(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本明細書における各図において、一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、本明細書における各図において、部材の大きさ、形状、厚みなどを適宜誇張して表現する場合がある。
【0015】
<全体構成>
図1を参照して、本実施形態の巻き取り装置1について説明する。同図(A)は巻き取り装置1の外観斜視図であり、同図(B)は巻き取り装置1の正面図であり、同図(C)は巻き取り作業を説明する概要図である。
【0016】
同図(A),同図(B)に示すように、本実施形態の巻き取り装置1は、例えば、ドクターブレードDが取り付けられる装置(印刷装置、コーティング装置、ドクター装置など)とは別体の装置であって、ガイドユニット2と巻き取りユニット3を有する。本実施形態の巻き取り装置1では、同図(C)に示すように、非巻回状態のドクターブレードDをコイル状に巻回し、所定の部材(例えば、粘着テープ7)などで巻回状態を維持・固定する作業(巻き取り作業)を行うことができる。
【0017】
ここで本実施形態のドクターブレードDは、例えば、主にグラビア印刷やフレキソ印刷、あるいは特殊コーティングなどに用いる装置(印刷装置、コーティング装置)の凹版の彫刻ロールに当接させて凹部に乗らなかったインキのかき取り(スクレーピング;Scraping)を行うかき取り刃(スクレーパー)である。ドクターブレードDの材質は例えば、手作業でも巻回できる程度に変形が可能な剛性を有する金属、セラミックあるいはプラスチックなどである。なお、本実施形態ではドクターブレードDは略平板状(非巻回状態)から巻回状態に変形するが、この変形は、例えば弾性変形である。またこの変形は塑性変形であってもよく、弾性変形と塑性変形が混在していてもよい。
【0018】
また本実施形態の巻き取り装置1は、特に、所定長さに切断され、且つ摩耗等により交換された使用済みのドクターブレードDの巻き取り作業を行うものである。ここで所定長さとは、かき取り対象部位、すなわち印刷装置やコーティング装置あるいはドクター装置などの凹版の彫刻ロールに対応した長さであり、より詳細には例えば、彫刻ロールの軸線方向の長さと概ね同等の長さであり、具体的には一例として0.3m〜3m、望ましくは0.5m〜2.5m、好適には0.8m〜2.0mである。ドクターブレードDの平面形状は、短手方向(幅方向)の長さに対して長手方向(長さ方向)の長さが十分大きい略矩形状(長い短冊状)である。
【0019】
同図(A),同図(B)を参照して、ガイドユニット2は、ドクターブレードDの載置手段4と、カバー手段5と、排出手段6を有する。載置手段4は、所定長さに切断されたドクターブレードDを非巻回状態で載置可能な例えばトレー(載置トレー4)である。非巻回状態とは、巻回していない状態、すなわちドクターブレードDの全長(長手方向の長さ)が視認可能なように略平らに展開されている状態である。すなわち、載置トレー4の形状は、非巻回状態(平らに展開した状態)のドクターブレードDに沿う、平面視において略矩形状(長い短冊状)である。また、載置トレー4は、ドクターブレードDの刃に作業者の手指が接触しないように、載置面4Aの長手方向の両側に起立する側面4Bが設けられ、長手方向から見た側面視において略コの字状を呈していると望ましい。載置トレー4の長手方向の長さはドクターブレードDの長さより長く、深さ(側面4Bの高さ)は、ドクターブレードDの複数枚(例えば、10枚〜30枚)分の厚さより大きい。すなわち、載置トレー4には、非巻回状態の複数枚のドクターブレードDを積層して載置可能である(同図(A))。そして、1回の巻き取り作業において、複数枚のドクターブレードDを纏めて巻回し、1つのコイルDCにすることができる(同図(C))。
【0020】
以下、説明の便宜上、載置トレー4(非巻回状態のドクターブレードD)の長手方向を装置長さ方向L、装置長さ方向Lに直交する載置トレー4(非巻回状態のドクターブレードD)の短手方向を装置幅方向W、装置長さ方向Lおよび装置幅方向Wのいずれにも直交する方向を装置高さ方向Hと称する。
【0021】
カバー手段5は、載置トレー4の装置長さ方向Lの一方の端部(同図(B)では右方端部)に設けられ、巻き取りユニット3をカバー可能な手段であり、巻き取りユニット3を着脱可能に支持する。同図(A)においては巻き取りユニット3をカバー手段5に装着した状態と、取り外した状態を図示している。
【0022】
カバー手段5は例えば、装置幅方向Wにおいて対向する第1側面5Cと第3側面5E、載置トレー4に対向するように設けられた第2側面5D、および第2側面5Dと連続し湾曲した天面5Gを有する略台形状(略矩形状)の箱状部材であり、第2側面5Dに対向する側方部分に供給口5Aと排出口5Bを有する。カバー手段5の第2側面5Dの外側底部には、ブラケット30が設けられている。ブラケット30は、巻き取りユニット3に挿通されるドクターブレードDの先端部の位置決めを行うものであり、これについては
図6等を用いて後述する。
【0023】
排出手段6は、この例では装置高さ方向Hにおいて載置トレー4の下方(下段)に配置され、巻回されたドクターブレードDが排出される。以下、「巻回された(巻回後の)ドクターブレードD」を「ドクターブレードのコイルDC」、あるいは単に「コイルDC」と称する。排出手段6は例えば、複数(例えば数個〜十数個)のコイルDCを、それぞれの軸心が装置長さ方向Lに直交するとともにコイルDCの径方向に並ぶようにストック可能なレール(排出レール6)である。なお、排出レール6には、その装置高さ方向Hの上方且つ装置幅方向Wの両側に、コイルDCの落下を防止するガイド6Aを設けるとよい。
【0024】
載置トレー4に載置された非巻回状態のドクターブレードDは、上流側となるカバー手段5とは逆の(他方の)端部(同図(B)では左方端部)から、下流側となるカバー手段5の供給口5Aに向かって移動する。そして供給口5Aからその内部に引き込まれ、カバー手段5の内部において巻き取りユニット3により巻回されてコイルDCとなり、排出口5Bを介して排出レール6に排出される。
【0025】
載置トレー4上には、ドクターブレードDの表面(の一部)を押圧する押さえローラ9が設けられる。押さえローラ9は、回転軸が装置幅方向Wに延在するとともに、その一端が載置トレー4(の側面4B)に、解放位置P1と押さえ位置P2(同図(A))との間で揺動可能に固定される。押さえローラ9は、載置トレー4との固定部分と逆側の端部にレバー9Aが設けられレバー9Aを把持して手動により揺動可能に構成される。押さえ位置P2では押さえローラ9はドクターブレードDの表面に当接して装置高さ方向Hの下方に押下しつつドクターブレードDを下流側に移動させる。これによりカバー手段5の供給口5Aに確実にドクターブレードDを挿入できる。一方、解放位置P1ではドクターブレードDの表面から離反する。なお、押さえローラ9に対向する載置面4Aの一部は、装置高さ方向Hの上方に僅かに突出する当接補助領域4C(
図3に示す)が設けられてもよい。これにより押さえローラ9の押さえを確実に行うことができる。また、当接補助領域4Cは、例えばリンク機構などにより押さえローラ9の移動に連動して動作可能に構成し、押さえ位置P2への移動に同期して突出し、解放位置P1への移動に同期して平坦になるように構成してもよい。なお、押さえローラ9はモータなどの駆動手段と操作ボタン(スイッチ)などにより揺動可能に構成してもよい。
【0026】
さらに、巻き取り装置1は、巻回されたドクターブレードD(コイルDC)の巻回状態を維持(保持)・固定する部材(例えば、粘着テープ7など)の保持手段(例えば、テープホルダ)8を有する。テープホルダ8は、載置トレー4等に固定される。巻き取り装置1における巻き取り作業では、載置トレー4を移動するドクターブレードDの後端部に粘着テープ7の先端を貼り付け、巻き取りユニット3でドクターブレードDを巻き取りつつ、粘着テープ7をコイルDCの周りに巻き付け、その巻回状態を保持固定する(同図(C))。なお、この例ではテープホルダ8は押さえローラ9の上方に固定されるが、押さえローラ9と別体に設けてもよい。
【0027】
<巻き取りユニット>
図2から
図4を参照して巻き取りユニット3について説明する。
図2は巻き取りユニット3を示す図であり、同図(A)が外観斜視図、同図(B)がカバー手段5の供給口5A方向から見た側面図、同図(C)が外観斜視図である。
【0028】
図2を参照して、巻き取りユニット3は、平板状の基台10と、ドクターブレードDの支持手段11と、支持手段11を回転させる操作手段(例えば、ハンドル)15を有する。支持手段11は、巻回されるドクターブレードD(コイルDC)をその内周側から支持する部材であり、例えば2枚の略矩形板状体の支持部11A,11Bである。同図(B)に示すように、2枚の支持部11(11A、11B)は、離間して配置され、例えば装置幅方向Wの一端側が装置幅方向Wに延在するシャフト12の一端に固定される。支持部11は基台10の一方の面S1側に位置し、シャフト12及びハンドル15は基台10の他方の面S2側に位置し、いずれも基台10に対して回転可能に構成される。一例として支持部11A,11Bは、一方が他方に対して傾斜するように配置される。
【0029】
シャフト12の、支持部11の取り付け側とは逆の端部にはシャフト12と一体的に回転可能なノブ13が設けられる。またシャフト12の一部には、これと直交するシャフト15Aを有するハンドル15が係合/離脱可能に結合する。具体的に、シャフト(ハンドルシャフト)15Aは一端(同図(B)では上端)がクランプ(ねじ式クランプ)16によってシャフト12に結合可能に構成され、他端に把持部15Bが設けられる。ハンドル15(ハンドルシャフト15A)は、シャフト12の軸心を中心として回転可能である。
【0030】
クランプ16はクランプレバー16Aの締結操作によって、ハンドルシャフト15Aとシャフト12を結合する。これによりハンドル15とシャフト12は一体的に回転可能となる。つまりハンドル15の回転動作によりシャフト12を介して2枚の支持部11がシャフト12の軸心Cを中心として回転する。
【0031】
本実施形態のハンドル15は、ワンウェイクラッチ14(同図(B))により一方向(
図1(B)の正面視における時計周り、
図2(A)の矢印の方向)のみに回転するように構成されている。つまりハンドル15とシャフト12が結合されている状態では、シャフト12および支持部11も、一方向(同
図1(B)の正面視における時計周り)に回転するよう規制される。なお、以下の説明における時計回り方向および反時計回り方向とは、シャフト12の軸心を中心とした、
図1(B)に示す正面視(ハンドル15側から見た正面視)における回転方向をいう。
【0032】
クランプ16はクランプレバー16Aの締結解除操作によって、ハンドルシャフト15Aとシャフト12の結合を解除し両者を分離させる。これによりハンドル15とシャフト12とはそれぞれ個別に回転可能となる。
【0033】
同図(C)を参照して、巻き取りユニット3はカバー手段5に着脱可能に構成されている。具体的には、カバー手段5の第1側面5Cには、2枚の支持部11を一括して挿通可能な貫通穴5Fが設けられている。また、カバー手段5には巻き取りユニット3の取り付け位置を案内するガイドピン21が設けられる。そして、ガイドピン21を巻き取りユニット3の対応する位置に合わせながら巻き取りユニット3の基台10を当該第1側面5Cに重ね、支持部11を貫通穴5Fに挿通させると、巻き取りユニット3をカバー手段5に取り付ける(装着する)ことができる。巻き取りユニット3には、また、カバー手段5からの離脱の可否を切り替えるロック22(同図(A),同図(C))が設けられる。ロック22は、ロックレバー22Aと、ロックレバー22Aに連動してカバー手段5の一部に係合可能な係合部(不図示)を有する。ロックレバー22Aを作用状態にすると係合部がカバー手段5の一部に係合し、巻き取りユニット3がカバー手段5から離脱不可となる。また、ロックレバー22Aを解除状態にすると、係合部とカバー手段5の係合が解除され、巻き取りユニット3がカバー手段5から離脱可能となる。
【0034】
図3は、巻き取り装置1による巻き取り作業を説明する図であり、要部を抜き出して示す正面図(
図1(B)に対応する正面図である。ここでは複数枚のドクターブレードDを纏めて巻回する場合を例示する。
【0035】
同図(A)に示すように、巻き取りユニット3は、カバー手段5に取り付けた(装着した)場合、少なくとも支持部11はその外側がカバー手段5で覆われ(カバー手段5の内部に位置し)、シャフト12(ここでは不図示、
図2参照)は一方の第1側面5Cからカバー手段5の外側に露出(突出)する。
【0036】
2枚の支持部11は、複数の積層状態のドクターブレードDをそれらの間に挿入可能な程度に離間してシャフト12に固定されている。支持部11はシャフト12の軸心C回りに回転するが、巻き取りの開始に際しては、ドクターブレードDの先端部分を2枚の支持部11の間に適切に挿入可能となるように、適切な位置(姿勢)に設定されている必要がある。この適切な位置とは例えば、同図(A)に示すように一方の支持部11(ここでは支持部11B)がドクターブレードDの面を下方から支持可能となるように、載置トレー4(の載置面4A)と略水平となる位置である。またこの例では、一方の支持部11BがドクターブレードDの面を下方から支持可能となるように略水平となった場合(ドクターブレードDの下面側に配置された場合)、他の支持部11AはドクターブレードDの上面側に配置されるとともに、装置長さ方向Lの上流側が支持部11Bと離間し、下流側が支持部11Bと近接するように、支持部11Bに対して傾斜する(
図3(A)においては右下がりとなる)ようにシャフト12に固定されている。同図(A)に示すこの支持部11(11A,11B)の位置(姿勢)を以下、支持部11の「初期位置」という。そして、2枚の支持部11(11A、11B)はシャフト12の軸心Cを中心として、この相対関係を維持したまま回転可能に構成される。
【0037】
本実施形態の巻き取り装置1は、1枚のドクターブレードDを巻回できるが、複数枚のドクターブレードDを纏めて(積層状態で)巻回することもできる。巻き取るドクターブレードDが単数/複数いずれの場合も、巻き始めに際しては、同図(A)に示すように2枚の支持部11の間に、(最初の、最下層の)1枚のドクターブレードD(DF)の一端(先端)が挿入される。ドクターブレードD(DF)はその先端が2枚の支持部11を完全に通過してこれらから突出し、その先端がカバー手段5の外側に設けられたブラケット30に当接するように、作業者によりセットされる。
【0038】
また、同図(B)に示すように、複数枚のドクターブレードDを纏めて巻回する場合、最後の(最上層の)ドクターブレードD(DL)も同様に、その先端がブラケット30に当接するように作業者によりセットされる。そして、3枚以上のドクターブレードDを纏めて巻回する場合、中間層のドクターブレードD(DM)は、最下層のドクターブレードDFと最上層のドクターブレードDLの間に挟みこまれる。中間層のドクターブレードDMについては、支持部11の間に挿通させなくてもよく、これらの先端が揃っていなくてもよい。
【0039】
このように、2枚の支持部11の間には複数のドクターブレードDが挿通可能となるよう、2枚の支持部11は、一度に巻回可能なドクターブレードDの最大枚数(例えば、10枚〜30枚程度など)と同等あるいはそれより大きく離間される。
【0040】
そして巻回するドクターブレードDのセットが完了した後、ハンドル15(ここで不図示)を同図における時計回り方向(同図(B)の矢印の方向)に回転させると、シャフト12を介して支持部11が同方向に回転する。また、カバー手段5の内部には、ドクターブレードDの巻回を案内するとともに、コイルDCの形状(外周のサイズ)を規定するガイドローラ28が、複数配置されている。ガイドローラ28は、同図の正面視において、シャフト12の軸心Cを中心とした所定半径の円弧(半円より大きい円弧)状に配置される。
【0041】
ガイドローラ28により外周の形状が規定された状態で支持部11が回転することで、ドクターブレードD(DF,DL)の支持部11の間に挿入された部分、およびそれより下流(先端側)部分が、同図(C)のように支持部11の方に引き込まれ、支持部11の(特に角部分)に当接または近接した略S字状に変形する。つまり、巻き始めに際し、ブラケット30にドクターブレードDの先端を当接させる位置まで挿入することで、支持部11を回転させた場合に支持部11によってドクターブレードDの一部を略S字状に変形させ、支持部11によって確実に支持させることができる(そのように支持部11およびブラケット30のサイズや位置が設定されている)。
【0042】
また、巻回の中心が支持部11の(特に角部分)に当接または近接した略S字状に変形し、支持部11によって確実に支持(保持)され、また外周がガイドローラ28で規定された状態でハンドル15の回転を続けると、最上層と最下層のドクターブレードD(より詳細には、支持部11の間に挿入された部分よりも上流側のドクターブレードD)は、2枚の支持部11を中心としてこれらの周り(且つガイドローラ28の内側)に巻回される。また同時にこれらに密着して挟まれた中間層のドクターブレードDは、密着している最上層と最下層のドクターブレードDの摩擦力により引き込まれ、これらと一体的に支持部11の周り(且つガイドローラ28の内側)に巻回される。
【0043】
ドクターブレードDの後端部は、既に述べたように、例えば、粘着テープ7をドクターブレードDと同様に巻回しつつコイルDCの外周面に沿って貼り付ける。これによりコイルDCの巻回状態が保持・固定され、1回のドクターブレードDの巻回が完了する(コイルDCが完成する)(同図(D))。
【0044】
なお、良好な巻回を行うために複数のドクターブレードDを巻回前にも密着させておくことが望ましい。このため、カバー手段5より上流において押さえローラ9、および必要に応じて押さえローラ9に対向して装置高さ方向Hの上方に僅かに突出可能な当接補助領域4Cを設け、これらによって複数のドクターブレードDを面方向に押圧し、密着性を高めている。
【0045】
なお、ここでは複数枚のドクターブレードDを纏めて巻回する場合を例示するが、1枚であっても動作は同様である。
【0046】
ハンドル15の操作による一方向(時計回り方向)の回転力と、変形(弾性変形、および/または塑性変形)で生じた応力による復元力(巻回の方向とは逆方向(反時計回り方向)に戻ろうとする復元力)、およびドクターブレードDの摩擦力などにより、巻き取り作業中においてはドクターブレードD(コイルDC)は支持部11に支持(保持)される。そして、ハンドル15の回転を続けると、ドクターブレードD(より詳細には、支持部11の間に挿入された部分よりも上流側(図示左側)のドクターブレードD)は、2枚の支持部11を中心としてこれらの周りに巻回される。
【0047】
ここで、巻き取り作業を行っている場合にハンドル15の回転方向が自在であると(この例では反時計回りに回転可能であると)巻き取りが確実に行えないなどのトラブルが生じる。
【0048】
また、支持部11と係合するコイルDC中心の略S字状部分には、巻回(変形)の応力によってその方向とは逆方向(反時計回り方向)に戻ろうとする復元力が生じており、ドクターブレードD(コイルDC)の巻回の数(巻き数、回転数)が増加するに従い、その力が大きくなる。このため、誤って巻き取り作業中に作業者がハンドル15を離してしまうと、ハンドル15が大きな力で逆方向に回転したり、巻き取り中のドクターブレードDの巻き戻し、跳ね上がり、離脱などにより作業者に大きな危険が及ぶ問題となる。
【0049】
このため本実施形態の巻き取り装置1は、ワンウェイクラッチ14(
図2(B))によりハンドル15を一方向(時計回り方向)のみに回転可能としている。すなわち、クランプ16の締結操作によりハンドル15とシャフト12が締結されている場合には、シャフト12および支持部11も一方向(時計回り方向)のみに回転可能となる。一方、クランプ16の締結解除操作によりハンドル15とシャフト12が分離されている場合は、ハンドル15は一方向(時計回り方向)のみに回転可能であるが、シャフト12および支持部11の回転方向は、自在(支持部11がコイルDCを支持している場合はある程度の角度範囲内で自在)となる。
【0050】
再び
図2を参照して、巻き取り装置1は、完成したコイルDCを排出可能に構成されている。巻き取りユニット3は、カバー手段5の内部にコイルDCを残存させつつ、カバー手段5から分離可能に構成される(
図2(C))。詳細には、巻き取りユニット3によるドクターブレードDの巻き取りが完了した場合、まず支持部11によるコイルDCの支持(時計回り方向への回転力の付与)を解除する。具体的には、クランプ16の締結を解除し、ハンドル15とシャフト12(および支持部11)との結合を解除する。シャフト12にはワンウェイクラッチ14が作用しなくなり、支持部11には時計回り方向の回転力がかからなくなる。
【0051】
支持部11と係合するコイルDC中心の略S字状部分には、巻回(変形)の応力による反時計回り方向への復元力が生じており、支持部11に時計回り方向の回転力が作用しなくことで、支持部11とコイルDCの中心の略S字状部分の係合が解除される、または反時計回り方向への回転(による係合の解除)が容易な状態となる。
【0052】
そして、
図3(E)の概略図で示すように、コイルDCの復元力により支持部11及びシャフト12が反時計回りの方向に回転し、支持部11とコイルDC中心の略S字状部分の係合が完全に解除され、支持部11はコイルDCに対して移動が自在となる。なお、この状態での反時計回り方向の回転は、或る角度を超えると再び支持部11とコイルDC中心が(任意の形状で)係合することになるので、自ずと反時計回り方向の回転角度は所定範囲内に規制される。
【0053】
支持部11とコイルDCの係合を解除した後、巻き取りユニット3のロック22を解除し、カバー手段5から巻き取りユニット3を離脱させる(
図2(C))。コイルDCは、カバー手段5の上方においていかなる部材による支持もなくなり、自重によりカバー手段5の下方に落下し、排出口5Bを介して排出レール6に排出される。なお、図示は省略するが、例えばカバー手段5の底部には、排出口5Bに向かって下降するスロープが設けられてもよい。
【0054】
コイルDCの排出が完了した場合、巻き取りユニット3を再びカバー手段5に取り付ける。巻き取りが完了した場合の支持部11はドクターブレードDの長さなどに応じて任意の位置となっているが、カバー手段5に取り付ける際は、次に巻き取るドクターブレードDの先端部分を2枚の支持部11の間に適切に挿入可能となるように、支持部11は適切な位置(姿勢)、すなわち初期位置(
図3(A)参照)に設定する必要がある。本実施形態の巻き取り装置1は、容易に支持部11の初期位置への設定を可能にするため、支持部11の位置設定手段25を有している。
【0055】
図4および
図5を参照して、位置設定手段25について説明する。
図4(A)は、支持部11が初期位置に設定された状態のカバー手段5および巻き取りユニット3の部分を、供給口5A方向から見た側断面図であり、同図(B)は、同図(A)の一部を抜き出して示すハンドル15側から見た正面図である。また同図(C)および同図(D)は位置設定手段25の平面図である。
図5(A)は、支持部11が初期位置に設定された状態の巻き取りユニット3の上面図であり、同図(B)は同図(A)の斜視図である。また同図(C)〜同図(H)は、初期位置への設定の動作を説明する図であって、支持部11と位置設定手段25の一部を抜き出して示すハンドル15方向から見た正面図である。
【0056】
図4(A)に示すように、位置設定手段25は例えば、カバー手段5の第3側面5Eに設けられる。位置設定手段25は、例えばプランジャであり、スプリング(不図示)により第3側面5Eを貫通してカバー手段5の内部に進退可能に構成された位置設定ロックピン26と、位置設定ロックピン26の進退を行う位置設定ロックレバー27を有する。位置設定ロックレバー27はロックオン方向とロックオフ方向に移動(例えば位置設定ロックピン26の軸を中心として回転)可能に構成されている。同図(C)に示すように、位置設定ロックレバー27をロックオン方向に移動させると位置設定ロックピン26がカバー手段5の内部に突出(進出)する。また同図(D)に示すように位置設定ロックレバー27をロックオフ方向に移動させる(例えば、位置設定ロックピン26の軸を中心として180°回転させる)と、位置設定ロックピン26がスプリングの付勢力に抗ってカバー手段5から退避(後退)する。また、位置設定ロックピン26は、その先端からピンの軸方向に沿って位置設定ロックレバー27の方向に荷重を与えるとスプリングの付勢力に抗って本体の内部に沈み込み(後退し)、荷重が解けるとスプリングの力で元に戻る(進出する)。
【0057】
図4(A)、同図(B)、
図5(A),同図(B)に示すように支持部11は初期位置において、一方の支持部11BがドクターブレードDの下側に配置され、他方の支持部11AがドクターブレードDの上方に配置される。また、支持部11Aは下流側方向に向かうにつれて下降するように支持部11Bに対して傾斜して配置される。そして、カバー手段5の内部に突出した位置設定ロックピン26は、初期位置にある支持部11の一部に当接可能となっている。より詳細に、この例においては、初期位置において下側の支持部11Bは略矩形状であるが、装置幅方向Wの位置設定手段25側の辺の一部、および装置長さ方向Lの上流側の辺の一部が略L字状に切り欠かれた切り欠き部11Cが設けられ、カバー手段5の内部に突出した位置設定ロックピン26を受け入れ可能となっている(
図5(A),同図(B))。そして位置設定ロックピン26は、切り欠き部11Cの装置長さ方向Lの下流側の側面に当接可能に構成される。位置設定ロックピン26が当接する支持部11Bの一部(この例では切り欠き部11Cの装置長さ方向Lの下流側の切り欠き側面)を以下、ロックピン当接部11Dという。
【0058】
位置設定ロックピン26の突出位置は、例えば、
図4(B)に示すように、ハンドル15方向からの正面視において2枚の支持部11の回転中心(シャフト12の軸心C)から左下方に偏心し、且つ、初期位置にある下側の支持部11Bのロックピン当接部11Dに当接するとともに、上側の支持部11Aには当接しない位置である。換言すると、下側の支持部11Bはそのロックピン当接部11Dが位置設定ロックピン26に当接するとそれ以上の時計回り方向の回転が規制され、その位置(姿勢)が初期位置となる。支持部11A,11Bの位置(姿勢)はシャフト12に対しては固定されているため、下側の支持部11Bが初期位置に設定されると、上側の支持部11Aも初期位置に設定される。
【0059】
初期位置には以下のように設定される。
図5(C)は、位置設定ロックレバー27により位置設定ロックピン26をカバー手段5から退避させた状態で、カバー手段5(ここでは不図示)に、支持部11が任意の位置(姿勢)にある巻き取りユニット3を取り付けた状態である。その後、位置設定ロックレバー27により位置設定ロックピン26をカバー手段5内に進出させる。そしてクランプ16によりハンドル15とシャフト12を連結してハンドル15を時計回り方向に回転させる。これにより、ロックピン当接部11Dも、シャフト12の軸心Cとの相対関係を維持しつつ軸心C回りを回転する(
図5(D))。
【0060】
そして、位置設定ロックピン26が切り欠き部11Cに進入し、ロックピン当接部11Dに当接すると(同図(E))それ以上の支持部11の時計回り方向の回転は規制される(同図(F))。すなわち、支持部11の回転が規制された場合、初期位置に設定できたことになる(同図(E))。その後、位置設定ロックピン26を退避させる。なお、一方の支持部11A((この例では初期位置において下側に位置する支持部11B)と位置設定ロックピン26の当接によって初期位置を設定するため、他方の支持部11A(この例では初期位置において上側に位置する支持部11A)が位置設定ロックピン26に干渉しないよう、当該支持部11Aはその装置幅方向Wの長さが、支持部11Bよりも短く設定されている(
図4(A)、同図(B)参照)。
【0061】
また、同図(G)に示すように、カバー手段5に巻き取りユニット3を取り付けた場合に、支持部11の位置(姿勢)によっては、切り欠き部11C以外の支持部11Bと位置設定ロックピン26とが接触する場合がある。この場合、位置設定ロックピン26はスプリング(不図示)の付勢力に抗って本体の内部に沈み込み(後退し)、ハンドル15の回転に伴い支持部11が回転して、荷重が解けるとスプリングの力で支持部11方向に突出する(同図(H))。そして支持部11の回転が進行するといずれ同図(C),同図(D)の状態となる。
【0062】
このような構成により、巻き取り装置1は、
図1(C),
図3等に示すように1〜複数枚の非巻回状態のドクターブレードD(使用済みのドクターブレードD)を纏めて巻回し、固定部材(粘着テープなど)7で巻回状態を維持・固定してドクターブレードのコイルDCとして排出することができる。
【0063】
本実施形態の巻き取り装置1によれば、載置トレー4にドクターブレードDを載置した後は、ドクターブレードDとの接触を回避しつつ巻回作業、巻回状態の固定作業(粘着テープ7の貼り付け作業)、排出(回収)作業を行うことができる。
【0064】
また、一度に複数枚のドクターブレードDを纏めて巻回することができる。すなわち手作業でこれらを行っていた従来方法と比較して作業の安全性および作業効率を大幅に高めることができる。
【0065】
また、ドクターブレードDの巻回はワンウェイクラッチ14の採用により一方向に規制されているため、巻き戻しによる巻回作業の中断や事故を防止することができる。
【0066】
<巻き取り方法>
次に、
図6から
図9を参照して、本発明の巻き取り装置1によるドクターブレードDの巻き取り方法(操作方法)について、時系列で説明する。
【0067】
本実施形態におけるドクターブレードDの巻き取り方法は、ドクターブレードDを非巻回状態で載置手段(載置トレー)4に載置するステップと、支持手段(支持部11)にドクターブレードDの一部を支持させつつ、操作手段(ハンドル15)により支持手段11を回転させて、支持手段11の周囲にドクターブレードDを巻回させるステップと、ドクターブレードDを巻回しつつ、その後端部を巻回部分に固定するステップと、巻回されたドクターブレードD(コイルDC)を排出するステップを有する。
【0068】
ドクターブレードDは、部材のかき取り(Scraping)対象部位(例えば、印刷装置、コーティング装置あるいはドクター装置などの凹版の彫刻ロール)に対応した所定長さに切断されているものであり、載置手段4には、複数のドクターブレードDを載置可能であって、それらを纏めて支持手段11に巻回させることができる。
【0069】
また、支持手段11と操作手段15とを含む巻き取りユニット3はカバー手段5に着脱可能であって、巻き取りユニット3をカバー手段5に取り付けてカバー手段5の内側に支持手段11を収容するステップと、カバー手段5の内部に巻回されたドクターブレードDを残存させつつ、カバー手段5から巻き取りユニット3を分離するステップと、を有する。
【0070】
以下具体的に説明する。なお、以下の実施形態では
図1(C)に示すように複数枚(ここでは例えば、10枚)のドクターブレードDを纏めて巻回し、1個のコイルDCを排出する場合を例示するが、1枚のドクターブレードDを巻回し、1個のコイルDCを排出する場合であっても巻き取り方法(操作方法)は同様である。
【0071】
図6は、巻き取り装置1のカバー手段5の一部の記載を省略した図であり、第3側面5E側からカバー手段5の内部を見た斜視図である。
【0072】
まず同図(A)は、巻き始めとなる最初(最下層、1枚目)のドクターブレードD(DF)をセットした状態である。なお、図示は省略するが、この状態では、押さえローラ9(およびこの例ではテープホルダ8)は、解放位置P1にある(
図3(A)参照)。
【0073】
そして、作業者は載置トレー4に1枚目のドクターブレードD(DF)を載置し、矢印方向に滑らせるなどして2枚の支持部11の間に挿通させる。なお、このとき支持部11は初期位置(
図3(A)、
図5(E)参照)に設定されている。また、1枚目のドクターブレードDFはその先端をカバー手段5(第2側面5D)の外側底部に設けられたブラケット30に当接させる(作業者の目視にて当接を確認する)。このようにすることで、後の工程で、ドクターブレードDの支持部11の間に挿入された部分、およびそれより下流(先端側)部分を支持部11(の特に角部分)に当接または近接した略S字状に変形させることができ、支持部11による支持を確実にすることができる。
【0074】
その後、同図(B)に示すように、1枚目のドクターブレードDF上に、中間層となる2枚目から9枚目のドクターブレードD(DM)を載置する。これらは特に下流側の先端を揃える必要はない。また、1枚目のドクターブレードDに重畳(積層して)載置されていれば、中間層のドクターブレードDMは支持部11の間に挿通する必要がない(
図3(B)参照)。
【0075】
同図(C)は9枚目のドクターブレードD上に10枚目(最後、最上層)のドクターブレードD(DL)を載置した状態である。最後のドクターブレードDは、1枚目と同様にその先端付近を支持部11の間に挿通するとともに、先端をブラケット30に当接させる(作業者の目視にて当接を確認する)(
図3(B)参照)。
【0076】
このように、複数枚のドクターブレードDを纏めて巻回し1個のコイルDCとして排出する場合、最下層(1枚目)のドクターブレードD(DF)と最上層(10枚目)のドクターブレードD(DF)を支持部11に挿通させる(ブラケット30にも当接させる)とともに、これらの間に中間層(2枚目〜9枚目)のドクターブレードD(DM)を挟み込む。この状態でハンドル15を時計回り方向に回転させると、中間層のドクターブレードDMは、最下層のドクターブレードDFおよび最上層のドクターブレードDFとの間に生じる摩擦力によってこれらに挟まれたまま支持部11の周りに巻回される。
【0077】
このようにここでは一例として、中間層のドクターブレードDは、支持部11に挿通させないようにしている。これは第1には、支持部11に挿通するドクターブレードの枚数が多いほど、ハンドル15を回す力が重くなるためである。また、第2には、支持部11の隙間(支持部11A,11Bの距離)に対して、挿通するドクターブレードDの枚数が多い場合、巻き取りユニット3を引き出す際に、ドクターブレードDと支持部11との間の摩擦が大きくなり、巻き取りユニット3がカバー手段5から引き出しにくくなるためである。
【0078】
一方で、例えば載置するドクターブレードDの枚数が少ない、および/またはそれぞれの厚みが薄い等により、一度に巻回するドクターブレードDの総厚みが支持部11の隙間に対して小さく、ハンドル15の回転力および/またはドクターブレードDと支持部11との間の摩擦力に及ぼす影響が少ない場合、中間層のドクターブレードDMは支持部11に挟まれることが許容されてもよい(挟まれる場合があってもよい)。
【0079】
つまり、複数枚のドクターブレードDを纏めて巻回し1個のコイルDCとして排出することができ作業効率を高めることができる。またその場合、ドクターブレードDの適切なセット(セット位置の調整)は最下層と最上層のドクターブレードDのみ行えばよく、それ以外の中間層のドクターブレードDについては両者の間に挟みこめばよいため、作業効率の向上にさらに寄与する。
【0080】
1枚のドクターブレードDを巻回する場合は、
図6(B)および同
図6(C)の工程を省略する。2枚のドクターブレードDを巻回する場合は、
図6(B)の工程を省略する。
【0081】
図7は、巻き取りを開始する状態であり、同図(A)が装置長さ方向Lの下流側から見た側面図、同図(B)が装置長さ方向Lの上流側から見た側面図、同図(C)は同図(B)の位置設定手段25付近の拡大図、同図(D)はハンドル15側から見た正面図である。
【0082】
同図(A)に示すように、必要枚数のドクターブレードDを載置トレー4に載置した後、解放位置P1にある押さえローラ9を押さえ位置P2に移動させ、ドクターブレードDを載置面4Aに押圧する。なお、押さえ位置P2においては、押さえローラ9が確実に押さえ位置P2に移動完了したことを確認可能な例えばストッパー(不図示)などのガイドを設けると望ましい。また押さえローラ9の押さえ位置P2への移動に伴い(あるいは定常的に)押さえローラ9に対向する載置面4Aの一部が僅かに上方に突出する構成にするとよい。例えば、載置面4Aと分離可能な当接補助領域4Cを設け、例えばプランジャー(不図示)などにより当接補助領域4Cを押し上げ可能な構成にするとよい(
図3(C)参照)。
【0083】
次に、同図(B)に示すように位置設定ロックレバー27をロックオフ方向に移動(ここでは回転)させ、位置設定ロックピン26をカバー手段5から退避(後退)させる(同図(C))。これにより、支持部11は位置設定ロックピン26に規制されることなく、回転可能となる。
【0084】
なおこの状態では、ハンドル15とシャフト12はクランプ16により結合され、一体的に一方向(この例では時計回り方向)に回転可能となっている。ハンドル15とシャフト12が結合していない場合には、クランプ16の締結操作により両者を結合させる。これにより、ハンドル15の回転(時計回り方向の回転)によって、シャフト12を介して、支持部11は時計回り方向に回転する。
【0085】
作業者によるハンドル15の操作(時計回り方向への回転)により支持部11がシャフト12の軸心を中心に同方向に回転する。これにより、最下層(1枚目)と最上層(10枚目)のドクターブレードDの支持部11の間に挿入された部分、およびそれより下流(先端側)部分が
図2(C)で示すように支持部11の(特に角部分)に当接または近接した略S字状に変形し、支持部11によって確実に支持(保持)される。そして、ハンドル15の回転を続けると、最上層と最下層のドクターブレードD(より詳細には、支持部11の間に挿入された部分よりも上流側のドクターブレードD)は、2枚の支持部11を中心としてこれらの周りに巻回される。また同時にこれらに密着して挟まれた中間層(2枚目〜9枚目)のドクターブレードDは、最上層と最下層のドクターブレードDの摩擦力により引き込まれ、これらと一体的に支持部11の周りに巻回される(
図3(C)参照)。
【0086】
図7(D)は、巻き終わりの状態を示す巻き取り装置1の要部の正面図である。ドクターブレードDの巻回が進み、載置トレー4上に載置される非巻回状態のドクターブレードDの残量(巻き残し部分)が所定量(例えば、コイルDCの最外周の円周の1/2〜2倍程度)になった場合、作業者はテープホルダ8に保持される粘着テープ7(例えば、布テープやクラフトテープなど粘着力の強いテープ)の先端を引き出し、ドクターブレードDの巻き残し部分に貼り付ける。
【0087】
引き続き、作業者はハンドル15を回転させてドクターブレードDの巻き残し部分を支持部11の周りに巻回する。ドクターブレードDが巻き終わった後も引き続きハンドル15を回転させると粘着テープ7がコイルDCの周囲に巻回し、またコイルDCの外周に貼り付いて巻回状態を維持、固定する。なお、確実な固定のために粘着テープ7を複数回巻回させることが望ましい。作業者は、十分に粘着テープによる固定が行われたことを目視などにより確認し、例えばカバー手段5の上流において粘着テープ7を切断する。なお例えばテープホルダ8に、切断された残りの(テープホルダ8にて保持している)粘着テープ7の先端部分を仮止めする仮止め手段8Aなどを設けると作業効率が上がり望ましい。これで、1つの(廃棄用の)コイルDCが完成する。
【0088】
図8はカバー手段5から巻き取りユニット3を取り外す状態を示す。同図(A)は正面図であり、同図(B)は巻き取りユニット3(正面)側の上方から見た斜視図である。
【0089】
同図(A)では、クランプレバー16Aを操作してクランプ16を緩める。これにより、ハンドル15(ハンドルシャフト15A)とシャフト12が分離される(
図2(B)参照)。ハンドル15の分離によりワンウェイクラッチ14が作用しなくなり、シャフト12に係る時計回り方向の回転力が解除される。
【0090】
支持部11と係合するコイルDC中心の略S字状部分には、巻回(変形)の応力による反時計回り方向への復元力が生じており、支持部11に時計回り方向の回転力が作用しなくことで、支持部11とコイルDCの中心の略S字状部分の係合が解除される、または反時計回り方向への回転(による係合の解除)が容易な状態となる。
【0091】
これにより、コイルDCの復元力により支持部11及びシャフト12が反時計回り方向に回転し、支持部11とコイルDC中心の略S字状部分の係合が完全に解除され、支持部11はコイルDCに対して移動が自在となる。その後、例えばロックレバー22Aを解除状態とし(この例では上方に移動して)、ロック22を解除する。これにより巻き取りユニット3とカバー手段5との係合は解除される。
【0092】
そして、同図(B)に示すようにノブ13をつかんで巻き取りユニット3をカバー手段5から引き出し、離脱させる。支持部11によるコイルDCの支持(保持)は解除されているので、コイルDCをカバー手段5内に残存させた状態で、巻き取りユニット3はカバー手段5から離脱される。コイルDCは、カバー手段5の上方においていかなる部材による支持もなくなり、自重によりカバー手段5の下方に落下する。自然落下したコイルDCは排出口5Bを介して排出レール6に排出される(
図7(C)参照)。
【0093】
図9は、次のコイルDCの巻回のために、巻き取りユニット3を再びカバー手段5に取り付ける状態を示す。同図(A)は、
図8(B)と同様の視点の斜視図であり、
図9(B)はハンドル15方向から見た正面図、同図(C)は装置長さ方向Lの上流側から見た側面図、同図(D)は、同図(C)の位置設定手段25付近の拡大図である。
【0094】
同図(A)に示すように、例えばガイドピン21などをガイドとして、巻き取りユニット3の基台10を当該第1側面5Cに重ねつつ、支持部11を貫通穴5Fに挿通させる。
【0095】
そして同図(B)に示すように、ロックレバー22Aを操作して(この例では下方に移動して)作用状態とし、巻き取りユニット3の係合部(不図示)をカバー手段5の一部に係合させて巻き取りユニット3とカバー手段5を離脱不可に固定する。
【0096】
その後同図(C)に示すように、支持部11を初期位置に合わせる。すなわち位置設定ロックレバー27の操作(ロックオン方向の操作)により位置設定ロックピン26をカバー手段5内に進出させる(同図(D))。そしてクランプ16の締結によりハンドル15とシャフト12を連結し、支持部11が位置設定ロックピン26に当接して回転しなくなるまで、ハンドル15を時計回り方向に回転させる。巻き取りユニット3をカバー手段5に取り付けた際の支持部11の位置(姿勢)が任意であっても、支持部11の回転が規制された位置において支持部11を初期位置に設定できる。その後、
図3(A)に示す状態に戻り次の巻回を行う。すなわち、1枚目のドクターブレードDFを支持部11の間に挿通し、
図3(B)に示すように中間層となるドクターブレードDMの載置し、最上層となるドクターブレードDLを支持部11の間に挿通する。そして、位置設定ロックピン26を退避させ(
図7(C)参照)、ドクターブレードDの巻回を行う。
【0097】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の巻き取り装置1および巻き取り方法は上記の例に限らない。
【0098】
図10は、支持部11および位置設定手段25の構成(位置関係)の他の形態を示す図であり、同図(A)はカバー手段5および巻き取りユニット3の部分を、供給口5A方向から見た側断面図であり、同図(B)および同図(C)は、同図(A)の一部を抜き出して示すハンドル15側から見た正面図である。いずれも支持部11は初期位置にある状態を示す。
【0099】
同図(A)に示すように、支持部11は例えば、いずれも(切り欠き部11Cを有さない)略矩形状であり、互いに平行に配置される構成であってもよい。この場合、支持部11は初期位置において、例えば上側の支持部11Aが装置幅方向Wにおける長さが長く、下側の支持部11Bが短く設定されている。
【0100】
また、位置設定手段25の位置設定ロックピン26は例えば、上側の支持部11Aの下面の一部(ロックピン当接部11D)に当接するように構成される。具体的には、位置設定ロックピン26の突出位置は、同図(B)に示すように、ハンドル15方向からの正面視において2枚の支持部11の回転中心(シャフト12の軸心C)から例えば右上方に偏心し、且つ、初期位置にある上側の支持部11Aの下面に設定されたロックピン当接部11D(下面の一部)に当接するとともに、下側の支持部11Bには当接しない位置である。換言すると、上側の支持部11Aはロックピン当接部11Dが位置設定ロックピン26に当接するとそれ以上の時計回り方向の回転が規制され、その位置(姿勢)が初期位置となる。支持部11A,11Bの位置(姿勢)はシャフト12に対しては固定されているため、上側の支持部11Aが初期位置に設定されると、下側の支持部11Bも初期位置に設定される。
【0101】
この場合も、同図(C)に示すように、ドクターブレードDの支持部11の間に挿入された部分、およびそれより下流(先端側)部分は、支持部11の時計回り方向の回転に伴い、支持部11の方に引き込まれ、支持部11の(特に角部分)に当接または近接した略S字状に変形してこれに支持される。
【0102】
このように本実施形態の支持部11は、ドクターブレードDの一部を変形させて支持可能な構成であれば、
図1〜
図9に示すような2枚の支持部11が互いに傾斜する位置に配置される構成であってもよいし、
図10に示すような平行に配置される構成であってもよい。また、支持部11は、巻き取りに際してそれらの間にドクターブレードDが挿通され、支持部11の回転に伴いドクターブレードDの一部を(例えば略S字状に)変形させて支持するとともに、支持部11の周囲にドクターブレードDの残りの部分を巻回可能な構成であれば上述の例に限らず、他の形状(構成)であってもよい。
【0103】
さらに位置設定手段25の位置設定ロックピン26の突出位置は、支持部11が回転した場合にいずれか一方の支持部11の一部に当接することで支持部11の回転を規制する位置であれば、上記の実施形態に示した位置に限らない。また支持部11のロックピン当接部11Dも位置設定ロックピン26に応じて設けられれば良く、上述の例に限らない。
【0104】
また、例えば、シャフト12は例えばモータなどの駆動手段で回転させるものとし、操作手段15は、駆動手段を駆動させる操作ボタンとしてもよい。クランプ16により操作手段(操作ボタン)15とシャフト12が結合されている場合、操作手段の操作に応じて駆動手段がシャフト12を時計回りに回転させる。
【0105】
また、粘着テープ7も所定量を自動で貼り付けるようにしてもよい。例えば、テープホルダ8の仮止め手段8Aをモータなどの駆動手段、およびレール又はリンク機構などの移動手段により装置長さ方向Lおよび装置高さ方向Hに移動可能とし、センサなどによってドクターブレードDの終端部を検知した場合、当該終端部に仮止め手段8Aを移動させるなどして、粘着テープ7の貼り付けを行う。また例えばカッター等も仮止め手段8Aと同様に移動可能とし、粘着テープ7のカットを自動で行うようにしてもよい。
【0106】
また、載置トレー4は載置面4Aを適宜に分割するとともに水平方向に移動可能に構成することにより、装置幅方向Wの長さや装置長さ方向Lの長さがスライドなどによって調整(変更)可能に構成されてもよい。例えばドクターブレードDの形状が大きく変更するような場合であっても、巻回が可能となり、汎用性を高めることができる。
【0107】
また、巻き取り装置1は例えば、ドクターブレードDが取り付けられる装置(印刷装置、コーティング装置、ドクター装置など)とは別体である場合を例示したがこれに限らず、例えば載置トレー4は、ドクターブレードDが取り付けられる装置(印刷装置、コーティング装置、ドクター装置など)と連結し、これらの装置と一体的に構成されてもよい。
【0108】
また、載置トレー4と排出レール6は、装置高さ方向Hにおいて上下段の位置に、上面視において重なるように配置されなくてもよい。例えば、上面視において載置トレー4と排出レール6は、装置幅方向Wにずれた位置に設けられてもよいし、
図1(B)の正面視において、カバー手段5を挟んで左右に配置されてもよい。
【0109】
また、排出手段6はコイルDCが、中心軸が排出手段6の長手方向(装置長さ方向L)に直交するように、コイルDCの径方向に並ぶように配置可能なレールである場合を例示したが、排出手段6の形状は任意である。例えば、コイルDCが例えばマトリクス状に配置可能な正方形またはそれに近い矩形状や円形などであってもよい。また、十分な深さを有するストッカーなどであってもよい。
【0110】
更に本発明の巻き取り装置1および巻き取り方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【解決手段】 巻き取り装置1は、ドクターブレードDの載置手段4と、載置手段4の下流側に配置されたドクターブレードDの支持手段11と、支持手段11を回転させる操作手段15と、を有し、操作手段15の操作により、支持手段11の周囲にドクターブレードDを巻回させる。