【文献】
Namiko Miyata,Oil Sorbency of Sobents Prepared from Kenaf (Hibiscus cannabinus L.) Plants,繊維学会誌,1999年12月10日,Vol.55, No.12,P.576-583
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の油吸着材が充填されている中空容器内に、油と水が混在している油水を通過させて、前記油吸着材の空隙を前記油水が移動する間に、前記油吸着材に前記油を吸着させて前記油水から前記油を除去することを特徴とする油水処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される発明では吸着基材として、木材よりも高い撥水性を有する樹皮を用いている。また、特許文献1に開示される油吸着材は、上記吸着基材に加えて撥水材を備えていることで、水面に浮遊する油を吸着する性質を有するものの、樹皮、特に針葉樹の樹皮は比表面積が小さいため、油の吸着量が少ないという課題を有していた。
また、樹皮への油の吸着量を増加させようとして、樹皮を破砕して比表面積を増加させた場合でも、処理対象の油は樹皮の表面に吸着保持されるため、油吸着材を回収した際に油吸着材から油が漏出する懸念があった。
【0006】
特許文献2に開示される油吸着材は、油を含んだ農産物材料をそのまま用いている。このような特許文献2に開示される油吸着材も、上述の特許文献1の場合と同様に、比面積が少ないために吸油量が少ないという課題があった。
より具体的には、特許文献2中の表2(A)、(B)に示される各農産物材料の吸油率(油分吸着性能)はいずれも50%未満であった。
【0007】
特許文献3,4に開示される油吸着材は、木材繊維またはコーヒーの搾りかすを加熱処理したものである。このような特許文献3,4に開示される油吸着材は、植物原料を加熱して炭化させることで油吸着材に撥水性及び親油性(油吸着性能)を付与している。
このような特許文献3,4に開示される油吸着材では、その加熱処理工程において植物原料中に含有される成分が熱分解して、タール等の別の汚染物質が生成される可能性が高い。この場合、特許文献3,4に開示される油吸着材を油水に散布した際に、油水中の油が油吸着材に吸着される一方で、油吸着材からタール等汚染物質が水中に溶出して処理済の油水が油吸着材から溶出する成分により汚染されてしまう懸念がある。
さらに、特許文献3,4に開示される油吸着材の場合は、油吸着材に加工する際の加熱処理温度によっては、油吸着材が脆くなって、外部からの衝撃で容易に粉砕してしまい、油水からの回収に手間がかかるという懸念もあった。
【0008】
特許文献5に開示される油吸着材は、食品廃材であるピーナツ殻・コーヒー豆皮等の植物性材料を吸着基材として用いている。
これらは、上述の各特許文献中に開示されている吸着基材と比較すると、油分吸着性能が高い。さらに、特許文献5に開示される油吸着材は、処理済みの油水中に健康や環境に影響を与えるような物質が含まれないため、食品加工工場等における油水の処理に広く用いられている。
その一方で、特許文献5に開示される油吸着材は、油水の水面に存在している油の吸着除去には適しているものの、油水における水中に存在する油を吸着させようとして油水とともに振とうすると、油吸着材が吸水して沈降してしまうという課題があった。この場合、特許文献5に開示される油吸着材を、海や湖等の開放系における油の処理に用いる際に、処理後に油吸着材を回収することが難しいという課題を有していた。
さらに、特許文献5に開示される油吸着材を、油水のろ材として用いる場合は、ろ過処理後のろ液が茶色に着色されてしまうという別の課題があった。
【0009】
特許文献6に開示される油分分離装置に用いられる油吸着材はプラスチックである。このようなプラスチック製のろ材は、撥水性及び親油性が良好である反面、油吸着材が化石燃料由来物であるため、その製造時及び処分時に環境に対する負荷が大きいという課題があった。
また、特許文献6に開示される油分分離装置は、油水から液状の油を除去する目的で用いられるものである。このため、例えば、食品残渣や、固化した油を含んだ油水をそのまま特許文献6に開示される油分分離装置で処理すると、すぐに目詰まりが起きて、油水を連続的に処理することができないという課題を有していた。
【0010】
特許文献7に開示される油吸着カートリッジに使用される油吸着材は、ポリプロピレン又は無機物により構成されている。このような特許文献7に開示される油吸着材も、先の特許文献6に開示される油吸着材と同様に、その製造時及び処分時に環境に対する負荷が大きいという課題があった。
また、特許文献7に開示されるようなカートリッジ式のろ過方法では、油吸着材が固定化される。このため、処理対象である油水中の油の粘性が高い場合は、ろ過処理時に目詰まりが起こりやすく、作業性を向上し難いという課題を有していた。
【0011】
本発明はかかる従来の課題に対処してなされたものでありその目的は、油水処理時に水面に浮遊する油水のみならず、水中に存在する油も吸着除去することができ、しかも処理済の油水からの回収が容易な油吸着材およびそれを用いた油水処理方法を提供することにある。
さらに、本発明は、その製造時及び回収後に廃棄する際に、環境に対する負荷が小さい油吸着材、およびそれを用いた油水処理方法、およびこの油吸着材を用いた油水処理フィルタ、およびこの油水処理フィルタを備えた油水処理装置を提供することにある。
加えて、本発明は、食品残渣や固形状の油を含んだ油水を効率良く処理することができる油水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための第1の発明である油吸着材は、有機性の多孔質体からなる粒状の吸着基材と、この吸着基材にコーティング及び/又は含浸され、かつ吸着基材に親油性及び撥水性を付与する撥水剤と、を備え、撥水剤を備えた吸着基材と水とを混合して2時間振とうしてから20分間静置した場合に、水面に浮遊している撥水剤を備えた吸着基材の割合(w/w)が90%以上であることを特徴とするものである。
上記構成の第1の発明において、吸着基材は油水中において油と接触した際に吸着基材の内部に形成される多数の孔の内部に油を収容して保持するという作用を有する。
また、撥水剤は吸着基材にコーティング及び/又は含浸されることで、吸着基材に撥水性を付与するという作用を有する。この場合、撥水剤を備えた吸着基材を油水中に散布した際に、水面に吸着基材を浮遊させるという作用を有する。また、このような撥水剤は、親油性を有しているため、撥水剤を備えた吸着基材が油に触れた際に、吸着基材の内部に油を吸収するのを促進するという作用を有する。
さらに、第1の発明では、撥水剤を備えた吸着基材と水とを混合して2時間振とうしてから20分間静置した際に、水面に浮遊している撥水剤を備えた吸着基材の割合(w/w)、すなわち、浮上試験に用いた第1の発明の総重量(乾物重)における振とう後に水面に浮遊している第1の発明の総重量(乾物重)の割合(w/w)が90%以上である。このため、油水に第1の発明を散布してから、油水と第1の発明とを十分に撹拌した後も、第1の発明を油水の水面に浮遊させておくことが可能になる。これにより、第1の発明を油水に散布して用いる場合に、使用済の油吸着材の回収を容易にするという作用を有する。
【0013】
第2の発明である油吸着材は、ケナフコアからなる粒状の吸着基材と、この吸着基材にコーティング又は含浸され、かつ吸着基材に親油性及び撥水性を付与する撥水剤と、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第2の発明は、上記第1の発明における吸着基材の材質をケナフコアに特定したものであり、その作用は第1の発明による作用と同じである。
【0014】
第3の発明である油吸着材は、上述の第1又は第2の発明であって、油吸着材の最大径は、0.01mmから10mmの範囲内であることを特徴とするものである。
上記構成の第3の発明は、上述の第1又は第2の発明による作用と同じ作用に加えて、油吸着材の最大径が0.01mmから10mmの範囲内であることで、油吸着材の比面積を大きくして、吸着基材への油の吸着性を良好にするという作用を有する。
また、単体の吸着基材からなる、又は、複数の吸着基材が寄せ集まってなる1つの油吸着材の最大径が上述の数値範囲内である場合は、カートリッジ式の油分ろ過装置におけるろ材として第3の発明を使用することが可能になる。この場合、第3の発明の汎用性を高めるという作用を有する。
【0015】
第4の発明である油水処理方法は、油と水とが混在している油水に第1乃至第3のいずれかの発明である油吸着材を散布する散布工程と、油水と油吸着材とを混合する混合工程と、油水から油吸着材を分離して除去する分離工程と、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第4の発明は、上述の第1乃至第3のいずれかの発明を用いて、閉鎖系又は開放系に存在している油水から油を選択的に除去する処理方法を、方法の発明として特定したものである。
上記構成の第4の発明において、散布工程は、油水に第1乃至第3のいずれか発明である油吸着材を散布することで、油水の水面に浮遊している油を第1乃至第3のいずれか発明である油吸着材で吸着して除去するという作用を有する。
また、混合工程は、油水の水中に存在している油を、第1乃至第3のいずれか発明である油吸着材で吸着して除去するという作用を有する。
さらに、分離工程は、処理済の油水から油を吸着した第1乃至第3のいずれか発明である油吸着材を分離除去することにより、油水から油を除去するという作用を有する。
【0016】
第5の発明である油水処理方法は、上述の第1乃至第3のいずれかの発明である油吸着材が充填されている中空容器内に、油と水が混在している油水を通過させて、油吸着材の空隙を油水が移動する間に、油吸着材に油を吸着させて油水から油を除去することを特徴とするものである。
上記構成の第5の発明は、上述の第1乃至第3のいずれかの発明をろ材として用い、カートリッジ方式にて油水から選択的に油を除去する処理方法を、方法の発明として特定したものである。
上記構成の第5の発明において、中空容器内に収容される第1乃至第3のそれぞれの発明は、油水から油を除去するためのろ材として作用する。
また、第5の発明の発明では、油水を、第1乃至第3のそれぞれの発明である油吸着材が収容されている中空容器内を通過させることで、この油水から油を選択的に分離して除去するという作用を有する。
【0017】
第6の発明である油水処理フィルタは、油と水が混在している油水を導入するための導入口と、処理済の油水を導出するための導出口とを備える中空容器と、この中空容器内に充填されている第1乃至第3のいずれかの発明である油吸着材と、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第6の発明は、上述の第5の発明を物の発明として特定したものである。
上記構成の第6の発明において、導入口は、中空容器内に油水を流入させるという作用を有する。また、中空容器は、その中空部内に第1乃至第3のいずれかの発明である油吸着材を保持して固定化するという作用を有する。さらに、第1乃至第3のそれぞれの発明である油吸着材は、中空容器において油水と接触した際に、油水から油を選択的に除去するという作用を有する。そして、導出口は、中空容器内を通過した処理済の油水を中空容器の外に導出するという作用を有する。
【0018】
第7の発明である油水処理フィルタは、上述の第6の発明であって、中空容器内の油吸着材は、その粒子径に応じて分級された油吸着材群からなる層構造をなし、この層構造において各層をなす油吸着材群の平均粒子径は、導入口から導出口に向かうにつれて大きくなる又は小さくなることを特徴とするものである。
上記構成の第7の発明において、分級された油吸着材群のうち特に油吸着材の粒子径が大きいものは、油水の流路を中空容器の径方向に分散させるという作用を有する。他方、分級された油吸着材群のうち特に油吸着材の粒子径が小さいものは、上述の粒子径が大きいものに比べて油吸着材の比面積が大きいため、粒子径が大きいものに比べてより効率的に油水から油を吸着除去するという作用を有する。
そして、第7の発明における層構造において、各層をなす油吸着材群の平均粒子径が、導入口から導出口に向かうにつれて小さくなる場合は、特に油水中に含まれる油の粘性が高い場合に、油水処理フィルタが目詰まりを起こすのを抑制するという作用を有する。
他方、第7の発明における層構造において、各層をなす油吸着材群の平均粒子径が、導入口から導出口に向かうにつれて大きくなる場合は、油水中の油の粘性が低い場合の油水の処理に適している。この場合、中空容器内に油水が流入した直後に、平均粒子径が相対的に小さい油吸着材群により油が集中的に除去されるため、処理済の油水中に油を残存し難くするという作用を有する。さらに、この場合は、導出口に向かうにつれて油吸着材群の平均粒子径が大きくなることで、中空容器内における油水の流動性を良好にするという作用も有する。
【0019】
第8の発明である油水処理装置は、上述の第6又は第7の発明である油水処理フィルタと、この油水処理フィルタの導出口側に配されている吸引設備と、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第8の発明は、上述の第6又は第7の発明による作用と同じ作用に加えて、油水処理フィルタの導出口側に吸引設備を備えていることで、吸引設備を備えない場合に比べて、油水が油水処理フィルタ内を通過する速度を速くするという作用を有する。
【0020】
第9の発明である油水処理装置は、上述の第8の発明であって、この油水処理装置はさらに、油水処理フィルタに併設される固形物除去フィルタと、油水処理フィルタと固形物除去フィルタとを所望に切り替えるフィルタ切替構造と、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第9の発明は、上述の第8の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第9の発明における固形物除去フィルタは、油水がこの固形物除去フィルタを通過する際に、油水に混在する固形物を除去するという作用を有する。
さらに、第9の発明におけるフィルタ切替構造は、油水の流路上に配される油水処理フィルタと固形物除去フィルタとを所望に切り替えるという作用を有する。
これにより、第9の発明によれば、一台の装置内において油水から固形物を選択的に除去する機能と、油水から油を選択的に除去する機能の両方を有する油水処理装置を提供するという作用を有する。
【発明の効果】
【0021】
上述のような第1,第2の発明によれば、油分吸着性能が特に優れており、かつ油水における水層に存在する油を吸着除去しようとして油水に混合撹拌した場合でも、水面への浮遊性が損なわれない油吸着材を提供することができる。
このような第1,第2の発明である油吸着材は、油水に添加して油を吸着させた後も水面に浮遊し続けるため、油水を処理した後の油吸着材の回収を容易にすることができる。
さらに、第1,第2の発明における吸着基材はともに多孔質体からなるものである。このため、油水中の油を吸着する際は、この吸着基材に形成される多数の孔に油を収容して保持することができる。よって、油を吸着した第1,第2の発明である油吸着材を回収した際に、これらの油吸着材から油が分離するのを好適に防止することができる。
加えて、第1,第2の発明における吸着基材がともに植物由来の有機物であることで、第1,第2の発明である油吸着材を製造する際、及び、油を吸着したこれらの油吸着材を廃棄する際の、環境への負荷を軽減することができるという効果も有する。
よって、第1,第2の発明によれば、油水に散布して、油水中に撹拌した後にこの油吸着材を油水から分離するだけで、効率良く油水中の油を除去することができ、しかも、油吸着材の製造時や、回収後の油吸着材の廃棄処分時の環境への負荷が少ない油吸着材を提供することができるという効果を有する。
【0022】
第3の発明によれば、油吸着材の比面積を大きくすることができるので、第3の発明を用いて油を吸着除去する際の除去効率を良好にすることができる。
また、第3の発明は、油水からの油の除去を、カートリッジ式のろ過装置を用いて行う際に、ろ過用フィルタの充填剤(ろ材)としても使用することができる。
よって、第3の発明によれば、油水からの油の除去を効率よく行うことができ、しかもカートリッジ式のろ過装置におけるろ材としても利用できる汎用性の高い油吸着材を提供することができる。
【0023】
第4の発明によれば、特に開放系における油水(例えば、海や湖等を汚染する油)又は比較的規模の大きな貯水設備に貯留されている油水、から油を除去する作業を効率的かつ確実に行うことができる。
また、第4の発明において、その一連の工程を1度行っただけで十分に油を除去することができない場合は、第4の発明における一連の工程を所望回数繰り返して行うことで、処理対象である油水から油を確実に除去することができる。
よって、第4の発明によれば、自然界又は屋内において油水自体を移送することなく、しかも簡易な方法により容易に油を除去することができるという効果を有する。
【0024】
第5の発明は、上述の第1乃至第3のそれぞれの発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第5の発明によれば、油水から油を連続的に除去することができる油水処理方法を提供することができる。
また、第5の発明では、油吸着材(第1乃至第3のそれぞれの発明)が中空容器内に充填されて固定化されるため、処理対象である油水中に油吸着材が散逸することがない。このため、第5の発明では、処理済の油水から油吸着材を回収する作業(工程)を行う必要がない。
よって、第5の発明によれば、油水を処理する際の作業効率を大幅に向上させることができる。
【0025】
第6の発明は、第5の発明を物の発明として特定したものであり、その効果は第5の発明による効果と同じである。
【0026】
第7の発明は、第6の発明による効果と同じ効果に加えて、中空容器内に充填する油吸着材(ろ材)として、第1乃至第3のいずれかの発明を分級して得られた油吸着材群を用いることで、中空容器内を流動する油水の流動性や油の吸着性能を所望に制御することができる。より具体的には、油吸着材群の平均粒子径が相対的に大きい領域では、中空容器内における油水の流動性を高めることができる反面、油水からの油の除去効率が低下する。他方、油吸着材群の平均粒子径が相対的に小さい領域では、中空容器内における油水の流動性が低下する反面、油水からの油の除去効率が向上する。
さらに、第7の発明では、上述のような平均粒子径の異なる油吸着材群を複数種類用いて中空容器内に層構造を形成することで、中空容器内における油水の流動性と、油水からの油の除去効率を所望に設計して制御することができる。
より具体的には、第7の発明において、中空容器の導入口(上流側)から導出口(下流側)に向かうにつれて油吸着材群の平均粒子径が大きくなる場合は、油水中の油の粘性が低い場合の油水の処理に適している。
他方、中空容器の導入口(上流側)から導出口(下流側)に向かうにつれて油吸着材群の平均粒子径が小さくなる場合は、油水中の油の粘性が高い場合の油水の処理に適している。
よって、第7の発明によれば、処理対象である油水に含まれる油の性質に応じて適宜油水処理フィルタを設計することで、油水からの油の除去作業を効率的かつ確実に行うことができるという効果を有する。
【0027】
第8の発明は、上述の第6又は第7の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第8の発明では、油水処理フィルタの導出口側(下流側)に吸引設備を備えていることで、油水処理フィルタ内の油水の流速を、吸引設備を備えない場合に比べて速くすることができる。
この結果、第8の発明である油水処理装置により大量の油水を迅速かつ確実に処理することができる。
【0028】
第9の発明は、上述の第8の発明による効果と同じ効果に加えて、固形物が混ざっている油水をそのまま油水処理フィルタに供給した際に、この固形物により油水処理フィルタが目詰まりを起こして使用できなくなるのを好適に防止するという効果を有する。
より具体的には、例えば、食品加工設備等におけるグリストラップ内に一時的に貯留される油水には固形物が混ざっている。
そして、このような油水を処理する場合は、第9の発明における固形物除去フィルタで予め油水中の固形物を取除いた後に、改めてこの油水を、油水処理フィルタを透過させることで、グリストラップ内の油水から油を効率良くかつ確実に除去することができる。
この結果、第9の発明によれば、グリストラップ内に一時的に貯留されている固形物が混ざった油水を処理した際に、その処理済の油水をそのまま下水に流すことができる状態にまで浄化することができる。
なお、グリストラップ内に一時的に貯留されている油水中に混入している固形物は、食品残渣のみならず、固形状又はゲル状の油も含まれる。そして、特に柔らかいゲル状の油が混入している油水を、油水処理フィルタを通過させる場合と同じ吸引力で吸引すると、ゲル状の油は崩れて流動し、油水処理フィルタの目詰まりの原因となる。
したがって、固形物除去フィルタを通過させる際の吸引力は、油水処理フィルタを通過させる際の吸引力よりも弱く設定しておく必要がある。
このため、固形物除去フィルタと油水処理フィルタを直列に配置し、かつ、その状態でこれらの下流側に吸引設備を配して、グリストラップ内に一時的に貯留されている油水を吸引処理すると油水処理フィルタおいて目詰まりが生じて、油水を処理することができなくなってしまう。
したがって、第9の発明では、処理対象である油水の流路に配される固形物除去フィルタと油水処理フィルタとを所望に切替えることができるように構成されている必要がある。
よって、上述のような第9の発明によれば、グリストラップ内に一時的に貯留される油水の処理に特に適した油水処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態に係る油吸着材および油水処理方法および油分除去フィルタおよび油水処理装置について
図1乃至
図5を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0031】
[実施例1に係る油吸着材の基本構造について]
本発明の実施例1に係る油吸着材について
図1,2を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施例1に係る油吸着材の断面のイメージ図であり、
図2は本発明の実施例1に係る吸着基材の一例を示す電子顕微鏡写真である。
実施例1に係る油吸着材1は、
図1に示すように、有機性の多孔質体からなる粒状の吸着基材2と、この吸着基材2にコーティング及び/又は含浸され、かつこの吸着基材2に親油性及び撥水性を付与する撥水剤3と、を備えてなるものである。
さらに、このような実施例1に係る油吸着材1は、この油吸着材1と水とを混合して2時間振とうしてから20分間静置した場合に、水面に浮遊している油吸着材1の割合(w/w)が90%以上であるという性質を備えている。
なお、上記浮上試験において、水面に浮遊している油吸着材1の割合(w/w)とは、水に混合した油吸着材1の全重(乾物重;w)に対する水面に浮遊している油吸着材1の全重(乾物重;w)の割合である。
【0032】
ここで、実施例1に係る油吸着材1の吸着基材2について詳細に説明する。
[吸着基材2の材質について]
吸着基材2の材質としては、乾燥させた植物体由来の多孔質体からなる粒状物であればどのようなものでも用いることができる。
なかでも実施例1に係る油吸着材1の吸着基材2には、特に乾燥されたケナフコアが適している。
ケナフコアは、アオイ目アオイ科の植物ケナフの芯である。通常、ケナフの皮は、車のダッシュボードやベニヤ板の代替として利用されている。そしてこの、ケナフの皮の生産時に、併せて芯(ケナフコア)も生産されるが、このケナフコアについては、これまで利用価値が十分に見出されず、その大部分が焼却処分されていた。
このようなケナフコアは、
図2に示すような有機性の多孔質体であり、そのかさ比重が0.1と非常に軽く、加えて油吸着量も自重の4.5倍もある。
したがって、本実施の形態においては油吸着材1の吸着基材2として上述のようなケナフコアを用いることができる。
【0033】
他方、実施例1に係る油吸着材1の吸着基材2に適さない植物由来の有機性多孔質体も存在する。例えば、乾燥させたピーナッツの殻の比重は0.25であり、油分吸着性能は2.1g/gである。このような乾燥させたピーナッツの殻は、従来公知の吸着基材である、例えば、おが屑等と比較すると油分吸着性性能は高い。そして、粒状のピーナッツの殻に撥水剤を付加して水に散布した場合、そのまま静置しておけばピーナッツの殻は長時間にわたり水面に浮遊し続けるが、水中に撹拌した後も水面に浮遊し続ける粒子はほとんどない。
したがって、吸着基材2として乾燥させたピーナッツの殻を用いる場合は、油水の水面における油を好適に除去することができるものの、油水の水層に存在している油を吸着除去するのには適さない。
【0034】
[吸着基材2の乾燥方法について]
また、吸着基材2として用いられる植物由来の有機性多孔質体(ケナフコアを含む)の乾燥方法としては、従来公知の乾燥方法を支障なく使用することができる。
また、植物由来の有機性多孔質体を従来公知の方法で乾燥する場合、乾燥時の下限温度は50℃、より好ましくは80℃であり、乾燥時の上限温度は150℃、より好ましくは110℃である。さらに、乾燥時間の目安は10分間から60分間であるが、乾燥時間がこの範囲内を超えていても特に問題ない場合もある。
また、植物由来の有機性多孔質体(ケナフコアを含む)の乾燥時の温度が、上述の下限値を下回ると、植物体から水分の蒸発がスムーズに進行せず、場合によっては雑菌による腐敗が起きて多孔質体としての機能が損なわれてしまうおそれがある。他方、乾燥時の温度が上述の上限値を上回ると、植物由来の有機性多孔質体の一部が、熱変性又は熱分解を起こすおそれがある。通常、植物由来の有機性多孔質体の一部が、熱変性又は熱分解してなる物質は、水に溶出して水を着色させる。このため、その一部が熱変性又は熱分解した植物由来の有機性多孔質体を吸着基材2として用いた場合に、処理中に油水が着色されてしまい、この着色された処理済の油水をさらに別の手段で浄化する必要が生じるため、好ましくなかった。
【0035】
[吸着基材2と撥水材3の作用効果について]
その一方で、上述のようなケナフコアを含む植物由来の有機性多孔質体の乾燥体は、そのまま水に添加すると容易に吸水して、油分吸着性能が発揮されないだけでなく、水面に浮遊させておくこともできない。
このような事情に鑑み、実施例1に係る油吸着材1では、上述のような植物由来の乾燥済の多孔質体(吸着基材2)に、撥水材3をコーティング及び/又は含浸させることで、この吸着基材2に、撥水性及び親油性を付与している。
また、実施例1に係る油吸着材1では、吸着基材2に撥水材3が付加されることで、吸着基材2自体が撥水性を有するようになる。このため、油吸着材1を水に添加した際に、油吸着材1を水面に浮遊させておくことができる。つまり、吸着基材2に撥水材3が付加されることで、吸着基材2自体が空気袋のような機能を有するようになる。
また、実施例1に係る油吸着材1と水とを混合して2時間振とうしてから20分間静置した場合に、その油吸着材1のうちの90%以上を水面に浮遊させておくことができるということは、実施例1に係る吸着基材2のかさ密度が小さいことを意味している。
そして、実施例1に係る油吸着材1では、吸着基材2に撥水材3が付加されることで、吸着基材2が親油性を有するようになり、これにより、油吸着材1が高い油分吸着性能を有するようになる。
さらに、通常油は水よりも比重が軽いので、吸着基材2に吸着される油の容積が大きいほど、油を吸着した後の油吸着材1の浮遊性は良好になる。
つまり、有機性の多孔質体からなる吸着基材2の浮遊性が優れているということは、吸着基材2のかさ密度が低く、かつ、油分吸着性能が優れていることを意味している。
【0036】
[実施例1に係る油吸着材1の大きさについて]
なお、このような実施例1に係る油吸着材1の最大直径L(
図1を参照)は、粒径0.01mmから10mmの範囲内であることが望ましい。
この理由としては、実施例1に係る油吸着材1の最大径Lが0.01mmよりも小さいと、空気の流動に伴って容易に飛散してしまい、処理対象である油水に対して効率良く油吸着材1を供給することができないという不具合が生じるおそれがある。他方、油吸着材1の最大径Lが10mmを超える場合は、実施例1に係る油吸着材1が油と接触した際に、油吸着材1の内部にまで十分に油が浸透せず、油の吸着作用が十分に発揮されないという不具合が生じるおそれがある。
また、油吸着材1の最大径Lが10mmを超えて大きい場合は、油吸着材1に油を吸着させた際のべたつきが起こり易く、油を吸着した後の油吸着材1の取り扱いが困難になるという別の課題が生じる。
なお、
図1では、実施例1に係る油吸着材1が、単体の吸着基材2により構成される場合を例に挙げて説明しているが、実施例1に係る油吸着材1は、複数の油吸着材1の集合体であってもよい。この場合、油吸着材1の最大直径Lは、油吸着材1の集合体の最大直径を指し示すことになる。
【0037】
次に、実施例1に係る油吸着材1における撥水材3について説明する。
[撥水材3の材質について]
撥水材3は、先にも述べた通り、吸水性を有する吸着基材2に撥水性及び親油性を付加するためのものであり、大豆油、パーム油等の植物油脂、動物油脂及び鉱物油等を単独で、又は、2種類以上組み合わせて用いることができる。
ただし、実施例1に係る油吸着材1を油水中に散布して用いる場合や、あるいは後段において詳細に説明するように、カートリッジ式の油水処理装置における油水処理用フィルタの充填材(ろ材)として用いる場合に、処理対象である油水中にこの撥水材3が溶出することがないよう、撥水材3は、処理対象である油水の処理時の最高温度よりもその融点が高いものを選定することが望ましい。
より具体的には、このような撥水材3としては、例えば、融点が50℃以上であるものが特に適しており、例えば、乾性油等のような重合により樹脂化するものや、炭素価20〜30の範囲内の脂肪族飽和炭化水素又はその混合物が適している。
上述のような撥水材3の具体例としては、例えば、パラフィンワックス、脂肪酸、アルコールワックス、エステル系ワックス、アミド系ワックス、天然ワックス等のエマルションワックス類等がある。
また、吸着基材2の表面に薄膜状に付加することができる、あるいは、吸着基材2に対して略均等に付加することができるという理由から、撥水材3としては特にパラフィンワックスが適している。
なお、撥水材3として使用可能な市販品としては、例えば、日本精蝋株式会社製の「EMUSTAR(登録商標)−1070」等がある。
【0038】
[吸着基材2に対する撥水材3の付加量について]
実施例1に係る油吸着材1では、100質量部の粒子状の吸着基材2に対して、0.02重量部から0.04重量部の範囲内の撥水材3が存在していることが望ましい。
この理由として、吸着基材2に対する撥水材3の量が、上述の下限値よりも少ない場合は、吸着基材2に十分な撥水性を付与することができない上、吸着基材2の親油性も低くなり、結果として、吸着基材2による油の十分な吸着効果が発揮されない。
その一方で、吸着基材2に対する撥水材3の量が、上述の上限値を超えて多いと、付加された撥水材3の一部が余剰分として吸着基材2の孔内に保持されて、油吸着材1の油分吸着性能の低下の原因となる。
また、撥水材3が吸着基材2の表面を薄膜状に被覆する場合は、吸着基材2の表面上における撥水材3の厚みは10μmから30μmの範囲内であることが好ましいが、吸着基材2の表面上における撥水材3の厚みは、必ずしも略均一である必要はなく、吸着基材2に対する撥水材3の量が上述の数値範囲内であればよい。
また、撥水材3は吸着基材2の表面の全域を被覆している必要はなく、吸着基材2の表面の一部に撥水材3がコーティング及び/又は含浸されていればよい。
【0039】
[吸着基材2に対する撥水材3の付加方法について]
実施例1に係る吸着基材2に対する撥水材3を付加する方法としては、液状の撥水材3に吸着基材2を添加してこれらを混合すればよい。
例えば、吸着基材2と、液状の撥水材3と上述の割合となるようにそれぞれを計量し、これらを容器内に投入して、さらにこれらを混合撹拌して、吸着基材2に撥水材3をコーティング及び/又は含浸させればよい。
また、吸着基材2と撥水材3とを十分に混合した後は、これらの混合体中に含まれる水分を除去するために、この混合体を比較的高い温度で乾燥させることが好ましい。ただし、その際には吸着基材2や撥水材3が加熱時の温度で、熱変性又は熱分解を起こさないように十分に注意する必要がある。
より具体的には、吸着基材2及び撥水材3の混合体の乾燥時の温度は、例えば、70℃から100℃の範囲内が好ましく、さらには75℃から80℃の範囲内であることが望ましい。
なお、吸着基材2に対する撥水材の付加が完了した直後の油吸着材1は、多数の粒子状の油吸着材1が寄り集まって大きな粒子を形成している場合がある。その場合は、複数の油吸着材1の集合体からなる粒子の直径が、0.01mmから10mmの範囲内となるように、粉砕機等で粉砕してから用いることが望ましい。
【0040】
このような実施例1に係る油吸着材1の製法上の理由から、本発明における油吸着材1は、単体の吸着基材2に撥水材3がコーティング及び/又は含浸されて1つの油吸着材1を形成する場合と、複数の吸着基材2が撥水材3によって一体に連結されて集合体をなしている場合の両者を包含する概念である。
【0041】
[撥水材3についての補足説明]
また、吸着基材2に撥水材3をしっかりと定着させるために、以下に示すような方法により吸着基材2に撥水材3を付加してもよい。
すなわち、乾燥され粒子径が0.01mmから10mmの範囲内になるように調整された個々の吸着基材2を、円筒体の中をゆっくりと降下させながら、この降下している吸着基材2に対して、液化させた撥水材3を噴霧塗布してもよい。
この場合、吸着基材2を降下させる円筒体としては、例えば、直径が1m、鉛直方向長さが5m程度の円筒体を用いることができ、さらに、個々の吸着基材2がこのような円筒体の上端から下端までを30秒から5分間かけて移動するように、円筒体の下部から上方側に向かって弱風を送風するとよい。
さらに、上述のような円筒体の中空部内を降下させながら吸着基材2に対して、溶融させた撥水材3を噴霧塗布する場合、吸着基材2と撥水材3(撥水材3が噴霧された際の粒子状物体)のそれぞれに対して電荷を付加しておくことで、吸着基材2に対する撥水材3の定着性を一層良好にすることができる。
【0042】
[実施例1に係る油吸着材1により処理することができる油について]
上述のような実施例1に係る油吸着材1を用いることで、以下に示すような様々な種類の油と水の混合体(油水)から油を吸着して除去することができる。
すなわち、実施例1に係る油吸着材1により吸着除去することができる食用油としては、例えば、サフラワー油、大豆油、菜種油、パーム油、パーム核油、綿実油、ヤシ油、米糠油、ゴマ油、ヒマシ油、亜麻仁油、オリーブ油、桐油、椿油、落花生油、カポック油、カカオ油、木蝋、ヒマワリ油、コーン油などの植物性油脂及びイワシ油、ニシン油、イカ油、サンマ油などの魚油、肝油、鯨油、牛脂、牛酪脂、馬油、豚脂、羊脂などの動物性油脂が挙げられる。
さらに、実施例1に係る油吸着材1により吸着除去することができる鉱物油としては、各種潤滑油、例えばスピンドル油、冷凍機油、ダイナモ油、タービン油、マシン油、船用内燃機関潤滑油、ガソリンエンジン潤滑油、ディーゼルエンジン潤滑油、シリンダー油、マリンエンジン油、ギヤー油、切削油、絶縁油、自動変速機油、圧縮機油、油圧作動油、圧延油等が挙げられる。
加えて、実施例1に係る油吸着材1により吸着除去することができる上記以外の油としては、例えば、原油、重油、軽油、揮発油、各種廃油等を挙げることができ、船底のビルジ、水産加工場、畜産加工場、金属圧延工場、金属の加工工場、等から排出される含油排水等も挙げられる。
なお、本明細書においては、実施例1に係る油吸着材1により吸着して除去することのできる上述のような油脂類を総称して単に「油」と呼んでいる。また、実施例1に係る油吸着材1により吸着して除去することができる油脂類は、上述のような油脂類の単体、あるいはこれらの油脂類うちの任意の2種以上の組み合わせでもよい。
【0043】
[実施例1に係る油吸着材1の補助材について]
なお、実施例1に係る油吸着材1を用いて、油と水の混合体である油水を処理して不要な油を吸着除去する場合、油吸着材1を単独で用いてもよいが、油吸着材1の油吸着性を向上させるための補助材、あるいは、油を吸着した後の油吸着材1の廃棄処理等を容易にするための補助材を別途付加して用いてもよい。
このような補助材としては、例えば、バクテリア、油ゲル化剤、木炭粉、竹炭粉、赤玉土、粘土鉱物やその化学処理物、洗浄剤等がある。また、これらの補助材は単独で油吸着材1に付加してもよいし、所望の複数種類を選んで添加してもよい。
【0044】
[実施例1に係る油吸着材1の使用方法について]
図3は本発明の実施例1に係る油水処理方法の作業手順を示すフローチャートである。
実施例1に係る油吸着材1を用いて油水から不要な油を除去する場合は、
図3に示すような各ステップをこの手順により行えばよい。
最初のステップS1は、処理対象である油水に必要量の実施例1に係る油吸着材1を散布して供給する散布工程である。
実施例1に係る油吸着材1は、粒状(単体粒子又は集合体粒子)をなしている。このため、処理対象の油水に油吸着材1を供給するには、溜まっている油水に油吸着材1を散布すればよい。このステップS1では、油水に対して実施例1に係る油吸着材1を散布することで、油水の水面に浮遊している油を速やかに吸着除去することができる。
しかしながら、処理対象である油水の水層にも油が存在している場合があり、処理対象の油水に実施例1に係る油吸着材1を散布しただけでは十分に油が除去されているとは言い切れない。
そこで、次のステップ2は、散布された実施例1に係る油吸着材1と処理対象の油水とを混合撹拌する工程である。このように、実施例1に係る油吸着材1と処理対象の油水をしっかりと撹拌することで、油水の水層に存在している油も実施例1に係る油吸着材1でしっかりと吸着して除去することができる。
なお、実施例1に係る油吸着材1は優れた浮遊性を有しているため、処理対象である油水中に撹拌した場合でも、撹拌動作の後は再び油水の水面に浮遊する。
そして、最後のステップS3は、油を吸着した実施例1に係る油吸着材1を、処理済みの油水の水面から分離回収して除去する工程である。
このステップS3を行うことで、油水からの油の除去作業が完了する。
なお、処理済みの油水から回収された、油を吸着した油吸着材1は、吸着されている油の種類に応じて適宜処分すればよい。また、油を吸着した油吸着材1の処分方法の例としては、焼却処分や、微生物による生分解処理等が挙げられる。
【0045】
なお、実施例1に係る油吸着材1を用い、かつ
図3に示すステップS1からステップS3の各工程からなる油水の処理方法が、実施例1に係る油水処理方法17である。
このような実施例1に係る油水処理方法17によれば、主に閉鎖系又は開放系に存在している油水から、この油水を移動させることなく油のみを選択的にかつ効率的に除去することができる。
また、
図3に示す一連の工程を行っても処理対象である油水から十分に油を除去しきれない場合は、
図3に示す一連の工程を複数回繰り返すとよい。
このような実施例1に係る油水処理方法17によれば、海上や湖において油の流出が起きた場合や、屋内の油水の貯留施設において、処理対象である油水をその場から移動させることなく油のみを除去することができる。
【実施例2】
【0046】
上述のような実施例1に係る油吸着材1は、カートリッジ式の油水処理装置においてろ材(充填材)としても使用することができる。そして、実施例1に係る油吸着材1をろ材として中空容器内に充填してなるものが実施例2に係る油水処理フィルタである。
[実施例2に係る油水処理フィルタの基本構造について]
図4は本発明の実施例2に係る油水処理フィルタの中心軸方向断面図である。なお、
図1乃至
図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図4に示すように、実施例2に係る油水処理フィルタ4は、油と水が混在している油水を導入するための導入口5aと、処理済の油水を排出するための導出口5bとを備えた中空容器5内に、実施例1に係る油吸着材1(例えば、分級後油吸着材1a〜1c)が充填されてなるものである。
このような実施例2に係る油水処理フィルタ4では、処理対象である油水を中空容器5の導入口5aから導出口5bに向かって流動させることで、油水中の油をろ材である油吸着材1で吸着除去することができる。
なお、このような油水処理フィルタ4を用いて油水から油を除去する油水処理方法が、実施例2に係る油水処理方法である。
【0047】
[実施例2に係る油水処理フィルタによる効果について]
このような実施例2に係る油水処理フィルタ4、又は、実施例2に係る油水処理方法によれば、油吸着材1(例えば、分級後油吸着材1a〜1c)を備えた設備(油水処理フィルタ4)に油水を移動させる手段(ポンプや配管設備等)が別途必要になるものの、油吸着材1が処理対象である油水中に散逸しないというメリットを有している。このため、先の実施例1に係る油水処理方法17のように、処理対象である油水から油を吸着した油吸着材1を分離して除去する作業を行う必要がないという利点がある。
このため、実施例2に係る油水処理フィルタ4、又は、実施例2に係る油水処理方法によれば、多量の油水を連続的に処理することができるというメリットを有している。
また、このような実施例2に係る油水処理フィルタ4、又は、実施例2に係る油水処理方法は、処理対象である油水を排水するための配管設備を備えた施設等における油水の処理により適している。
【0048】
[実施例2に係る油水処理フィルタの細部構造について]
また、中空容器5内に充填される油吸着材1は、分級していないものをそのまま中空容器5内に充填して用いてもよいが、その粒子径に応じて分級して、分級後油吸着材1a〜1cにしたものを、
図4に示すように積層して用いてもよい(選択的構成要素)。
この場合、分級後油吸着材1a〜1cの平均粒子径をそれぞれ下記のように設定し、さらに、分級後油吸着材1a〜1cにおいて平均粒子径がより小さいものを中空容器5の導出口5b側(下流側)に配して用いてもよい(選択的構成要素)。
・分級後油吸着材1a:2mm以上の粒子
・分級後油吸着材1b:2mm未満〜0.5mmの粒子
・分級後油吸着材1c:0.5mm未満〜0.1mmの粒子
この場合、中空容器5の導入口5aから流入した油水が、平均粒子径が大きい分級後油吸着材1aの間を通過する際に、その流路が中空容器5の幅方向に分散されて、これにより中空容器5の幅方向(径方向)の全域に処理対象である油水を流動させることができる。
この結果、中空容器5内に油水を流入させた際に、中空容器5の中心側部分のみを油水が流動して、その周縁部には油水が流動しない現象が起きる(中空容器5内に水道が形成されてしまう)のを好適に防止することができる。
この場合、中空容器5の径方向の全域を利用して油水の処理を行うことができるので、油水から油を吸着除去する作業を効率的に行うことができる。
【0049】
また、
図4に示すような油水処理フィルタ4は特に、処理対象の油水中に含まれる油の粘性が高い場合の油水の処理に適している。
これは、中空容器5の導入口5a側(上流側)に配される分級後油吸着材1aの平均粒径が、他の領域の油吸着材1の平均粒子径よりも相対的に大きいことで、粘性の高い油が分級後油吸着材1aに吸着した場合でも、中空容器5の目詰まりが生じ難いためである。
【0050】
なお、中空容器5内における層構造において、分級後油吸着材1a〜1cの配置は、
図4に示すものに特定する必要はなく、処理対象の油水の性質に応じて適宜変更してよい。
また、分級後油吸着材1a〜1cの配置を、
図4に示す以外のものにする場合は、油水の処理時に中空容器5の中央部分に水道が形成されてしまわないように、導入口5aにおいて何らかの手段により油水の流路を分散させればよい。
さらには、油吸着材1を分級する際の基準となる平均粒子径も、上述されるものに特定する必要はなく、処理対象の油水の性質に応じて適宜変更してよい。
【0051】
また、中空容器5内に収容される分級後油吸着材の平均粒子径を、導入口5aから導出口5bに向かうにつれて大きくなるよう設定する場合は、油水中の油の粘性が低い場合の油水の処理に適している。
これは、油水中の油の粘性が低い場合は、中空容器5の導入口5a側に、平均粒子径が小さい分級後油吸着材(例えば、分級後油吸着材1c等)が配設されていても、油吸着材1に吸着された油で油水処理フィルタ4が目詰まりを起こすおそれが少ないためである。
【実施例3】
【0052】
次に、実施例3に係る油水処理装置について
図5乃至
図7を参照しながら説明する。
[実施例3に係る油水処理装置の基本構成について]
図5は本発明の実施例3に係る油水処理装置の外観斜視図であり、
図6は本発明の実施例3に係る油水処理装置の一部を切り欠いて示す側面図である。なお、
図1乃至
図4に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例3に係る油水処理装置6は、
図6に示すように、油水処理フィルタ4の導出口5b側(下流側)に、油水処理フィルタ4内に負圧を生じさせる吸引設備10を備えてなるものである。
【0053】
[実施例3に係る油水処理装置の作用効果について]
このような実施例3に係る油水処理装置6によれば、吸引設備10において生じた負圧を利用して、油水処理フィルタ4内の油水を導入口5aから導出口5bに向かって速やかに流動させることができる。
この結果、実施例3に係る油水処理装置6によれば、油水を油水処理フィルタ4により連続的に処理して油水中の油を吸着除去することができる。
さらに、吸引設備10を使用しないで油水処理フィルタ4内における油水の自然な流動性に任せて処理する場合は、平均粒子径が小さい油吸着材1が導入口5a側に移動する(浮き上がる)現象が起きて、油水の処理に支障をきたしていた。
これに対して、実施例3に係る油水処理装置6のように吸引設備10を備える場合は、油水処理フィルタ4内を油水が流動する際に、相対的に平均粒子径が小さい油吸着材1が、導入口5a側に移動する(浮き上がる)のを好適に防止することができる。
また、実施例3に係る油水処理装置6が吸引設備10を備えることで、油水処理フィルタ4内や、それにつながる配管内に油水が残存するのを防止することができる。この結果、油水処理フィルタ4やそれにつながる配管内の衛生状態が悪化するのを好適に抑制することができる。
【0054】
[実施例3に係る油水処理装置の詳細な構造について]
ここで
図5,6を参照しながら実施例3に係る油水処理装置6についてさらに詳細に説明する。
実施例3に係る油水処理装置6はより詳細には、
図5,6に示すように、上部に開口8bを有する保持容器8a内に、油水処理フィルタ4を収容し、さらにこの保持容器8aの開口8bに、保持容器8aの蓋を兼ねた流路変更部11を覆設してなるものである。このように、油水処理フィルタ4は、保持容器8aと流路変更部11とからなる中空容器内に密閉されている。
また、このような保持容器8a内に格納されている油水処理フィルタ4の導入口5aに、流路変更部11に設けられている第1の油水流入口11aから油水(図示せず)が供給される。
さらに、保持容器8aにおいて油水処理フィルタ4の導出口5bが配される側は、油水処理フィルタ4から導出される処理済の油水(図示せず)を保持容器8aの外に排出するための排出口8cを備えており、この排出口8cと吸引設備10とが導出用管体9を介してつながっている。
したがって、実施例3に係る油水処理装置6では、吸引設備10により負圧を生じさせると、これに連動して保持容器8aに収容される油水処理フィルタ4内も負圧になる。さらに、これに伴い処理対象の油水が導入用管体12から第1の油水流入口11aを介して油水処理フィルタ4に流入する。
また、油水処理フィルタ4内に吸引された油水は、油水処理フィルタ4内を通過する際に、分級後油吸着材1a〜1cに接触することで油が吸着除去され、最終的に、導出用管体9を介して吸引設備10の下流側(
図5における紙面下方側)に排出される。
このように実施例3に係る油水処理装置6によれば、油水処理フィルタ4を用いた油水のろ過処理を連続して行うことができる。
【0055】
[実施例3に係る油水処理装置の他の構成について]
さらに、実施例3に係る油水処理装置6は上記構成に加えて、保持容器8a内に油水処理フィルタ4に並設される固形物除去フィルタ7を備えていてもよい(選択的構成要素)。
なお、実施例3に係る油水処理装置6が油水処理フィルタ4に加えて、固形物除去フィルタ7を備えている場合は、油水の流路上に配設される油水処理フィルタ4を固形物除去フィルタ7に、あるいは、油水の流路上に配設される固形物除去フィルタ7を油水処理フィルタ4に、切替えるためのフィルタ切替構造16を備えている必要がある。
そして、実施例3に係る油水処理装置6が油水処理フィルタ4に加えて固形物除去フィルタ7を備えている場合は、これらが収容されている保持容器8aはフィルタユニット8となる。
さらにこの場合、フィルタユニット8の開口8bを封止する流路変更部11は、保持容器8a内に収容される油水処理フィルタ4に油水を供給するための第1の油水流入口11aに加えて、保持容器8a内に収容される固形物除去フィルタ7に油水を供給するための第2の油水流入口11bを備えている。なお、第2の油水流入口11bに供給された油水は、導入口7aから固形物除去フィルタ7内に流入する。
したがって、このフィルタユニット8の油水処理フィルタ4に油水を供給するには、第1の油水流入口11aに油水の供給管である導入用管体12を接続すればよい。また、このフィルタユニット8の固形物除去フィルタ7に油水を供給するには、第2の油水流入口11bに油水の供給管である導入用管体12を接続すればよい。
さらに、フィルタユニット8において固形物除去フィルタ7を通過した処理済の油水は導出口7bから導出され、この後、保持容器8aの排出口8cから導出用管体9に導出される。
なお、実施例3に係る油水処理装置6が上述のように構成されている場合は、実施例3に係る油水処理装置6におけるフィルタ切替構造16は、流路変更部11である。
【0056】
なお、油水の流路上において、油水処理フィルタ4と固形物除去フィルタ7とを所望に切り替える方法としては、上述のような導入用管体12の接続先を変える方法以外の方法も考えられる。
例えば、
図6に示すように、油水の供給管である導入用管体12を分岐させておき、分岐した導入用管体12の下流側端部を第1の油水流入口11aと第2の油水流入口11bにそれぞれ接続しておき、導入用管体12の分岐点に設けられるコック13を用いて油水の流路を所望に切り替えてもよい。
この場合、実施例3係る油水処理装置6におけるフィルタ切替構造16は、流路変更部11とコック13により構成されることになる。
【0057】
油水の流路上において、油水処理フィルタ4と固形物除去フィルタ7とを所望に切り替えるための別の方法としては、
図6中における導入用管体12の分岐点に電力で駆動する流路切換弁(図示せず)を設けておき、例えば、油水処理装置6に設けられるスイッチ19を操作して油水の流路を所望に切替え可能に構成してもよい。
この場合、実施例3係る油水処理装置6におけるフィルタ切替構造16は、図示しない流路切換弁、流路変更部11及びスイッチ19により構成されることになる。
【0058】
さらに、油水の流路上において油水処理フィルタ4と固形物除去フィルタ7とを切り替えるための上記以外の方法としては、流路変更部11に第1の油水流入口11aのみを設けておき、さらに、フィルタユニット8の開口8bと流路変更部11の接続部分においてフィルタユニット8をその周方向に回動自在に設けてもよい。なお、この場合、流路変更部11に対してフィルタユニット8を回動自在に取設する手段としては、流路変更部11とフィルタユニット8とを、例えばボールベアリングを介して連結する等が考えられる。
これらに加えて、
図6に示すように、フィルタユニット8の底の中心に排出口8cを突設しておき、フィルタユニット8の底面側を、この排出口8cごと支持台14の上面に設けられるソケット18に嵌設することで、フィルタユニット8をその周方向に回動自在にしてもよい。
この場合、排出口8cが保持容器8aの底面の中心に設けられていることで、フィルタユニット8をその周方向に回動させて、油水処理フィルタ4と固形物除去フィルタ7とを所望に切り替えた場合に、固形物除去フィルタ7から導出される処理済の油水と、油水処理フィルタ4からから導出される処理済の油水のどちらも排出口8cから導出用管体9に導出することができる。
この場合、実施例3係る油水処理装置6におけるフィルタ切替構造16は、流路変更部11、フィルタユニット8、これらの連結部及びソケット18により構成されることになる。
【0059】
なお、実施例3係る油水処理装置6におけるフィルタ切替構造16は、上述の構造に特定する必要はなく、目的とする機能を支障なく発揮させることができれば上記以外の構造を採用してもよい。
そして、このような固形物除去フィルタ7を備えた実施例3に係る油水処理装置6は、飲食店や食品加工設備等におけるグリストラップに一時的に貯留される固形物が混ざった油水の処理に特に適している。
【0060】
[固形物除去フィルタ7を備えた実施例3に係る油水処理装置6の使用方法]
通常、グリストラップに一時的に貯留されている油水には食品残渣等の固形物以外に、冷えて固形状又はゲル状になった油も固形物として存在している。
この場合、固形物が混ざった油水をそのまま油水処理フィルタ4で処理すると、これらの固形物により油水処理フィルタ4が目詰まりを起こして、油水の処理ができなくなってしまう。
また、固形物が混ざった油水を処理する際の上述のような不具合を回避しようとして、固形物除去フィルタ7と油水処理フィルタ4とを直列に配して固形物が混ざった油水を吸引処理すると、油水の作用する吸引力によって固形状又はゲル状の油が砕け、砕けた固形状又はゲル状の油により油水処理フィルタ4が目詰まりを起こして、油水の処理ができなくなってしまっていた。
したがって、固形物が混ざった油水を処理する場合は、処理対象である油水から予め固形物を除去しておく必要があった。
【0061】
このような事情に鑑み、実施例3に係る油水処理装置6を用いてグリストラップに貯留される油水を処理する際は、前処理として、固形物除去フィルタ7に固形物が混入している油水を供給して、油水から固形物(固形状又はゲル状の油を含む)を除去した後、この固形物が除去された油水を一旦グリストラップに返戻する。この後、グリストラップに返戻された固形物が除去された油水を、再度実施例3に係る油水処理装置6における油水処理フィルタ4に送給して、油吸着材1を用いて油水中の油を吸着除去すればよい。
このように、油水処理フィルタ4で固形物が除去された油水を処理することで、処理後の油水を導出用管体9を介してそのまま下水に流すことができる程度にまで浄化することができる。
なお、上述のような固形物が混ざった油水の処理時に、固形物除去フィルタ7と油水処理フィルタ4とを切替える手段として、上述のようなフィルタ切替構造16を使用することができる。
【0062】
[固形物除去フィルタ7を備えた実施例3に係る油水処理装置6の作用効果]
上述のように実施例3に係る油水処理装置6が、固形物除去フィルタ7、及び、フィルタ切替構造16を備えている場合は、固形物が混ざった油水から固形物を除去する処理と、固形物が除去された油水から油を除去する処理とを1台の装置を用いて行うことができる。
上述のような実施例3に係る油水処理装置6によれば、油水から固形物を除去する処理と、水から油を除去する処理とを別々に行うことができるため、それぞれの処理を行う際にフィルタユニット8内に生じる負圧の程度を所望に変更することができる。この場合、油水から固形物を除去する際に、固形状又はゲル状の油が砕けるのを好適に防止することができる。この結果、油水処理フィルタ4を用いて油水を処理する際に、砕けた固形状又はゲル状の油により油水処理フィルタ4が目詰まりを起こすのを防止することができる。
よって、固形物除去フィルタ7を備えた実施例3に係る油水処理装置6によれば、固形物が混ざった油水を確実にかつ効率的に処理することができる。
【0063】
[実施例3に係る油水処理装置6についての補足]
実施例3に係る油水処理装置6において、保持容器8aの材質としては、ステンレス等の耐食性に優れた金属や、塗装したペール缶、あるいは強化プラスチック等を使用することができる。
また、保持容器8aの形状は、
図5,6に示すような円筒状である必要はなく、油水処理フィルタ4を単独で、あるいは、油水処理フィルタ4及び固形物除去フィルタ7を並設して、収容することができ、かつ保持容器8a内を所望の負圧に維持することができれば図示される以外の形態でもよい。
より具体的には、保持容器8aの形状は、
図5,6に示すような円筒状以外にも、保持容器8aの上部側を円筒状にし、下部側を円錐状にしてこれらを一体化したものや、角筒状のものを用いることができる。
保持容器8aの形状が角筒状である場合で、かつ保持容器8aを周方向に回動させる必要がある場合は、保持容器8aの底面側を受けるソケット18を支持台14に対して回動可能に構成してもよい。
【0064】
さらに、保持容器8a内の油水処理フィルタ4における油の吸着状況や、固形物除去フィルタ7における固形物の回収状況を保持容器8aの外から確認できるようにするために、流路変更部11自体を透明な合成樹脂製により構成する、あるいは、流路変更部11に透明な合成樹脂製の点検窓(図示せず)を設けてもよい(いずれも選択的構成要素)。
この場合、油水処理装置6や固形物除去フィルタ7の交換のタイミングを、保持容器8aの外から目視で確認することができるので便利である。
【0065】
また、保持容器8a内に収容される油水処理フィルタ4の中空容器5や、固形物除去フィルタ7の材質は、ステンレス等の耐食性に優れた金属や強化プラスチック等からなるメッシュ材や多孔板を用いることができる。
また、油水処理フィルタ4の中空容器5や、固形物除去フィルタ7を構成するメッシュ材や多孔板における、個々の空隙(細長状のスリットを含む)又は孔(円形のみならず、多角形状、あるいは、これら以外の任意の形状の孔を包含する概念である)の最大径や、その形成密度は、油水における油以外の液体をスムーズに外部に排出することができるよう設定されている必要がある。
上述のような、空隙又は孔の例としては、金属又は合成樹脂製の中空容器5又は固形物除去フィルタ7の壁面又は底面に、直径3〜6mmの円孔を、20〜30mmピッチで形成しておいてもよい。なお、このような容器体内に分級済油吸着材(例えば、分級後油吸着材1a〜1c等)を収容する場合は、上記円孔から分級済油吸着材が流出しないよう工夫する必要がある。
【0066】
さらに、実施例3に係る油水処理装置6では、吸引設備10を駆動させることで、保持容器8a内の圧力を100〜400mmHgの範囲内の負圧にすることができる。
また、このような吸引設備10としては、空気と油水の混合物だけでなく、空気のみの吸引も可能なチューブポンプ、ホースポンプ、モノフレックスポンプ、水中ポンプ、ダイヤフラム型エアポンプ等を用いることができる。
また、実施例3に係る油水処理装置6では、保持容器8a内の圧力が、所望の設定値を超える負圧になった場合に、自動的に外気を保持容器8a内に流入させるベント機構20を備えている(
図5,6を参照)。なお、ベント機構20の取付け位置は、流路変更部11以外に保持容器8aでもよい。
このように実施例3に係る油水処理装置6がベント機構20を備える場合は、保持容器8aの内部が必要以上に減圧されて、保持容器8aが破損する、あるいは、油吸着材1に吸着された油や、固形物除去フィルタ7で回収された固形物の粉砕物が意図せず処理済の油水に混入するのを防止することができる。
さらに、実施例3に係る油水処理装置6がベント機構20を備えることで、油水処理装置6の運転後に、導出用管体9内の油水をグリストラップに返戻するという効果(固形物除去フィルタ7使用時)、あるいは、導出用管体9内の処理済の油水を油水処理装置6外に排出させるという効果(油水処理フィルタ4使用時)を発揮させることができる。
【0067】
さらに、実施例3に係る油水処理装置6は、
図5,6に示すように一連の設備を、台車等の搬送手段15上に設置しておいてもよい(選択的構成要素)。この場合、油水の処理が必要な場所に、実施例3に係る油水処理装置6を人手により容易に移動することができる。
さらに、実施例3に係る油水処理装置6が搬送手段15を備える場合は、油水を送給するための大掛かりな配管設備等を設ける必要がないので、油水の処理を極めて簡便に行うことができる。
より具体的には、上述のグリストラップの清掃を人手のみで行う場合、30分間の作業時間を要していたところを、実施例3に係る油水処理装置6を用いることで、その作業時間を1/3の約10分間に短縮することができる。
しかも、実施例3に係る油水処理装置6を用いる場合は、作業者が自ら油水の浄化作業を行う必要がなく、しかも作業者は、油水処理装置6の操作を行うだけでよいので、作業者の身体的及び精神的な負担を大幅に軽減することができる。
しかも、実施例3に係る油水処理装置6を用いる場合は、グリストラップに一時的に貯留されている油水から固形物を除去することができるだけでなく、その油水中の油も除去することができる。
したがって、上述のような実施例3に係る油水処理装置6によれば、手作業でグリストラップの清掃を行う場合に比べて、その作業を大幅に簡便化できるだけでなく、処理後の油水の水質もはるかに清浄なものにすることができる。
【0068】
以下に、本発明に係る油吸着材1による効果を立証するための各試験及びその結果について説明する。
また、本試験では、以下に示すような本発明の実施例、及び、比較例に係る油吸着材を供試した。なお、本発明の実施例、及び、比較例に係る油吸着材はそれぞれ下記のような手順にて作製した。
本発明の実施例では、吸着基材2の原材料としてケナフの芯(ケナフコア)を用い、比較例では、吸着基材2の原材料としてピーナツの殻を用いた。そして、本発明の実施例及び比較例に係る吸着基材2の原材料を、50℃のオーブンで30分間乾燥させた後、粒度が0.01〜10mmの範囲内になるように粉砕機を用いて粉砕して、吸着基材2とした。
次に、本発明の実施例及び比較例に係る吸着基材2を、パラフィンワックス乳化物「EMUSTAR(登録商標)−1070(日本精蝋株式会社製)」に浸漬してこれらの表面にコーティング膜を形成し、80℃のオーブン中で5分間乾燥させたものをそれぞれ、本発明の実施例に係る油吸着材1、比較例に係る油吸着材として供試した。
【0069】
<試験1:浮上試験>
まず、上記手順にて作製した本発明の実施例に係る油吸着材1、及び、比較例に係る油吸着材をそれぞれ1gずつ採取して、水100mLとともに300mL栓付き三角フラスコに投入し、産廃溶出振とう機(大洋科学工業株式会社製、型番:TS−4)で所要時間振とうさせ、振とう後に、浮上している実施例又は比較例に係る油吸着材を採取し、105℃で恒量になるまで乾燥してから、それぞれの質量を測定した。その結果を示したものが下記表1である。
【0070】
【表1】
【0071】
本発明の実施例に係る油吸着材1(ケナフコア)は2時間振とうさせた後もほとんど水面に浮いたままであったが、比較例に係る油吸着材(ピーナッツ殻)は1分間の振とう後に約半分が沈降した。
本発明の実施例に係る油吸着材1の吸着基材2として用いられているケナフコアは、水溶性物質が少ないので、水溶性物質と水が入れ替わることなく、吸水が少ないと考えられる。このため本発明の実施例に係る油吸着材1は長時間沈降することなく、浮上したままであり、油水を処理した後の回収が容易であることが予想される。
【0072】
<試験2:油水中の油吸着試験>
10000ppm(mg/kg)の油水200mL中に本発明の実施例又は比較例に係る油吸着材を所定量投入し、15分間振とうさせ、振とう後の油水中の油分量を測定した。なお、試験2に供試した油水の油種には、菜種油及び軽油を使用した。また、試験2に供試した油水における油分量は、ノルマルヘキサン抽出物質試験により測定した。なお、試験2において、油水の油種として菜種油を用いた場合の結果を表2に、また、油水の油種として軽油を用いた場合の結果を表3に示した。
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
上記の試験2において比較例に係る油吸着材(ピーナッツ殻)を用いた場合は、処理後の油水中油分量が2000ppm程度まで低減した。他方、本発明の実施例に係る油吸着材1(ケナフコア)を用いた場合は、処理後の油水中油分量は数百ppmまで低減した。よって、試験2の結果から、本発明の実施例に係る油吸着材1の方が比較例に係る油吸着材よりも効果的に油水中の油を吸着していることが明らかになった。また、本発明の実施例に係る油吸着材1は所要時間振とう後も処理対象である油水の水面に浮上したままであり、比較例に係る油吸着材よりもその回収が容易であった。
【0076】
<試験3:ろ過による処理>
本発明に係る油吸着材1を用いて外食産業において生じる排水を処理することを想定して、カレー粉(ノルマルヘキサン抽出物質は33.5%)を溶かした水を疑似排水として用いたろ過試験を行った。
試験3では、カレー粉2g及び水200gを300mL三角フラスコに入れて、加熱してカレー粉を溶かした後に、室温になるまで静置したものを疑似排水として供試した。
試験3におけるろ過処理では、吸引ろ過を行い、ろ水中の油をノルマルヘキサン抽出物質とし、処理水中油分量を測定した。また、他の比較例としてろ紙を用いた試験も併せて行った。なお、上記疑似排水を油水にするための油種として軽油を用いた。なお、上述のような試験3の結果を下記表4に示した。
【0077】
【表4】
【0078】
本発明の実施例に係る油吸着材1をろ材として用いて吸引ろ過した場合は、スムーズに処理水が排出され、処理時間も早く、処理済の油水中油分量は58mg/kgであり、油水中の油はほとんど除去されていた。また、本発明の実施例に係る油吸着材1をろ材として用いた場合の処理済の油水の色は、透明に近い淡い黄色であった。
他方、吸引ろ過時のろ材として比較例に係る油吸着材(ピーナッツ殻)用いた場合は、油吸着材が吸水したため処理時間が長くかかった。また、処理済の油水中油分量は80mg/kgとかなり低減されていた。しかしながら、処理済の油水の色は、茶色であった。
さらに、吸引ろ過時のろ材としてろ紙(他の比較例)を用いた場合は、ろ紙が目詰まりしてろ過処理ができなかった。
これらのことから、本発明の実施例に係る油吸着材1をろ材として用いて吸引ろ過処理を行った場合は、処理時間も短時間で済み、処理済の油水に変色もなく、しかも油水中の油もほとんど除去することができ、比較例に係る油吸着材や、別の比較例であるろ紙を用いた場合よりもろ材として優れた性質を有していることが示された。