(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871506
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】中折れシートバック及び中折れシートバックを有する車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/64 20060101AFI20210426BHJP
A47C 7/40 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
B60N2/64
A47C7/40
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-21244(P2017-21244)
(22)【出願日】2017年2月8日
(65)【公開番号】特開2018-127082(P2018-127082A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2020年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 治希
(72)【発明者】
【氏名】三柴 和大
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 和也
【審査官】
木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−42748(JP,A)
【文献】
特開2009−226982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/40
B60N 2/00 ― 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延在する左右のロアサイドフレームと、
前記ロアサイドフレームのそれぞれの上端部に左右に延びる回動軸を中心として回動可能に取り付けられた左右のアッパサイドフレームと、
出力部を備えたアクチュエータと、
前記アッパサイドフレームに回動可能に結合された上端部、及び前記出力部に結合された下端部を備え、前記出力部の運動に応じて前記アッパサイドフレームを回動させるリンクとを有し、
前記ロアサイドフレームの上端部及び前記アッパサイドフレームの下端部は、左右を向き、互いに対向し、
前記リンクは、少なくとも一部が左右方向において互いに対向する前記ロアサイドフレームの上端部及び前記アッパサイドフレームの下端部の左右方向における間に配置されていることを特徴とする中折れシートバック。
【請求項2】
前記リンクの上端部は、左右方向において互いに対向する前記ロアサイドフレームの上端部及び前記アッパサイドフレームの下端部の左右方向における間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の中折れシートバック。
【請求項3】
前記ロアサイドフレームの上端部の縁部は、前記アッパサイドフレームの下端部と相反する方向に曲げ起こされて下側縁壁を形成し、
前記下側縁壁は、前記回動軸の前方かつ下方から前記回動軸の上方を通過して前記回動軸の後方かつ下方に延在していることを特徴とする請求項2に記載の中折れシートバック。
【請求項4】
前記アッパサイドフレームの下端部の前縁及び下縁は、前記ロアサイドフレームの下端部側に曲げ起こされて前後一対の上側縁壁を形成し、
前記上側縁壁のそれぞれは、前記回動軸の上方から下方に延在していることを特徴とする請求項3に記載の中折れシートバック。
【請求項5】
前記アッパサイドフレームの下端部の縁部は、前記ロアサイドフレームの上端部と相反する方向に曲げ起こされて上側縁壁を形成し、
前記上側縁壁は、前記回動軸の前方かつ上方から前記回動軸の下方を通過して前記回動軸の後方かつ上方に延在していることを特徴とする請求項2に記載の中折れシートバック。
【請求項6】
前記ロアサイドフレームの上端部の前記アッパサイドフレームの下端部側の側面には、前記リンクを受容する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つの項に記載の中折れシートバック。
【請求項7】
上下方向に延在する左右のロアサイドフレームと、
前記ロアサイドフレームのそれぞれの上端部に左右に延びる回動軸を中心として回動可能に取り付けられた左右のアッパサイドフレームと、
出力部を備えたアクチュエータと、
前記アッパサイドフレームに回動可能に結合された上端部、及び前記出力部に結合された下端部を備え、前記出力部の運動に応じて前記アッパサイドフレームを回動させるリンクとを有し、
前記ロアサイドフレームの上端部及び前記アッパサイドフレームの下端部は、左右を向き、互いに対向し、
前記リンクは、少なくとも一部が前記ロアサイドフレームの上端部及び前記アッパサイドフレームの下端部の間に配置され、
前記ロアサイドフレームの上端部の前記アッパサイドフレームの下端部側の側面には、前記リンクを受容する凹部が形成されていることを特徴とする中折れシートバック。
【請求項8】
前記凹部の下端部には、前記ロアサイドフレームの上端部を厚み方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記リンクの下端部には前記貫通孔を通過するピンの一端が結合され、
前記アクチュエータは、前記ロアサイドフレームの前記リンクが設けられた側と相反する側に設けられ、
前記出力部は、前記ピンの他端に結合していることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の中折れシートバック。
【請求項9】
前記凹部は前記ロアサイドフレームの長手方向に延び、前記凹部の上端が前記ロアサイドフレームの上端部の上縁に到達していることを特徴とする請求項8に記載の中折れシートバック。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1つの項に記載の中折れシートバックを有する車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下方向に分割されたシートバックフレームの下部に対して上部が前後方向に傾動可能な中折れシートバックに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートの中折れシートバックとして、シートバック下部と、シートバック下部の上方に配置され、シート幅方向に沿った軸部材を回転中心にして回転可能にシートバック下部に取り付けられたシートバックと、シートバック上部をシートバック下部に対して回転させるための駆動源と、駆動源の駆動力を受けてシートバック上部をシートバック下部に対し回転させる回転(中折れ)機構とを有したものが公知である(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1の中折れシートバックでは、シートバック下部のうち、一対のシートバック下部フレームに掛け渡されたモータ取付板の中央に駆動源をなすモータが取り付けられている。一方、一対のシートバック下部フレームには、モータの回転駆動力を受けて雄ねじを回転させる回転ドラムが回転可能に取り付けられ、一対のシートバック上部フレームには、対応する雄ねじがねじ込まれた一対の昇降ブロックが回転可能に取り付けられており、これらによって全体として伸縮する回転機構(伸縮機構)が構成されている。そして、駆動源の配設位置の自由度を高めて薄型化を図るために、駆動源の駆動力を回転機構に伝達する伝達部材として、可撓性を有するケーブル部材が用いられている。
【0004】
特許文献2の中折れシートバックでは、一対のサイドフレームを連結する連結部材の中央に駆動源をなすモータが固定され、一対のシートバック下部フレームと、対応するシートバック下部フレームに回転ヒンジにより回動自在に連結されたアッパークロスメンバとの間に、フレキシブルケーブルを介してモータに連結された中折れ機構が配設されている。そして、各中折れ機構は、モータの回転に応じて伸縮する伸縮機構としてのねじ・ギヤ機構や、ねじ・ギヤ機構の伸縮一端部及びアッパークロスメンバに回動自在に連結される梃子形リンク、アッパークロスメンバ側顎付きブッシュ、ねじ・ギヤ機構の伸縮他端部と共にサイドフレームに回動自在に連結され、且つ梃子形リンクに回動自在に連結された支点リンク、サイドフレーム側顎付きブッシュ、ボルト、ナット等により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−42748号公報
【特許文献2】特開2013−23065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の中折れシートバックは、サイドフレームとモータとを繋ぐリンクがサイドフレームの表面に配置されて露出面積が大きいため、リンクとサイドフレームとの間にパッドや異物等が噛み込まれる虞がある。また、モータ及びリンクを含む駆動機構が大きく、シートバックへの搭載性が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑み、中折れシートバックにおいて、リンクへの異物の噛み込みを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明の一態様は、上下方向に延在する左右一対のロアサイドフレーム(6)と、前記ロアサイドフレームのそれぞれの上端部に左右に延びる回動軸(X)を中心として回動可能に取り付けられた左右一対のアッパサイドフレーム(7)と、左右に延びて左右の前記アッパサイドフレームに接続されたアッパフレームと、前記ロアサイドフレームの少なくとも一方に固定され、前記ロアサイドフレームに沿って直進運動する出力部(17a)を備えたアクチュエータ(17)と、前記アッパサイドフレームに回動可能に結合された上端部、及び前記出力部に結合された下端部を備え、前記出力部の運動に応じて前記アッパサイドフレームを回動させるリンク(25)とを有し、前記ロアサイドフレームの上端部及び前記アッパサイドフレームの下端部は、左右を向き、互いに対向する板状に形成され、前記リンクは、少なくとも一部が前記ロアサイドフレームの上端部及び前記アッパサイドフレームの下端部の間に配置されていることを特徴とする中折れシートバック(S2)を提供する。
【0009】
この構成によれば、リンクの一部がロアサイドフレームとアッパサイドフレームとによって覆われ、外部への露出面積が減るため、異物がリンクが接触し難くなる。これにより、リンクへの異物の噛み込みが抑制される。
【0010】
また、上記の態様において、前記リンクの上端部は、前記ロアサイドフレームの上端部及び前記アッパサイドフレームの下端部の間に配置されているとよい。
【0011】
この構成によれば、アッパサイドフレームに結合されるリンクの上端がロアサイドフレームとアッパサイドフレームとによって覆われるため、リンクへの異物の噛み込みが抑制される。
【0012】
また、上記の態様において、前記ロアサイドフレームの上端部の縁部は、前記アッパサイドフレームの下端部と相反する方向に曲げ起こされて下側縁壁(6C、6E)を形成し、前記下側縁壁は、前記回動軸の前方かつ下方から前記回動軸の上方を通過して前記回動軸の後方かつ下方に延在しているとよい。
【0013】
この構成によれば、ロアサイドフレームの上端部の剛性が向上する。
【0014】
また、上記の態様において、前記アッパサイドフレームの下端部の前縁及び下縁は、前記ロアサイドフレームの下端部側に曲げ起こされて前後一対の上側縁壁(7B、7C)を形成し、前記上側縁壁のそれぞれは、前記回動軸の上方から下方に延在しているとよい。
【0015】
この構成によれば、アッパサイドフレームの下端部の剛性が向上する。
【0016】
また、上記の態様において、前記下側縁壁及び前記上側縁壁は、左右方向における内側に向けて突出しているとよい。
【0017】
この構成によれば、上側縁壁及び下側縁壁が互いに重なるように配置されるため、ロアサイドフレーム及びアッパサイドフレームからなるサイドフレームの左右幅を小さくすることができる。
【0018】
また、上記の態様において、前記アッパサイドフレームの下端部の縁部は、前記ロアサイドフレームの上端部と相反する方向に曲げ起こされて上側縁壁を形成し、前記上側縁壁は、前記回動軸の前方かつ上方から前記回動軸の下方を通過して前記回動軸の後方かつ上方に延在しているとよい。
【0019】
この構成によれば、アッパサイドフレームの下端部の剛性が向上する。
【0020】
また、上記の態様において、前記ロアサイドフレームの上端部の前記アッパサイドフレームの下端部側の側面には、前記リンクを受容する凹部(6J)が形成されているとよい。
【0021】
この構成によれば、リンクが凹部内に受容され、ロアサイドフレームの外方に突出しないため、リンクと異物との接触が避けられる。
【0022】
また、上記の態様において、前記凹部の下端部には、前記ロアサイドフレームの上端部を厚み方向に貫通する貫通孔(6K)が形成され、前記リンクの下端部には前記貫通孔を通過するピン(24)の一端が結合され、前記アクチュエータは、前記ロアサイドフレームの前記リンクが設けられた側と相反する側に設けられ、前記出力部は、前記ピンの他端に結合しているとよい。
【0023】
この構成によれば、ロアフレームが上端部の縁部に沿う下側縁壁を備える場合において、リンクをロアサイドフレームとアッパサイドフレームとの間に配置しつつ、アクチュエータをロアサイドフレームの下側縁壁の間に配置することができる。これにより、リンク及びアクチュエータがロアサイドフレームに対してコンパクトに配置される。
【発明の効果】
【0024】
このように本発明によれば、中折れシートバックにおいて、リンクへの異物の噛み込みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る車両用シートを前方から見た斜視図
【
図2】実施形態に係る車両用シートを後方から見た斜視図
【
図4】シートバックフレームの要部を内側から見た側面図
【
図5】シートバックフレームの要部を外側から見た側面図
【
図6】シートバックフレームの動作説明図であって(A)後傾状態、(B)前傾状態を示す
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明に係る中折れシートバックS2を自動車の後部座席(2列目及び3列目を含む)に適用した実施形態について説明する。以下の説明では、シートSに着座した乗員を基準にして左右を定める。左右対称に設けられる一対の構成については、共通の番号を付し、説明を省略することがある。
【0027】
図1及び
図2に示されるように、車両用のシートSは、座面を形成するシートクッションS1と、背凭れ面を形成するシートバックS2と、ヘッドレストS3と、スライドレールS4とを有する。スライドレールS4は、自動車のフロアに前後に延びるように設けられ、シートクッションS1を前後にスライド移動可能に支持する。シートバックS2はリクライニング機構1を介してシートクッションS1に対して回動(傾倒)可能に連結されており、ヘッドレストS3はシートバックS2の上部に上下方向にスライド可能に設けられている。
【0028】
シートクッションS1は、シートクッションフレームにパッド及び表皮を被せることによって構成されている。シートバックS2の前部及び側部はシートバックフレームF(FA及びFB(
図3参照))にパッド及び表皮SKを被せることによって構成され、シートバックS2の後部はシートバックフレームFにバックボードBを被せることによって構成されている。ヘッドレストS3は、ヘッドレストフレームにパッド及び表皮を被せることによって構成されている。パッドは、ポリウレタンフォーム等の弾力性を有するクッション材から形成され、表皮SKは本皮や合成皮革、布地等から形成され、バックボードBは合成樹脂等から形成される。
【0029】
シートバックS2は、シートクッションS1に対して回動(傾倒)可能に設けられた下部シートバックS2Aと、下部シートバックS2Aに対して回動(傾倒)可能に設けられた上部シートバックS2Bとを有する。ヘッドレストS3は上部シートバックS2Bに設けられている。バックボードBは、下部シートバックS2Aに被せられたバックボード下部BAと、上部シートバックS2Bに被せられたバックボード上部BBとにより構成される。
【0030】
図示省略するが、シートクッションフレームは、前後に延びる左右一対のクッションサイドフレームや、各クッションサイドフレームの前部間に掛け渡された前部フレーム、各クッションサイドフレームの後部間に掛け渡された後部フレーム等を有し、枠形に形成されている。スライドレールS4は各クッションサイドフレームに取り付けられている。
【0031】
図3に示されるように、シートバックフレームFは、略上下に延びる左右一対のサイドフレーム2と、左右に延びて両端において両サイドフレーム2の下部に結合したロアフレーム4と、左右に延びて両端において両サイドフレーム2の上部に結合した逆U字状のアッパフレーム5とを有して枠形に形成されている。
【0032】
サイドフレーム2は、上下方向に分割された3つの板金部材(板状部材)により構成されている。下側の2つの板金部材は、溶接等により互いに接合されてロアサイドフレーム6を構成している。1番上の板金部材により構成されるアッパサイドフレーム7は、ロアサイドフレーム6の上部に左右方向の回動軸X回りに回動可能に取り付けられている。ロアフレーム4はロアサイドフレーム6に例えば溶接により結合され、アッパフレーム5はアッパサイドフレーム7に例えば溶接により結合されている。ロアフレーム4及びロアサイドフレーム6によりシートバックフレーム下部FAが構成され、アッパサイドフレーム7及びアッパフレーム5によりシートバックフレーム上部FBが構成される。
【0033】
図4に示すように、ロアサイドフレーム6は、主面が左右を向き、上下に延びている。ロアサイドフレーム6の上端部6Aは、他の部分に対して前後幅が狭く形成され、左右から見て略半円形に形成されている。ロアサイドフレーム6の前縁、上縁、及び後縁には、左右方向の内側に曲げ起こされた下側縁壁6Cが形成されている。下側縁壁6Cは、ロアサイドフレーム6の前縁に沿って延びる下側縁壁前部6Dと、ロアサイドフレーム6の上端部の縁部に沿って延びる下側縁壁上部6Eと、ロアサイドフレーム6の後縁に沿って延びる下側縁壁後部6Fとを有する。下側縁壁前部6Dと下側縁壁上部6Eとは前接続壁6Gによって互いに接続され、下側縁壁後部6Fと下側縁壁上部6Eとは後接続壁6Hによって互いに接続されている。下側縁壁前部6D、前接続壁6G、下側縁壁上部6E、後接続壁6H、及び下側縁壁後部6Fは、互いに連続した壁を形成している。下側縁壁上部6Eは、略半円形に延びている。前接続壁6G及び後接続壁6Hは、面が略上下を向いている。
【0034】
図5に示すように、ロアサイドフレーム6の左右方向外側を向く面の上部には、左右方向内側に凹んだ凹部6Jが形成されている。凹部6Jはロアサイドフレーム6の長手方向(上下)に延び、その上端は、ロアサイドフレーム6の上端部6Aの上縁に到達している。凹部6Jの下端には、ロアサイドフレーム6を厚み方向に貫通する貫通孔6Kが形成されている。貫通孔6Kは、ロアサイドフレーム6の長手方向(上下)に延びた長孔に形成されている。
【0035】
図4及び
図5に示すように、アッパサイドフレーム7は、主面が左右を向き、上下に延びている。アッパサイドフレーム7の下端部7Aは、ロアサイドフレーム6の上端部6Aの左右方向外方に配置され、ロアサイドフレーム6の上端部6Aと左右方向において対向している。アッパサイドフレーム7の前縁及び後縁には、左右方向の内側に曲げ起こされた上側縁壁前部7B及び上側縁壁後部7Cが形成されている。上側縁壁前部7Bは下側縁壁上部6Eの前方に配置され、上側縁壁後部7Cは下側縁壁上部6Eの後方に配置されている。すなわち、下側縁壁上部6Eは、前後方向において上側縁壁前部7B及び上側縁壁後部7Cの間に配置されている。上側縁壁前部7Bの下端は前接続壁6Gと隙間をおいて対向し、上側縁壁後部7Cは後接続壁6Hと隙間をおいて対向している。
【0036】
アッパサイドフレーム7の下端部7Aは、左右に延びる軸部材22によってロアサイドフレーム6の上端部6Aに回動可能に結合されている。軸部材22の中心が、アッパサイドフレーム7及びロアサイドフレーム6の回動軸Xとなる。軸部材22は、下側縁壁上部6Eの内側に配置されている。詳細には、下側縁壁上部6Eは、軸部材22の前方かつ下方から軸部材22の上方を通過して軸部材22の後方かつ下方に延在している。軸部材22によってロアサイドフレーム6及びアッパサイドフレーム7が結合された状態で、下側縁壁6Cはロアサイドフレーム6からアッパサイドフレーム7側と相反する側に突出し、上側縁壁前部7B及び上側縁壁後部7Cはアッパサイドフレーム7からロアサイドフレーム6側に突出している。上側縁壁前部7Bは軸部材22の前方を上方から下方に延在し、上側縁壁後部7Cは軸部材22の後方を上方から下方に延在している。アッパサイドフレーム7の下端部7Aは、凹部6Jの上端部と重なる位置に配置されている。
【0037】
ロアサイドフレーム6の高さ方向の中間部には、下側縁壁後部6Fから内方に突出するようにU字状の鋼棒からなる第1ボード取付部8が固定されている。ロアサイドフレーム6の上端部近傍(下側縁壁後部6Fの上端)では、下側縁壁後部6Fが他の部分に比べて大きく内方に突出しており、その突出端には更に内方に突出するようにU字状の鋼棒からなる第2ボード取付部9が固定されている。第1ボード取付部8及び第2ボード取付部9は、バックボード下部BAをシートバックフレーム下部FAに取り付けるために使用される。つまり、下側縁壁後部6Fの上端において他の部分に比べて大きく左右方向の内方に突出するようにロアサイドフレーム6に一体形成された部分が、バックボード下部BAを支持するためのバックボード支持部10となっている。
【0038】
アッパサイドフレーム7の上端部近傍では、上側縁壁後部7Cが他の部分に比べて大きく内方に突出しており、当該突出部分がバックボード上部BBをシートバックフレーム上部FBに取り付けるための第3ボード取付部11を構成している。アッパフレーム5の左右に延在する上部には、ヘッドレストS3を支持するための一対のヘッドレスト保持部12が接合されている。アッパフレーム5の概ね上下方向に延在する左右の柱部分には、板状の補強フレーム13が左右方向に延在するように掛け渡されている。補強フレーム13にはバックボード上部BBを固定するための貫通孔13aが形成されており、補強フレーム13はバックボード上部BBを固定するためのボート固定部としても機能する。
【0039】
右側のロアサイドフレーム6の内面側下部には、リンク機構16を介して右側のアッパサイドフレーム7を傾動駆動するためのアクチュエータ17が取り付けられている。アクチュエータ17は、電動モータ18と、電動モータ18の出力軸に接続された減速機構と、減速機構の回転運動を直進運動に変換する送りねじやボールねじ等の変換機構とを備え、その出力部17aが直進運動するものであり、公知の様々な機構を適用することができる。アクチュエータ17は、出力部17aをロアサイドフレーム6に沿って延在させる向きでロアサイドフレーム6の内面にボルト等により固定されている。
【0040】
一方、左側のロアサイドフレーム6の内面側下部には、車両衝突時に着席者の側面を保護するためのエアバッグ19が取り付けられている。
【0041】
図4は右側のサイドフレーム2の内面を、
図5は右側のサイドフレーム2の外面を示しており、それぞれアッパサイドフレーム7がロアサイドフレーム6と概ね平行になった通常使用状態の位置(アッパサイドフレーム7が最も後傾した位置。以下、後傾位置という。)にある状態を示している。シートSの通常使用状態では、ロアサイドフレーム6及びアッパサイドフレーム7は共に鉛直線に対して後傾しているが、ここでは、これらの部材の延在方向が上下であるものとして、またアッパサイドフレーム7が後傾位置にあるものとして部材等の位置関係(上下関係及び前後関係)を説明する。
【0042】
図5に示すように、凹部6Jには、凹部6Jの長手方向に沿って移動可能にリンク25が受容されている。リンク25は、板金部材であり、凹部6Jの長手方向に延在している。リンク25は、ロアサイドフレーム6及びアッパサイドフレーム7の間に両部材と平行に配置されている。リンク25の下端は、貫通孔6Kと対向する位置に配置されている。リンク25の下端には、貫通孔6Kを通過してロアサイドフレーム6の左右方向内方に突出した第1ピン24が回動可能に結合されている。第1ピン24は貫通孔6Kに上下方向に摺動自在に係合している。第1ピン24の先端には、アクチュエータ17の出力部17aが連結される。
【0043】
リンク25の上端は、ロアサイドフレーム6及びアッパサイドフレーム7の間に配置され、アッパサイドフレーム7の左右方向内側の面に左右に延びる第2ピン27によって回動可能に結合されている。第2ピン27は、軸部材22の後方かつ下方に配置されている。
【0044】
次に、アッパサイドフレーム7の動作を説明する。
図6(A)は
図4と同様にアッパサイドフレーム7が後傾位置にある状態を示し、
図6(B)はアッパサイドフレーム7が最も前傾した位置(以下、前傾位置という。)にある状態を示している。
図6(A)に示すアッパサイドフレーム7の後傾位置は第1ピン24が貫通孔6Kの下端に当接することによって定まり、
図6(B)に示すアッパサイドフレーム7の前傾位置は第1ピン24が貫通孔6Kの上端に当接することによって定まる。
【0045】
アクチュエータ17が伸長駆動されると、出力部17a及び第1ピン24が貫通孔6Kに沿ってロアサイドフレーム6と平行に上方に直進する。これに伴い、リンク25がアッパサイドフレーム7の回動軸Xよりも後方の第2ピン27を上方に押し上げ、アッパサイドフレーム7が回動軸Xを中心にして前方へ傾動し、アッパサイドフレーム7が前傾位置まで移動する。
【0046】
アクチュエータ17が短縮駆動された場合には、出力部17a及び第1ピン24が貫通孔6Kに沿ってロアサイドフレーム6と平行に下方に直進し、これに伴ってリンク25が第2ピン27を下方に引き下げ、アッパサイドフレーム7が回動軸Xを中心にして後方へ傾動し、アッパサイドフレーム7が後傾位置まで移動する。
【0047】
このように、本実施形態では
図4〜
図6に示されるように、ロアサイドフレーム6に固定されたアクチュエータ17が、ロアサイドフレーム6に沿って直進運動する出力部17aを有している。そしてアクチュエータ17が、シートバックフレーム上部FBにおける回動軸Xに対して後方にオフセットした第2ピン27と出力部17aとを連結するリンク25を含むリンク機構16を介してシートバックフレーム上部FBを傾動駆動する。これにより、シートバックS2の薄型化が可能になり、且つアクチュエータ17をがたつきなく少ない部品点数で組み付けることが可能になっている。
【0048】
本実施形態では、リンク25の上端部がロアサイドフレーム6の上端部6Aとアッパサイドフレーム7の下端部7Aとによって覆われ、外部への露出面積が減るため、異物がリンク25に接触し難くなる。これにより、リンク25への異物の噛み込みが抑制される。また、リンク25は、凹部6Jに受容され、ロアサイドフレーム6の外方に突出しないため、異物がリンク25に一層接触し難くなる。
【0049】
ロアサイドフレーム6の上端部6Aの縁部に、連続した下側縁壁6C(下側縁壁上部6E)が設けられているため、ロアサイドフレーム6の剛性が向上する。また、アッパサイドフレーム7の下端部7Aの前後縁部に、上側縁壁前部7B及び上側縁壁後部7Cがもうけられているため、アッパサイドフレーム7の剛性が向上する。また、上側縁壁前部7B及び上側縁壁後部7Cの間に下側縁壁上部6Eが配置されるため、ロアサイドフレーム6及びアッパサイドフレーム7の結合部の剛性が向上する。
【0050】
また、ロアサイドフレーム6の延在方向に沿って延び、アクチュエータ17の出力部17aを案内する貫通孔6Kがロアサイドフレーム6に形成されている。そのため、アクチュエータ17の出力部17aのがたつきが防止され、シートバックS2の中折れ動作が円滑になる。
【0051】
そしてアクチュエータ17の出力部17aとリンク25とが、左右方向に延在して貫通孔6Kに係合する第1ピン24を介して互いに連結され、貫通孔6Kが第1ピン24を介して出力部17aを案内している。そのため、専用の被ガイド部や被ガイド部材を設ける必要がなく、構成が簡素化されている。
【0052】
また、バックボード支持部10の前方にアクチュエータ17の出力部17aが配置されているため、アクチュエータ17の出力部17aが後方からバックボード支持部10により覆われ、後方からの荷重に対して保護される。
【0053】
更に
図3に示されるように、シートバックフレームFを中折れ駆動するためのアクチュエータ17が、左右一対のロアサイドフレーム6の内側に配置されて右側のロアサイドフレーム6のみに取り付けられている。これにより、有効な空間を利用してモータ15及びアクチュエータ17を取り付けることが可能になり、シートバックS2の厚さが影響を受けることがない。
【0054】
加えて、エアバッグ19が、左右一対の前記ロアサイドフレーム6の内側に配置されて左側のロアサイドフレーム6に取り付けられている。これによっても、有効な空間を利用してエアバッグ19を取り付けることが可能になり、シートバックS2の厚さが影響を受けることがない。
【0055】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、一例として車両用シートのシートバックS2として中折れシートバックの説明を行ったが、鉄道車両や航空機、船舶などの乗り物用シートや家具用又はオフィス用のいす等にも広く適用することができる。また、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【0056】
下側縁壁6C、上側縁壁前部7B、及び上側縁壁後部7Cの構成は適宜変更することができる。例えば、上側縁壁前部7B、及び上側縁壁後部7Cを左右方向外向き(ロアサイドフレーム6と相反する向き)に突出させてもよい。この場合、上側縁壁前部7B及び上側縁壁後部7Cの下端を回動軸Xの下方において連続させてもよい。すなわち、上側縁壁前部7B及び上側縁壁後部7Cがアッパサイドフレーム7の下端部7Aの縁部に沿って連続的に延在させてもよい。
【符号の説明】
【0057】
2 :サイドフレーム
5 :アッパフレーム
6 :ロアサイドフレーム
6A :上端部
6C :下側縁壁
6D :下側縁壁前部
6E :下側縁壁上部
6F :下側縁壁後部
6G :前接続壁
6H :後接続壁
6J :凹部
6K :貫通孔
7 :アッパサイドフレーム
7A :下端部
7B :上側縁壁前部
7C :上側縁壁後部
16 :リンク機構
17 :アクチュエータ
17a :出力部
22 :軸部材
24 :第1ピン
25 :リンク
26 :貫通孔
27 :第2ピン
F :シートバックフレーム
S :シート
S2 :中折れシートバック
X :回動軸