特許第6871431号(P6871431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871431
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】挿入器具用洗浄具
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/12 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   A61B1/12 510
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-568563(P2019-568563)
(86)(22)【出願日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】JP2018032169
(87)【国際公開番号】WO2019150632
(87)【国際公開日】20190808
【審査請求日】2020年5月18日
(31)【優先権主張番号】特願2018-15054(P2018-15054)
(32)【優先日】2018年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 友和
【審査官】 福田 千尋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/059921(WO,A1)
【文献】 特開昭58−133230(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/107801(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/037727(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入器具における挿入部の先端側に設けられ該挿入器具の使用時には筒状のカバーによって被覆される先端構成部に対し、前記カバーを該先端構成部から取り外した状態において着脱自在である洗浄キャップと、
前記洗浄キャップに設けられ、前記先端構成部の前記カバーによって少なくとも一部分が覆われた外周面に設けられた先端構成部側係合部に係合するキャップ側係合部と、
を具備することを特徴とする挿入器具用洗浄具。
【請求項2】
前記キャップ側係合部は、前記カバーに設けられ該カバーが前記先端構成部に装着される際に前記先端構成部側係合部に係合するカバー側係合部と同形状である、請求項1に記載の挿入器具用洗浄具。
【請求項3】
前記先端構成部側係合部の形状と、該先端構成部側係合部に係合する前記カバー側係合部の形状及び前記キャップ側係合部の形状は、同一の前記カバーもしくは同一の前記キャップを組みつけることを想定しない前記内視鏡における機種別でその形状が異なる、請求項1に記載の挿入器具用洗浄具。
【請求項4】
前記洗浄キャップは、前記先端構成部に対して装着した際に形成される筒状部の底面側に、キャップ底部係合部を具備する、請求項1に記載の挿入器具用洗浄具。
【請求項5】
前記キャップ底部係合部は、前記先端構成部の先端側に設けられた係合部に係合する、請求項4に記載の挿入器具用洗浄具。
【請求項6】
前記キャップ底部係合部は、前記先端構成部の先端側に設けられた係合部と係合することで、軸周りの回転位置を規制する、請求項4に記載の挿入器具用洗浄具。
【請求項7】
前記キャップ側係合部は、前記先端構成部の基端側に設けられた前記先端構成部側係合部に係合する、請求項1に記載の挿入器具用洗浄具。
【請求項8】
前記キャップ側係合部は、前記先端構成部側係合部に係合することで、前記洗浄キャップが前記先端構成部の長手軸方向に移動して該先端構成部から脱落することを防止する、請求項7に記載の挿入器具用洗浄具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入器具の挿入部の先端部に設けられた先端構成部を洗浄するための挿入器具用洗浄具に関する。
【背景技術】
【0002】
挿入器具の一つに医療用の内視鏡がある。内視鏡は挿入部を有し、その挿入部の先端側に先端構成部を有している。内視鏡には照明レンズ及び対物レンズを先端構成部の挿入部長手軸に略直交する先端面に配列した直視型内視鏡、あるいは、先端構成部の挿入部長手軸に略平行な側面に配列した側視型内視鏡がある。
【0003】
側視型内視鏡は、所謂、十二指腸用内視鏡等であって、先端構成部には回動自在な起上装置が設けられている。起上装置を備えた先端構成部は、電気絶縁性の先端カバーによって被覆される。先端カバーは、先端構成部からの脱落を防止するため接着剤等により該先端構成部に固定されている。
【0004】
起上装置は、一般的に、先端構成部に回動自在に配設される起上台と、操作部に設けられた起上台操作レバーと、起上台操作レバーの操作に伴って移動して起上台を揺動させる起上台操作ワイヤと、で主に構成されている。
【0005】
側視型内視鏡の挿入部には処置具が挿通される処置具チャンネルが設けられている。処置具は、処置具チャンネル内に挿通された後、先端構成部に設けられた先端開口から起上台上を通過して目的部位近傍に導出される。導出された処置具の先端部の位置は、ユーザーによる起上台操作レバーの操作によって起上台を揺動させることによって変化可能である。
処置具チャンネル内に挿通される処置具としては、造影チューブ、バスケットカテーテル、バルーンカテーテル、電気メス等がある。
内視鏡は、使用後、洗浄、消毒される。
【0006】
日本国特開2015−181914号公報には処置具起上台が回動自在に配置された内視鏡先端構成部の収容室内の目的部位に向けて洗浄液等を確実に供給して、速やかに洗浄消毒作業を行うことを可能にする内視鏡洗浄アタッチメントが開示されている。
【0007】
日本国特許4855824号公報には挿入部を構成する軟性の部材を傷つけることなく、内視鏡用先端カバーを引き裂いて破壊して先端構成部から内視鏡用先端カバーを取り外すことができるとともに、使用中の脱落を防止することができる内視鏡用先端カバーが開示されている。
【0008】
側視型内視鏡の挿入部を洗浄する際,先端カバーを取り外して先端構成部を露出させることによって洗浄を容易に行える。
しかしながら、側視型内視鏡の挿入部を洗浄する場合、日本国特開2015−181914号公報と日本国特許4855824号公報とでは洗浄方法が異なる。すなわち、日本国特開2015−181914号公報では、先端カバーが取り付けられている先端構成部に内視鏡洗浄アタッチメントを取り付けて洗浄を行う。これに対して、日本国特許4855824号公報では先端カバーを取り外して先端構成部を露出させた後に洗浄を行う。したがって、側視型内視鏡の洗浄を担当する作業者は、作業前に洗浄方法を確認した上で洗浄作業を行っていた。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、カバーが取り付けられている先端構成部に装着される不具合を解消しつつ、カバーが取り外された先端構成部への着脱が容易で確実な洗浄が可能な挿入器具用洗浄具を提供することを目的にしている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の挿入器具用洗浄具は、挿入器具における挿入部の先端側に設けられ該挿入器具の使用時には筒状のカバーによって被覆される先端構成部に対し、前記カバーを該先端構成部から取り外した状態において着脱自在である洗浄キャップと、前記洗浄キャップに設けられ、前記先端構成部の前記カバーによって少なくとも一部分が覆われた外周面に設けられた先端構成部側係合部に係合するキャップ側係合部と、を具備している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】側視型の内視鏡と内視鏡用洗浄具とを有する内視鏡システムを説明する図
図2A】内視鏡の挿入部の先端側に位置する先端構成部に先端カバーが被覆された先端部を説明する図
図2B】先端カバーと露出状態の先端構成部とを説明する図
図2C図2BのY2C−Y2C線断面図
図2D図2CのY2D−Y2D線断面図
図2E図2BのY2E−Y2E線断面図
図2F】カバーのカバー側係合部が先端構成部の本体係合部に係合した状態を説明する図
図3A】洗浄キャップを説明する斜視図
図3B】洗浄キャップを説明する図であって、分割面側を見た図
図3C図3AのY3C−Y3C線断面図
図3D】キャップ部の分割面同士を合わせた状態を説明する図
図3E図3DのY3E−Y3E線断面図であって、キャップ側係合部を説明する図
図4A】挿入部の先端側に露出された先端構成部と先端キャップとを説明する図
図4B】先端構成部を先端キャップの第1キャップ部に配置した状態を説明する図
図4C】先端キャップを先端構成部に装着した状態を説明する図
図4D】装着状態における先端キャップと先端構成部との係合状態を説明する図
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
なお、以下の説明に用いる各図において、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものもある。また、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0013】
本実施の形態において図1に示す挿入器具は、側視型内視鏡(以下、内視鏡と略記する)1である。符号30は先端カバー(以下、カバーと略記する)である。符号60は挿入器具用洗浄具である。本実施形態における挿入器具用洗浄具60は、内視鏡用洗浄具である。
したがって、図1の符号100は内視鏡システムであり、内視鏡1と内視鏡用洗浄具60とを備えている。
【0014】
図1に示す内視鏡1は、挿入部2と、操作部3と、ユニバーサルコード4と、を備える。挿入部2は、先端側から順に先端部5と、湾曲部6と、可撓管部7と、を連設している。湾曲部6は、例えば上下左右の4方向に湾曲するように構成されている。挿入部2は、被検体内に挿入される。
【0015】
操作部3は、挿入部2の基端側に設けられている。ユニバーサルコード4は、操作部3の側部から延出している。操作部3には、湾曲操作装置11と、送気送水釦12と、吸引釦13と、起上台操作レバー14と、各種操作スイッチ15と、が設けられている。
各種操作スイッチ15は、フリーズ信号を発生させるフリーズスイッチ、写真撮影を行う際のレリーズ信号を発生させるレリーズスイッチ、観察モードの切替指示を行う観察モード切替スイッチ等である。
【0016】
符号16は処置具挿入口であり、処置具(不図示)が挿入される。処置具挿入口16には処置具チャンネルチューブ17の一端側が接続されている。処置具チャンネルチューブ17の他端側は、挿入部2の先端部5を構成する後述する先端構成部(図2A等の符号20参照)に接続される。
【0017】
操作部3に設けられた湾曲操作装置11の上下湾曲ノブ11aが回動操作されると、湾曲部6が上方向又は下方向に湾曲する。一方、左右湾曲ノブ11bが回動操作されると、湾曲部6が左方向又は右方向に湾曲する。
【0018】
図1に示した先端部5は、図2Aに示すように内視鏡使用時において先端構成部20にカバー30を被覆して構成される。先端構成部20は、硬質部材で形成されている。カバー30は筒状で予め定めた弾発性を有している。また、カバー30は、電気絶縁性を有する例えば樹脂製である。
【0019】
図2A図2Fを参照して先端構成部20及びカバー30の構成及び2つの部材の関係を説明する。
図2Bに示すように先端構成部20は、先端部本体21と、光学用凸部22と、起上台用凸部23と、を有している。先端部本体21は、先端構成部20の基端部である湾曲部6側を構成する。先端部本体21には処置具チャンネル21kの一方の開口であるチャンネル開口21aと本体係合部21bとが設けられている。
【0020】
本体係合部21bは、先端構成部側の係合部である。本体係合部21bは、先端部本体21の外周面の予め定めた位置に設けられている。チャンネル開口21aは、先端部本体21の本体先端面21hに設けられている。本体先端面21hは、挿入部軸a2に平行な先端構成部20の構成部長手軸a20に対して直交する平面である。図2Bにおいて構成部長手軸a20は、チャンネル開口21aの中心点(不図示)を通過している。
【0021】
光学用凸部22及び起上台用凸部23は、本体先端面21hから構成部長手軸a20に沿って先端方向に突出している。光学用凸部22と起上台用凸部23とは並設している。そして、光学用凸部22と起上台用凸部23との間には予め定めた幅の溝を有している。 溝は、先端構成部20に設けられた起上台収容空間24である。起上台収容空間24内には起上台40が回動自在に配設される。本実施形態において、起上台収容空間24の先端側は、先端構成部20の先端側に設けられた先端側係合部20aとしての機能を有する。
【0022】
光学用凸部22には本体先端面21hに直交する上平面25が形成されている。上平面25の予め定めた位置には観察レンズ41および照明レンズ42が設けられている。符号43は、洗浄ノズルである。
【0023】
図2B図2Cに示すように本体係合部21bは、凹部21cと凸部21dとを備えている。凹部21cは溝状であって、先端部本体21の円弧状の上側外周面21eに対して予め定めた量凹んでいる。凸部21dは、凹部21cの平面である底面21fに対して予め定めた量突出している。この凹部21cは備えていなくても良い。
【0024】
凹部21c及び凸部21dは、先端部本体21の予め定めた位置に設けられている。凸部21dは、起上台収容空間24側に位置している。
【0025】
図2C図2Dに示すように凸部21dの一面である上面21gは、外周面21eの接線と平行に形成されている。そして、この凸部21dの底面21fは、外周面21eと一致するよう形成されている。
【0026】
なお、本体先端面21hは、先端部本体21の先端面であるとともに、起上台収容空間24となり得る溝の底面である。チャンネル開口21aは、先端部本体21に設けられた処置具チャンネル21kの一方の開口である。
【0027】
処置具チャンネル21kの他方の開口には上述した処置具チャンネルチューブ17の他端側が接続される。したがって、処置具挿入口16から挿入された処置具は、処置具チャンネルチューブ17内、処置具チャンネル21k内を通過してチャンネル開口21aから起上台収容空間24に導出される。
【0028】
次に、カバー30を説明する。
カバー30は上述したように筒状であって、先端構成部20を被覆する。図2Bに示すようにカバー30は、予め定めた位置である例えば上面にカバー30の内部と外部とを通じる1つの開口31を備えている。開口31は、光学用開口部32と、起上台用開口部33と、を有している。
【0029】
光学用開口部32は、先端構成部20の上平面25に設けられた照明レンズ42及び観察レンズ41を露呈させる。起上台用開口部33は、起上台収容空間24を露呈させる。光学用開口部32の一部と起上台用開口部33の一部とが繋がれて1つの開口31として形作られている。符号34はカバー側係合部である。
【0030】
図2Eに示すようにカバー側係合部34は、カバー30の筒状の内側面30aから予め定めた量突出した凸部である。開口31を形作る開口基端面31rよりもカバー基端30e側に離間した位置に設けられている。具体的に、カバー側係合部34は、開口31の開口基端側面31rから予め定めた距離離間した位置にカバー当接面34aを備えている。カバー側係合部34のカバー軸方向の長さLは、予め定めた長さに設定されている。
【0031】
ここで、カバー30を先端構成部20に被覆した状態を説明する。
カバー30を先端構成部20に被覆する。その際、カバー30を弾性変形させて図2Fに示すようにカバー側係合部34を先端構成部20の本体係合部21bの凹部21c内に配置させる。
【0032】
この配置状態において、カバー30が挿入部長手軸a2の先端側に移動された際、凹部21c内に配設されたカバー側係合部34のカバー当接面34aが凸部21dの基端面21drに当接する。この結果、カバー30の挿入部長手軸a2の先端側への移動が阻止される。したがって、カバー30が先端構成部20から脱落することが防止される。
【0033】
この構造は、カバー側係合部34を設けず、カバー当接面34aの代わりに開口基端面31rが凸部21dの基端面21drに当接するようにしても同様の作用・効果を奏することができる。この場合、凸部21dは開口基端面31rよりも前方側に露呈することになる。
【0034】
また、凸部21dの上面21gを図2Dで示したように、外周面21eの接線と平行になるよう形成することで、凸部21dの両端における先端カバー30の引っ掛かりが強くなるようにしている。これにより先端カバー30が挿入部長手軸a2の先端側へ移動して先端構成部20から脱落することをより確実に防止している。
【0035】
図3A図3Eを参照して内視鏡用洗浄具60の構成及び内視鏡用洗浄具60と先端構成部20との関係を説明する。
図1に示すように本実施形態の内視鏡用洗浄具60は、主に、洗浄キャップ61と、4本のチューブ体62と、2つの注入部63と、を有している。
【0036】
洗浄キャップ61は、第1キャップ部70と第2のキャップ部80とに分割されている。4本のチューブ体62をそれぞれ第1チューブ62A、第2チューブ62B、第3チューブ62C、第4チューブ62Dと記載して区別している。また、2つの注入部63をそれぞれ第1注入部63A、第2注入部63Bと記載して区別している。
【0037】
注入部63A、63Bは、それぞれ1つの接続口64と2つの供給口65a、65bとを有している。注入部63A、63Bの接続口64には例えば洗浄液が充填されたシリンジ(不図示)が接続される。
【0038】
第1注入部63Aの第1供給口65a及び第2供給口65bにはそれぞれチューブ62A、62Bの一方の端部が連結されている。これに対して、第2注入部63Bの第1供給口65a及び第2供給口65bにはそれぞれチューブ62C、62Dの一方の端部が連結されている。
それぞれのチューブ62A、62B、62C、62Dの他方の端部は、後述するようにキャップ部70、80に接続されている。
【0039】
符号66は分岐部である。接続口64が備える注入路64aは、分岐部66において、第1供給口65aに向かう第1供給路66aと第2供給口65bに向かう第2供給路66bとに分岐される。
【0040】
図3A図3Dに示すように二分割された洗浄キャップ61の第1キャップ部70と第2キャップ部80とはヒンジ構造部90の軸部91を中心に回動自在に連結されている。
【0041】
符号79は係合段部であって第1キャップ部70に設けられている。符号89は爪部であって第2キャップ部80に設けられている。第1キャップ部70と第2キャップ部80とは図3Bに示す開状態から第1キャップ部70の第1分割面70aと第2キャップ部80の第2分割面80aとを閉状態まで変化する。図3Dに示すように閉状態において、爪部89が係合段部79に係合されて第1キャップ部70と第2キャップ部80とが一体に保持される。
【0042】
図3A図3Bに示すように第1キャップ部70は主に、先端構成部第1収容凹部(以下、第1凹部と略記する)71に加えて第1キャップ第1管路72と、第1キャップ第2管路73と、キャップ底部係合部74と、キャップ側係合部75と、排出用開口76と、噴出穴77と、を備えている。一方、第2キャップ部80は主に、先端構成部第2収容凹部(以下、第2凹部と略記する)81に加えて第2キャップ第1管路82と、第2キャップ第2管路83と、を備えている。
【0043】
第2キャップ第1管路82は、第2洗浄路61bを備えており、第2チューブ62Bの他方の端部が連結されている。第2キャップ第2管路83は、第3洗浄路61cを備えており、第3チューブ62Cの他方の端部が連結されている。これに対して、第1キャップ第1管路72は、第1洗浄路61aを備えており、第1チューブ62Aの他方の端部が連結されている。第1キャップ第2管路73は、第4洗浄路61dを備えており、第4チューブ62Dの他方の端部が連結されている。
【0044】
そして、第1注入部63Aの注入路64aから供給される洗浄液は、分岐部66で分岐された第1供給路66a、第1チューブ62A内、第1洗浄路61aを通過して第1出射口M1から出射される。また、洗浄液は、分岐部66で分岐された第2供給路66b、第2チューブ62B内、第2洗浄路61bを通過して第2出射口M2から出射されるようになっている。
【0045】
一方、第2注入部63Bの注入路64aから供給される洗浄液は、分岐部66で分岐された第1供給路66a、第3チューブ62C内、第3洗浄路61cを通過して第3出射口M3から出射される。また、洗浄液は、分岐部66で分岐された第2供給路66b、第4チューブ62D内、第4洗浄路61dを通過して第4出射口M4から出射されるようになっている。
【0046】
図3Cに示すように第1凹部71及び第2凹部81は、断面形状が略円弧形状の空間である。図3Dに示すように第1キャップ部70の第1分割面70aと第2のキャップ部80の第2分割面80aとを合わせることによって先端構成部20を収容する筒状の収容空間61Sが構成されるようになっている。
【0047】
符号71aは保持突起である。保持突起71は、第1凹部71の予め定めた位置に対向して一対設けられている。保持突起71aは、先端構成部20の予め定めた部位を略線接触状態で保持する機能と、カバー30が装着された先端構成部20が第1凹部71内に収容されることを防止する機能とを有している。つまり、一対の保持突起71aの内径は、先端構成部20の外径より予め定めた量大きく、カバー30の外径より予め定めた量小さく設定してある。
【0048】
図3A図3Bに示すように第2凹部81の底面中央には第3射出口M3が設けられている。第3射出口M3から出射される洗浄液は、第2凹部81の開口に向かって出されるようになっている。一方、第2キャップ部80のキャップ端部80cには第2出射口M2が設けられている。第2出射口M2から出射される洗浄液は、第2凹部81を挟んで反対側に位置する第2分割面80aの方向に向かって噴出されていく。
符号81aは保持突起である。保持突起81aは第2凹部81の第3射出口M3を挟むように一対設けられている。保持突起81aは、前述した保持突起71aと同様の構成と機能を備えている。
【0049】
これに対して、第1凹部71の内面には第1キャップ基端面70b側から順に、キャップ底部係合部74、底面中央に位置する噴出穴77、排出用開口76が設けられている。一方、第1キャップ部70のキャップ端部70cにはキャップ底部係合部74と第4出射口M4とが設けられている。
【0050】
キャップ底部係合部74は、キャップ端部70cの第1キャップ基端面70bに平行な端部内面から第1キャップ基端面70b側に予め定めた量突出した凸部である。キャップ底部係合部74は、起上台収容空間24の先端側に位置する先端側係合部20aに係合するように形成されている。
【0051】
第4出射口M4は、キャップ端部70cの内側側部の第1分割面70a側に設けられている。第4出射口M4から出射される洗浄液は、第1凹部71を挟んで反対側に位置する第1分割面70aの方向に向かって噴出されていく。
【0052】
図3B図3C図3Eに示すように噴出穴77には洗浄液を穴開口に導く第1内周面77aと、第2内周面77bと、先端部側壁面77cと、基端側壁面77dと、が設けられている。
【0053】
基端側壁面77d側には、先端構成部20の本体係合部21bを構成する凸部21dに当接する後述するキャップ当接面(図3Eの符号75a参照)が設けられるようになっている。
【0054】
先端部側壁面77cには第1出射口M1が設けられている。第1内周面77a及び第2内周面77bは略半円形の曲面である。第1内周面77aと第2内周面77bとでは出射方向を変化させる目的で一部の曲率がことなっている。
【0055】
第1出射口M1から出射される洗浄液は、基端側壁面77dに衝突し、噴出穴77内に一時的に溜まり、その後、穴内の洗浄液が第1内周面77a及び第2内周面77bに沿って穴開口から第1凹部71の開口に向かって噴出されるようになっている。
【0056】
具体的に、第1内周面77aに沿って穴開口から噴出された洗浄液は、先端構成部20の起上台収容空間24に向かうようになっている。一方、第2内周面77bに沿って穴開口から噴出された洗浄液は、先端構成部20の上平面25に向かうようになっている。
【0057】
排出用開口76は、出射口M1、M4、あるいは、出射口M2、M3から収容空間61S内に出射された洗浄液を外部に排出するための開口である。
【0058】
図3Eに示すようにキャップ側係合部75は、第1キャップ部70の第1凹部71に設けられた予め定めた量突出した凸部である。符号75aはキャップ当接面である。キャップ当接面75aは、噴出穴77を形作る基端側壁面77dよりも第1キャップ基端面70b側に予め定めた距離離間した予め定めた位置に設けられている。
【0059】
キャップ側係合部75は、破線に示す先端構成部20の本体係合部21bを構成する凹部21c内に配置されるように形作られている。キャップ側係合部75のキャップ当接面75aが凸部21dの基端面21drに当接することによって、洗浄キャップ61が先端構成部20の先端側に移動されて脱落することが防止される。
【0060】
つまり、キャップ側係合部75とカバー側係合部34とは先端構成部20の本体係合部21bの凹部21c内に配置されるとともに、基端面21drに当接するように同形状に形成されている。
【0061】
図4A図4Dを参照して上述のように構成された洗浄キャップ61と先端構成部20との関係を説明する。
使用後の内視鏡1を洗浄する際、作業者は、予め、カバー30を挿入部2の先端部5を構成する先端構成部20から取り外しておく。そして、作業者は、露出された先端構成部20に洗浄キャップ61を取り付ける。
【0062】
ここで、作業者は、図4Aに示すように挿入部2の先端側に露出された先端構成部20の上面側を、洗浄キャップ61を構成する第1キャップ部70の第1凹部71の内面に向けて矢印Y4Aに示すように該第1凹部71に近づけていく。
【0063】
その際、作業者は、先端構成部20の先端側に位置する先端側係合部20a内に第1キャップ部70のキャップ底部係合部74を導きつつ、前記図3E等で示したようにキャップ側係合部75を本体係合部21bの凹部21cに向けて移動させていく。
【0064】
そして、図4Bに示すように先端構成部20の上面側を、洗浄キャップ61の第1キャップ部70の第1凹部71内に配置する。このとき、第1キャップ部70のキャップ底部係合部74が先端側係合部20a内に配置されている。また、図3Eで示したようにキャップ側係合部75が本体係合部21bの凹部21cに配置される。
【0065】
ここで、作業者は、図4Bに示すように開状態の第2キャップ部80を閉状態にしていく。このとき、爪部89を係合段部79に係合させる。この結果、図4Cに示すように第1キャップ部70と第2キャップ部80とが一体に保持されて先端構成部20への洗浄キャップ61の装着が完了する。
【0066】
この装着状態において、図4Dに示すようにキャップ底部係合部74が先端側係合部20a内に配置されている。このことによって、洗浄キャップ61が挿入部長手軸a2の軸周りに回動することを規制することができる。また、キャップ側係合部75が本体係合部21bの凹部21cに配置されている。
【0067】
このことによって、洗浄キャップ61が挿入部長手軸a2の先端方向に移動された場合にキャップ側係合部75のキャップ当接面75aが凸部21dの基端面21drに当接して、洗浄キャップ61が先端構成部20から脱落することを防止できる。
【0068】
このように、カバー30が挿入部2の挿入部長手軸a2方向に移動してカバー30が先端構成部20の先端側から脱落することを防止するために先端構成部20に本体係合部21bを設け、カバー30にカバー側係合部34を設けている。
【0069】
先端構成部20を洗浄する際には、カバー30を先端構成部20から取り外し、カバー30を取り外して露出された先端構成部20に例えば4つの洗浄液を出射する出射口を備える先端キャップ61を装着して先端部構成部20を洗浄する。
【0070】
先端キャップ61を第1キャップ部70と第2キャップ部80とに分割したことによって、先端キャップ61の先端構成部20への取り付けを容易に行うことができる。
【0071】
また、先端キャップ61の2つに分割されたキャップ部の一方である第1キャップ部70に、本体係合部21bに係合するカバー30のカバー側係合部34と略同様な第1キャップ側係合部となるキャップ側係合部75を設けている。
【0072】
加えて、2つのキャップ部70、80を合わせて先端構成部20を被覆する筒状の収容空間61Sの底部に当たる筒状底部となる第1キャップ部70に、第2キャップ側係合部となるキャップ底部係合部74を設け、このキャップ底部係合部74を先端側係合部20として機能する起上台収容空間24の先端側に係合させている。
【0073】
これらのことによって、カバー30及び洗浄キャップ61を先端構成部20の予め定めた状態に位置決めすることができると共に、カバー30及び洗浄キャップ61が挿入部長手軸a2に沿って先端方向に移動して先端構成部20から脱落することを防止することができる。加えて、洗浄キャップ61が挿入部長手軸a2の軸周りに回転することを規制することができる。
【0074】
したがって、出射口M1、M2、M3、M4から先端構成部20に洗浄液を噴出させたとき、洗浄液の噴出圧によって先端キャップ61が移動する不具合を解消して確実に洗浄することができる。
【0075】
なお、内視鏡において、先端構成部において、径寸法、あるいは、長さ寸法等が異なる形式の異なる複数種類の内視鏡を有する場合、位置決めする機能と、先端側に移動して脱落することを防止する機能とを兼用する本体係合部を内視鏡毎に適宜設定する。そして、各内視鏡の形式に合わせてカバー30のカバー係合34の位置及び形状と先端キャップ61のキャップ側係合部75の位置及び形状を各内視鏡毎に設定する。
【0076】
尚、本発明は、以上述べた実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【0077】
本出願は、2018年1月31日に日本国に出願された特願2018−015054号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものとする。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D