【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、多層プリント配線板に用いた際に、優れた光硬化性を有し、耐熱性、熱安定性及び絶縁信頼性をバランスよく優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物、それを用いた樹脂シート、多層プリント配線板、並びに半導体装置を提供することができる。
【0025】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で、適宜に変形して実施できる。
【0026】
なお、本明細書における「(メタ)アクリロキシ」とは「アクリロキシ」及びそれに対応する「メタクリロキシ」の両方を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」の両方を意味し、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」の両方を意味する。
【0027】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、特定のビスマレイミド化合物(A)(「成分(A)」とも称す)と、ビスマレイミド化合物(A)以外のマレイミド化合物、シアン酸エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、エポキシ樹脂、カルボジイミド化合物、及びエチレン性不飽和基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の樹脂又は化合物(B)(「成分(B)」、又は「樹脂又は化合物(B)」とも称す)と、光硬化開始剤(C)(「成分(C)」とも称す)と、を含む。以下、各成分について説明する。
【0028】
〔ビスマレイミド化合物(A)〕
樹脂組成物は、ビスマレイミド化合物(A)(成分(A)とも称す)を含む。ビスマレイミド化合物(A)は、式(1)で表される構成単位と、分子鎖の両末端にマレイミド基と、を含む。
【0029】
【化4】
【0030】
式(1)中、R
1は、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示す。R
2は、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示す。R
3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を示す。nは、各々独立に、1〜10の整数を示す。
【0031】
通常、マレイミド化合物は光透過性が悪いため、樹脂組成物がマレイミド化合物を含むと、樹脂組成物中に分散している光硬化開始剤まで十分に光が届かず、光硬化開始剤がラジカルを発生し難い。そのため、一般的にマレイミド化合物の光ラジカル反応は進行し難く、仮にマレイミド単体のラジカル重合や二量化反応が進行しても、その反応性は非常に低い。しかし、ビスマレイミド化合物(A)は、式(1)で表される構成単位を含むので、光透過性に非常に優れる。そのため、光硬化開始剤まで十分に光が届き、マレイミドの光ラジカル反応が効率的に起き、ビスマレイミド化合物(A)は、後述の樹脂又は化合物(B)、及び光硬化開始剤(C)と共に、種々の活性エネルギー線を用いて光硬化させることができる。
【0032】
本実施形態において、ビスマレイミド化合物(A)は、1質量%で含まれるクロロホルム溶液を調製し、波長365nm(i線)を含む活性エネルギー線を用いて、ビスマレイミド化合物(A)が1質量%で含まれるクロロホルム溶液の透過率を測定した場合においては、その透過率は5%以上と、非常に優れた光透過性を示す。また、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線(光線)を用いて、ビスマレイミド化合物(A)が1質量%で含まれるクロロホルム溶液の透過率を測定した場合においては、その透過率が5%以上と、非常に優れた光透過性を示す。それゆえ、例えば、直接描画露光法を用いて高密度で高精細な配線形成(パターン)を有するプリント配線板を製造するに際し、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いた場合でも、マレイミドの光ラジカル反応が効率的に起こる。波長365nm(i線)における透過率は、より優れた光透過性を示す点から、8%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。波長405nm(h線)における透過率は、より高密度で高精細な配線形成(パターン)を有するプリント配線板を製造する点から、8%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。波長365nm(i線)における透過率、及び波長405nm(h線)における透過率において、それぞれの上限は、例えば、99.9%以下である。
【0033】
通常、光硬化開始剤は、長波長の光線を用いると吸光度が低くなる傾向にある。例えば、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いる場合には、この波長の光は比較的長波長であるため、通常の光硬化開始剤では吸収せず、この光を好適に吸収してラジカルを発生できる光硬化開始剤を用いなければ、重合は進行しない。それゆえ、後述の光硬化開始剤(C)としては、光硬化開始剤(C)が0.01質量%で含まれるクロロホルム溶液の吸光度を測定した場合において、波長405nm(h線)の光に対して、その吸光度が0.1以上と、非常に優れた吸収性を示す光硬化開始剤を用いることが好ましい。
【0034】
ビスマレイミド化合物(A)は、前記したように光透過性に優れるため、例えば、波長365nmを含む活性エネルギー線、又は405nmを含む活性エネルギー線を用いた場合でも、光が光硬化開始剤まで十分に届き、光硬化開始剤から発生したラジカルを用いたラジカル反応が進行し、ビスマレイミド化合物(A)が多く配合されている組成物においても光硬化が可能となる。それゆえ、本実施形態の樹脂組成物は、光硬化性に優れる。
一方、ビスマレイミド化合物(A)は、光硬化しても剛直なイミド環を有することから、高い耐熱性及び熱安定性を有するが、ビスマレイミド化合物を光硬化した硬化物を、露光工程終了後、又は現像工程終了後に行うポストベーク工程などにおいて加熱により更に硬化する際にシワが生じる。そのため、ビスマレイミド化合物(A)を単独重合して得られる硬化物は、多層プリント配線板の用途には不適である。しかし、ビスマレイミド化合物(A)を、後述の樹脂又は化合物(B)と光硬化開始剤(C)と共に配合することで、優れた光硬化性及び絶縁信頼性を有しながら、より高い耐熱性及び熱安定性を有する。それゆえ、本実施形態の樹脂組成物から得られる硬化物は、耐熱性、熱安定性、及び絶縁信頼性に優れ、本実施形態によれば、多層プリント配線板及び半導体装置における、保護膜、及び絶縁層を好適に形成することができる。
【0035】
ビスマレイミド化合物(A)は、好適な粘度が得られ、ワニスの粘度上昇が抑制できる点から、質量平均分子量が、100〜5000であることが好ましく、300〜4500であることがより好ましい。なお、「質量平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法による、ポリスチレンスタンダード換算の質量平均分子量を意味する。
【0036】
次いで、ビスマレイミド化合物(A)の構造について説明する。
ビスマレイミド化合物(A)の式(1)中、R
1は、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示す。R
1としては、好適な粘度が得られ、ワニスの粘度上昇が制御できる点から、直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であることが好ましく、直鎖状のアルキレン基であることがより好ましい。
アルキレン基の炭素数としては、より好適な粘度が得られ、ワニスの粘度上昇をより制御できる点から、2〜14であることが好ましく、4〜12であることがより好ましい。
直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、ウンデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ネオペンチレン基、ジメチルブチレン基、メチルヘキシレン基、エチルヘキシレン基、ジメチルヘキシレン基、トリメチルヘキシレン基、メチルヘプチレン基、ジメチルヘプチレン基、トリメチルヘプチレン基、テトラメチルヘプチレン基、エチルヘプチレン基、メチルオクチレン基、メチルノニレン基、メチルデシレン基、メチルドデシレン基、メチルウンデシレン基、メチルトリデシレン基、メチルテトラデシレン基、及びメチルペンタデシレン基、が挙げられる。
アルケニレン基の炭素数としては、より好適な粘度が得られ、ワニスの粘度上昇をより制御できる点から、2〜14であることが好ましく、4〜12であることがより好ましい。
直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1−メチルビニレン基、アリレン基、プロペニレン基、イソプロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、イソペンチレン基、シクロペンテニレン基、シクロヘキセニレン基、及びジシクロペンタジエニレン基等が挙げられる。
【0037】
式(1)中、R
2は、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基を示す。R
2としては、好適な粘度が得られ、ワニスの粘度上昇が制御できる点から、直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であることが好ましく、直鎖状のアルキレン基であることがより好ましい。
【0038】
アルキレン基の炭素数としては、より好適な粘度が得られ、ワニスの粘度上昇をより制御できる点から、2〜14であることが好ましく、4〜12であることがより好ましい。
直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基としては、R
1が参照できる。
【0039】
アルケニレン基の炭素数としては、より好適な粘度が得られ、ワニスの粘度上昇をより制御できる点から、2〜14であることが好ましく、4〜12であることがより好ましい。
直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基としては、R
1が参照できる。
【0040】
式(1)において、R
1と、R
2とは、同一であっても異なっていてもよいが、ビスマレイミド化合物(A)をより容易に合成できる点から、同一であることが好ましい。
【0041】
式(1)中、R
3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を示す。R
3は、好適な粘度が得られ、ワニスの粘度上昇が制御できる点から、各々独立に、水素原子、又は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることが好ましく、R
3のうち、1〜5の基(R
3)が炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、残りの基(R
3)が水素原子であることがより好ましく、R
3のうち、1〜3の基(R
3)が炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、残りの基(R
3)が水素原子であることが更に好ましい。
アルキル基の炭素数としては、より好適な粘度が得られ、ワニスの粘度上昇がより制御できる点から、2〜14であることが好ましく、4〜12であることがより好ましい。
直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−エチルプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、及びn−ノニル基が挙げられる。
アルケニル基の炭素数としては、より好適な粘度が得られ、ワニスの粘度上昇がより制御できる点から、2〜14であることが好ましく、4〜12であることがより好ましい。
直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、4−ペンテニル基、イソプロペニル基、イソペンテニル基、2−ヘプテニル基、2−オクテニル基、及び2−ノネニル基が挙げられる。
【0042】
式(1)中、nは、各々独立に、1〜10の整数を示す。
【0043】
ビスマレイミド化合物(A)は、分子鎖の両末端にマレイミド基を有する。本実施形態において、両末端とは、ビスマレイミド化合物(A)の分子鎖において両方の末端を意味し、例えば、式(1)で表される構造単位が、ビスマレイミド化合物(A)の分子鎖の末端にある場合には、マレイミド基は、R
1の分子鎖の末端に有するか、マレイミド環のN原子における分子鎖の末端に有するか、又は両方の末端に有することを意味する。ビスマレイミド化合物(A)は、分子鎖の両末端以外に、マレイミド基を有していてもよい。
本実施形態において、マレイミド基は、式(4)で表され、N原子がビスマレイミド化合物(A)の分子鎖に結合している。また、ビスマレイミド化合物(A)に結合されるマレイミド基は、全て同一であっても異なっていてもよいが、分子鎖の両末端のマレイミド基は同一であることが好ましい。
【0044】
【化5】
【0045】
式(4)中、R
6は、各々独立に、水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示す。R
6は、好適に光硬化する点から、両方ともに水素原子であることが好ましい。
アルキル基の炭素数としては、好適に光硬化する点から、1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。
直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、R
3が参照できる。
【0046】
このようなビスマレイミド化合物(A)としては、例えば、式(5)で表されるビスマレイミド化合物が挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0047】
【化6】
【0048】
式(5)中、aは、1〜10の整数を示す。aは、より好適な粘度が得られ、ワニスの粘度上昇がより制御できる点から、1〜6の整数であることが好ましい。
【0049】
ビスマレイミド化合物(A)としては、市販品を利用することもできる。市販品としては、例えば、日本化薬(株)製MIZ−001(商品名、式(5)のマレイミド化合物を含む)が挙げられる。
【0050】
本実施形態の樹脂組成物において、ビスマレイミド化合物(A)の含有量は、ビスマレイミド化合物を主成分とした硬化物を得ることが可能となり、光硬化性、耐熱性及び熱安定性をバランスよく向上させることができるという観点から、ビスマレイミド化合物(A)、後述の樹脂又は化合物(B)及び後述の光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、5〜99.4質量部であることが好ましく、8〜98質量部であることがより好ましく、17〜93質量部であることが更に好ましい。
【0051】
ビスマレイミド化合物(A)は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0052】
(ビスマレイミド化合物(A)の製造方法)
ビスマレイミド化合物(A)は、公知の方法により製造することができる。例えば、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物と、ダイマージアミン等を含むジアミンを含むモノマーと、無水マレイミド酸等のマレイミド化合物とを、通常80〜250℃程度、好ましくは100〜200℃程度の温度において、通常0.5〜50時間程度、好ましくは1〜20時間程度、重付加反応させて重付加物を得る、その後、通常60〜120℃程度、好ましくは80〜100℃程度の温度において、通常0.1〜2時間程度、好ましくは0.1〜0.5時間程度、重付加物をイミド化反応、すなわち、脱水閉環反応させることで、ビスマレイミド化合物(A)を得ることができる。
【0053】
ダイマージアミンは、例えば、ダイマー酸の還元的アミノ化反応によって得られ、アミン化反応は、例えば、アンモニア及び触媒を使用する還元法等、公知の方法(例えば、特開平9−12712号公報に記載の方法)によって行うことができる。ダイマー酸とは、不飽和脂肪酸が分子間重合反応等によって二量化して得られる二塩基酸である。合成条件及び精製条件にもよるが、通常はダイマー酸の他、モノマー酸やトリマー酸等も少量含まれる。反応後には得られた分子内に二重結合が残存するが、本実施形態では、水素添加反応により、分子内に存在する二重結合が還元されて飽和二塩基酸となったものもダイマー酸に含める。ダイマー酸は、例えば、ルイス酸及びブレンステッド酸を触媒として用いて、不飽和脂肪酸の重合を行うことによって得られる。ダイマー酸は、公知の方法(例えば、特開平9−12712号公報に記載の方法)によって製造することができる。不飽和脂肪酸としては、例えば、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、及びニシン酸が挙げられる。不飽和脂肪酸の炭素数は、通常4〜24であり、好ましくは14〜20である。
【0054】
ビスマレイミド化合物(A)の製造において、ジアミンを含むモノマーは、予め、例えば、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気中において、有機溶媒中に溶解又はスラリー状に分散させて、ジアミンを含むモノマー溶液とすることが好ましい。そして、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物は、有機溶媒に溶解又はスラリー状に分散させた後、あるいは固体の状態で、上記ジアミンを含むモノマー溶液中に添加することが好ましい。
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物のモル数と、ジアミンを含むモノマー及びマレイミド化合物との全量のモル数とを調製することで、任意のビスマレイミド化合物(A)を得ることができる。
【0055】
重付加反応及びイミド化反応に際しては、種々公知の溶媒を使用することができる。溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及びイソホロン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸ブチル等のエステル類;メタノール、エタノール、及びプロパノール等の炭素数1〜10の脂肪族アルコール類;フェノール、及びクレゾール等の芳香族基含有フェノール類;ベンジルアルコール等の芳香族基含有アルコール類;エチレングリコール、及びプロピレングリコール等のグリコール類、又はそれらのグリコール類と、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェノール、及びクレゾール等とのモノエーテルもしくはジエーテル、又はこれらのモノエーテルのエステル類等のグリコールエーテル類;ジオキサン、及びテトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネート等の環状カーボネート類;脂肪族及びトルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、必要に応じて、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
また、イミド化反応においては、触媒を用いることが好ましい。触媒としては、例えば、3級アミン、及び脱水触媒を用いることができる。3級アミンとしては、複素環式の3級アミンが好ましく、例えば、ピリジン、ピコリン、キノリン、及びイソキノリンなどを挙げられる。脱水触媒としては、例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、及びトリフルオロ酢酸無水物等が挙げられる。
触媒の添加量は、例えば、イミド化剤を、アミド基に対して、0.5〜5.0倍モル当量程度、脱水触媒を、アミド基に対して、0.5〜10.0倍モル当量とすることが好ましい。
【0057】
イミド化反応が完結した後、この溶液をビスマレイミド化合物(A)溶液として使用してもよいし、反応溶媒中に、貧溶媒を投入し、ビスマレイミド化合物(A)を固形物としてもよい。貧溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロピルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチルアルコール、2−ペンチルアルコール、2−ヘキシルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェノール、t−ブチルアルコールなどが挙げられる。
【0058】
〔樹脂又は化合物(B)〕
本実施形態の樹脂組成物には、ビスマレイミド化合物(A)以外のマレイミド化合物、シアン酸エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、エポキシ樹脂、カルボジイミド化合物、及びエチレン性不飽和基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の樹脂又は化合物(B)(成分(B)とも称す)を含む。これらの樹脂又は化合物(B)は、得られる硬化物の物性及び用途に応じて、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
本実施形態において、ビスマレイミド化合物(A)及び後述の光硬化開始剤と共に、樹脂又は化合物(B)を用いると、光硬化性、耐熱性及び熱安定性に優れる。この理由は定かではないが、本発明者らは、ビスマレイミド化合物(A)が有する光硬化性及び絶縁信頼性と、樹脂又は化合物(B)が有する耐熱性及び熱安定性とを両立することが可能であるためと推定している。また、得られる硬化物には、ビスマレイミド化合物(A)と、樹脂又は化合物(B)とが有する種々の物性を付与することも可能となる。ビスマレイミド化合物(A)は、光透過性に非常に優れるため、樹脂又は化合物(B)を用いても、光硬化開始剤まで十分に光が届き、マレイミドの光ラジカル反応が効率的に起き、種々の活性エネルギー線を用いて光硬化させることができる。そのため、例えば、波長365nmを含む活性エネルギー線、又は405nmを含む活性エネルギー線を用いても、光が光硬化開始剤まで十分に届き、光硬化開始剤から発生したラジカルを用いたラジカル反応が進行し、樹脂又は化合物(B)が配合されている組成物においても光硬化が可能となる。
【0059】
樹脂又は化合物(B)は、ビスマレイミド化合物(A)及び光硬化開始剤(C)と共に、種々の活性エネルギー線を用いて光硬化させて硬化物を得ることができる。
本実施形態において、樹脂又は化合物(B)は、それぞれ、1質量%で含まれるN−メチルピロリドン溶液を調製し、波長365nm(i線)を含む活性エネルギー線を用いて、カルボキシ基を1つ以上含む化合物(B)が1質量%で含まれるN−メチルピロリドン溶液の透過率を測定した場合においては、その透過率は5%以上であることが好ましい。このような樹脂又は化合物(B)は、非常に優れた光透過性を示す。また、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いて、それぞれ、樹脂又は化合物(B)が1質量%で含まれるN−メチルピロリドン溶液の透過率を測定した場合においては、その透過率が5%以上であることが好ましく、この場合においても非常に優れた光透過性を示す。このような樹脂又は化合物(B)を用いると、例えば、直接描画露光法を用いて高密度で高精細な配線形成(パターン)を有するプリント配線板を製造するに際し、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いた場合でも、マレイミドの光ラジカル反応が効率的に起こる。なお、波長365nm(i線)における透過率は、光硬化性により優れる樹脂組成物を得ることができることから、8%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましい。波長405nm(h線)における透過率は、光硬化性により優れる樹脂組成物を得ることができることから、8%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましい。なお、波長365nm(i線)における透過率、及び波長405nm(h線)における透過率において、それぞれの上限は、例えば、99.9%以下である。
【0060】
樹脂又は化合物(B)は、ワニスの粘度上昇が抑制できる観点から、それぞれ、分子量が、100〜5,000であることが好ましい。また、樹脂又は化合物(B)は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、ワニスの粘度上昇が抑制できる観点から、それぞれ、質量平均分子量が、100〜50,000であることが好ましい。なお、本実施形態において、「質量平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法による、ポリスチレンスタンダード換算の質量平均分子量を意味する。
【0061】
樹脂組成物において、樹脂又は化合物(B)の合計の含有量は、ビスマレイミド化合物を主成分とした硬化物を得ることが可能となり、光硬化性を向上させるという観点から、ビスマレイミド化合物(A)、樹脂又は化合物(B)及び後述の光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.5〜85質量部であることが好ましく、1〜84質量部であることがより好ましく、5〜76質量部であることが更に好ましい。
【0062】
(ビスマレイミド化合物(A)以外のマレイミド化合物)
樹脂組成物には、ビスマレイミド化合物(A)以外のマレイミド化合物(B1)(成分(B1)とも称す)を用いることができる。以下にマレイミド化合物(B1)について述べる。
【0063】
マレイミド化合物(B1)は、マレイミド化合物(A)以外であり、分子中に一個以上のマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されない。その具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−アニリノフェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミド、N−(4−カルボキシ−3−ヒドロキシフェニル)マレイミド、6−マレイミドヘキサン酸、4−マレイミド酪酸、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、フェニルメタンマレイミド、o−フェニレンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、p−フェニレンビスマレイミド、o−フェニレンビスシトラコンイミド、m−フェニレンビスシトラコンイミド、p−フェニレンビスシトラコンイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル)プロパン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,2−ビスマレイミドエタン、1,4−ビスマレイミドブタン、1,5−ビスマレイミドペンタン、1,5−ビスマレイミド−2−メチルペンタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、1,8−ビスマレイミド−3,6−ジオキサオクタン、1,11−ビスマレイミド−3,6,9−トリオキサウンデカン、1,3−ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、4,4−ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、2,2−ビス[4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−シトラコンイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−シトラコンイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−シトラコンイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミドなどの式(6)で表されるマレイミド化合物、式(7)で表されるマレイミド化合物、フルオレセイン−5−マレイミド、及びこれらマレイミド化合物のプレポリマー、又はマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマー等が挙げられる。これらのマレイミド化合物(B1)は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0064】
式(6)で表されるマレイミド化合物としては、市販品を利用することもでき、例えば、大和化成工業(株)社製BMI−2300(商品名)が挙げられる。式(7)で表されるマレイミド化合物としては、市販品を利用することもでき、例えば、日本化薬(株)社製MIR−3000(商品名)が挙げられる。
【0065】
【化7】
【0066】
式(6)中、R
7は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。n
1は、1以上の整数を表し、好ましくは1〜10の整数を表し、より好ましくは1〜5の整数を表す。
【0067】
【化8】
【0068】
式(7)中、R
8は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。n
2は、1以上の整数を表し、好ましくは1〜5の整数を表す。
【0069】
本実施形態において、ビスマレイミド化合物(A)の光ラジカル反応を効率的に起こさせるために、マレイミド化合物(B1)が1質量%で含まれるクロロホルム溶液を調製し、波長365nm(i線)を含む活性エネルギー線を用いてこのクロロホルム溶液の透過率を測定した場合に、透過率が5%以上の光透過性を示すことが好ましい。この場合の透過率は、8%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましい。
また、ビスマレイミド化合物(A)の光ラジカル反応を効率的に起こさせるために、マレイミド化合物(B1)が1質量%で含まれるクロロホルム溶液を調製し、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いてこのクロロホルム溶液の透過率を測定した場合に、透過率が5%以上の光透過性を示すことが好ましい。このようなマレイミド化合物(B1)を用いることで、例えば、直接描画露光法を用いて高密度で高精細な配線形成(パターン)を有するプリント配線板を製造するに際し、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いた場合でも、マレイミドの光ラジカル反応が効率的に起こる。光透過率は、光硬化性により優れる樹脂組成物を得ることができることから、8%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましい。
【0070】
このようなマレイミド化合物(B1)としては、例えば、式(8)で表されるマレイミド化合物、式(9)で表されるマレイミド化合物、式(16)で表されるマレイミド化合物等の式(10)で表されるマレイミド化合物、式(11)で表されるマレイミド化合物、式(12)で表されるマレイミド化合物、式(13)で表されるマレイミド化合物、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン(式(14)で表されるマレイミド化合物)、式(15)で表されるマレイミド化合物、及びフルオレセイン−5−マレイミドが挙げられる。
【0071】
【化9】
【0072】
式(8)中、n
3(平均)は1以上であり、好ましくは1〜21であり、より好ましくは、優れた光硬化性を示す観点から、1〜16である。
【0073】
【化10】
【0074】
式(9)中、xの数は、10〜35である。
式(9)中、yの数は、10〜35である。
【0075】
【化11】
【0076】
式(10)中、R
aは、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を表す。R
aとしては、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることが好ましく、優れた光硬化性を示すことから、直鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
アルキル基の炭素数としては、優れた光硬化性を示すことから、4〜12が好ましい。
アルケニル基の炭素数としては、優れた光硬化性を示すことから、4〜12が好ましい。
【0077】
直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、ビスマレイミド化合物(A)におけるR
3が参照できる。これらの中でも、優れた光硬化性を示すことから、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基が好ましく、n−オクチル基がより好ましい。
直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基としては、ビスマレイミド化合物(A)におけるR
3が参照できる。これらの中でも、優れた光硬化性を示すことから、2−ヘプテニル基、2−オクテニル基、2−ノネニル基が好ましく、2−オクテニル基がより好ましい。
【0078】
式(10)中、R
bは、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を表す。R
bとしては、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることが好ましく、優れた光硬化性を示すことから、直鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
アルキル基の炭素数としては、優れた光硬化性を示すことから、4〜12が好ましい。
アルケニル基の炭素数としては、優れた光硬化性を示すことから、4〜12が好ましい。
【0079】
アルキル基の具体例としては、R
aにおけるアルキル基を参照できる。この中でも、優れた光硬化性を示すことから、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基が好ましく、n−オクチル基がより好ましい。
アルケニル基の具体例としては、R
aにおけるアルケニル基を参照できる。この中でも、優れた光硬化性を示すことから、2−ヘプテニル基、2−オクテニル基、2−ノネニル基が好ましく、2−オクテニル基がより好ましい。
【0080】
式(10)中、n
aの数は1以上であり、好ましくは2〜16であり、より好ましくは、優れた光硬化性を示す観点から、3〜14である。
【0081】
式(10)中、n
bの数は1以上であり、好ましくは2〜16であり、より好ましくは、優れた光硬化性を示す観点から、3〜14である。
【0082】
n
aとn
bの数は同じであっても、異なっていてもよい。
【0083】
【化12】
【0084】
式(11)中、n
4(平均)は0.5以上であり、好ましくは0.8〜10であり、より好ましくは、優れた光硬化性を示す観点から、1〜8である。
【0085】
【化13】
【0086】
式(12)中、n
5は、1以上の整数を表し、好ましくは1〜10の整数を表す。
【0087】
【化14】
【0088】
式(13)中、n
6は、1以上の整数を表し、好ましくは1〜10の整数を表す。
【0089】
【化15】
【0090】
【化16】
【0091】
上記式(15)中、R
9は各々独立に水素原子、メチル基又はエチル基を示し、R
10は各々独立に水素原子又はメチル基を示す。)
【0092】
マレイミド化合物(B1)は、市販品を利用することもできる。
式(8)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、ケイ・アイ化成(株)製BMI−1000P(商品名、式(8)中のn
3=13.6(平均))、ケイ・アイ化成(株)社製BMI−650P(商品名、式(8)中のn
3=8.8(平均))、ケイ・アイ化成(株)社製BMI−250P(商品名、式(8)中のn
3=3〜8(平均))、ケイ・アイ化成(株)社製CUA−4(商品名、式(8)中のn
3=1)等が挙げられる。
式(9)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、Designer Molecules Inc.製BMI−6100(商品名、式(9)中のx=18、y=18)等が挙げられる。
式(10)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、Designer Molecules Inc.製BMI−689(商品名、式(16)、官能基当量:346g/eq.)等が挙げられる。
【0093】
【化17】
【0094】
式(11)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、Designer Molecules Inc.製BMI−1500(商品名、式(11)中のn
4=1.3、官能基当量:754g/eq.)等が挙げられる。
式(12)で表されるマレイミド化合物としては、市販品を利用することもでき、例えば、Designer Molecules Inc.(DMI)製BMI−1700(商品名)が挙げられる。
式(13)で表されるマレイミド化合物としては、市販品を利用することもでき、例えば、Designer Molecules Inc.(DMI)製BMI−3000(商品名)、Designer Molecules Inc.(DMI)製BMI−5000(商品名)、Designer Molecules Inc.(DMI)製BMI−9000(商品名)が挙げられる。
式(14)で表されるマレイミド化合物としては、市販品を利用することもでき、例えば、大和化成工業株式会社製BMI−TMH(商品名)が挙げられる。
式(15)で表されるマレイミド化合物としては、市販品を利用することもでき、例えば、ケイ・アイ化成(株)製BMI−70(商品名)が挙げられる。
これらのマレイミド化合物(B1)は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0095】
樹脂組成物において、マレイミド化合物(B1)の含有量は、ビスマレイミド化合物(A)、マレイミド化合物(B1)及び光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、好ましくは0.5〜85質量部であることが好ましい。
【0096】
(シアン酸エステル化合物)
樹脂組成物には、シアン酸エステル化合物(B2)(成分(B2)とも称す)を用いることができる。以下にシアン酸エステル化合物(B2)について述べる。
シアン酸エステル化合物としては、シアナト基(シアン酸エステル基)が少なくとも1個置換された芳香族部分を分子内に有する樹脂であれば特に限定されない。
【0097】
例えば、式(17)で表されるものが挙げられる。
【0098】
【化18】
【0099】
式(17)中、Ar
1は、ベンゼン環、ナフタレン環又は2つのベンゼン環が単結合したものを表す。複数ある場合は互いに同一であっても異なっていても良い。Ar
1は、ナフタレン環であることが好ましい。Raは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシル基、炭素数1〜6のアルキル基と炭素数6〜12のアリール基とが結合された基を示す。Raは、水素原子であることが好ましい。Raにおける芳香環は置換基を有していてもよく、Ar
1及びRaにおける置換基は任意の位置を選択できる。pはAr
1に結合するシアナト基の数を示し、各々独立に、1〜3の整数であり、1であることが好ましい。qはAr
1に結合するRaの数を示し、Ar
1がベンゼン環の時は4−p、ナフタレン環の時は6−p、2つのベンゼン環が単結合したものの時は8−pである。tは平均繰り返し数を示し、0〜50の整数であり、好ましくは1〜30の整数であり、より好ましくは1〜10の整数である。シアン酸エステル化合物は、tが異なる化合物の混合物であってもよい。Xは、複数ある場合は各々独立に、単結合、炭素数1〜50の2価の有機基(水素原子がヘテロ原子に置換されていてもよい。)、窒素数1〜10の2価の有機基(例えば−N−R−N−(ここでRは有機基を示す。))、カルボニル基(−CO−)、カルボキシ基(−C(=O)O−)、カルボニルジオキサイド基(−OC(=O)O−)、スルホニル基(−SO
2−)、2価の硫黄原子又は2価の酸素原子のいずれかを示す。
【0100】
式(17)のRaにおけるアルキル基は、直鎖もしくは分枝の鎖状構造、及び、環状構造(例えばシクロアルキル基等)いずれを有していてもよい。
また、式(17)におけるアルキル基及びRaにおけるアリール基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、又はシアノ基等で置換されていてもよい。
【0101】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、及びトリフルオロメチル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、(メタ)アリル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタンジエニル基、2−メチル−2−プロペニル、2−ペンテニル基、及び2−ヘキセニル基等が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、フェノキシフェニル基、エチルフェニル基、o−,m−又はp−フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロフェニル基、メトキシフェニル基、及びo−,m−又はp−トリル基等が挙げられる。更にアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、及びtert−ブトキシ基等が挙げられる。
【0102】
式(17)のXにおける炭素数1〜50の2価の有機基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、トリメチルシクロヘキシレン基、ビフェニルイルメチレン基、ジメチルメチレン−フェニレン−ジメチルメチレン基、メチレン−フェニレン−メチレン基、フルオレンジイル基、及びフタリドジイル基等が挙げられる。これらの中でも、メチレン−フェニレン−メチレン基が好ましい。2価の有機基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、シアノ基等で置換されていてもよい。
式(17)のXにおける窒素数1〜10の2価の有機基としては、イミノ基、ポリイミド基等が挙げられる。
【0103】
また、式(17)中のXの有機基として、例えば、式(18)又は式(19)で表される構造であるものが挙げられる。
【0104】
【化19】
【0105】
式(18)中、Ar
2はベンゼンジイル基、ナフタレンジイル基又はビフェニルジイル基を示し、uが2以上の整数の場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。Rb、Rc、Rf、及びRgは各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、トリフルオロメチル基、又はフェノール性ヒドロキシ基を少なくとも1個有するアリール基を示す。Rd及び、Reは各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシル基、又はヒドロキシ基のいずれか一種から選択される。uは0〜5の整数を示す。
【0106】
【化20】
【0107】
式(19)中、Ar
3はベンゼンジイル基、ナフタレンジイル基又はビフェニルジイル基を示し、vが2以上の整数の場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。Ri、及びRjは各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、ベンジル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基、又はシアナト基が少なくとも1個置換されたアリール基を示す。vは0〜5の整数を示すが、vが異なる化合物の混合物であってもよい。
【0108】
さらに、式(17)中のXとしては、式で表される2価の基が挙げられる。
【0109】
【化21】
【0110】
ここで式中、zは4〜7の整数を示す。Rkは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。
式(18)のAr
2及び式(19)のAr
3の具体例としては、式(18)に示す2個の炭素原子、又は式(19)に示す2個の酸素原子が、1,4位又は1,3位に結合するベンゼンジイル基、2個の炭素原子又は2個の酸素原子が4,4’位、2,4’位、2,2’位、2,3’位、3,3’位、又は3,4’位に結合するビフェニルジイル基、及び、2個の炭素原子又は2個の酸素原子が、2,6位、1,5位、1,6位、1,8位、1,3位、1,4位、又は2,7位に結合するナフタレンジイル基が挙げられる。
式(18)のRb、Rc、Rd、Re、Rf及びRg、並びに式(19)のRi、Rjにおけるアルキル基及びアリール基は、式(17)におけるものと同義である。
【0111】
式(17)で表されるシアナト置換芳香族化合物の具体例としては、シアナトベンゼン、1−シアナト−2−,1−シアナト−3−,又は1−シアナト−4−メチルベンゼン、1−シアナト−2−,1−シアナト−3−,又は1−シアナト−4−メトキシベンゼン、1−シアナト−2,3−,1−シアナト−2,4−,1−シアナト−2,5−,1−シアナト−2,6−,1−シアナト−3,4−又は1−シアナト−3,5−ジメチルベンゼン、シアナトエチルベンゼン、シアナトブチルベンゼン、シアナトオクチルベンゼン、シアナトノニルベンゼン、2−(4−シアナフェニル)−2−フェニルプロパン(4−α−クミルフェノールのシアネート)、1−シアナト−4−シクロヘキシルベンゼン、1−シアナト−4−ビニルベンゼン、1−シアナト−2−又は1−シアナト−3−クロロベンゼン、1−シアナト−2,6−ジクロロベンゼン、1−シアナト−2−メチル−3−クロロベンゼン、シアナトニトロベンゼン、1−シアナト−4−ニトロ−2−エチルベンゼン、1−シアナト−2−メトキシ−4−アリルベンゼン(オイゲノールのシアネート)、メチル(4−シアナトフェニル)スルフィド、1−シアナト−3−トリフルオロメチルベンゼン、4−シアナトビフェニル、1−シアナト−2−又は1−シアナト−4−アセチルベンゼン、4−シアナトベンズアルデヒド、4−シアナト安息香酸メチルエステル、4−シアナト安息香酸フェニルエステル、1−シアナト−4−アセトアミノベンゼン、4−シアナトベンゾフェノン、1−シアナト−2,6−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,2−ジシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナト−2−tert−ブチルベンゼン、1,4−ジシアナト−2,4−ジメチルベンゼン、1,4−ジシアナト−2,3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジシアナト−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3−ジシアナト−5−メチルベンゼン、1−シアナト又は2−シアナトナフタレン、1−シアナト−4−メトキシナフタレン、2−シアナト−6−メトキシナフタレン、2−シアナト−7−メトキシナフタレン、2,2’−ジシアナト−1,1’−ビナフチル、1,3−,1,4−,1,5−,1,6−,1,7−,2,3−,2,6−又は2,7−ジシアナトシナフタレン、2,2’−又は4,4’−ジシアナトビフェニル、4,4’−ジシアナトオクタフルオロビフェニル、2,4’−又は4,4’−ジシアナトジフェニルメタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−シアナト−5−ビフェニルイル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3,3−ジメチルブタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)オクタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルペンタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルペンタン、4,4−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,4−ジメチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2,4−トリメチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−シアナトフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−シアナトフェニル)ビフェニルメタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−シアナト−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−シアナトフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−シアナトフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジクロロエチレン、1,3−ビス[2−(4−シアナトフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(4−シアナトフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4−[ビス(4−シアナトフェニル)メチル]ビフェニル、4,4−ジシアナトベンゾフェノン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−プロペン−1−オン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルフィド、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、4−シアナト安息香酸−4−シアナトフェニルエステル(4−シアナトフェニル−4−シアナトベンゾエート)、ビス−(4−シアナトフェニル)カーボネート、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)イソベンゾフラン−1(3H)−オン(フェノールフタレインのシアネート)、3,3−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)イソベンゾフラン−1(3H)−オン(o−クレゾールフタレインのシアネート)、9,9’−ビス(4−シアナトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−シアナト−5−ビフェニルイル)フルオレン、トリス(4−シアナトフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1,3−トリス(4−シアナトフェニル)プロパン、α,α,α’−トリス(4−シアナトフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン、1,1,2,2−テトラキス(4−シアナトフェニル)エタン、テトラキス(4−シアナトフェニル)メタン、2,4,6−トリス(N−メチル−4−シアナトアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(N−メチル−4−シアナトアニリノ)−6−(N−メチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ビス(N−4−シアナト−2−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−3−シアナト−4−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−4−シアナトフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−4−シアナト−2−メチルフェニル)−4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルイミド、トリス(3,5−ジメチル−4−シアナトベンジル)イソシアヌレート、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)フタルイミジン、2−(4−メチルフェニル)−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)フタルイミジン、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)フタルイミジン、1−メチル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)インドリン−2−オン、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)インドリン−2−オン、及びα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂が挙げられる。これらの中でも、硬化物の耐熱性が向上するとの理由から、式(31)で表されるα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(式(31)において、n
13が、1〜4のものが含まれる)が好ましい。
【0112】
これらのシアン酸エステル化合物は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0113】
式(17)で表されるシアン酸エステル化合物の別の具体例としては、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂(公知の方法により、フェノール、アルキル置換フェノール又はハロゲン置換フェノールと、ホルマリンやパラホルムアルデヒド等のホルムアルデヒド化合物とを、酸性溶液中で反応させたもの)、トリスフェノールノボラック樹脂(ヒドロキシベンズアルデヒドとフェノールとを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フルオレンノボラック樹脂(フルオレノン化合物と9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類とを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂及びビフェニルアラルキル樹脂(公知の方法により、Ar
4−(CH
2Y)
2(Ar
4はフェニル基を示し、Yはハロゲン原子を示す。以下、この段落において同様。)で表されるようなビスハロゲノメチル化合物とフェノール化合物とを酸性触媒若しくは無触媒で反応させたもの、Ar
4−(CH
2OR)
2(Rはアルキル基を示す。)で表されるようなビス(アルコキシメチル)化合物とフェノール化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの、又は、Ar
4−(CH
2OH)
2で表されるようなビス(ヒドロキシメチル)化合物とフェノール化合物を酸性触媒の存在下に反応させたもの、あるいは、芳香族アルデヒド化合物とアラルキル化合物とフェノール化合物とを重縮合させたもの)、フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、キシレンホルムアルデヒド樹脂とフェノール化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とヒドロキシ置換芳香族化合物を酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フェノール変性ジシクロペンタジエン樹脂、ポリナフチレンエーテル構造を有するフェノール樹脂(公知の方法により、フェノール性ヒドロキシ基を1分子中に2つ以上有する多価ヒドロキシナフタレン化合物を、塩基性触媒の存在下に脱水縮合させたもの)等のフェノール樹脂を、前記と同様の方法によりシアネート化したもの等、並びにこれらのプレポリマー等が挙げられる。これらのシアン酸エステル化合物は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0114】
これらのシアン酸エステル化合物の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。かかる製法の例としては、所望の骨格を有するヒドロキシ基含有化合物を入手又は合成し、ヒドロキシ基を公知の手法により修飾してシアネート化する方法が挙げられる。ヒドロキシ基をシアネート化する手法としては、例えば、Ian Hamerton,Chemistry and Technology of Cyanate Ester Resins,Blackie Academic & Professionalに記載の手法が挙げられる。
【0115】
これらのシアン酸エステル化合物を用いた硬化物は、ガラス転移温度、低熱膨張性、及びめっき密着性等に優れた特性を有する。
【0116】
樹脂組成物において、シアン酸エステル化合物の含有量は、ビスマレイミド化合物(A)、シアン酸エステル化合物(B2)及び光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.5〜85質量部であることが好ましい。
【0117】
(ベンゾオキサジン化合物)
樹脂組成物には、ベンゾオキサジン化合物(B3)(成分(B3)とも称す)を用いることができる。以下にベンゾオキサジン化合物(B3)について述べる。
ベンゾオキサジン化合物(B3)としては、基本骨格としてオキサジン環を有していれば、一般に公知のものを用いることができる。ベンゾオキサジン化合物には、ナフトオキサジン化合物などの多環オキサジン骨格を有する化合物も含まれる。
【0118】
ベンゾオキサジン化合物(B3)としては、良好な光硬化性が得られる点から、式(20)で表される化合物、及び式(21)で表される化合物が好ましい。
【0119】
【化22】
【0120】
式(20)中、R
11は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。n
7は、各々独立に、1〜4の整数を示す。R
12は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。n
8は、各々独立に、1〜4の整数を示す。T
1は、アルキレン基、式(22)で表される基、式「−SO
2−」で表される基、「−CO−」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。
【0121】
R
11及びR
12共に、アリール基としては、炭素原子数6〜18のアリール基であることが好ましい。このようなアリール基として、例えば、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基、及びアントリル基が挙げられる。中でも、フェニル基がより好ましい。これらのアリール基は、炭素原子数1から4の低級アルキル基を1個以上、好ましくは、1〜3個の範囲で有していてもよい。そのような低級アルキル基を有するアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、及びメチルナフチル基などを挙げることができる。
【0122】
R
11及びR
12共に、アラルキル基は、ベンジル基、及びフェネチル基であることが好ましい。これらは、そのフェニル基上に炭素原子数1から4の低級アルキル基を1個以上、好ましくは、1〜3個の範囲で有していてもよい。
【0123】
R
11及びR
12共に、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、プロペニル基、ブテニル基、及びヘキセニル基が挙げられる。これらの中でも、ビニル基、アリル基、及びプロペニル基が好ましく、アリル基がより好ましい。
【0124】
R
11及びR
12共に、アルキル基としては、炭素原子数1〜20のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基である。炭素原子数3以上のアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、テキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−エチルヘキシル基、n−ノニル基、及びn−デシル基が挙げられる。
【0125】
R
11及びR
12共に、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基が挙げられる。好ましくは、シクロヘキシル基である。
【0126】
T
1におけるアルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。直鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカニレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、及びヘキサメチレン基が挙げられる。分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、−C(CH
3)
2−、−CH(CH
3)−、−CH(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)(CH
2CH
2CH
3)−、及び−C(CH
2CH
3)
2−のアルキルメチレン基;−CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
3)CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2CH
2−、−CH(CH
2CH
3)CH
2−、及び−C(CH
2CH
3)
2−CH
2−のアルキルエチレン基が挙げられる。
【0127】
【化23】
【0128】
式(21)中、R
13は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。n
9は、各々独立に、1〜3の整数を示す。R
14は、各々独立に、水素原子、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、又はシクロアルキル基を示す。n
10は、各々独立に、1〜5の整数を示す。T
2は、アルキレン基、式(22)で表される基、式「−SO
2−」で表される基、「−CO−」で表される基、酸素原子、又は単結合を示す。
【0129】
R
13及びR
14共に、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキル基、及びシクロアルキル基については前記のとおりである。T
2におけるアルキレン基については、前記のとおりである。
【0130】
【化24】
【0131】
式(22)中、Zは、アルキレン基又は芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基である。n
11は、0以上5以下の整数を示す。n
11は、1以上3以下の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0132】
Zにおけるアルキレン基については、前記のとおりである。
【0133】
芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレイン、インダセン、ターフェニル、アセナフチレン、及びフェナレンの芳香族性を有する化合物の核から水素原子を2つ除いた2価の基が挙げられる。
【0134】
ベンゾオキサジン化合物(B3)としては、市販品を用いてもよく、例えば、P−d型ベンゾオキサジン(四国化成工業社製、3,3’−(メチレン−1,4−ジフェニレン)ビス(3,4−ジヒドロ−2H−1,3−ベンゾオキサジン)、式(20)で表される化合物)、F−a型ベンゾオキサジン(四国化成工業社製、2,2−ビス(3,4−ジヒドロ−2H−3−フェニル−1,3−ベンゾオキサジニル)メタン、式(21)で表される化合物)、ビスフェノールA型ベンゾオキサジンBA−BXZ(小西化学工業(株)製、商品名)ビスフェノールF型ベンゾオキサジンBF−BXZ(小西化学工業(株)製、商品名)、ビスフェノールS型ベンゾオキサジンBS−BXZ(小西化学工業(株)製、商品名)、及びフェノールフタレイン型ベンゾオキサジン等が挙げられる。
【0135】
これらのベンゾオキサジン化合物(B3)は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
ベンゾオキサジン化合物は、良好な耐熱性を有するとの理由から、式(20)で表される化合物、及び式(21)で表される化合物が好ましく、3,3’−(メチレン−1,4−ジフェニレン)ビス(3,4−ジヒドロ−2H−1,3−ベンゾオキサジンがより好ましい。
【0136】
樹脂組成物において、ベンゾオキサジン化合物の含有量は、ビスマレイミド化合物(A)、ベンゾオキサジン化合物(B3)及び光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.5〜85質量部であることが好ましい。
【0137】
(エポキシ樹脂)
樹脂組成物には、エポキシ樹脂(B4)(成分(B4)とも称す)を用いることができる。以下にエポキシ樹脂(B4)について述べる。
エポキシ樹脂(B4)としては、一般に公知のものを使用できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシレンノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン、ブタジエン等の二重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物、及びこれらのハロゲン化物が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0138】
エポキシ樹脂としては、市販品を利用することもできる。市販品としては、例えば、式(23)で表されるエポキシ樹脂(日本化薬(株)製NC−3000FH(商品名)、式(23)中、n
12は約4である)、及び式(24)で表されるナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製HP−4710(商品名))が挙げられる。
【0139】
【化25】
【0140】
【化26】
【0141】
これらのエポキシ樹脂は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
エポキシ樹脂は、硬化物の耐熱性に優れるとの理由から、式(23)で表されるエポキシ樹脂、及び式(24)で表されるエポキシ樹脂が好ましく、式(23)で表されるエポキシ樹脂がより好ましい。
【0142】
樹脂組成物において、エポキシ樹脂の含有量は、ビスマレイミド化合物(A)、エポキシ樹脂(B4)及び光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.5〜85質量部であることが好ましい。
【0143】
(カルボジイミド化合物)
樹脂組成物には、カルボジイミド化合物(B5)(成分(B5)とも称す)を用いることができる。以下にカルボジイミド化合物(B5)について述べる。
カルボジイミド化合物(B5)としては、少なくとも分子中に1個以上のカルボジイミド基を有していれば、一般に公知のものを使用できる。例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、環状カルボジイミド、カルボジライト(登録商標)B−01(日清紡ケミカル(株)製)、及びスタバクゾール(登録商標:Rhein Chemie社製)等のポリカルボジイミド等が挙げられる。
【0144】
これらのカルボジイミド化合物(B5)は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
カルボジイミド化合物は、良好な耐熱性を有し、プリント配線板の絶縁層に用いた場合に導体層と良好な密着性を有するとの理由から、カルボジライト(登録商標)B−01、V−03、V05(以上、商品名、日清紡ケミカル(株)製)が好ましく、カルボジライト(登録商標)B−01(商品名、日清紡ケミカル(株)製)がより好ましい。
【0145】
樹脂組成物において、カルボジイミド化合物の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、0.5〜85質量部であることが好ましい。
【0146】
(エチレン性不飽和基を有する化合物)
樹脂組成物には、エチレン性不飽和基を有する化合物(B6)(成分(B6)とも称す)を用いることができる。以下にエチレン性不飽和基を有する化合物(B6)について述べる。
エチレン性不飽和基を有する化合物(B6)としては、1分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であれば、一般に公知のものを使用できる。例えば、(メタ)アクリロイル基、及びビニル基等を有する化合物が挙げられる。
【0147】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、フェニルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペングリコールジ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0148】
また、この他にも、(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を同一分子内に併せ持つウレタン(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロイル基とエステル結合を同一分子内に併せ持つポリエステル(メタ)アクリレート類;エポキシ樹脂から誘導され、(メタ)アクリロイル基を併せ持つエポキシ(メタ)アクリレート類;これらの結合が複合的に用いられている反応性オリゴマー等も挙げられる。
【0149】
ウレタン(メタ)アクリレート類とは、水酸基含有(メタ)アクリレートとポリイソシアネート、必要に応じて用いられるその他アルコール類との反応物が挙げられる。例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等のグリセリン(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の糖アルコール(メタ)アクリレート類と、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ジシクロヘキサンメチレンジイソシアネート、及びそれらのイソシアヌレート、ビュレット反応物等のポリイソシアネート等を反応させた、ウレタン(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0150】
ポリエステル(メタ)アクリレート類とは、例えば、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド変性フタル酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の単官能(ポリ)エステル(メタ)アクリレート類;ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート等のジ(ポリ)エステル(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパン又はグリセリン1モルに1モル以上のε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状ラクトン化合物を付加して得たトリオールのモノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0151】
ペンタエリスリトール、ジメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、又はテトラメチロールプロパン1モルに、1モル以上のε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状ラクトン化合物を付加して得たトリオールのモノ、ジ、トリ又はテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトール1モルに1モル以上のε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状ラクトン化合物を付加して得たトリオールのモノ、若しくはポリ(メタ)アクリレートのトリオール、テトラオール、ペンタオール又はヘキサオール等の多価アルコールのモノ(メタ)アクリレート又はポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0152】
更に、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、(ポリ)ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール等のジオール成分と、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ダイマー酸、セバチン酸、アゼライン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の多塩基酸、及びこれらの無水物との反応物であるポリエステルポリオールの(メタ)アクリレート;ジオール成分と多塩基酸及びこれらの無水物とε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等からなる環状ラクトン変性ポリエステルジオールの(メタ)アクリレート等の多官能(ポリ)エステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0153】
エポキシ(メタ)アクリレート類とは、エポキシ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とのカルボキシレート化合物である。例えば、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレート、グリオキサール型エポキシ(メタ)アクリレート、複素環式エポキシ(メタ)アクリレート等、及びこれらの酸無水物変性エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0154】
ビニル基を有する化合物としては、例えば、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等のビニルエーテル類;スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン類が挙げられる。その他ビニル化合物としてはトリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、及びビスアリルナジイミド等が挙げられる。
【0155】
エチレン性不飽和基を有する化合物としては、市販品を利用することができ、例えば、式(25)で表されるKAYARADZCA(登録商標)−601H(商品名、日本化薬(株)製)、TrisP−PAエポキシアクリレート化合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標)ZCR−6007H(商品名)、下記の式(26)で表される化合物と、式(27)〜(30)のいずれか1種以上の化合物とを含む混合物)、KAYARAD(登録商標)ZCR−6001H(商品名)、KAYARAD(登録商標)ZCR−6002H(商品名)、及びKAYARAD(登録商標)ZCR−6006H(商品名)が挙げられる。
【0156】
【化27】
【0157】
【化28】
【0158】
【化29】
【0159】
【化30】
【0160】
【化31】
【0161】
【化32】
【0162】
これらのエチレン性不飽和基を有する化合物(B6)は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
エチレン性不飽和基を有する化合物としては、良好な熱安定性を有するとの理由から、TrisP−PAエポキシアクリレート化合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0163】
樹脂組成物において、エチレン性不飽和基を有する化合物の含有量は、ビスマレイミド化合物(A)、ベンゾオキサジン化合物(B3)及び光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.5〜85質量部であることが好ましい。
【0164】
〔光硬化開始剤(C)〕
本実施形態に係る樹脂組成物には、光硬化開始剤(C)(成分(C)とも称す)を含む。光硬化開始剤(C)は、一般に光硬化性樹脂組成物で用いられる分野で公知のものを使用することができる。光硬化開始剤(C)は、ビスマレイミド化合物(A)、及び樹脂又は化合物(B)と共に、種々の活性エネルギー線を用いて光硬化させるために用いられる。
【0165】
光硬化開始剤(C)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、及びジ−tert−ブチル−ジ−パーフタレート等で例示される有機過酸化物;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシンクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、及び2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、及び2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、及びベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、及び4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、及び1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−エタノン−1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル類等のラジカル型光硬化開始剤や、
p−メトキシフェニルジアゾニウムフロロホスホネート、及びN,N−ジエチルアミノフェニルジアゾニウムヘキサフロロホスホネート等のルイス酸のジアゾニウム塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスホネート、及びジフェニルヨードニウムヘキサフロロアンチモネート等のルイス酸のヨードニウム塩;トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスホネート、及びトリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート等のルイス酸のスルホニウム塩;トリフェニルホスホニウムヘキサフロロアンチモネート等のルイス酸のホスホニウム塩;その他のハロゲン化物;トリアジン系開始剤;ボーレート系開始剤;その他の光酸発生剤等のカチオン系光硬化開始剤が挙げられる。
【0166】
光硬化開始剤(C)としては、市販品を利用することもできる。市販品としては、例えば、IGM Resins社製Omnirad(登録商標)369(商品名)、IGM Resins社製Omnirad(登録商標)819(商品名)、IGM Resins社製Omnirad(登録商標)819DW(商品名)、IGM Resins社製Omnirad(登録商標)907(商品名)、IGM Resins社製Omnirad(登録商標)TPO(商品名)、IGM Resins社製Omnirad(登録商標)TPO−L(商品名)、IGM Resins社製Omnirad(登録商標)784(商品名)、BASFジャパン株式会社製Irgacure(登録商標)OXE01(商品名)、BASFジャパン株式会社製Irgacure(登録商標)OXE02(商品名)、BASFジャパン株式会社製Irgacure(登録商標)OXE03(商品名)、及びBASFジャパン株式会社製Irgacure(登録商標)OXE04(商品名)等が挙げられる。
これらの光硬化開始剤(C)は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0167】
本実施形態において、光硬化開始剤(C)は、0.01質量%で含まれるクロロホルム溶液を調製し、波長365nm(i線)を含む活性エネルギー線を用いて、光硬化開始剤(C)が0.01質量%で含まれるクロロホルム溶液の吸光度を測定した場合においては、その吸光度は0.1以上であることが好ましく、この光硬化開始剤(C)は非常に優れた吸光性を示す。また、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いて、光硬化開始剤(C)が0.01質量%で含まれるクロロホルム溶液の吸光度を測定した場合においては、その吸光度が0.1以上であることが好ましく、この場合においても非常に優れた吸光性を示す。このような光硬化開始剤(C)を用いると、例えば、直接描画露光法を用いて高密度で高精細な配線形成(パターン)を有するプリント配線板を製造するに際し、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いた場合でも、マレイミドの光ラジカル反応が効率的に起こる。なお、波長365nm(i線)における吸光度は、光硬化性により優れる樹脂組成物を得ることができることから、0.15以上であることがより好ましい。波長405nm(h線)における吸光度は、光硬化性により優れる樹脂組成物を得ることができることから、0.15以上であることがより好ましい。なお、波長365(i線)における吸光度、及び波長405nm(h線)における吸光度において、それぞれの上限は、例えば、99.9以下である。
【0168】
このような光硬化開始剤(C)としては、式(2)で表される化合物が好ましい。
【0169】
【化33】
【0170】
式(2)中、R
4は、各々独立に、式(3)で表される置換基又はフェニル基を表す。
【0171】
【化34】
【0172】
式(3)中、R
5は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。式(3)中、−*は、式(2)中のリン原子(P)との結合手を示す。
【0173】
式(2)で表される化合物は、この化合物が0.01質量%で含まれるクロロホルム溶液を調製し、波長365nm(i線)を含む活性エネルギー線を用いてこのクロロホルム溶液の吸光度を測定した場合に、吸光度が0.1以上と、波長365nm(i線)の光に対して非常に優れた吸収性を示す。そのため、この化合物は、波長365nm(i線)の光に対して好適にラジカルを発生する。吸光度は、0.15以上であることが好ましい。上限値は、例えば、5.0以下であり、10.0以下であってもよい。
【0174】
また、式(2)で表される化合物は、この化合物が0.01質量%で含まれるクロロホルム溶液を調製し、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いてこのクロロホルム溶液の吸光度を測定した場合に、吸光度が0.1以上と、波長405nm(h線)の光に対して非常に優れた吸収性を示す。そのため、この化合物は、波長405nm(h線)の光に対して好適にラジカルを発生する。そのため、この化合物は、波長405nm(h線)の光に対して好適にラジカルを発生する。吸光度は、0.15以上であることが好ましい。上限値は、例えば、5.0以下であり、10.0以下であってもよい。
【0175】
式(2)中、R
4は、各々独立に、式(3)で表される置換基又はフェニル基を表す。R
4のうち、1つ以上が式(3)で表される置換基であることが好ましい。
式(3)中、R
5は、各々独立に水素原子又はメチル基を表す。R
5のうち、1つ以上がメチル基であることが好ましく、全てメチル基であることがより好ましい。
【0176】
式(2)で表される化合物としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド類が挙げられる。これらの中でも、優れた光透過性を有することから、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。これらの化合物は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0177】
アシルフォスフィンオキサイド類は、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線に対して非常に優れた吸収性を示し、例えば、波長405nm(h線)の透過率が5%以上であるビスマレイミド化合物(A)を好適にラジカル重合させることができる。そのため、特に多層プリント配線板に用いた際に、優れた光硬化性を有し、耐熱性、熱安定性及び絶縁信頼性をバランスよく優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物、樹脂シート、それらを用いた多層プリント配線板、及び半導体装置を好適に製造することが可能となる。
【0178】
樹脂組成物において、光硬化開始剤(C)の含有量は、ビスマレイミド化合物(A)、及び樹脂又は化合物(B)の光硬化を十分に進行させ、より優れた耐熱性及び熱安定性を得るという観点から、ビスマレイミド化合物(A)、樹脂又は化合物(B)及び光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、1〜8質量部であることがより好ましく、2〜7質量部であることが更に好ましい。
【0179】
〔充填材〕
本実施形態の樹脂組成物には、塗膜性や耐熱性等の諸特性を向上させるために、充填材(D)(成分(D)とも称す)を含むこともできる。充填材(D)としては、絶縁性を有し、光硬化に用いる種々の活性エネルギー線に対する透過性を阻害しないものであることが好ましく、波長365nm(i線)、及び/又は波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線に対する透過性を阻害しないものであることがより好ましい。
【0180】
充填材(D)としては、例えば、シリカ(例えば、天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、及び中空シリカ等)、アルミニウム化合物(例えば、ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、及び窒化アルミニウム等)、ホウ素化合物(例えば、窒化ホウ素等)、マグネシウム化合物(例えば、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウム等)、カルシウム化合物(例えば、炭酸カルシウム等)、モリブデン化合物(例えば、酸化モリブデン、及びモリブデン酸亜鉛等)、バリウム化合物(例えば、硫酸バリウム、及びケイ酸バリウム等)、タルク(例えば、天然タルク、及び焼成タルク等)、マイカ、ガラス(例えば、短繊維状ガラス、球状ガラス、微粉末ガラス、Eガラス、Tガラス、及びDガラス等)、シリコーンパウダー、フッ素樹脂系充填材、ウレタン樹脂系充填材、(メタ)アクリル樹脂系充填材、ポリエチレン系充填材、スチレン・ブタジエンゴム、並びにシリコーンゴム等が挙げられる。これらの充填材(D)は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0181】
これらの中でも、シリカ、ベーマイト、硫酸バリウム、シリコーンパウダー、フッ素樹脂系充填材、ウレタン樹脂系充填材、(メタ)アクリル樹脂系充填材、ポリエチレン系充填材、スチレン・ブタジエンゴム、及びシリコーンゴムことが好ましい。
これらの充填材(D)は、後述のシランカップリング剤等で表面処理されていてもよい。
【0182】
硬化物の耐熱性を向上させ、また良好な塗膜性が得られるという観点から、シリカが好ましく、溶融シリカがより好ましい。シリカの具体例としては、デンカ(株)製のSFP−130MC(商品名)、(株)アドマテックス製のSC2050―MB(商品名)、SC1050−MLE(商品名)、YA010C−MFN(商品名)、及びYA050C−MJA(商品名)等が挙げられる。
【0183】
充填材(D)の粒径は、樹脂組成物の紫外光透過性という観点から、通常0.005〜10μmであり、好ましくは0.01〜1.0μmである。
【0184】
本実施形態の樹脂組成物において、充填材(D)の含有量は、樹脂組成物の光透過性や、硬化物の耐熱性を良好にするという観点から、ビスマレイミド化合物(A)、樹脂又は化合物(B)及び光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、300質量部以下とすることが好ましく、200質量部以下とすることがより好ましく、100質量部以下とすることが更に好ましい。上限値は、30質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよい。なお、充填材(D)を含有する場合、下限値は、塗膜性や耐熱性等の諸特性を向上させる効果が得られる観点から、ビスマレイミド化合物(A)、樹脂又は化合物(B)及び光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、通常1質量部である。
【0185】
〔シランカップリング剤及び湿潤分散剤〕
本実施形態の樹脂組成物には、充填材の分散性、ポリマー及び/又は樹脂と、充填材との接着強度を向上させるために、シランカップリング剤及び/又は湿潤分散剤を併用することができる。
これらのシランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、限定されない。具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、 N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、[3−(6−アミノヘキシルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、及び[3−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピル]トリメトキシシラン等のアミノシラン系;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシドキシプロピルジエトキシメチルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及び[8−(グリシジルオキシ)−n−オクチル]トリメトキシシラン等のエポキシシラン系;ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリメトキシ(7−オクテン−1−イル)シラン、及びトリメトキシ(4−ビニルフェニル)シランなどのビニルシラン系;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシランなどのメタクリルシラン系、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン系;3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、及び3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシラン系;トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレートシラン系;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシランなどのメルカプトシラン系;3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイドシラン系;p−スチリルトリメトキシシランなどのスチリルシラン系;N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等のカチオニックシラン系;[3−(トリメトキシシリル)プロピル]コハク酸無水物などの酸無水物系;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、及びp−トリルトリメトキシシラン等のフェニルシラン系トリメトキシ(1−ナフチル)シランなどのアリールシラン系が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0186】
本実施形態の樹脂組成物において、シランカップリング剤の含有量は、通常、ビスマレイミド化合物(A)、樹脂又は化合物(B)及び光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部である。
湿潤分散剤としては、塗料用に使用されている分散安定剤であれば、特に限定されない。具体例としては、ビッグケミー・ジャパン(株)製のDISPERBYK(登録商標)−110(商品名)、111(商品名)、118(商品名)、180(商品名)、161(商品名)、BYK(登録商標)−W996(商品名)、W9010(商品名)、W903(商品名)等の湿潤分散剤が挙げられる。これらの湿潤分散剤は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
本実施形態の樹脂組成物において、湿潤分散剤の含有量は、通常、ビスマレイミド化合物(A)、樹脂又は化合物(B)及び光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部である。
【0187】
〔硬化促進剤〕
本実施形態の樹脂組成物には、必要に応じて、硬化速度を適宜調節するために、硬化促進剤を含むことが好ましい。硬化促進剤としては、シアン酸エステル化合物等の硬化促進剤として一般に使用されているものを用いることができる。硬化促進剤としては、例えば、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、アセチルアセトン鉄、オクチル酸ニッケル、及びオクチル酸マンガン等の有機金属塩類;フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、オクチルフェノール、及びノニルフェノール等のフェノール化合物;1−ブタノール、及び2−エチルヘキサノール等のアルコール類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、及び2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらのイミダゾール類のカルボン酸もしくはその酸無水類の付加体等の誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、及び4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン類;ホスフィン系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、ホスホニウム塩系化合物、及びダイホスフィン系化合物等のリン化合物;エポキシ−イミダゾールアダクト系化合物;ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、及びジ−2−エチルヘキシルパーオキシカーボネート等の過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」とも称す)等のアゾ化合物が挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
本実施形態の樹脂組成物において、硬化促進剤の含有量は、通常、ビスマレイミド化合物(A)、樹脂又は化合物(B)及び光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部である。
【0188】
〔有機溶剤〕
本実施形態の樹脂組成物には、必要に応じて、有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤を用いると、樹脂組成物の調製時における粘度を調整することができる。有機溶剤の種類は、樹脂組成物中の樹脂の一部又は全部を溶解可能なものであれば、特に限定されない。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等のケトン類;シクロペンタノン、及びシクロヘキサノン等の脂環式ケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒;乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル、及びγ―ブチロラクトン等のエステル系溶媒;ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミド等のアミド類などの極性溶剤類;トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素等の無極性溶剤が挙げられる。
これらの有機溶剤は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0189】
〔その他の成分〕
本実施形態の樹脂組成物には、本実施形態の特性が損なわれない範囲において、これまでに挙げられていない熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、及びそのオリゴマー、並びにエラストマー類等の種々の高分子化合物;これまでに挙げられていない難燃性の化合物;添加剤等の併用も可能である。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されない。例えば、難燃性の化合物では、メラミンやベンゾグアナミン等の窒素含有化合物、オキサジン環含有化合物、及びリン系化合物のホスフェート化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等が挙げられる。添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、表面調整剤、光沢剤、重合禁止剤、熱硬化促進剤等が挙げられる。これらの成分は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
本実施形態の樹脂組成物において、その他の成分の含有量は、通常、ビスマレイミド化合物(A)、樹脂又は化合物(B)及び光硬化開始剤(C)の合計100質量部に対して、それぞれ0.1〜10質量部である。
【0190】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の樹脂組成物は、ビスマレイミド化合物(A)、樹脂又は化合物(B)、光硬化開始剤(C)と、必要に応じて、充填材(D)、その他の樹脂、その他の化合物、及び添加剤等を適宜混合することにより調製される。樹脂組成物は、後述する本実施形態の樹脂シートを作製する際のワニスとして、好適に使用することができる。なお、ワニスの調製に使用する有機溶媒は、特に限定されず、その具体例は、前記したとおりである。
【0191】
樹脂組成物の製造方法は、例えば、前記した各成分を順次溶剤に配合し、十分に攪拌する方法が挙げられる。樹脂組成物は、光硬化性に優れ、樹脂組成物から得られる硬化物は、耐熱性、熱安定性、及び絶縁信頼性に優れる。
【0192】
樹脂組成物の製造時には、必要に応じて、各成分を均一に溶解又は分散させるための公知の処理(攪拌、混合、混練処理等)を行うことができる。具体的には、適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽を用いて攪拌分散処理を行うことにより、樹脂組成物における各成分の分散性を向上させることができる。攪拌、混合、混練処理は、例えば、超音波ホモジナイザー等の分散を目的とした攪拌装置、三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混合を目的とした装置、並びに、公転又は自転型の混合装置等の公知の装置を用いて適宜行うことができる。また、樹脂組成物の調製時においては、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。有機溶剤の種類は、樹脂組成物中の樹脂を溶解可能なものであれば、特に限定されず、その具体例は、前記したとおりである。
【0193】
樹脂組成物は、後述する本実施形態の樹脂シートを作製する際のワニスとして、好適に使用することができる。ワニスは、公知の方法により得ることができる。例えば、ワニスは、本実施形態の樹脂組成物中の有機溶媒を除く成分100質量部に対して、有機溶剤を10〜900質量部加えて、前記の公知の混合処理(攪拌、混練処理等)を行うことで得ることができる。
【0194】
[用途]
樹脂組成物は、絶縁信頼性の樹脂組成物が必要とされる用途に好ましく使用することができる。用途としては、例えば、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリプレグ、樹脂シート、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、及び部品埋め込み樹脂等に使用することができる。それらの中でも、樹脂組成物は、光硬化性、耐熱性及び熱安定性に優れるため、多層プリント配線板の絶縁層用として、又はソルダーレジスト用として好適に使用することができる。
【0195】
[硬化物]
硬化物は、本実施形態の樹脂組成物を硬化させてなる。硬化物は、例えば、樹脂組成物を溶融又は溶媒に溶解させた後、型内に流し込み、光を用いて通常の条件で硬化させることにより得ることができる。光の波長領域は、光重合開始剤等により効率的に硬化が進む100〜500nmの範囲で硬化させることが好ましい。
【0196】
[樹脂シート]
本実施形態の樹脂シートは、支持体と、支持体の片面又は両面に配された樹脂層と、を有し、樹脂層が、樹脂組成物を含む、支持体付き樹脂シートである。樹脂シートは、樹脂組成物を支持体上に塗布、及び乾燥して製造することができる。樹脂シートにおける樹脂層は、優れた耐熱性、熱安定性及び絶縁信頼性を有する。
【0197】
支持体は、公知のものを使用することができるが、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、及びトリアセチルアセテートフィルム等が挙げられる。それらの中でも、PETフィルムが好ましい。
【0198】
樹脂フィルムは、樹脂層からの剥離を容易にするため、剥離剤を表面に塗布してあることが好ましい。樹脂フィルムの厚さは、5〜100μmの範囲であることが好ましく、10〜50μmの範囲であることがより好ましい。この厚さが5μm未満では、現像前に行う支持体剥離の際に支持体が破れやすくなる傾向があり、厚さが100μmを超えると、支持体上から露光する際の解像度が低下する傾向がある。
【0199】
また、露光時の光の散乱を低減するため、樹脂フィルムは透明性に優れるものが好ましい。
【0200】
さらに、本実施形態における樹脂シートにおいて、その樹脂層は、保護フィルムで保護されていてもよい。
樹脂層側を保護フィルムで保護することにより、樹脂層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムとしては、樹脂フィルムと同様の材料により構成されたフィルムを用いることができる。保護フィルムの厚さは、1〜50μmの範囲であることが好ましく、5〜40μmの範囲であることがより好ましい。厚さが1μm未満では、保護フィルムの取り扱い性が低下する傾向にあり、50μmを超えると廉価性に劣る傾向にある。なお、保護フィルムは、樹脂層と支持体との接着力に対して、樹脂層と保護フィルムとの接着力の方が小さいものが好ましい。
【0201】
本実施形態の樹脂シートの製造方法は、例えば、本実施形態の樹脂組成物をPETフィルム等の支持体に塗布して、乾燥することにより有機溶剤を除去することで、樹脂シートを製造する方法等が挙げられる。
塗布方法は、例えば、ロールコーター、コンマコーター、グラビアコーター、ダイコーター、バーコーター、リップコーター、ナイフコーター、及びスクイズコーター等を用いた公知の方法で行うことができる。乾燥は、例えば、60〜200℃の乾燥機中で、1〜60分加熱させる方法等により行うことができる。
【0202】
樹脂層中に残存する有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する観点から、樹脂層の総質量に対して5質量%以下とすることが好ましい。樹脂層の厚さは、取り扱い性を向上させるという観点から、1〜50μmとすることが好ましい。
【0203】
樹脂シートは、多層プリント配線板の絶縁層の製造用として好ましく使用することができる。
【0204】
[多層プリント配線板]
本実施形態の多層プリント配線板は、絶縁層と、絶縁層の片面又は両面に形成された導体層とを有し、絶縁層が、樹脂組成物を含む。絶縁層は、例えば、樹脂シートを1枚以上重ねて硬化して得ることもできる。絶縁層と導体層のそれぞれの積層数は、特に限定されず、目的とする用途に応じて適宜積層数を設定することができる。また、絶縁層と導体層の順番も特に限定されない。導体層としては、各種プリント配線板材料に用いられる金属箔であってもよく、例えば、銅、及びアルミニウム等の金属箔が挙げられる。銅の金属箔としては、圧延銅箔、及び電解銅箔等の銅箔が挙げられる。導体層の厚みは、通常、1〜100μmである。具体的には、以下の方法により製造することができる。
【0205】
(ラミネート工程)
ラミネート工程では、樹脂シートの樹脂層側を、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする。回路基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、セラミック基板、シリコン基板、半導体封止樹脂基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、及び熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、回路基板とは、基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された基板をいう。また、導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている基板も回路基板に含まれる。なお、この多層プリント配線板に積層されている絶縁層は、本実施形態の樹脂シートを1枚以上重ねて硬化して得られた絶縁層であってもよく、本実施形態の樹脂シートと、本実施形態の樹脂シートと異なる公知の樹脂シートとをそれぞれ1枚以上重ねて得られた絶縁層であってもよい。なお、本実施形態の樹脂シートと、本実施形態の樹脂シートと異なる公知の樹脂シートとの重ね方は、特に限定されない。導体層表面には、黒化処理、及び/又は銅エッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。ラミネート工程において、樹脂シートが保護フィルムを有している場合には、保護フィルムを剥離除去した後、必要に応じて樹脂シート及び回路基板をプレヒートし、樹脂シートの樹脂層を加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。本実施形態においては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板に樹脂シートの樹脂層をラミネートする方法が好適に用いられる。
【0206】
ラミネート工程の条件は、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を50〜140℃とし、圧着圧力を1〜15kgf/cm
2とし、圧着時間を5〜300秒間とし、空気圧を20mmHg以下とする減圧下でラミネートすることが好ましい。また、ラミネート工程は、バッチ式であってもロールを用いる連続式であってもよい。真空ラミネート法は、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニッコー・マテリアルズ(株)製2ステージビルドアップラミネーター(商品名)等を挙げることができる。
【0207】
(露光工程)
露光工程では、ラミネート工程により、回路基板上に樹脂層が設けられた後、樹脂層の所定部分に光源として、活性エネルギー線を照射し、照射部の樹脂層を硬化させる。
照射は、マスクパターンを通してもよいし、直接照射する直接描画法を用いてもよい。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、及びX線等が挙げられる。活性エネルギー線の波長としては、例えば、200〜600nmの範囲である。紫外線を用いる場合、その照射量はおおむね10〜1000mJ/cm
2である。また、ステッパー露光法を用いて高密度で高精細な配線形成(パターン)を有するプリント配線板を製造するに際しては、活性エネルギー線として、例えば、波長365nm(i線)を含む活性エネルギー線を用いることが好ましい。波長365nm(i線)を含む活性エネルギー線を用いた場合、その照射量は、おおむね10〜10,000mJ/cm
2である。直接描画露光法を用いて高密度で高精細な配線形成(パターン)を有するプリント配線板を製造するに際しては、活性エネルギー線として、例えば、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いることが好ましい。波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いた場合、その照射量は、おおむね10〜10,000mJ/cm
2である。
マスクパターンを通す露光方法には、マスクパターンを多層プリント配線板に密着させて行う接触露光法と、密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法とがあるが、どちらを用いてもかまわない。また、樹脂層上に支持体が存在している場合は、支持体上から露光してもよいし、支持体を剥離後に露光してもよい。
【0208】
(現像工程)
本実施形態では、必要に応じて、現像工程を含んでもよい。
すなわち、樹脂層上に支持体が存在していない場合には、露光工程後、ウエット現像にて光硬化されていない部分(未露光部)を除去し、現像することにより、絶縁層のパターンを形成することができる。また、樹脂層上に支持体が存在している場合には、露光工程後、その支持体を除去した後に、ウエット現像にて光硬化されていない部分(未露光部)を除去し、現像することにより、絶縁層のパターンを形成することができる。
【0209】
ウエット現像の場合、現像液としては、未露光部分を選択的に溶出するものであれば、特に限定されない。例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、及びγ―ブチロラクトン等の有機溶媒;水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、及び水酸化カリウム水溶液等のアルカリ現像液が用いられる。これらの現像液は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0210】
また、現像方法としては、例えば、ディップ、パドル、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法で行うことができる。パターン形成においては、必要に応じて、これらの現像方法を併用して用いてもよい。また、現像方法としては、高圧スプレーを用いることが、解像度がより向上するため、好適である。スプレー方式を採用する場合のスプレー圧としては、0.02〜0.5MPaが好ましい。
【0211】
(ポストベーク工程)
露光工程終了後、又は現像工程終了後、ポストベーク工程を行い、絶縁層(硬化物)を形成する。ポストベーク工程としては、高圧水銀ランプによる紫外線照射工程やクリーンオーブンを用いた加熱工程等が挙げられ、これらを併用することも可能である。紫外線を照射する場合は、必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば、50〜10,000mJ/cm
2程度の照射量で照射を行うことができる。また加熱の条件は、必要に応じて適宜選択できるが、好ましくは150〜220℃で20〜180分間の範囲、より好ましくは160〜200℃で30〜150分間の範囲で選択される。
【0212】
(導体層形成工程)
絶縁層(硬化物)を形成後、乾式めっきにより絶縁層表面に導体層を形成する。乾式めっきとしては、蒸着法、スパッタリング法、及びイオンプレーティング法等の公知の方法を使用することができる。蒸着法(真空蒸着法)は、例えば、多層プリント配線板を真空容器内に入れ、金属を加熱蒸発させることにより、絶縁層上に金属膜を形成することができる。スパッタリング法も、例えば、多層プリント配線板を真空容器内に入れ、アルゴン等の不活性ガスを導入し、直流電圧を印加して、イオン化した不活性ガスをターゲット金属に衝突させ、叩き出された金属により絶縁層上に金属膜を形成することができる。
【0213】
次いで、無電解めっきや電解めっきなどによって導体層を形成する。その後のパターン形成の方法としては、例えば、サブトラクティブ法、セミアディティブ法等を用いることができる。
【0214】
[半導体装置]
本実施形態の半導体装置は、樹脂組成物を含む。具体的には、以下の方法により製造することができる。多層プリント配線板の導通箇所に、半導体チップを実装することにより半導体装置を製造することができる。ここで、導通箇所とは、多層プリント配線板における電気信号を伝える箇所のことであって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもよい。また、半導体チップは、半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0215】
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能すれば、特に限定されない。具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、及び非導電性フィルム(NCF)による実装方法等が挙げられる。
【0216】
また、半導体チップや半導体チップを搭載してある基板に樹脂組成物を含む絶縁層を形成することによっても、半導体装置を製造することができる。半導体チップを搭載してある基板の形状はウェハ状でもパネル状でも良い。形成後は多層プリント配線板と同様の方法を用いて製造することができる。