特許第6871428号(P6871428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6871428近距離無線通信と静電容量の検出とを利用したコンピュータ制御の注射器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871428
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】近距離無線通信と静電容量の検出とを利用したコンピュータ制御の注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   A61M5/168
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-564961(P2019-564961)
(86)(22)【出願日】2018年5月25日
(65)【公表番号】特表2020-521547(P2020-521547A)
(43)【公表日】2020年7月27日
(86)【国際出願番号】US2018034690
(87)【国際公開番号】WO2018218167
(87)【国際公開日】20181129
【審査請求日】2019年11月27日
(31)【優先権主張番号】62/511,114
(32)【優先日】2017年5月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517229774
【氏名又は名称】ウエスト ファーマスーティカル サービシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】フォート・ステイシー
(72)【発明者】
【氏名】サントス・ジョージ
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−511209(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0058349(US,A1)
【文献】 国際公開第2017/050781(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端と先端との間を長手方向に伸びているシャフトを有するプランジャと、
基端、先端、およびそれらの間を長手方向に伸びて、内部空間を仕切っている周壁を有するシリンダと、
前記シリンダのうち基端の近くに埋め込まれ、または取り付けられた第1プローブおよび第2プローブと、
前記シリンダに配置されており、前記第1プローブおよび第2プローブと電気通信を行うマイクロコントローラと
を備えた注射器であって、
前記プランジャの先端が前記シリンダの基端に挿入されて、前記シリンダの内部空間の中を前記シリンダに対して長手方向に移動可能であり、
前記シャフトが、
第1直径を有する第1部分と、
前記第1直径とは異なる第2直径を有し、前記第1部分と前記プランジャの基端との間に配置されている第2部分と
を含み、
前記第1プローブおよび第2プローブが、径方向において前記シリンダの内部空間を間に挟んで互いに対向しており、
前記マイクロコントローラが、
(i)前記第1プローブおよび第2プローブの間の静電容量を測定し(測定された静電容量は、前記プランジャのシャフトの第1部分が前記第1プローブおよび第2プローブの間にある際には第1静電容量値を示し、前記プランジャのシャフトの第2部分が前記第1プローブおよび第2プローブの間にある際には、前記第1静電容量値とは異なる第2静電容量値を示す。)、
(ii)前記第2静電容量値が測定された際、注射が終わったと判断する
ように構成されている、注射器。
【請求項2】
前記シリンダに配置され、前記マイクロコントローラと通信可能に接続された近距離無線通信(NFC)アンテナ
を更に備え、
前記マイクロコントローラが更に、注射が終了したという判断に関するデータを、前記NFCアンテナで外部装置へ送信するように構成されている、
請求項1に記載の注射器。
【請求項3】
前記シリンダに配置され、前記マイクロコントローラによる静電容量の測定に関するデータを保存するように構成されたメモリ
を更に備えている、請求項1に記載の注射器。
【請求項4】
前記第2直径は前記第1直径よりも大きい、請求項1に記載の注射器。
【請求項5】
前記プランジャと前記シリンダとのそれぞれの少なくとも一部が、手動式自己注射器または自動注射器のいずれかの中に収められている、請求項1に記載の注射器。
【請求項6】
前記第1プローブ、前記第2プローブ、および前記マイクロコントローラが、前記シリンダに配置された詰め物の中に含まれている、請求項1に記載の注射器。
【請求項7】
前記詰め物が前記シリンダの中に成形されている、請求項6に記載の注射器。
【請求項8】
前記第1部分が第1素材から成り
前記第2部分が、前記第1素材とは異なる第2素材から成る
請求項1に記載の注射器。
【請求項9】
前記プランジャが、前記第1素材とも前記第2素材とも異なる第3素材から成る第3部分を更に有し、前記第3部分が前記第1部分と前記第2部分との間に配置されており、前記測定された静電容量は、前記第3部分が前記第1プローブおよび第2プローブの間にある際に、前記第1静電容量値とも前記第2静電容量値とも異なる第3静電容量値を示し、
前記マイクロコントローラが、前記測定された静電容量に基づいて前記プランジャの位置を求めるように構成されている
請求項8に記載の注射器。
【請求項10】
前記シリンダに配置され、前記マイクロコントローラと通信可能に接続された近距離無線通信(NFC)アンテナ
を更に備え、
前記マイクロコントローラが更に、注射が終了したという判断に関するデータを、前記NFCアンテナで外部装置へ送信するように構成されている、
請求項8に記載の注射器。
【請求項11】
前記シリンダに配置され、前記マイクロコントローラによる静電容量の測定に関するデータを保存するように構成されたメモリ
を更に備えている、請求項8に記載の注射器。
【請求項12】
前記プランジャと前記シリンダとのそれぞれの少なくとも一部が、手動式自己注射器または自動注射器のいずれかの中に収められている、請求項8に記載の注射器。
【請求項13】
前記第1プローブ、前記第2プローブ、および前記マイクロコントローラが、前記シリンダに配置された詰め物の中に含まれている、請求項8に記載の注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2017年5月25日を出願日とする米国特許仮出願第62/511,114号に対する優先権主張を伴うものであり、その内容全体がここには参照によって組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
薬を正しく服用する必要が患者にあるとすることは、健康管理システムのコストを引き上げる負の要因として認識されている。服用の遵守をデジタル的に管理することは、遵守率を高めるのに有効な方法であることが示されている。特に慢性疾患を抱えた患者が医療費と健康には不利な負担とを減らすのには有効である。この分野における従来の努力は自己申告やバーコードのスキャンに限られていたが、これらの方法は時間がかかり、一般的な器具を正しく使用したかを確認することがなく、仮にそうだったとしても、器具を使用したという患者の報告を信じるしかない。
【0003】
この問題の解決に、電池とブルートゥース(登録商標)技術とを利用する次世代の器具が使われ始めている。しかし、充填済み注射器のように器具自体は低価格であっても、時に通信機器は器具自体よりも高額である。注射器または容器に内蔵可能な手頃な価格の通信手段があれば、単純な注射器から自動注射器およびパッチ注射システムまで、自己注射に使われるほとんどすべての器具との接続を可能にするであろう。そのような機器というよりはそのような技術を注射器に搭載することができるからであり、注射器の状態変化を器具の機構から離れた場所から検出できるからである。
【0004】
ある形式の近距離無線通信(NFC)技術が自動注射器またはペン形注射器のプラスチック部分に組み込まれた製品もある。しかし、これらは受動的な解決手段であり、単にユーザーを取扱説明(IFU)または他のウェブインタフェースにすげ替えただけである。これらは器具の状態(使用と非使用、または注射器内またはカートリッジ内のピストンの移動量)を能動的には発信しない。電池駆動のブルートゥース技術をスマートフォン等の別の器具との能動的な通信開始に利用する器具も使われている。しかし、これらの器具には電池またはその他の自己電源がなければならず、これを行う技術は費用が高い。他のNFC技術は性質が受動的であるので、器具の状態をリアルタイムでは通信できなかった。ブルートゥース低エネルギー(BLE)技術は比較的高額であり、内蔵電池またはその他の基板に組み込まれた電源が必要である。
【発明の概要】
【0005】
ある実施形態による注射器はプランジャを備えている。このプランジャは、基端と先端との間を長手方向に伸びているシャフトを有する。このシャフトは、第1直径を有する第1部分と、第1直径とは異なる第2直径を有する第2部分とを含む。第2部分は第1部分とプランジャの基端との間に配置されている。注射器はまたシリンダも備えている。このシリンダは、基端、先端、およびそれらの間を長手方向に伸びている周壁を有する。この周壁は内部空間を仕切っている。プランジャの先端はシリンダの基端に挿入されており、シリンダの内部空間の中をシリンダに対して長手方向に移動可能である。第1プローブおよび第2プローブがシリンダのうち基端の近くに配置されている。第1プローブおよび第2プローブは径方向においてシリンダの内部空間を間に挟んで互いに対向している。マイクロコントローラがシリンダに配置されており、第1プローブおよび第2プローブと電気通信を行う。マイクロコントローラは、第1プローブおよび第2プローブの間の静電容量を測定するように構成されている。測定された静電容量は、プランジャのシャフトの第1部分が第1プローブおよび第2プローブの間にある際には第1静電容量値を示し、プランジャのシャフトの第2部分が第1プローブおよび第2プローブの間にある際には、第1静電容量値とは異なる第2静電容量値を示す。マイクロコントローラはまた、第2静電容量値が測定された際、注射が終わったと判断するように構成されている。
【0006】
実施形態による注射器はNFCアンテナを更に備えていてもよい。NFCアンテナはシリンダに配置され、マイクロコントローラと通信可能に接続されている。マイクロコントローラは更に、注射が終了したという判断に関するデータを、NFCアンテナで外部装置へ送信するように構成されている。
【0007】
実施形態による注射器はメモリを備えていてもよい。メモリはシリンダに配置されており、マイクロコントローラによる静電容量の測定に関するデータを保存するように構成されている。
【0008】
実施形態による注射器では、第2直径が第1直径よりも大きくてもよい。
【0009】
実施形態による注射器では、プランジャとシリンダとのそれぞれの少なくとも一部が、手動式自己注射器または自動注射器のいずれかの中に収められていてもよい。
【0010】
実施形態による注射器では、第1プローブ、第2プローブ、およびマイクロコントローラが、シリンダに配置された詰め物の中に含まれていてもよい。
【0011】
実施形態による注射器では、その詰め物がシリンダの中に成形されていてもよい。
【0012】
ある実施形態による注射器はプランジャを備えている。このプランジャは、基端と先端との間を長手方向に伸びているシャフトを有する。このシャフトは、第1素材から成る第1部分と、第1素材とは異なる第2素材から成る第2部分とを含む。第2部分は第1部分とプランジャの基端との間に配置されている。注射器は更にシリンダを備えている。このシリンダは、基端、先端、およびそれらの間を長手方向に伸びている周壁を有する。この周壁は内部空間を仕切っている。プランジャの先端はシリンダの基端に挿入されており、シリンダの内部空間の中をシリンダに対して長手方向に移動可能である。注射器は更に、シリンダのうち基端の近くに配置された第1プローブおよび第2プローブを備えている。第1プローブおよび第2プローブは径方向においてシリンダの内部空間を間に挟んで互いに対向している。さらに、マイクロコントローラがシリンダに配置されており、第1プローブおよび第2プローブと電気通信を行う。マイクロコントローラは、第1プローブおよび第2プローブの間の静電容量を測定するように構成されている。測定された静電容量はプランジャのシャフトの第1部分が第1プローブおよび第2プローブの間にある際には第1静電容量値を示し、プランジャのシャフトの第2部分が第1プローブおよび第2プローブの間にある際には、第1静電容量値とは異なる第2静電容量値を示す。マイクロコントローラはまた、第2静電容量値が測定された際、注射が終わったと判断するように構成されている。
【0013】
実施形態による注射器では、プランジャが更に、第1素材とも第2素材とも異なる第3素材から成る第3部分を有し、第3部分が第1部分と第2部分との間に配置されていてもよい。測定された静電容量は、第3部分が第1プローブおよび第2プローブの間にある際に、第1静電容量値とも第2静電容量値とも異なる第3静電容量値を示す。マイクロコントローラは、測定された静電容量に基づいてプランジャの位置を求めるように構成されている。
【0014】
実施形態による注射器はNFCアンテナを更に備えていてもよい。NFCアンテナはシリンダに配置され、マイクロコントローラと通信可能に接続されている。マイクロコントローラは更に、注射が終了したという判断に関するデータを、NFCアンテナで外部装置へ送信するように構成されている。
【0015】
実施形態による注射器はメモリを更に備えていてもよい。メモリはシリンダに配置されており、マイクロコントローラによる静電容量の測定に関するデータを保存するように構成されている。
【0016】
実施形態による注射器では、プランジャとシリンダとのそれぞれの少なくとも一部が、手動式自己注射器または自動注射器のいずれかの中に収められていてもよい。
【0017】
実施形態による注射器では、第1プローブ、第2プローブ、およびマイクロコントローラが、シリンダに配置された詰め物の中に含まれていてもよい。
【0018】
実施形態による方法では、シリンダの中に移動可能に配置されたプランジャを有する注射器が使用される。シリンダに配置されたマイクロコントローラは、シリンダに配置された第1プローブおよび第2プローブと電気的に接続されている。この方法は、プランジャの第1部分が第1プローブおよび第2プローブの間にある際に、マイクロコントローラが第1プローブおよび第2プローブの間の第1静電容量値を測定するステップを含む。この方法はまた、プランジャの第1部分とは異なる第2部分が第1プローブおよび第2プローブの間にある際に、マイクロコントローラが第1プローブおよび第2プローブの間の第2静電容量値を測定するステップを含む。第2静電容量値は第1静電容量値とは異なる。この方法は、第2静電容量値が測定された際、注射が終わったとマイクロコントローラが判断するステップを更に含む。
【0019】
実施形態による方法では、プランジャの第1部分が第1直径であり、プランジャの第2部分が、第1直径とは異なる第2直径であってもよい。
【0020】
実施形態による方法では、プランジャの第1部分が第1素材から成り、プランジャの第2部分が、第1素材とは異なる第2素材から成っていてもよい。
【0021】
実施形態による方法は更に、マイクロコントローラが、注射が終わったという判断に関するデータを、NFCアンテナでコンピュータ制御装置またはクラウド上のサーバへ送信するステップを備えていてもよい。
【0022】
実施形態による方法は更に、プランジャの第1部分および第2部分の間にある第3部分が第1プローブおよび第2プローブの間にある際に、マイクロコントローラが第1プローブおよび第2プローブの間の第3静電容量値を測定するステップを備えていてもよい。第3静電容量値は第1静電容量値とも第2静電容量値とも異なる。この方法は更に、マイクロコントローラが、第1静電容量値、第2静電容量値、および第3静電容量値のいずれかに基づいて、シリンダに対するプランジャの位置を求めるステップを更に備えていてもよい。
【0023】
実施形態による方法は更に、マイクロコントローラが、プランジャの位置に関するデータを、シリンダに配置されたメモリに保存するステップを備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
添付された図面に関連付けて、開示される技術の様々な側面が説明される。例示を目的として図面には、現時点で望ましい実施形態が示されている。しかし、本発明は、図示された配置と手段との詳細には限定されないことが理解されるべきである。
【0025】
図1】(a)中に詰められている薬剤を投与する前の、本発明の第1実施形態による注射器システムの正面図である。(b)図1の(a)の注射器システムの一部の拡大断面図である。
図2図1の(a)の注射器システムで使用される詰め物の斜視図である。
図3】(a)薬剤を投与した後の、図1の(a)の注射器システムの正面図である。(b)図3の(a)の注射器システムの一部の拡大断面図である。
図4】(a)中に詰められている薬剤を投与する前の、本発明の第2実施形態による注射器システムの正面図である。(b)図4の(a)の注射器システムの一部の拡大断面図である。
図5図4の(a)の注射器システムで使用される詰め物の斜視図である。
図6】(a)薬剤を投与した後の、図4の(a)の注射器システムの正面図である。(b)図6の(a)の注射器システムの一部の拡大断面図である。
図7】(a)中に詰められている薬剤を投与する前の、本発明の第3実施形態による、手動式自己注射器内に埋め込まれた注射器システムの断面図である。(b)図7の(a)の注射器システムと自己注射器との一部の拡大断面図である。
図8図7の(a)の注射器システムで使用される詰め物の斜視図である。
図9】(a)薬剤を投与した状態における、図7の(a)の注射器システムと自己注射器との断面図である。(b)図9の(a)の注射器システムと自己注射器との一部の拡大断面図である。
図10】(a)中の薬剤を投与する前の、本発明の第4実施形態による、自動注射器内に埋め込まれた注射器システムの断面図である。(b)図10の(a)の注射器システムと自動注射器との一部の拡大断面図である。
図11図10の(a)の注射器システムで使用される詰め物の斜視図である。
図12】本発明の実施形態による注射器システムの模式的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の記述では、単に便宜上、ある種の用語が使われるが、限定的なものではない。「右」、「左」、「下」、「上」という語は、参照される図面において方向を示す。「内側へ」と「外側へ」という語はそれぞれ、装置およびその特定の部品群の幾何学的中心へ向かう方向と、その中心から離れる方向とを意味する。これらの列挙された語、それらの派生語、および類義語が用語には含まれる。その他に、「ある」、「一つの」という語は、請求の範囲と、それに対応する明細書の部分とに使われている場合、「少なくとも一つの」を意味する。
【0027】
本発明の実施形態は、好ましくは、一対のアンテナを含む詰め物と、それらのアンテナ間の静電容量を測定可能なマイクロコントローラとを使う。マイクロコントローラは近距離無線通信(NFC)技術と組み合わされており、注射器、自動注射器、ペン形注射器、もしくはその他の機械的注射器具、または容器(たとえば、自動注射器またはパッチ注射器等の自己注射器で使われるカートリッジ)の状態変化を検出して通知する。マイクロコントローラは、注射器内または容器内での部品の動きに伴うアンテナ間の静電容量の変化を測定してもよい。たとえば、以下で詳しく説明するように、アンテナのプローブ間に位置するプランジャ内の誘電物質(の厚さ、組成等)の変化は結果的に、アンテナ間の静電容量の変化として測定可能である。したがって、そのような静電容量の変化は、プランジャの位置等、器具の状態の変化に相関しうる。
【0028】
この状態変化に関する情報は、スマートフォンまたはその他のNFC読み取り装置等、外部装置で読み取って記録することが容易に可能である。したがって、薬剤の使用可能状態(すなわち、保存可能期間、処方の調整等)および注射の頻度を、ネットワークに接続されていない状態でも、クラウド上のサーバを通してでも追跡することができる。また、注射の終了または中断を記録することもでき、注射システムの状態(注射が終了したか否か)に関してユーザーにアドバイスすることもできる。好ましくは、1以上のマイクロコントローラが、オーバーモールド可能な詰め物の中に埋め込まれている。これにより、この技術は注射器または容器の本体内に閉じ込められる。その他に、詰め物は注射器または容器の外面に接着されてもよい。これにより、基板上に電源を実装する必要がないので、相互接続はとても安価に実現される。他の実施形態では詰め物が省略されてもよく、その中の要素(たとえば、アンテナ、マイクロコントローラ)は、シリンダ等、注射器の部分に直に埋め込まれてもよい
【0029】
図1の(a)、(b)は、第1実施形態による注射器10を示す。この注射器10は、好ましくは、プランジャ13、シリンダ16、および、薬剤を患者の身体(図示せず。)に送り込むための針12を含む。図1の(a)には針12が示されているが、点滴(IV)バッグまたはその他の中間コネクタを接続するためのルアーコネクタ等、薬剤を送り込む他のタイプの要素が使用されてもよい。プランジャ13はシャフト19とピストン17とを含む。これらは、シリンダ16から薬剤(図示せず。)を押し出すのに使われる。シャフト19は基端と先端との間を長手方向に伸びており、その先端にピストン17は位置している。シリンダ16は、基端、先端、およびそれらの間を長手方向に伸びている周壁とを含む。周壁は、薬剤(図示せず。)を含む内部空間を仕切っている。内部空間の中ではシャフト19とピストン17とが薬剤を押し出すように動く。注射器10を組み立てるには、プランジャ13の先端(ピストン17を含む。)をシリンダ16の基端に挿入して内部空間に入れればよい。
【0030】
第1実施形態では、シャフト19が第1直径の第1部分19Aと、第1直径とは異なる第2直径の第2部分11とを含む。第2部分11は、好ましくは、第1部分とプランジャ13の基端との間に位置する。図1の(a)に示されている実施形態では、第2部分11が第1部分よりも直径が大きい。
【0031】
注射器10は、好ましくは、詰め物18を備えている。この詰め物18は、シリンダ16の基端の開口部に取り付け可能であり、または挿入可能である。詰め物18は、たとえば、圧入、ねじ、溶接、接着、その他の方法を使って空洞1204(図12参照。)の中に機械的に挿入可能である。空洞1204はシリンダ16の中に成形され、またはインサート成形される。
【0032】
図2は、詰め物18の実施形態を示す。この詰め物18は、NFCアンテナ14と、第1プローブ15Aおよび第2プローブ15Bを備えたアンテナ対とを含む。たとえば、第1プローブ15Aが正プローブであり、第2プローブ15Bが負プローブである。第1プローブ15Aおよび第2プローブ15Bは、径方向においてシリンダ16の内部空間を間に挟んで、互いに対向している。2本のプローブ15A、15Bはそれらの間に静電容量を発生させ得る。この静電容量は、第1プローブ15Aおよび第2プローブ15Bと電気通信を行うマイクロコントローラ1201(図12参照。)によって測定される。マイクロコントローラ1201は、詰め物18に埋め込まれるほど、十分に小型である。測定された静電容量に関するデータは、NFCアンテナ14でコンピュータ制御装置1202(図12参照。)へ送信される。第1プローブ15A、第2プローブ15B、およびNFCアンテナ14は詰め物18の一部として示されているが、これらの要素はまた、シリンダ16に直に埋め込まれていても、それに取り付けられていてもよい。図4の(b)、図7の(a)、および図10の(a)に示されている詰め物18も、図2に示されている詰め物と同じか、ほぼ同様である。
【0033】
静電容量は、2本のプローブ15A、15Bの間の媒質、たとえばプランジャ13のシャフト19(の有無)に影響を受ける。図1の(a)、(b)に例示されている実施形態では、薬が注射される前、シャフト19の第1部分19Aが第1プローブ15Aおよび第2プローブ15Bと交差しているので、2本のプローブ15A、15Bの間に第1静電容量値が測定される。注射が終了すると、図3の(a)、(b)が示すように、シャフト19の第2部分11が第1プローブ15Aと第2プローブ15Bとの隙間に入る。この実施形態では第2部分11が第1部分19Aよりも直径が大きいので、プローブ15A、15Bの間に第2静電容量値がマイクロコントローラ1201によって測定される。第1プローブと第2プローブとの間の媒質の厚さが変化することにより、第1静電容量値に対して第2静電容量値は増減する。好ましくは、第2静電容量値の検出に基づいて、マイクロコントローラ1201は、注射器10による注射が終わったと判断し、この状態をコンピュータ制御装置1202へ報告する。次いで、コンピュータ制御装置1202がその情報をユーザーに報告してもよい。
【0034】
この実施形態ではプランジャ13のシャフト19が、移動の最後に厚くなるような形をしている。しかし、厚さのこの変化は逆であってもよい。たとえば、第2部分11の直径が第1部分19Aの直径よりも小さくてもよい。しかし、シャフト19は直径の違う部分を少なくとも2つ持つべきである。それらのうち一方は、注射の終了時にしか第1プローブおよび第2プローブと交差しないシャフト19の部分に位置しているので、マイクロコントローラ1201に注射が終わったと判断させることができる。別の実施形態では、プランジャ13のシャフト19が複数の直径を持っていてもよい。それらは、シリンダ16に対するプランジャ13の位置を、注射の開始位置と終了位置との間で検出するのに十分な分解能である。このような実施形態は、たとえば薬を複数回に分けて注射しなければならない場合に特に有用である。このような実施形態はまた、プランジャ13が輸送中などに動いたか否かを調べるのにも有用である。
【0035】
図4の(a)−図6の(b)は、ここに開示される技術の第2実施形態を示す。この実施形態では、プランジャ13が一定の直径を維持する一方、プランジャ13の材料組成がシャフト19の軸方向において一様ではない。たとえば、シャフト19は第2部分21を含む。第2部分21には、第1部分19A(図1参照。)の第1素材とは異なる第2素材が埋め込まれている。すなわち、第2素材は第1素材とは誘電率が異なる。プランジャ13が注射に伴う移動の終点に到着すると、詰め物18の位置での材質の変化は、測定される静電容量に変化を生じさせる。この実施形態ではまた、プランジャ13の長手方向に沿って厚さが変化する、金属、セラミック、その他の物質から成る帯(図示せず。)が広がっていてもよいし、誘電率の異なる多くの別々の要素がプランジャ13の長手方向において積み重ねられていてもよい。その結果、プランジャ13の絶対位置がマイクロコントローラ1201によって測定可能であってもよい。たとえば、金属製またはセラミック製の帯がテーパー形状をしており、シャフト19の直径が軸に沿って一定であるようにシャフト19に埋め込まれていてもよい。これにより、静電容量値は離散的ではなく、連続的に変化する。さらに、シャフト19は一定の直径の基材から成るが、たとえば金属製またはセラミック製の粒子を、長軸に沿った位置に応じて異なる濃度で含んでいてもよい。
【0036】
図1の(a)、(b)に示されている実施形態と同様に、注射器20は、シャフト19を持つプランジャ13、シリンダ16、および針12を含む。詰め物18はシリンダ16の基端に挿入されていてもよい。第1実施形態とは異なり、プランジャ13のシャフト19の関連部分は、好ましくは、第1部分19A(図1参照。)と第2部分21とを含む。第1部分19Aは厚さと材質とが一様である。第2部分21は、シャフト19の残りの部分、特に第1部分19A(図1参照。)の第1素材とは異なる第2素材から成る。第1素材と第2素材とは好ましくは、誘電率が異なる。第2部分21は第1部分19A(図1参照。)とシャフト19の基端との間に配置されており、注射器20が注射を終える際に第1プローブ15Aおよび第2プローブ15Bと交差する。したがって、マイクロコントローラ1201が測定する第1プローブ15Aおよび第2プローブ15Bの間の静電容量は、図6の(a)、(b)が示すように、第2部分21がプローブ15A、15Bと交差する際に変化する。詰め物18に埋め込まれたマイクロコントローラ1201は、静電容量の変化に基づいて注射の終了を検出し、好ましくは、注射器20の状態をNFCアンテナ14でコンピュータ制御装置1202へ送信する。さらに、第1素材とも第2素材とも異なる第3素材から成る第3部分22がピストン17の近くに配置されていてもよい。これにより、注射器は、静電容量の3つの異なる測定値に基づいて、プランジャ13の3つの異なる位置を検出することができる。別の実施形態では、第2部分21と第3部分22とがプランジャ13の長手方向において移動可能であっても、固定されていてもよい。
【0037】
図7の(a)−図9の(b)は、ここに開示される技術の第3実施形態を示す。第3実施形態では、注射器30が手動式自己注射器31の中に収められている。プランジャ13が終点へ向かうにつれて、測定される静電容量が変わり、システムの状態が任意のNFC対応機器へ送信される。
【0038】
図7の(a)−図9の(b)では、注射器30、または少なくともその一部が、手動式自己注射器31によって、またはその中に囲まれている。図1の(a)−図6の(b)に示されている上記の実施形態と同様に、注射器30は、プランジャ13、シリンダ16、および針12を含む。詰め物18はシリンダ16の基端に挿入されている。プランジャ13の第2部分32は、注射器30が注射を終える際に詰め物18の第1プローブ15Aと第2プローブ15Bとの間の静電容量の変化を検出するのに適したプランジャ13の部位に設けられている。注射の終了時、静電容量の変化がマイクロコントローラ1201によって検出される。マイクロコントローラ1201は注射器30の状態をNFCアンテナ14でコンピュータ制御装置1202へ送信する。第3実施形態における第2部分32は、プランジャ13のシャフトのうち厚さが変化した部分、および/または、第1プローブ15Aと第2プローブ15Bとの間の媒体を変化させるように材質が変化した部分を含む。
【0039】
図10の(a)−図11は、ここに開示される技術の第4実施形態を示す。第4実施形態では、注射器40が自動注射器41の中に組み込まれている。他の実施形態と同様、プランジャ13の状態および/または位置が、プランジャ13の材質の変化、厚さの変化、またはそれら両方の組み合わせに伴って測定される静電容量の変化から検出される。これらの記述された実施形態に加え、伸縮するプランジャロッド(図示せず。)を備えたパッチ形注射器(図示せず。)等、薬の投与にピストンを利用するいかなる容器にも、この技術は搭載可能である。
【0040】
図10の(a)−図11では、注射器40、または少なくともその一部が、自動注射器41によって、またはその中に囲まれている。図1の(a)−図6の(b)に示されている上記の実施形態と同様に、注射器40は、プランジャ13、シリンダ16、および針12を含む。詰め物18はシリンダ16の基端に挿入されている。プランジャ13の第2部分42は、注射器40が注射を終える際に詰め物18の第1プローブ15Aと第2プローブ15Bとの間の静電容量の変化を検出するのに適したプランジャ13の部位に設けられている。注射の終了時、静電容量の変化がマイクロコントローラ1201によって検出される。マイクロコントローラ1201は注射器40の状態をNFCアンテナ14でコンピュータ制御装置1202へ送信する。第2部分42は、プランジャ13のシャフトのうち厚さが変化した部分、および/または、第1プローブ15Aと第2プローブ15Bとの間の媒体を変化させるように材質が変化した部分を含む。
【0041】
図12は、以下に記述される観点に従って注射器システム1200の特徴を模式的に示すブロック図である。注射器1200は、好ましくは、NFCアンテナ14または同様な無線通信インタフェースを通してNFCまたはその他の無線プロトコルに従い、コンピュータ制御装置1202、たとえば、スマートフォン、タブレット、パソコン、またはその他のデジタル医療システムへ状態情報(たとえば、注射の終了、プランジャの動き)を送信可能である。プランジャ13の位置に関する情報は、好ましくは、マイクロコントローラ1201による静電容量の検出を利用して生成される。この検出は、シャフト19の第1部分19A、第2部分1205、および/または第3部分1206が、シリンダ16に配置された詰め物18の第1プローブ15Aおよび第2プローブ15Bと行う相互作用に基づいている。
【0042】
詰め物18は柔軟性のある材質から成っていてもよく、その中に次の要素が埋め込まれていてもよい:NXP NHS3100、またはCypress PSoC 6 32ビット IoTマイクロコントローラ等のマイクロコントローラ1201、NFCアンテナ14、および第1プローブ15Aと第2プローブ15B。これらは、キャパシタの電極を成す。柔軟性のある詰め物18は、注射器1200または投与器に取り付けることも埋め込むこともできる。その結果、導電素子が可動要素を取り巻く。可動要素の材質が多様であるので、マイクロプロセッサによって測定可能な変化をシステムの静電容量に与える。発明の実施形態は、注射器の現時点での状態、たとえば、充填済み注射器が使用済みであるか未使用であるか、またはプランジャ13が押し下げられたかを調べるのに使われてもよい。
【0043】
さらに、詰め物18は多様な形状であってもよく、シリンダ16に沿っていかなる位置に置かれていてもよい。詰め物18に搭載されたNFCアンテナ14は、もっと大型でも小型でもよく、応用に応じて、より高い強度で通信可能であっても、設置面積がより小さいものであってもよい。詰め物18はまた、注射器1200の外側に機械的に、または化学的に接着されていてもよい。この場合、発明の主要な概念、すなわち第1プローブ15Aと第2プローブ15Bとの間でシステムが測定を行うということを変更することなく、システムの静電容量が容器の材質を含むことができる。
【0044】
検出された位置または状態の変化はメモリ1203に書き込まれ、たとえばプランジャの意図しない動き、または注射器1200の使用履歴を追跡するのに利用されてもよい。メモリ1203は詰め物18の中、空洞18の中、または注射器1200のシリンダ16に沿った適当な空間の中に実装されていてもよい。さらに、プランジャ13の位置の検出は、薬がいつ、どれだけ投与されたかがユーザーにわかるように行われてもよい。これにより、薬の服用が正しく遵守されていることが保証される。
【0045】
マイクロコントローラ1201は、プランジャ13の位置を所定の周期でサンプリングすることにより、その位置に変化があったか否かを判断してもよい。ある実施形態では、その周期が1秒以下であってもよい。プランジャ13の位置に何らかの変化が検出された場合、マイクロコントローラ1201はデータを記録して、NFCアンテナ14で接続先のコンピュータ制御装置1202へ送信してもよい。
【0046】
ある観点では、開示されたこの技術に利用される電子機器が、充填済み注射器およびその他の注射器具の上で使用されるのに十分な低価格、かつ小型であってもよい。また、より大きな装置に適合する規模であってもよい。マイクロコントローラ1201の電力削減量は、以前に製造されたシステムを超えるものであってもよい。これは、超低電力ブートサイクルと「インアクティブ」の長いデューティサイクル(電池の消耗とアイドルタイムとを最小化できる。)との使用を通して実現される。
【0047】
ここに説明された実施形態の主な利点は、器具の正常な使用中、測定される静電容量に変化を与えるように、システムが構成可能である点にある。ユーザーはマイクロコントローラ1201を起動させるのに、NFC対応のコンピュータ制御装置1202を使用すること以外、特別な機能を有効にする必要も、余分なステップを踏む必要もない。(たとえば、「タップ」することも、装置に注射器1200の傍を通過させることもない。)
【0048】
本発明の実施形態は、射出成型可能な薬剤容器を使用するいかなる装置にも利用可能であり、スタンドアローン型の装置(すなわち注射器)としても、自動注射器等の自己注射機構の中に挿入されたものとしても利用可能である。実施形態はまた、容器または注射器の外周に貼り付けることもできる。この場合、ガラス製の容器を使用することが可能である。
【0049】
この技術は、設計上可能であれば、注射器自体に代えて、自己注射器の周辺の要素に成形されてもよい。この技術自体はメモリなしでもよいので、再利用可能である。それ故、この技術は、交換可能な薬のカートリッジまたは注射器を備えた再利用可能なシステムの一部として、器具の現時点での状態(すぐに使える、一部が使用された、使用を終えた)を検出してもよい。その状態をクラウド上のサーバが長時間追跡することもできる。再利用可能な装置を患者に接続可能にして、その使用履歴を取得することもできる。
【0050】
以上の観点は、限定的であることを意味しない。異なる注射器システムにおいては、回路の位置およびサイズが変わりうる。ここに開示された技術が、以上に特に示され、説明されている内容によって限定されないことは、当業者には高く評価されるであろう。むしろ、ここに開示された技術の範囲には、当業者が上記の説明を読んで思いつく、先行技術にはない修正および変形に加え、上記の様々な特徴の様々な組み合わせが含まれる。
図1
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