(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記手袋は、さらに掌部が上に向かって2つ折りされ、前記2つ折りの先端が前記指袋の付け根より下の位置で繊維生地に内側から固定されている請求項1に記載の断熱性手袋。
前記手袋は、さらに手首部が上に向かって2つ折りされ、前記2つ折りの先端が親指袋の付け根付近で繊維生地に内側から固定されている請求項1又は2に記載の断熱性手袋。
前記指袋が先端から内部に折り込まれた部分、前記掌部を上に向けて2つ折りした部分及び手首部を上に向けて2つ折りした部分から選ばれる少なくとも1つには内部に断熱シートが挿入されている請求項1〜3のいずれかに記載の断熱性手袋。
前記断熱性手袋は、セルロース繊維、ウール、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、ポリベンズチアゾール繊維、ポリアミドイミド繊維、メラミン繊維、ポリイミド繊維、ポリアリレート繊維及びポリフェニレンスルフィド繊維から選ばれる少なくとも一つの繊維で構成されている請求項1〜5のいずれかに記載の断熱性手袋。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の繊維生地製の断熱手袋は、指袋の先端から内部に折り込まれ、先端部は手首から上乃至前記指袋の付け根より下の位置で繊維生地に内側から固定されており、指を挿入した時、指の掌部又は甲部のいずれか一方が三重の繊維生地となり、他方が一重の繊維生地となる。これにより、外部からの熱に対しては前記三重の繊維生地部分を甲部側に配置して着用することにより熱遮断できる。また熱いものを握るときには前記三重の繊維生地部分を掌側に配置して着用することにより熱遮断できる。
本明細書において、靴下の例は参考例である。
【0011】
前記手袋は、さらに掌部が上に向かって2つ折りされ、前記2つ折りの先端が前記指袋の付け根より下の位置で繊維生地に内側から固定されていてもよい。これにより、2つ折りした部分で断熱性を高くすることができる。前記熱遮断部は掌と甲部の上部の熱遮断に有効である。
【0012】
前記手袋は、さらに手首部が上に向かって2つ折りされ、前記2つ折りの先端が親指袋の付け根付近で繊維生地に内側から固定されていてもよい。これにより、2つ折りした部分で断熱性を高くすることができる。前記熱遮断部は掌と甲部の下部の熱遮断に有効である。
【0013】
前記指袋が先端から内部に折り込まれた部分、前記掌部を上に向けて2つ折りした部分及び手首部を上に向けて2つ折りした部分から選ばれる少なくとも1つには内部に断熱シートを挿入してもよい。断熱シートとしては、不織布、皮革、樹脂、金属、セラミックス、織物、編み物、雲母やシリカ繊維等の無機物シート等を使用できる。これによりさらに断熱性を高くできる。前記指袋が先端から内部に折り込まれた部分にはヒーター線や信号線も挿入できる。ヒーター線は寒さに対して有効である。信号線は、例えばカーナビ、音楽の選択、ゲーム、或いはこれらの切り替え等に有効である。
【0014】
本発明の断熱性靴下は、繊維生地製であり、先端から内部に折り込まれ、先端部が踵部又は足の甲部のいずれかの位置で前記繊維生地に内側から固定されており、前記靴下の表面又は裏面のいずれか一方が三重の繊維生地であり、他方が一重の繊維生地である。三重の繊維生地部分を甲(ソール)側に配置すると、足の上面からの熱を遮断でき、寒いときは保温効果が高い。三重の繊維生地部分を足裏側に配置すると、足裏面からの熱を遮断でき、寒いときは保温効果が高い。足裏面からの熱は、例えば夏の日射下、建設現場における金属やコンクリート表面は高温になる場合があり、このような場所で作業する際の断熱に有効である。
【0015】
前記靴下の表面又は裏面のいずれか一方が三重の繊維生地になっている内部に断熱シートを挿入してもよい。足裏面の繊維生地を三重にした場合は、内部空間にインナーソール型の断熱シートを挿入できる。断熱シートの素材は、前記手袋で説明したものと同様のものを使用できる。インナーソール型の断熱シートを金属製又は樹脂製にした場合は、釘踏み防止機能も発揮できる。
【0016】
前記断熱性生地の繊維生地は編み物であるのが好ましい。編み物は伸びがあるので、各折り返し部を内部からミシン縫製により固定するのに都合がよい。また編み物の手袋又は靴下は、右用でも左用でも切り替えて着用できる。そのうえ、洗濯もできる。
【0017】
前記繊維生地は、木綿、麻などのセルロース繊維、ウール、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、ポリベンズチアゾール繊維、ポリアミドイミド繊維、メラミン繊維、ポリイミド繊維、ポリアリレート繊維及びポリフェニレンスルフィド繊維から選ばれる少なくとも一つの繊維で構成されているのが好ましい。このうち、熱さに対してはアラミド繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、ポリベンズチアゾール繊維、ポリアミドイミド繊維、メラミン繊維、ポリイミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維等の耐熱繊維が好ましく、寒さに対しては木綿、ウール、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維等の通常繊維が好ましい。
【0018】
本発明において耐熱性繊維は、融点又は分解点が約350℃以上、好ましくは400℃以上であれば、無機繊維又は有機繊維のいかなるものであってもよい。好ましくはアラミド繊維(パラ系アラミドの融点又は分解点:480〜570℃、メタ系同:400〜430℃)、ポリベンズイミダゾール繊維(ガラス転移温度:400℃以上、熱分解温度600℃超)、ポリベンズオキサゾール繊維(融点又は分解温度:650℃)、ポリベンズチアゾール繊維(融点又は分解温度:650℃)、ポリアミドイミド繊維(融点又は分解温度:350℃以上)、メラミン繊維(融点又は分解温度:400℃以上)、ポリイミド繊維(融点又は分解温度:350℃以上)、ポリアリレート繊維(融点又は分解温度:400℃以上)及びポリフェニレンスルフィド繊維(融点:約280℃)などが好ましい。これらの繊維は編物に加工しやすい。繊度は118〜5905dtex(綿番手:0.5〜50番)程度が好ましい。単糸で使用することもできるし、複数本引き揃えるか、あるいは合撚して使用できる。
【0019】
本発明においては、前記特許文献1に記載の意匠撚糸を使用してもよい。意匠撚糸は、一例として芯糸とループヤーン(花糸)と押さえ糸で構成され、ループヤーン(花糸)は木綿、レーヨン、麻、羊毛及びアクリル繊維から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。芯糸と押さえ糸は例えばポリエステルフィラメント糸を使用できる。耐熱性繊維糸は、芯糸、ループヤーン(花糸)、押さえ糸のいずれにも使用できる。芯糸に対してループヤーンは2〜6倍オーバーフィードして作成すると、芯糸の周囲にあらゆる方向にランダムにループが形成できる。意匠撚糸の繊度は118〜11811dtex(綿番手:0.5〜50番)程度が好ましい。単糸で使用することもできるし、複数本引き揃えるか、あるいは合撚して使用できる。
【0020】
前記繊維性生地は、多層構造にし、一方の面に耐熱性繊維糸を多く存在させ、他方の面に意匠撚糸を多く存在させるようにして編物を形成してもよい。このような編物の組織としては、ダブルニット、ダブルジャージ、両面編地、ダブルラッシェル、二重編物、シングルジャージ及びスムース編物から選ばれる少なくとも一つの組織がある。
【0021】
前記のような組織においては、ループヤーンの一部のループが、耐熱性繊維糸のリッチな面に突出することがあるので、この場合は外表面に現れるループをカットしてカットパイルとするのが好ましい。このようにすると耐熱手袋を作業手袋として使用した場合、ループが機械部品等に引っ掛かることがなく、作業の安全性が高くなる。
【0022】
本発明の断熱手袋の厚さは0.3mm以上3mm以下が好ましく、さらに0.5mm以上2mm以下が好ましい。前記断熱手袋の単位面積あたりの重量は0.09g/cm
2以上であることが好ましく、さらに0.1g/cm
2以上が好ましい。厚さ及び単位面積あたりの重量が前記の範囲であると、熱遮断性に加えて耐燃焼性も向上する。
【0023】
本発明の断熱手袋は、例えば高温又は低温物質を扱う作業手袋、アーク溶接などの溶接作業、溶鉱炉などの炉前作業用手袋、加熱調理などの高熱物体を扱う作業用手袋、登山等のスポーツ用手袋などに有用である。
【0024】
以下図面を用いて説明する。以下の図面において同一符号は同一物を示す。
図1は本発明の一実施形態の編み物製の断熱手袋の折り込まれる前の状態を示す裏面図である。この手袋1の長さは660mmあり、通常の手袋の長さより2〜3倍長い。指袋は5本指としたが、2本指(ミトン)、3本指等でもよい。薬指の長さは200mmである。指袋のみを折り返して固定するのであれば、指袋のみを通常の手袋の2.1〜2.3倍程度の長さにしておく。通常の手袋の2倍よりやや長いのは、折り返し部のり長さが必要なのと、指袋の付け根より下の位置で繊維生地に内側から固定するためである。
【0025】
図2は同、折り込まれた後の状態を示す裏面図、
図3は
図2のI−I線断面図である。折り込まれた後の断熱手袋2は、指袋の先端部4a−4eが中に折り込まれ、この先端部は指袋の付け根より下の位置で繊維生地に内側から縫製により固定されている。5a−5eは縫製による固定部である。これにより、中央に穴部6a−6eを有する指袋3a−3eが形成されるが、指16を挿入すると、
図3に示すように、指16の掌部又は甲部のいずれか一方が三重の繊維生地となり、他方が一重の繊維生地となる。三重の繊維生地部分は一重の繊維生地に比べて3倍以上の断熱性を有する。加えて、中央の穴部6a−6eに断熱シートを挿入すれば、さらに断熱性は高くなる。
【0026】
この断熱手袋2は、さらに手の甲部の上部7と掌部の上部を上に向けて2つ折りし、前記2つ折りの先端を指袋の付け根より下の位置で繊維生地に内側から縫製により固定すると、手の甲部の上部と掌部上部の断熱性を高くすることができる。8は手の甲部の上部7を上に向けて2つ折りした部分である。9a−9c、10a−10cは縫製による固定部である。手の甲部の上部7と2つ折りした部分8の間には空間ができるので、この空間に断熱シートを挿入すれば、さらに断熱性は高くなる。
【0027】
この断熱手袋2は、さらに手首部15を上に向かって2つ折りし、前記2つ折りの先端を親指袋3aの付け根付近で繊維生地に内側から固定すると、掌部の断熱性を高くすることができる。12は手の甲部の下部11を上に向けて2つ折りした部分である。13a−13d、14a−14cは縫製による固定部である。2つ折りした部分12と手の甲部の下部11の間には空間ができるので、この空間に断熱シートを挿入すれば、さらに断熱性は高くなる。15はゴム編み部の手首部である。
【0028】
図4は本発明の別の実施形態の編み物製の断熱手袋の折り込まれる前の状態を示す裏面図である。この手袋20は、通常の手袋に比べて各指袋が約3倍長く形成されている。この手袋20の各指袋を内側に折り込んで先端を内側から縫製により固定したのが
図5に示す断面図である。固定部24は、手袋の内側から外側に向けてミシン縫製で行うのが好ましい。これにより、手の甲側が三重生地部分21となり、掌側は一重生地部分23となる。三重生地部分21は断熱又は保温効果があり、一重生地部分23は動作機能を保持できる。三重生地部分21の空間部22には断熱シートを挿入できる。25はゴム編み部の手首部である。三重生地部分21を掌側にすることもできる。
【0029】
図6は本発明の一実施形態の編み物製の断熱靴下の折り込まれる前の状態を示す裏面図である。この靴下26は、足袋部分が通常の靴下の約3倍長い。足袋27,29の中間部にはくびれ部28があり、この部分まで折り込むと、指先部分が細くなり、足指にフィットするようになる。30は踵部、31は足首部である。足袋27の先端部は踵部30と同じ形状にしておくと、足袋27の先端部を踵部30まで折り込んだ時に一致しやすい。
【0030】
この靴下の先端部を内側に向けて折り込み、上側(甲側)で固定した後の状態を示す断面図を
図7に示す。固定部32は、靴下の内側から外側に向けてミシン縫製で行うのが好ましい。これにより、足の上側(甲側)が三重生地となり、断熱又は保温に効果的となる。三重生地部分には断熱シートを挿入してもよい。足裏側は一重生地であるので、足の動作機能を良好に保持できる。
【0031】
図8は
図6の断熱靴下の先端部を内側に向けて折り込み、下側(足裏側)で固定した後の状態を示す断面図である。固定部33は、靴下の内側から外側に向けてミシン縫製で行うのが好ましい。これにより、足の足裏側が三重生地となり、断熱又は保温に効果的となる。また、
図9に示すように、下側(足裏側)の三重になった部分に断熱シート34を挿入することもできる。金属製又は樹脂製インナーソールを挿入すると、釘踏み防止機能も発揮できる。
【実施例】
【0032】
以下実施例を用いて、さらに本発明を具体的に説明する。
【0033】
(実施例1)
通常の軍手と言われている手袋に使用する、木綿番手10番の綿糸(コットン糸)の紡績糸(繊度590decitex)を単糸で5本使用し、島精機社製の全自動手袋編み機を使用して
図1に示すニット手袋を編成した。この手袋の薬指の先端から手首部の裾までの長さは静置状態で660mm、薬指の先端から付け根までの長さは200mm、重さは片方95gであった。この手袋を
図2及び
図3に示すように折り込み、内部から外に向けてそれぞれの折り込み部の先を縫製ミシンにより固定した。このようにして得られた断熱手袋は
図2及び
図3に示すとおりであり、指部については片側の断熱又は保温効果が高く、掌部と手の甲部は両側の断熱又は保温効果が高いことが確認できた。
【0034】
(実施例2)
(1)意匠撚糸の製造
芯糸及び押さえ糸としてポリエステルマルチフィラメント加工糸(東レ製)、トータル繊度83dtex(75デニール)、フィラメント数48本を使用し、ループヤーンとして木綿糸196.9dtex(綿番手:30番)を使用した。木綿糸の単糸を3本使用し、芯糸1本に対してオーバーフィード率5〜7倍で供給して絡み付け、絡みつけと同時にその上から押さえ糸を撚り数約1000回/mで実撚を掛けた。得られた意匠撚糸のループの平均突出長さ3mm、1インチあたり平均70個のループが360°の角度で様々な角度に突出していた。この意匠撚糸の繊度は2511dtex(綿番手:2.3530番、2260デニール)であった。
(2)耐熱性繊維糸の準備
市販の帝人社製商品名“コーネックス”(メタ系アラミド繊維)の紡績糸295.3dtex(綿番手:20番)を8本又は9本使用した。
(3)手袋の編成
島精機社製の全自動手袋編み機を使用してニット手袋に編成した。耐熱性繊維糸を60重量%、意匠撚糸を40重量%の割合で編成した。編み物構造は両面編みである。耐熱性繊維糸は表面側(外気側)に配置され、意匠撚糸は裏面側(人体側)に配置され、ループは裏面側に主として存在しているが、一部は表面側にも露出していた。得られた手袋の片方の重量は95gであった。
(4)耐熱性試験
得られた耐熱作業軍手を手にはめてライターの火を当てたところ、表面はうっすらと焦げるが内部に熱は感じなかった。このことから難燃性と耐熱性を確認できた。
また、アーク溶接作業に使用したところ、熱さは感じず、溶接の火花(約1200℃)がかかっても熱くなく、薄くて作業動作を損なうことがなく、通気性もあり、作業性はきわめて良かった。作業後の洗濯もすることができ、繰り返し使用ができた。
また、燃焼炉でピザパイを焼く加熱調理作業に使用したところ、同様に断熱性が高く、耐熱性、防炎性、難燃性、通気性があり、作業性も良好で、洗濯もできることから、衛生性も良好であった。
【0035】
(実施例3)
綿番手10番の木綿糸(コットン糸)の紡績糸(繊度590decitex)を単糸で5本使用し、島精機社製の全自動手袋編み機を使用して
図4に示すニット手袋を編成した。この手袋の薬指の先端から手首部の裾までの長さは静置状態で420mm、薬指の先端から付け根までの長さは300mm、重さは片方85gであった。この手袋の各指袋を
図5に示すように折り込み、内部から外に向けてそれぞれの折り込み部の先を縫製ミシンにより固定した。このようにして得られた断熱手袋は、指部を含めた甲側全体の断熱又は保温効果が高く、掌部側は作業などの動作機能が保持されていた。
【0036】
(実施例4
、参考例)
綿番手30番の木綿糸(コットン糸)の紡績糸双糸(単糸で15番相当)を2本、ナイロン77.8decitex双糸(155.6decitex)を1本使用し、島精機社製の全自動手袋編み機を使用して
図6に示すニット靴下を編成した。この靴下の足袋の先端から踵部の裾までの長さは静置状態で380mm、全体の長さは500mm、足袋部の幅は110mm、重さは片方38gであった。この靴下の指袋を
図7に示すように折り込み、内部から外に向けて折り込み部の先を縫製ミシンにより固定した。このようにして得られた断熱靴下は、甲側の断熱又は保温効果が高かった。足裏側は足の動作機能が保持されていた。
【0037】
(実施例5
、参考例)
綿番手30番の木綿糸(コットン糸)の紡績糸双糸(単糸で15番相当)を2本、ナイロン77.8decitex双糸(155.6decitex)を1本使用し、島精機社製の全自動手袋編み機を使用して
図6に示すニット靴下を編成した。この靴下の足袋の先端から踵部の裾までの長さは静置状態で460mm、全体の長さは580mm、足袋部の幅は110mm、重さは片方43gであった。この靴下の指袋を
図8に示すように折り込み、内部から外に向けて折り込み部の先を縫製ミシンにより固定した。このようにして得られた断熱靴下は、足裏側の断熱又は保温効果が高かった。足の甲側は動作機能が保持されていた。