特許第6871563号(P6871563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6871563植栽用装置、植栽用パネルユニット、および植栽方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871563
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】植栽用装置、植栽用パネルユニット、および植栽方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20210426BHJP
   A01G 9/02 20180101ALI20210426BHJP
   A01G 13/00 20060101ALI20210426BHJP
   A01G 23/04 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   A01G7/00 602D
   A01G9/02 103U
   A01G9/02 103G
   A01G13/00 E
   A01G23/04 503G
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-229061(P2016-229061)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2018-82671(P2018-82671A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221775
【氏名又は名称】東邦レオ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 洋一
(72)【発明者】
【氏名】菅野 泰次郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 智彦
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 実開平3−129049(JP,U)
【文献】 特開2010−4837(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3010238(JP,U)
【文献】 特開平11−137103(JP,A)
【文献】 実開昭61−160642(JP,U)
【文献】 特開2005−13026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 9/02
A01G 13/00
A01G 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木の根を、地表面からの深さ方向に直交する側方から囲むように、周方向に並んで配置される複数のパネルユニットと、
前記複数のパネルユニットを組み合わせることにより、前記複数のパネルユニットにより包囲される包囲領域とを備え、
前記複数のパネルユニットのそれぞれは、前記深さ方向に平行に配置される板状のパネル部材と、
前記根に対する忌避性を示す忌避部であって、前記パネル部材の前記根側を向くパネル内側面の全域を覆うように設けられた忌避部とを含み、
前記包囲領域は、前記周方向に並ぶ複数の前記パネル内側面に近接する前記根が、前記深さ方向の上側ではなく下側に伸長するように、前記周方向に並ぶ複数の前記忌避部が、前記根を前記側方のみから囲むことにより形成される包囲領域を含む、植栽用装置。
【請求項2】
前記複数のパネルユニットは、曲板状の前記パネル部材を有するパネルユニットと、
平板状の前記パネル部材を有するパネルユニットとを含む、請求項1に記載の植栽用装置。
【請求項3】
前記パネル部材は、両面を貫く貫通孔を含み、
前記忌避部は、前記貫通孔に面する透水性の部分を含む、請求項1または2に記載の植栽用装置。
【請求項4】
前記複数のパネルユニットは、隣り合って配置される第1のパネルユニットおよび第2のパネルユニットを含み、
前記第1のパネルユニットの前記パネル部材は、前記第2のパネルユニットの前記パネル部材に面する凹部を含み、
前記第2のパネルユニットの前記パネル部材は、前記凹部と連結可能な凸部を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の植栽用装置。
【請求項5】
前記複数のパネルユニットのそれぞれは、前記パネル部材に接続される蓋部材をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の植栽用装置。
【請求項6】
前記パネル部材の材質は、レジンコンクリートを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の植栽用装置。
【請求項7】
樹木の根を囲むように並んで配置される複数のパネルユニットを備え、
前記複数のパネルユニットのそれぞれは、板状のパネル部材と、
前記パネル部材の片面に設けられ、前記根に対する忌避性を示す忌避部と、
前記パネル部材に接続される蓋部材と、
前記パネル部材に対する前記蓋部材の傾きを調節する調節部をさらに含み、
前記調節部は、前記蓋部材の前記パネル部材側の端部に設けられた半球状の凸面部と、
前記パネル部材の地表側端面に設けられた、前記凸面部を支持する半球状の凹面部と、
前記凹面部に対して前記凸面部を接触させた状態で前記パネル部材に対して前記蓋部材を固定する締結部材とを含む、植栽用装置。
【請求項8】
樹木の根を囲むように並んで配置される複数のパネルユニットを備え、
前記複数のパネルユニットのそれぞれは、板状のパネル部材と、
前記パネル部材の片面に設けられ、前記根に対する忌避性を示す忌避部と、
前記パネル部材に接続される蓋部材とをさらに含み、
前記蓋部材は、本体部と、
前記本体部よりも前記樹木側に位置し、前記本体部と着脱可能な着脱可能部と、
前記着脱可能部を前記本体部に対して可動にする可動部をさらに含み、
前記可動部は、前記本体部に対する前記着脱可能部の傾きを調節可能なヒンジを含む、植栽用装置。
【請求項9】
植栽用装置を用いた植栽方法であって、
前記植栽用装置は、複数のパネルユニットを備え、前記複数のパネルユニットのそれぞれは、板状のパネル部材と、樹木の根に対する忌避性を示す忌避部であって、前記パネル部材の前記根側を向くパネル内側面の全域を覆うように設けられた忌避部とを含み、
当該植栽方法は、前記根を、地表面からの深さ方向に直交する側方から囲むように前記複数のパネルユニットを周方向に並べて配置することと、
前記複数のパネルユニットを組み合わせることにより、前記複数のパネルユニットにより包囲される包囲領域を形成することとを含み、
前記包囲領域を形成することは、前記周方向に並ぶ複数の前記パネル内側面に近接する前記根が、前記深さ方向の上側ではなく下側に伸長するように、前記周方向に並ぶ複数の前記忌避部により、前記根を前記側方のみから囲むことを含む、植栽方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽用装置、植栽用パネルユニット、および植栽方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、管状体を公道や公道周辺または公共施設の敷地内などの地中に埋設し、その管状体内に土を投入して樹木を植え込む樹木の設置方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−183845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、樹木の根上がりの抑制に有効な植栽用装置、植栽用パネルユニット、および植栽方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、樹木の根を囲むように並んで配置される複数のパネルユニットを備え、複数のパネルユニットのそれぞれは、板状のパネル部材と、パネル部材の片面に設けられ、根に対する忌避性を示す忌避部とを含む植栽用装置である。
【0006】
この植栽用装置によれば、樹木の根を囲むように複数のパネルユニットを並べて配置することで、根を忌避部により容易に包囲できる。忌避部は、パネル部材の片面に設けられている。このため、パネル部材を地中に配置することで、地中における忌避部の位置ずれがパネル部材によって抑制される。また、複数のパネルユニットの組み合わせを変更することで、忌避部により包囲される領域のサイズを自在に調節できる。このため、根に対する忌避部の配置が根上がりの抑制に適した状態となるように、忌避部の配置を容易に調節できる。したがって、樹木の根上がりの抑制に有効である。
【0007】
複数のパネルユニットは、曲板状のパネル部材を有するパネルユニット(以下、「曲板状パネルユニット」という。)と、平板状のパネル部材を有するパネルユニット(以下、「平板状パネルユニット」という。)とを含むことが好ましい。曲板状パネルユニット同士の間に配置する平板状パネルユニットの数を変更することで、複数のパネルユニットにより包囲される領域の形状およびサイズを自在に調節できる。したがって、パネルユニットの種類を少なく抑えつつ、忌避部の配置を容易に調節できる。
【0008】
パネル部材は、両面を貫く貫通孔を含み、忌避部は、貫通孔に面する透水性の部分を含むことが好ましい。パネル部材の貫通孔および忌避部の透水性の部分により、パネルユニットを通して根に水分を供給する経路が形成される。したがって、パネルユニットが樹木の生長に及ぼす影響を低減することができる。
【0009】
複数のパネルユニットは、隣り合って配置される第1のパネルユニットおよび第2のパネルユニットを含み、第1のパネルユニットのパネル部材は、第2のパネルユニットのパネル部材に面する凹部を含み、第2のパネルユニットのパネル部材は、凹部と連結可能な凸部を含むことが好ましい。凹部と凸部との連結により、パネルユニット同士の隙間を介して根がはみ出そうとした場合であっても、伸長する根が凸部に当たることで、当該隙間を介しての根の伸長を抑制できる。したがって、根を忌避部に囲まれる領域内に留めやすい。また、凹部と凸部との連結により、隣り合うパネルユニット同士を所望の状態に配置しやすい。したがって、根上がりの抑制にさらに適した状態となるように、根に対する忌避部の配置を調節できる。
【0010】
複数のパネルユニットのそれぞれは、パネル部材に接続される蓋部材をさらに含むことが好ましい。蓋部材により、樹木の幹とパネル部材との間における地表面のぬかるみが抑制される。蓋部材は、パネルユニットごとに設けられているので、複数のパネルユニットが包囲する領域の形状およびサイズが変わるのに応じて、蓋部材により覆われる領域の形状およびサイズも適切に調節される。したがって、樹木の周囲における通行の利便性を容易に高めることができる。
【0011】
パネルユニットは、パネル部材に対する蓋部材の傾きを調節する調節部をさらに含むことが好ましい。植栽による地表面の隆起を含めた地表面の勾配に応じて、蓋部材の傾きを柔軟に調節できる。
【0012】
蓋部材は、本体部と、本体部よりも樹木側に位置し、本体部と着脱可能な着脱可能部とを含むことが好ましい。着脱可能部を本体部に対して着脱することで、蓋部材により包囲される領域のサイズを容易に調節できる。たとえば、樹木が生長しその幹が太くなるのに応じて着脱可能部を取り外し、蓋部材により囲まれる領域を大きくすることができる。
【0013】
蓋部材は、着脱可能部を本体部に対して可動にする可動部をさらに含むことが好ましい。樹木の生長に応じて地表面が経時的に隆起した場合であっても、着脱可能部を柔軟に適応させることができる。
【0014】
着脱可能部は、本体部よりも柔軟性の高い部分を含むことが好ましい。蓋部材による樹木への圧迫を緩和することができる。
【0015】
パネル部材の材質は、レジンコンクリートを含むことが好ましい。パネル部材をセメントコンクリートにより構成する場合に比較して、地中へのアルカリ成分の溶出が抑制されるので、土壌への影響をより一層低減することができる。
【0016】
本発明の他の態様は、樹木の根を囲むための板状のパネル部材と、パネル部材の片面に設けられ、根に対する忌避性を示す忌避部とを含む植栽用パネルユニットである。
【0017】
本発明のさらに他の態様は、植栽用装置を用いた植栽方法である。植栽用装置は、複数のパネルユニットを備え、複数のパネルユニットのそれぞれは、板状のパネル部材と、パネル部材の片面に設けられ、樹木の根に対する忌避性を示す忌避部とを含む。当該植栽方法は、根を囲むように複数のパネルユニットを並べて配置することを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、樹木の根上がりの抑制に有効な植栽用装置、植栽用パネルユニット、および植栽方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係る植栽用装置の平面図である。
図2】植栽用装置を分解して示す斜視図である。
図3】パネルユニットの他の組み合わせ例を示す平面図である。
図4図1中のIV−IV線に沿う断面図である。
図5】植栽用装置を用いた植栽方法を示す模式図である。
図6】第2の実施形態に係る植栽用装置の断面図である。
図7】第2の実施形態に係る植栽用装置の平面図である。
図8】第3の実施形態に係る植栽用装置の断面図である。
図9】パネル部材の凹部および凸部の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、第1の実施形態に係る植栽用装置1の平面図であり、図2は、植栽用装置1を分解して示す斜視図である。植栽用装置1は、樹木Wの根WRが生長して地表面ESを隆起させる現象(以下、「根上がり」という。)を抑制するための装置である。
【0021】
植栽用装置1は、樹木Wの根WRを囲むように並んで配置される複数のパネルユニット(植栽用パネルユニット)2を備える。複数のパネルユニット2は、根WRと共に地中に埋設される。複数のパネルユニット2および根WRが埋設された部分の表面(地表面)ESは、必ずしも水平面でなくてよく、斜面であってもよいし、水平面に対して垂直な面であってもよい。以下では、便宜上、地表面ESが水平面であるものとして説明する。なお、地中において根WRを取り囲む複数のパネルユニット2を一セットとした場合に、植栽用装置1は、深さ方向(地表面ESに直交する方向)100に並ぶ複数段の上記セットを備えていてもよい。
【0022】
本明細書において、「根WRを囲む」とは、根WRが所定の範囲外に出られないように囲むことを意味する。この要件を満たす限りにおいて、複数のパネルユニット2は、地中において互いに間隔を隔てて並んでいてもよいし、互いに接続されて一体の管状体を構成していてもよい。本例の複数のパネルユニット2は、互いに接続されて一体の管状体90を構成している。
【0023】
複数のパネルユニット2のそれぞれは、板状のパネル部材10と、パネル部材10の片面11に設けられ、根WRに対する忌避性を示す忌避部20とを含む。パネル部材10は、樹木Wの根WRを囲むための板状体であり、根WR側を向いた面(パネル内側面)11と、根WRの逆側を向いた面(パネル外側面)12と、パネル内側面11およびパネル外側面12を繋ぐ外周面(パネル外周面)13とを含む。パネル外周面13は、地表面ES側の面(地表側端面)16と、地表側端面16に連なり、隣り合うパネル部材10に面する面(接続面)14,15とを含む。
【0024】
パネル部材10はレジンコンクリート製である。このため、パネル部材10をセメントコンクリートにより構成する場合に比較して、地中へのアルカリ成分の溶出が抑制されるので、土壌への影響をより確実に低減することができる。なお、パネル部材10の材質は、レジンコンクリートに限定されず、セメントコンクリート、ポリプロピレン、ポリエチレン、鉄、アルミニウムなどであってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
【0025】
忌避部20は、パネル部材10の片面(パネル内側面11)に設けられ、樹木Wの根WRに対する忌避性を有する。根WRに対する忌避性とは、根WRを遠ざける性質を意味する。本例の忌避部20は、パネル内側面11の全域を覆うように層状に設けられている。忌避部20の厚さは、パネル部材10の厚さに比較して薄い。
【0026】
忌避部20は、根WRに対する忌避性を示す忌避剤を含有する。忌避剤の具体例としては、クロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルが挙げられる。忌避剤を含有する忌避部20は、たとえば、忌避剤を含有するスラリー状の材質をパネル内側面11上に塗布し、硬化させることにより形成可能である。また、忌避部20は、忌避剤を含浸させたシート状の素材をパネル内側面11上に貼り付けることによっても形成可能である。
【0027】
この植栽用装置1によれば、根WRを囲むように複数のパネルユニット2を並べて配置することで、根WRを忌避部20により容易に包囲できる。忌避部20は、パネル部材10のパネル内側面11に設けられている。このため、パネル部材10を地中に配置することで、地中における忌避部20の位置ずれや変形がパネル部材10によって抑制される。また、複数のパネルユニット2の組み合わせを変更することで、忌避部20により包囲される領域のサイズを自在に調節できる。このため、根WRに対する忌避部20の配置が根上がりの抑制に適した状態となるように、忌避部20の配置を容易に調節できる。したがって、樹木Wの根上がりの抑制に有効である。なお、根上がりの抑制に適した状態とは、たとえば、忌避部20が、根WRの成長や生長を妨げない程度の間隔を保ちつつ、根WRに対する忌避性が有効に作用する程度に根WRに近接して配置される状態である。
【0028】
さらに、この植栽用装置1によれば、複数のパネルユニット2が、互いに接続されて一体の管状体90を構成している。このため、パネルユニット2同士の間を根WRが通り難くなるので、忌避部20に囲まれる領域内に根WRが留まりやすい。したがって、樹木Wの根上がりの抑制にさらに有効な植栽用装置1を提供できる。
【0029】
さらに、この植栽用装置1によれば、忌避部20が、パネル内側面11の全域を覆うように層状に設けられている。このため、忌避部20が広い範囲で根WRに面する。したがって、樹木Wの根上がりをより確実に抑制できる。
【0030】
さらに、この植栽用装置1によれば、忌避部20がパネル部材10のパネル内側面11に設けられており、忌避部20はパネル部材10により支持される。このため、パネル部材10により、地中における忌避部20の配置の安定性が保たれる。したがって、忌避部20の厚さを、パネル部材10の厚さに比較して薄くしやすく、根上がりに対する有効性を確保しながら、忌避部20用の材料を節約できる。
【0031】
各パネルユニット2のパネル部材10は、一方の接続面14に設けられた凹部18と、他方の接続面15に設けられた凸部19とを含む。凹部18および凸部19は、パネル部材10の深さ方向100に沿い、接続面14および15のそれぞれの全長に亘って延びている。パネル部材10の凸部19は、隣り合う他のパネル部材10の凹部18に連結可能であり、パネル部材10の凹部18は、隣り合う他のパネル部材10の凸部19に連結可能である。
【0032】
この植栽用装置1によれば、複数のパネルユニット2が根WRを囲むように並んだ状態で、隣り合う2つのパネルユニット2の間では、一方のパネルユニット(第1のパネルユニット)2の接続面14と他方のパネルユニット(第2のパネルユニット)2の接続面15とが対向し、第2のパネルユニット2の凸部19が第1のパネルユニット2の凹部18に嵌まり込む。このため、隣り合うパネル部材10の継ぎ目の微小な隙間を介して根WRが外側にはみ出そうとした場合であっても、伸長する根WRの先端を凸部19に当てることができる。したがって、当該隙間を介しての根WRの伸長を防止することで、根WRを忌避部20に囲まれる領域内に留めることができる。このため、樹木Wの根上がりを一層抑制できる。また、凹部18と凸部19との嵌合により、隣り合うパネルユニット2同士を所望の状態に配置しやすい。したがって、根上がりの抑制にさらに適した状態となるように、根WRに対する忌避部20の配置をより正確に調節できる。
【0033】
さらに、この植栽用装置1によれば、凹部18および凸部19が、深さ方向100に沿ってパネル部材10の全長に亘って延びている。このため、パネルユニット2同士の隙間の全域に凸部19を配置できる。したがって、伸長する根WRの先端を凸部19に確実に当てることで、当該隙間を介しての根WRの伸長を防止し、根WRを忌避部20に囲まれる領域内に確実に留めることができる。また、凹部18および凸部19が、パネル部材10の全長に亘って嵌合することにより、パネルユニット2同士の位置関係をさらに安定化できる。
【0034】
複数のパネルユニット2は、曲がった板状のパネル部材10を有するパネルユニット(曲板状パネルユニット)2Aと、平板状のパネル部材10を有するパネルユニット(平板状パネルユニット)2Bとを含む。
【0035】
曲板状パネルユニット2Aのパネル部材10は、上方から見て(地表面ESに直交する方向の上側から見て)緩やかに湾曲したパネル内側面11を含み、平板状パネルユニット2Bのパネル部材10は、上方から見て平坦なパネル内側面11を含む。
【0036】
本例では、4つの曲板状パネルユニット2Aと、曲板状パネルユニット2A同士の間のうちの2箇所にそれぞれ配置される2つの平板状パネルユニット2Bとが、根WRを囲むように並んで配置されることにより、上方から見て長方形状の包囲領域(パネルユニット2により囲まれる領域)が形成される。この配置は一例に過ぎず、曲板状パネルユニット2A同士の間に配置する平板状パネルユニット2Bの数を変更することで、包囲領域の形状およびサイズを自在に調節できる。したがって、パネルユニット2の種類を少なく抑えつつ、忌避部20の配置を容易に調節できる。図3に示すように、平板状パネルユニット2Bを用いずに曲板状パネルユニット2Aのみによって根WRを囲むことも可能である。この場合、図1に比較して狭い、上方から見て正方形状の包囲領域が形成される。
【0037】
曲板状パネルユニット2Aのパネル部材10は、湾曲したものに限定されない。たとえば、曲板状パネルユニット2Aのパネル部材10は、上方から見て角をなすように折れ曲がっていてもよい。本例のように、曲板状パネルユニット2Aが緩やかに湾曲した構成によれば、折れ曲がった構成に比較して、パネル内側面11に忌避部20を設けやすい。また、根WRと忌避部20との間隔のばらつき(根WRを囲む周方向における位置のばらつき)を小さくし、根上がりの抑制効果をさらに高めやすい。
【0038】
図4は、パネルユニット2の断面図である。パネル部材10はその両面(パネル内側面11およびパネル外側面12)を貫く複数の貫通孔17を含む。複数の貫通孔17は、所定ピッチで規則的に点在していてもよく(図2参照)、不規則に点在していてもよい。
【0039】
忌避部20は、貫通孔17に面する透水性の部分(透水部分)21を含む。透水部分21は、透水性に加え通気性を有していてもよい。たとえば、透水部分21は、貫通孔17に面する小孔を有していてもよい。透水部分21は、透水性の布状体に忌避剤を含浸させることで形成可能である。
【0040】
透水部分21は、複数の貫通孔17にそれぞれ面する複数箇所に点在していてもよいし、忌避部20の全域を占めていてもよい。すなわち、忌避部20の全域が透水性を有していてもよい。この場合、忌避部20の全域の均質化により、忌避部20の形成工程を簡素化できる。
【0041】
パネル部材10の貫通孔17および忌避部20の透水部分21により、パネルユニット2を通して根WRに水分を供給する経路が形成される。したがって、パネルユニット2が樹木Wの生長に及ぼす影響を低減することができる。
【0042】
図5は、植栽用装置1を用いた植栽方法を示す模式図である。まず、植栽対象の樹木Wの根WRを取り囲むのに必要な複数のパネルユニット2を準備する。次に、図5の(a)に示すように、根WRを埋めるための穴Hを掘削する。次に、図5の(b)に示すように、穴H内に樹木Wの根WRを設置する。次に、忌避部20を内側にして根WRを囲むように複数のパネルユニット2を並べて穴H内に配置する。この際に、隣り合うパネルユニット2同士を接続して一体の管状体90を構成する。次に、図5の(c)に示すように、穴Hを埋め戻す。以上で植栽用装置1の設置が完了する。
【0043】
なお、複数のパネルユニット2を穴H内に並べて設置した後に、複数のパネルユニット2により取り囲まれる領域内に根WRを設置してもよい。すなわち、根WRを囲むように複数のパネルユニット2を並べて配置することは、複数のパネルユニット2を設置した後に、複数のパネルユニット2により取り囲まれる領域内に根WRを設置することを含む。
【0044】
図6は、第2の実施形態に係る植栽用装置3の断面図である。図7は、植栽用装置3の平面図である。植栽用装置3のパネルユニット4は、パネル部材10と、パネル部材10の片面11に設けられる忌避部20と、パネル部材10に接続される蓋部材30と、パネル部材10に対する蓋部材30の傾きを調節する調節部(傾き調節部)40とを含む。なお、以降の実施形態において、第1の実施形態と共通の構成については共通の符号を付して説明を省略する。
【0045】
蓋部材30は、パネル部材10の地表側端面16に傾き調節部40を介して接続された本体部31と、本体部31よりも幹WS側に位置し、本体部31の幹WS側の端部31aに着脱可能に接続された着脱可能部32とを含む。着脱可能部32は、本体部31よりも柔軟性の高い部分を含む。たとえば、着脱可能部32は、本体部31に比較して柔軟な材料により構成されている。具体的には、本体部31が鋳鉄などの金属材料により構成され、着脱可能部32が樹脂材料により構成されている。
【0046】
蓋部材30の傾き調節部40は、パネル部材10に対する蓋部材30の傾きを調節する機能を有する限りどのように構成されていてもよい。一例として、傾き調節部40は、蓋部材30のパネル部材10側の端部30eに設けられた半球状の凸面部41と、パネル部材10の地表側端面16に設けられた、半球状の凸面部41を支持する半球状の凹面部42と、凹面部42に対して凸面部41を接触させた状態でパネル部材10に対して蓋部材30を固定する締結部材(ボルト)43とを含む。
【0047】
この植栽用装置3によれば、パネルユニット4が蓋部材30を含むため、樹木Wの幹WSとパネル部材10との間における地表面ESのぬかるみが抑制される。蓋部材30は、パネルユニット4ごとに設けられているので、複数のパネルユニット4が包囲する領域の形状およびサイズが変わるのに応じて、蓋部材30により覆われる領域の形状およびサイズも適切に調節される。したがって、樹木Wの周囲における通行の利便性を容易に高めることができる。また、パネル部材10および忌避部20によって樹木Wの根上がりが抑制されているので、隣り合う蓋部材30同士の高低差の経時的な増大が抑制される。したがって、樹木Wの周囲における通行の利便性を長期的に維持しやすい。
【0048】
さらに、この植栽用装置3によれば、パネルユニット4が蓋部材30の傾きを調節する傾き調節部40を含むため、傾き調節部40の凹面部42に対して凸面部41を回転させることにより、パネル部材10に対する蓋部材30の傾きを調節できる。したがって、植栽による地表面ESの隆起を含めた地表面ESの勾配に応じて、蓋部材30の傾きを柔軟に調節できる。
【0049】
さらに、この植栽用装置3によれば、蓋部材30が、本体部31と、本体部31よりも樹木W側に位置し、本体部31と着脱可能な着脱可能部32とを含むため、着脱可能部32を本体部31に対して着脱することで、蓋部材30により包囲される領域のサイズを容易に調節できる。たとえば、樹木Wが生長しその幹WSが太くなるのに応じて着脱可能部32を取り外し、蓋部材30により囲まれる領域を大きくすることができる。
【0050】
さらに、この植栽用装置3によれば、蓋部材30の着脱可能部32が、本体部31よりも柔軟性の高い部分を含むため、着脱可能部32の柔軟性により、蓋部材30による樹木Wへの圧迫を緩和することができる。
【0051】
図8は、第3の実施形態に係る植栽用装置5の断面図である。植栽用装置5のパネルユニット6は、パネル部材10と、パネル部材10の片面11に設けられる忌避部20と、パネル部材10に接続される蓋部材30とを含む。
【0052】
蓋部材30は、パネル部材10の地表側端面16に固定された本体部31と、本体部31の幹WS側の端部31aに着脱可能に接続された着脱可能部32と、着脱可能部32を本体部31に対して可動にする可動部50とを含む。着脱可能部32は、本体部31の幹WS側の端部31aに可動部50を介して着脱自在に接続される。
【0053】
可動部50は、着脱可能部32を本体部31に対して可動にする限り、どのように構成されていてもよい。たとえば、可動部50は、地表面ESの隆起に応じて、本体部31に対する着脱可能部32の傾きを調節可能なヒンジ51を含む。
【0054】
この植栽用装置5によれば、蓋部材30が可動部50を含むため、地表面ESの隆起に応じて本体部31に対する着脱可能部32の傾きを調節できる。したがって、樹木Wの生長などに応じて地表面ESが経時的に隆起した場合であっても、蓋部材30を柔軟に適応させることができる。
【0055】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。たとえば、各パネルユニット2が必ずしも凹部18および凸部19の両方を有している必要はない。たとえば、図9に示すように、接続面14,15の両方に凹部18を有するパネルユニット(第1のパネルユニット)2Aと、接続面14,15の両方に凸部19を有するパネルユニット(第2のパネルユニット)2Bとが交互に並んでいてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,3,5…植栽用装置
2,4,6…パネルユニット(植栽用パネルユニット)
2A…曲板状パネルユニット、2B…平板状パネルユニット
10…パネル部材、11…パネル部材の片面(パネル内側面)、12…パネル外側面、13…外周面(パネル外周面)、14,15…接続面、16…地表側端面、17…貫通孔、18…凹部、19…凸部
20…忌避部、21…透水性の部分(透水部分)
30…蓋部材、31…本体部、32…着脱可能部
40…調節部(傾き調節部)、41…凸面部、42…凹面部、43…締結部材(ボルト)
50…可動部、51…ヒンジ
90…管状体、100…深さ方向(地表面に直交する方向)
W…樹木、WR…根、WS…幹
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9