(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871412
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】高純度フルオロエチレンカーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 317/42 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
C07D317/42
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-553947(P2019-553947)
(86)(22)【出願日】2017年10月28日
(65)【公表番号】特表2020-515619(P2020-515619A)
(43)【公表日】2020年5月28日
(86)【国際出願番号】CN2017108170
(87)【国際公開番号】WO2018184379
(87)【国際公開日】20181011
【審査請求日】2019年11月18日
(31)【優先権主張番号】201710221032.8
(32)【優先日】2017年4月6日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519346099
【氏名又は名称】多▲フー▼多化工股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】侯 紅軍
(72)【発明者】
【氏名】薛 旭金
(72)【発明者】
【氏名】于 賀華
(72)【発明者】
【氏名】劉 海霞
(72)【発明者】
【氏名】司 騰飛
(72)【発明者】
【氏名】楊 明霞
(72)【発明者】
【氏名】薛 峰峰
(72)【発明者】
【氏名】羅 伝軍
(72)【発明者】
【氏名】李 云峰
(72)【発明者】
【氏名】劉 海慶
(72)【発明者】
【氏名】于 洋
(72)【発明者】
【氏名】張 照坡
【審査官】
安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第105968083(CN,A)
【文献】
特開2010−138157(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101597275(CN,A)
【文献】
特開2007−008825(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103113344(CN,A)
【文献】
特表2011−515447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロエチレンカーボネート原料と液体フッ化水素を反応させ、混合物を得た後、前記混合物にフッ素窒素混合ガスを吹き込み、−15〜35℃で反応させ、反応が終了した後に反応システム内の温度を18〜50℃に調整する工程1)と、
混合物に金属酸化物を添加して脱酸反応を行い、濾過して、濾過液を得る工程2)と、
濾過液に溶剤を加えて混合し、降温結晶して、フルオロエチレンカーボネート結晶を得たのち、水を除去して、高純度フルオロエチレンカーボネートを得る工程3)と、
を含むことを特徴とする高純度フルオロエチレンカーボネートの製造方法。
【請求項2】
クロロエチレンカーボネートとフッ化水素のモル比は1:(1.0〜1.15)であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程1)のクロロエチレンカーボネート原料と液体フッ化水素との反応における反応温度は−15〜20℃であり、反応時間は5〜30minであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
工程1)の反応が終わった後、及びフッ素窒素混合ガスを吹き込んで反応させた後、窒素でシステム内のガス生成物を置換することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
工程3)において、前記降温結晶は、−30〜−20℃まで温度を下げて結晶化して行うことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
フッ素窒素混合ガスの中で、フッ素ガスとクロロエチレンカーボネート原料のモル比は(1.0〜5):1であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記金属酸化物は、酸化カルシウム及び/又は酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記脱酸反応の温度は18〜50℃であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記溶剤は、トルエン及び/又はシクロヘキサンであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフルオロエチレンカーボネートの合成領域、特に高純度フルオロエチレンカーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人々の生活水準の向上と化石エネルギーの枯渇に伴い、各国政府は新エネルギーの発展戦略を練るようになっている。現在、新エネルギー自動車の発展を制約しているのは、主に航続可能距離、コスト及び安全性などである。航続可能距離とコストは、主に新エネルギー自動車を製造するための各種材料に頼り、安全性は主に電気供給装置であるリチウムイオン電池に依存している。リチウムイオン電池の安全性を決定するのは主に電解液である。現在、新エネルギー自動車を発展させるために、電解液の性能に対する要求がますます高くなっている。
【0003】
フルオロエチレンカーボネート(FEC)は、リチウムイオン電池電解液の添加剤として、電解液の分解を抑え、電池のインピーダンスを低下させ、耐低温性能を改善し、バッテリーの比容量と循環安定性を著しく向上させることができる。そのほか、電解液溶媒として、二次電池やコンデンサなどの化学デバイスの充放電サイクル特性と電流効率を改善することができる。また、医薬、農薬の中間体としても利用されている。2006年から、我が国の学者らはその製造技術と精製方法に対する入念な研究を行ってきた。それをまとめると3つの技術に分けることができる。一つはエチレンカーボネートを原料とする直接フッ素化である。もう一つは電気化学フッ素化法で、三つ目はクロロエチレンカーボネートを原料とするハロゲン交換法である。現在、最も広く使われているのはハロゲン交換法である。
【0004】
特許文献1では、フルオロエチレンカーボネートの製造方法を公開している。当該方法は、先ず、クロロエチレンカーボネート原料と液体フッ化水素をマイクロチャネルリアクターに注入し、−20〜20℃の条件下で反応させ、混合物を得る。その後、再び混合物を40〜50℃まで加熱してガスを排出させた後、減圧精蒸留して生成物を得る。この製造法により得られたフルオロエチレンカーボネートの純度は98%前後であり、減圧蒸留過程において設備の耐食性に対する要求が高く、環境負荷が大きいため、工業的には普及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第105968083号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高純度フルオロエチレンカーボネートの製造方法を提供し、既存の方法で得られた製品の純度が低く、精製工程における設備に対する要求が高い問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明が用いる技術手段として、
以下の工程を含む高純度フルオロエチレンカーボネートの製造方法を提供する。
工程1)クロロエチレンカーボネート原料と液体フッ化水素を反応させ、混合物を得て、
工程2)混合物に金属酸化物を添加して脱酸反応を行い、濾過して、濾過液を得て、
工程3)濾過液に溶剤を加えて混合し、温度を下げて結晶化し、フルオロエチレンカーボネート結晶を得たのち、水を除去して、高純度フルオロエチレンカーボネートを得る。
【0008】
本発明が提供した高純度フルオロエチレンカーボネートの製造方法は、クロロエチレンカーボネートと無水液体フッ化水素を原料として液体反応を行い、脱酸反応、冷却結晶、昇温脱水過程を経て、高純度のフルオロエチレンカーボネートを製造する。得られる製品の純度は99.5%以上である。当該方法では、使用する耐腐食性設備の構造が簡単で、コストが低いため、工業化して普及するのに適している。
【0009】
工程1)の反応は式(1)に示す通りである。
【化1】
【0010】
工程1)において、クロロエチレンカーボネートとフッ化水素のモル比は1:(1.0〜1.15)である。
【0011】
工程1)では、反応温度は−15〜20℃で、反応時間は5〜30minである。
【0012】
好ましくは、工程1)の反応が終えた後、窒素でシステム内のガス生成物を置換する。窒素を注入する時間は1〜10minで、反応システム内の温度は−15〜20℃である。
【0013】
好ましくは、工程1)で得られた混合物にフッ素窒素混合ガスを吹き込み−15〜35℃で反応させる。フッ素窒素混合ガスが反応終了した後、窒素で反応システム内のガス生成物を置換する。窒素を注入する時間は1〜10minで、反応システム内の温度は18〜50℃である。フッ素窒素混合ガスについては、フッ素ガスの体積率が1〜10%、フッ素ガスとクロロエチレンカーボネート原料のモル比が(1.0〜5):1、注入時間が1〜30minである。フッ素ガスとクロロエチレンカーボネートの反応は式(2)に示す通りである。
【化2】
【0014】
好ましくは、フッ素窒素混合ガスを注入して反応させた後、窒素で反応システム内のガス生成物を置換し、反応システム内の温度を18〜50℃に調整する。次いで、金属酸化物を加えて脱酸反応を行う。
【0015】
クロロエチレンカーボネートとフッ化水素を反応させた後の、システム内のガス生成物は、主に塩化水素ガスと少量のHFである。フッ素窒素混合ガスを吹き込んで二次反応させた後の、システム内のガス生成物は、主に塩素ガスとフッ素を含むガス(F
2及び/又はHF)である。フッ素、塩素の回収をさらに実現するために、置換したガス生成物を、金属塩溶液に注入して反応させると、金属フッ化物のスラリーを得ることができる。金属塩溶液とは、炭酸マグネシウム溶液、塩化マグネシウム溶液、炭酸リチウム溶液又は塩化リチウム溶液である。対応する金属フッ化物のスラリーは、フッ化マグネシウム又はフッ化リチウムのスラリーであり、濾過洗浄を経て工業用のフッ化マグネシウム又は工業用のフッ化リチウムを得ることができる。反応後の排気ガスを水で吸収し、石灰で中和して、濃縮した後、固体塩化カルシウムを得る。
【0016】
工程2)において、金属酸化物とは、酸化カルシウム及び/又は酸化アルミニウムである。金属酸化物の添加量は金属酸化物と液相全質量の1%〜5%である。脱酸反応の温度は18〜50℃である。
【0017】
工程2)の反応で得た残渣は、フッ化物と塩化物の混合物であり、従来のフッ化物の製造に利用できる。
【0018】
工程3)において、前記溶媒は、トルエン及び/又はシクロヘキサンである。混合液の温度は−10〜5℃である。製品検査で純度が指標に達していない場合、同様の方法で製品純度指標を達成するまで繰り返して結晶化を行う。結晶化とは、温度を−30〜−20℃まで下げて結晶を行うことである。
【0019】
前記脱水とは、フルオロエチレンカーボネート結晶を10〜50℃に加熱した後、脱水剤を加えて脱水する。脱水剤は4A分子篩であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の高純度フルオロエチレンカーボネートの製造方法は、2つのフッ素化剤を用いて2段階に分けてフッ素化する。第1段階のフッ素化反応は、大部分のクロロエチレンカーボネートをフッ素化する。第2段階のフッ素化反応は、クロロエチレンカーボネートの置換しにくい塩素を置換してフッ素化する。全体反応の転化率は98%以上に達することが可能で、かつ反応システム内は液体系であるため、その後の精製作業に便利である。(塩酸又は未反応のHFの)脱酸と、脱水反応で反応生成物の不純物含有量を低下させる。再結晶過程で、製品中の金属、非金属イオン又は化合物(フッ素化過程の副反応によって生成した生成物)が減少する。そのため、製品の純度を大幅に向上させることができる。この方法は、廃棄物中の元素特性を十分に利用して、元素の転化率を高め、高付加価値のフッ化物製品を生産して、廃液のゼロ排出を実現することができる。よって、顕著な環境保護の効果が得られる。
【0021】
本発明の高純度フルオロエチレンカーボネートの製造方法は、プロセス制御が簡単で、副反応が少なく、精製しやすく、反応生成物の純度が高く、コストが低く、工業化生産に適している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態1における高純度フルオロエチレンカーボネートの製造方法のプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に合わせて本発明の実施形態をさらに説明する。以下の実施形態では、チャネルリアクターは連続マイクロチャネルリアクター、マイクロチャネル結晶装置又は類似の反応装置であってもよく、関連装置はすべて従来の技術であり、各工程には特別な説明がない限り、すべて窒素雰囲気で実行する。
【0024】
[実施例1]
本実施形態の高純度フルオロエチレンカーボネートの製造方法は、
図1に示すように、以下の工程を含む。
【0025】
1)1kgのクロロエチレンカーボネート原料と無水液体フッ化水素をモル比1:1の割合で同時にマイクロチャネルリアクターに注入して、反応させる。反応温度は−15℃で、反応時間は7minである。
【0026】
2)工程1)の反応が完全に終了した後、反応液と反応ガスを槽型反応器に移す。乾燥した高純度窒素ガスを吹き込んで、槽型反応器内の塩化水素ガスを置換して、反応器内の温度を−15℃に制御する。窒素を注入する時間は3minである。
【0027】
3)工程2)で完全に置換した後、フッ素ガスの体積含有量5%のフッ素窒素混合ガスを注入し、未反応クロロエチレンカーボネートと反応させる。フッ素窒素混合ガスについては、フッ素ガスとクロロエチレンカーボネート原料のモル比が1:1.0、注入時間が5minである。反応温度を−15〜−10℃に制御する。
【0028】
4)工程3)の反応が完全に終了した後、乾燥した高純度窒素を吹き込んで槽型反応器内で生成された塩素ガスを置換する。窒素を注入する時間は5minで、温度を−15℃に制御する。
【0029】
5)工程4)で完全に置換した後、30℃まで昇温し、純度99.5%以上の酸化カルシウムを加えて脱酸反応を行う。酸化カルシウムの添加量は酸化カルシウムと液相の総質量の1%である。
【0030】
6)工程5)で脱酸反応が完全に終了した後、濾過する。残渣はフッ化物と塩化物の混合物である。濾過液を精製反応器に入れ、トルエンを加えて−10℃で混合し、溶解した後、−25℃まで温度を下げ、フルオロエチレンカーボネート結晶を析出させ、濾過する。濾過ケーキはフルオロエチレンカーボネート結晶である。濾過液を蒸留で回収して溶剤として再利用する。
【0031】
7)フルオロエチレンカーボネート結晶を20℃まで加熱し、フルオロエチレンカーボネート液体を得る。4A分子篩を加えて水を除去し、0.83kgの高純度フルオロエチレンカーボネートを得た。
【0032】
工程2)と工程4)で置換したガスを、炭酸リチウム溶液(アルカリ性化合物の炭酸リチウムと水で調合したもの)に注入して反応させ、フッ化リチウムスラリーを得る。濾過洗浄して工業用のフッ化リチウムを得る。反応後の排気ガスを水で吸収して塩酸溶液を得て、石灰を加えて中和し、濃縮して固形塩化カルシウムを作って外販する。
【0033】
本実施形態で得られたフルオロエチレンカーボネートの純度は99.7%で、収率は96%であった。
【0034】
[実施例2]
本実施形態の高純度フルオロエチレンカーボネートの製造方法は、以下の工程を含む。
【0035】
1)1kgのクロロエチレンカーボネート原料と無水液体フッ化水素をモル比1:1.1の割合で同時にマイクロチャネル結晶装置に注入して反応させる。反応温度は0℃で、反応時間は10minである。
【0036】
2)工程1)の反応が完全に終了した後、反応液と反応ガスを槽型反応器に移す。乾燥した高純度窒素ガスを注入して槽型反応器内の塩化水素ガスを置換して、反応器内の温度を0℃に制御する。窒素を注入する時間は10minである。
【0037】
3)工程2)で完全に置換した後、フッ素ガスの体積含有量5%のフッ素窒素混合ガスを吹き込み、未反応クロロエチレンカーボネートと反応させる。フッ素窒素混合ガスの中で、フッ素ガスとクロロエチレンカーボネート原料のモル比は2.0:1で、注入時間は10minである。反応温度を10℃に制御する。
【0038】
4)工程3)の反応が完全に終了した後、乾燥した高純度窒素を吹き込んで槽型反応器内で生成された塩素ガスを置換する。窒素を注入する時間は10minで、温度を0℃に制御する。
【0039】
5)工程4)で完全に置換した後、20℃まで昇温し、純度99.5%以上の酸化カルシウムを加えて脱酸反応を行う。酸化カルシウムの添加量は、酸化カルシウムと液相の総質量の2%である。
【0040】
6)工程5)で脱酸反応が完全に終了した後、ろ過する。残渣はフッ化物と塩化物の混合物である。濾過液を精製反応器に入れ、シクロヘキサンを加えて0℃で混合して、溶解した後、−20℃まで温度を下げ、フルオロエチレンカーボネート結晶を析出し、濾過する。濾過ケークはフルオロエチレンカーボネート結晶である。濾過液を溶剤として再利用する。
【0041】
7)フルオロエチレンカーボネート結晶を15℃まで加熱してフルオロエチレンカーボネート液体を得る。4A分子篩を加えて水を除去し、0.826kgの高純度フルオロエチレンカーボネートを得た。
【0042】
工程2)と工程4)で置換したガスを、炭酸リチウム溶液に注入して反応させてフッ化リチウムのスラリーを得る。濾過洗浄して工業用のフッ化リチウムを得る。反応後の排気ガスを水で吸収して塩酸溶液を得て、石灰を加えて中和し、濃縮して固体塩化カルシウムを作って外販する。
本実施形態で得られたフルオロエチレンカーボネートの純度は99.8%で、収率は95.5%であった。
【0043】
[実施例3]
本実施形態の高純度フルオロエチレンカーボネートの製造方法は、以下の工程を含む。
【0044】
1)1kgのクロロエチレンカーボネート原料と無水液体フッ化水素をモル比1:1.15の割合で同時にマイクロチャネル結晶装置に注入して反応させる。反応温度は16℃で、反応時間は25minである。
【0045】
2)工程1)の反応が完全に終了した後、反応液と反応ガスを槽型反応器に移す。乾燥した高純度窒素ガスを吹き込んで、槽型反応器内の塩化水素ガスを置換し、反応器内温度を18℃に制御する。窒素を注入する時間は10minである。
【0046】
3)工程2)で完全に置換した後、フッ素ガスの体積含有量10%のフッ素窒素混合ガスを吹き込み、未反応クロロエチレンカーボネートと反応させる。フッ素窒素混合ガスについては、フッ素ガスとクロロエチレンカーボネート原料のモル比が5.0:1、注入時間が30minである、反応温度を35℃に制御する。
【0047】
4)工程3)の反応が完全に終了した後、乾燥した高純度窒素を吹き込んで槽型反応器内で生成された塩素ガスを置換する。窒素を注入する時間は10minで、温度を45℃に制御する。
【0048】
5)工程4)で完全に置換した後、50℃まで昇温し、純度99.5%以上の酸化カルシウムを加えて脱酸反応を行う。酸化カルシウムの添加量は酸化カルシウムと液相の総質量の5%である。
【0049】
6)工程5)で脱酸反応が完全に終了した後、ろ過する。残渣はフッ化物と塩化物の混合物である。濾過液を精製反応器に入れ、シクロヘキサンを入れて5℃で混合する。溶解した後−25℃まで温度を下げ、フルオロエチレンカーボネート結晶を析出して、濾過する。濾過ケーキはフルオロエチレンカーボネート結晶である。濾過液を溶剤として再利用する。
【0050】
7)フルオロエチレンカーボネート結晶を10℃まで加熱し、フルオロエチレンカーボネート液体を得る。4A分子篩を加えて水を除去し、0.822kgの高純度フルオロエチレンカーボネートを得た。
【0051】
工程2)と工程4)で置換したガスを炭酸リチウム溶液に注入して反応させてフッ化リチウムのスラリーを得る。濾過洗浄して工業用のフッ化リチウムを得る。反応後の排気ガスを水で吸収して塩酸溶液を得て、石灰を加えて中和し、濃縮して固体塩化カルシウムを作って外販する。
【0052】
本実施形態で得られたフルオロエチレンカーボネートの純度は99.6%で、収率は95%であった。
【0053】
[実施例4]
本実施形態の高純度フルオロエチレンカーボネートの製造方法は、以下の工程を含む。
【0054】
1)1kgのクロロエチレンカーボネート原料と無水液体フッ化水素をモル比1:1.13の割合で同時にマイクロチャネル結晶装置に注入して反応させる。反応温度は−10℃で、反応時間は15minである。
【0055】
2)工程1)の反応が完全に終了した後、反応液と反応ガスを槽型反応器に移す。乾燥した高純度窒素ガスを吹き込んで槽型反応器内の塩化水素ガスを置換し、反応器内温度を−10℃に制御する。窒素を注入する時間は5minである。
【0056】
3)工程2)で完全に置換した後、フッ素の体積含有量10%のフッ素窒素混合ガスを吹き込み、未反応クロロエチレンカーボネートと反応させる。フッ素窒素混合ガスについては、フッ素ガスとクロロエチレンカーボネート原料のモル比が3.0:1、注入時間が15minである。反応温度を20℃に制御する。
【0057】
4)工程3)の反応が完全に終了した後、乾燥した高純度窒素を吹き込んで槽型反応器内で生成された塩素ガスを置換する。窒素を注入する時間は5minで、温度を10℃に制御する。
【0058】
5)工程4)で完全に置換した後、40℃まで昇温し、純度99.5%以上の酸化カルシウムを加えて脱酸反応を行う。酸化カルシウムの添加量は酸化カルシウムと液相の総質量の1%である。
【0059】
6)工程5)で脱酸反応が完全に終了した後、ろ過する。残渣はフッ化物と塩化物の混合物である。濾過液を精製反応器に入れ、シクロヘキサンを加えて−5℃で混合し、溶解した後−30℃まで温度を下げ、フルオロエチレンカーボネート結晶を析出し、濾過する。濾過ケークとしてフルオロエチレンカーボネート結晶を得る。濾過液を溶剤として再利用する。
【0060】
7)フルオロエチレンカーボネート結晶を15℃まで昇温してフルオロエチレンカーボネート液体を得る。4A分子篩を加えて水を除去し、0.84kgの高純度フルオロエチレンカーボネートを得た。
【0061】
工程2)と工程4)で置換したガスを炭酸リチウム溶液に注入して反応させてフッ化リチウムのスラリーを得て、濾過洗浄して工業用のフッ化リチウムを得る。反応後の排気ガスを水で吸収して塩酸溶液を得て、石灰を加えて中和し、濃縮して固体塩化カルシウムを作って外販する。
【0062】
本実施形態で得られたフルオロエチレンカーボネートの純度は99.9%で、収率は97.1%であった。
【0063】
上記実施形態の分析結果から、本発明のフルオロエチレンカーボネートの製造方法は、反応効率が高く、反応時間が短く、得られたフルオロエチレンカーボネート製品の純度が99.5%以上と高く、製品の収率が95%以上と高いことが分かった。
【0064】
(付記)
(付記1)
クロロエチレンカーボネート原料と液体フッ化水素を反応させ、混合物を得る工程1)と、
混合物に金属酸化物を添加して脱酸反応を行い、濾過して、濾過液を得る工程2)と、
濾過液に溶剤を加えて混合し、降温結晶して、フルオロエチレンカーボネート結晶を得たのち、水を除去して、高純度フルオロエチレンカーボネートを得る工程3)と、
を含むことを特徴とする高純度フルオロエチレンカーボネートの製造方法。
【0065】
(付記2)
クロロエチレンカーボネートとフッ化水素のモル比は1:(1.0〜1.15)であることを特徴とする付記1に記載の製造方法。
【0066】
(付記3)
工程1)の反応温度は−15〜20℃であり、反応時間は5〜30minであることを特徴とする付記1に記載の製造方法。
【0067】
(付記4)
工程1)で得られた混合物にフッ素窒素混合ガスを吹き込み、−15〜35℃で反応させ、反応が終了した後に反応システム内の温度を18〜50℃に調整し、金属酸化物を加えて脱酸反応を行うことを特徴とする付記1に記載の製造方法。
【0068】
(付記5)
工程1)の反応が終わった後、及びフッ素窒素混合ガスを吹き込んで反応させた後、窒素でシステム内のガス生成物を置換することを特徴とする付記4に記載の製造方法。
【0069】
(付記6)
工程3)において、前記降温結晶は、−30〜−20℃まで温度を下げて結晶化して行うことを特徴とする付記1又は4に記載の製造方法。
【0070】
(付記7)
フッ素窒素混合ガスの中で、フッ素ガスとクロロエチレンカーボネート原料のモル比は(1.0〜5):1であることを特徴とする付記4に記載の製造方法。
【0071】
(付記8)
前記金属酸化物は、酸化カルシウム及び/又は酸化アルミニウムであることを特徴とする付記1又は4に記載の製造方法。
【0072】
(付記9)
前記脱酸反応の温度は18〜50℃であることを特徴とする付記8に記載の製造方法。
【0073】
(付記10)
前記溶剤は、トルエン及び/又はシクロヘキサンであることを特徴とする付記1又は4に記載の製造方法。