(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性部材は、前記基板に近い側に位置する第一面と、前記第一面と反対側の第二面とを有し、前記第二面が前記アタッチメントよりも前記装置本体とは反対側に突出して配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の、紫外線治療器。
前記有機無機ハイブリッド組成物(X)は、前記ジメチルポリシロキサン(A)と、アルミニウムアルコキシド(B)と、ケイ素アルコキシド(C)を脱水縮合させて生じた生成物であることを特徴とする、請求項8に記載の、紫外線治療器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紫外線療法では、疾患部の皮膚に対して、直接紫外線が照射される。紫外線は、皮膚外表面から標的細胞のT細胞が浸潤している層まで到達する間に、水分子、メラニン、ヘモグロビン等の光吸収物質による吸収が生じたり、角層、表皮及び真皮を構成する細胞によって拡散する。この結果、紫外線の放射照度は、進行する距離が伸びるに連れて減衰する。
【0007】
例えば、皮膚外表面からUVB光を照射した場合、真皮に対して到達する紫外線量は10%程度である(上記非特許文献1〜3参照)。
【0008】
すなわち、皮膚外表面から紫外線を照射した場合、患部(標的細胞)に対して十分な放射照度の紫外線が到達していない可能性がある。一方で、健常な細胞に対して悪影響を及ぼすおそれがあることから、紫外線の強度自体を高めることには限界がある。このような事情により、従来の紫外線治療方法によれば、治療期間が長期化する可能性がある。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑み、同じ強度の紫外線を出射した場合であっても、患部(標的細胞)に対して照射される放射照度を向上することのできる紫外線照射装置を提供することを目的とする。また、本発明は、このような紫外線照射装置に用いられる、アタッチメント及び弾性部材を提供することを別の目的とする。また、本発明は、紫外線照射方法を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る紫外線照射装置は、
光出射部から紫外線が出射可能に構成された装置本体と、
前記光出射部に配置された、紫外線に対する透過性を示す基板と、
前記基板、前記装置本体とは反対側の面上に載置され、紫外線に対する透過性を有した材料からなる弾性部材とを備えたことを特徴とする。
【0011】
光吸収物質の一つであるヘモグロビンは血液に含まれており、皮膚内血管および毛細血管中を経時的に循環している。上記の構成によれば、弾性部材を皮膚外表面に接触させた状態で、基板を介して押圧しながら紫外線を照射することにより、患部に対する血液の流入を一時的に遮断しながら紫外線の照射が可能である。
【0012】
すなわち、弾性部材は、紫外線に対する透過性と弾性とを有している。弾性部材が弾性を有しているため、皮膚外表面が構成する曲面に合わせて、押圧時に弾性部材の形状が容易に変形する。これにより、皮膚外表面と弾性部材とが容易に面接触する。そして、弾性部材が紫外線に対して透過性を有しているため、装置本体から出射された紫外線は、この弾性部材を透過して皮膚の内側に導かれる。
【0013】
これにより、患部に含まれる光吸収物質による紫外線の吸収が低減される。また、表皮及び真皮が圧縮されることで、皮膚外表面から標的となる細胞への距離を短くすることができるため、放射照度の減衰が追加的に抑制される。この結果、同一の強度の紫外線を出射した場合であっても、従来の装置よりも患部に対する放射照度が向上する。本発明に係る紫外線照射装置は、紫外線治療用の装置として用いることができる。
【0014】
弾性部材は、紫外線に対する透過率が、表面反射を含む厚みを1mmとした場合において、90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。また、弾性部材は、厚みが1〜10mmのものを手で折り曲げた際に、割れが生じることなく曲げられる程度の弾性を有しているのが好ましい。例えば、ヤング率が3MPa以下であることが好ましく、1MPa以下であることが更に好ましい。
【0015】
前記弾性部材は、例えば、有機無機ハイブリッド組成物(X)からなり、
前記有機無機ハイブリッド組成物(X)は、分子中にフェニル基を有さず、側鎖がメチル基のみからなり、ヒドロキシ末端を有するジメチルポリシロキサンで骨格が構成されてなることで実現される。分子中にフェニル基を有さず、側鎖がメチル基のみからなり、ヒドロキシ末端を有するジメチルポリシロキサンで骨格を構成した有機無機ハイブリッド組成物によれば、紫外線透過性に優れ、且つ、弾性を有する(可撓性に富む)という特性が実現される。
【0016】
更に、前記有機無機ハイブリッド組成物(X)は、前記ジメチルポリシロキサン(A)と、アルミニウムアルコキシド(B)と、ケイ素アルコキシド(C)を脱水縮合させて生じた生成物であることが好ましい。
【0017】
前記装置本体は、手で把持が可能な大きさ及び重量であるのが好ましい。かかる構成とすることで、本体を手で把持した状態で、皮膚外表面に対して装置本体ごと押圧しながら紫外線を照射することができる。これにより、簡易な処理によって従来の装置よりも患部に対する放射照度を向上させることができる。
【0018】
前記装置本体は、紫外線光源を備えていても構わないし、別の場所に備えられた紫外線光源から光ファイバなどの導光部材を介して紫外線が導かれる構成であっても構わない。
【0019】
前記紫外線照射装置は、開口領域を含む枠状部材からなり、前記装置本体に対して着脱自在に取り付けられたアタッチメントを有し、
前記弾性部材は、前記開口領域に嵌め込まれ、当該弾性部材の外周部が前記アタッチメントを介して前記装置本体に固定されているものとすることができる。
【0020】
弾性部材は、皮膚外表面に接触されるため、衛生面を考慮すると、使い切りで取り扱われることが想定される。このため、多くの患者に対して放射線治療を行う場合には、弾性部材を都度、装置本体に対して着脱することが考えられる。上記の構成によれば、装置本体に対して弾性部材を容易に取り付けることが可能となるため、紫外線照射のための準備が簡素化される。
【0021】
前記弾性部材は、前記基板に近い側に位置する第一面と、前記第一面と反対側の第二面とを有し、前記第二面が前記アタッチメントよりも前記装置本体とは反対側に突出して配置されることができる。
【0022】
かかる構成によれば、弾性部材が装置本体から反対側に突出しているため、装置本体を皮膚外表面側に押圧することで、弾性部材を容易に皮膚外表面に接触させることができる。
【0023】
前記弾性部材は、前記第一面と前記第二面との間の位置に形成された段差部を有し、
前記アタッチメントの前記枠状部材が前記段差部に接触することで、前記弾性部材が前記開口領域に嵌め込まれているものとすることができる。
【0024】
かかる構成によれば、装置本体とは反対側に一部の面(第二面)を突出させた状態で、容易に弾性部材を装置本体に取り付けることができる。なお、弾性部材が、基板に近い側の面である第一面を含む第一部分と、基板とは反対側の面である第二面を含む第二部分とが、前記第一面及び第二面に直交する方向に連続しており、第一部分の面積(第一面の面積)が、第二部分(第二面の面積)よりも大きいことで、前記段差部が形成されるものとすることができる。
【0025】
前記弾性部材は、厚みが3mm〜10mmであるものとすることができる。弾性部材は、紫外線に対する透過性を有するものの、透過率が100%である部材は現実的に困難である。このため、入射された光の一部は、不可避的に拡散・吸収される。弾性部材が10mmを超える厚みになると、弾性部材内における紫外線の拡散・吸収量が多くなるため、患部に対する放射照度を向上させる効果が低下してしまう。一方で、弾性部材の厚みが3mmを下回る程度の薄さになると、皮膚外表面の湾曲に沿って弾性部材を面接触させにくくなるため、血液の流れを一時的に遮断させるという本来の効果が弱まってしまう。
【0026】
本発明に係る紫外線照射方法は、被照射領域の面上に、紫外線に対する透過性を有した材料からなる弾性部材が載置され、前記弾性部材の、前記被照射領域とは反対側の面に紫外線に対する透過性を示す基板を前記弾性部材に接触させた状態で、前記基板及び前記弾性部材を介して紫外線を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、患部に対して照射される放射照度を向上することのできる紫外線照射装置が実現される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る紫外線照射装置の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比は必ずしも実際の寸法比と一致しない。また、各図面間における寸法比についても、必ずしも一致していない。
【0030】
[装置構造]
図1〜
図8は、本実施形態に係る紫外線照射装置、又は同装置の部品を模式的に示す図面である。
図1は、紫外線照射装置1の模式的な斜視図である。以下では、適宜、
図1に示すXYZ座標系を参照して説明される。
【0031】
図2は、紫外線照射装置1の模式的な上面図であり、Y方向に沿って紫外線照射装置1を見たときの図面に対応する。
図3は、紫外線照射装置1の模式的な正面図であり、X方向に沿って紫外線照射装置1を見たときの図面に対応する。
図4は、
図1に図示された紫外線照射装置1を、一部の部品を分解した状態で示された図面である。
【0032】
紫外線照射装置1は、装置本体3と、弾性部材11と、アタッチメント13と、基板15(
図4参照)とを備える。
図4に示されるように、本実施形態では、基板15は装置本体3に取り付けられている。また、本実施形態の紫外線照射装置1は、装置本体3内に紫外線L1を出射する光源31と、装置本体3自体を把持するための把持部32とを備えている。
図1〜
図3においては、図示の都合上、基板15が表示されていない。
【0033】
図5Aは、弾性部材11、及びアタッチメント13を抽出して図示された模式的な斜視図である。
図5Bは、
図5Aの正面図(Y方向に沿って見たときの図面)に対応する。
図6は、アタッチメント13の構造を模式的に示す斜視図である。
図7Aは、弾性部材11の構造を模式的に示す斜視図である。
図7Bは、弾性部材11の構造を模式的に示す正面図である。
【0034】
図8は、
図3内におけるA1−A1線で紫外線照射装置1を切断したときの模式的な断面図である。
【0035】
図4に示されるように、紫外線照射装置1は、装置本体3に紫外線L1を出射する領域(光出射部33)を備えている。光出射部33は、紫外線L1を装置本体3の外側に導く窓部を構成する。
図4に示される構成では、この光出射部33(窓部)に、紫外線L1に対する透過性を有した基板15が嵌め込まれており、基板15を介して紫外線L1が装置本体3の外側に導かれる。
【0036】
本実施形態では、基板15の+Z方向に係る面上に弾性部材11が載置されている。基板15の+Z方向に係る面とは、基板15の面のうち、光出射方向に係る面(装置本体3とは反対側の面)である。弾性部材11は、アタッチメント13によって装置本体3から脱落しないように連続されている。アタッチメント13によって固定されることで、弾性部材11の面と基板15の面とが接触する。
図5A及び
図5Bにおいて、弾性部材11の面と基板15の面とが接触していることが図示されている。なお、基板15の光源31側の面に紫外線透過性を有する別の部材が介在されていても構わない。この場合、窓部を構成する光出射部33、前記別の部材、及び基板15を介して紫外線L1が装置本体3の外側に導かれる。
【0037】
図6に示されるように、アタッチメント13は、開口領域13aが内側に形成された枠状部材13bによって構成されており、外周部のうちの、向かい合う一対の辺には爪部13cが設けられている。爪部13cは例えば板バネを構成し、装置本体3に設けられた図示しない受け部に対して噛み合わせられることで、アタッチメント13と装置本体3とが固定的に連結される。また、爪部13cを操作することで、容易に装置本体3からアタッチメント13を取り外すことができる。
【0038】
図7A及び
図7Bに示されるように、弾性部材11は、XY平面に平行な、向かい合う2面(第一面11a,第二面11b)を有し、この2面の間の位置に段差部11cを有する。より詳細には、弾性部材11は、基板15に近い側に位置し、面積の大きな第一面11aを有する第一部分11a1と、基板15とは反対側(光出射側)に位置し、第一面11aよりも面積の小さな第二面11bを有する第二部分11b1とを有し、これらの部分が連続して形成されている。
【0039】
弾性部材11は、第二部分11b1におけるXY平面上における各辺の長さが、アタッチメント13の開口領域13aの外周部を構成するXY平面上における各辺の長さよりも短い。一方で、弾性部材11は、第一部分11a1におけるXY平面上における各辺の長さが、アタッチメント13の開口領域13aの外周部を構成するXY平面上における各辺の長さよりも長い。また、弾性部材11の厚み(Z方向に係る長さ)は、アタッチメント13の枠状部材13bを構成する部分における厚みよりも厚い。
【0040】
このように構成されるとき、弾性部材11の第二部分11b1は、アタッチメント13の開口領域13a内を通過できる一方、弾性部材11の第一部分11a1は、アタッチメント13の開口領域13a内を通過できない。つまり、弾性部材11をアタッチメント13の開口領域13a内に嵌め込むと、第一部分11a1と第二部分11b1との境界に位置する段差部11cにおいて、弾性部材11が、アタッチメント13の開口領域13aの外周部と接触した状態で固定される。このとき、開口領域13aの両側(±Z方向)には、弾性部材11の一部分、すなわち第一面11aと第二面11bとが、開口領域13aよりも外側に突出する。
【0041】
弾性部材11がアタッチメント13の開口領域13aに嵌め込まれた状態で、装置本体3に取り付けられると、
図8に示されるように、弾性部材11の第二面11bは、アタッチメント13よりも装置本体3とは反対側(+Z方向)に長さd1だけ突出する。
【0042】
図9は、本実施形態に係る紫外線照射装置1の使用態様を模式的に示す図面である。操作者41が把持部32を把持した状態で、照射対象者(患者)50に対して、弾性部材11を対向させる。この状態で、操作者41は、弾性部材11を照射対象者50の被照射領域である皮膚外表面51に接触させ、更に装置本体3から皮膚外表面51側に荷重f1を掛ける。
【0043】
後述されるように、弾性部材11は、紫外線に対して高い透過性を有すると共に、弾性を有する材料で構成される。このため、弾性部材11は、皮膚外表面51の曲面に沿って形状が変化し、皮膚外表面51と面接触する。また、皮膚外表面51に対して、荷重f1が掛けられることで、当該領域の皮膚は内側へ圧縮される。
図10は、この状態を模式的に示す図面である。
【0044】
図10に示されるように、荷重が掛けられている領域S1は、皮膚外表面51が身体の内側に圧縮される。また、弾性部材11の面(第一面11a)は、皮膚外表面51の曲面に沿うように変形される。
【0045】
このような状態で、紫外線照射装置1から照射対象者(患者)50に対して紫外線L1が照射される。この時点において、領域S1内には荷重f1が掛けられているため、一時的に血液の流入が遮断又は減少する。この結果、領域S1内におけるヘモグロビンの数が一時的に減少する。ヘモグロビンは、紫外線L1の吸収する因子の一つであるため、ヘモグロビンの数が減少することで、皮膚の内側に存在する患部に達する紫外線L1の放射照度が高められる。
【0046】
特に、弾性部材11が皮膚外表面51と領域S1において面接触するため、装置本体3を介して皮膚外表面51を通じて照射対象者50に対して荷重f1が掛けられることで、領域S1内における血液の流入を一時的に遮断する効果が発揮される。
【0047】
[弾性部材11]
紫外線(例えばUVB光)を透過する部材としては、これまで石英ガラスや蛍石(フッ化カルシウム)などの固い材料は知られている。しかし、紫外線に対して90%以上の透過率を示し、且つ、1mm以上の厚みにおいて手で簡単に曲がる(弾性を有する)材料は、これまでほとんど知られていない。以下で説明される材料によって弾性部材11を構成することで、1kgfの力で、直径200mmの曲面に沿うように変形する、非常に柔らかい材であるが、べたつきは少なく、且つ、1mm厚の部材においてUVB光に対する透過率が90%以上を示す。
【0048】
(材料)
本実施形態の紫外線照射装置1が備える弾性部材11は、有機無機ハイブリッド組成物(X)からなる。この有機無機ハイブリッド組成物(X)は、分子中にフェニル基を有さず、側鎖がメチル基のみからなり、ヒドロキシ末端を有するジメチルポリシロキサンで骨格が構成されてなることで実現される。一例として、有機無機ハイブリッド組成物は、ジメチルポリシロキサン(A)と、アルミニウムアルコキシド(B)と、ケイ素アルコキシド(C)とを含み、これらが脱水縮合反応に伴い架橋して生じた生成物であることが好ましい。
【0049】
有機無機ハイブリッド組成物(X)は、シロキサン結合を備えたポリシロキサンが3次元的に複雑に架橋した構造となる。そのため、いわゆる無機ガラスに近似した構造を示し、耐熱性、耐紫外線性等の好適な性質を得ることができる。
【0050】
ヒドロキシ末端を有するジメチルポリシロキサン(A)は、有機無機ハイブリッド組成物(X)の骨格構造を形成する物質であり、分子中にフェニル基を有さず、側鎖がメチル基のみからなるケイ素化合物である。フェニル基を含有する種類の有機無機ハイブリッド組成物(X)の透過率は、300nm以上の波長域では75%以上であるが、260nm域の紫外線をフェニル基が吸収してしまいほとんど紫外線を透過しないのに対し、フェニル基を有さないヒドロキシ末端を有するジメチルポリシロキサン(A)を原料として用いることにより、紫外線の吸収を防止することができる。
【0051】
また、分子中にフェニル基を有さず、側鎖がメチル基のみからなり、ヒドロキシ末端を有するジメチルポリシロキサン(A)で骨格を形成した有機無機ハイブリッド組成物(X)によれば、曲げに強く、湾曲させた際に損傷しにくいため、高い弾性が確保される。
【0052】
ジメチルポリシロキサン(A)同士、又は、ジメチルポリシロキサン(A)とアルコキシド分子(B)若しくは(C)との架橋反応性を高めるため、ジメチルポリシロキサン(A)の末端部位はヒドロキシ基に置換されている。ヒドロキシ末端を有するジメチルポリシロキサン(A)は有機無機ハイブリッド組成物(X)の構造骨格となる分子であり、概ね分子量(重量平均分子量)500〜30,000の範囲から選択される。
【0053】
アルミニウムアルコキシド(B)は、ヒドロキシ末端を有するジメチルポリシロキサンA)の末端部分であるヒドロキシ基と縮合反応し、分子同士による網目構造を形成する役割を持つ。当該アルミニウムアルコキシド(B)として、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシド、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート(別名、アルミニウム(2−ブタノラート)ジ(2−プロパノラート))等をはじめとする各種のアルミニウムアルコキシドが挙げられる。紫外線に対する高い透過率を確保する観点からは、特に、アルミニウムsec−ブトキシドが好ましい。
【0054】
アルミニウムアルコキシド(B)は、ケイ素アルコキシド(C)と比較して加水分解や縮合等の反応性に富む。その結果、アルミニウムアルコキシド(B)は、酸、塩基等の触媒を用いることなく加水分解が生じる。具体的には、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ビス(アセトキシジブチル錫)オキサイド、ビス(ラウロキシジブチル錫)オキサイド等のスズ系の反応促進剤を用いることなくヒドロキシ末端を有するジメチルポリシロキサン(A)のヒドロキシ基と縮合反応し、架橋形成が可能である。
【0055】
紫外線に対する高い透過性を確保する観点から、有機無機ハイブリッド組成物(X)に含まれる高反応性金属アルコキシドの反応生成物に由来する金属酸化物には、高いエネルギーバンドギャップが求められる。Al
2O
3のエネルギーバンドギャップは6.9eVであり、吸収端が179.7nmであるため、アルミニウムアルコキシド(B)によれば紫外線に対する高い透過性が実現される。
【0056】
ケイ素アルコキシド(C)もヒドロキシ末端を有するジメチルポリシロキサン(A)の末端部分であるヒドロキシ基と縮合反応し、分子同士による網目構造を形成する役割を持つ。ケイ素アルコキシド(C)として、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン等をはじめとする各種のケイ素アルコキシドおよびそれらの縮合物が挙げられる。なお、前記縮合物であるケイ素アルコキシドオリゴマーとして、信越化学工業(株)から市販されている「KC−89S」を用いることもできる。
【0057】
ヒドロキシ末端を有するジメチルポリシロキサン(A)、アルミニウムアルコキシド(B)、及びケイ素アルコキシド(C)は、例えば、アルコール溶媒内において混合される。アルコールは、アルコキシドを溶解し、ジメチルポリシロキサン(A)に混合される。各材料の混合後、使用したアルコール溶媒は乾燥により蒸発して除去される。
【0058】
アルミニウムアルコキシド(B)とジメチルポリシロキサン(A)の末端ヒドロキシ基との脱水縮合により架橋した前駆体に、更にケイ素アルコキシド(C)も脱水縮合により架橋する。その後、空気中の水分が、前記の3種類の化合物による架橋物、つまり有機無機ハイブリッド組成物(X)の表面から吸収される。組成物表面から吸収された水分により、アルミニウムアルコキシド(B)及びケイ素アルコキシド(C)の加水分解は進行する。更に、ヒドロキシ末端を有するジメチルポリシロキサン(A)との脱水縮合が促進する。縮合により生成した水に起因して、更にアルミニウムアルコキシド(B)及びケイ素アルコキシド(C)の加水分解が誘発される。
【0059】
このように、アルコキシドの加水分解とポリシロキサンの脱水縮合は連鎖的に生じ、有機無機ハイブリッド組成物(X)の表面から次第に内部全体の架橋、硬化の反応が進行する。最終的に、流動物であった有機無機ハイブリッド組成物(X)が架橋、硬化し、その後、所定の形状(例えば
図7A〜
図7Bを参照して説明された形状)に成型されることで、紫外線に対する高い透過性と弾性とを示す弾性部材11が生成される。成型前の段階において、例えば、70℃以上200℃以下で4時間以上12時間以下の加熱処理が施されることで、硬化処理が行われるものとすることができる。
【0060】
有機無機ハイブリッド組成物(X)のために使用するヒドロキシ末端を有するジメチルポリシロキサン(A)は、異なる重量平均分子量のヒドロキシ末端を有するジメチルポリシロキサンを2種以上使用してもよい。
【0061】
(弾性部材11の構成材料に関する実施例)
【0062】
<ジメチルポリシロキサン(A):実施例1〜6、比較例1〜2>
ヒドロキシ末端を有するジメチルポリシロキサン(A)として、分子量(平均重合度)の異なる2種類を使用した。低分子量のジメチルポリシロキサン(A1)として、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のYF3800(重量平均分子量3,500)を使用し、高分子量のジメチルポリシロキサン(A2)として、同社製のXF3905(重量平均分子量20,000)を使用した。
【0063】
<アルミニウムアルコキシド(B):実施例1〜6>
アルミニウムアルコキシド(B)として、アルミニウムsec−ブトキシド(アルミニウムsec−ブチレート)、川研ファインケミカル(株)製,商品名:「ASBD」を使用した。
【0064】
<チタンアルコキシド(B1):比較例1>
比較例1では、アルミニウムアルコキシド(B)に代えて、チタンアルコキシド(B1)を使用した。このチタンアルコキシド(B1)として、マツモトファインケミカル(株)製、商品名「オルガチックスTA−25」を使用した。
【0065】
<ジルコニウムアルコキシド(B2):比較例2>
比較例2では、アルミニウムアルコキシド(B)に代えて、ジルコニウムアルコキシド(B2)を使用した。このジルコニウムアルコキシド(B2)として、マツモトファインケミカル(株)製、商品名「オルガチックスZA−65」を使用した。
【0066】
<ケイ素アルコキシド(C):実施例1〜6、比較例1〜2>
ケイ素アルコキシド(C)として、ケイ素アルコキシドオリゴマーであるKC−89S(信越化学工業(株)製)を使用した。
【0067】
<評価方法>
(硬化性)
上記各材料を、表1に記載の調合量にて調製し、フッ素樹脂製の型に所定量流し込んだ後、70℃で24時間、105℃で24時間、150℃で48時間それぞれ加熱した後、50mm×50mm×5mmの弾性部材を試作した。試作された各弾性部材を触感によって検査し、「べたつき」の有無を評価した。べたつきが大きいと、
図10に示すように皮膚外表面51に接触させて押圧した際、皮膚外表面51に沿って変形することなく、枠状部材13bの外側に飛び出してしまうおそれがある。表1において、べたつきがなかったものを「A」、べたつきがあったものを「B」で示している。
【0068】
(紫外線透過率)
上記各材料を、表1に記載の調合量にて調製したものを、テフロン(登録商標)製シャーレ内で硬化させた、厚み1mmの硬化物を測定対象とした。硬化方法は、上記と同様である。そして、波長280nmから315nmの紫外線を1nmずつ変化させて照射し、全ての波長において、透過率が90%以上を示すか否かを評価した。全ての波長において、透過率が90%以上を示すものを「A」、それ以外のものを「B」で示す。
【0069】
(弾性)
硬化性の評価時と同様の方法で、50mm×50mm×5mmの弾性部材を試作し、この弾性部材を直径200mmの円筒状の塩化ビニール製パイプの側面上に置いた。そして、その弾性部材の上に、1kgの鉄板を乗せたときに、弾性部材の50mm×50mmの面全面が、円筒の側面(曲面)に接触するか否かを評価した。全面が接触したものを「A」、それ以外のものを「B」で示す。
【0070】
(曲げ強度)
紫外線透過率の評価時と同様の方法で、テフロン(登録商標)製シャーレ内で硬化させた、厚み1mmの硬化物を測定対象とした。硬化物を手で折り曲げた際に、硬化物が割れるか否かを評価した。折り曲げた際に割れなかったものを「A」、割れたものを「B」で示す。
【0071】
(総合評価)
硬化性、紫外線透過率、弾性、及び曲げ強度の全項目において「A」評価を得たものを「A」、一部でも「B」評価を得たものを「B」とした。なお、比較例1及び2については、紫外線に対する透過率が低かったため、弾性及び曲げ強度試験については評価を行っていない。下記表1によれば、実施例1〜6の各組成物により弾性部材11を構成することで、紫外線に対する90%以上の高い透過率と、曲げ特性(弾性)とが両立することが示される。
【0073】
[検証]
紫外線照射装置1により、患部に対する紫外線の放射照度が向上する点につき、以下検証する。
【0074】
<弾性部材11の厚み>
ヘモグロビンは赤色素であるヘムを有しており赤色を帯びている。
図11A〜
図11Cは、3名の被験者(A,B,C)に対し、厚みの異なる弾性部材11を12kPaの圧力で押圧したときの皮膚の色差を、SCI(Specular Component Include)方式で測定したときの結果を示すグラフである。
【0075】
12kPaという数値は、一例として、皮膚外表面51と接触する弾性部材11の領域の面積を855mm
2、装置本体3の重量を670g、装置本体3を把持した状態で照射対象者50に対して少し荷重を掛けるため荷重f1を1kgf(≒10N)として、各値に基づいて算出された値である。
【0076】
各図において、横軸は弾性部材11の厚みを示す。横軸において厚みが0mmとあるのは、弾性部材11がない状態(初期状態)に対応する。また、各図において、縦軸はL,a,bそれぞれの値を示し、厚み0mmでの値を1とした場合の相対値で示されている。
【0077】
SCI方式で測定された各値のうち、a値は赤みの程度を示す値であり、このa値が低下するほどヘモグロビンが退避していると考えられる。また、L値は明度を示す値であり、このL値が低下するほど黒色に近づき光を吸収する。そのため、L値の低下を招かない範囲でa値を低下することで、入射された紫外線が患部に到達するまでのヘモグロビンなどによる吸収が抑制される。
【0078】
図11Dは、各被検者A,B,Cそれぞれに対し、弾性部材11の厚みごとにL値とa値の差分値(L−a)を算出した結果を、グラフに示したものである。
図11Dによれば、前記厚みを5mm以上8mm以下の範囲内において、グラフが極大値を示している。従って、前記厚みを5mm以上8mm以下の範囲内とした場合に、L値の低下を抑制しながらa値が低下できることが分かる。なお、弾性部材11の厚みは、3mm以上10mm以下の範囲内であれば、十分に本発明の効果が発揮される。
【0079】
図12A及び
図12Bは、弾性部材11の厚みtを1mm、3mm、5mm及び10mmと変化させた状態で、光に対する透過率スペクトルを測定した結果を示すグラフである。ここでは、弾性部材11の材料として、実施例1の条件で作製されたものを用いている。
図12Bは、
図12Aの一部の波長領域を拡大して示したグラフである。いずれのグラフにおいても、横軸は波長を示し、縦軸は透過率を示す。
【0080】
図12A及び
図12Bによれば、弾性部材11の厚みを薄くするほど、光に対する透過率が向上することが分かる。また、厚み10mm以下の範囲内において、UVB(波長320〜400nm)の光を90%以上透過することが確認される。また、波長290nm〜320nmの範囲内においても、厚みが5mm以下であれば90%以上の透過性を有しており、厚みが5mmを超えて10mm以下であっても、ほぼ90%以上の透過性を示すことが確認される。
【0081】
<最小紅斑量(MED:Minimal Erythema Dose)の測定>
同一の被検者D(照射対象者50)に対し、弾性部材11を介して紫外線L1を照射した場合と、弾性部材11のない場合で紫外線L1を照射した場合とで比較を行った。弾性部材11は、50mm×50mm×5mmの大きさとし、照射面積は□10mmとした。照射時には、皮膚外表面51の上面にアルミホイルを3重に巻き、照射領域に対応する部分に穴を開けてマスクとした。
【0082】
光源31のピーク波長を308nmとし、照射量を150,300,600mJ/cm
2と変化させて、皮膚外表面51の照射領域が初めて赤色化する照射量を特定することで、最小紅斑量(MED)を測定した。この結果を
図13の写真に示す。
【0083】
図13に示す結果によれば、弾性部材11なしで紫外線L1を照射した場合と比較して、弾性部材11を設けて紫外線L1を照射した場合には、MEDが低下していることが確認される。これにより、弾性部材11を介して紫外線L1を照射することで、皮膚(内部)に対する紫外線の到達量(放射照度)が増加していることが確認された。
【0084】
[別実施形態]
以下、紫外線照射装置1の別実施形態につき説明する。
【0085】
〈1〉上述した実施形態では、装置本体3が光源31を内蔵する場合について説明したが、光源31は装置本体3の外側に配置されていてもよい。例えば、
図14に示すように、装置本体3とは別の光源装置61を備え、光源装置61に内蔵された光源31から出射された紫外線が、導光部材62を介して装置本体3に導かれる構成とすることもできる。導光部材62としては、例えば光ファイバなどを利用することができる。
【0086】
〈2〉
図4に図示された例では、基板15が装置本体3に内蔵されている態様で図示されているが、
図15に示されるように、基板15が装置本体3から取り外し可能な態様であっても構わない。
【0087】
〈3〉上述した装置本体3、弾性部材11、及びアタッチメント13の各形状はあくまで一例であり、本発明の目的を奏する範囲内において種々の変形が可能である。