(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金型は、前記原料粉末が充填される型孔が形成されたダイと、前記ダイの上下に対向配置され、前記型孔に充填された前記原料粉末を上下から圧縮する上パンチ及び下パンチとを備え、
前記圧粉体の上面及び下面を形成する前記上パンチ及び下パンチのパンチ面のうち、前記粗面領域を形成する部分の表面粗さが最大高さRzで5μm以上になるように粗面化されている請求項1に記載の焼結体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧粉体の表面は、圧粉体を成形する金型面(ダイの型孔の内周面や上パンチ及び下パンチのパンチ面など)により形成される。従来、金型面は、放電加工や切削加工などの機械加工した後、面粗度を小さくして平滑化するためにラッピング加工やショット加工などの仕上げ加工を行っている。そのため、成形した圧粉体の表面は、面粗度の小さい平滑な面になっており、例えば表面粗さが最大高さRzで3μm以下、更に2μm以下である。
【0006】
特許文献1、2に開示されているように、複数の圧粉体を積み重ねた状態で焼結する方法を採用した場合、生産効率の点で有利である。しかしながら、この場合、複数の圧粉体を積み重ねる段積み時や圧粉体を積み重ねた状態で搬送する搬送中に、振動などにより、積み重ねた圧粉体の姿勢が変わったり、積み重ねた状態が崩れたりすることがある。このような圧粉体の姿勢ずれや荷崩れが起きると、焼結時に変形したり、欠けや割れなどの損傷が生じることがある。
【0007】
特許文献1では、接着剤により成形体同士を接着して、荷崩れなどが起きないようにすることを提案しているが、接着剤を使用する場合、接着剤を塗布する量や位置を適切に管理する必要がある。例えば、積み重ねた成形体同士の接触面が小さい場合は、接着剤を塗布できる量が少なく、接着剤の塗布位置もずれ易い。そのため、接着剤で成形体同士を十分に接着させることが難しく、段積み時や搬送中に積み重ねた状態を維持することが困難になる。
【0008】
一方、特許文献2では、成形体の端面に微小な突起を配列して設けることを提案しているが、この突起を形成するためにパンチ面に突起に対応する凹部を加工しておく必要がある。また、この場合、成形体を積み重ねる際、上下の成形体の突起が互いに噛み合うように周方向に位置(位相)をずらして積み重ねる必要がある。成形体の突起同士が突き合わされるように積み重ねた場合、逆に不安定になる。
【0009】
本開示は、圧粉体を焼結する際に圧粉体の積み重ねた状態を安定して維持することができる焼結体の製造方法を提供することを目的の一つとする。また、積み重ねた状態で安定して焼結を行うことができる焼結体を提供することを別の目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の焼結体の製造方法は、
金属粉末を含む原料粉末を金型で圧縮成形して圧粉体を作製し、前記圧粉体の上面及び下面のいずれか一方の端面の少なくとも一部に表面粗さが最大高さRzで5μm以上の粗面領域を形成する成形工程と、
複数の前記圧粉体を前記端面同士が接触するように積み重ねる段積み工程と、
複数の前記圧粉体を積み重ねた状態で焼結する焼結工程と、を備える。
【0011】
本開示の焼結体は、
焼結体の上面及び下面のいずれか一方の端面の少なくとも一部に表面粗さが最大高さRzで5μm以上の粗面領域を有する。
【発明の効果】
【0012】
上記焼結体の製造方法は、圧粉体を焼結する際に圧粉体の積み重ねた状態を安定して維持することができる。上記焼結体は、積み重ねた状態で安定して焼結を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0015】
(1)本発明の実施形態に係る焼結体の製造方法は、
金属粉末を含む原料粉末を金型で圧縮成形して圧粉体を作製し、前記圧粉体の上面及び下面のいずれか一方の端面の少なくとも一部に表面粗さが最大高さRzで5μm以上の粗面領域を形成する成形工程と、
複数の前記圧粉体を前記端面同士が接触するように積み重ねる段積み工程と、
複数の前記圧粉体を積み重ねた状態で焼結する焼結工程と、を備える。
【0016】
上記焼結体の製造方法によれば、圧粉体のいずれか一方の端面に表面粗さが最大高さRzで5μm以上の粗面領域を成形時に形成しておき、複数の圧粉体を端面同士が接触するように積み重ねて焼結する。圧粉体のいずれか一方の端面に粗面領域が形成されていることで、圧粉体を積み重ねたときに、粗面領域を有する一方の圧粉体の端面と他方の圧粉体の端面との間の摩擦係数(摩擦抵抗)が高くなる。そのため、積み重ねた圧粉体が摩擦力によって滑り難くなり、圧粉体の相対移動(位置ずれ)が抑制され、圧粉体の積み重ねた状態を安定して維持することができる。そして、複数の圧粉体を積み重ねた状態で焼結する際、その状態を維持したまま焼結することが可能である。したがって、上記焼結体の製造方法は、圧粉体を焼結する際に圧粉体の積み重ねた状態を安定して維持することができる。特に、圧粉体の両方の端面(上面及び下面)に粗面領域を形成した場合、圧粉体を積み重ねたときに粗面領域同士を接触させることができるため、圧粉体の一方の端面(上面又は下面)にのみ粗面領域を形成した場合に比べて、積み重ねた圧粉体の端面間の摩擦係数が高くなり、摩擦力が増加する。よって、圧粉体の積み重ねた状態をより安定して維持することができる。ここでいう「最大高さRz」は、JIS B 0601−2001に準拠して測定した値である。
【0017】
圧粉体の端面の粗面領域は、圧粉体の端面を形成する金型面が転写されることによって形成される。つまり、圧粉体の粗面領域の表面粗さは、金型面における粗面領域を形成する部分の表面粗さによって決まる。そのため、金型面のうち、圧粉体の粗面領域を形成する部分は、面粗度が比較的大きい粗面化された状態になっていてもよく、ラッピング加工やショット加工などの仕上げ加工を省略できる。よって、金型の製作コストを低減できる。例えば、型孔が形成されたダイと、ダイの上下に対向配置される上パンチ及び下パンチとを備える金型を用いて圧粉体を成形する場合、上パンチ及び下パンチのパンチ面が圧粉体の上面及び下面の端面を形成する。この場合、パンチ面における粗面領域を形成する部分を、仕上げ加工せずに機械加工により形成された機械加工面のままとし、粗面に形成することが挙げられる。
【0018】
上記焼結体の製造方法では、特許文献1のように接着剤により圧粉体同士を接着する必要がないため、接着剤の塗布作業を省略できる。或いは、特許文献2のように圧粉体を積み重ねたときに互いに噛み合う突起を圧粉体の端面に設ける必要がないため、この突起を形成するための凹部をパンチ面に加工しなくてもよい。また、圧粉体を積み重ねる際に周方向に位置(位相)をずらして積み重ねる必要もないので、段積み作業が容易になる。
【0019】
(2)上記焼結体の製造方法の一態様として、前記金型は、前記原料粉末が充填される型孔が形成されたダイと、前記ダイの上下に対向配置され、前記型孔に充填された前記原料粉末を上下から圧縮する上パンチ及び下パンチとを備え、前記圧粉体の上面及び下面を形成する前記上パンチ及び下パンチのパンチ面のうち、前記粗面領域を形成する部分の表面粗さが最大高さRzで5μm以上になるように粗面化されていることが挙げられる。
【0020】
上パンチ及び下パンチのパンチ面のうち、圧粉体端面の粗面領域を形成する部分の表面粗さRz(最大高さ)が5μm以上になるように粗面化されていることで、圧粉体端面に表面粗さRz(最大高さ)が5μm以上の粗面領域を成形時に形成できる。
【0021】
(3)上記焼結体の製造方法の一態様として、前記上パンチ及び下パンチのパンチ面の粗面化された部分が放電加工又は切削加工により形成されていることが挙げられる。
【0022】
パンチ面の粗面化された部分(圧粉体端面の粗面領域を形成する部分)が放電加工又は切削加工により形成された加工面とすることで、その部分を粗面に形成でき、表面粗さRzが5μm以上になるように粗面化することができる。ここで、放電加工により形成された場合は加工面が放電肌になり、切削加工により形成された場合は加工面に切削工具の軌跡によって切削痕が残ることにより、粗面が形成され、表面粗さRzを5μm以上とすることができる。
【0023】
(4)本発明の実施形態に係る焼結体は、
焼結体の上面及び下面のいずれか一方の端面の少なくとも一部に表面粗さが最大高さRzで5μm以上の粗面領域を有する。
【0024】
焼結体のいずれか一方の端面に表面粗さが最大高さRzで5μm以上の粗面領域を有する場合、焼結前の圧粉体において、その端面にも同じように粗面領域が形成されているといえる。そして、圧粉体のいずれか一方の端面に粗面領域が形成されていることで、圧粉体を積み重ねたときに圧粉体の端面間の摩擦係数が高く、摩擦力により圧粉体の積み重ねた状態を安定して維持することができる。そのため、複数の圧粉体を積み重ねた状態で焼結する際、その状態を維持したまま焼結することが可能である。したがって、上記焼結体は、積み重ねた状態で安定して焼結を行うことができる。ここでいう「焼結体の端面」とは、複数の焼結体を上下方向に同じ向きで積み重ねたときに、上下の焼結体の互いに接触する端面のことをいう。例えば、焼結体の形状が環状や筒状の場合、軸方向の端面である。
【0025】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る焼結体の製造方法、及び焼結体の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
<焼結体の製造方法>
実施形態に係る焼結体の製造方法は、下記の工程を備える。
1.成形工程:原料粉末を金型で圧縮成形して圧粉体を作製する。
2.段積み工程:複数の圧粉体を端面同士が接触するように積み重ねる。
3.焼結工程:複数の圧粉体を積み重ねた状態で焼結する。
実施形態に係る焼結体の製造方法の特徴の1つは、成形工程において、圧粉体の上面及び下面のいずれか一方の端面に表面粗さが最大高さRzで5μm以上の粗面領域を形成する点にある。以下、実施形態の焼結体の製造方法について詳しく説明する。
【0027】
以下では、
図1、
図2に示すような実施形態1に係る焼結体1を製造する場合を例に挙げて説明する。
図1、
図2に示す焼結体1は、スプロケットに用いられ、中心に貫通孔10が形成された円環状で、外周面にギア歯が形成された形状である。焼結体1の上面22及び下面23(軸方向の一方及び他方の端面21)には、貫通孔10の周囲に沿って環状の凸部が形成されている(
図2参照)。焼結体1の形状は、これに限定されるものではなく、例えば、板状、環状、柱状、筒状など、その用途に応じて適宜変更可能である。実施形態の焼結体の詳細については後述する。
【0028】
(成形工程)
成形工程は、金属粉末を含む原料粉末を金型で圧縮成形して圧粉体を作製し、圧粉体の上面及び下面のいずれか一方の端面の少なくとも一部に表面粗さが最大高さRzで5μm以上の粗面領域を形成する工程である。
【0029】
〈金属粉末〉
原料粉末に用いる金属粉末は、焼結体1を構成する主たる材料であり、金属粉末としては、例えば、鉄又は鉄を主成分とする鉄合金(鉄系材料)、アルミニウム又はアルミニウムを主成分とするアルミニウム合金(アルミニウム系材料)、銅又は銅を主成分とする銅合金(銅系材料)などの各種金属の粉末が挙げられる。スプロケットなどの焼結機械部品の場合、代表的には、純鉄粉や鉄合金粉などの鉄系粉末が用いられる。ここで、「主成分とする」とは、構成成分として、当該元素を50質量%超、好ましくは80質量%以上、更に90質量%以上含有することを意味する。鉄合金としては、Cu,Ni,Sn,Cr,Mo及びCから選択される少なくとも1種の合金化元素を含有することが挙げられる。上記合金化元素は、鉄系焼結体の機械的特性の向上に寄与する。上記合金化元素のうち、Cu,Ni,Sn,Cr及びMoの含有量は、合計で0.5質量%以上6.0質量%以下、更に1.0質量%以上3.0質量%以下とすることが挙げられる。Cの含有量は、0.2質量%以上2.0質量%以下、更に0.4質量%以上1.0質量%以下とすることが挙げられる。鉄系焼結体の場合、金属粉末として鉄粉を用い、上記合金化元素の粉末(合金化粉末)を添加してもよい。この場合、後工程の焼結工程で圧粉体を焼結することによって、鉄が合金化元素と反応して合金化される。合金化元素の含有量は、製品となる焼結体の用途や仕様に応じて所定の組成になるように適宜設定される。
【0030】
金属粉末の平均粒子径は、例えば20μm以上、更に50μm以上150μm以下とすることが挙げられる。金属粉末の平均粒子径を上記範囲内とすることで、取り扱い易く、圧縮成形し易い。金属粉末の平均粒子径は、金属粉末を構成する粒子の平均粒径のことであり、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定した体積粒度分布における累積体積が50%となる粒径(D50)とする。
【0031】
〈金型〉
成形工程で成形する圧粉体は、焼結体1(
図1、
図2参照)に対応した形状であり、
図3に示すような金型50で成形することが挙げられる。
図3示す金型50は、原料粉末が充填される型孔510が形成されたダイ51と、ダイ51の上下に対向配置され、型孔510に充填された原料粉末を上下から圧縮する上パンチ52及び下パンチ53とを備える。
図3に示す例では、金型50は、ダイ51の型孔510内に配置され、圧粉体2の貫通孔10を形成するコアロッド55を備えている。金型50を用いて圧粉体2を成形するときは、ダイ51の型孔510に下パンチ53を配置して原料粉末を充填した後、上パンチ52を下降させ、上下からパンチ52、53で原料粉末を圧縮して成形する。上パンチ52及び下パンチ53の各パンチ面521、531が圧粉体2の上面22及び下面23の各端面21を形成することになる。つまり、圧粉体2の圧縮方向(軸方向)の一方の面が上面22、他方の面が下面23となる。
【0032】
圧縮成形する際の面圧は、例えば500MPa以上、更に1000MPa以上とすることが挙げられる。面圧を高くすることで、圧粉体2を高密度化して相対密度を高くすることができる。これにより、焼結して得られる焼結体1の相対密度を高くでき、強度が向上する。面圧の上限は、特に限定されないが、例えば1200MPa以下とすることが挙げられる。圧粉体2の相対密度は、例えば80%以上、更に90%以上とすることが挙げられる。ここでいう「相対密度」は、真密度に対する実際の密度([実測密度/真密度]の百分率)のことを意味する。真密度は、原料粉末に用いる金属粉末の密度とする。
【0033】
〈粗面領域〉
成形工程では、圧粉体2の上面22及び下面23のいずれか一方の端面21に表面粗さRz(最大高さ)が5μm以上の粗面領域を形成する。粗面領域は、圧粉体2のいずれか一方の端面21に形成されていればよく、上面22又は下面23の一方の端面21にのみ形成してもよいし、上面22及び下面23の両方の端面21に形成してもよい。圧粉体2のいずれか一方の端面21に粗面領域を形成することにより、後述する次工程の段積み工程(
図4参照)において、圧粉体2を積み重ねたときに互いに接触する端面21間(下段の圧粉体2の上面22と上段の圧粉体2の下面23との間)の摩擦係数(摩擦抵抗)を高くできる。そのため、積み重ねた圧粉体2が摩擦力によって滑り難くなり、圧粉体2の相対移動(位置ずれ)が抑制され、圧粉体2の積み重ねた状態を安定して維持することができる。この例では、圧粉体2の両方の端面21(上面22及び下面23)に粗面領域を形成している。
【0034】
粗面領域の表面粗さRzが大きいほど、積み重ねた圧粉体2の端面21間の摩擦係数が高くなり、摩擦力が増加する。よって、粗面領域の表面粗さRzは、例えば6μm以上とすることが好ましい。粗面領域の表面粗さRzの上限は、製品となる焼結体1の用途や仕様に応じて適宜決めればよく、特に限定されないが、表面粗さが大き過ぎると、焼結体1を機械部品として使用したときの性能に影響を及ぼすため、例えばRz20μm以下、更に15μm以下とすることが挙げられる。
【0035】
また、粗面領域は、圧粉体2の端面21の少なくとも一部に形成されていればよく、粗面領域の面積が大きいほど、積み重ねた圧粉体2の端面21間の摩擦抵抗が大きくなる。端面21に占める粗面領域の面積割合は、例えば40%以上、更に60%以上、より更には80%以上とすることが挙げられる。特に、端面21の全面に粗面領域を形成した(即ち、端面21に占める粗面領域の面積割合が100%である)場合、摩擦抵抗が最も大きくなる。粗面領域の面積割合や形成箇所は、製品となる焼結体1の用途や仕様に応じて適宜決めればよい。この例では、端面21の全面に粗面領域を形成している。
【0036】
本実施形態では、圧粉体2の端面21に粗面領域を形成するため、圧粉体2の上面22及び下面23を形成する上パンチ52及び下パンチ53のパンチ面521、531のうち、粗面領域を形成する部分の表面粗さが最大高さRzで5μm以上になるように粗面化されている(
図3参照)。圧粉体2の端面21(上面22及び下面23)は、パンチ面521、531が転写されることによって形成されるため、粗面領域の表面粗さは、パンチ面521、531における粗面領域を形成する部分の表面粗さによって決まる。よって、パンチ面521、531のうち、粗面領域を形成する部分の表面粗さRzが5μm以上になるように粗面化されていることで、圧粉体2の端面21に表面粗さRzが5μm以上の粗面領域を成形時に形成できる。パンチ面521、531の粗面化された部分の表面粗さRzは、圧粉体2の端面21に形成する粗面領域の表面粗さRzに応じて適宜決めればよく、例えば6μm以上であることが好ましく、その上限は特に限定されないが、例えば20μm以下、更に15μm以下である。
【0037】
上パンチ52及び下パンチ53のパンチ面521、531の粗面化された部分が放電加工又は切削加工により形成されていることが挙げられる。パンチ面521、531を放電加工や切削加工などの機械加工により形成し、パンチ面521、531における粗面領域を形成する部分を仕上げ加工せずに機械加工により形成された機械加工面のままとすることで、その部分を粗面に形成できる。この場合、パンチ面521、531の仕上げ加工を省略又は減らすことができるので、パンチ52、53の加工コストを低減できる。切削加工としては、例えば、切削工具にエンドミルを用いて、エンドミルの端面でパンチ面521、531を切削することが挙げられる。パンチ面521、531の粗面化された部分が放電加工又は切削加工により形成された加工面とすることで、その部分の表面粗さRzが5μm以上になるように粗面化することができる。放電加工又は切削加工による加工面の面粗度は加工条件によって変わり、表面粗さRzが5μm以上になるように加工条件を適宜設定すればよい。
【0038】
放電加工により形成した場合、加工面が放電肌になり、放電肌による粗面が形成される。放電加工の場合、例えば電流値やパルス幅などの加工条件を変化させることによって、表面粗さを変えることができる。例えば、電流値を高くしたり、パルス幅を長くすることで、加工面が粗面になり、表面粗さRzが大きくなる。
【0039】
一方、切削加工により形成した場合、加工面に切削工具の軌跡によって切削痕が残り、切削痕による粗面が形成される。切削加工の場合、例えば送り量などの加工条件を変化させることによって、表面粗さを変えることができる。例えば、エンドミルによる加工の場合、1回転あたりの送り量を大きくすることで、加工面が粗面になり、表面粗さRzが大きくなる。
【0040】
(段積み工程)
段積み工程は、複数の圧粉体を端面同士が接触するように積み重ねる工程である。
【0041】
段積み工程では、
図4に示すように、圧粉体2を上下方向(厚さ方向)に同じ向き(姿勢)で積み重ねることで、圧粉体2の端面21同士(下段の圧粉体2の上面22と上段の圧粉体2の下面23)を互いに接触させることが挙げられる。圧粉体2のいずれか一方の端面21に上述した粗面領域を成形時に形成していることから、圧粉体2を積み重ねたときに、粗面領域を有する一方の圧粉体2の端面21と他方の圧粉体2の端面21とが接触することになる。したがって、積み重ねた圧粉体2の端面21間の摩擦係数(摩擦抵抗)が高くなるため、積み重ねた圧粉体2が摩擦力によって滑り難く、積み重ねた状態を安定して維持できる。段積み時や後述する次工程の焼結工程への搬送中に、振動などに起因する圧粉体2の荷崩れを抑制できる。
【0042】
この例では、圧粉体2の両方の端面21(上面22及び下面23)に粗面領域を形成しており、圧粉体2を積み重ねたときに粗面領域同士の接触となる。そのため、圧粉体2の一方の端面21(上面22又は下面23)にのみ形成した場合に比べて、積み重ねた圧粉体2の端面21間の摩擦係数が高くなり、摩擦力が増加する。よって、積み重ねた状態をより安定して維持できる。
【0043】
段積み工程において、圧粉体2を積み重ねる段数は、圧粉体2の形状やサイズにもよるが、例えば2段以上10段以下、更に6段以下とすることが挙げられる。
【0044】
(焼結工程)
焼結工程は、複数の圧粉体を積み重ねた状態で焼結する工程である。
【0045】
本実施形態では、
図4に示すように圧粉体2を積み重ねた状態において、圧粉体2のいずれか一方の端面21に上述した粗面領域が形成されていることで、積み重ねた圧粉体2の端面21間の摩擦係数が高く、摩擦力により圧粉体2の積み重ねた状態を安定して維持できる。よって、複数の圧粉体2を積み重ねた状態で焼結する際、その状態を維持したまま焼結することが可能である。
【0046】
圧粉体2を焼結することによって、焼結体1(
図1、
図2参照)が得られる。焼結条件は、金属粉末の組成に応じて公知の条件を適用できる。例えば、金属粉末が鉄系粉末の場合、焼結温度を、例えば1100℃以上1400℃以下、更に1200℃以上1300℃以下とすることが挙げられる。
【0047】
圧粉体2の端面21の粗面領域は焼結後も維持され、圧粉体2の粗面領域が形成された端面21に対応する焼結体1の端面21にも粗面領域が形成された状態になる。つまり、焼結体1のいずれか一方の端面21には、表面粗さが最大高さRzで5μm以上の粗面領域を有する。
【0048】
焼結工程の後、必要に応じて、焼結体1にサイジング、仕上げ加工、熱処理などの各種後処理を行ってもよい。焼結後のサイジングや仕上げ加工により、焼結体1の端面21の粗面領域を平滑化して、焼結体1の端面21を面粗度の小さい平滑面に形成してもよい。
【0049】
<焼結体>
実施形態に係る焼結体1(
図1、
図2参照)は、上述した焼結体の製造方法により製造することができる。実施形態の焼結体1の特徴の1つは、焼結体1の上面22及び下面23のいずれか一方の端面21の少なくとも一部に表面粗さが最大高さRzで5μm以上の粗面領域を有する点にある。ここでいう「焼結体の端面」とは、複数の焼結体1を上下方向に同じ向きで積み重ねたときに、上下の焼結体1の互いに接触する端面21のことをいう。
【0050】
粗面領域の表面粗さRzは、例えば6μm以上であることが好ましい。粗面領域の表面粗さRzの上限は、特に限定されないが、表面粗さが大き過ぎると、焼結体1を機械部品として使用したときの性能に影響を及ぼすため、例えば20μm以下、更に15μm以下であることが挙げられる。
【0051】
粗面領域は、焼結体1のいずれか一方の端面21に有していればよく、上面22又は下面23の一方の端面21にのみ有していてもよいし、上面22及び下面23の両方の端面21に有していてもよい。また、端面21に占める粗面領域の面積割合は、例えば40%以上、更に60%以上、より更には80%以上であることが挙げられ、端面21の全面に粗面領域が形成されていてもよい。粗面領域の面積割合や形成箇所は、焼結体1の用途や仕様に応じて適宜決めればよい。この例では、圧粉体2の両方の端面21(上面22及び下面23)の全面に粗面領域を有する。
【0052】
{作用効果}
上述した実施形態に係る焼結体の製造方法は、圧粉体2のいずれか一方の端面21に表面粗さが最大高さRzで5μm以上の粗面領域を成形時に形成しておき、複数の圧粉体2を端面同士が接触するように積み重ねて焼結する。圧粉体2のいずれか一方の端面21に粗面領域が形成されていることで、圧粉体2を積み重ねたときに互いに接触する端面21間の摩擦係数が高く、摩擦力により圧粉体2の積み重ねた状態を安定して維持することができる。よって、複数の圧粉体2を積み重ねた状態で焼結する際、その状態を維持したまま焼結することが可能である。したがって、実施形態の焼結体の製造方法は、圧粉体2を焼結する際に圧粉体2の積み重ねた状態を安定して維持することができる。実施形態の焼結体の製造方法は、例えばスプロケットなどの焼結機械部品の製造に好適に利用できる。
【0053】
上述した実施形態に係る焼結体1は、いずれか一方の端面21に表面粗さが最大高さRzで5μm以上の粗面領域を有することから、焼結前の圧粉体2において、その端面21にも同じように粗面領域が形成されているといえる。そして、圧粉体2のいずれか一方の端面21に粗面領域が形成されていることで、圧粉体2を積み重ねたときに互いに接触する端面21間の摩擦係数が高く、摩擦力により圧粉体2の積み重ねた状態を安定して維持することができる。そのため、複数の圧粉体2を積み重ねた状態で焼結する際、その状態を維持したまま焼結することが可能である。したがって、実施形態の焼結体1は、積み重ねた状態で安定して焼結を行うことができる。上述した実施形態では、焼結体1がスプロケットである場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、焼結体1はポンプ用ロータなどの焼結機械部品であってもよい。
【0054】
[試験例1]
パンチ面を放電加工により形成し、放電加工面(放電肌)とした上下のパンチと、パンチ面を放電加工した後、ラッピング加工して平滑面とした上下のパンチとをそれぞれ用意し、それぞれのパンチを用いて圧粉体を複数ずつ作製した。作製した圧粉体は、円環状で、内径50mm、外径60mm、厚さ10mmである。放電加工面としたパンチ面の表面粗さRzは5.0μmとし、平滑面としたパンチ面の表面粗さRzは2.0μmとした。また、それぞれのパンチを用いて作製した各圧粉体の端面(上面及び下面)の表面粗さを測定した。パンチ面を放電加工面とした圧粉体では、端面の最大高さRzが6.0μmであり、端面が粗面になっていた。一方、パンチ面を平滑面とし圧粉体では、端面の最大高さRzが2.4μmであり、端面が平滑面になっていた。
【0055】
端面が粗面である圧粉体と端面が平滑面である圧粉体とをそれぞれ、接着剤を塗布せずに、上下方向(厚さ方向)に同じ向きで積み重ねて段積みした。そして、各圧粉体を2段積み重ねた状態で実際の製造ラインにおける搬送時の振動を与え、圧粉体のずれや荷崩れの有無を評価した。
【0056】
積み重ねた各圧粉体に対し、実際の製造ラインで搬送する試験を繰り返し行って、圧粉体のずれや荷崩れの発生確率を調べた。その結果、端面が粗面である圧粉体の場合、圧粉体のずれや荷崩れが発生しなかったのに対し、端面が平滑面である圧粉体の場合、圧粉体のずれや荷崩れの発生確率が5%であった。