【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト/イメージング技術を用いたインフラ状態モニタリングシステム開発/位相解析手法を用いたインフラ構造物用画像計測システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(本発明の計測原理)
本発明による変位計測方法は、先ず、測定対象物の撮像をおこなう。次に、測定対象物の撮影画像から1次元のライン画像のデータを抽出し、抽出したライン画像のデータに1次元フーリエ変換(FFT)を適用する。そして、測定対象物の横幅もしくは縦幅に対応する空間周波数成分に対して1次元逆フーリエ変換(IFFT)を適用して位相解析を行なう。測定対象物の変位前後の位相差から測定対象物の変位量を算出する。本発明による変位計測方法は、測定対象物に備わった2点の間の距離が既知であれば、適用できる。
【0020】
そして、測定対象物の縦幅もしくは横幅の実際の寸法が既知であれば、この変位計測方法を用いることで、2次元格子などのターゲットを測定対象物に貼り付けずに、対象物の変位計測を行なうことができる。既知の寸法の対象となるものがなければ、縦幅もしくは横幅もしくは間隔の寸法が既知のターゲットを測定対象物に設けてもよい。本発明に係る撮影画像の処理はパソコンなどの演算装置を用いることができる。
【0021】
本発明による測定方法を実施する計測装置は、構造物の有する平行2線を撮像して計測するので、1台の計測装置で計測が容易になるとともに計測コストが低減される。
本発明によれば、構造物の輪郭線のうち2本の平行な線に着目し、2本の線の間隔の実際の寸法が既知であれば、1次元フーリエ変換と1次元逆フーリエ変換とを行なうことにより得られる位相差から、前記構造物の変位量を高精度に計測することができる。
以下、本発明による変位計測方法を橋梁の橋桁に適用した例を説明する。
【0022】
A1.橋梁(橋りょう)の画像の撮影
図1に橋桁の中央付近を撮影する様子を模式的に示す。橋梁の橋桁は両端部が橋脚に支持されている。
図2には車両通過によって橋桁に荷重が掛かったときの様子である。車両の荷重によって橋桁が変形し、橋桁中央付近では、上下方向(鉛直方向)に変位が発生する。橋桁の変形前の状態において、カメラで撮影した撮像画像を
図3に示す。橋桁の変形後にカメラで撮影した撮像画像を
図4に示す。
図4において2つの円は車両の車輪を表している。また、
図4で示すカメラの撮影範囲内では、変位は画像内で上下方向に発生する。破線は橋桁に荷重がかかっていない時の橋桁の上側と下側の位置を示している。車両の移動にともなって、時間とともに橋桁の変位は変化する。カメラで時系列に複数枚の画像を撮影することで、橋桁の変位の時系列データを得る。
【0023】
A2.ライン画像の抽出
図5の左図は、撮影画像からライン画像を抜き出す様子を示す図である。この図に示す様に、ひとつのi座標を決め、そのラインを各フレーム(各時刻)の撮像画像から抜き出して(抽出して)、抽出したライン画像を横に並べることで、
図5の右図に示すように横軸が時間軸方向の画像を生成する。ライン画像の抽出方向は測定対象物の測定したい変位方向と同じ向きとすることが望ましい。このライン画像の抽出方向を変位解析方向と呼ぶ。
【0024】
A3.マスクされた画像の生成
ここで、フーリエ変換により不必要な高次の周波数成分の発生を抑制する方法を説明する。着目する領域以外の輝度の急変部がないように、着目する領域の境界部の輝度を元にして周辺の輝度を補間して、連続的(滑らか)に輝度が変化する画像を作り、それを用いて測定対象物の変位計測を行なう方法を説明する。
【0025】
図6に、抽出したライン画像から、マスクすることによって背景部分などを除去したマスクされた画像を生成する方法を模式的に示す。
図6(a)は元となるライン画像の輝度分布を示している。この輝度分布のうち、S
1AとS
2Aの間の領域を抽出範囲とする。S
1AS
2A間以外の部分にマスクを掛けることで、背景部分の画像による変位計測の誤差を低減させる。
図6(b)に示すように、S
1AとS
2Aの輝度を用いて、徐々に輝度を変化させながら補間する。このとき、画像の端部S
1BとS
2Bの輝度がほぼ同一の値になるようにする。
図6(b)の場合は、直線S
1BS
1Aの傾きと、直線S
2AS
2Bの傾きが同一になるように補間をした結果を模式的に示している。すなわち、ライン画像の両端部の輝度変化の傾きが同一になるようにする。このようにすることで、フーリエ変換を行なう際に急変部による高次の周波数成分が発生しにくいようにすることができる。
【0026】
また、ライン画像のサイズを拡張する方法を
図6(c)に示す。ライン画像のサイズを拡張することで、抽出範囲の周波数成分が高い周波数となる。例えば、ライン画像のサイズをn倍に拡張すると、抽出範囲の周波数成分はn倍の位置に現れることになる。これによって、フーリエ変換を行なったときに抽出範囲の成分を取り出しやすくすることができる。その場合に抽出範囲以外の領域も上記の手法で補間して輝度を決めることができる。それを模式的に示したものが
図6(c)である。この場合は、
図6(b)と同様に、直線S
1BS
1Aの傾きと、直線S
2AS
2Bの傾きが同一になるように補間をした結果である。
【0027】
A4.位相差と変位の対応関係
(橋梁の橋桁の変形前の位相値)
橋梁の橋桁の変形前に撮像した撮像画像を基準画像とする。基準画像から抽出したライン画像に対してフーリエ変換を行なうことで、空間周波数ごとの成分に分離することができる。
図7に変形前後のライン画像から変位を求める方法の流れを示す。変形前に撮影された画像から抽出されたライン画像に対して、前述の方法(A3.)でマスクされた画像を作成する。次に、フーリエ変換を行なうことで、空間周波数ごとにスペクトルの実部と虚部の値が得られる。この実部と虚部の値から、空間周波数ごとのパワーと位相値を求めることができる。
【0028】
得られたパワーを用いて、あらかじめ決めておいた閾値よりもパワーから得られた特徴値(パワーそのものや、パワーの平方根で得られる振幅など、パワーを元にして算出される値)の値が大きくなる空間周波数を選択することで、撮像画像の特徴を表している空間周波数成分を用いて位相を求めることができるようになる。
【0029】
なお、空間周波数の低い成分は、ライン画像に含まれる測定対象が持つパターンにはない成分が主なものとなっている場合があり、そのような場合は測定対象物の移動量の算出に含めない方が妥当である。
【0030】
空間周波数が高い成分は、ほとんどが撮像画像に含まれるノイズ成分が主なものとなっていることがあり、この場合も測定対象物の変位量(移動量)(変位)の算出に含めない方が妥当である。これらの使用する領域は、測定対象物によって異なるために、それぞれの場合に応じて適した領域を設定する。さらに、パワーから得られた特徴値が小さい成分は、はじめから重み付き平均に含まない方が良い場合もある。そのため、あらかじめ決めた閾値よりパワーから得られた特徴値の値が小さい場合は、重み付け平均に含めないという方法もある。
【0031】
(橋梁の橋桁の変形後の位相値)
橋梁の橋桁の変形後のライン画像についても、これと同じ手順によって、空間周波数ごとの位相を求めることができる。このとき、変位の解析に用いる空間周波数は、変形前のライン画像から得られたものを使うこともできる。
【0032】
(橋梁の橋桁の変形前後の位相差)
次に、測定対象物である橋桁の変形前と変形後の画像からそれぞれ得られた空間周波数ごとの位相の差を計算することで、空間周波数ごとの位相差を得ることができる。
【0033】
それぞれの空間周波数おいて、位相差と撮像画像内での移動量の対応は次のようになる。空間周波数kの位相差をΔθ
k,全画素数をWとすると、空間周波数kの成分を使って得られる画像内での移動量Δj
kは、次の数1式のように求めることができる。
【0035】
ここで、Δj
kの単位は画素であり、実数値である。この数1式を用いて、空間周波数ごとの移動量(変位)を算出する。ここで求めた移動量Δj
kに、画像の1画素あたりの橋梁の橋桁の長手方向と直交する方向の長さを掛け算することで、変位量を求めることができる。
【0036】
この画像の1画素あたりの長さの求め方は、撮像画像内に写っている橋梁の橋桁の特徴点間の画素数を読み取る方法や、間隔が既知の2線(橋梁の橋桁では例えば、橋桁の上側と下側の端部の線)の画像に対してフーリエ変換を行なうことで2線の間隔を表す1次調和波の位相の傾きを求め、そこから算出する方法などがある。(下記のA8参照)
【0037】
ここまでの空間周波数ごとに位相や位相差、変位を求める際に、空間周波数ごとのパワーから得られた特徴値を用いて、変位の解析に用いる空間周波数を選択することにより、計算量を減らし、また算出する変位の精度を高くすることができる。
【0038】
また、空間周波数ごとのパワーから得られた特徴値から算出された重みの値を用いて、空間周波数ごとの変位の重み付け平均を算出することで、精度よく変位を算出することができる。
【0039】
A5.パワーから得られた特徴値を使って、複数の空間周波数で得られた変位を平均化する手法
次に、複数の空間周波数で得られた画像内での移動量を平均化する手法について説明する。平均化することで、撮像画像内での変位(移動量)を精度よく求めることができるようになる。
【0040】
測定対象物の変形後の画像をフーリエ変換して得られる実部と虚部から空間周波数ごとのパワーを得ることができる。パワーは実部の2乗と虚部の2乗の和の平方根として算出でき、振幅はその平方根として算出できる。このパワーから算出される特徴値(例えば振幅)を重みとして、周波数成分ごとの重み付き平均を求めることで、移動量を精度よく求めることができる。このとき、パワーを基に算出した値を使ってもよい。例えば、パワーの2乗を使って重み付け平均をする方法もある。
【0041】
また、空間周波数のうち、移動量を算出するために使用する空間周波数の領域をあらかじめ設定することもできる。空間周波数の低い成分は、ライン画像に含まれる測定対象物が持つパターンにはない成分が主なものとなっている場合がある。そのような場合は移動量の算出に含めない方が妥当である。空間周波数が高い成分は、ほとんどが画像に含まれるノイズ成分が主なものとなっていることがあり、この場合も移動量の算出に含めない方が妥当である。これらの使用する領域は測定対象物によって異なるために、それぞれの場合に応じて適した領域を設定する。
【0042】
さらに、パワーから得られた特徴値が小さい成分は、はじめから重み付き平均に含まない方が良い場合もある。そのため、あらかじめ決めたしきい値よりパワーから得られた特徴値の値が小さい場合は、重み付け平均に含めないという方法もある。
【0043】
A6.複数ラインの平均化によって精度を向上させる手法
次に、複数の空間周波数で得られた撮像画像内での画素の移動量を平均化する手法について説明する。複数の空間周波数で得られた撮像画像内での画素の移動量を平均化することで、撮像画像内での画素の移動量を精度よく求めることができるようになる。平行な直線状のパターンで構成されている物体が、
図8に示すように、その直線と垂直方向に変位する場合は、近傍のどのラインを抽出しても、ほとんど同一の変位が得られるはずである。そのため、
図8に示すように、注目点の近傍の多数のラインを抽出してそこから変位を求めて、その平均値を求めることで、精度よく測定対象物の変位を計測することができるようになる。
【0044】
A7.基準となる画像の取得方法
上記A4.で説明したように、基準画像は、測定対象物に荷重がかかっていない状態で撮影された撮影画像とする。例えば橋梁の橋桁の場合であれば、車両が載っていない状態で撮影された画像である。また、荷重がかかっていない状態で複数毎の画像を撮影して、その平均画像を作成することでノイズの低減された基準画像を作成することもできる。
【0045】
気象条件や日照条件の変化によって、計測時と明るさが大きく異なる画像となる場合がある。また、設置するカメラの位置や向きが、温度変化によるカメラ内部の熱変形や固定部材の熱変形などによって、時間の経過とともに変化する場合もあるため、計測時に近い時刻に基準画像を取得することが好ましい。
【0046】
測定対象物が鉄道橋の場合は、列車が通過していないときに行なえばよいので容易に基準画像の更新は可能である。車両が頻繁に通過する道路橋や一般の構造物の場合は、車両が通っていないときや変位がないときに基準画像を撮影する。
【0047】
それが困難な場合は、
図9に示すように、まず仮の基準となる画像を決め、また、複数回の撮影された画像から、時刻t
0’の撮影画像を仮の基準R’として、その時の撮影画像を使って変位(移動量)を複数個求める。次に、得られた複数の移動量の中の平均値を求め、その平均値に最も近い変位が得られる時刻t
0の画像を新しい基準画像Rとする。
【0048】
または、ある時刻からある時刻の間に撮影された複数の撮影画像を平均化した画像を基準画像とする方法もある。
【0049】
また、常に片方向に変位するような構造物の場合は、仮の基準画像を使って求めた移動量が最も小さくなる画像を基準画像として用いる方法もある。平均値ではなく中央値などを使うこともできる。
【0050】
このように、仮の基準画像を撮影し、その画像を使って求めた複数の移動量をもとにして、最も適した画像を選択し、それを基準画像とするという手順で基準画像を決める方法を用いてもよい。
【0051】
A8.撮影画面内の測定対象物の移動量から測定対象物の変位を求める方法
まず、撮影画像内での1画素あたりの測定対象物の長さを求める方法を示す。ここでは、測定対象物である構造物の既知の長さを利用する。測定対象物の既知の長さとしては、設計値を使うこと、もしくは実測した値を用いることができる。
【0052】
測定対象物の変位計測時と同じ位置に設置されたカメラで撮影された画像から、
図10に示すように、構造物の中で間隔が既知の2本の平行線の部分を抽出し、それに対してフーリエ変換を行ない、1次調和波の成分を抽出してフーリエ逆変換を行なうことで、位相分布を求める。その位相分布の画像内での変化率(傾き)から、2本の平行線の間隔を画像内での画素数として求めることができる。このとき、2本の平行線の間隔は、実数値として得られる。2本の平行線の間隔は上述したように既知であるから、これによって、撮影画像の1画素あたりの測定対象物の長さを求めることができる。
【0053】
図10では、2本線のピークの位置をj
0とj
1としている。フーリエ変換を行ない、1次調和波を選択した後、フーリエ逆変換と位相解析を行なうことで、j
0とj
1の位置に近いj
0’とj
1’の位置で最大値を持つ波形の位相値が得られることになる。このため、j
0’とj
1’の位相差が2πとなる。ただし、j
0’とj
1’の位置は一般には実数値となるため、直接この値を得ることができない。そこで、j
0とj
1の間の位相の傾きDを求め、その位相の傾きからj
0’とj
1’の差を求めると、
j
1’−j
0’=2π/D
となる。これより、2線間の間隔をPとすると、1画素あたりの長さpは,次のように表すことができる。
【0054】
p=P/(j
1’−j
0’)=P×D/2π
この際,2本のライン画像は,カメラで撮影された画像から前述のマスクされた画像の生成(A3.参照)の手法を用いて得ることができる。
1画素あたりの長さを求めた後は、前述(A4.の数1式を参照)の画像内での移動量Δj
kに掛け算をすることで、測定対象物である橋桁の実際の変位量を求めることができる。
【0055】
A9.鉄道橋における変位量の測定
以下、実際の鉄道橋(橋桁部分)を測定対象物として用い、鉄道橋を列車が通過したときの前記測定対象物の変位量を測定する。
【0056】
図11に示すように、まず、測定対象物を撮影する。測定対象物の幅が撮像した画像内において何画素で写っているかを調べる。
図21に平行縦線2本間の画素数を算出する工程を示す。この平行縦線2本の間隔が測定対象物の幅に対応する。高精度に変位量を算出するには平行縦線2本間の画素数も高精度に算出する必要があるので、前記平行縦線2本間の画素数は、フーリエ変換・フーリエ逆変換によって得られる位相の傾きから整数値ではなく、実数値として算出する。
【0057】
鉄道橋を列車が通過する際の橋梁の中央付近を連続的に撮影して時系列の画像を取得する。画像サイズは、横512画素,縦2048画素である。撮影時間間隔は1/30秒で、撮影枚数は900枚である。撮影した時系列画像の特定した縦1ラインを抜き出して、時間の経過とともに右向きに並べて合成する。
図12は、撮影画像の1フレーム目とマスクされて得られた画像、その左端の1ラインを抜き出して、時系列に並べて合成した画像をそれぞれ示す。
【0058】
図12(a)に、時系列に撮影された画像を示す。ここから橋梁の橋桁部分が写っている範囲に限定した抽出領域を決め、残りをマスク領域として前述の方法でマスクする。
図12(b)にマスクされた画像を示す。ここから点線部で示す縦1ラインの断面の時系列ライン画像を抽出する。i=0の場合の例を
図12(c)に示す。さらに、ここから点線部のライン画像を抽出し、前述(A8.参照)の変位解析手法により変位を算出する。
【0059】
図13に,i=0,t=0の場合におけるマスクされた撮影画像の縦1ラインの輝度分布を示す。これに対してフーリエ変換を行なうことで得られたスペクトルから求めたパワー振幅スペクトルの分布を
図14に示す。空間周波数15から47の32個に対して、その実部と虚部から位相値を求め、パワー振幅を重みとして重み付け平均をした結果、変位量が得られる。そのようにしてフレームごとに変位を求めた結果を
図15に示す。また、同様の計算をiを0から199までの200ラインに対して行ない、得られた変位の平均値を求めることで得られた結果を
図16に示す。
図15と比較して、ノイズが格段に小さくなっていることが確認できる。
【0060】
次に、あらかじめ求めておいた1画素あたりの長さ3.83mmを掛けることで、
図17に示す変位の時間変化を得ることができる。なお、この結果は別の計測装置で測定した計測結果と、0.5mm程度の差で一致している。この結果は、撮影開始直後に列車が橋梁にさしかかり、約5秒間で通過した様子を示している。
なお、この変位解析の場合は、列車通過後の700フレーム目から200フレームの平均化した画像を基準画像として用いた。
【0061】
なお、撮影画像の処理はパソコンなどの演算装置を用いることができる。撮影画像の画像データをインターネットなどの情報通信回線を通じて送信し、画像データの受信場所で変位量の算出処理を行なってもよい。
【0062】
本発明について補足して説明する。上述した本発明の説明では、構造物に備わった、間隔が既知の平行な2直線に着目し、構造物を撮像した画像から、前記2直線を横切る1ラインの画像を抽出し、この1ラインの画像にフーリエ変換を行ない、スペクトル分布を求め、既知の間隔に対応するスペクトルの周波数でフーリエ逆変換を行なった。2直線と1ラインの交点があればよく、つまり、構造物に間隔が既知の2点が少なくとも特定できれば本発明を適用することができる。
【0063】
<補足説明>
以下、本発明の計測方法について、基礎的な実験例を説明する。
(縦線2本を用いた変位計測精度の確認実験について)
縦線2本を用いて本発明に係る変位計測方法の計測精度を確認する実験を行なった。
図18に実験の風景を示す。ターゲットとして
図19に示すような平行な縦線2本が描かれた移動ステージを用いる。
図20は縦線2本が描かれたターゲットを載置した移動ステージを示す図である。平行な縦線2線間の幅は12.02mmである。使用したカメラはIDS社製のuEyeカメラ(型番UI―5480CP−M−GL)である。移動ステージとカメラとの距離は2mとした。撮影条件においては、画像サイズを512*512画素とし、露光時間を15msとした。
また、各実験において移動ステージの変位前にフレームレート10fpsでターゲットの縦線2本を100枚撮影し、100枚の画像で平均化した位相分布を基準とした。
【0064】
はじめに、
図21(a)に示す測定対象物を撮影した撮影画像に対してi方向に1ラインずつ1次元フーリエ変換を行ない、
図21(b)に示すパワースペクトル分布画像を得る。ここで、パワースペクトルを0〜10で表している。
【0065】
次に、撮影画像内における縦線2本間の幅に対応する空間周波数とその近傍の空間周波数のパワースペクトルを抽出し、1次元逆フーリエ変換を行なう。縦線2本間の幅に対応する空間周波数とその近傍の空間周波数という特定の空間周波数成分のみに1次元逆フーリエ変換を行なうことで、
図21(c)に示す位相分布画像を得ることができる。
【0066】
そして、
図21(c)に示される位相分布画像の中央付近(
図21(a)に示される、測定対象物の平行2線に対応する部分)におけるi方向の位相の傾きaを求めることで、数2式からi方向における縦線2本間の幅が写っている画素数Piを算出することができる。
【0068】
次に、測定対象物の変位前後の撮影画像から位相差分布を算出する方法を説明する。
まず、
図21(a)に示す変位前の画像に対してi方向に1ラインずつ1次元フーリエ変換を行ない、
図21(b)に示すパワースペクトル分布画像を得る。
【0069】
そして、縦線2本間に対応する空間周波数近傍における1つの空間周波数成分のみに対して1次元逆フーリエ変換を行なう。そうすることで、抽出した空間周波数成分(Ti)のみに対応する
図22(a)に示す位相分布画像が得られる。
【0070】
また、測定対象物の変位後の撮影画像に対しても、測定対象物の変形前の撮影画像と同様の処理(一次元フーリエ変換と一次元逆フーリエ変換)を行なう。得られた変位前後の位相分布画像から、
図22(b)に示す位相差分布画像を作成する。
【0071】
i方向において1次元逆フーリエ変換の際に抽出したパワースペクトルに対応する空間周波数をTi,測定対象物の変位前後の位相分布画像から得られた位相差をΔφi,撮影画像の画素数をWi,測定対象物の実際の幅(縦線2線間の実際の幅)をPxとすると、x方向の変位量dxは数3式によって求めることができる。
【0073】
以上の手順によって、ターゲットを用いずに測定対象物の変位量を計測することができる。
【0074】
本発明による変位計測方法は、測定対象物の幅に最も対応する空間周波数成分の近傍の空間周波数成分を用いても、測定対象物の変位量を算出することができる。そのため、測定対象物の幅に最も対応する空間周波数成分、およびその近傍の空間周波数成分からなる、複数の空間周波数成分においてそれぞれ変位量を算出し、それらの変位量の平均をとることによって、高精度に変位量を求めることができる。
【0075】
(平行縦線2本の間の画素数の算出について)
縦線間の画素数を算出した結果について説明する。まず、
図23(a)に示す撮影画像に対してi方向に1ラインずつ1次元フーリエ変換を行ない、
図23(b)に示すパワースペクトル分布画像を作成した。
図23(c)に示す
図23(a)のLineL上の輝度データから、1次元フーリエ変換によって
図23(d)に示す
図23(b)のLineL上のパワースペクトル分布が得られている。今回の実験では、縦線2線間の幅に対応する空間周波数は16の近傍であった。
【0076】
次に、縦線間の画素数の算出を行なった。その際、より高精度に画素数を算出するために、空間周波数16の近傍の空間周波数も抽出して位相解析を行なった。今回は、空間周波数16に存在する最大パワースペクトルの1/2以上のパワースペクトルをもつ空間周波数を選択した。
【0077】
このような条件で空間周波数を選択した理由は、縦線2本間に対応する空間周波数は空間周波数16だけとは限らず、その近傍の空間周波数にも縦線2本間に相当する成分が存在する可能性があるためである。最大パワースペクトルの最大値の半分以上のパワースペクトルを持つ空間周波数も用いれば、高精度に縦線2本間の画素数を高精度に算出することができると考えたためである。
【0078】
今回の実験では、空間周波数11から20までの10の空間周波数成分を用いて1次元逆フーリエ変換を行ない、
図24(a)に示す位相分布画像を作成した。
【0079】
図24(a)のLineL上の位相分布を
図24(b)に示す。縦線2線間の画素数の算出には、
図23(a)に示す生の撮影画像において2本の縦線が写っていた中央付近の位相の傾きを用いて算出した。算出した縦線2線間の画素数分布画像を
図24(c)に示す。
図24(c)のAreaA(300×300画素)における2線間の画素数の平均は32.27画素であった。実際に画素を数えることで調べた2線間の画素数は32画素であったので、本手法によって妥当な値をして算出されたと考えられる。
【0080】
図24(c)のLineL1上の画素数分布を
図25(a)に示し、
図24(c)のLineL2上の画素分布を
図25(b)に示す。本発明に係る手法では、画像の横もしくは縦方向1ラインずつ解析を行なっており、1ラインにつき得られる画素数の値は1つとなる。そのため、今回の実験では、横方向に抜き出した画素数分布は均一の値となっており、縦方向に抜き出した画素数分布はばらつきを生じる。これは、後述するように、変位分布につういても同様な結果となる。
【0081】
(解析に用いる空間周波数の違いによる計測精度の変化について)
解析に用いる空間周波数の違いによって計測精度がどのように変化するかを検証するために、縦線2本が描かれた移動ステージを、3.00mm変位させた状態で、フレームレート10fpsで10秒間計測した場合における空間周波数成分ごとの変位算出結果と計測精度の評価を行なった。
【0082】
今回の変位量算出に用いた空間周波数の範囲は、空間周波数が8から24とした。これは、
図23(d)のパワースペクトル分布において、縦線2本間の画素数に対応する空間周波数16が含まれるパワースペクトル分布の谷から谷までの範囲である。変位計測結果は、
図26に示される変位分布画像の中心1画素のみを用いた。
【0083】
パワースペクトル分布と10秒間の計測における平均誤差の関係を
図27に示し、パワースペクトル分布と10秒間の計測における標準偏差の関係を
図27(b)に示す。
図27(a)において、空間周波数11から23の範囲における平均誤差は、0.1mm以下となっており、空間周波数による大きな差は見られないが、それ以外の空間周波数では、大きな誤差が生じた。一方で、
図27(b)では、空間周波数12から21の範囲における標準偏差は0.1mm以下となっており、それ以外の空間周波数では標準偏差に大きく変化が生じ、ばらつきが大きくなった。
【0084】
この結果から、縦線2本間に対応する空間周波数16の近傍ではなくパワースペクトルが小さい空間周波数を用いて算出した変位量は、空間周波数16の近傍でパワースペクトルが大きい空間周波数を用いて算出した変位量よりも精度が悪くなることが確認できた。
【0085】
以上の結果から、変位量を算出するときは、測定対象物の幅が写っている画素数に対応する空間周波数を選択して位相解析を行なうのがよい。
【0086】
以降の実験では、測定対象物の幅が写っている撮像画像の画素数に対応する空間周波数の近傍で、最大パワースペクトルの1/2以上のパワースペクトルをもつ空間周波数を選択して解析を行なった。また、複数の方法で変位量の精度を向上させた結果について述べる。
【0087】
(変位量を高精度に算出する方法)
ここでは、より高精度に測定対象物の変位量を算出するにはどのような処理を行なえばよいかを説明する。縦線2本が描かれた移動ステージ(
図19参照)を3.00mmまで0.10mmずつ変位させながら計測を行なった。
【0088】
まず、2つの方法を用いて高精度に変位量を算出するよう試みた。
1つは、縦線2線間の幅に対応する空間周波数の近傍において、最大パワースペクトルの1/2以上のパワースペクトルをもつ空間周波数で変位計算を行ない、加算平均を行なう方法である。
【0089】
もう1つは、上記の範囲でそれぞれ変位計算を行ない、各空間周波数のパワースペクトルを重みとして重み付け平均を行なう方法である。
今回は、空間周波数11から20までの10の空間周波数成分を用いて変位計算を行なった。
【0090】
抜き出したデータは、
図28に示す変位分布画像の中央1画素である。変位計測結果を
図29(a)に示し、計測誤差を
図29(b)に示す。また、縦線2線間の画素数に対応する空間周波数16のみを用いた場合、複数の空間周波数で解析して加算平均した場合、および、複数の空間周波数で解析して重み付け平均した場合の計測誤差の平均と標準偏差を表1に示す。
【0092】
加算平均した場合と重み付け平均した場合の計測精度は、空間周波数16のみを用いた場合の計測精度より向上していることが確認できた。また、今回の実験では、加算平均と重み付け平均とでは計測精度に大きな差が見られなかった。ただ、小さなパワースペクトルから算出した変位量の影響を小さくできる重み付け平均の方が確実に高精度に変位量を算出できると考えられる。
【0093】
複数の値の空間周波数で測定対象物の変位量を算出し、加算平均や、重み付け平均を行なうことで、計測精度を向上させる方法について示したが、この方法では空間周波数毎に1次元フーリエ変換、1次元逆フーリエ変換を行なうので、変位算出に時間が掛かる。
【0094】
そこで、複数の画素のデータを用いて平均化することで効率よくかつ高精度に変位量を算出できるか検証した。
【0095】
以下に、1画素にみではなく300×300画素の領域で平均化を行なった場合の結果について述べる。抜き出した位置は
図28に示す変位分布画像の白枠部分である。
【0096】
1画素のデータのみを用いた時と同様に、空間周波数11から20までの10の空間周波数成分を用いて変位算出を行なった。空間周波数16のみを用いた場合、複数の空間周波数で解析して加算平均した場合、複数の空間周波数で解析して重み付け平均した場合の変位計測結果を
図30(a)に示し、計測誤差を
図30(b)に示す。また、それぞれの場合における計測誤差の平均と標準偏差を表2に示す。
【0098】
以上の結果から、1つの空間周波数のみで算出した変位量でも、複数の画素を用いて平均化することで、計測精度を向上することができる。
【0099】
複数の画素で平均化できる場合であれば、最大のパワースペクトルをもつ空間周波数のみを用いて変位量を算出し、複数の画素で平均化する方が効率的に精度を高められると考えられる。ただし、測定対象物によっては、複数画素で平均化できない、もしくは平均化しても十分な精度が得られない場合があることも想定されるので、場合によっては複数の空間周波数で変位量を算出して加算平均や重み付け平均を行なう方法も用いる必要がある。