特許第6871514号(P6871514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871514
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】負電源制御回路及び電源装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/10 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   G05F1/10 304F
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-128264(P2017-128264)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-12383(P2019-12383A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 康平
(72)【発明者】
【氏名】高野 陽一
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−063849(JP,A)
【文献】 特開2007−135388(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0162618(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正電圧の制御信号に基づき負電圧レギュレータ回路を制御する負電源制御回路であって、
前記正電圧の制御信号が入力される制御信号入力端子と、
負の電源電圧が入力される負電圧入力端子と、
負電圧の制御信号が出力される負電圧制御信号出力端子と、
前記制御信号入力端子と前記負電圧入力端子との間に接続され、前記正電圧の制御信号に基づき電流を流す電圧電流変換回路と、
前記電圧電流変換回路と直列に接続され、前記負電圧入力端子へ電流を引き込み可能な第1電流源と、
前記電圧電流変換回路と前記第1電流源との間に前記電圧電流変換回路及び前記第1電流源と直列に接続された第1クランプ回路とを備え、
前記第1クランプ回路は、前記電圧電流変換回路に電流が流れる期間に、前記第1クランプ回路と前記第1電流源との間の第1中間点の電圧に応じて前記第1クランプ回路に流れる電流を制限し、前記第1中間点の電圧をクランプし、
前記電圧電流変換回路、前記第1クランプ回路及び前記第1電流源を通る電流経路中の電圧又は電流に基づいて前記負電圧の制御信号が生成されることを特徴とする負電源制御回路。
【請求項2】
前記第1クランプ回路は、ゲートを接地電位に接続し、ドレインを前記電圧電流変換回路に接続し、ソース及びバックゲートを前記第1中間点に接続するNMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1記載の負電源制御回路。
【請求項3】
前記第1電流源に電流が流れない期間に、前記第1中間点の電圧を前記負の電源電圧よりも高い電圧にクランプする第2クランプ回路を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の負電源制御回路。
【請求項4】
接地電位から前記負電圧入力端子へ電流を流す第2電流源と、
前記第2電流源の電流を転写して接地電位と前記負電圧入力端子との間の第2中間点へ電流を流し込み可能な第1カレントミラーと、
前記電圧電流変換回路、前記第1クランプ回路及び前記第1電流源に流れる電流を転写して、前記第2中間点から電流を引き込み可能な第2カレントミラーと、
を更に備え、
前記負電圧制御信号出力端子が前記第2中間点であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の負電源制御回路。
【請求項5】
負電圧レギュレータ回路に備わる出力コンデンサのディスチャージスイッチを制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の負電源制御回路。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載の負電源制御回路と、前記負電源制御回路の負電圧の制御信号により制御される負電圧レギュレータ回路とを備えることを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負電圧レギュレータ回路を正電圧の制御信号で制御する負電源制御回路及びこの負電源制御回路を有する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像デバイスは、駆動電圧として正負両方の電圧を必要とする。このため、撮像デバイスを有する電子機器には、正電圧を出力する正電圧レギュレータ回路と負の電源電圧を出力する負電圧レギュレータ回路とが設けられる。一方、正電圧レギュレータ回路及び負電圧レギュレータ回路は、マイクロコンピュータ等により回路のリセット制御又は出力のオン・オフ制御が行われることがある。このような処理を負電圧レギュレータ回路に対して行うには、マイクロコンピュータから出力される正電圧の制御信号を負電圧の制御信号に変換して負電圧レギュレータ回路へ出力する必要がある。
【0003】
特許文献1には、制御信号入力端子Vcont0に入力される正電圧の制御信号を負電圧の制御信号Va0に変換する負電源制御回路100(図1を参照)が示されている。図1の負電源制御回路100によれば、制御信号入力端子Vcont0にローレベルの制御信号が入力されると、電圧電流変換回路110に流れる電流I1がゼロとなる。一方、電流源120が接続点aから電流I2を引き込むことで、接続点aにローレベル(負電圧)の制御信号Va0が出力される。また、制御信号入力端子Vcont0にハイレベルの制御信号(正電圧)が入力されると、電圧電流変換回路110に電流I1が流れ、これが電流源120の電流I2よりも大きくなることで、接続点aの電圧が上昇する。さらに、クランプ回路130が電流I1の一部を引き込んで、接続点aの電圧を接地電位にクランプする。これにより、接続点aにハイレベル(ほぼ接地電位)の制御信号Va0を出力することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−063849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、図1の負電源制御回路100によれば、制御信号入力端子Vcont0に入力される正電圧の制御信号を負電圧の制御信号Va0に変換することができる。しかしながら、図1の負電源制御回路100では、制御信号入力端子Vcont0の電圧値が規定よりも高くなった場合に、電圧電流変換回路110に流れる電流I1が大幅に増大するという課題が生じる。すなわち、制御信号入力端子Vcont0から回路内部へ引き込まれる電流が非常に大きくなる。通常、制御信号はマイクロコンピュータから制御信号入力端子Vcont0へ出力されるが、一般に、マイクロコンピュータは大きな電流を流せる出力端子を持たない。このため、制御信号入力端子Vcont0の電流が増大すると、制御信号入力端子Vcont0に入力される制御信号を正常な電圧範囲に維持できないという課題が生じる。
【0006】
また、図1の負電源制御回路100では、制御信号入力端子Vcont0の電圧値が規定よりも高い場合に、電圧電流変換回路110の電流I1の増大に、クランプ回路130の電流の引き込みが追い付かなくなる。電流の引き込みが追い付かなくなると、制御信号Va0が接地電位よりも高い電圧(正電圧)になってしまうという課題が生じる。
【0007】
負電源制御回路は、入力される正電圧の制御信号として、電圧値の異なる複数種類の制御信号に対応できれば、仕様の異なる複数種類の機器に同一の回路を組み込むことができ、回路の製造コストを低減できる等の効果が得られる。しかしながら、図1の負電源制御回路100では、上述のように制御信号入力端子Vcont0に高い電圧の制御信号が入力されるような場合に、うまく対応することが難しいという課題がある。
【0008】
本発明は、制御信号入力端子に高い電圧の制御信号が入力されても、制御信号入力端子から回路内部へ流れ込む電流が増大すること、及び、変換後の負電圧の制御信号が接地電位を越えてしまうことを抑制できる負電源制御回路を提供することを目的とする。また、本発明は、このような負電源制御回路を有する電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、正電圧の制御信号に基づき負電圧レギュレータ回路を制御する負電源制御回路であって、
前記正電圧の制御信号が入力される制御信号入力端子と、
負の電源電圧が入力される負電圧入力端子と、
負電圧の制御信号が出力される負電圧制御信号出力端子と、
前記制御信号入力端子と前記負電圧入力端子との間に接続され、前記正電圧の制御信号に基づき電流を流す電圧電流変換回路と、
前記電圧電流変換回路と直列に接続され、前記負電圧入力端子へ電流を引き込み可能な第1電流源と、
前記電圧電流変換回路と前記第1電流源との間に前記電圧電流変換回路及び前記第1電流源と直列に接続された第1クランプ回路とを備え、
前記第1クランプ回路は、前記電圧電流変換回路に電流が流れる期間に、前記第1クランプ回路と前記第1電流源との間の第1中間点の電圧に応じて前記第1クランプ回路に流れる電流を制限し、前記第1中間点の電圧をクランプし、
前記電圧電流変換回路、前記第1クランプ回路及び前記第1電流源を通る電流経路中の電圧又は電流に基づいて前記負電圧の制御信号が生成されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、第1クランプ回路が、電圧電流変換回路と直列に接続され、第1中間点の電圧に応じて電流を制限して第1中間点の電圧をクランプする。したがって、制御信号入力端子に高い電圧の制御信号が入力されても制御信号入力端子から流れ込む電流が増大しない。また、図1に示した従来のクランプ回路130では、電流の引き込み量を多くして電圧をクランプするため、制御信号入力端子から流れ込む電流が増えた場合に、電流の引き込みが追い付かずに負電圧の制御信号の電圧が接地電位よりも上昇してしまうという課題があった。しかし、本発明では、第1クランプ回路は電流量を制限して電圧をクランプするため、図1のクランプ回路と比較して、電圧のクランプ不足を生じさせるような現象が発生しない。したがって、本発明に係る構成によれば、制御信号入力端子に高い電圧の制御信号が入力されても、変換後の制御信号が接地電位を上回ることを抑制できる。
【0011】
ここで、好ましくは、前記第1クランプ回路は、ゲートを接地電位に接続し、ドレインを前記電圧電流変換回路に接続し、ソース及びバックゲートを前記第1中間点に接続するNMOSトランジスタであってもよい。
【0012】
このような構成によれば、負電源制御回路の素子数の低減及び回路面積の低減を図れる。
【0013】
さらに好ましくは、本発明に係る負電源制御回路は、前記第1電流源に電流が流れない期間に、前記第1中間点の電圧を前記負の電源電圧よりも高い電圧にクランプする第2クランプ回路を更に備えてもよい。
【0014】
このような構成によれば、正電圧の制御信号がローレベルからハイレベルに変化する際、電圧電流変換回路に過大な電圧が加わることを抑制できる。これにより、電圧電流変換回路に要求される耐圧を低減することができる。
【0015】
さらに好ましくは、本発明に係る負電源制御回路は、
接地電位から前記負電圧入力端子へ電流を流す第2電流源と、
前記第2電流源の電流を転写して接地電位と前記負電圧入力端子との間の第2中間点へ電流を流し込み可能な第1カレントミラーと、
前記電圧電流変換回路、前記第1クランプ回路及び前記第1電流源に流れる電流を転写して、前記第2中間点から電流を引き込み可能な第2カレントミラーと、
を更に備え、
前記負電圧制御信号出力端子が前記第2中間点であってもよい。
【0016】
このような構成によれば、負電圧入力端子に入力される負の電源電圧の絶対値が小さい場合でも、変換後の負電圧の制御信号が不安定になることを防止することができる。
【0017】
さらに、本発明に係る負電源制御回路は、負電圧レギュレータ回路に備わる出力コンデンサのディスチャージスイッチを制御するように構成されてもよい。
【0018】
撮像デバイスを有する電子機器では、負電圧レギュレータ回路に備わる出力コンデンサを何度も高速にディスチャージすることがある。したがって、制御信号入力端子に流れ込む電流を抑制できる本発明に係る負電源制御回路を、負電圧レギュレータ回路のディスチャージの制御に適用することで、高速なディスチャージの制御を安定的に実現でき、さらに、電子機器の消費電流を大幅に削減できるという効果が得られる。
【0019】
さらに、本発明に係る電源装置は、上述した負電源制御回路と、前記負電源制御回路の負電圧の制御信号により制御される負電圧レギュレータ回路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、制御信号入力端子に高い電圧の制御信号が入力されても、制御信号入力端子から回路内部へ流れ込む電流が増大すること、及び、変換後の負電圧の制御信号が接地電位を越えてしまうことを抑制できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来の負電源制御回路を示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係る負電源制御回路を示す図である。
図3】本発明の実施形態2に係る負電源制御回路を示す図である。
図4】制御信号入力端子の電圧とクランプ電圧との関係を示すグラフである。
図5】本発明の実施形態3に係る負電源制御回路を示す図である。
図6】負の電源電圧の大きさと負電圧の制御信号との関係を示すグラフである。
図7】制御信号入力端子の電圧と負電圧の制御信号との関係を示すグラフである。
図8】制御信号入力端子の電圧と各素子に加わる電圧との関係を示すグラフである。
図9】制御信号入力端子の電圧と制御信号入力端子に流れ込む電流との関係を示すグラフである。
図10】第1クランプ回路の変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
(実施形態1)
図2は、本発明の実施形態1に係る負電源制御回路を示す図である。
【0024】
実施形態1の負電源制御回路1は、制御信号入力端子Vcont1に正電圧の制御信号を入力し、第1中間点N1に負電圧の制御信号Va1を出力する回路である。第1中間点N1は、本発明に係る負電圧制御信号出力端子の一例に相当する。正電圧の制御信号は例えばマイクロコンピュータにより入力される。負電圧の制御信号Va1は、負の電源電圧で動作するインバータIn1、In2を介して負電圧レギュレータ回路200に出力され、負電圧レギュレータ回路200の出力の切替又は出力コンデンサのディスチャージ制御など、所定の制御に用いられる。負電圧レギュレータ回路200は、負の電源電圧を発生させて出力端子Voutに出力する。インバータIn1、In2及び負電圧レギュレータ回路200は負の電源電圧により動作するトランジスタを有し、外部からトランジスタを制御する場合には、負電圧の制御信号を必要とする。本発明の実施形態1に係る電源装置30は、負電源制御回路1、インバータIn1、In2、負電圧レギュレータ回路200を備える。
【0025】
負電源制御回路1は、図2に示すように、正電圧の制御信号が入力される制御信号入力端子Vcont1、負の電源電圧が入力される負電圧入力端子Vin−、接地される接地端子GND、電圧電流変換回路11、第1クランプ回路12及び第1電流源13を備える。電圧電流変換回路11、第1クランプ回路12及び第1電流源13は、制御信号入力端子Vcont1と負電圧入力端子Vin−との間に、この順に直列に接続されている。負電圧の制御信号Va1が出力される第1中間点N1は、第1クランプ回路12と第1電流源13との間の接続点である。以下、制御信号入力端子Vcont1に入力される正電圧の制御信号と、負電圧入力端子Vin−に入力される負の電源電圧と、接地電位とを、「Vcont1」、「Vin−」及び「GND」のように符号と同一の表記で表わす。同様に後述の実施形態2、3の制御信号入力端子Vcont2、Vcont3に入力される正電圧の制御信号を「Vcont2」、「Vcont3」と表わす。
【0026】
電圧電流変換回路11は、正電圧の制御信号Vcont1がローレベルのときに電流I1を遮断し、正電圧の制御信号Vcont1がハイレベルのときに電流I1を流す。電圧電流変換回路11は、例えばゲートを接地し、ソース及びバックゲートを制御信号入力端子に接続したPMOSトランジスタ(Pチャネル形MOSFET:metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)M1から構成できる。
【0027】
第1電流源13は、一定の飽和電流I2を流すことが可能な回路であり、両端間に所定以上の電圧が加えられているときに電流I2を流す。第1電流源13は、例えばゲート及びソースを負電圧入力端子Vin−に接続し、ドレインを第1中間点N1に接続したデプレッション形のNMOSトランジスタ(Nチャネル形MOSFET)M2から構成できる。
【0028】
第1クランプ回路12は、電圧電流変換回路11に電流が流れているときに、第1中間点N1の電圧をクランプする。第1クランプ回路12は、第1中間点N1の電圧に応じて、第1クランプ回路12に流れる電流を制限することで、第1中間点N1の電圧をクランプする。第1クランプ回路12は、例えばゲートを接地し、ソース及びバックゲートを第1中間点N1に接続し、ドレインを電圧電流変換回路11の一端に接続したNMOSトランジスタM3から構成できる。
【0029】
負電源制御回路1は、さらに、制御信号入力端子Vcont1と接地端子GNDとの間にプルダウン用の抵抗Rが接続されていても良い。抵抗Rは、制御信号入力端子Vcont1にハイレベルの信号が入力されない期間に、制御信号入力端子Vcont1の電圧をローレベルに引き下げる。
【0030】
<動作説明>
制御信号Vcont1がローレベル(接地電位GND)のとき、PMOSトランジスタM1のゲート・ソース間電圧は0Vとなり、PMOSトランジスタM1がオフして電流I1がゼロになる。一方、第1電流源13は負電圧入力端子Vin−に電流I2を引き込み可能なので、第1中間点N1の電圧は負の電源電圧Vin−(負電圧のローレベル)になる。
【0031】
制御信号Vcont1がハイレベルのとき、PMOSトランジスタM1のゲート・ソース間電圧はスレショルド電圧を越え、PMOSトランジスタM1がオンして電流I1を流す。そして、電流I1が、第1電流源13の飽和電流I2を上回ることで、第1中間点N1の電圧が上昇する。一方、第1中間点N1の電圧が接地電位GNDより上昇すると、NMOSトランジスタM3のゲート・ソース間電圧が低下し、NMOSトランジスタM3がオフして電流I1がゼロとなる。電流I1が流れないと、第1電流源13が電流I2を引き込んで、第1中間点N1の電圧を低下させる。したがって、これらの平衡状態となるようにNMOSトランジスタM3のオン抵抗及び電流量が調整されて、第1中間点N1の電圧が接地電位GNDより少し低い電圧にクランプされる。
【0032】
このような動作によって、第1中間点N1に、接地電位GNDと負の電源電圧Vin−との間の範囲でローレベルとハイレベルとに切り替わる負電圧の制御信号Va1が出力される。
【0033】
以上のように、実施形態1の負電源制御回路1によれば、第1クランプ回路12であるNMOSトランジスタM3が、電圧電流変換回路11であるPMOSトランジスタM1と直列に接続される。さらに、第1クランプ回路12は、PMOSトランジスタM1に電流I1が流れている期間に、第1中間点N1の電圧に応じて自らに流れる電流を制限して、第1中間点N1の電圧をクランプする。図1に示した従来の負電源制御回路100では、クランプ回路130が電流I1の一部を引き込んで電圧をクランプしていた。そのため、仮に制御信号Vcont1の電圧値が高くなって電流I1が大きくなった場合に、クランプ回路130への電流の引き込み不足が生じるなど、電圧をクランプできない状況が生じやすかった。これに対して、実施形態1の第1クランプ回路12は、自らに流れる電流を制限して電圧をクランプするため、電圧をクランプできない状況が生じない。したがって、実施形態1の負電源制御回路1によれば、仮に制御信号Vcont1の電圧値が高くなった場合でも、変換後の制御信号Va1を確実に負電圧に抑えることができる。
【0034】
仮に、負の電源電圧で動作するインバータIn1に正電圧が入力されると、インバータIn1の構成素子がラッチアップすることがある。また、負電圧レギュレータ回路200の負の電源電圧で動作する制御素子に正電圧が入力されると、制御素子がラッチアップすることがある。しかし、本実施形態の負電源制御回路1によれば、制御信号Vcont1が高い電圧になっても、負電圧の制御信号Va1が確実に負電圧となるので、制御対象をラッチアップさせるといった不都合が生じない。したがって、制御信号入力端子Vcont1に高い電圧が加えられるシステムにおいても、実施形態1の負電源制御回路1を適用することができる。
【0035】
また、実施形態1の負電源制御回路1によれば、電圧電流変換回路11を介して第1クランプ回路12に流れる電流I1を制限して第1中間点N1の電圧がクランプされる。したがって、仮に制御信号Vcont1の電圧値が高くなった場合でも、制御信号入力端子Vcont1に流れ込む電流が増大することがない。
【0036】
また、実施形態1の負電源制御回路1によれば、主に3つのMOSトランジスタにより上述の機能が達成されるので、素子数及び回路面積の低減を図ることができる。実施形態1の電源装置30によれば、上述した負電源制御回路1の効果が奏される。
【0037】
(実施形態2)
上述した実施形態1の負電源制御回路1(図2を参照)は、制御信号Vcont2がローレベルのときに、NMOSトランジスタM3がオンして、PMOSトランジスタM1とNMOSトランジスタM3との間の電圧Vcが負の電源電圧Vin−になる。このため、制御信号Vcont2がローレベルからハイレベルへ切り替わる瞬間、PMOSトランジスタM1のソース・ドレイン間に、大きな電圧“Vcont2−Vin−”が加わってしまうという課題がある。したがって、実施形態1の負電源制御回路1では、負の電源電圧Vin−の電圧値に制限を課すか、PMOSトランジスタM1の耐圧を上げなければならないという制約が生じる。実施形態2の負電源制御回路1Aは、このような課題を解決することができる。
【0038】
図3は、本発明の実施形態2に係る負電源制御回路を示す図である。
【0039】
実施形態2の負電源制御回路1Aは、主に第2クランプ回路14を備える点が、実施形態1と異なる。実施形態1と同様の構成要素については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。実施形態2に係る電源装置30Aは、負電源制御回路1A、インバータIn1、In2、負電圧レギュレータ回路200を備える。
【0040】
実施形態2においては、制御信号入力端子Vcont2と負電圧入力端子Vin−との間に、電圧電流変換回路11、第1クランプ回路12、第2クランプ回路14のPMOSトランジスタM6及び第1電流源13が、この順で直列に接続されている。そして、負電源制御回路1Aは、負電圧の制御信号Va2を第2クランプ回路14のPMOSトランジスタM6と第1電流源13との間の接続点Naに出力する。接続点Naは、本発明に係る負電圧制御信号出力端子の一例に相当する。
【0041】
第2クランプ回路14は、PMOSトランジスタM1に電流I1が流れていない期間に、第1中間点N1の電圧を負の電源電圧Vin−より高い電圧にクランプする。第2クランプ回路14は、接地端子GNDと負電圧入力端子Vin−との間に直列に接続された、複数のPMOSトランジスタM4、M5及び第2電流源15を備える。さらに、第2クランプ回路14は、第1クランプ回路12と第1電流源13との間に接続されたPMOSトランジスタM6を備える。
【0042】
第2電流源15は、例えばデプレッション形のNMOSトランジスタM7から構成され、ゲート及びソースを負電圧入力端子Vin−に接続し、ドレインを複数のPMOSトランジスタM4、M5を介して接地端子GNDに接続する。複数のPMOSトランジスタM4、M5はゲートとドレインを短絡させてダイオード接続されている。このような構成により、第2電流源15に一定の電流I7が流れ、PMOSトランジスタM4、M5はオンの状態にされる。
【0043】
一方の電流経路に接続されたPMOSトランジスタM6は、もう一方の電流経路において第2電流源15に接続されたPMOSトランジスタM4とゲートが共通にされる。
【0044】
以下、PMOSトランジスタM1、M4、M5、M6及びNMOSトランジスタM3のゲート・ソース間電圧を、それぞれ「Vgs1」、「Vgs4」、「Vgs5」、「Vgs6」、「Vgs3」と記す。また、PMOSトランジスタM1のドレイン・ソース間電圧を「Vds1」、第1中間点N1の電圧を「Vb」と記す。
【0045】
<動作説明>
正電圧の制御信号Vcont2がローレベルのとき、PMOSトランジスタM1はオフして電流I1が流れない。このため、PMOSトランジスタM6の電流はゼロとなる。そして、PMOSトランジスタM6の電流がゼロであると、PMOSトランジスタM6のゲート・ソース間電圧Vgs6が0Vになる。したがって、第1中間点N1の電圧Vbは式(1)となる。さらに、NMOSトランジスタM3のゲート・ソース間電圧Vgs3は電圧−Vbであるので、NMOSトランジスタM3はオンし、式(2)が成り立つ。
Vb=−Vgs5−Vgs4 (1)
Vc=Vb (2)
【0046】
したがって、正電圧の制御信号Vcont2がローレベルからハイレベルへ切り替わる瞬間、PMOSトランジスタM1に加えられる電圧Vds1は、式(3)となる。後述するように、電圧Vb及び電圧Vcは、負の電源電圧Vin−に影響されない値であり、式(3)から、PMOSトランジスタM1に加わる電圧に負の電源電圧Vin−が影響しないことが分かる。
Vds1=Vcont2−Vc=Vcont2−Vb
=Vcont2+Vgs5+Vgs4 (3)
【0047】
正電圧の制御信号Vcont2がハイレベルのとき、PMOSトランジスタM1に流れることができる飽和電流I1は式(4)に従う。
I1=(1/2)μs・(W1/L1)・(Vgs1−Vth) (4)
ここで、μsはチャネル移動度、W1はゲート幅、L1はゲート長、Vthはスレショルド電圧である。
【0048】
NMOSトランジスタM3及びPMOSトランジスタM6はゲート接地回路のように動作し、電流I1が電流I2に達すると、接続点Naの電圧が上昇し、負電圧の制御信号Va2がハイレベルになる。ここで、第1中間点N1の電圧Vbは式(5)となる。仮に電圧Vbが接地電位GNDよりも上昇して電圧Vgs3が低下すると、NMOSトランジスタM3がオフして電流I1が流れなくなる。このため、電圧Vgs3は式(6)を満たす値となる。また、仮に電圧Vbが低下して電圧Vgs6が低下するとPMOSトランジスタM6がオフして電流I1が流れなくなる。このため、電圧Vgs6は式(7)を満たす値となる。
Vb=−Vgs3=−Vgs5−Vgs4+Vgs6 (5)
Vgs3≧Vth3 (6)
Vgs6≧Vth6 (7)
ここで、Vth3及びVth6はスレショルド電圧である。
【0049】
式(5)の式に、各スレショルド電圧Vth3、Vth6を0.4V、電圧Vgs4、Vgs5の各々を1Vとして値を代入すると、第1中間点N1の電圧Vbは式(8)の範囲でクランプされることが分かる。
Vb=−0.4V〜−1.6V (8)
【0050】
図4には、電圧Vbと制御信号Vcont2の電圧との関係を示すグラフを示す。以上の動作から、第1中間点N1の電圧Vbは図4のグラフのようにクランプされる。ここで、負の電源電圧Vin−は約−6Vに設定されている。続いて、実施形態2の負電源制御回路1Aによる作用効果について述べる。
【0051】
<負の電源電圧Vin−と素子耐圧との関係>
図4のグラフに示したように、制御信号Vcont2がローレベル(0V)のとき、第1中間点N1の電圧Vbは負の電源電圧Vin−よりも高い電圧にクランプされる。したがって、正電圧の制御信号Vcont2がローレベルからハイレベルへ切り替わる瞬間に、PMOSトランジスタM1に加えられる電圧Vds1が過大になることが回避され、PMOSトランジスタM1の耐圧を低くすることができる。
【0052】
<負電圧の制御信号Va2の極性>
図4のグラフに示したように、第1中間点N1の電圧Vbは、制御信号Vcont2の電圧値が大きくなっても接地電位GNDより低く抑えられる。このため、接続点Naの電圧(制御信号Va2)は、接地電位GNDより低い電圧となる。したがって、仮に制御信号Vcont2が高い電圧になった場合でも、負電圧の制御信号Va2を確実に接地電位GNDより低い電圧に抑えることができる。
【0053】
<正電圧の制御信号Vcont2と素子耐圧との関係>
制御信号Vcont2がハイレベルのとき、電圧Vgs1は大きくなり、PMOSトランジスタM1のオン抵抗は小さくなる。このため、式(8)が成り立つ。
Vc≒Vcont2 (8)
【0054】
さらに、電圧をクランプするNMOSトランジスタM3には、電圧Vc−Vb=Vcont2−Vbが加わる。したがって、制御信号Vcont2の電圧値にはNMOSトランジスタM3の素子耐圧を越えないように制限が課せられる。例えば、NMOSトランジスタM3の耐圧が6Vの場合、制御信号Vcont2の電圧値は5.6V以下に制限される。しかし、この場合でも、一般的なマイクロコンピュータ等から出力される制御信号Vcont2であれば、1.8V又は3.3V程度の電圧となり、耐圧を越えることはない。
【0055】
<制御信号入力端子Vcont2の電流>
制御信号入力端子Vcont2から流れ込む電流Icontは、抵抗Rに流れるプルダウン電流と、PMOSトランジスタM1の電流I1との和になる。さらに、電流I1は第1電流源13の電流I2に制限されるため、式(9)が成り立つ。
Icont=(Vcont2/R)+I1=(Vcont2/R)+I2 (9)
ここで、抵抗Rの抵抗値を符号と同一の表記で表している。抵抗値Rは、十分に大きい値に設定される。したがって、正電圧の制御信号Vcont2の電圧値が高くなっても、制御信号入力端子Vcont2から流れ込む電流Icontの大幅な増大を抑制することができる。
【0056】
以上のように、実施形態2の負電源制御回路1A及び電源装置30Aによれば、実施形態1と同様の効果に加えて、PMOSトランジスタM1に要求される耐圧を低減できるという効果が得られる。
【0057】
(実施形態3)
図3に示した実施形態2の負電源制御回路1Aにおいては、負の電源電圧Vin−がトランジスタの動作電圧より高い値(例えば−0V〜−1.5V)である場合、回路が正常に動作しないことがある。具体的には、このような場合に、制御信号Vcont3がハイレベルになると、電圧Vgs6が低下することでPMOSトランジスタM6がゲート接地回路として機能せず、PMOSトランジスタM6のオン抵抗が上がって電流I1が低下する。そして、電流I1が低下することで、正電圧の制御信号Vcont3がハイレベルであっても、接続点Naに出力される負電圧の制御信号Va2がローレベル(負の電源電圧Vin−)に反転してしまうという異常をきたす。実施形態3の負電源制御回路1Bは、このような課題を解決することができる。
【0058】
図5は、実施形態3に係る負電源制御回路1Bを示す図である。
【0059】
実施形態3に係る負電源制御回路1Bは、主に、負電圧の制御信号Va3を出力するために第1カレントミラー18及び第2カレントミラー19を設けた点が、実施形態2と異なる。実施形態3に係る電源装置30Bは、負電源制御回路1B、インバータIn1、In2、In3、負電圧レギュレータ回路200を備える。実施形態2と同様の構成要素については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0060】
実施形態3においては、接地端子GNDと負電圧入力端子Vin−との間に、電流I7を転写する第1カレントミラー18のPMOSトランジスタM10と、電流I1(=I2)を転写する第2カレントミラー19のNMOSトランジスタM9とが直列接続される。そして、負電源制御回路1Bは、これらの間の第2中間点N2に負電圧の制御信号Va3を出力する。第2中間点N2は、本発明に係る負電圧制御信号出力端子の一例に相当する。実施形態3の負電圧の制御信号Va3は、実施形態1及び実施形態2のものと極性が逆になる。制御信号Va3は、インバータIn1〜In3を介して負電圧レギュレータ回路200における出力コンデンサC1のディスチャージスイッチM11を制御するのに用いられる。出力コンデンサC1は負の電源電圧が加えられ、インバータIn1〜In3及びディスチャージスイッチM11は負の電源電圧で動作する。
【0061】
第1カレントミラー18は、ソースを接地端子GNDに接続し、ゲートを共通にしたPMOSトランジスタM5、M10を有する。一方のPMOSトランジスタM5のゲートとドレインが短絡される。この構成により、一方のPMOSトランジスタM5に流れる電流I7の転写電流を他方のPMOSトランジスタM10に流すことが可能となる。PMOSトランジスタM10はそのソース・ドレイン間電圧が大きいときに転写電流を流す。第1カレントミラー18の転写比率は限定されるものでないが、ここでは1:1とする。
【0062】
第2カレントミラー19は、ゲートを共通にしたNMOSトランジスタM8、M9を有する。一方のNMOSトランジスタM8は、ゲート及びドレインが短絡され、ソースが第1電流源13に接続される。NMOSトランジスタM8は、第1電流源13とPMOSトランジスタM6との間に、これらと直列に接続されて、電圧電流変換回路11に流れる電流I1を流す。他方のNMOSトランジスタM9は、ソースが負電圧入力端子Vin−に接続される。第1電流源13にその飽和電流I2より少ない電流が流れているとき(I1<I2)、第1電流源13のNMOSトランジスタM2のソース・ドレイン間電圧はほぼ0Vになり、NMOSトランジスタM8、M9のソース電圧と同等となる。したがって、このときに一方のNMOSトランジスタM8に流れる電流I1の転写電流を他方のNMOSトランジスタM9に流すことができる。NMOSトランジスタM9はそのソース・ドレイン間電圧が大きいときに転写電流を流す。第2カレントミラー19の転写比率は限定されるものでないが、ここでは1:1とする。
【0063】
<動作説明>
実施形態3においても電圧電流変換回路11、第1クランプ回路12、第1電流源13及び第2クランプ回路14は実施形態2と同様に動作する。
【0064】
制御信号Vcont3がローレベルのとき、電流I1がゼロとなり、第2カレントミラー19によって電流I1がNMOSトランジスタM9に転写される。また、第1カレントミラー18によってPMOSトランジスタM10に電流I7が転写されるので、第2中間点N2には接地端子GNDから電流が流れ込み、第2中間点N2にハイレベル(接地電位GNDより僅かに低い電圧)の制御信号Va3が出力される。
【0065】
制御信号Vcont3がハイレベルのとき、電流I1が大きくなって第2カレントミラー19のNMOSトランジスタM8には第1電流源13の飽和電流I2が流れる。このとき、第2カレントミラー19において、転写元のNMOSトランジスタM8のソース電圧より、転写先のNMOSトランジスタM9のソース電圧が低くなるので、NMOSトランジスタM9は電流I2以上の電流を流すことが可能となる。一方、第1カレントミラー18ではPMOSトランジスタM10に電流I7が転写される。ここで、電流I7は十分に小さい値に設定され、第2中間点N2への電流の流れ込みよりもNMOSトランジスタM9による電流の引き込みが大きくなって、第2中間点N2にローレベルの制御信号Va3が出力される。
【0066】
続いて、負の電源電圧Vin−がトランジスタの動作電圧より高い場合(例えば−0V〜−1.5V)について説明する。このような状況で、制御信号Vcont3がハイレベルになると、PMOSトランジスタM6のゲート・ソース間電圧Vgs6が小さくなって、電流I1も小さくなる。しかし、第2電流源15の電流I7は、このときの電流I1よりも小さくなるように設定することができる。そして、このように設定されることで、第2中間点N2への電流の流れ込みよりもNMOSトランジスタM9による電流の引き込みを大きくして、第2中間点N2にローレベルの制御信号Va3を出力することができる。
【0067】
以上のように、実施形態3の負電源制御回路1B及び電源装置30Bによれば、実施形態2と同様の効果に加えて、負の電源電圧Vin−が高い電圧になっても正常な動作が実現されるという効果が奏される。図6は、負の電源電圧の大きさと負電圧の制御信号との関係を示すグラフである。図6において実施形態2のグラフ線は、正電圧の制御信号Vcont3がハイレベルで負電圧の制御信号Va2がハイレベルとなるときの制御信号Va2の電圧を示している。実施形態2のグラフ線に示すように、負の電源電圧Vin−が−1.5V以下でハイレベルとなるべき制御信号Va2はローレベルに反転してしまう。図6において実施形態3のグラフ線は、正電圧の制御信号Vcont3がハイレベルで負電圧の制御信号Va3がローレベルとなるときの制御信号Va3の電圧を示している。このグラフ線に示すように、負の電源電圧Vin−が−1.5V以下になっても、制御信号Va3はハイレベルに反転していない。
【0068】
なお、実施形態3で新たに付加された構成は、実施形態1に付加することも可能である。実施形態1に付加した回路は、図5の負電源制御回路1BからPMOSトランジスタM4、M6を除いた構成により実現される。
【0069】
(従来回路と実施形態1〜3との比較)
続いて、実施形態1〜3の負電源制御回路1、1A、1Bと従来の負電源制御回路100(図1)との特性を比較する。
図7は、制御信号入力端子の電圧値と負電圧の制御信号の電圧との関係を示すグラフである。図8は、制御信号入力端子の電圧値と各素子に加わる電圧との関係を示すグラフである。図9は、制御信号入力端子の電圧値と電流値との関係を示すグラフである。図9においては、制御信号入力端子Vcont2から流れ込む電流を「Icont」と表わす。
【0070】
図7に示すように、従来回路(図1の負電源制御回路100)では、制御信号Vcont0の電圧値が上がると、電流I1が増大し、クランプ回路130の電流の引き込み不足が生じて、負電圧の制御信号Va0が+1V程度まで上昇してしまう。しかし、実施形態2の負電源制御回路1Aでは、正電圧の制御信号Vcont2の電圧値が上がっても、負電圧の制御信号Va2は接地電位GNDを超えずに−0.5V程度に抑えることができる。この効果は、実施形態1及び実施形態3の負電源制御回路1、1Bでも同様に奏される。
【0071】
図8に示すように、従来回路(図1の負電源制御回路100)では、制御信号Vcont0がローレベルのときにPMOSトランジスタM1のドレイン電圧が負の電源電圧Vin−に応じて低い電圧になる。図8は、負の電源電圧Vin−が−6Vである場合を示している。このため、制御信号Vcont0がローレベルからハイレベルに切り替わる際、PMOSトランジスタM1のソース・ドレイン間電圧は負の電源電圧Vin−の絶対値よりも大きくなってしまう。例えば、制御信号Vcont0が0.7VのときにPMOSトランジスタM1に6.5V加わってしまう。PMOSトランジスタM1の耐圧が6Vである場合、耐圧破壊が生じてしまうため、負の電源電圧Vin−は−5.5Vより高くなるように設定する必要が生じる。
【0072】
一方、実施形態2の負電源制御回路1Aでは、上述したように、制御信号Vcont2がローレベルのときに、第2クランプ回路14が第1中間点N1の電圧を負の電源電圧Vin−より高い電圧にクランプする。このため、従来回路のようにPMOSトランジスタM1に大きな電圧が加わることを回避できる。ただし、上述したように、NMOSトランジスタM3には制御信号Vcont2に応じた電圧が加わるため、NMOSトランジスタM3の耐圧が6Vである場合、制御信号Vcont2は5.6V以下にする必要がある。これらの効果と作用は、実施形態3の負電源制御回路1Bでも同様に奏される。
【0073】
図9に示すように、従来回路(図1の負電源制御回路100)では、制御電圧Vcont0に比例して電流Icontが大きくなる。これは、電圧電流変換回路110に流れる電流が、上述した式(4)の電流I1を含み、この電流I1が制限されることがないことに基づく。なお、式(4)の電流I1は電圧Vgs1の二乗の項を含むが、抵抗R1と電流I1による電圧降下の作用を加味して計算すると、電流I1は制御信号Vcont0の電圧の一次式により表わされる。
【0074】
一方、実施形態2の負電源制御回路1Aでは、制御信号Vcont2が高くなってもPMOSトランジスタM1に流れる電流I1は飽和電流まで達せず、第1電流源13の飽和電流I2により制限される。第1電流源13を構成するデプレッション形のNMOSトランジスタM2は、素子サイズにより電流値を設定でき、抵抗よりも小さな基板の占有面積で低電流化を実現できる。したがって、実施形態2の負電源制御回路1Aにおいては、抵抗Rにより負電源制御回路1Aの消費電流が決まり、容易に従来回路の1/100などの低電流化を実現することができる。この低電流化を実現できる作用及び効果は、実施形態1及び実施形態3の負電源制御回路1、1Bでも同様に奏される。
【0075】
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、本発明に係る第1クランプ回路としてNMOSトランジスタM3を示したが、第1クランプ回路は第1中間点の電圧に基づき第1クランプ回路を流れる電流を制限して第1中間点の電圧をクランプする回路であればよい。図10は、第1クランプ回路の変形例を示す回路図である。例えば、図10に示すように、第1クランプ回路12aとしてPMOSトランジスタM3aと差動アンプA3とを有する構成を採用してもよい。PMOSトランジスタM3aはPMOSトランジスタM1と第1電流源13との間に、これらと直列に接続され、ゲートを差動アンプA3の出力端子に接続する。差動アンプA3は、接地電位GNDを反転入力端子に入力し、第1中間点N1の電圧を非反転入力端子に入力する。このような構成によっても、図2の構成と比べて素子数が多くなるが、第1中間点N1の電圧が接地電位GNDを超えようとするとPMOSトランジスタM3aが電流を制限して、第1中間点N1の電圧を接地電位GNDより低くクランプすることができる。
【0076】
また、上記実施形態では、負電圧の制御信号Va1、Va2、Va3は、実施形態1の第1中間点N1、実施形態2の接続点Na、実施形態3の第2中間点N2に生成する例を示した。しかし、これらの各点の電圧に基づいて他の接続点に負電圧の制御信号を生成してもよい。また、電圧電流変換回路、電流源、第2クランプ回路及びカレントミラーの具体的な構成など、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0077】
1、1A、1B・・・負電源制御回路、11・・・電圧電流変換回路、12、12a・・・第1クランプ回路、13・・・第1電流源、14・・・第2クランプ回路、15・・・第2電流源、18・・・第1カレントミラー、19・・・第2カレントミラー、M3・・・NMOSトランジスタ、N1・・・第1中間点(負電圧制御信号出力端子)、Na・・・接続点(負電圧制御信号出力端子)、N2・・・第2中間点(負電圧制御信号出力端子)、Vcont1、Vcont2、Vcont3・・・制御信号入力端子、Vin−・・・負電圧入力端子、GND・・・接地端子、Va1、Va2、Va3・・・負電圧の制御信号、In1〜In3・・・インバータ、200・・・負電圧レギュレータ回路、C1・・・出力コンデンサ、M11・・・ディスチャージスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10