特許第6871475号(P6871475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6871475流動床ボイラー設備及び流動床ボイラー設備において燃焼ガスを予熱する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871475
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】流動床ボイラー設備及び流動床ボイラー設備において燃焼ガスを予熱する方法
(51)【国際特許分類】
   F23L 15/00 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   F23L15/00 Z
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-501320(P2020-501320)
(86)(22)【出願日】2017年7月27日
(65)【公表番号】特表2020-528535(P2020-528535A)
(43)【公表日】2020年9月24日
(86)【国際出願番号】FI2017050555
(87)【国際公開番号】WO2019020864
(87)【国際公開日】20190131
【審査請求日】2020年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】506425251
【氏名又は名称】スミトモ エスエイチアイ エフダブリュー エナージア オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ケットゥネン,アリ
(72)【発明者】
【氏名】ルースカネン,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】スンドクヴィスト,クリスター
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−267154(JP,A)
【文献】 特開2001−153347(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102506412(CN,A)
【文献】 特開2012−242030(JP,A)
【文献】 特開平06−212910(JP,A)
【文献】 特開2006−194466(JP,A)
【文献】 特開平07−071702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 15/00
F22G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動床ボイラー設備(10)であって、燃焼ガスチャネルを介して炉に供給される燃焼ガスによって燃料を燃焼させるための炉(12)及び燃焼ガスチャネル(24、24b)、並びに、蒸発器セクション(26)と、最後の過熱器(30’、30”、32’)及び蒸気タービン(34、36)、及び、前記蒸発器セクション(26)から過熱器セクションを介して前記蒸気タービンへと蒸気を伝搬するための過熱パスを備える、前記蒸発器セクションとフロー接続された過熱器セクションと、前記燃焼ガスへ熱を伝達するために前記燃焼ガスチャネル内に配置された第1の燃焼ガス予熱器(38、38b)と、を備える、水・蒸気サイクルを備え、前記流動床ボイラー設備は、前記燃焼ガスチャネル内に配置された第2の燃焼ガス予熱器(40、40b)と、前記第2の燃焼ガス予熱器とフロー接続で取り付けられ、また、前記蒸気からの熱を前記第2の燃焼ガス内の前記燃焼ガスへ伝達するように、前記過熱パスから前記第2の燃焼ガス予熱器へと蒸気を伝搬するために、前記最後の過熱器の上流位置における前記過熱パスとフロー接続で取り付けられた、蒸気抽出ライン(44、46、46’、46”、46b)と、を備えることを特徴とする、流動床ボイラー設備。
【請求項2】
前記第2の燃焼ガス予熱器(40、40b)は、前記第1の燃焼ガス予熱器(38、38b)の下流の前記燃焼ガスチャネル内に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の流動床ボイラー設備。
【請求項3】
前記燃焼ガスチャネルは、前記第2の燃焼ガス予熱器を介して進む前記燃焼ガスチャネルの一部と並列な、前記第2の燃焼ガス予熱器の迂回チャネル(24’、24b’)を備え、前記迂回チャネルと前記第2の燃焼ガス予熱器を介して進む前記燃焼ガスチャネルの前記一部とのうちの少なくとも1つは、前記迂回チャネル内、及び前記第2の燃焼ガス予熱器を介して進む前記燃焼ガスチャネルの前記一部内の、前記燃焼ガスのフローの前記比を調節するための、調節弁(42、42’、42b’)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の流動床ボイラー設備。
【請求項4】
前記蒸気抽出ラインは、前記蒸気抽出ラインにおける蒸気フローを調節するための調節弁(48、48’、48”、48b)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の流動床ボイラー設備。
【請求項5】
前記過熱パスは第1の過熱器(30)を備え、前記蒸気抽出ライン(44、46、46’、46”、46b)は、前記第1の過熱器と前記最後の過熱器との間の位置において前記過熱パスとフロー接続されることを特徴とする、請求項1に記載の流動床ボイラー設備。
【請求項6】
前記過熱パスは、前記第1の過熱器(30)と前記最後の過熱器(30”)との間に中央過熱器(30’)を備え、前記蒸気抽出ラインは、前記第1の過熱器と前記中央過熱器との間の位置において前記過熱パスとフロー接続される第1の分岐(46)、及び、前記中央過熱器と前記最後の過熱器との間の位置において前記過熱パスとフロー接続される第2の分岐(46’)を備えることを特徴とする、請求項5に記載の流動床ボイラー設備。
【請求項7】
前記蒸気抽出ラインの前記第1の分岐及び前記蒸気抽出ラインの前記第2の分岐の各々は、前記蒸気抽出ラインの前記それぞれの分岐内の蒸気フローを調節するための調節弁(48、48’)を備えることを特徴とする、請求項6に記載の流動床ボイラー設備。
【請求項8】
ボイラー設備は、1次燃焼ガスチャネル(24)及び2次燃焼ガスチャネル(24b)を備え、前記1次及び2次の燃焼ガスチャネルの各々は、第2の燃焼ガス予熱器(40、40b)を備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の流動床ボイラー設備。
【請求項9】
流動床ボイラー設備(10)内の燃焼ガスを予熱する方法であって、前記流動床ボイラー設備は、燃焼ガスチャネルを介して炉に供給される燃焼ガスによって燃料を燃焼させるための炉(12)及び燃焼ガスチャネル(24、24b)、並びに、蒸発器セクション(26)と、最後の過熱器(30’、30”、32’)、蒸気タービン(34、36)、及び、前記蒸発器セクション(26)から前記過熱器セクションを介して前記タービンへと蒸気を伝搬するための過熱パスを備える、前記蒸発器セクションとフロー接続された過熱器セクションと、前記燃焼ガスチャネル内に配置された第1の燃焼ガス予熱器(38、38b)と、を備える、水・蒸気サイクルを備え、前記流動床ボイラー設備は、前記燃焼ガスチャネル内に配置された第2の燃焼ガス予熱器(40、40b)と、前記第2の燃焼ガス予熱器とフロー接続で取り付けられ、また、前記最後の過熱器の上流位置における前記過熱パスとフロー接続で取り付けられた、蒸気抽出ライン(44、46、46’、46”、46b)とを備え、燃焼ガスを予熱するための前記方法は、前記第1の燃焼ガス予熱器内の前記燃焼ガスへ熱を伝達すること、前記最後の過熱器の上流位置から前記蒸気抽出ラインを介して前記第2の燃焼ガス予熱器へと前記過熱パスから蒸気を伝搬すること、及び、前記蒸気からの熱を前記第2の燃焼ガス予熱器内の前記燃焼ガスへ伝達することを含むことを特徴とする、流動床ボイラー設備内の燃焼ガスを予熱する方法。
【請求項10】
前記燃焼ガスへ熱を伝達することは、第1に前記第1の燃焼ガス予熱器(38、38b)内で、及び、次いで前記第2の燃焼ガス予熱器(40、40b)内で実行されることを特徴とする、請求項9に記載の流動床ボイラー設備内の燃焼ガスを予熱する方法。
【請求項11】
燃焼ガスを追加に予熱することは、前記流動床ボイラー設備の低負荷動作の間、前記蒸気抽出ラインを介して前記第2の燃焼ガス予熱器へ過熱蒸気を抽出することによって実行されることを特徴とする、請求項9に記載の流動床ボイラー設備内の燃焼ガスを予熱する方法。
【請求項12】
前記燃焼ガスチャネルは、前記第2の燃焼ガス予熱器を介して進む前記燃焼ガスチャネルの一部と並列な、前記第2の燃焼ガス予熱器の迂回チャネル(24、24b)を備え、前記迂回チャネルと前記第2の燃焼ガス予熱器を介して進む前記燃焼ガスチャネルの前記一部とのうちの少なくとも1つは、前記迂回チャネル内、及び前記第2の燃焼ガス予熱器を介して進む前記燃焼ガスチャネルの前記一部内の、前記燃焼ガスのフローの前記比を調節するための、調節弁(42、42’、42b’)を備え、低負荷動作において、前記調節弁は、前記第2の燃焼ガス予熱器を介して燃焼ガスを伝搬するように制御されることを特徴とする、請求項11に記載の流動床ボイラー設備内の燃焼ガスを予熱する方法。
【請求項13】
前記蒸気抽出ラインは、前記蒸気抽出ラインにおける蒸気フローを調節するための調節弁(48、48’、48”、48b)を備え、低負荷動作において、前記調節弁は、前記蒸気抽出ラインを介して前記第2の燃焼ガス予熱器へ蒸気を伝搬するように制御されることを特徴とする、請求項11に記載の流動床ボイラー設備内の燃焼ガスを予熱する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 技術分野
【0002】
[0002] 本発明は、隣接する独立請求項のプリアンブルに従った、流動床ボイラー設備、及び、流動床ボイラー設備において燃焼ガスを予熱する方法に関する。より詳細には、本発明は、流動床ボイラー設備、及び、特に低い負荷でのボイラー設備の有利な動作を可能にする、流動床ボイラー設備において燃焼ガスを予熱する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 現在、流動床ボイラーはしばしば、大きく変動する負荷需要を満たすことが求められており、したがって、ボイラーを非常に低い負荷で動作させることも求められている。従来の流動床ボイラーは、典型的には全負荷の約40%の最小負荷を有するが、現在ではしばしば、例えば全負荷の30〜20%の更に低い負荷で流動床ボイラーを動作させることが望ましい。従来の流動床ボイラーを非常に低い負荷で動作させることは、通常、環境への排出量を最小にするための十分なレベルで炉内の床温度を保持するため、及び、蒸気温度を蒸気タービンが必要とするレベルで維持するための、要件によって妨げられる。流動化空気ノズルを介する空気流量を必要最小限に保持するために、流動床ボイラーはしばしば、低いボイラー負荷で、全負荷の場合よりも高い空気係数によって動作され、炉の温度を更に低下させる傾向がある。
【0004】
[0004] 低負荷動作において炉の温度を許容レベルに保持するための従来の方法は、耐火物を炉に加えることであるが、それによって全負荷動作の間にも炉内の温度レベルは上昇する。全負荷動作において炉の温度を妥当なレベルに制限するために、再循環煙道ガスがしばしば燃焼空気と共に炉に送られる。しかしながら、これによって、ガス再循環パスの投資費用が増加し、総排出ガスフローが増加することによって必要となる熱表面が大きくなり、再循環ガスファン及び煙道ガスファン内の補助電力消費が増加することになる。
【0005】
[0006] 国際公開第WO2011/076994号は、蒸気による始動及び部分負荷状況における空気を間接的に予熱することを教示している。特開昭58−37422号公報は、ボイラーの負荷変更に基づいて燃焼空気温度を自動的に制御することが可能な、蒸気式予熱器システムを示す。国際公開第WO2011/076994号及び特開昭58−37422号公報は空気予熱に用いられる蒸気の発生源は定義していない。特開平10−332106号公報は、タービン低圧抽出蒸気を蒸気式空気加熱器において熱源として使用することにより、低負荷における設備効率を向上させることを教示している。欧州特許第EP0724683号明細書、国際公開第WO94/19645号、及び米国特許第US4,976,107号明細書は、蒸気タービンから抽出されるブリード蒸気のみによって燃焼空気を予熱することを教示している。米国特許出願公開第US2012/0129112号明細書は、超高温蒸気生成オキシ燃料燃焼ボイラーの酸化剤ガスを、超高温蒸気の一部からの熱によって予熱することを教示している。
【0006】
[0006] 国際公開第WO2011/076994号は、蒸気による始動及び部分負荷状況における空気を間接的に予熱することを教示している。特開昭58−37422号公報は、ボイラーの負荷変更に基づいて燃焼空気温度を自動的に制御することが可能な、蒸気式予熱器システムを示す。国際公開第WO2011/076994号及び特開昭58−37422号公報は空気予熱に用いられる蒸気の発生源は定義していない。特開平10−332106号公報は、タービン低圧抽出蒸気を蒸気式空気加熱器において熱源として使用することにより、低負荷における設備効率を向上させることを教示している。欧州特許第EP0724683号明細書、国際公開第WO94/19645号、及び米国特許第US4,976,107号明細書は、蒸気タービンから抽出されるブリード蒸気のみによって燃焼空気を予熱することを教示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007] 本発明の目的は、流動床ボイラー設備と、環境への排出量を最小限にし、蒸気温度を蒸気タービンが必要とするレベルで維持しながら、非常に低いボイラー負荷を含む異なるボイラー負荷においてボイラー設備の効率的且つ経済的な動作を可能にする、流動床ボイラー設備において燃焼空気を予熱する方法とを、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008] 一態様によれば、本発明は、燃焼ガスチャネルを介して炉に供給される燃焼ガスによって燃料を燃焼させるための炉及び燃焼ガスチャネル、並びに、蒸発器セクションと、最後の過熱器、及び蒸気タービン、及び、蒸発器セクションから過熱器セクションを介して蒸気タービンへと蒸気を伝搬するための過熱パスを備える、蒸発器セクションとフロー接続された過熱器セクションと、燃焼ガスへ熱を伝達するために燃焼ガスチャネル内に配置された第1の燃焼ガス予熱器とを備える、水・蒸気サイクルを備える、流動床ボイラー設備を提供し、流動床ボイラー設備は、燃焼ガスチャネル内に配置された第2の燃焼ガス予熱器と、第2の燃焼ガス予熱器とフロー接続で取り付けられ、また、蒸気からの熱を第2の燃焼ガス内の燃焼ガスへ伝達するように過熱パスから第2の燃焼ガス予熱器へと蒸気を伝搬するために、最後の過熱器の上流位置における過熱パスとフロー接続で取り付けられた、蒸気抽出ラインとを、備える。
【0009】
[0009] 別の態様によれば、本発明は、流動床ボイラー設備内の燃焼ガスを予熱するための方法を提供し、流動床ボイラー設備は、燃焼ガスチャネルを介して炉に供給される燃焼ガスによって燃料を燃焼させるための炉及び燃焼ガスチャネル、並びに、蒸発器セクションと、最後の過熱器、蒸気タービン、及び、蒸発器セクションから過熱器セクションを介して蒸気タービンへと蒸気を伝搬するための過熱パスを備える、蒸発器セクションとフロー接続された過熱器セクションと、燃焼ガスチャネル内に配置された第1の燃焼ガス予熱器とを備える、水・蒸気サイクルを備え、流動床ボイラー設備は、燃焼ガスチャネル内に配置された第2の燃焼ガス予熱器と、最後の過熱器の上流位置における過熱パスとフロー接続で取り付けられ、また、第2の燃焼ガス予熱器とフロー接続で取り付けられた、蒸気抽出ラインとを備え、燃焼ガスを予熱するための方法は、第1の燃焼ガス予熱器内の燃焼ガスへ熱を伝達すること、最後の過熱器の上流位置から蒸気抽出ラインを介して第2の燃焼ガス予熱器へと過熱パスから蒸気を伝搬すること、及び、蒸気からの熱を第2の燃焼ガス予熱器内の燃焼ガスへ伝達することを含む。
【0010】
[0010] 流動床ボイラーの燃焼ガス、実際には燃焼空気又は別の酸素ガス混合物は、ボイラーの炉に送られる前に、燃焼ガス予熱器において従来方式で予熱される。従来の燃焼ガス予熱器、通常は、再生式空気予熱器又は管状空気予熱器は、炉から放出される煙道ガスからの熱を燃焼ガスに伝達するために、燃焼ガスチャネル内に、又はより精密には、燃焼ガスチャネル及び煙道ガスチャネルと接続して配置される。燃焼ガス予熱器は、いくつかの場合、代替として給水からの熱を燃焼ガスに伝達する予熱器などの、別のタイプとすることができる。
【0011】
[0011] 本発明の主な特徴は、流動床ボイラー設備が、以下、第1の燃焼ガス予熱器と呼ばれる従来の燃焼ガス予熱器に加えて、第2の燃焼ガス予熱器も備えることである。第1の燃焼ガス予熱器は、有利には、煙道ガス燃焼ガス予熱器、すなわち、煙道ガスからの熱を燃焼ガスに伝達する予熱器であるが、代替として、例えば給水空気予熱器とすることが可能である。第2の燃焼ガス予熱器は、蒸気燃焼ガス予熱器、すなわち、蒸気フローからの熱を燃焼ガスに伝達する予熱器である。本発明によれば、熱伝達蒸気は、蒸気抽出ラインを介して過熱パスから抽出され、蒸気抽出ラインは、最後の過熱器の上流位置で過熱パスに接続される。第2の燃焼ガス予熱器は、有利には、第1の燃焼ガス予熱器の下流の燃焼ガスチャネル内に配置される。それによって、燃焼ガスの温度は第2の燃焼ガス予熱器内で、例えば250℃から300℃へと上昇することができる。
【0012】
[0012] 蒸気抽出ラインは、有利には、蒸気抽出ライン内の蒸気フローを調節するための調節弁を備える。本発明の好ましい実施形態によれば、上記で定義された追加の空気予熱は、特に、低負荷動作の間に使用される。それによって、第2の燃焼ガス予熱器が使用され、すなわち、流動床ボイラー設備を、最大負荷の30〜20%などの非常に低い負荷で動作させることが望ましい場合、過熱パスから第2の燃焼ガス予熱器へ蒸気を抽出するように、調節弁が開けられる。
【0013】
[0013] 上記に定義された燃焼ガスの追加の予熱の結果として、更なる熱が燃焼空気を介して燃焼プロセスに導入され、より高い炉温度に達する。したがって、低すぎる床温度を回避すること、すなわち、非常に低い負荷であっても、環境への排出量を低いレベルで維持するために望ましいレベルで炉内の床温度を保持することが可能である。より高い燃焼空気の温度に起因して、より低い空気流量で燃焼ガスノズル内の最低速度が達成可能であり、結果としてより低い空気係数、及びしたがってより高い炉温度が生じる。炉内の耐火物の厚みを増加させる必要なしに、低いボイラー負荷において十分な炉温度に達するため、煙道ガスの再循環なしに、又は再循環が減少した状態で、高いボイラー負荷において温度を適切なレベルで保持することができる。したがって、本発明は、ボイラーを非常に低い負荷で動作させることを可能にし、高い負荷動作のための動作及び製造費用を低減させる。
【0014】
[0014] 代替として、上記で定義された以外の他の手段、例えば、給水、ボイラー水、又は蒸気タービンから抽出されたブリード蒸気からの熱を燃焼ガスに伝達することによっても、燃焼ガス温度を上昇させることが可能である。しかしながら、本発明に従って、最後の過熱器の上流位置における過熱パスから抽出された蒸気を使用することで、最後の過熱器内、又は、蒸気抽出位置の下流の過熱パス内にあるすべての過熱器内の蒸気フローが減少するという、追加の利点が提供される。これによって蒸気は、それぞれの過熱器内で、蒸気抽出を使用しない場合よりも高い温度まで過熱される。したがって本発明は、非常に低い負荷であっても、最終蒸気温度を蒸気タービンが必要とするレベルで保持することも可能にする。
【0015】
[0015] 燃焼ガスチャネル内の追加の圧力損失を回避するために、第2の燃焼ガス予熱器は、有利には迂回チャネルを有することが可能であり、第2の燃焼ガス予熱器が使用されていないとき、燃焼ガスはこの迂回チャネルを介して送られる。それによって、第2の燃焼ガス予熱器へと通じる迂回チャネル及び/又はチャネル分岐は、有利には、それぞれのチャネル部分における燃焼ガスフローを制御するためのダンパを備える。
【0016】
[0016] ボイラー設備は、高圧蒸気タービン及び低圧蒸気タービンなどの複数の蒸気タービンを備えることが可能であり、それによって過熱パスも1つ以上の蒸気再加熱器を備える。その場合、最終過熱器は最終蒸気再加熱器であり、蒸気抽出ラインは、最終蒸気再加熱器の上流の過熱パス内の位置に接続される。本発明の有利な実施形態によれば、過熱パスは複数の蒸気過熱器及び複数の蒸気再加熱器を備え、蒸気抽出ラインは、最終蒸気過熱器の上流位置に接続された少なくとも1つの分岐、及び、最終蒸気再加熱器の上流位置に接続された少なくとも1つの分岐を備える。特に有利なことに、蒸気抽出ラインは、2つの蒸気過熱器間の位置に接続された少なくとも1つの分岐、及び、2つの蒸気再加熱器間の位置に接続された少なくとも1つの分岐を備える。過熱パスが、例えば3つの直列に接続された蒸気過熱器を備える場合、蒸気抽出ラインは、有利には、最後の2つの蒸気過熱器間の位置に接続された1つの分岐、及び、最初の2つの蒸気再加熱器間の位置に接続された第2の分岐を備える。
【0017】
[0017] 前述の本発明は、単一の燃焼ガスチャネルに関連して説明しているが、本発明は、複数の燃焼ガスチャネルとの関連でも同様に適用可能であることを理解されよう。こうした複数の燃焼ガスチャネルは、例えば、1次燃焼ガスチャネル及び2次燃焼ガスチャネルを備えることが可能であり、そのどちらも、前述のような本発明に従った燃焼ガス予熱配置を備える。
【0018】
[0018] 低負荷で炉に入力される熱の増加に起因して、炉内には温度レベルを保持するための追加の耐火物は不要である。したがって、全負荷でガスを再循環させる必要性は低下し、結果として、再循環ガスファン及び煙道ガスファンにおける補助電力消費は減少することになる。総排出ガスフロー、すなわち煙道ガスフロー及び再循環ガスフローの低下に起因して、適切な煙道ガスエンド温度を達成するために必要な熱表面は少なくなり、結果として投資費用が減少することになる。
【0019】
[0019] 本発明の上記の簡単な説明、並びに更なる目的、特徴、及び利点は、現時点で好ましいが、それでもなお例示的な、本発明に従った実施形態の下記の詳細な説明を、添付の図面と共に参照することによって、更に完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】[0020]本発明の好ましい実施形態に従った、流動床ボイラー設備を概略的に示す図である。
図2】[0021]本発明の別の好ましい実施形態に従った、流動床ボイラー設備を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0022] 図1の略図は、本発明の好ましい実施形態に従った流動床ボイラー設備10を概略的に示し、ボイラー設備は、炉12、戻りレグ16を伴うサイクロン分離器14、及び、熱回収エリア20を伴う煙道ガスチャネル18を備える。炉の下部には、炉に燃料を送るためのフィーダ22、及び、炉内の燃料及び流動床粒子を燃焼させるために空気又は他の酸素ガスなどの燃焼ガスを送るための燃焼ガスチャネル24が接続される。炉及びボイラー設備は、硫黄結合剤又は不活性床粒子を炉に送るための手段、煙道ガス及び燃焼ガスを伝搬するためのファン、並びに、煙道ガスをクリーニングするための機器などの、多くの他の従来の要素も備えるが、それらは本発明に関連していないため図1には示されていない。
【0022】
[0023] 蒸気は、炉の筐体壁内に配置された蒸発器セクション26と、複数の直列に接続された過熱器30、30’、30”及び再加熱器32、32’を備える、蒸発器セクションとフロー接続された過熱器セクションとを備える、水・蒸気サイクルにおいて、貫流ボイラー設備10を介して生成される。第1及び第2の過熱器30、30’及び再加熱器32、32’は熱回収エリア20内に配置され、最後の過熱器30”は戻りレグ16内に配置される。しかしながら、当業者であれば周知のように、ボイラー設備における過熱器及び再加熱器の数及び位置は異なってもよい。蒸気は、蒸発器セクション26から過熱器30、30’、及び30”を介して高圧蒸気タービン34へと伝搬され、また、高圧蒸気タービン34から再加熱器32及び32’を介して低圧蒸気タービン36へと伝搬される。下記において、蒸発器セクション26から最後の蒸気タービンへの蒸気パスは過熱パスと呼ばれる。
【0023】
[0024] 煙道ガスチャネル18の熱回収エリア20は、煙道ガスからの熱を燃焼ガスチャネル24内の燃焼ガスストリームへと伝達するための、従来の第1の燃焼ガス予熱器38も備える。第1の燃焼ガス予熱器38は、図1では管状空気予熱器として示されているが、例えば再生式空気予熱器とすることも可能である。いくつかの実施形態において、第1の燃焼ガス予熱器は、煙道ガスから燃焼ガスへと熱を伝達しないが、蒸気・水サイクルの給水などの別の熱源から伝達することも可能である。
【0024】
[0025] 図1に示される流動床ボイラー設備は、燃焼ガスチャネル24内に配置された第2の燃焼ガス予熱器40も備える。燃焼ガスチャネル24は、第2の燃焼ガス予熱器40を迂回するための迂回チャネル24’を備える。第2の燃焼ガス予熱器40並びに迂回チャネル24’を介して進む燃焼ガスチャネルの分岐は、それぞれ第2の燃焼ガス予熱器40を介する燃焼ガスフローと迂回チャネル24’を介する燃焼ガスフローとの比を調節するために、調節弁42、42’をそれぞれ備える。
【0025】
[0026] 本発明によれば、燃焼ガスは、少なくとも1つの過熱器の上流の少なくとも1つの位置における過熱パスから蒸気抽出ライン44に沿って抽出された蒸気によって、第2の燃焼ガス予熱器40内で予熱される。図1に示される実施形態において、蒸気抽出ラインは、第1と第2の過熱器30、30’間の過熱ラインに接続された第1の分岐46、第2と最後の過熱器30’、30”間の過熱ラインに接続された第2の分岐46’、及び、第1と第2の再加熱器32、32’間の過熱ラインに接続された第3の分岐46”を備える。蒸気抽出ラインの第1、第2、及び第3の分岐46、46’、46”の各々は、それぞれ、フロー調節弁48、48’、及び48”を備える。図1に示された実施形態において、過熱ラインから抽出され、第2の燃焼ガス予熱器40内で冷却された蒸気は、蒸気・水サイクルの給水タンク50へと送られる。
【0026】
[0027] 第2の燃焼ガス予熱器40は、特に、非常に低い負荷でボイラー設備を動作させる必要があるときに使用される。次いで、第1の燃焼ガス予熱器38内で加熱された燃焼ガスが第2の燃焼ガス予熱器40を介して流れることができるように、迂回ライン24’内のフロー調節弁42’が閉じられ、フロー調節弁42が開かれる。同時に、蒸気過熱ラインから抽出された蒸気が第2の燃焼ガス予熱器40へと流れることができるように、フロー調節弁48、48’、及び48”のうちの少なくとも1つが開かれ、それによって、燃焼ガスの温度が上昇する。
【0027】
[0028] 炉12に供給される燃焼ガスの温度が上昇することで、炉内の十分な床温度を保持すること、及び、非常に低い負荷であっても、すなわち、燃料フィーダ22を介する燃料及び燃焼ガスチャネル24を介する燃焼ガスの供給レートが低いレベルにあるとき、環境への排出量を低レベルで維持することが可能になる。本発明の特別な利点は、燃焼ガスは、最後の過熱器30”の上流及び最後の再加熱器32’の上流のそれぞれにある過熱ラインから抽出された蒸気によって加熱されるため、蒸気は温度を上昇させるために過熱及び再加熱され、これにより、それぞれ高圧蒸気タービン34及び低圧蒸気タービンに入る蒸気の温度を、十分に高いレベルで保持することが可能になることである。
【0028】
[0029] ボイラー設備を非常に低い負荷で有利に動作可能にするために特に重要な最後に述べた利点は驚くべきものであり、より低い温度レベルで高い加熱レベルを使用しないという一般的な考えとは異なる。しかしながら本発明者等は、前述の本発明によって得られる二重の利点により、特定の場合に、すなわち負荷が大きく変動する状態でボイラーを動作させる必要があるときに、燃焼ガスを予熱するために過熱蒸気を使用することが有益であることに注目した。
【0029】
[0030] 図2の略図は、本発明の別の好ましい実施形態を概略的に示す。図1及び図2における同様の特徴は同じ参照番号によって示されており、図1に関連して説明される。
【0030】
[0031] 図2の実施形態は、ボイラーが貫流ボイラーではなくドラムボイラーであるという点で図1とは異なり、水・蒸気サイクルは、蒸発器セクション26と過熱器セクションとの間に蒸気ドラム28を備える。蒸気タービン34も1つのみであり、その点で過熱パスは、熱回収エリア20内に配置された2つの過熱器30、30’のみを備える。図2の実施形態は、炉の底部に1次空気を提供するための燃焼ガスチャネル24に加えて、炉12内のより高いレベルに2次空気を提供するための別の燃焼ガスチャネル24bも示す。燃焼ガスチャネル24及び24bはどちらも、それぞれ、熱回収エリア20内に配置された第1の燃焼ガス予熱器38及び38bを備える。
【0031】
[0032] 燃焼ガスチャネル24、24bの各々は、それぞれ、第2の燃焼ガス予熱器40及び40bも備える。フロー調節弁42’、42b’を伴う迂回ライン24’、24b’が、第2の燃焼ガス予熱器40、40bの各々と並列に配置される。第2の燃焼ガス予熱器40、40bの各々に、それぞれの蒸気抽出ライン46及び46bを介して過熱パスから抽出された過熱蒸気によって熱が提供され、蒸気抽出ラインはどちらも、第1と最後の過熱器30及び30’の間の位置で、過熱パスに接続される。図1の実施形態のように、蒸気抽出ライン46、46bの各々はフロー調節弁48、48bを有する。冷却された蒸気は、第2の燃焼ガス予熱器40、40bから戻りライン52を介して蒸気ドラム28に戻るように伝搬される。
【0032】
[0033] 図1及び図2は本発明の2つの好ましい実施形態を示すが、当業者であれば明白なように、本発明は他の実施形態もカバーしている。例えば、過熱器及び再加熱器の数はこれらの実施形態における数よりも多いか又は少ないことが可能であり、蒸気タービンの数は2つよりも更に多いことが可能であり、すべてが本発明に従った燃焼ガス予熱器を備えることが可能な異なる燃焼ガスチャネルの数は、2つより多いことが可能である。また、図1の実施形態の個々の特徴は、適切であれば図2の実施形態においても使用可能であり、その逆もまた同様である。
【0033】
[0034] 本明細書では、本発明を、現在最も好ましいものと見なされる実施形態に関連して例として説明してきたが、本発明は開示された実施形態に限定されることなく、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲内に含まれるその特徴及びいくつかの他の適用例の様々な組み合わせ又は修正をカバーすることが意図される。
図1
図2