様にして得られたゴム物品に関する引張強度および/または破断点伸びを実質的に劣化させることなく、形成されたポリマーラテックスを含む硬化性組成物を硬化することによって得られ得るゴム物品のモジュラス値、M
300および/またはM
500を低減するための、添加物としてのチオカルボニル官能性化合物の使用。
【0007】
本発明は、少なくとも、1種の共役ジエンと少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリルとを含むモノマー混合物のフリーラジカル乳化重合によって得られるポリマーラテックスが、もしあれば、配合前に、有効量の1種以上のチオカルボニル官能性化合物の存在下に、未加工のポリマーラテックスを好ましくは、高温で熟成(mature)させることにより、それから誘導されるラテックスフィルムに対する高い引張強度と組み合わせた、向上した柔軟性を付与するように変性することができる、という驚くべき発見に基づく。
本発明を、以下により詳細に説明する。
【0008】
発明の詳細な説明
上述したように、本発明は、水性反応媒体中での、モノマー混合物のフリーラジカル乳化重合によって得られ、もしあれば、1種またはそれ以上の架橋剤と配合する前に、少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物の存在下で、熟成(mature)に供されるポリマーラテックスに関する。
本発明にしたがって、フリーラジカル乳化重合に供されるモノマー混合物は、一般に、以下を含む:
i. 少なくとも、1種の共役ジエン;
ii. 少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリル;
iii. 所望により、少なくとも、1種のエチレン性不飽和酸;および、
iv. 所望により、化合物(i)〜(iii)のいずれとも異なる、少なくとも、1種のさらなるエチレン性不飽和化合物。
共役ジエンモノマーは、互いに、共役して2つのC=C結合を含む、すなわちC=C結合が1種の単結合によって互いに分離されている重合性有機化合物である。
さらなる不飽和部分がこれらのモノマー中に、所望により(optionally)存在してもよい。
本発明によるラテックスの調製に適した共役ジエンモノマーは、典型的には、4〜18個、好ましくは、4〜12個、4〜8個、または、4〜6個の炭素原子を含む。
本発明に従う適切な共役ジエンモノマーは、炭化水素化合物であり得るか、または、たとえば、1個以上のハロゲン原子のようなさらなるヘテロ原子を含み得、好ましくは、炭化水素化合物である。
それらは直鎖状、分岐状または環状のような種々の分子構造を有していてもよい。
適切な共役ジエンモノマーの非限定的な例としては、たとえば、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,4−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、3,7−ジメチル−1,3,6−オクタトリエン、2−メチル−6−メチレン−1,7−オクタジエン、7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、1,3,7−オクタトリエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−アミル−1,3−ブタジエン、α:3,7−ジメチル−1,3,7−オクタトリエン、β:3,7−ジメチル−1,3,6−オクタトリエン、3,7,11−トリメチル−1,3,6,10−ドデカテトラエン、7,11−ジメチル−3−メチレン−1,6,10−ドデカトリエン、2,6−ジメチル−2,4,6−オクタトリエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−イソプロピル−1,3−ブタジエンおよび1,3−シクロヘキサジエンを挙げることができる。
【0009】
本発明によるポリマーラテックスを製造するために使用されるモノマー混合物は、典型的には、共役ジエン成分(i)として、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、イソプレンまたはそれらの組み合わせを含む。
ここで、1,3−ブタジエン、イソプレンおよびそれらの組み合わせは、本発明による共役ジエンとして好ましく使用される。
典型的には、モノマー混合物は、モノマーの総量に基づいて、少なくとも、1種の共役ジエンモノマー(i)を20〜90重量%、好ましくは、25〜85重量%、より好ましくは、30〜80重量%または40〜75重量%、最も好ましくは、50〜70重量%の範囲の量で含む。
したがって、共役ジエンは、モノマーの総量に基づいて、少なくとも、20重量%、少なくとも、22重量%、少なくとも、24重量%、少なくとも、26重量%、少なくとも、28重量%、少なくとも、30重量%、少なくとも、32重量%、少なくとも、34重量%、少なくとも、36重量%、少なくとも、38重量%、少なくとも、40重量%、少なくとも、45重量%、または、少なくとも、50重量%の量で、モノマー混合物中に存在してもよい。
したがって、少なくとも、1種の共役ジエンモノマーは、モノマーの総量に基づいて、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、78重量%以下、76重量%以下、74重量%以下、72重量%以下、70重量%以下、68重量%以下、66重量%以下、64重量%以下、62重量%以下、60重量%以下、58重量%以下または56重量%以下の量で、本発明による乳化重合に付されるモノマー混合物中に使用することができる。
当業者は、明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が本明細書に開示されることを理解するであろう。
上記のように、本発明によるポリマーラテックスを調製するために使用されるモノマー混合物は、少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリルをさらに含む。
用語「エチレン性不飽和ニトリル」は、本明細書中、少なくとも、一つのC=C結合と少なくとも、一つのニトリル基、すなわち構造−C≡Nの基、を含む、任意の重合性有機化合物を意味する。
たとえば、エチレン性不飽和ニトリルは、1種または2つのニトリル基を含んでもよい。
本発明によれば、少なくとも、1種のニトリルモノマーは、典型的には、3〜8個、たとえば、3〜6個または3〜4個の炭素原子を含む。
エチレン性不飽和ニトリル化合物は、直鎖状または分岐状の分子構造を持つことができる。
本発明にしたがって使用することができる、エチレン性不飽和ニトリルモノマーの非限定的な例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリル、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
本発明によるポリマーラテックスを調製するために使用されるモノマー混合物は、エチレン性不飽和ニトリル(ii)として、特に、アクリロニトリル、メタクリロニトリルまたはそれらの組み合わせを含み得る。アクリロニトリルの使用が特に好ましい。
本発明によれば、モノマー混合物は、少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリル(ii)を、典型的には、モノマーの総量に基づいて、10〜50重量%、好ましくは、15〜45重量%、より好ましくは、20〜40重量%、最も好ましくは、25〜38重量%の範囲の量で含む。
したがって、少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリルは、モノマーの総量に基づいて、少なくとも、12重量%、少なくとも、14重量%、少なくとも、16重量%、少なくとも、18重量%、少なくとも、20重量%、少なくとも、22重量%、少なくとも、24重量%、少なくとも、26重量%、少なくとも、28重量%、少なくとも、30重量%、少なくとも、32重量%、少なくとも、34重量%、少なくとも、35重量%、または、少なくとも、36重量%の量で存在してもよい。
したがって、少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリルは、モノマーの総量に基づいて、50重量%以下、45重量%以下、43重量%以下、40重量%以下、38重量%以下、36重量%以下、34重量%以下、32重量%以下、30重量%以下、28重量%以下、26重量%以下、24重量%以下、22重量%以下、または20重量%以下の量で使用することができる。
当業者は、明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が本明細書に開示されることを理解するであろう。
本発明によるポリマーラテックスは、少なくとも、1種の共役ジエンと少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリルのみを含有するモノマー混合物から得ることができる。
しかしながら、所望により、モノマー混合物は、少なくとも、1種の共役ジエンおよび少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリルに加えて、1種以上の他のエチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。
したがって、特に、本発明によるポリマーラテックスを製造するために使用されるモノマー混合物は、少なくとも、1種のエチレン性不飽和酸を含み得る。
【0010】
本明細書において、用語「エチレン性不飽和酸」は、少なくとも、1つのC=C結合および少なくとも、1つの酸官能基またはその塩を含む、任意の重合性有機化合物を意味する。
用語「酸基」は、水性媒体中でプロトンを供与することができる極性基またはそのような極性基の前駆体を意味する。
酸基の非限定的な例には、カルボン酸、無水物、スルホン酸、硫酸(sulphuric acid)、ホスホン酸およびリン酸(phosphoric acid)基が含まれる。
典型的には、少なくとも、1つの酸基は、カルボン酸基、無水物基、スルホン酸基またはそれらの組み合わせから選択される。
本発明によれば、少なくとも、1種のエチレン性不飽和酸モノマーは、典型的には、3〜12個、たとえば、3〜8個、または3〜6個の炭素原子を含む。
少なくとも、1つの酸基またはその塩に加えて、エチレン性不飽和酸モノマーは、ヒドロキシ、エステル、アミノおよび/またはエーテルなどの1つまたは複数の追加の官能基を、所望により含んでもよい。
本発明での使用に適したエチレン性(Ethylenically)不飽和酸モノマー、たとえば、モノカルボン酸およびジカルボン酸モノマーとジカルボン酸のモノエステルを含む。
好ましくは、少なくとも、1種のエチレン性不飽和酸モノマーは、存在する場合、3〜6個の炭素原子を含有する、エチレン性不飽和脂肪族モノまたはジカルボン酸または無水物から選択される。
適切なモノカルボン酸モノマーの非限定的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、クロトン酸およびそれらの塩が挙げられる。
適切なジカルボン酸モノマーとしては、たとえば、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸およびそれらの塩が挙げられる。
適切な無水物モノマーは、たとえば、無水マレイン酸である。
他の適切なエチレン性不飽和酸モノマーの非限定的な例としては、ビニル酢酸、ビニル乳酸、ビニルスルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、4−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、4−スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸およびそれらの塩が挙げられる。
使用される場合、少なくとも、1種の、所望によるエチレン性不飽和酸モノマーは、モノマーの総量を基準にして、20重量%までの量で、本発明にしたがって使用されるモノマー混合物中に存在してもよい。
典型的には、そのような量は、モノマーの総量に基づいて、0.1〜10重量%、好ましくは、0.5〜9重量%、より好ましくは、1〜8重量%、さらにより好ましくは、2〜7重量%、最も好ましくは、3〜7重量%である。
【0011】
したがって、少なくとも、1種の、所望による、エチレン性不飽和酸モノマーは、モノマーの総量に基づいて、少なくとも、0.1重量%、少なくとも、0.3重量%、少なくとも、0.5重量%、少なくとも、0.7重量%、少なくとも、0.9重量%、少なくとも、1重量%、少なくとも、1.2重量%、少なくとも、1.4重量%、少なくとも、1.6重量%、少なくとも、1.8重量%、少なくとも、2重量%、少なくとも、2.5重量%、または少なくとも、3重量%の量で存在することができる。
同様に、少なくとも、1種の、所望によるエチレン性不飽和酸モノマーは、モノマーの総量に基づいて、20重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8.5重量%以下、8重量%以下、7.5重量%以下、7重量%以下、6.5重量%以下、6重量%以下、5.5重量%以下、または、5重量%以下の量で存在してもよい。
当業者は、明示的に開示された下限および明示的に開示された上限によって定義される任意の範囲が、本明細書と共に開示されることを理解するであろう。
【0012】
本発明による、ポリマーラテックスを調製するために使用されるモノマー混合物は、
(i)少なくとも、1種の共役ジエン、
(ii)少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリル、および
(iii)少なくとも、1種のエチレン性不飽和酸
に加えて、もしあれば、化合物(i)〜(iii)のいずれとも異なる1種以上のさらなるエチレン性不飽和化合物をさらに含み得る。
化合物(i)〜(iii)のいずれとも異なる、このような任意のエチレン性不飽和化合物は、1つまたは複数のエチレン性不飽和部分を含む、任意の重合性化合物であり得る。
この種の可能なエチレン性不飽和化合物は、たとえば、ビニルエーテル、ビニル芳香族化合物、エチレン性不飽和エステル、エチレン性不飽和酸またはエチレン性不飽和有機ケイ素化合物のアミド、ならびにスルホン酸エステル、スルホン酸アミドおよび/または複素環式基を含むビニル化合物を含む。
さらにまた、ラテックスに自己架橋能を付与する1種以上のモノマー、たとえば、N−メチロールアミド基またはオキシラン基のような自己架橋能力をラテックスに付与し得る、1種以上の官能基を含む、エチレン性不飽和有機ケイ素化合物またはエチレン性不飽和化合物を使用することもできる。
適切なビニル芳香族モノマーの代表例としては、たとえば、スチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、p−tert−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、4−ブロモスチレン、2−メチル−4,6−ジクロロスチレン、2,4−ジブロモスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、1,1−ジフェニルエチレンおよび置換された、1,1−ジフェニルエチレン、1,2−ジフェニルエテンおよび置換された、1,2−ジフェニルエチレンを含む。
2種以上のビニル芳香族化合物の混合物も使用することができる。
本発明にしたがって好ましく使用され得るビニル芳香族モノマーとしては、たとえば、スチレンおよび/または2−メチルスチレンが挙げられる。
本発明にしたがって用いることができる適切な複素環式ビニル化合物は、たとえば、これらに限定されないが、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムおよび1−ビニルイミダゾールを含む。
本発明によるポリマーラテックスを調製するための任意のモノマーとして使用することができるエチレン性不飽和エステル化合物には、ビニルエステルおよびエチレン性不飽和酸のエステルが含まれる。
本発明にしたがって使用できる適当なビニルエステル化合物は、カルボン酸のビニルエステル、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ステアリン酸ビニルおよびバーサチック酸のビニルエステルを包含する。そして、酢酸ビニルが好ましい。
本発明によるポリマーラテックスの製造に使用することができる他のビニルエステル化合物には、たとえば、スルホン酸およびホスホン酸のような、カルボン酸以外の酸のビニルエステル(たとえば、フェニルビニルスルホネートのような)が含まれる。
本発明による、任意のモノマーとして有用なエチレン性不飽和酸のエステルは、エチレン性不飽和酸に関して上述したもののいずれかのような、エチレン性不飽和酸または酸無水物のエステル化によって誘導可能な化合物である。
非限定的な例は、たとえば、本明細書でまとめて(メタ)アクリル酸と呼ばれるアクリル酸とメタクリル酸のエステルである。
【0013】
本発明にしたがって使用することができる(メタ)アクリル酸の適切なエステルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸のn−アルキルエステル、イソ-アルキルエステルまたはt−アルキルエステルが挙げられ、ここで、アルキル基は1〜20の炭素原子を有する、バーサチック酸、ネオデカン酸またはピバリン酸などのネオ酸のグリシジルエステルと、(メタ)アクリル酸との反応生成物、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む。
(メタ)アクリル酸のアルキルエステルは、特に、C
1−C
10アルキル(メタ)アクリレートであってもよい。
そのような(メタ)アクリレートモノマーの非限定的な例としては、メチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチル−ヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、4−メチル−2−ペンチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチル−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートおよびセチルメタクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリル酸のアルキルエステルのアルキル基はまた、たとえば、ヒドロキシル、アルコキシ、ポリエーテルまたはアミノ基のような1以上の官能基を有する、置換アルキル基であることができる。
本発明によるポリマーラテックスを製造するために、所望により使用することができるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーには、たとえば、それぞれの酸とエチレンオキシド、プロピレンオキシド、高級アルキレンオキシドまたはそれらの組合せとの付加生成物である、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレートモノマーが含まれる。
非限定的な具体例としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびヒドロキシブチルアクリレートが挙げられる。
適切なアルコキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、メトキシブチルアクリレートおよびメトキシエトキシエチルアクリレートによって例示することができ、これらに限定されない。そのうち、エトキシエチルアクリレートおよびメトキシエチルアクリレートは、好ましいアルコキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーを表す。
適切なアミノアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、たとえば、2−アミノエチル(メタ)アクリレートおよびそれらの塩によって例示することができる。
本発明によるポリマーラテックスの調製のためのモノマーとして所望により(optionally)使用され得るエチレン性不飽和酸のアミドとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびジアセトンアクリルアミド、N−(2−アミノエチル)(メタ)アクリルアミドおよびその塩が挙げられるが、これらに限定されない。中でもアクリルアミドが好ましい。
熱処理時に自己架橋することができる官能基を導入するために、自己架橋性官能基を有するモノマー、たとえば、1以上のN−メチロールアミド基および/またはオキシラン官能性エチレン性不飽和モノマーを含むモノマーを使用することができる。
適切なモノマーは、たとえば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシ−メチル−(メタ)アクリルアミド、N−イソ−ブトキシ−メチル−(メタ)アクリルアミド、N−アセトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N(−2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシエチル)アクリルアミドである。
本発明にしたがって使用することができる適切なオキシラン官能性エチレン性不飽和モノマーとしては、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、2−エチルグリシジルアクリレート、2−エチルグリシジルメタクリレート、2−(n−プロピル)グリシジルアクリレート、2−(n−プロピル)グリシジルメタクリレート、2−(n−ブチル)グリシジルメタクリレート、2−(n−ブチル)グリシジルメタクリレート、グリシジルメチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、(3’,4’−エポキシヘプチル)−2−エチルアクリレート、(3’,4’−エポキシヘプチル)−2−エチルメタクリレート、(6’,7’−エポキシヘプチル)アクリレート、(6’,7’−エポキシヘプチル)メタクリレート、アリル−3,4−エポキシヘプチルエーテル、6,7−エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニル−3,4−エポキシヘプチルエーテル、3,4−エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7−エポキシヘプチルビニルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、3−ビニルシクロヘキセンオキシド、α−メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートおよびそれらの組み合わせを含む。
本発明によるモノマーとして所望により(optionally)使用することができるエチレン性不飽和有機ケイ素化合物は、ビニル基、アリル基または(メタ)アクリル酸のようなエチレン性不飽和酸から誘導される基のような、1つ以上のエチレン性不飽和部分を含む、少なくとも、1種の有機置換基を有するシラン、シロキサンおよびシリコーンを含む。
好適なエチレン性不飽和ケイ素含有化合物の非限定的な例としては、たとえば、トリメトキシ(ビニル)シラン、トリエトキシ(ビニル)シラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、および3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含む。
本発明によるポリマーラテックスを得るためのモノマー混合物中に所望により(optionally)使用され得る、自己架橋官能基を有する他のエチレン性不飽和モノマーは、たとえば、国際公開第2016/013666号パンフレットに開示されている。
使用する場合、上記で定義したモノマー(i)〜(iii)とは異なる、1種以上の任意のエチレン性不飽和モノマーは、典型的には、本発明にしたがって使用されるモノマー混合物中に、モノマーの総量に基づき20重量%までの量で存在し得る。
典型的には、そのような任意のモノマーは、存在する場合、モノマーの総量に基づいて、0.1から15重量%、好ましくは、0.5から10重量%、より好ましくは、1から8重量%、さらにより好ましくは、2から7重量%、最も好ましくは、3〜7重量%の量で使用される。
したがって、上で定義したモノマー(i)〜(iii)とは異なる、少なくとも、1種の任意のエチレン性不飽和モノマーは、たとえば、モノマーの合計量を基準にして、少なくとも、0.1重量%、少なくとも、0.3重量%、少なくとも、0.5重量%、少なくとも、0.7重量%、少なくとも、0.9重量%、少なくとも、1重量%、少なくとも、1.2重量%、少なくとも、1.4重量%、少なくとも、1.6重量%、少なくとも、1.8重量%、少なくとも、2重量%、少なくとも、2.5重量%、少なくとも、3重量%、少なくとも、4重量%、または少なくとも、5重量%の量で存在してもよい。
【0014】
同様に、上記で定義したモノマー(i)〜(iii)とは異なる、少なくとも、1種の任意のエチレン性不飽和モノマーは、モノマーの総量に基づいて、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下の量で存在してもよい。
当業者は、明示的に開示された下限および明示的に開示された上限によって定義される任意の範囲が、本明細書と共に開示されることを理解するであろう。
したがって、本発明によれば、乳化重合に使用されるモノマー混合物は、特に以下のものを含み得る。
20〜90重量%の少なくとも、1種の共役ジエン(i);
10〜50重量%の少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリル(ii);
0〜20重量%の任意の少なくとも、1種のエチレン性不飽和酸(iii);そして
化合物(i)〜(iii)のいずれとも異なる、0〜20重量%の任意の少なくとも、1種のさらなるエチレン性不飽和化合物(iv)。
ここで、重量パーセントはモノマーの総量に基づいている。
適切な化合物およびモノマー混合物の異なる成分(i)〜(iv)の量の好ましい範囲は、上記のとおりであり、そして、それに応じて選択することができる。
当業者には理解されるように、
(i)少なくとも、1種の共役ジエン、
(ii)少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリル、
(iii)任意の少なくとも、1種のエチレン性不飽和酸、および、
(iv)化合物(i)〜(iii)のいずれとも異なる任意の少なくとも、1種のさらなるエチレン性不飽和化合物の重量%の合計は、いずれの場合も100重量%である。
したがって、本発明によるポリマーラテックスを調製するために使用されるモノマー混合物は、共役ジエン、エチレン性不飽和ニトリルおよびエチレン性不飽和酸以外の1種または複数のモノマーを含有することが可能であるが、好適には、モノマー混合物は、実質的に以下のもののみを含む。
i.少なくとも、1種の共役ジエン;
ii.少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリル;そして、
iii.所望により(optionally)、少なくとも、1種のエチレン性不飽和酸。
「実質的に含む」とは、明示的に特定されたモノマー成分のみが意図的に組み合わされてモノマー混合物を形成することを意味する。
それにもかかわらず、そのような場合、他のエチレン性不飽和化合物(iv)は、モノマーの総量に基づいて、一般に、0.5重量%未満、好ましくは0.35重量%未満、そして、最も好ましくは0.1重量%未満の量で不純物としてモノマー混合物中になお存在し得る。
そのような少量は、得られるポリマーラテックスの性質に、顕著な影響を及ぼさないとみなされる。
好ましくは、本発明によるポリマーラテックスを調製するために使用されるモノマー混合物は、
(i)1,3−ブタジエン、
(ii)アクリロニトリル、および所望により(optionally)、
(iii)少なくとも、1種のエチレン性不飽和酸
を含む。
特に、そのようなモノマー混合物は、モノマーの総量に基づいて、50〜80重量%の1,3−ブタジエン、20〜50重量%のアクリロニトリル、および、所望により、10重量%までの少なくとも、1種のエチレン性不飽和酸を含むことができる。より具体的には、モノマー混合物は、モノマーの総量に基づいて、60〜75重量%の1,3−ブタジエン、25〜40重量%のアクリロニトリル、および、所望により、7重量%以下の少なくとも、1種のエチレン性不飽和酸を含み得る。
本発明によるポリマーラテックスの製造は、水性反応媒体中で上記に定義したモノマー混合物をフリーラジカル乳化重合に付すことを含む。
本発明によるポリマーラテックスを製造するために、エチレン性不飽和モノマーを、フリーラジカル乳化重合に供する方法は重要ではない。
本発明によるモノマーのフリーラジカル乳化重合を実施するための製造技術および条件は、公知の従来からのラテックス乳化重合法から採用することができる。
例示的な乳化重合法は、たとえば、米国特許第5,750,618号、化学および乳化重合技術(Technology of Emulsion Polymerization)、第2版、A.M.van Herk(編者)、ISBN:978−1−119−95372−2; Encyclopedia of Polymer Science and Technology中の乳化重合(Emulsion Polymerization)、 A.van Herk、H.Heuts 、オンラインISBN:9780471440260、エマルション ポリマー テクノロジー(Emulsion Polymer Technology)(編者)Robert D.Athey、CRCプレス、1991年3月1日。
一般に、フリーラジカル乳化重合は、典型的には、界面活性剤および/または保護コロイドを使用して水性反応媒体中にモノマーを安定に乳化すること、および、たとえば、重合反応を開始させる適切な開始剤からラジカル種を生成することを含む。
次いでエチレン性不飽和モノマーの消費による、その後のラジカル連鎖成長重合が進行してポリマーラテックスを生成する。
したがって、本発明によるポリマー格子(polymer lattices)を調製するための、モノマーのフリーラジカル乳化重合は、通常、少なくとも、1種の界面活性剤および/または少なくとも、1種の保護コロイドの存在下で行われる。
【0015】
さらに典型的には、1種または複数の開始剤が水性反応媒体中に存在する。
モノマーを乳化し、ラテックス粒子を安定化させるのに適した界面活性剤には、重合プロセスに従来使用されている界面活性剤が含まれる。
界面活性剤は、水相および/またはモノマー相に添加することができる。
代表的な界面活性剤としては、たとえば、飽和およびエチレン性不飽和スルホン酸またはそれらの塩が挙げられ、
たとえば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸およびメタリルスルホン酸などの不飽和炭化水素スルホン酸、ならびにそれらの塩;
たとえば、p−スチレンスルホン酸、イソプロペニルベンゼンスルホン酸、およびビニルオキシベンゼンスルホン酸およびそれらの塩のような、芳香族炭化水素酸;
たとえば、スルホエチルメタクリレートおよびスルホプロピルメタクリレートおよびそれらの塩、ならびに2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそれらの塩のようなアクリル酸とメタクリル酸のスルホアルキルエステル;
たとえば、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、エトキシル化アルキルフェノールおよびエトキシル化アルコールのような、アルキル化ジフェニルオキシドジスルホネート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびスルホコハク酸ナトリウムのジヘキシルエステル、アルキルエーテルサルフェートのアルカリ金属塩;脂肪アルコール(ポリ)エーテル硫酸塩
が挙げられる。
界面活性剤の種類および量は、典型的には、粒子の数、それらのサイズおよびそれらの組成によって左右される。
典型的には、界面活性剤は、モノマーの総量に基づいて、たとえば、0.005〜8重量%、0.01〜5重量%または0.05〜3重量%のような、0〜10重量%の量で、好ましくは0〜5重量%、より好ましくは0〜3重量%の量で使用される。
界面活性剤の量は、モノマーの総量に基づいて、特に、0重量%、0.001重量%、0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.7重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%および10重量%を含む、すべての値およびそれらの間の値を含む。
上記の界面活性剤の代わりにまたはそれに加えて、様々な保護コロイドを使用することもできる。
適切なコロイドとしては、ポリビニルアルコールおよび部分アセチル化ポリビニルアルコール、カゼイン、ヒドロキシエチルデンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖類および分解多糖類、ならびにアラビアゴムなどのポリヒドロキシ化合物が挙げられる。
好ましい保護コロイドは、ポリビニルアルコール、多糖類および分解多糖類である。
一般に、これらの保護コロイドは、モノマーの総量に基づいて、0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%、より好ましくは0〜2重量%の含有量で使用される。
保護コロイドの量は、モノマーの全量を基準にして、特に、1、2、3、4、5、6、7、8および9重量%を含む、それらのすべての値およびそれらの間のすべての値を含む。
本発明を実施するときに使用することができる開始剤としては、重合の目的に有効な、水溶性および/または油溶性の開始剤が挙げられる。
代表的な開始剤は、当技術分野において周知であり、そして、たとえば、AIBN、AMBNおよびシアノ吉草酸などのアゾ化合物;過酸化水素、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウム ペルオキシジサルフェート、ペルオキシカーボネートおよびペルオキシボレートなどの無機ペルオキシ化合物;ならびに、アルキルヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、アシルヒドロペルオキシド、およびジアシルペルオキシドなどの有機ペルオキシ化合物;ならびにtert−ブチルペルベンゾエートなどのエステル、ならびに無機および有機開始剤の組み合わせを含む。
開始剤は、所望の速度で重合反応を開始するのに十分な量で使用される。
一般に、モノマーの総量に基づいて、0.01重量%〜5重量%、好ましくは、0.1重量%〜4重量%の開始剤の量で十分である。
開始剤の量は、最も好ましくは、モノマーの総量に基づいて、0.01重量%〜2重量%である。
開始剤の使用量は、モノマーの総量に基づいて、特に、0.01、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4および4.5重量%を含む、全ての値およびその間の下位値(subvalues)を含む。
上記の無機および有機ペルオキシ化合物は、単独でまたは当技術分野で周知のように1種または複数の適切な還元剤と組み合わせて使用することができる。
挙げることができるそのような還元剤の例は、二酸化イオウ、アルカリ金属ジサルファイト、アルカリ金属およびアンモニウム ハイドロジェンサルファイト、チオサルフェート、ジチオナイトおよびホルムアルデヒドスルホキシレート、ならびにヒドロキシルアミン塩酸塩、ヒドラジンサルフェート、硫酸鉄(II)、第一銅ナフタネート、グルコース、メタンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸化合物、ジメチルアニリンなどのアミン化合物、アスコルビン酸などが挙げられる。
還元剤の量は、重合開始剤1重量部に対して、0.03〜10重量部が好ましい。
必要に応じて、本発明のポリマーラテックスの製造には、従来の乳化重合法で頻繁に使用される他の助剤も使用することができる。
そのようなさらなる助剤としては、pH調整剤、緩衝物質、キレート剤、連鎖移動剤(chain transfer agents)および重合停止剤(short stopping agents)が挙げられるが、これらに限定されない。
適切な緩衝物質の非限定的な例は、たとえば、アルカリ金属の、炭酸塩および炭酸水素塩、リン酸塩およびピロリン酸塩である。
適切なキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはヒドロキシル−2−エチレンジアミン三酢酸(HEEDTA)のアルカリ金属塩によって例示することができる。
緩衝物質およびキレート剤の量は、通常、モノマーの総量に基づいて、0.001〜1重量%である。
乳化重合プロセスにおいて形成されるポリマー鎖の平均分子量を制御するために連鎖移動剤(Chain transfer agents)を使用することができる。
適切な連鎖移動剤(Chain transfer agents)の非限定的な例は、チオエステルのような有機硫黄化合物(たとえば、チオ酢酸エチル、チオ酢酸プロピル、チオプロピオン酸エチル、チオプロピオン酸ラウリル、チオ酪酸メチル、チオ酪酸プロピルなどのアルキルチオエステル);
ブチルチオグリコレート、ヘキシルチオグリコレート、ラウリルチオグリコレート、2−エチルヘキシルチオグリコレート、およびイソオクチルチオグリコレートおよび、チオプロピオネート等のアルキルチオグリコレート;
ジメルカプタン(たとえば、1,2−エタン−ジチオール)および2−メルカプトエチルエーテルのようなアルキルエーテルである。
あるいは、またはさらに、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピオン酸およびC
1−C
12のアルキルメルカプタンは、使用されてもよく、このなかで、nードデシルメルカプタンおよびt−ドデシルメルカプタンが好ましい。
連鎖移動剤の量は、存在する場合、モノマーの総量に基づいて、通常、0.05〜3.0重量%、好ましくは、0.2〜2.0重量%である。
モノマー混合物中に含まれるエチレン性不飽和モノマーの乳化重合は、特に、特定の粒径を調整することが望まれる場合、シードラテックスの存在下に、所望により、実施することができる。
シードラテックスは、典型的には、モノマー混合物の重合反応の開始前に、水性反応媒体に添加される、予め形成された外部シードラテックスであり得る。
あるいは、シードラテックスは、すなわちラテックス重合が行われるのと同じ容器中で、in−situで、調製されてもよい。
シードラテックス粒子の動的光散乱(DLS)を使用した、Malvern zetasizer nano S(ZEN1600
(R))(登録商標)で測定した、最初に導入または形成されたシードラテックスのz平均粒径は、好ましくは、10〜90ナノメートル、より好ましくは、15〜80ナノメートル、より好ましくは、20〜70ナノメートルである。
したがって、z−平均粒径の下限は、10ナノメートル、11ナノメートル、12ナノメートル、13ナノメートル、14ナノメートル、15ナノメートル、16ナノメートル、17ナノメートル、18ナノメートル、19ナノメートル、または20ナノメートルであり得る。上限は、80ナノメートル、75ナノメートル、70ナノメートル、65ナノメートル、60ナノメートル、55ナノメートル、50ナノメートル、45ナノメートル、40ナノメートル、38ナノメートル、36ナノメートル、34ナノメートル、32ナノメートル、または30ナノメートルであり得る。
当業者は、明示的に開示された下限および上限のいずれかによって形成される、いずれの範囲も本明細書に明白に包含されることを理解するであろう。
本発明にしたがって、所望により使用され得るシードラテックスは、ポリマーラテックスを調製するために使用されるモノマー混合物の組成に関して、上記の本発明のポリマーラテックスに対応する化学組成を有することができる。
しかしながら、本発明にしたがって製造されたポリマーラテックスと比較して、異なる化学組成を有する、シードラテックスを使用することも可能である。
たとえば、シードラテックスを調製するために使用される、モノマーの相対量は、そのようなシードラテックスを使用して調製された本発明によるポリマーラテックスと比較して異なり得る。
使用されるシードラテックスは、たとえば、そのシードラテックスの使用によって製造された本発明によるポリマーラテックスと比較して、エチレン性不飽和ニトリルモノマーから誘導される構成単位をより高い割合で含むことができる。あるいは、そのシードラテックスを用いて製造された本発明のポリマーラテックスと比較して、エチレン性不飽和ニトリルモノマーから誘導される構成単位をより低い割合で含むことができる。
たとえば、そのシードラテックスを調製するために使用されるモノマーに関して、以下の組成を有する、シードラテックス(内部または外部シードラテックス)を本発明にしたがって使用することができる。
(i)0〜100重量%の少なくとも、1種の共役ジエン、
(ii)0〜100重量%の少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリル、および
(iii)0〜10重量%の1種以上の任意のさらなるエチレン性不飽和モノマー(たとえば、エチレン性不飽和酸。
ここで、(i)、(ii)および(iii)の百分率は、シードラテックスを製造するために使用されるモノマーの総量に基づいている。
【0016】
各場合において、(i)、(ii)および(iii)の量は合計で100重量%であることを理解すべきである。
共役ジエン、エチレン性不飽和ニトリルおよび所望により、さらなるエチレン性不飽和モノマーは、本発明にしたがって乳化重合に供されるモノマー混合物に関して上記の通りであり得る。
好ましいシードラテックスは、エチレン性不飽和ニトリルから誘導される構成単位を主に含む。
たとえば、シードラテックスは、少なくとも、65重量%のような、少なくとも、50重量%、少なくとも、75重量%、少なくとも、80重量%、少なくとも、85重量%、少なくとも、90重量%、または少なくとも、95重量%、または100重量%の少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリル(ii)を含むモノマー混合物から調製することができる。
本発明によるポリマーラテックスの調製に使用することができる別の特定の非限定的な種類のシードラテックスは、ビニル芳香族化合物、エチレン性不飽和酸およびそのエステルの群から選択される少なくとも、1種のモノマーから誘導される構造単位を含むポリマー粒子を含む。
そのような外部シードラテックスは、たとえば、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、またはそれらの組み合わせから誘導される構造単位を、好ましくは、そのシードラテックスの総重量に基づいて、50重量%を超える量で含み得る。
所望により、シードポリマーは、たとえば、少なくとも、2個のエチレン性不飽和基を有するモノマーの存在下で架橋されてもよい。
このような架橋性モノマーは、たとえば、ジビニルベンゼン 1,2−エチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール ジ(メタ)アクリレートおよびそれらの組み合わせから選択することができる。
【0017】
あるいはまた、微粒子状無機顔料または粘土などのラテックス以外の微細粒状材料も、本発明による乳化重合のためのシードとして使用することができる。
たとえば、シリカゾルなどの5〜100ナノメートルのZ−平均粒径を有する顔料がこの目的に適している。
シードラテックスまたは微粒子状顔料のようなシード材料が、本発明によるポリマーラテックスの製造に使用される場合、それは、典型的には、フリーラジカル乳化重合プロセスに付されるモノマーの総量に基づいて、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%に相当する量で使用される。
シード添加の有無にかかわらず、乳化重合は、0〜130℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは5〜70℃、または10℃〜60℃、または、25℃±10℃の温度のような、15℃〜50℃、または15℃〜40℃または、20℃〜35℃の温度で実施することができる。
温度は、特に、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120および125℃を含む、その間のすべての数およびその間の下位数を含む。
モノマーを、反応混合物に導入する方法は特に限定されない。
したがって、本発明による乳化重合は、たとえば、バッチ、疑似バッチまたは連続方式でのモノマー供給を用いて実施することができる。
欧州特許出願公開第792891号明細書に記載されている方法が特に適している。
乳化重合は、モノマーの所望の転化が達成されるまで、上記のような条件下で行われる。
次いで、ブタン−2,3−ジオン、ヒドロキノンまたはそのモノメチル誘導体、ヒドロキシルアミンまたはそのN−置換誘導体(たとえば、イソプロピルヒドロキシルアミン、N、N−ジエチルヒドロキシルアミン)のような「重合停止」(または「連鎖停止」)剤(“short stop” (or “short stopping”) agent)を添加することによって重合を停止させることができる。
代替の重合停止剤としては、亜ジチオン酸ナトリウム(sodium dithionite)のような亜ジチオン酸(dithionous acid)のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0018】
乳化重合から得られた、未加工の(raw)ポリマーラテックスは、次いで、本発明による少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物の存在下で熟成(mature)させる。
「熟成(mature)」とは、チオカルボニル官能性化合物への暴露により、未加工のポリマーラテックスの化学修飾を引き起こすプロセスを意味する。
「熟成(mature)」は、未加工ポリマーラテックス(raw polymer latex)とチオカルボニル官能性化合物とを含む混合物を、規定の条件で一定期間維持することを含み得る。典型的には、混合物を熟成する(mature)ために撹拌する。
得られたポリマーラテックスは、たとえば、室温または高温で、工程(b)の少なくとも、1種のチオカルボニル官能化合物の存在下で熟成させてもよい。
チオカルボニル官能性化合物による、未加工のポリマーラテックスの改質は、未加工のポリマーラテックスを少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物の存在下に、少なくとも、35℃の温度で熟成(mature)させる場合に特に有効であることが分かった。
熟成(mature)は、たとえば、少なくとも、40℃、少なくとも、45℃、少なくとも、50℃、少なくとも、55℃、少なくとも、60℃、少なくとも、65℃、または少なくとも、70℃の温度で起こり得る。
【0019】
熟成(mature)は、たとえば、100℃以下、95℃以下、90℃以下、85℃以下、80℃以下、または75℃以下の温度で行うことができる。
熟成(mature)は、たとえば、40℃〜90℃、好ましくは55℃〜90℃、より好ましくは60℃〜80℃の範囲の温度で実施することができる。
得られた未加工のポリマーラテックスは、典型的には、工程(b)における少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物の存在下、少なくとも、3分間、少なくとも、5分間、少なくとも、10分間、少なくとも、15分間、少なくとも、20分間、少なくとも、30分間、少なくとも、45分間、少なくとも、1時間、少なくとも、90分、少なくとも、2時間、少なくとも、3時間、少なくとも、4時間、少なくとも、5時間、少なくとも、6時間、少なくとも、7時間、または少なくとも、8時間の期間で、熟成(mature)させる。
熟成(mature)は、48時間以下、40時間以下、35時間以下、30時間以下、27時間以下、24時間以下、20時間以下、18時間以内、16時間以内、14時間以内、または12時間以内の期間で実施することができる。
典型的には、未加工のポリマーラテックスを、少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物の存在下、10分から30時間、好ましくは30分から20時間、より好ましくは1時間から15時間の範囲の期間、熟成(mature)させる。
典型的には、チオカルボニル官能性化合物の存在下での、未加工のポリマーラテックスの熟成(mature)は、40℃〜100℃の範囲、たとえば、好ましくは50℃〜90℃または60℃〜80℃の範囲の温度で、5分〜30時間の間、たとえば、好ましくは、30分〜20時間または1時間から15時間の期間で行われる。
少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物は、一般に、もしあれば、1種以上の架橋剤と配合する前に、未加工のポリマーラテックスに添加される。
使用される少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物は、たとえば、工程(a)におけるエチレン性不飽和モノマーの重合前または重合中に水性反応媒体に添加することができる。
本明細書中で使用される場合、表現「重合中」は、水性反応媒体中で進行中の重合の状態、すなわち、発生したフリーラジカル種による重合プロセスの開始後および重合プロセスの終了前を意味し、たとえば、系内のラジカル種の終了またはモノマーの完全消費により、影響を受ける。
少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物は、重合工程の後期段階で、反応媒体に特に添加することができる。
したがって、少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物の添加は、モノマーの総量に基づいて、たとえば、60%〜99.9%の範囲、好ましくは70%〜98%の範囲、たとえば、80%〜97%または85〜96%または90〜95%の範囲のモノマー転化率で行うことができる。
転化率は、たとえば、定義された経過時間でバッチをサンプリングし、かつ、全固形分法を用いて、転化率を測定すること、または標準品の既知の量に対するガスクロマトグラフィー分析を用いて得られる既知の反応プロファイルと比較して反応時間の関数として、推定できる。
あるいは、少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物は、重合反応の終了後に未加工のポリマーラテックスに添加することができる。好ましくは、少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物は、重合反応の終了後、かつ、もしあれば、1種以上の架橋剤との配合前に、未加工のポリマーラテックスに添加される。
本発明にしたがって使用されるチオカルボニル官能性化合物は、少なくとも、1つのチオカルボニル基、すなわち構造−C(=S)−の構造の基を含む化合物である。
典型的には、本発明にしたがって使用されるチオカルボニル官能性化合物は、全部で1個または2個のチオカルボニル基を含む。
本発明にしたがって使用することができるチオカルボニル官能性化合物は、たとえば、チオケトン、チオアルデヒド、チオ尿素、チオアミド、キサンテート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、チオセミカルバジド、トリチオカーボネート、チオオキサメート、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、および前述のいずれかの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
チオケトンは、構造R−C(=S)−R’を有し、ここで、RおよびR’は、それぞれ、炭素原子によってカルボニル基に結合している一価の有機基を表す。
一価の有機基である、RおよびR’は、たとえば、1〜10個、1〜6個、または1〜4個の炭素原子などの18個までの炭素原子を含むことができる。
基RおよびR’は、ヒドロカルビル基ならびに、炭素および水素の他に、酸素、窒素または硫黄のような1個以上のヘテロ原子を含有する有機基を含む。
チオケトン化合物の非限定的な例には、たとえば、チオアセトン、チオベンゾフェノンおよび4,4’−ビス(ジメチルアミノ)チオベンゾフェノンが含まれる。
チオアルデヒドは、構造R−C(=S)−Hを有し、ここで、Rは、上記のチオケトンに関して定義されたような、一価の有機基である。
チオ尿素は、構造RR’NC(=S)−NR’’R’’’の化合物を表し、式中、R、R’、R’’、R’’’は、それぞれ独立に、水素および一価の有機基から選択される。
一価の有機基は、非置換(すなわち、ヒドロカルビル基)であっても、または所望により(optionally)1種以上のヘテロ原子含有官能基によって置換されていてもよい、脂肪族、芳香族または混合脂肪−芳香族基を含む。
一価の有機基は、たとえば、1〜12個、1〜8個、または1〜6個の炭素原子などの、18個までの炭素原子を含むことができる。
基R、R’、R’’、R’’’は、たとえば、アルキル、アリール、シクロアルキルまたはアラルキルからそれぞれ独立に選択することができ、これらは、所望により、ヒドロキシル、チオールまたはアミンのような官能基が、一つ以上置換されていてもよい。
非限定的な例としては、たとえば、メチル、エチル、イソ−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、フェニル、ベンジル、トリル、キシリルおよび2−エチル−ヘキシルのような、C
1−
12アルキル、アリールまたはアラルキル基、ならびにこれらのいずれかの置換誘導体を含む。
同じ窒素原子に結合した2つの基(すなわち、RとR’、またはR’’とR’’’)はまた、窒素原子と一緒に環構造を形成するアルキレン基のような、二価の有機基によって置き換えられてもよい。本発明にしたがって使用することができるチオ尿素化合物の非限定的な例は、チオ尿素H
2N−C(=S)−NH
2およびその誘導体を含み、ここで、1個以上の、または全部の水素原子は、メチル、エチル、プロピル、ベンジルまたはフェニルのような、脂肪族、芳香族または混合脂肪族−芳香族基で置き換えられる。
チオセミカルバジドは、構造RR’N−C(=S)−N(R’’)−NR’’’R’’’’の化合物であり、ここで、R、R’、R’’、R’’’およびR’’’’は、チオ尿素について上で定義したように、水素および一価の有機基からそれぞれ独立して選択される。
好適なチオセミカルバジドの非限定的な例としては、たとえば、チオセミカルバジド、H
2N−C(=S)−N(H)−NH
2、4−メチル−3−チオセミカルバジド、4−エチル−3−チオセミカルバジド、2−メチル−3−チオセミカルバジド、4,4−ジメチル−3−チオセミカルバジドまたは4−フェニルチオセミカルバジドである。
チオアミドは、構造−C(=S)−NR’R’’の少なくとも、1つの基を含む有機化合物であり、ここで、R’およびR’’はそれぞれ独立して、水素および一価の有機基から選択される。
一価の有機基は、チオ尿素化合物について上で定義した通りである。
【0020】
本発明による、チオカルボニル官能性化合物として使用することができる、チオアミドの非限定的な例には、チオアセトアミド、ジチオオキサミド、2−シアノチオアセトアミド、ピラジン−2−チオカルボキシアミド、3,4−ジフルオロチオベンズアミド、2−ブロモチオベンズアミド、3−ブロモチオベンズアミド、4−ブロモチオベンズアミド、2−クロロチオベンズアミド、3−クロロチオベンズアミド、4−クロロチオベンズアミド、4−フルオロチオベンズアミド、チオベンズアミド、3−メトキシチオベンズアミド、4−メトキシチオベンズアミド、4−メチルベンゼンチオアミド、チオアセトアニリド、3−(アセトキシ)チオベンズアミド、4−(アセトキシ)チオベンズアミド、3−エトキシチオベンズアミド、4−エチルベンゼン−1−チオカルボキシアミド、4’−ヒドロキシビフェニル−4−チオカルボキサミド、4−ビフェニルチオアミド、4’−メチルビフェニル−4−チオカルボキサミドおよびアントラセン−9−チオカルボキサミドを含む。
キサンテートは、少なくとも、1つの特徴的部分−O−C(=S)−Sを含む塩およびエステルを意味する。
キサンテートエステルは、したがって、少なくとも、1つの部分−O−C(=S)−S−R’を含むことができ、ここで、キサンテート塩は、構造R−O−C(=S)−S
-のアニオンを含む。
本明細書では、基RおよびR’は一価の有機基であり、これはチオ尿素について上で定義した通りである。
本発明によるチオカルボニル官能性化合物として使用することができるキサンテートの非限定的な例としては、たとえば、金属塩(たとえば、O−エチルキサントゲネートまたはO−イソプロピルキサントゲネートのアルカリ金属塩)、およびそれらのS−アルキルエステル類似体、ならびに、たとえば、ジ−イソプロピルキサントゲンポリスルフィド(DIXP)またはジ−イソプロピルキサントゲンジスルフィド(DIDP)のような、ジ−アルキルキサントゲン ジ−またはポリスルフィド等の、2つのキサントゲン基を有する化合物が挙げられる。
チオカルバメートまたはジチオカルバメートは、それぞれ、構造−O−C(=S)−NRR’または−S−C(=S)−NRR’の少なくとも、1つの部分を含む化合物を意味し、ここで、RおよびR’は、それぞれ、独立して、水素および一価の有機基から選択される。一価の有機基は、チオ尿素化合物について上で定義した通りである。
チオカルバメートは、メチルカルバメートまたはエチルカルバメートによって例示され得る。
本発明にしたがって使用することができる、適切なジチオカルバメートとしては、たとえば、ベンジル−N、N−ジメチルジチオカルバメートおよびテトラメチルチウラム モノスルフィド、テトラメチルチウラム ジスルフィド、テトラエチルチウラム ジスルフィドまたはテトライソプロピルチウラム ジスルフィドなどのチウラム化合物が挙げられる。
トリチオカーボネートは、構造R−S−C(=S)−S−R’を有し、ここで、RおよびR’は、それぞれ、一価の有機基でありえ、チオ尿素について上で定義した通りであり得るか、または、一緒に環状置換基、たとえば、5〜8原子員の環状置換基を形成し得る。
トリチオカーボネートは、エチレントリチオカーボネートまたはS、S’−ジメチルトリチオカーボネートによって例示することができる。
チオオキサメートは、構造R−O−C(=O)−C(=S)−NR’R’’の化合物を意味し、式中、Rは、一価の有機基を表し、そして、R’およびR’’は、それぞれ、独立して、水素および一価の有機基から選択される。
【0021】
本明細書において、一価の有機基はまた、チオ尿素化合物について上で定義された通りであり得る。
チオオキサメートの非限定的な例には、たとえば、エチル チオオキサメートが含まれる。
チオカルボン酸およびジチオカルボン酸は、カルボキシル基の1個または2個の酸素原子がそれぞれ硫黄原子で置換されているカルボン酸の誘導体である。
好ましくは、本発明にしたがって使用される少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物は、チオ尿素化合物、チオアミド、キサンテート、ジチオカルバメート、またはそれらの混合物もしくは組み合わせから選択される。
本発明にしたがって使用されるチオカルボニル官能性化合物は、さらにスルフィド官能基を含んでもよい。
用語「スルフィド官能基」は、化合物が、少なくとも、1つの共有結合した−S
x−部分を含み、ここで、xは、典型的には、1〜20、たとえば、1〜10または1〜4の範囲であることを意味する。
本発明にしたがって使用されるチオカルボニル官能性化合物は、特に、スルフィド部分−S
x−によって結合している、2つのチオカルボニル基(チオアミド、キサンテート、ジチオカルバメート等のような前述のチオカルボニル官能性構造のいずれか1つの一部として)を含むことができる。
したがって、本発明にしたがって使用される、少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物は、たとえば、式(1)の構造を有することができる。
ここで、xは1〜10の範囲の整数であり、好ましくは1または2である。
グループAおよびBは、それぞれ独立して、NR’R’’およびOR’’’から選択される。
R’、R’’およびR’’’は、それぞれ独立して、水素および、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基のような一価の有機基、から選択される。
一価の有機基R’、R’’およびR’’’は、たとえば、15個までの炭素原子、たとえば、1〜10個、1〜6個、または1〜4個の炭素原子を含むことができる。
それらは、たとえば、アルキル、アリール、シクロアルキルまたはアラルキルからそれぞれ独立に選択することができ、これらは、ヒドロキシル、チオールまたはアミンのような1つまたは複数の官能基で所望により(optionally)置換されていてもよい。
好ましくは、R’、R’’およびR’’’は、それぞれ独立して、たとえば、メチル、エチル、イソ−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、フェニル、ベンジル、トリル、キシリルおよび2−エチル−ヘキシルのような、C
1−
12のアルキル、アリールまたはアラルキル基から選択される。
【0022】
式(1)による適切な化合物の非限定的な例は、ジアルキルキサントゲン ジスルフィドまたはポリスルフィド(たとえば、ジイソプロピルキサントゲンポリスルフィド(DIXP)またはジイソプロピルキサントゲンジスルフィド(DIDP))などのキサンテート、および、以下に詳細に説明するようなチウラムスルフィド化合物である。
本発明によるチオカルボニル官能性化合物として特に有用なものは、チウラム化合物である。
本明細書で使用されるとき、用語「チウラム化合物」は、1分子当たりの式R’R’’N−C(=S)−基の数に一致する価数の有機または無機部分に共有結合している、式R’R’’N−C(=S)−の少なくとも、1つの一価の基を含む、化合物を意味する。
本明細書において、基R’およびR’’は、それぞれ独立して、窒素原子に共有結合した水素または一価の有機基を表し、これらは互いに同じでも異なっていてもよい。
一価の有機基R’およびR’’は、たとえば、1〜10個、1〜6個、または1〜4個の炭素原子などの18個までの炭素原子を含むことができる。
基R’およびR’’は、ヒドロカルビル基、ならびに炭素および水素以外に、酸素、窒素または硫黄などの1個以上のヘテロ原子を含有する有機基を含む。
基R’およびR’’は、たとえば、アルキル、アリール、シクロアルキルまたはアラルキルからそれぞれ独立に選択することができ、これらは、ヒドロキシル、チオールまたはアミンなどの1種または複数の官能基で、所望により置換されていてもよい。
好ましくは、R’およびR’’は、それぞれ独立して、メチル、エチル、イソ−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、フェニル、ベンジル、トリル、キシリルおよび2−エチル−ヘキシルのような、C
1−
12アルキル、アリールまたはアラルキル基から選択される。
基R’およびR’’はまた、アルキレン基のような二価の有機基で置換することもでき、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドのように、窒素原子と一緒に環構造を形成することができる。
式R’R’’N−C(=S)−の少なくとも、1つの基を、結合させることができる、有機部分の非限定的な例には、酸素原子、窒素原子および/または硫黄原子のようなヘテロ原子を、所望により、1つまたは複数の含むことができる、C
1〜C
10の有機基である。
式R’R’’N−C(=S)−の少なくとも、1つの基が結合することができる、無機部分の非限定的な例は、モノ−およびポリスルフィド部分である。
好ましくは、本発明にしたがって使用される、少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物は、チウラムスルフィド化合物である。
特に、式(2)の構造を有するチウラムスルフィド化合物:
を使用することができる。
ここで、nは、1〜6の範囲の整数であり、好ましくは、1または2であり、そして、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素および、チウラム化合物一般に関して、R’およびR‘’について、上で定義した一価の有機基から選択される。
好ましくは、一価の有機基は、本明細書では、1〜12個の炭素原子のような、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。
最も好ましい、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素、および一価の脂肪族または芳香族基から選択され、たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチルおよびイソブチルのようなアルキル基、または、フェニル、ベンジル、キシリル、ナフチルまたはトリルのようなアリールまたはアラルキル基である。
【0023】
チウラムスルフィド化合物は、特に、テトラアルキルチウラム モノ−もしくはジスルフィド、テトラアルキルアリールチウラム モノ−もしくはジスルフィド、テトラアリールアルキルチウラム モノ−もしくはジスルフィド、テトラアリールチウラム モノ−もしくはジスルフィドまたはそれらの混合物もしくは組み合わせであり得る。
本発明にしたがって使用することができる、適切な特定のチウラムスルフィド化合物の非限定的な例としては、テトラメチルチウラム ジスルフィド、テトラエチルチウラム ジスルフィド、テトラブチルチウラム ジスルフィド、テトラメチルチウラム モノスルフィド、テトライソブチルチウラム ジスルフィド、ジペンタメチレンチウラム テトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラム ヘキサスルフィドおよびテトラベンジルチウラム ジスルフィドが挙げられる。
本発明によれば、テトラメチルチウラム ジスルフィドおよび/またはテトラベンジルチウラム ジスルフィドの使用が特に好ましい。
【0024】
驚くべきことに、上記で定義した少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物の存在下で未加工のポリマーラテックスを熟成(mature)すると、熟成(mature)または変性ポリマーラテックスが形成され、それによって、引張強度および/または破断点伸びの増強との組み合わせで、または少なくとも、達成可能な引張強度および/または破断点伸びを実質的に低下させることなく、顕著な柔軟性の増大を示す、硬化ラテックスフィルムを得ることが可能になることがわかった。
また、チオカルボニル官能性化合物を、通常使用される量で使用することによって、望ましくない臭いまたは色の特徴も与えられなかった。
【0025】
ラテックスフィルムの柔軟性の尺度として、本発明の文脈においては、モジュラス値M
300およびM
500に言及される。これは、300%または500%の伸びに達するために必要な応力に対応し、そして、テンシオメータを使用して記録することができる応力-ひずみ曲線から推定することができる。
さらに、本明細書で用いられる「達成可能な引張強度または破断点力を実質的に低下させることなく」という表現は、チオカルボニル官能性化合物の存在下で熟成(mature)させることなく、同様に調製したポリマーラテックスを用いて対応する組成物から同じ方法で得られたラテックスフィルムに対して、それぞれ引張強度または破断点伸びが全く減少しないか、または10%以下で減少することを意味する。
したがって、本発明はまた、上記の任意のチオカルボニル官能性化合物でありうる、チオカルボニル官能性化合物(たとえば、チウラム化合物)の、少なくとも、1種の共役ジエンと少なくとも、1種のエチレン性不飽和ニトリルを含むモノマー混合物、または、それから、水性反応媒体中でのフリーラジカル乳化重合によって形成される未加工ポリマーラテックス(raw polymer latex)への、チオカルボニル官能性化合物の添加なしで、フリーラジカル乳化重合によって同様の方法で得られる、ゴム物品についての引張強度および/または破断点伸びを実質的に劣化させることなく、形成されたポリマーラテックスを含む硬化性組成物を硬化することによって得られ得るゴム物品のモジュラス値、M
300および/またはM
500を低減するための、添加剤としての使用に関する。
少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物は、一般に、工程(a)においてフリーラジカル乳化重合に供されるモノマーの総量に基づいて、少なくとも、0.05重量%の量で使用される。
たとえば、モノマーの総量に基づいて、少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物が、工程(b)において、少なくとも、0.10重量%、少なくとも、0.12重量%、少なくとも、0.15重量%、少なくとも、0.18重量%、少なくとも、0.20重量%、少なくとも、0.21重量%、少なくとも、0.22重量%、少なくとも、0.23重量%、少なくとも、0.24重量%、少なくとも、0.25重量%、少なくとも、0.26重量%、少なくとも、0.27重量%、少なくとも、0.28重量%、少なくとも、0.29重量%、少なくとも、0.30重量%、少なくとも、0.32重量%、少なくとも、0.35重量%、少なくとも、0.40重量%、または少なくとも、0.45重量%の量で存在することができる。
少なくとも、一つのチオカルボニル官能性化合物は、工程(b)において、モノマーの総量に基づいて、3.0重量%以下、2.5重量%以下、2.0重量%以下、1.5重量%以下、1.2重量%以下、1.0以下重量%、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.55重量%以下または0.50重量%以下で存在することができる。
したがって、典型的には、チオカルボニル官能性化合物は、モノマーの合計量に基づいて、未加工のポリマーラテックスの熟成(mature)のために、0.12重量%〜2.0重量%、好ましくは、0.15重量%〜1.0重量%、より好ましくは、0.20重量%〜0.80重量%、0.25重量%〜0.70重量%、0.25重量%〜0.60重量%、0.25重量%〜0.50重量%、0.25重量%〜0.45重量%、0.25重量%〜0.40重量%。または0.25重量%〜0.35重量%の量で使用される。
当業者は、明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が、本明細書に開示されることを理解するであろう。
【0026】
上記の量の少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物の存在下で熟成(mature)されたポリマーラテックスを含む、硬化性組成物から誘導されたラテックスフィルムは、機械的性質、経時安定性および色に関して最適化性能を示す。
【0027】
少なくとも、一種のチオカルボニル官能性化合物が、モノマーの総量に基づいて、0.05重量%よりも少ない量で使用された場合、誘導されたラテックスフィルムの柔軟性の向上のない、またはわずかに向上したのみのものを得ることができる。
他方、多量のチオカルボニル官能性化合物の使用は、望ましくない黄色がかった変色を引き起こし、そして誘導ラテックスフィルムの経時安定性を低下させる傾向がある。
特に、上記の少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物の有効量の存在下での乳化重合によって得られた未加工のラテックスを、上述のように、高温で熟成(mature)させると、ポリマーラテックスの安定性が経時に対して、向上することがわかった。
特に、少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物の存在下、未加工のラテックスの熟成によって付与された、本発明による硬化性ポリマーラテックス組成物から誘導される、ラテックスフィルムの比較的高い柔軟性および比較的高い引張強度および破断点伸びの有益な組み合わせは、したがって、たとえば、フィルムを空気中100℃の温度で22時間エージングしたとき、保持することができる。
【0028】
したがって、それらの引張特性および/または破断点伸びを低下させることなく、ポリマーラテックス組成物から得られ得るゴム製品の柔軟性を高めるための、それらの製品から得られるゴム製品の柔軟性をモノマー混合物またはそれから誘導される未加工のポリマーラテックスへの添加剤としてのチオカルボニル官能性化合物の上記の使用は、好ましくは、ポリマーラテックスの引張強度の経時安定性を増加させるために、ポリマーラテックスと添加されたチオカルボニル官能性化合物との混合物を熱処理することを含むことができる。
加硫剤としての有機硫黄化合物の従来の使用との特徴的な違いとして、本発明による熟成(mature)は、未加工のポリマーラテックスに関することに注目すべきである。
熟成(mature)は、ポリマーラテックスに、硫黄および/または、もしあれば他の架橋剤、および加硫剤を配合するための追加に先立ち、別個の工程として実施される。
【0029】
本発明によるポリマーラテックスの調製は、所望により、以下のような、さらなる工程を含む。
・水性ポリマー分散液から残留モノマーを除去すること、
・水性ポリマー分散液の固形分含有量を、水性ポリマー分散液の総重量に対して、たとえば、20〜60重量%に調整すること、および/または
・塩基または酸などのpH調整剤の添加による水性ポリマー分散液のpH値の調整。
そのような任意の工程は、典型的には、乳化重合工程の後、かつ、ポリマーラテックスを熟成(mature)工程(b)に供する前に行われる。
【0030】
得られた熟成ポリマーラテックスは、次いで、それからゴム物品を製造することができる硬化性ポリマーラテックス組成物を形成するために、当技術分野で従来使用されている様々な添加剤とさらに配合することができる。
特に、本明細書で「架橋剤」とも呼ばれる、ポリマーの架橋反応に関与することができる1つまたは複数の追加の薬剤を、本発明の熟成ポリマーラテックスに添加することができる。
したがって、本発明による硬化性ポリマーラテックス組成物は、上記のように調製された熟成ポリマーラテックスと、1つまたは複数の追加の架橋剤とを含み得る。
ポリマーの架橋反応に関与することができる薬剤は、たとえば、共有結合(ポリ)スルフィド架橋の形成に依存する従来の加硫に使用される薬剤、および、たとえば、ポリマーラテックス分子中に存在する官能基と反応、結合または配位することができるもの、ならびに加硫促進剤のような、他の架橋剤、を含む、ポリマーラテックスの架橋を引き起こすまたは促進する任意の物質を含む。
本発明に係るポリマーラテックス組成物は、したがって、加硫剤として、たとえば、硫黄を含むことができる。
使用される場合、硫黄は、硬化性ポリマーラテックス組成物の固形分の総量に基づいて、特に、0.05〜5.0重量%、好ましくは0.1〜2.0重量%、より好ましくは0.2〜1.5重量%、最も好ましくは0.3〜1.0重量%の量で含まれ得る。
本発明によるポリマーラテックス組成物はまた、1種または複数の加硫促進剤を含んでもよい。
加硫促進剤の種類は特に限定されず、本発明のポリマーラテックスの加硫を効果的に促進するものであれば、このような目的に従来から使用されているものであればいずれも使用可能である。
適切な加硫促進剤は、たとえば、カルバメート、キサントゲン酸塩およびアミンによって例示され得るが、それらに限定されない。
たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛またはジブチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛のようなジチオカルバメート化合物を、本発明によるポリマーラテックス組成物中の加硫促進剤として使用することができる。
さらなる適切な物質としては、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZPD)、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ−o−トリルグアニジン(DOTG)およびo−トリルビグアニジン(OTBG)が挙げられる。
使用される場合、1種以上の加硫促進剤は、硬化性ポリマーラテックス組成物の全固形分量を基準にして、0.01〜2.0重量%、好ましくは、0.1〜1.0重量%の量で組成物中に含まれてもよい。
存在する場合、それによって架橋を達成するために、たとえば、ニトリル基または酸基のような、ポリマーラテックス中に存在する官能基と反応、結合または配位することができる架橋剤を、硫黄および1種以上の加硫促進剤の代わりにまたはそれに加えて、本発明によるポリマーラテックス組成物は、含み得る。
そのような架橋剤の非限定的な例は、たとえば、ポリアルコキシアルキルアルキロールメラミンなどの多官能性有機化合物および/または多価金属の化合物である。
特に、浸漬ラテックスフィルムのグリーン強度(green strength)は、多価金属イオンの化合物を使用することによって向上させることができる。
多価金属の化合物の適切な例は、たとえば、亜鉛、カルシウム、チタン、アルミニウムなどの金属酸化物などの金属酸化物である。
好ましく使用される化合物は、たとえば、酸化亜鉛である。
使用される場合、1種以上の多価金属の化合物は、本発明によるポリマーラテックス組成物中に、硬化性ポリマーラテックス組成物の固形分の総量に基づいて、0.05〜3.0重量%、好ましくは、0.2〜1.5重量%、より好ましくは、0.3〜1.2重量%、最も好ましくは、1.0±0.2重量%の量で含まれてもよい。
本発明によるポリマーラテックスは、それ自体が、それを硬化性にする架橋性官能基を含むことができるので(たとえば、上記のように自己架橋性モノマーによって付与される)、追加の架橋剤の使用は任意である。
したがって、本発明の硬化性ポリマーラテックス組成物は、さらなる架橋剤を添加してまたは添加せずに、少なくとも、1種のチオカルボニル官能性化合物の存在下で熟成(mature)させた水性ポリマーラテックス組成物によって形成することができる。
【0031】
本発明による硬化性ポリマーラテックス組成物は、意図する用途の要求に応じて、pH調整剤、界面活性剤、保護コロイド、湿潤剤、増粘剤、レオロジー調整剤、充填剤、顔料、分散剤、蛍光増白剤、染料、安定剤、殺生物剤、消泡剤またはそれらの組み合わせから選択される1種以上の成分をさらに含み得る。
そのような成分として使用することができる特定の物質、およびそれらの有効量は、当業者に知られており、そして、それに応じて選択することができる。
適切な界面活性剤および保護コロイドは上述されており、そして、ポリマーラテックスの調製の範囲内で本発明による組成物に導入すること、および/またはその後に添加することができる。
適切な消泡剤としては、たとえば、シリコーン油およびアセチレングリコールが挙げられる。
慣用の湿潤剤としては、たとえば、アルキルフェノールエトキシレート、アルカリ金属ジアルキルスルホサクシネート、アセチレングリコールおよびアルカリ金属アルキルサルフェートが挙げられる。
典型的な増粘剤には、それだけには限定されないが、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、キサンタンガム、変性セルロース、またはシリカおよび粘土などの粒子状増粘剤が含まれる。
レオロジー調整剤には、たとえば、鉱油、液体ポリブテン、液体ポリアクリレートおよびラノリンが含まれる。
頻繁に使用される充填剤はシリカ、炭酸カルシウムおよび粘土のような鉱物を含む。
適切な顔料は、二酸化チタニウム(TiO
2)またはカーボンブラックを、例示することができる。
適切な殺生物剤としては、たとえば、置換イソチアゾリノンなどの複素環式化合物が挙げられ、好ましい例は、メチルイソチアゾリノン(MIT)、ベンズイソチアゾリノン(BIT)、ブチルベンズイソチアゾリノン(BBIT)、オクチルイソチアゾリノン(OIT)、クロロメチルイソチアゾリノン(CMIT)、ジクロロオクチル−イソチアゾリノン(DCOIT)を含む。
あるいは、またはさらに、1,5−ジヒドロキシ−2,5−ジオキサヘキサンまたは、Thorにより供給されるActicide F(N)(登録商標)などのヒドロキシメチルウレイドホルムアルデヒド供与体、または、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(bronopol)が使用される。
【0032】
硬化性ポリマーラテックス組成物の意図されるさらなる加工に応じて、本発明によるポリマーラテックス組成物のpH値は、pH調整剤を使用することによって、8〜11、好ましくは、9〜10.5の範囲内になるように調整することができる。
本発明にしたがって使用するのに好ましいpH調整剤は、たとえば、アンモニアまたは水酸化アルカリである。
本発明によるポリマーラテックス組成物の固形分は、さらなる処理のために必要に応じて、典型的には水の除去または添加によって調整することができる。
本発明による硬化性ポリマーラテックス組成物は、浸漬成形法に特に適している。
浸漬成形のために使用されるとき、本発明のポリマーラテックス組成物は、典型的には、10±1のpH値および/または組成物の重量合計に基づいて、12〜40重量%、好ましくは、15〜30重量%の範囲の固形分を有する。
所望により(optionally)、またはさらに、このようにして調製されたラテックスは、いわゆる二重浸漬技術で使用するために、8〜12%に希釈することができる。
かくして配合されたラテックスは、典型的には脱気された後に使用することができる。
さらに、本発明のポリマーラテックス組成物は、たとえば、30ミリモル/リットル未満のCaCl
2、好ましくは、25ミリモル/リットル未満、より好ましくは、20ミリモル/リットル未満、最も好ましくは、10ミリモル/リットル未満(pH10および23℃で、0.1%の組成物の全固形分について決定される)の臨界凝集濃度として決定される、特定の最大電解質安定性を有することが好ましい。
電解質安定性が高すぎると、浸漬成形法でポリマーラテックスを凝固させることが困難になり、その結果、ポリマーラテックスの連続フィルムが浸漬金型上に形成されないか、または得られる製品の厚さが不均一になる。
ポリマーラテックスの電解質安定性を適切に調整することは当業者の慣例の範囲内である。
電解質の安定性は、様々な要因、たとえば、ポリマーラテックスを製造するために使用されるモノマー、特に極性官能基を含むモノマーの量および選択、ならびに界面活性剤のような安定化物質および/または組成物中に存在する保護コロイドの選択および量に依存する。
ゴム物品は、たとえば、本発明によるゴム物品を製造するための上述の方法によって硬化性ポリマーラテックス組成物から調製することができる。
ここで、最終物品の所望の形状を有する金型が提供される。
金型は、しばしば、「型(former)」とも呼ばれ、適用される加工条件下で寸法的および化学的に安定な材料で、一般に作られ、そして、たとえば、耐腐食性金属または合金のような適当な金属またはセラミック材料で作ることができる。
次に、金型を凝固剤浴に浸す。
凝固剤として、本発明の使用されるポリマーラテックス組成物の凝固を引き起こすことができる任意の物質は、原則として浴中で使用することができる。
典型的には凝固剤浴は金属塩の溶液を含む。
凝固剤は通常、水、アルコールまたはそれらの混合物中の溶液として使用される。
凝固剤として適した金属塩の具体的な非限定的な例には、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化亜鉛および塩化アルミニウムのような金属ハロゲン化物;硝酸カルシウム、硝酸バリウムおよび硝酸亜鉛などの金属硝酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、および硫酸アルミニウムなどの金属硫酸塩;酢酸カルシウム、酢酸バリウム、および酢酸亜鉛などの酢酸塩が含まれる。
本発明による方法において好ましく使用されるのは、凝固剤浴の全重量を基準にして、典型的には15〜20重量%、好ましくは、18±1重量%の濃度の塩化カルシウムおよび/または硝酸カルシウムである。
凝固剤溶液は、たとえば、金型の湿潤挙動を改善するための補助添加剤、またはステアリン酸カルシウムのような脂肪酸の塩のような離金型剤を所望により(optionally)含んでもよい。
凝固剤溶液の温度は、通常、50〜60℃に維持される。
次いで、金型を凝固剤浴から取り出し、所望により(optionally)乾燥させることができる。
典型的には、「型(former)」を洗浄し、70℃に温め、ゆっくりと凝固剤溶液に浸漬し、そして、除去する前に約1秒間保持し、そして、必要に応じて、たとえば、過剰な凝固剤が滴り落ちるのを除去したのち、40℃で約2分間、オーブン中で乾燥する。
このようにして処理された金型は次に、上で詳細に説明したように本発明による硬化性ポリマーラテックス組成物中に浸漬される。
典型的には、それはポリマーラテックス組成物中に入るので、型の温度は、65℃を超えない。
それによって、ラテックスの薄膜が金型の表面上で凝固する。
適用されるそのような浸漬工程の数によって、膜厚を調整することが可能である。
したがって、ラテックスフィルムは、硬化性ポリマーラテックス組成物への単一の浸漬によって、または複数のそのような浸漬工程、たとえば、2つの浸漬工程によって順に得ることができる(これは二重浸漬技術として知られている)。
【0033】
金型を浸漬するのにかかる時間は、硬化性ラテックス組成物中の滞留時間および金型を引き出すのにかかる時間と共に、凝固したコーティングの厚さに影響を与える。
このプロセスの典型的な値は、ラテックス組成物を横断に約7秒、滞留時間に約3−5秒、および硬化性ラテックス組成物から金型を引き出すために約7秒である。
その後、金型は、ラテックス組成物から除去され、そして、たとえば、組成物からの極性成分を抽出し、そして、凝固したラテックスフィルムを洗浄するために、必要に応じて、水性洗浄槽に浸漬される。
水性洗浄槽は、典型的には、水浴である。
金型は、たとえば、ラテックス組成物から取り出し、たとえば、約60℃で1分間水で浸出する前に、水性洗浄槽に浸漬することによって、25−40℃の温度で約1分間ゲル化させてもよい。
ラテックス被覆金型は、好ましくは、水性洗浄浴中に浸漬した後、さらに所望により(optionally)乾燥させることができる。
その後、手袋のカフを手動で巻き上げるかまたは「ビーズ化(‘beaded’)」し、そして、金型を乾燥させる。
このようにコーティングされた金型の乾燥は、たとえば、典型的には2段階プロセスにおいて、熱風や熱風循環オーブンで行うことができ、最初の70〜95℃の温度で、好ましくは、約10分間、約90℃で、そして、次いで、100〜130℃、好ましくは、約120℃で、約20分間硬化される。
次いで、ラテックス被覆金型を80℃〜200℃、好ましくは、100℃〜180℃の範囲の温度で熱処理して、ラテックスを硬化させ、そして、かくして所望の機械的性質を有するゴム製品を得る。
熱処理の期間は温度に依存し、そして、典型的には1〜60分の間である。
温度が高いほど必要な処理時間は短くなる。
形成されたゴム物品は次に金型から取り出される。
本明細書中で使用される場合、硬化は、ポリマーラテックスを架橋して弾性を有するゴム材料を形成することを指す。
したがって、硬化性は硬化する能力を意味する。
前述の方法の特定の変形形態では、金型を凝固剤浴に浸す前に、金型の形状に適合する取り外し可能なライナーを金型上に配置する。
形成されたラテックス物品は、次いで、取り外し可能なライナーを含む。
したがって、本発明によるゴム物品は、一般に、少なくとも、部分的に硬化した状態で本発明によるポリマーラテックス組成物で被覆または含浸されている基材を含むことができる。
基材またはライナーは、好ましくは、織物材料を含む。
したがって、本発明によるゴム物品は、特に、本発明による硬化性ポリマーラテックス組成物から製造された自己支持フィルムまたは支持フィルムを含むことができる。
手袋用などの支持されていないフィルムの膜厚は、典型的には0.02〜0.08ミリメーター、好ましくは、0.03〜0.07ミリメーター、たとえば、0.03〜0.06ミリメーターまたは0.03〜0.05ミリメーターの範囲であり、一方、支持されたフィルムは最大5ミリメーターであり得る。
【0034】
最終的に得られる硬化ポリマーラテックスフィルムは、典型的には、以下のような機械的性質のうちの1つ以上、たとえば、全部などを示す。
-少なくとも、20MPa、好ましくは、少なくとも、25MPa、または少なくとも、30MPa、または少なくとも、35MPa、または少なくとも、38MPa、または少なくとも、40MPaの引張強度;
−破断点伸びが、少なくとも、300%、好ましくは、少なくとも、350%、または少なくとも、400%、または少なくとも、450%、または少なくとも、500%、または少なくとも、550%;
−モジュラスM
300および/またはM
500が、対応する硬化性ポリマーラテックス組成物から同じ方法で得られたが、チオカルボニル官能性化合物の存在下で熟成していない、フィルムよりも、少なくとも、10%、好ましくは、少なくとも、20%、少なくとも、25%または少なくとも、30%低い;
−モジュラスM
300は、本発明によるポリマーラテックスフィルムについて、たとえば、10MPa未満、好ましくは、9MPa未満、8MPa未満、または7MPa未満であり得る。
−本発明によるポリマーラテックスフィルムについて、モジュラスM
500は、たとえば、35MPa未満、または30MPa未満、または28MPa未満、または25MPa未満であり得る。
これらの機械的性質は、それぞれの種類のゴム製品の製品ライフサイクルにおいて典型的に遭遇する条件、および、加速エージング試験におけるようなそれをシミュレートするエージング条件、たとえば、ラテックスフィルムサンプルを、空気循環オーブン内で、100℃の温度で、22時間にさらすようなエージング条件後でも保持できる。
本明細書で使用される「経年時に安定」、「経年安定性」などの用語は、経年時にラテックスまたはそれに由来するフィルムの特性が変化しないことを必ずしも意味しない。
実際、たとえば、ラテックスフィルムの機械的特性などの特性は、経時変化によってある程度変化する可能性があり、たとえば、ラテックスフィルムはより硬くなる可能性がある。
しかしながら、本発明によるラテックスフィルムは、一般に、未加工のラテックスが、チオカルボニル官能性化合物の存在下に熟成(mature)されなかった、対応する硬化性ポリマーラテックス組成物から得られる参照エージング基準ラテックスフィルムと比較して、経年状態で、比較的高い柔軟性および少なくとも、同程度の引張強度および/または破断点伸びを保持する。
参照ラテックスフィルムに対する本発明によるそのような好ましい特性の組み合わせの保持はまた、本明細書で使用される用語「経年時に安定」、「経年安定性」などの意味によっても包含される。
【0035】
本明細書で言及される機械的性質は、一般に、ASTM D412−06aにしたがって決定される、それぞれの機械的性質を指す。
機械的性質の測定に関する詳細は、下記の実験の部に記載されている。
【0036】
本発明による硬化性ポリマーラテックス組成物は、特に、たとえば、前述の方法を適用して、浸漬成形品の製造および/または基材の被覆および含浸に使用することができる。
本発明は、手袋、特に手術用手袋、検査用手袋、工業用手袋および家庭用手袋、コンドームおよびカテーテルなどのゴム製品の製造に、特に適用可能である。
特に、向上した柔軟性と高い引張強度とを組み合わせた、本発明による、ポリマーラテックスの使用により達成可能な機械的性質は、基本的に、経年時にも保持され、適用性能に悪影響を及ぼすことなく、そのようなゴム物品のフィルム厚を効果的に減少させることを可能にすると考えられる。
【0037】
以下の実施例を参照して本発明をさらに説明する。
しかしながら、本発明の範囲は決してこれらの実施例に限定されるものではなく、むしろ均等論を十分に考慮しながら、説明に照らして添付の特許請求の範囲を考慮して解釈されるべきである。
【0038】
実施例:
フリーラジカル乳化重合による水性ポリマー分散液の調製
実施例1(比較例):
水74.7重量部および、31重量%の固形分含有量を有する、シードラテックス(ポリマー固形分に基づいて)2.0重量部(Z−平均粒径36ナノメートル、動的光散乱(Dynamic Light Scattering)(DLS)を使用した、マルバーン・ゼータサイザー・ナノ S(Malvern Zetasizer Nano S)(ZEN1600
(R)を用いて測定した。)を、窒素でパージしたオートクレーブに添加し、続いて25℃に加熱した。
次いで、0.05重量部のC10〜13アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩(固形分に基づく重量部;25重量%のTSCの総固形分(TSC)を有する水溶液を使用した)、0.01重量部のエチレンジアミン四酢酸ナトリウム(Na
4EDTA)、Bruggolite(登録商標)FF6(Bruggemann Chemicalにより供給)0.05重量部、硫酸第一鉄0.005重量部およびクメンヒドロペルオキシド(CHP)0.08重量部を添加した。
30重量部のアクリロニトリル、62重量部のブタジエン、6重量部のメタクリル酸および0.58重量部のt−ドデシルメルカプタン(tDDM)を一緒に混合することによって、遅延モノマー仕込み物を含む別の供給材料を調製し、そして、オートクレーブ内の水性媒体に、5時間かけて一定速度で添加した。
モノマー供給と同時に出発して、2.5重量部のC10〜13アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩(固形分を基準とした重量部、25%のTSCを有する水溶液を使用した)の混合物、0.25重量部のモノ-およびジドデシルジフェニルオキシド ジスルホネートジナトリウムの混合物(固形分を基準にした重量部;45%のTSCを有する水溶液を使用した)、0.2重量部のピロホスフェート テトラナトリウムおよび14.93重量部の水の混合物を、オートクレーブ中の水性媒体に、10時間かけて添加した。
さらに、上記供給と同時に開始して、3.1重量部の水中の0.15重量部のBruggolite(登録商標)FF6のコ・アクティベーターの供給(co−activator feed)を14時間にわたって添加した。
5.22重量部の水中の、0.08重量部のCHPおよび0.05重量部のC10〜13アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩(固形分に基づく重量部、25%のTSCを有する水溶液を使用した)の活性化後供給物(post activation feed)を、上記の供給の開始から10時間後に注入した。
オートクレーブ内の水性媒体の温度を、モノマー仕込み物の添加から始めて、25℃で2時間維持し、1時間かけて20℃に冷却し、そしてこの温度で13時間維持した。
次いで、温度を、4時間かけて30℃に上昇させ、そして、モノマーの全量に基づいて約98%のモノマー転化率に達するまで30℃に維持し、こうして形成された、約45重量%の水性ポリマー分散液の全固形分を得た。
定義された経過反応時間でバッチをサンプリングして得られた、既知の反応プロファイルと比較し、これらの定義された時間でモノマー変換の程度を測定することによって、反応経過時間から、モノマー変換の程度を推定した。
次いで、仕込んだモノマーの総重量100重量部に対して、水中の0.2重量部の固体亜ジチオン酸ナトリウムを添加することによって重合を停止させた。
次いで、得られた水性ポリマー分散液のpHをpH7.5に水酸化アンモニウム溶液を用いて調整し、そして、60℃で、100ミリバールの圧力まで下げ、真空蒸留によって残留モノマーおよび他の揮発性有機化合物を、水性ポリマー分散液から除去した。
このようにしてストリッピングされたラテックス(stripped latex)を、ストリッピング容器(stripping vessel)からデカントし、そして、換気されたドラフトチャンバー中で、室温まで冷却させた。
続いて、0.5重量部のウィングステイ(Wingstay)L型 酸化防止剤(水中60%分散液)を未加工のラテックスに添加し、そして、水酸化アンモニウム溶液を添加することによって、pHを8.2に調整した。
【0039】
実施例2(比較例):
実施例1から得られた最終ポリマーラテックスの一部を、さらに、60℃の温度に加熱し、そして、この温度で、900分間、維持した。
【0040】
実施例3(比較例):
実施例1に記載したようにポリマーラテックスを調製し、そして、続いて、60℃の温度に加熱し、そしてこの温度で、1620分間、維持した。
【0041】
実施例4(比較例):
実施例1に記載したようにポリマーラテックスを調製し、そして、続いて80℃の温度に加熱し、そして、この温度で、60分間、維持した。
【0042】
実施例5
実施例1に記載したようにして、ポリマーラテックスを製造した。仕込んだ全モノマーの重量100重量部当たり、0.3重量部の固体テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)を、配合直前に、下記実施例7に関連して製造した分散液として、この水性ポリマー分散液に添加した。
【0043】
実施例6
実施例1に記載したようにして、ポリマーラテックスを製造した。仕込んだ全モノマー重量の、100重量部当たり、0.3重量部の固体テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)を、下記実施例7に関連して製造した分散液として、この水性ポリマー分散液に添加した。
次いで、得られた混合物を、配合前に、室温で、60分間、熟成(mature)させた。
【0044】
実施例7
実施例1の最終ラテックスの一部を、ジャケット付きガラス製反応器中で、60℃の温度に加熱し、温度制御は、流動浴リザーバ(Julabo GmbHにより供給される)を組み込んだ、温度制御システムに接続された、PT100温度センサーを用いて維持する。
仕込んだ総モノマー100重量部当たり、0.3重量部の固体テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)を、攪拌しながら、加熱ラテックスに、下記のように調製した分散液として添加した。
使用した攪拌機は、100rpmで回転するPTFEスターラーグランド(PTFE stirrer gland)を介してオーバーヘッドスターラーに取り付けられたPTFE被覆アンカー(PTFE−coated anchor)であった。
加えたTMTDの分散液を含む、このようにして得られたポリマーラテックスを、60℃の温度に、5分間維持した。
このようにして処理したラテックスを、次に、ガラス製反応器から、ベースバルブを介して、排出し、そして、室温に放冷した。
添加されたTMTD分散液は、50重量%のTMTD分散液として、Revertex Malaysia Sdn Bhdにより供給された。
この分散液は、463重量部の脱イオン水を、適切な混合容器に供給し、その中へ、15重量部の縮合ナフタレンスルホネート(たとえば、Air Productsにより供給されるDehscofix(登録商標)153)および非イオン性湿潤剤(Surfynol(登録商標)TGなど)の1重量部を溶解する粉砕システム(comminuting system)を用いて製造した。
この混合物に、500重量部のTMTD粉末、5重量部のベントナイト粘土、15重量部の水酸化カリウムおよび1重量部のベンズイソチアゾリノンを添加した。
次いで、この混合物を、少なくとも、30分間、または50ミクロンの最大粒径が達成されるまで、3000rpmで回転する、Coball Mill、Siversonスターラー、ボールミルまたは水平ミル(Horizontal mill)などの適切なミルで粉砕した。
得られた分散液の粘度は、ブルックフィールド LVT スピンドル 2/60rpm(ISO 1652に準拠)を使用して測定して、典型的には、200〜500mPasであり、pHは、典型的に、9.0〜11.0であり、全固形分は50.0〜52.0重量%である。
【0045】
実施例8
添加したTMTD分散液を含むラテックスを、60℃で、60分間維持したことを除いて、実施例7に記載したように、加えたTMTDを含むポリマーラテックスを調製し、そして、加熱処理した。
【0046】
実施例9
添加したTMTD分散液を含むラテックスを、60℃で、900分間、維持したことを除いて、実施例7に記載したように、加えたTMTDを含むポリマーラテックスを調製し、そして、加熱処理した。
【0047】
実施例10
実施例1に記載したようにポリマーラテックスを調製した。
添加したTMTD分散液を含むラテックスを、60℃で、1620分間維持したことを除いて、実施例7に記載したように、加えたTMTDを含むポリマーラテックスを、それから調製し、そして、加熱処理した。
【0048】
実施例11
ラテックスを、40°Cの温度に加熱し、そして、TMTD分散液の添加後5分間、40℃で維持したことを除いて、実施例7に記載したように、加えたTMTDを含むポリマーラテックスを調製し、そして、加熱処理した。
【0049】
実施例12
添加したTMTD分散液を含むラテックスを、40℃で、60分間、維持したことを除いて、実施例11に記載したように、加えたTMTDを含むポリマーラテックスを調製し、そして、加熱処理した。
【0050】
実施例13
添加したTMTD分散液を含むラテックスを、40℃で、900分間維持したことを除いて、実施例11に記載したように、加えたTMTDを含むポリマーラテックスを調製し、そして、加熱処理した。
【0051】
実施例14
実施例1に記載したようにポリマーラテックスを調製した。
ラテックスは、TMTD分散液の追加のため、80℃の温度に加熱し、そして、その混合物は、TMTD分散液の添加後、80℃、60分間、維持したことを除いて、実施例7に記載したように、加えたTMTDを含むポリマーラテックスを、それから調製し、そして、加熱処理した。
さらに、ポリマーラテックスを、様々な量のTMTDを添加して、以下のように調製した。
【0052】
実施例15(比較例):
重合停止剤の添加およびpHの調整後、ラテックスを、60°Cの温度に加熱し、そして、減圧蒸留による残留モノマーを除去する前に、210分間、この温度で保持したことを除いて、実施例1に記載されるようにポリマーラテックスを調製した。
【0053】
実施例16(比較例):
重合停止剤の添加およびpH調整の後、さらに0.03重量部の固体TMTDを分散剤として(上記のように調製した)ラテックスに添加したことを除いて、ポリマーラテックスを、実施例15に記載のように調製した。
得られた混合物を、次いで60℃の温度に加熱し、そして、真空蒸留により、残留モノマーを除去する前に、この温度で210分間維持した。
【0054】
実施例17
分散剤の形態で、0.20重量部の固体TMTDを添加したことを除いて、実施例16に記載したようにポリマーラテックスを調製した。
【0055】
実施例18
分散剤の形で、0.30重量部の固体TMTDを添加したことを除いて、実施例16に記載したようにポリマーラテックスを調製した。
【0056】
実施例19
0.50重量部の固体TMTDを分散剤の形で添加したことを除いて、実施例16に記載したようにポリマーラテックスを調製した。
【0057】
実施例20
0.80重量部の固体TMTDを分散剤の形で添加したことを除いて、実施例16に記載したようにポリマーラテックスを製造した。
【0058】
実施例21
1.00重量部の固体TMTDを、分散剤の形で添加したことを除いて、実施例16に記載したように、ポリマーラテックスを調製した。
【0059】
さらに、ポリマーラテックスは、熱処理のための添加剤として、異なる種類の有機硫黄化合物を用いて以下に記載されるように調製された。
【0060】
実施例22(比較例):
実施例1に記載したようにポリマーラテックスを調製し、そして、続いて、60℃の温度に加熱し、そしてこの温度に900分間、維持した。
【0061】
実施例23:
実施例1に記載したようにポリマーラテックスを調製した。
添加したTMTDの分散物を含むラテックスを、60℃で、900分間、維持したという点を除いて、加えたTMTDを含むポリマーラテックスは、そこから調製し、そして、実施例7に記載したように熱処理をした。
【0062】
実施例24:
添加した、チオカルボニル官能性化合物を含む、ポリマーラテックスを、Perkacit(登録商標) TBzTDとして、Performance Additives(Behn Meyer Group)により供給されている、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)で、TMTDを置き換えたことを除いて、実施例23に記載の通り調製し、そして、熱処理した。
したがって、仕込んだモノマー100重量部当たり、0.3重量部の固体TBzTDを、水性分散液として、60℃の温度に加熱したラテックスに添加した。
このようにして得られた混合物を、TBZTD分散剤の添加後、900分間、60℃の温度で維持した。
使用したTBzTD分散剤は、TMTDをテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)で置き換えたこと以外は、実施例7に記載のTMTD分散剤として調製した。
【0063】
実施例25
添加した、チオカルボニル官能性化合物を含む、ポリマーラテックスを、TMTDを、DIXDとして、ロビンソンブラザーズ(Robinson Brothers)により供給されているジイソプロピルキサントゲンジスルフィド(DIXD)で置き換えたことを除いて、実施例23に記載したように調製し、そして、熱処理した。
したがって、仕込んだモノマー100重量部当たり、0.3重量部の固体DIXDを、水性分散液として、60℃の温度に加熱したラテックスに添加した。
このようにして得られた混合物を、DIXD分散液の追加後、60℃の温度で、900分、維持した。
TMTDを、d1−イソプロピルキサントゲンジスルフィド(DIXD)で置き換えた以外は、使用したDIXD分散液は、実施例7に記載のTMTD分散液と同様にして調製した。
【0064】
実施例26:
TMTDを、Robac(登録商標)AS100として、Robinson Brothersにより供給されているジイソプロピルキサントゲンポリスルフィド(DIXP)で置き換えたことを除いて、添加したチオカルボニル官能性化合物を含む、ポリマーラテックスを、実施例23に記載のように、調製し、そして、熱処理した。
したがって、仕込んだモノマー100重量部当たり、0.3重量部のDIXPを、水性分散液として、60℃の温度に加熱したラテックスに添加した。
このようにして得られた混合物を、DIXPの分散液の添加後、60℃の温度で、900分、維持した。
使用されたDIXP分散液は、Triton(登録商標) CF10(Dow Chemical Companyによって供給されている)の3重量%の水溶液を、Robinson Brothers Ltd.によって供給される液体DIXPに混合することによって調製され、60重量%のDIXP水性分散液を生じた。
【0065】
実施例27(比較例):
リンクウェル(Linkwell)TBBSとして(元々、Linkwell Rubber Co. Ltdから)、Behn Meyer Groupにより供給される、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)で、TMTDを置き換えたことを除いて、実施例23に記載のように、添加された有機硫黄化合物を含むポリマーラテックスを調製し、そして、熱処理した。
したがって、仕込んだ(charged)モノマー100重量部当たり、0.3重量部のTBBSを、水性分散液として、60℃の温度に加熱したラテックスに添加した。
このようにして得られた混合物を、TBBSの分散剤の追加後、60℃の温度で、900分、維持した。
使用したTBBS分散剤は、TMTDをTBBSで置き換えたこと以外は、実施例7に記載のTMTD分散液と同様にして調製した。
【0066】
配合
上記のようにして製造したポリマーラテックスを、ポリマー固形分の100重量部当たり、酸化亜鉛1.0重量部、硫黄0.8重量部、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)0.7重量部および二酸化チタン1.0重量部と、それぞれ配合し、それぞれ、硬化性ポリマーラテックス組成物を形成した。
これらの硬化性化学物質(酸化亜鉛、硫黄、ZDECおよび二酸化チタン)のそれぞれを配合するために、Revertex(Malaysia)Sdn Bhdによって供給されている、水中50〜51重量%分散液として使用した。
配合する成分の秤量は、ザルトリウス天秤(モデルED3202S)を用いて行った。
それぞれの水性ポリマー分散液に添加する前に、2500rpmに設定した速度で、20分間、Silverson L5M高剪断ミキサーを使用して、各硬化性化学物質を均質化した。
IKA RW20(IKA Labortechnik製)を、120rpmで使用して、攪拌しながら、各硬化性化学物質を、25℃の温度で、それぞれの水性ポリマー分散液にゆっくり添加した。
硬化性化学物質を添加した後、5重量%の水酸化カリウム水溶液およびHANNAモデルpH211のpHメーターを使用して、配合された組成物のpHを、pH10.0に調整した。
配合したポリマーラテックス組成物を、次に、脱イオン水で、全固形分18重量%に希釈した。
次に、配合した組成物を、100rpmに設定した速度で撹拌しながら、16時間室温に保った。
【0067】
手袋の製造
手袋は、次の手順にしたがって、Kendek Industry Sdn Bhdによって製造された、自社設計の金型浸漬機を使用して、調製した硬化性ポリマーラテックス組成物から製造した。
Ceramtec MalaysiaのモデルHCT SR40FFにより製造された、ざらつきのある指部分および滑らかな手のひらを有する手袋金型、が提供された。
金型を、最初に、家庭用の洗浄液で洗浄した後、脱イオン水で洗い流した。
このようにして清浄化した金型を、次いで、オーブン(Heraeus Instrumentsによって供給されているモデルUT6200)中で、55〜60℃の範囲の温度に加熱し、続いて、60℃の温度に保持した凝固剤浴(18重量%硝酸カルシウム水溶液)中に、1秒間、浸漬した。
凝固剤浴から取り出された金型を、次に、75℃に設定したオーブンに15分間入れた。
続いて、55〜65℃の範囲の温度を示した、加熱された金型を、それぞれの硬化性ポリマーラテックス組成物中に、7秒以内に、所望のレベル((cuff level)カフレベル)に到達するまで、金型を、配合されたラテックス中に横切り下降させ、その位置を5秒間維持し、続いて7秒以内にポリマーラテックス組成物から再び飛びだすまで上に移動する。
このようにして得られたコーティングされた金型を、室温(25℃)で、空気中で、1分乾燥し、そして、次いで、60℃で、1分間、水に浸出した。浸出後、手袋のカフは、手でビーズ化された。
その後、コーティングされた金型を、オーブン(Heraeus Instrumentsによって供給されたモデルUT6200)中で、90℃で、10分間乾燥させた。
続いて、コーティングされた金型を、オーブン(モデルUT6200、Heraeus Instrumentsによって供給されている)中で、120℃の温度に、20分間、加熱され、金型上のそれぞれの硬化性ポリマーラテックス組成物を硬化させた。
硬化工程は、一度に、最大14個の金型で実施した。
最後に、このようにして形成された硬化ラテックス手袋を金型から手動で剥がした。
形成された手袋の膜厚(ミリメーター)は、厚さゲージ(Sylvacによって供給される、モデルStudenroth、タイプ12.5ミリメーター/0.001)を使用して測定された。
測定されたフィルム厚さは、典型的には、0.050〜0.060ミリメーターの範囲内であった。
【0068】
ラテックスフィルム特性
未経年(un−aged)状態および経年(aged)状態におけるそれらの引張特性および色特性を調べるために、調製した硬化手袋から、ラテックス薄膜のサンプルを切り取った。
経年は、100℃の温度に維持された空気循環オーブン中、22時間、サンプルを入れることによって達成された。
未経年サンプルならびに経年サンプルは、試験前に、少なくとも、24時間、23±2℃および50±5%の相対湿度で状態調節した。
引張特性は、引張試験用の6ミリメーターのタイプCダンベル試験片を用いてASTM D412−06a試験手順にしたがって試験した。
カッターの寸法(dimension)は、ASTMD412−06a標準のタイプDと同じであり、手袋の手の平の領域から切り出したとき、0.054−0.060ミリメートル±0.002ミリメートルの典型的な膜厚である。
ロングストローク(longstroke)伸び計を取り付けた、Zwick Roell Z005 TN Proline張力計(tensiometer)を用いて、引張応力−伸び曲線を記録した。
サンプルを、23±2℃の温度および50(5%の相対湿度で、500ミリメートル/分の速度で伸長した。
報告された引張強度は、試験片を破断するまで伸張する際に決定された最大引張応力に対応する。極限伸びは破断が起こる伸びに対応する。
報告されたモジュラス(modulus)値、M
100、M
300およびM
500は、それぞれ100%、300%または500%の伸びに達するために必要とされる決定された応力に対応する。
引用した結果は、13個の試験片の平均を表す。
さらに、調製したラテックス薄膜の比色特性(colorimetric properties)は、CR−A43白色較正プレートで較正した、コニカミノルタカラーリーダーCR−10比色計(colorimeter)を使用して、三刺激値(tristimulus)L*、a*およびb*を測定することによって決定した。
各サンプルについて、それぞれの手袋の手のひら領域の異なる箇所で3点測定を行った。
報告された値はそれぞれ、それぞれのサンプルの異なる位置で行われた3つの測定値の算術平均(arithmetic average)を表す。
正のb*値は黄色度を示し、それはb*値が高いほど顕著である。
【0069】
実施例1〜14に関する試験の結果を表1に要約する。
n/a:得られず。
Un−aged:未経年。
aged:経年。
【0070】
これらの試験結果は、配合前に、TMTDの存在下でポリマーラテックスを熟成(mature)させると、TMTDの存在下での熟成(mature)させていない同じラテックスから得られるフィルムと比較して、引張強度は同程度のままであるが、有意に向上した柔軟性(より低いM
300およびM
500値により示される)およびより高い破断点伸びを有するラテックスフィルムを生じる。
これは未経年(un−aged)のフィルムでも、経年(aged)したフィルムでも見られる。
フィルムはより硬くなるが、引張特性の好ましい組み合わせは、経年しても少なくとも、ある程度は保持される。
表1の実験データから明らかなように、ポリマーラテックスの熟成(mature)が高温でおよび/または約60分のような期間にわたって行われる場合、これらの効果は最も効率的に達成される。
たとえば、実施例5は、配合直前のTMDTの添加は、ラテックスを、配合前に、TMTDの存在下に、より長い時間、熟成(mature)させた対応するサンプルよりも、そのラテックスフィルムは、経年において、著しく顕著にその柔軟性を失うので、効果的ではないことを示す(実施例6〜14)。
本発明にしたがって仕込んだモノマー100重量部当たり、0.3重量部のTMTDの存在下で熟成(mature)させたポリマーラテックスから得られたフィルムは、TMTDを使用せずに得られた参照フィルムよりも黄色味が多くないことがわかった。
本発明による全ての調査されたサンプルについて有効であるように、嗅覚試験においてヒトによって知覚される臭いは、チオカルボニル官能性化合物の存在下で熟成(mature)させることなく得られた対応する参照サンプルに匹敵した。
実施例15〜21によるポリマーラテックスから誘導されたラテックスフィルムについて得られた試験結果を表2に示す。
【0071】
Un−aged:経年していない。
aged:経年した。
表2のデータは、TMTDが、仕込んだモノマー100重量部あたり、0.03重量部を超える量(たとえば、0.20重量部またはそれ以上)で添加される場合、フィルムの柔軟性の有意な向上(低いM
300およびM
500値によって示されるように)が達成されることを示す。
仕込んだモノマー100重量部当たり、0.03重量部のTMTD量では、フィルムの柔軟性は、ほんの少ししか増加しない(実施例16)。
TMTDが、仕込んだモノマー100重量部当たり、0.50重量部以上の量で使用される場合、引張特性は、経年時に安定性が劣ることが見出され、そして、フィルムの色は、より黄色っぽい外観の傾向を示す。(より低いL
*値およびより少ない負のb
*値によって示される)。
それ故、TMTDの最適量は、仕込まれたモノマー100重量部当たり、約0.05重量部から0.50重量部未満の範囲にあると考えられる。
実施例22〜27によるポリマーラテックスから誘導されたラテックスフィルムについて得られた試験結果を表3に示す。
【0072】
Un−aged:経年していない。
aged:経年した。
【0073】
これらの結果は、TBzTDのような他のチウラム化合物が、本発明によるチオカルボニル官能性添加剤として使用した場合に、TMTDと比較して、非常に類似した性能を与えたことを実証している。
キサントゲン スルフィド化合物である、DIXDおよびDIXPは、引張強度を実質的に低下させることなく、得られるラテックスフィルムの柔軟性を向上させるための添加剤として同様に使用することができるが、それでもやはり、チウラム化合物ほど柔軟性を向上させるのに有効ではないことがわかった。
いかなる理論にも拘束されることを意図しないが、DIXDおよびDIXPは、より高密度の硫黄ネットワークおよびより高い割合のポリスルフィド架橋を開発し、そして、したがって、チウラム化合物よりも高い(すなわち、より堅い)モジュラス値(modulus values)をもたらしたと考えられる。
TBBSの使用は、チウラムおよびキサンテート化合物の使用に匹敵するフィルムの柔軟性の向上をもたらしたが、しかし、チオカルボニル官能性化合物とは対照的に、引張強度は同時に低下する。
これは、TBBSのような非チオカルボニル官能性有機硫黄添加剤の使用が、本発明によって達成可能な特性の好ましい組み合わせをもたらさないことを示す。