特許第6871469号(P6871469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6871469
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】他社取引を推定する情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/02 20120101AFI20210426BHJP
【FI】
   G06Q40/02
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-152618(P2020-152618)
(22)【出願日】2020年9月11日
【審査請求日】2020年9月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502157442
【氏名又は名称】株式会社浜銀総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】影井 智宏
(72)【発明者】
【氏名】松下 伴理
(72)【発明者】
【氏名】河野 吉晴
(72)【発明者】
【氏名】永井 笑子
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 克也
(72)【発明者】
【氏名】田畑 大地
(72)【発明者】
【氏名】嶋林 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】竹内 雄人
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 雄一
(72)【発明者】
【氏名】杉山 祐樹
【審査官】 宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−031571(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/152087(WO,A1)
【文献】 特開2017−091012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の他社取引を推定する情報処理装置において、
各顧客の取引の品目および金額を記憶する顧客取引データベースと、
各顧客の属性を記憶する顧客属性データベースと、
前記顧客取引データベースから、前記取引における自社金融商品取引に関する品目に対する金額の割合が所定の閾値よりも高い取引シェアの高い顧客と前記所定の閾値よりも低い取引シェアの低い顧客とを抽出する手段と、
前記取引シェアの高い顧客および前記取引シェアの低い顧客の前記自社金融商品取引に関する前記品目および前記金額前記顧客取引データベースから取得する手段と、
前記取引シェアの低い顧客が前記顧客取引データベース上で取引していない品目について、前記属性が類似する前記取引シェアの高い顧客が自社取引している品目および金額を参照して、前記取引シェアの低い顧客品目および金額を推定する手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記取引の品目は、入金の品目、出金の品目の少なくとも1つを含み、
前記入金の品目は、預け入れ、振込による入金の少なくとも1つを含み、
前記出金の品目は、送金、運用、現金払い、公共料金振込、引落、振替の少なくとも1つを含み、
前記属性は、顧客の収入、保有資産、支出の観点で、少なくともそれぞれひとつずつ含むことを特徴とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
他社金融商品に相当する品目と自社金融商品とを関連付けて記憶する自社金融商品データベースと、
前記取引シェアの低い顧客が取引していると推定された品目に相当する自社金融商品を前記自社金融商品データベースから取得して提示する手段と、
を更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
顧客の他社取引を推定する情報処理システムにおいて、
前記情報処理システムは、少なくとも1つのサーバと、複数のクライアントとから構成され、
前記サーバは、
各顧客の取引の品目および金額を記憶する顧客取引データベースと、
各顧客の属性を記憶する顧客属性データベースと、
前記顧客取引データベースから、前記取引における自社金融商品取引に関する品目に対する金額の割合が所定の閾値よりも高い取引シェアの高い顧客と前記所定の閾値よりも低い取引シェアの低い顧客とを抽出する手段と、
前記取引シェアの高い顧客および前記取引シェアの低い顧客の前記自社金融商品取引に関する前記品目および前記金額を前記顧客取引データベースから取得する手段と、
を備え、
前記クライアントは、
前記取引シェアの低い顧客が前記顧客取引データベース上で取引していない品目について、前記属性が類似する前記取引シェアの高い顧客が自社取引している品目および金額を参照して、前記取引シェアの低い顧客品目および金額を推定する手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理システム。
【請求項5】
各顧客の取引の品目および金額を記憶する顧客取引データベースと、
各顧客の属性を記憶する顧客属性データベースと、
に接続された、顧客の他社取引を推定する情報処理装置を実行するためのプログラムにおいて、
前記顧客取引データベースから、前記取引における自社金融商品取引に関する品目に対する金額の割合が所定の閾値よりも高い取引シェアの高い顧客と前記所定の閾値よりも低い取引シェアの低い顧客とを抽出する手段と、
前記取引シェアの高い顧客および前記取引シェアの低い顧客の前記自社金融商品取引に関する前記品目および前記金額を前記顧客取引データベースから取得する手段と、
前記取引シェアの低い顧客が前記顧客取引データベース上で取引していない品目について、前記属性が類似する前記取引シェアの高い顧客が自社取引している品目および金額を参照して、前記取引シェアの低い顧客品目および金額を推定する手段として、
コンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他社取引を推定する情報処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自社のロイヤリティが高いほど、投資商品等の取引品目を増やすことは、営業効率が悪い。なぜならば、そもそも顧客からのニーズがないからである。そのために、このような顧客に対して企業側ができることは、ニーズの早期検知やマス広告をうつことぐらいしかなかった。
【0003】
金融口座を有している自社顧客が、どのような取引をしているのかを把握したいというニーズはあった。また、自社顧客のニーズ(例えば、取引したい金融商品)が把握できれば、そのニーズに応じた金融商品を提案することができる。
【0004】
そのために、営業効率の向上のためには、ニーズ顕在化顧客が誰であるかを知る必要がある。例えば、自社では給与振込やATM(Automatic Teller Machine:自動現金支払機)での少額の出金程度の取引しかなかったが、他社の口座に送金して、その送金額で金融商品を購入して運用している自社顧客がいるとする。このような自社顧客は、自社から見れば取引シェアが低い顧客であるが、そのような自社顧客が他社で取引している金融商品が推定できれば、相当する自社の金融商品を販売できる可能性があることがわかる。
【0005】
しかしながら、他社顧客の潜在需要を把握する適切な手法が確立していなかったために、自社顧客のニーズを適切に把握することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018−195252(特許6453939)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的のひとつは、他社取引を推定する情報処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
他社取引を推定する情報処理装置において、
顧客データベースから、自社における取引シェアの高い顧客を抽出する手段と、
前記取引シェアの高い顧客の取引状況を把握する手段と、
前記取引シェアの高い顧客の取引状況、属性および資金移動した金額に基づいて、取引シェアの低い顧客の他社取引状況を推定する手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
顧客に対して有益な自行金融商品を提案することができるようになる。
【0010】
本発明の他の目的、特徴及び利点は添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例による情報処理装置を示す。
図2】本発明の一実施例によるノンロイヤル顧客の取引を推定する情報処理の一例を示す。
図3】本発明の別の実施例によるノンロイヤル顧客の取引を推定する情報処理の一例を示す。
図4図2または図3の情報処理結果を用いた追加的な情報処理の一例を示す。
図5】本発明の一実施例によるMCIF共同化システムの概略図を示す。
図6図2の情報処理のデータの流れの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施例>
図1は、本発明の一実施例による情報処理装置1000を示す。
【0013】
本実施例の情報処理装置1000は、画面表示部1110と、入力部1120と、顧客管理部1130と、ロイヤル顧客管理部1140と、ノンロイヤル顧客管理部1150と、顧客取引DB(データベース)1210と、顧客属性DB1220と、ロイヤル顧客候補DB1230と、ロイヤル顧客DB1240と、ノンロイヤル顧客DB1250と、制御部1310と、インターフェイス部1320を備える。
【0014】
画面表示部1110は、情報処理装置1000のユーザに対して、データを出力できる。
【0015】
入力部1120は、ユーザが、情報処理装置1000に必要なデータを入力できる。なお、入力部1120は、画面表示部1110と組み合わせたタッチパネルのような電子デバイスでもよい。
【0016】
顧客管理部1130は、顧客全体を管理する。
【0017】
ロイヤル顧客管理部1140は、顧客全体のうち、ロイヤル顧客(候補)に関する情報処理を実行する。
【0018】
ノンロイヤル顧客管理部1150は、顧客全体のうち、ノンロイヤル顧客(候補)に関する情報処理を実行する。
【0019】
顧客取引DB1210は、各顧客の取引の記録を記憶する。
【0020】
顧客属性DB1220は、各顧客の属性(年齢、性別、家族構成、勤務先、資産背景など)を記憶する。
【0021】
ロイヤル顧客候補DB1230は、ロイヤル顧客候補を記憶する。
【0022】
ロイヤル顧客DB1240は、ロイヤル顧客を記憶する。
【0023】
ノンロイヤル顧客DB1250は、ノンロイヤル顧客を記憶する。
【0024】
制御部1310は、情報処理装置1000内の各部を個別に制御したり、各部間でデータの送受信を制御したりする。
【0025】
インターフェイス部1320は、情報処理装置1000の外部と電子的に接続して、データを送受信する。
【0026】
本実施例における金融商品の一例は、預金(普通預金、定期預金(積立等を含む)など)、運用商品(外貨預金、投資信託、NISA(Nippon Individual Savings Account)、公共債・国債など)、ローン(住宅ローン、マイカーローン、教育ローン、リフォームフォーン、フリーローン、カードローンなど)、保険(個人年金保険、養老保険、学資保険、終身保険など)、その他(外貨両替、外国送金、宝くじなど)である。
【0027】
図2は、本発明の一実施例によるノンロイヤル顧客の取引を推定する情報処理の一例を示す。
【0028】
S210では、ロイヤル顧客候補を抽出する。
【0029】
<ロイヤル顧客候補の選択>
本実施例におけるロイヤル顧客候補とは、自社内のサービスの利用率が高い(自社における取引シェアが高い)顧客であり、例えば、顧客が有する口座内において支出された金額の支出の具体的な品目が高い割合(例えば、口座から支出された金額の80パーセント以上が自社サービスに利用されていること)で特定できる顧客であって、(付加的には)所定の条件を満たしている顧客である。ここで、所定の条件とは、例えば、毎月、最低限の支出品目があるという条件でもよいし、さらに、毎月(または所定期間内)に一定以上の収入額があるという条件を加えてもよい。そして、詳細は後述するが、ロイヤル顧客候補の中から、任意のロイヤル顧客を選択する若しくはロイヤル顧客候補から、理想的なロイヤル顧客を仮想的に生成する。
【0030】
なお、本実施例では、「高い」「低い」などの相対的な言葉を使って説明することがあるが、これらの言葉は、当業者であれば理解できるように、「ある閾値よりも高い」「ある別の閾値よりも低い」という意味に解してもよく、「母数全体の上位何パーセント」「母数全体の下位何パーセント」という意味に解してもよい。また、自社サービスに該当する支出品目(支出目的)を予め支出品目データベース(図示せず)に登録しておき、当該データベースを参照することにより、自社サービスの利用率を決定するように構成されてもよい。
【0031】
まず、入金額と出金額のデータを取得して、出金額の中で、顧客の支出目的が特定できないような他の口座(特に、同一名義口座)への送金額が占める比率がゼロ若しくは低い顧客(ロイヤル顧客候補)を抽出する。また、ATM(自動現金支払機)などでの出金額は、上記比率に含めてもよく、その場合には、ATMなどの出金額が、出金額全体の中で、所定値以下であることが好ましく、出金額全体の割合の中でも低いことが更に好ましい。ここで、他行の同一名義口座への送金は、顧客の支出目的が特定できないが、一方で、家賃の振り込みなど、特定名義の口座への送金は、顧客の支出目的が特定できる場合は、上記比率には含めなくてもよい。
【0032】
抽出されたロイヤル顧客候補に対しては、収入(収入元、品目、金額)と支出(支出先、品目、金額)を分類したデータを作成する。例えば、給与振込という品目で振り込まれた場合には、収入元(例えば、会社名)と、品目(例えば、給与振込)、金額を仕分ける。また、定期預金などに毎月自動的に積み立てている場合には、支出先(例えば、自行)、品目(定期預金の利用)、金額を仕分ける。
【0033】
仕分けされたデータは分析される。例えば、支出の品目の割合である。例えば、定期預金の積立額が支出額全体の何%を占めているかを計算する。
【0034】
分析されたデータは、ロイヤル顧客候補の属性と紐付けられて記憶される。ここで、顧客の属性とは、例えば、会社名(勤務先)、年齢、性別、家族構成、資産背景などの任意の組み合わせである。ここで、属性は、当初のデータをそのまま使用せずに、任意のデータベース等を参考にしたり、所定の計算をしたりすることにより、分類してもよい。例えば、会社名は、業種、規模ごとなどで分類してもよく、年齢は、年代などで分類してもよく、家族構成は、配偶者の有無、子供の有無(人数だけでもよく、年齢等を含めてもよい。)などで分類してもよく、資産背景は、所有している現金、株、保険、ローン(借入の有無だけでもよく、借入年数(残年数)、ローンの金利などを含めてもよい。)などで分類してもよい。このような細かい分類をすることにより、他の顧客との比較が一層容易および/または正確になる。
【0035】
なお、ロイヤル顧客候補を判定する期間は任意でよく、例えば、1年間の取引実績の平均でもよいし、毎月判定してもよい。また、データベースに記録されるロイヤル顧客候補のデータの内容は、判定期間に応じて決めてよく、例えば、判定期間が1年間の取引実績の平均の場合は、当該平均に基づいたデータをデータベースに記憶してもよい。
【0036】
S220では、ノンロイヤル顧客を選択する。
【0037】
<ノンロイヤル顧客の選択>
本実施例におけるノンロイヤル顧客とは、例えば、上述したロイヤル顧客以外の顧客であって、所定以上の収入がある顧客ではあるが、当該顧客が有する口座内で支出された金額の支出目的が特定できない顧客である。すなわち、自社における取引シェアの低い顧客である。このような顧客は、自行ではなく、他行の金融口座に資金を移して、その資金で、他行の金融商品を購入(他社取引)している可能性が高い。
【0038】
S230では、選択されたノンロイヤル顧客に類似するロイヤル顧客候補を抽出する。ここで、類似するとは、例えば、顧客の属性データの任意のひとつまたは複数が、互いに合致または互いに所定の範囲内にあることであり、例えば、年代が合致する、収入が所定範囲内にあるなどが挙げられる。
【0039】
S240では、ロイヤル顧客候補から、ロイヤル顧客を生成する。
【0040】
<選択されたノンロイヤル顧客に対応するロイヤル顧客の生成>
ロイヤル顧客の生成方法の別の実施例を以下に、説明する。
【0041】
更に、別の実施例として、上記生成されたロイヤル顧客の品目の一致品目が少なく、ノンロイヤル顧客の使途が推定できない場合にも、以下のような手順で、ロイヤル顧客の条件を変更して、新たなロイヤル顧客を生成してもよい。
【0042】
例えば、ノンロイヤル顧客の使途が明確な品目の割合を特定して、その特定された品目の割合が似ているロイヤル顧客候補を複数抽出し、抽出されたロイヤル顧客候補のデータを上述したような手法で計算して、ロイヤル顧客を生成してもよい。このような実施例の場合には、属性データの一部(例えば、年齢など)も抽出して、属性データの分布の割合(例えば、年代や性別ごとに占める割合)も同時に計算して表示するように構成されてもよい。
【0043】
S250では、生成されたロイヤル顧客に基づいて、ノンロイヤル顧客の取引を推定する。
【0044】
<ノンロイヤル顧客の取引推定>
取引を推定したいノンロイヤル顧客を選択する。ノンロイヤル顧客の選択にあたっては、任意の顧客を直接指定してもよいし、例えば、所定の検索条件(30代男性など)を使って、検索結果の中から選んでもよい。
【0045】
選択されたノンロイヤル顧客のデータを取得して、取得されたデータの中から、取引品目が不明の品目を抽出する。ここで、本実施例における取引品目不明の品目とは、例えば、他行同一名義口座への送金や、所定金額以上のATM出金などである。このような送金や出金は、他の銀行や証券会社などで、他社の金融商品等を購入している可能性があるからである。更に、定期的に(毎月)概ね同一金額のATM出金や他行同一名義口座への振込があれば、その可能性が一層高いと判定してもよい。
【0046】
図2の情報処理におけるノンロイヤル顧客の取引推定の具体例について、以下に説明する。
【0047】
例えば、判定をしたいノンロイヤル顧客が、ある期間(例えば、1ヶ月間)において、給与振込30万円で、住宅ローンを利用しており、他行自己口座に7万円送金しているとする。
【0048】
判定をしたいノンロイヤル顧客の勤務先、家族構成などの属性データを基に、属性が近いロイヤル顧客候補(平均的なロイヤル顧客または確率的に可能性が高いロイヤル顧客候補)を抽出する。ここで、属性データが近いとは、例えば、各属性品目同士を比較して、所定の範囲内に入る(類似する)属性品目の数が所定数以上あるような場合を指す。そして、抽出されたロイヤル顧客候補を基に、所定の条件下で計算をしてロイヤル顧客を生成する。所定の条件とは、例えば、抽出されたロイヤル顧客候補の収入・支出のデータを単純平均してもよいし、任意の条件で重み付けをしてもよい。そして、推定されたロイヤル顧客は、給与振込30万円で、住宅ローンを利用しており、電話料金(固定電話料金+家族の携帯電話料金)の決済に毎月2万円使用しており、積立定期預金を毎月5万円ずつ行っていたとする。
【0049】
そうすると、判定をしたいノンロイヤル顧客が他行自己口座に送金した7万円の内訳は、電話料金の決済の2万円と、積立定期預金の5万円に相当すると推定できる。そして、推定された取引の中で、積立定期預金の5万円に相当する自社金融商品があれば、図6に示すように、このノンロイヤル顧客に提案することができる。
【0050】
さらに、ノンロイヤル顧客への提案結果をフィードバックできるような手段を備えてもよい。例えば、ノンロイヤル顧客への提案が成功した場合(相当する自社金融商品の購入につながった場合)は、属性データの近さの対象範囲が広がるように設定が自動的に構成されてもよく、具体的には、上述した各属性品目同士を比較する際に、所定の範囲内に入る(類似する)属性品目の数が所定数以上あるという判定基準の所定数を広げてもよい。
【0051】
ここで、ロイヤル顧客とノンロイヤル顧客との給与振込額等に差がある場合には、給与振込額に対する住宅ローンや電話料金の割合(パーセント)に基づいて計算してもよい。例えば、ノンロイヤル顧客の給与振込額がロイヤル顧客よりも10%高い場合は、積立定期等の推定額も10%高いと判断してもよい。また、電話料金等は変動費ではなく固定費であると予め設定しておけば、その分、積立定期等の積立額が多くなるように計算されてもよい。また、属性データに差があるときは、その差に応じて、重み付けを変えてもよく、例えば、子供の数が異なるときには、異なる分だけ支出が増減するように重み付けを変えてもよい。
【0052】
推定された情報は、本実施例の情報処理装置の画面表示部等で表示してもよい。これにより、本実施例の情報処理装置のユーザは、推定された情報を基に、判定をしたいノンロイヤル顧客のニーズを把握することができる。例えば、上述した例では、積立定期のサービスを自行でも提供できることを、ノンロイヤル顧客に対してアピールすることができる。
【0053】
なお、上述した実施例では、理解を容易にするために単純な事例を使って説明したが、別の実施例として、判定をしたいノンロイヤル顧客の送金額の内訳を推定するにあたっては、個々の金融商品と確率との組み合わせ(例えば、電話料金2万円+積立定期5万円の確率が70%、電話料金1万円+投資信託購入3万円+積立定期3万円の確率が20%、・・・)を複数提示できるように構成されてもよい。
これにより、選択されたノンロイヤル顧客の使途が推定できる。
【0054】
S260では、推定結果を所定のデータベースに記録したり、画面等に出力したりする。
【0055】
<S250の追加的または代替的な実施例>
ここで、S250の追加的または代替的な実施例について説明する。
【0056】
判定をしたいノンロイヤル顧客の勤務先、家族構成などの属性データを基に、属性が近いロイヤル顧客候補(平均的なロイヤル顧客または確率的に可能性が高いロイヤル顧客候補)を抽出する。
【0057】
まず、判定をしたいノンロイヤル顧客の年齢を基準に、所定の年齢の範囲にあるロイヤル顧客を抽出する。就職、結婚、子育て、リタイヤなどのライフステージが近いと想定できるロイヤル顧客を抽出することができる。
【0058】
次に、家族構成(子供の人数など)を基準に、所定の範囲内にあるロイヤル顧客を抽出する。必要となる支出が近いと想定できる顧客を抽出することができる。
【0059】
次に、勤務先を基準に、同一または類似の規模の会社に勤務しているロイヤル顧客を抽出する。年収などの収入が近いと想定できるロイヤル顧客を抽出できる。
【0060】
次に、資産背景を基準に、例えば預金の総額を基準に、同様の額を有するロイヤル顧客または当該基準の総額以上の預金をしているロイヤル顧客を抽出する。ここで、ノンロイヤル顧客の資産総額の推定制度を高めるために、預金額だけでなく、各種保険の加入状況や金融商品の時価評価などを個別に比較してもよい。更に、(住宅や自動車などの)ローンの内容や自動車の有無なども考慮してもよい。
【0061】
上述したような抽出を全て上述した順番に沿って実施しなくてもよいが、このような抽出を複数組み合わせることにより、より属性データが近いロイヤル顧客を抽出することができる。
【0062】
なお、上述した属性データの対象項目は、顧客の収入(年齢、勤務先など)、保有資産(預金、保険など)、支出(家族構成など)の観点で、それぞれの観点から最低1つの属性データが選定されてもよい。このような選定をすることで、広い観点で、より正確に顧客の取引を推定することができるからである。
【0063】
図3は、本発明の別の実施例によるノンロイヤル顧客の取引を推定する情報処理の一例を以下で説明する。なお、図2と重複する内容については適宜省略する。
【0064】
S310では、所定の条件に基づき、ロイヤル顧客候補を抽出する。
【0065】
S320では、ロイヤル顧客候補からロイヤル顧客を生成する。
【0066】
<選択されたノンロイヤル顧客に対応するロイヤル顧客の生成>
選択されたノンロイヤル顧客の属性データに対応するロイヤル顧客候補のデータを取得する。例えば、選択されたノンロイヤル顧客の属性データが30代男性である場合は、複数の30代男性のロイヤル顧客候補のデータを取得する。
【0067】
取得されたロイヤル顧客候補の各データを基に、ロイヤル顧客を生成する。例えば、複数のロイヤル顧客候補の各データを単純に平均してもよいし、所定の重みをつけるなどをした加重平均をしてもよい。このような手法によって計算されたロイヤル顧客は、理想的なロイヤル顧客となる。
【0068】
次に、ロイヤル顧客の品目とノンロイヤル顧客の品目とを比較する。ここでは、ロイヤル顧客もノンロイヤル顧客も、属性データが一致するので、支出の品目の金額などの多少の違いはあるにせよ、両者の品目は似ているものと仮定する。
【0069】
比較の結果、ノンロイヤル顧客の使途不明の品目に対応するのが何であるのかが、ロイヤル顧客の品目から推定できる。本実施例においては、例えば、使途不明の品目が、投資信託の購入であると推定できたと仮定する。
【0070】
上記推定により、推定対象となるノンロイヤル顧客は、投資信託の購入のために、他行の同一名義口座へ送金している可能性が高いと判断されて、その判断結果を出力する。
【0071】
金融機関の担当者は、判断結果を基に、推定対象となったノンロイヤル顧客に対して、自行で提供している金融商品を勧めることができる。
【0072】
S330では、任意のロイヤル顧客を選択する。例えば、自社商品(投資信託など)を購入してほしい顧客を探したい場合は、自社商品(投資信託など)を購入している比率の高いロイヤル顧客を選択すればよい。
【0073】
S340では、選択されたノンロイヤル顧客の属性データと比較して、類似する属性データを有するノンロイヤル顧客を選択する。ここで、選択されるノンロイヤル顧客は、複数でもよい。
【0074】
S350では、ロイヤル顧客の取引内容と比較して、選択されたノンロイヤル顧客の取引を推定する。
【0075】
S360では、推定結果を所定のデータベースに記録したり、画面等に出力したりする。
【0076】
図2は、選択されたノンロイヤル顧客を基準に、類似するロイヤル顧客を検索するという情報処理である。一方、図3は、仮想的なロイヤル顧客を予め準備しておき、当該準備されたロイヤル顧客を基準に、類似するノンロイヤル顧客を検索するという情報処理である。図2は、推定したいノンロイヤル顧客が予め決まっている場合に有効な情報処理であり、図3は、推定したい品目が予め決まっている場合に有効な情報処理である。
【0077】
図4は、図2または図3の情報処理結果を用いた、追加的な情報処理の一例を示す。
S410では、取引が推定されたノンロイヤル顧客のデータベースを構築する。
【0078】
S420は、推定された取引品目を選択する。
【0079】
S430では、推定された取引品目を有しているノンロイヤル顧客を抽出する。
【0080】
S440では、抽出されたノンロイヤル顧客の一覧を作成する。
【0081】
<追加的な実施例>
以下では、図1、2の実施例の追加的な実施例の一例を説明する。
【0082】
本実施例では、S350で推定されたノンロイヤル顧客の取引の中で、他社で取引されている特定の商品項目(本実施例では、金融商品)を利用する処理の一例を示す。
【0083】
S350で推定された他社取引が、ある特定のテーマに投資する投資信託5万円だったとする。この投資信託に相当する金融商品が自社商品の中にあるかどうかを、自社金融商品データベースで検索する。ここで、自社金融商品データベースは、自社金融商品名と他社金融商品名との対応関係を示したテーブルを予め記憶しておいてもよい。そして、投資対象などの観点で同一または類似の金融商品が自社金融商品データベース内にあれば、当該同一または類似の金融商品を、ノンロイヤル顧客に提示できるように構成されてもよい。
【0084】
<MCIF共同化システム>
図5は、本発明の一実施例によるMCIF共同化システム2000の概略図を示す。
【0085】
なお、実施例の図1等と同じ参照符号は、同じ機能を有するものを指し示すので、説明を省略する。
【0086】
本実施例のMCIF共同化システムとは、特定の情報(MCIF)を複数の金融機関などで共同管理するためのシステムを意味する。ここで、MCIFとは、Marketing Customer Information Fileの略称であり、マーケティング用の顧客情報のファイルを意味する。本実施例によれば、共有サーバを設けて、所定の情報を共有することにより、互いの情報を組み合わせて所望の情報を自動的に構築することができるようになる。
【0087】
本実施例のMCIF共同化システム2000は、各銀行の情報処理装置1000とネットワーク3000を介して接続されている。ここで、各銀行の情報処理装置1000の一例については、図1で示したとおりである。ネットワーク3000は、有線または無線で、電気的、電磁的、光学的に信号を送受信するためのものである。
【0088】
本実施例のMCIF共同化システム2000は、管理サーバ2100と、ロイヤル顧客管理部1150と、複数の銀行用ロイヤル顧客候補DB1230とを備える。ここで、図示するように、複数の銀行用ロイヤル顧客候補DB120は、銀行毎に個別に用意されており、定期的または任意のタイミングで、各銀行に設置されているロイヤル顧客候補DB1230(図示せず)からデータが送信されて、互いに同期をとるように構成されている。このように複数のDBを活用することにより、ロイヤル顧客の取引状況などを一層詳しく把握することができる。
【0089】
管理サーバ2100は、各金融機関の情報処理装置1000とデータを送受信したり(インターフェイスの機能を有する)、MCIF共同化システム2000内部の各部を制御したりする。
【0090】
このような構成により、例えば、各金融機関の情報処理装置1000が、MCIF共同化システム2000に対して、ロイヤル顧客の抽出や、取引状、況属性および資金移動した金額について問い合わせることができる、そして、各金融機関の情報処理装置1000は、問い合わせに対する応答を受信して、ノンロイヤル顧客を推定することができる。
【0091】
本実施例のMCIF共同化システム2000を使用することにより、単体の情報処理装置1000では不明な情報を補間することができ、例えば、必要な情報が自社に少ないまたは全くない場合であっても、他行の情報を活用することで、高い精度でノンロイヤル顧客などの判断材料とすることができる。
【0092】
なお、図5に記載された構成全体が1つの情報処理システムと捉えた場合には、本実施例のMCIF共同化システム2000がサーバであり、各銀行の情報処理装置がクライアントであることが当業者であれば理解できる。
【0093】
以上のように本発明の実施形態の一部について説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の説明に基づいて当業者が種々の修正又は変形が可能である。例えば、ハードウェアによる構成をソフトウェア(プログラム)で実現できるように構成されてもよい。
【0094】
また、上述した実施例では、為替取引情報に関する金融取引データを利用して、家系に関する情報を特定してマップを生成したが、個人名や法人名、年齢などの情報が利用できるのであれば、金融取引データ以外のデータを利用しても本発明が適用可能である。例えば、別の実施例として、SNS(Social Networking Services)でも適用可能であり、SNSのユーザ間で送受信されたデータ内の情報(送信先/受信先情報や送金情報など)や、各ユーザの属性情報(氏名、生年月日、住所、活動履歴など)を用いて、法人管理番号情報マップを作成してもよい。
【0095】
<第2の実施例>
本実施例では、スーパーマーケットの事例について、図3を参照しつつ、説明する。
【0096】
本実施例では、毎月所定金額以上の商品を購入している顧客をロイヤル顧客候補であり、それ以外をノンロイヤル顧客であると判定する(図3のS310を参照)。
【0097】
ロイヤル顧客候補の中から任意のロイヤル顧客を選択するか、仮想的なロイヤル顧客を生成する(図3のS320、S330を参照)。
【0098】
ロイヤル顧客が有している会員カードの属性データから、属性が類似するノンロイヤル顧客を検索する(図3のS340を参照)。
【0099】
ロイヤル顧客の購入実績を基に、ノンロイヤル顧客が他のスーパーマーケットやドラッグストアで購入している商品を推定する(図3のS350を参照)。
【0100】
推定結果を任意のデータベースに記録し、ノンロイヤル顧客に対しては、当該推定された商品についての販促のメールを送信したり、特別の割引券を発行したりする(図3のS360を参照)。
【0101】
<第3の実施例>
第1の実施例では、理想のロイヤル顧客を仮想的に生成することで、ノンロイヤル顧客の取引を推定する実施例について説明したが、別の実施例として、特定のロイヤル顧客を決めて、その特定のロイヤル顧客と属性が同一または類似のノンロイヤル顧客の取引を推定するような情報処理も実現可能である。特定のロイヤル顧客を予め決めることにより、属性データが近いノンロイヤル顧客をピンポイントに特定することができるからである。
【0102】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、本願明細書で示した実施例以外の様々な産業や技術分野で利用することが可能である。例えば、本発明は、ロイヤルカスタマ(Loyal Customer)やメンタルアカウンティング(Mental Accounting)やカスタマーエクイティ(Customer Equity)やデジタルトランスフォーメーション(Digital transformation; DX)やトランザクションレンディング(Transaction Lending)関連の装置やプログラムとして、様々な金融機関のスコアリングや営業支援システムに組み込むことが可能である。
【要約】
【課題】他社取引を推定する情報処理装置を提供する。
【解決手段】他社取引を推定する情報処理装置において、
顧客データベースから、自社における取引シェアの高い顧客を抽出する手段と、
前記取引シェアの高い顧客の取引状況を把握する手段と、
前記取引シェアの高い顧客の取引状況および属性に基づいて、取引シェアの低い顧客の他社取引状況を推定する手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置を提供する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6