特許第6871402号(P6871402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6871402シェルアンドチューブ式機器のための保護装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871402
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】シェルアンドチューブ式機器のための保護装置
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/18 20060101AFI20210426BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20210426BHJP
   F28F 9/22 20060101ALI20210426BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   F28F9/18
   F28F9/02 G
   F28F9/22
   F28D7/16 A
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-547997(P2019-547997)
(86)(22)【出願日】2018年3月7日
(65)【公表番号】特表2020-509334(P2020-509334A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】EP2018055623
(87)【国際公開番号】WO2018166868
(87)【国際公開日】20180920
【審査請求日】2019年8月29日
(31)【優先権主張番号】17425030.8
(32)【優先日】2017年3月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519314593
【氏名又は名称】アルファ・ラヴァル・オルミ・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ・マネンティ
【審査官】 西塚 祐斗
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−070868(JP,U)
【文献】 特開2016−217654(JP,A)
【文献】 特開2011−099614(JP,A)
【文献】 特開2001−133195(JP,A)
【文献】 特開平9−170896(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/065478(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/18
F28D 7/16
F28F 9/02
F28F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管束(14)を包囲するシェル(12)を備えるシェルアンドチューブ式機器(10)であって、前記管束(14)は複数の管(16)を備え、各々の管(16)の少なくとも一端が、流体(22)を前記シェルアンドチューブ式機器(10)に入れるための管板孔(20)がそれぞれ設けられる入口の管板(18)に結合され、前記入口の管板(18)には、前記流体(22)を受け入れる第1の側(24)と、前記第1の側(24)と反対であり、前記管(16)が結合される第2の側(26)とが設けられ、前記入口の管板(18)は、各々の管(16)がそれぞれの前記管板孔(20)の内側に延在せずに、前記入口の管板(18)の前記第2の側(26)に当接する状態で前記管束(14)の各々の管(16)に連結され、
前記入口の管板(18)には、前記管板孔(20)へと流入する前記流体(22)による局所的な乱流および浸食から前記管板孔(20)を保護するための管状保護装置(32)が、前記管板孔(20)のうちの少なくとも2つにおいてそれぞれ設けられ、各々の管状保護装置(32)は、それぞれの管板孔(20)において前記入口の管板(18)の前記第1の側(24)から延びる突き合わせ部または一本の管の形態で作られ、前記管状保護装置(32)と前記シェルアンドチューブ式機器(10)の前記管(16)との間に物理的な接触がないことを特徴とするシェルアンドチューブ式機器(10)。
【請求項2】
各々の管状保護装置(32)は、前記管状保護装置(32)と前記入口の管板(18)の前記第1の側(24)との間の結合部分(34)において測定され、それぞれの前記管板孔(20)の内径(D2)と同一である内径(D1)を有することを特徴とする、請求項1に記載のシェルアンドチューブ式機器(10)。
【請求項3】
各々の管状保護装置(32)の前記内径(D1)は、前記入口の管板(18)の反対側、つまり、第2の側(26)に配置されるそれぞれの前記管(16)の内径(D3)と同一でもあることを特徴とする、請求項2に記載のシェルアンドチューブ式機器(10)。
【請求項4】
前記管状保護装置(32)のうちの少なくとも一部の自由端(40)、つまり、前記結合部分(34)に連結されない端(40)が、斜めに成形された部分(42)を有し、前記自由端(40)において測定される前記斜めに成形された部分(42)の内径(D4)が、前記管状保護装置(32)の前記内径(D1)より大きいことを特徴とする、請求項2または3に記載のシェルアンドチューブ式機器(10)。
【請求項5】
前記自由端(40)において測定される前記斜めに成形された部分(42)の内径(D4)は、前記管状保護装置(32)のそれぞれの外径(D6)と同一であることを特徴とする、請求項4に記載のシェルアンドチューブ式機器(10)。
【請求項6】
前記管状保護装置(32)のうちの少なくとも一部の自由端(40)が漏斗形とされた部分(44)を有し、前記自由端(40)において測定される前記漏斗形とされた部分(44)の内径(D5)が、前記斜めに成形された部分(42)の前記内径(D4)より大きいことを特徴とする、請求項4または5に記載のシェルアンドチューブ式機器(10)。
【請求項7】
それぞれの前記自由端(40)において測定される前記漏斗形とされた部分(44)の内径(D5)は、前記管状保護装置(32)のそれぞれの外径(D6)より大きいことを特徴とする、請求項6に記載のシェルアンドチューブ式機器(10)。
【請求項8】
各々の管状保護装置(32)は前記管板(18)と一体であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のシェルアンドチューブ式機器(10)。
【請求項9】
各々の管状保護装置(32)は機械加工によって前記管板(18)から作られることを特徴とする、請求項8に記載のシェルアンドチューブ式機器(10)。
【請求項10】
各々の管状保護装置(32)は前記管板(18)に溶接されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のシェルアンドチューブ式機器(10)。
【請求項11】
各々の管状保護装置(32)と前記管板(18)との間の溶接は溶接継ぎ目(36)を用いて得られることを特徴とする、請求項10に記載のシェルアンドチューブ式機器(10)。
【請求項12】
各々の管状保護装置(32)は、前記入口の管板(18)の前記第1の側(24)の表面を保護するライニング(38)に溶接されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のシェルアンドチューブ式機器(10)。
【請求項13】
各々の管状保護装置(32)と前記ライニング(38)との間の溶接は、溶接継ぎ目(36)の介在を用いて得られることを特徴とする、請求項12に記載のシェルアンドチューブ式機器(10)。
【請求項14】
前記入口の管板(18)には、前記第2の側(26)において、それぞれの管(16)が溶接される環状の突起部(30)が設けられることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のシェルアンドチューブ式機器(10)。
【請求項15】
前記入口の管板(18)は、前記入口の管板(18)のそれぞれの管板孔(20)の内側から作られる突き合わせ溶接結合部(28)を用いて前記管束(14)の各々の管(16)へと連結されることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載のシェルアンドチューブ式機器(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェルアンドチューブ式機器のための保護装置に関し、より詳細には、管と管板との結合部が、突き合わせ溶接の種類であり、管板孔から作られる(「内部孔溶接」またはI.B.W.とも呼ばれる)、熱交換器および熱反応器などのシェルアンドチューブ式機器の管側の入口の管板のための保護装置に関する。保護装置は、管板孔を、管側において流れる流体の乱流および浸食から保護することを目指している。
【背景技術】
【0002】
高速度での乱流の流体、または、多相の種類の乱流の流体は、シェルアンドチューブ式機器において有害な現象を生じさせる可能性がある。固体粒子または液泡が含まれる気体、および、固体粒子または気泡が含まれる液体は、典型的な多相流れである。流体の乱流が局所的に激しいとき、流体の熱伝達係数は高められ、そのため局所的な過熱または過冷却が起こる可能性があり、機器構造部品において、より大きい熱機械的応力と腐食とをもたらす。機器の構造材料が大きい速度または多相の流れの衝突またはせん断作用に耐えることができなくなると、浸食が生じる。
【0003】
シェルアンドチューブ式機器では、管側の入口の管板は、管板孔から作られる突き合わせ溶接された結合部によって管に連結されるとき、管板孔は局所的で大きな乱流および浸食を受ける可能性がある。管側において流れる流体は、管板孔に入り、内部孔溶接から管板に連結される管が管板孔を保護しないため、孔表面と直接的に接触している。結果として、管板孔へと入る入口の管側の流体が、例えば、シェル側の流体より高い温度であり、二相(気体−固体、液体−固体、気体−液体)によって特徴付けられる場合、流体は、過熱または浸食のため、管板孔を局所的に損傷させる可能性がある。このような損傷は、機器の設計寿命を大幅に短縮させてしまう可能性があるため、危険である。
【0004】
シェルアンドチューブ式熱交換器が浸食を受ける可能性のある主要な例は、エチレン製造のために蒸気分解炉に設置される、いわゆる「急冷」交換器または「搬送ライン」交換器(TLE:Transfer-Line Exchanger)によって代表される。炉を出て行くプロセスガスは、高温および高速であり、炭化水素粒子が含まれる。TLEの入口区域では、プロセスガスは、おおよそ100m/sから150m/sまでの範囲での速度を有し得る。したがって、このような用途では、動作の信頼性と長期の耐用期間とを確保するために、管側の入口の圧力部品を局所的な過熱および浸食から保護するための設計または装置を採用することは必要不可欠である。
【0005】
管側の入口の管板とシェルアンドチューブ式機器の管の管側の入口部分とを浸食から保護するためのいくつかの装置が、現況の技術において知られている。概念的には、これらの知られている技術的な解決策は、2つの主要な群、すなわち、
− 管へと全部または一部で挿入される保護装置と、
− 管に取り付けられるが管に挿入されない保護装置と
に分けることができる。
【0006】
第1の群の保護装置は、耐浸食保護装置または犠牲保護装置のいずれかであり得る。結果として、浸食は、保護装置によって保護される管の部分において起こらない。
【0007】
例えば、特許文献1は、管板における被覆と、管の内側に延びる、浸食を防止するために溶接される栓を通る流れとを有する熱交換器を記載している。特許文献2は、管板の一方の側における耐火物と、管の内側に延びる、管の端に置かれる漏斗形とされたフェルールとを有する熱交換器を記載している。特許文献3は、管の内側へと延びる、管板を保護するための耐浸食材料から作られた漏斗形とされた管延長入口を有するシェルアンドチューブ式熱交換器を記載している。
【0008】
上記の3つの特許文献は、管へと全部または一部で挿入される保護装置の主要な例であり、そのため、保護装置の内径は管の内径と同一ではない。これは、装置の内径と管の内径との間での不連続性を表しており、これは局所的な大きな乱流および浸食の発生源となり得る。
【0009】
第2の群の保護装置は、管の延長部として通常製造され、そのため浸食がこのような延長部において起こる。実際、装置の入口における流体は局所的な大きい乱流を有し、これは、管に到達する前に装置に沿って滑らかにされる。このような延長部は交換または修理できる。
【0010】
例えば、特許文献4は、シェルアンドチューブ式熱交換器の管の入口端が、それらに延長管を提供することで浸食からどのように保護されるかを記載しており、その延長管は、管に溶接され得る、または、管に対して拡張され得る。特許文献5は、管に取り付けられ、交換可能な浸食を防止するための管状の延長部を有するシェルアンドチューブ式熱交換器を記載している。特許文献6は、切断され得る犠牲区域と、溶接され得る新たな犠牲区域とを周期的な交換で可能にする犠牲延長管長さを有する管状熱交換器を記載している。特許文献7は、熱交換器の管と同じ直径を伴う管状延長部の形での交換可能な入口手段を伴う管状の熱交換器を記載している。延長部は、斜めにされた端を有し得る。特許文献8は、管の延長部である中空の円錐台を有する搬送ライン熱交換器(つまり、特定のサービスのためのシェルアンドチューブ式熱交換器)を記載している。
【0011】
上記の5つの特許文献は、管に連結される、または、管と一体である保護装置の主要な例である。これらの文献は、管が管板に溶接する内部孔によって連結されないシェルアンドチューブ式熱交換器に言及している。反対に、管は、管板の管側面まで、または、管板の管側面を越えてのいずれかまで管板孔の内側へと進む。したがって、管板孔は管自体によって保護され、保護装置は、管の第1の部分を除いて管板孔を保護するように請求されていない。
【0012】
また、同出願人の特許文献9は、管側の入口の管板と交換管とが突き合わせ溶接の種類の溶接によって一体に溶接されるシェルアンドチューブ式のTLE交換器を開示しており、これは、管板から管への移行における不連続性および段差を排除する。そのため、衝突または浸食を引き起こし得る気体経路に沿って障害物がない。気体側の面において、管板は耐浸食性の高い材料のライニング(溶接オーバーレイ)によって保護され、この材料は、蒸気分解炉から出る高温の気体の衝突およびせん断作用に耐えることができる。図2に示されているこのような技術的な解決策は、管板の気体側の面を保護する点において十分であるとこれまで考えられてきた。
【0013】
しかしながら、浸食現象が、管板孔の内部壁において、および、交換管の第1の部分において起こる可能性もある。管板孔の内部壁および交換管の第1の部分におけるこのような浸食は、高い金属動作温度と共に、気体の乱流によるものである。管板孔の入口は気体経路にとって激しい不連続性を呈し、そのため管板孔は乱流の発生源である。入口の下流では、気体の流れは無秩序であり、流体力学的な観点から良好に開発されてはいない。結果として、孔および管壁における気体および炭化水素粒子のせん断および衝突の作用が起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7252138号
【特許文献2】米国特許第3707186号
【特許文献3】米国特許第4585057号
【特許文献4】仏国特許第2508156号
【特許文献5】独国特許第1109724号
【特許文献6】米国特許第6779596号
【特許文献7】米国特許第4103738号
【特許文献8】米国特許第4785877号
【特許文献9】欧州特許第1331465号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そのため、本発明の1つの目的は、簡単で安価で特には機能的な手法で先行技術の前述の欠点を解決することができる、シェルアンドチューブ式機器のための保護装置を提供することである。
【0016】
詳細には、本発明の1つの目的は、管と管板とが管板孔から作られる突き合わせ溶接結合部によって連結され、保護装置が、管板の管側面に連結される突き合わせ部から成るシェルアンドチューブ式機器の入口の管板を、管側における流体の流れによる浸食および大きな乱流から保護するための装置を提供することである。各々の突き合わせ部は管板の管側面からのずれを有し、前記連結部において突き合わせ部の内径と管板孔の直径との間に不連続性がない。本発明による保護装置は、特に、入口の管側の流体が、大きい速度および温度にあるとき、または、改質処理および気化処理からの合成ガス、炭化水素の蒸気分解炉からの流出物、およびスラリ状の流体など、多相の流れを伴うとき、管板孔の表面における浸食および大きな局所的な熱伝達係数の危険性を、排除する、または、少なくとも軽減することを目指している。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、添付の請求項に記載されているようなシェルアンドチューブ式機器のための保護装置を提供することで、本発明により達成される。
【0018】
具体的には、この目的は、管束を包囲するシェルを備えるシェルアンドチューブ式機器によって達成される。管束は複数の管を備える。各々の管の少なくとも一端が、流体をシェルアンドチューブ式機器に入れるための管板孔がそれぞれ設けられる入口の管板に結合される。入口の管板には、流体を受け入れる第1の側と、前記第1の側と反対であり、管が結合される第2の側とが設けられる。入口の管板は、各々の管がそれぞれの管板孔の内側に延びないような方法で前記第2の側において管束の各々の管に連結される。入口の管板には、前記管板孔へと流入する流体による大きな局所的な乱流および浸食から前記管板孔を保護するための管状保護装置が、前記管板孔のうちの少なくとも一部においてそれぞれ設けられる。各々の管状保護装置は、それぞれの管板孔において入口の管板の前記第1の側から延びる突き合わせ部または一本の管の形態で作られ、管状保護装置とシェルアンドチューブ式機器の管との間に物理的な接触がない。
【0019】
本発明のさらなる特性は、本明細書の不可欠の部分である従属請求項によって明確に示されている。
【0020】
本発明によるシェルアンドチューブ式機器のための保護装置の特性および利点は、添付される概略的な図面を参照しつつ、以下の例示の非限定的な記載からより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】水平に配置されている管束を伴うシェルアンドチューブ式機器の概略図である。
図2】先行技術によるシェルアンドチューブ式機器のための保護装置の部分的な断面図である。
図3】本発明によるシェルアンドチューブ式機器のための保護装置の第1の実施形態の部分的な断面図である。
図4】本発明によるシェルアンドチューブ式機器のための保護装置の第2の実施形態の部分的な断面図である。
図5】本発明によるシェルアンドチューブ式機器のための保護装置の第3の実施形態の部分的な断面図である。
図6】本発明によるシェルアンドチューブ式機器のための保護装置の第4の実施形態および第5の実施形態の部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照すると、シェルアンドチューブ式機器10、より明確には、シェルアンドチューブ式熱交換器10が示されている。シェルアンドチューブ式機器10は、管束14を包囲するシェル12を備える種類のものである。シェルアンドチューブ式機器10は水平の配向で示されているが、鉛直に、または、水平面に対して任意の角度で配向されてもよい。
【0023】
管束14は複数の管16を備える。管16は、U字形または真っ直ぐなど、任意の形のものであり得る。各々の管16の少なくとも一端が、流体22をシェルアンドチューブ式機器10の管16に入れるための管板孔20がそれぞれ設けられる入口の管板18に結合される。
【0024】
ここで図3図6を参照すると、入口の管板18には、入口の流体22を受け入れる第1の側24または管側と、前記第1の側24と反対である第2の側26またはシェル側とが設けられている。したがって、流体22は、管側24から入口の管板18へと導入され、シェル側26に位置する管16へと送られる。
【0025】
そのため、シェル側26では、好ましくは、前記入口の管板18のそれぞれの管板孔20の内側から作られる突き合わせ溶接結合部28を用いて、入口の管板18が管束14の各々の管16へと連結される(この溶接技術は「内部孔溶接」またはI.B.W.とも呼ばれる)。そのため、突き合わせ溶接結合部28は入口の管板18のシェル側26に留まる。
【0026】
この突き合わせ溶接結合部28によれば、入口の管板18には、シェル側26において、それぞれの管16が溶接される環状の突起部または首部30が設けられる。別の言い方をすれば、各々の管16はそれぞれの管板孔20の内側で延びていない。結果として、各々の管板孔20はそれぞれの管16によって保護されておらず、入口の管板18の管側24において流れる流体は、管板孔20と直接的な接触にある。
【0027】
本発明によれば、入口の管板18には、その管板孔20うちの少なくとも一部において、つまり、管板孔20のうちの少なくともいくつかにおいて、大きな局所的な乱流および浸食から管板孔20を保護するための管状保護装置32がそれぞれ設けられる。具体的には、入口の管板18には、その管板孔20のうちの少なくとも一部の縁において、それぞれの管状保護装置32が設けられる。より明確には、各々の管状保護装置32は、それぞれの管板孔20において入口の管板18の第1の側24または管側から延びる突き合わせ部または一本の管の形態で作られる。別の言い方をすれば、各々の管状保護装置32は、管16が結合される前記入口の管板18の第2の側26またはシェル側に対して、入口の管板18の反対側から延びる。そのため、管状保護装置32とシェルアンドチューブ式機器10の管16との間に物理的な接触がない。管状保護装置32は管板孔20へと延びない。
【0028】
また、各々の管状保護装置32は、前記管状保護装置32と入口の管板18の管側24との間の結合部分34において測定され、それぞれの管板孔20の内径D2と実質的に同一である内径D1を有する。好ましくは、各々の管状保護装置32の内径D1は、入口の管板18の反対側、つまり、シェル側26に配置されるそれぞれの管16の内径D3と実質的に同一でもある。
【0029】
好ましいが限定ではない図3図5に示した実施形態によれば、各々の管状保護装置32は、以下の3つの代替の方法によって、それぞれの結合部分34において入口の管板18の管側24の表面に連結され得る。
− 各々の管状保護装置32が、図3に示しているように管板18と一体であり、つまり、例えば管状保護装置32が機械加工によって管板18から作られる。
− 各々の管状保護装置32が、例えば溶接継ぎ目36を用いて、図4に示しているように管板18に溶接される。
− 各々の管状保護装置32が、例えば溶接継ぎ目36の介在を用いて、図5に示しているように入口の管板18の管側24の表面を保護するライニング38に溶接される。
【0030】
したがって、すべての連結構成において、各々の管状保護装置32は以下の有利な特徴によって特徴付けられる。
− 管16と接触していない。
− 管状保護装置32と入口の管板18の管側24との間の結合部分34において、管状保護装置32の内径D1は管板孔20の内径D2と実質的に同一であり、そのため、管状保護装置32の孔と入口の管板18の孔20との間に不連続性がない。
【0031】
先に言及したように、各々の管状保護装置32は、前記管板孔20へと流れる管側の流体22による大きな局所的な乱流および浸食からそれぞれの管板孔20を保護するという第1の目的を有する。管側の流体22が流れる方向において測定される管状保護装置32の長さと、入口の管板18の厚さとに依存して、管状保護装置32は、管16の第1の管側部分も保護できる。
【0032】
知られているように、より大きな領域から孔へと入る高い速度での流体は、その速度を増し、その流線を変化させる。これは、孔の内側で局所的な乱流の増進をもたらす。結果として、
− 局所的な熱伝達係数が増加し、管側の流体22がシェル側の流体より高温である場合、管板孔20における局所的な過熱が起こり得る。
− 相が研磨性である多相流れの場合、研磨相が孔表面にせん断または衝突をもたらし、浸食をもたらす可能性がある。
【0033】
管板孔20の保護は、管側の流体22が管板孔20に到達する前にそれぞれの管状保護装置32が流体力学を適切に整えるため、行われる。別の言い方をすれば、局所的な大きな熱伝達係数または浸食が起こる場合、それらは管状保護装置32において起こり、管板孔20では起こらない。
【0034】
結果として、管板孔20は、例えば、管側の流体22がより高温の流体であるときに危険な局所的な過熱に曝されず、そのため入口の管板18における熱機械的応力および腐食現象が準備または増進されない。さらに、多相流れの場合における研磨相の乱流は、整えられ、管の軸の長手方向に沿って案内される。
【0035】
各々の管状保護装置32は、入口の管板18と同じ構造材料(これは、例えば図3の実施形態において起こる)、または、大きな耐浸食材料のいずれかから製造され得る。すべての場合において、管状保護装置32は、広範な損傷の場合に取り外しおよび交換できる犠牲要素と考えることができる。
【0036】
管状保護装置32の流体力学的な滑らかさの作用を向上させるために、管状保護装置32のうちの少なくとも一部の自由端40、つまり、入口の管板18の結合部分34に連結されていない端40は、いくつかの形を有し得る。したがって、管状保護装置32のうちの少なくともいくつかの自由端40は、いくつかの形を有し得る。例えば、図6に示しているように、各々の管状保護装置32の自由端40は斜めに成形された部分42を有することができ、前記自由端40において測定される、前記斜めに成形された部分42の内径D4は、前記管状保護装置32と入口の管板18の管側24との間で結合部分34において測定される管状保護装置32の内径D1より大きい。それぞれの自由端40において測定される斜めに成形された部分42の内径D4は、それぞれの管状保護装置32の外径D6と実質的に同一であってもよい。
【0037】
また、図6において再び示されているように、管状保護装置32のうちの少なくとも一部の自由端40、つまり、管状保護装置32のうちの少なくともいくつかの自由端40が、漏斗形とされた部分44を有してもよく、自由端40において測定される前記漏斗形とされた部分44の内径D5が、先に言及された斜めに成形された部分42の内径D4より大きい。それぞれの自由端40において測定される漏斗形とされた部分44の内径D5は、それぞれの管状保護装置32の外径D6より大きくてもよい。任意の場合において、管状保護装置32の最終的な滑らかにする作用は、管側の流体22が流れる方向において測定される前記管状保護装置32の長さ、または、それぞれの自由端40の入口の形を変えることで、設定できる。
【0038】
管状保護装置32のうちの少なくとも一部、つまり、管状保護装置32のうちの少なくともいくつかには、自由端40の周りに、円形または正方形の板などの板が設けられてもよい。
【0039】
管状保護装置32は、孔から作られた突き合わせ溶接の種類の管と管板との結合部を伴うシェルアンドチューブ式機器10が、
− 局所的な大きい熱伝達係数を生み出し得る大きな速度での入口の管側の流体と、
− 浸食を生み出し得る多相流れを伴う入口の管側の流体と
を有するときはいつでも適用可能である。
【0040】
本発明による管状保護装置32の使用から便益を得られる流体および関連するシェルアンドチューブ式機器10のいくつかの例には、以下のものがある。
− エチレン製造のための蒸気分解炉からの流出物のための搬送ライン交換器。
− 合成ガス(改質、気化)のためのプロセスガスのボイラおよび冷却器。
− スラリ流体のための反応器。
【0041】
したがって、シェルアンドチューブ式機器はシェルアンドチューブ式熱交換器とでき、特には、シェルアンドチューブ式搬送ライン熱交換器、シェルアンドチューブ式のプロセスガスのボイラもしくは冷却器、またはシェルアンドチューブ式反応器とでき、より具体的は、シェルアンドチューブ式搬送ライン熱交換器、シェルアンドチューブ式のプロセスガスのボイラもしくは冷却器とできる。
【0042】
したがって、本発明によるシェルアンドチューブ式機器のための保護装置が、先に概説した目的を達成することが分かる。
【0043】
このように着想された本発明のシェルアンドチューブ式機器のための保護装置は、すべてが同じ発明の概念内にある数々の改良および変更において影響を受けやすく、また、詳述のすべてが技術的に等価の要素によって代用できる。実際、使用される材料と、形および大きさとは、技術的な要件による任意の種類のものであり得る。
【0044】
そのため、本発明の保護の範囲は、添付の請求項によって定められる。
【符号の説明】
【0045】
10 シェルアンドチューブ式機器、シェルアンドチューブ式熱交換器
12 シェル
14 管束
16 管
18 入口の管板
20 管板孔
22 流体
24 第1の側、管側
26 第2の側、シェル側
28 突き合わせ溶接結合部
30 突起部、首部
32 管状保護装置
34 結合部分
36 溶接継ぎ目
38 ライニング
40 自由端
42 斜めに成形された部分
44 漏斗形とされた部分
D1、D2、D3、D4、D5 内径
D6 外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6