(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記噴霧室の下方側から前記気流乾燥室の下方側に指向するスライダガスを噴出するスライダガス噴出口を有するものであることを特徴とする請求項1または2記載のスプレードライヤー装置。
前記スライダガス噴出口は、前記床板に設けられ、前記熱ガス吹込室に受け入れた前記熱ガスを、前記スライダガスとして噴出するものであることを特徴とする請求項3に記載のスプレードライヤー装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたスプレードライヤー装置では、噴霧ノズルから噴霧された被処理物(被乾燥液滴)が降下しながら蒸発が進み、この被処理物が缶体の底に到達するまでに目的の水分値の乾燥粉体まで乾燥させる必要がある。このため、目的の水分値に達するまでに時間がかかる素材を被処理物にする場合には、缶体の底に到達するまでの時間、すなわち乾燥時間を十分に確保できる降下高さが必要になる。この結果、装置高さが高くなり、装置の大型化によるコストアップが生じてしまう。また、装置の大型化にともなう建屋の大型化や洗浄面積の増大、さらには、作業者の動線の延長といった問題が生じてしまう。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、装置高さを高くすることなく乾燥時間を十分に確保できるスプレードライヤー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決する本発明のスプレードライヤー装置は、内側に、天井面、側面および底面を有する缶体と、
前記缶体内の下部領域を仕切り、前記底面との間に熱ガス吹込室を形成する床板と、
前記床板よりも所定高さ上方位置まで前記天井面から垂下し、前記缶体内を噴霧室と気流乾燥室とに仕切る仕切板と、
前記側面における、前記噴霧室を画定する部分であって、前記仕切板と相対する部分が外側に凸な円弧面と、
前記仕切板の下端と前記床板との間で前記噴霧室よりも下方と前記気流乾燥室よりも下方が導通する導通開口と、
前記天井面側から前記噴霧室内に被処理物を噴霧する噴霧ノズルと、
前記噴霧ノズルから噴霧される前記被処理物とともに前記噴霧室内に熱風を供給する熱風供給部材と、
前記熱ガス吹込室に熱ガスを受け入れる熱ガス受入口と、
前記気流乾燥室に連通する排出口とを備え、
前記床板は、前記熱ガス吹込室に受け入れた前記熱ガスを該気流乾燥室に向けて噴出する噴出口を有するものであ
り、
前記仕切板は、下端の幅方向中央部分に切欠を有するものであることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記円弧面は、水平断面視で、円弧状の面であってもよいし、楕円の円弧状の面であってもよい。また、前記側面は、全周が円弧状の面からなり、水平断面視で円形あるいは楕円形の面を有するものであってもよい。すなわち、前記側面は、円筒状の胴体の内周面を有するものであってもよい。
【0010】
本発明のスプレードライヤー装置によれば、前記噴霧室内に前記熱風とともに噴霧された前記被処理物は、該噴霧室の下方側から前記導通開口を通過して前記気流乾燥室の下方側に流入し、前記噴出口から噴出する前記熱ガスによって上昇して該気流乾燥室内を上昇していく。すなわち、前記被処理物は、前記熱風とともに前記噴霧室内を降下した後反転し、前記気流乾燥室内を上昇する。これにより、前記気流乾燥室内においても前記被処理物の乾燥が進み、装置高さを高くせずに前記被処理物の乾燥時間を延長することができる。特に、前記熱風とともに前記噴霧室内を降下した前記被処理物のうち水分値が高い大径の粒子などは、降下する際に掛かる重力により前記噴霧室や前記気流乾燥室の下方側の領域に留まりやすく、乾燥が進むと該気流乾燥室に向けて上昇する。これにより、前記被処理物のうち、大径の粒子など乾燥に時間がかかるものの乾燥時間を選択的に延長することができる。これらにより、装置高さを高くすることなく乾燥時間を十分に確保することができる。
また、前記導通開口を通過する前記被処理物が前記幅方向の中央に集まりやすくなり該被処理物の前記側面への付着を抑えることができる。また、前記噴霧室内における気流の流れを整え、前記側面への被乾燥液滴の付着を抑制することができる。
【0011】
また、本発明のスプレードライヤー装置において、前記導通開口は、前記気流乾燥室の水平断面積に対して0.5倍以上2倍以下の開口面積を有することが好ましい。
【0012】
前記導通開口の開口面積が前記気流乾燥室の水平断面積に対して0.5倍未満であると、前記被処理物を含んだ熱風が該導通開口を通過する際の流速が上がりすぎてしまい該被処理物が前記側面等に付着しやすくなる。前記側面等に付着した前記被処理物は未乾燥粉体の場合があり、ある程度成長すると剥離落下して乾燥粉体に混入してしまうという不具合がある。
【0013】
一方、前記導通開口の開口面積が前記気流乾燥室の水平断面積に対して2倍を越えると、前記被処理物を含んだ熱風が該導通開口を通過する際の流速が下がりすぎてしまい、該被処理物が該導通開口を通過しにくくなり滞留粉体が多量に発生する虞がある。
【0014】
さらに、本発明のスプレードライヤー装置において、前記噴霧室の下方側から前記気流乾燥室の下方側に指向するスライダガスを噴出するスライダガス噴出口を有するものであることが好ましい。
【0015】
前記スライダガス噴出口を有する態様を採用すれば、前記噴霧室を降下してきた前記被処理物が該スライダガス噴出口から噴出したスライダガスによって前記導通開口に向けて送られ、該導通開口をスムーズに通過させることができる。
【0016】
また、本発明のスプレードライヤー装置において、前記スライダガス噴出口は、前記床板に設けられ、前記熱ガス吹込室に受け入れた前記熱ガスを、前記スライダガスとして噴出するものであってもよい。
【0017】
前記スライダガス噴出口から前記熱ガスを前記スライダガスとして噴出する態様を採用すれば、該熱ガスの有効活用が図れ、装置構成も単純にすることができる。
【0018】
さらに、本発明のスプレードライヤー装置において、前記側面の上部側部分は、
前記仕切板に相対する前記円弧面と、
前記円弧面とは反対側で前記仕切板に相対する第1平面と、
前記円弧面の一端側と前記第1平面の一端側を結ぶ第2平面と、
前記円弧面の他端側と前記第1平面の他端側を結ぶ第3平面とからなり、
前記気流乾燥室は、3つの前記平面および前記仕切板によって水平断面視が矩形状に画定される空間であり、
前記噴霧室は、前記円弧面によって画定される水平断面視が甲丸状の空間を含む空間であることが好ましい。
【0019】
前記噴霧室を水平断面視が甲丸状の空間を含む空間とすれば、該噴霧室を画定する側面に角部が少なくなり、前記被処理物が溜まってしまう、いわゆる粉溜まりを抑制することができる。一方、前記気流乾燥室を水平断面視が矩形状に画定される空間とすることで、該気流乾燥室の最適上昇流速となる断面積の設計がしやすくなる。これにより、前記被処理物を含む気流が前記気流乾燥室内を上昇する流速が上がりすぎてしまうことを抑え、該気流乾燥室における乾燥時間の短縮を防ぐことができる。
【0020】
また、本発明のスプレードライヤー装置において、前記側面は、前記天井面に連なる上部側面部と、前記底面に連なる下部側面部と、該上部側面部と該下部側面部とを連結する中間側面部とを有するものであり、
前記中間側面部は、前記導通開口に相対し下方に向かうに従い該導通開口に近づく方向に傾斜した傾斜面を有するものである態様も好ましい態様の一つである。
【0021】
ここで、前記傾斜面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。
【0022】
前記傾斜面を有する態様とすれば、前記熱風とともに前記噴霧室内を降下した前記被処理物は、該傾斜面に案内され前記導通開口に向けて移動しやすくなる。
【0025】
また、本発明のスプレードライヤー装置において、前記床板は、前記噴出口を複数有するものであり、
前記複数の噴出口は、前記側面との距離に応じて、開口面積または前記熱ガスの噴出速度が異なるものであってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、装置高さを高くすることなく乾燥時間を十分に確保できるスプレードライヤー装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態であるスプレードライヤー装置は、被処理物を缶体内に噴霧するとともに熱風を供給することで被処理物を乾燥させ、乾燥粉体を得るものである。被処理物は特に限定されるものではなく、例えば、調味料、粉乳、天然物抽出エキス、香料、粉末油脂、ビタミン、色素、化成品または無機物等の乾燥粉体を得る装置として好適に用いることができる。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に相当するスプレードライヤー装置1の一例を示す正面図である。
図2は、
図1に示すスプレードライヤー装置1の左側面図であり、
図3は、
図1に示すスプレードライヤー装置1の右側面図である。また、
図4(a)は、
図1に示すスプレードライヤー装置1の平面図であり、
図4(b)は、
図1に示すスプレードライヤー装置1の底面図である。なお、
図1に示すスプレードライヤー装置1の背面図は、後述するノッカを除き
図1の正面図と、例えば
図2の左側面を中心にして左右対称につき省略する。
【0030】
図1〜
図4に示すように、スプレードライヤー装置1は、缶体2と、熱風室構成体3と、熱ガス受入口41と、排出口42とを備えている。
図1では、缶体2の右側に熱ガス受入口41が設けられ、缶体2の左側に排出口42が設けられている。なお、熱ガス受入口41を設ける位置は
図1に示す缶体2の右側に限定されず、例えば、排出口42と同じく
図1に示す缶体2の左側に設けてもよい。以下、排出口42とは反対側(本実施形態では熱ガス受入口41側)を一方側と称し、排出口42側を他方側と称して説明する。また、本実施形態のスプレードライヤー装置1は、
図1における左右方向の外形寸法が、
図1における紙面に対して直交する方向(すなわち
図2または
図3から見られる方向)の外形寸法よりも長いものである。以下の説明では、
図1における左右方向を長手方向と称し、
図1における紙面に対して直交する方向を幅方向と称して説明する。
【0031】
熱風室構成体3は、後述する熱風室91(
図10参照)を構成するものであり、熱風受入口31と挿通筒32が設けられている。熱風受入口31は、一方側に開口し、後述する熱風供給部材53(
図10参照)から缶体2内に供給する熱風を熱風室91内に受け入れる口である。
【0032】
缶体2の外面には、鉛直方向と水平方向に延在したリブ26が複数設けられている。これらのリブ26は、缶体2の補強用、あるいは缶体2が分割構造である場合のボルト締結用のフランジである。また、缶体2の外面の所定箇所には、ノッカ24が複数設けられている。ノッカ24は、缶体2に振動を与え、缶体2の内面に付着した被処理物を缶体2の内面から剥離させるものである。さらに、缶体2の外面における中間よりもやや高い位置に、ブラケット25が水平方向に間隔をあけて複数設けられている。本実施形態のスプレードライヤー装置1は、建屋の1階から2階にかけて設置される大型のものであり、これらブラケット25は、缶体2を2階の床に固定するためのベースプレートに相当する。
【0033】
次いで、
図5〜
図9を用いて缶体2の構成を詳細に説明する。
【0034】
図5は、
図1に示すスプレードライヤー装置1の缶体2を示す正面図である。すなわち、
図1に示す缶体2は、スプレードライヤー装置用缶体(スプレードライヤー装置用チャンバー、乾燥装置用缶体または乾燥装置用チャンバーなどとも称することがある)である。この
図5では、図面を簡略化するため、前述した、リブ26、ノッカ24およびブラケット25は省略している。
図6は、
図5に示す缶体2の左側面図であり、
図7は、
図5に示す缶体2の右側面図である。
図8(a)は、
図5に示す缶体2の平面図であり、
図8(b)は、
図5に示す缶体2の底面図である。また、
図9は、
図5に示す缶体2を、一方側の左斜め上方から見た斜視図である。なお、
図5に示す缶体2の背面図は、
図5の正面図と、例えば
図6の左側面を中心にして左右対称につき省略する。
【0035】
図5〜
図9に示すように、缶体2は、缶体本体2Aと、この缶体本体2Aの下側に配置された熱ガス吹込室構成体2Bとを有し、缶体本体2Aの下端部分に設けられたフランジ2Aaと、熱ガス吹込室構成体2Bの上端部分に設けられたフランジ2Baとを接合した状態で固定されている。熱ガス吹込室構成体2Bは、長手方向に延在した樋状の部材であり、詳しくは後述するように、熱ガス受入口41から熱ガスを受け入れる熱ガス吹込室95(
図10参照)を床板8(
図10参照)とともに画定するものである。
【0036】
缶体本体2Aは、天井部21と、この天井部21の下側に位置する胴体部22とを有している。
図5、
図8(a)および
図9に示すように、天井部21は、上下方向に貫通する缶体入口211が長手方向の中間よりもやや一方側に設けられている。
図8(a)では、後述する底面63(
図10参照)が缶体入口211から見えている。なお、スプレードライヤー装置1を組み立てた状態では、缶体入口211から床板8(
図10参照)が見えるが、
図8(a)では床板8は省略している。また、一方側には、お椀をカットし逆さにしたような形状の鏡板212が設けられている。
【0037】
胴体部22は、上部胴体221、中間胴体222および下部胴体223を有している。
図5に示すように、上部胴体221、中間胴体222および下部胴体223は、長手方向の長さが同じに設定されている。
図6、
図7および
図9に示すように、上部胴体221と下部胴体223は鉛直方向に延在する部分であるが、上部胴体221の幅方向の長さに比べて下部胴体223の幅方向の長さが大幅に小さく形成されている。上部胴体221と下部胴体223との間に位置する中間胴体222は、下方に向かうに従い幅方向の長さが徐々に小さくなる部分であり、上部胴体221と下部胴体223とを連結している。
【0038】
上部胴体221の一方側に位置する一方側部分221aは、平面視半円状に形成されている。
図7に示すように、中間胴体222の一方側には、幅方向の中央に位置する三角形状の三角形状部222aと、三角形状部222aの幅方向両側にそれぞれ設けられた一対の曲面部222bとが設けられている。三角形状部222aは、下部胴体223まで連続し、下部胴体223の一部を構成している。一対の曲面部222bそれぞれは、外側に膨らんだ曲面状の部分である。なお、胴体部22は、上部胴体221の一方側部分221aと、中間胴体222の一対の曲面部222b以外にも曲面状の部分が設けられており、平面同士が例えば直角に交わろうとする位置であれば(いわゆるコーナーと呼ばれる部分)、その部分には曲面状の板部材を介して平面が繋がる構造を採用しており、採用している部分については
図5から
図9において曲面部224cとして示した。つまりこれら以外の胴体部22は平面状の板材で構成されている。
【0039】
また、熱ガス吹込室構成体2Bにおいても同様に、上述した様なコーナー部には曲面状の板部材を介して平面が繋がる構造を採用しており、採用している部分については
図5から
図7及び
図9において曲面部224dとして示した。
【0040】
次いで、
図10および
図11を用いてスプレードライヤー装置1の内部構造を説明する。
【0041】
図10は、
図2に示すスプレードライヤー装置1のA−A線断面図である。
図11(a)は、
図1に示すスプレードライヤー装置1のB−B線断面図であり、
図11(b)は、
図1に示すスプレードライヤー装置1のC−C線切断部端面図である。
図10および
図11では、スプレードライヤー装置1の内部構造を模式的に示すとともに、図面を簡略化するため、前述した、リブ26、ノッカ24およびブラケット25は省略している。また、
図10の胴体部22では、溶接線あるいは折れ曲がり位置の線などは点線で示している。
【0042】
図10に示すように、熱風室構成体3の壁部や天井によって熱風室91が画定されており、これら熱風室構成体3の壁部や天井には断熱材が配置されている。熱風室91は略円柱状の空間であり、その中心部分には、上下方向に延在した挿通筒32が配置されている。この挿通筒32は、被処理物(被乾燥溶液)を供給する液配管52が挿通され、その下端部分は、缶体入口211から缶体2内に入り込んでいる。液配管52の一端側は挿通筒32から缶体2内に突出し、その先端部分に、圧力噴霧ノズル51が設けられている。液配管52の他端側は、被乾燥溶液が収容された不図示の液タンクに接続されている。液タンク内の被乾燥溶液は、不図示のポンプ等によって液配管52内を圧力噴霧ノズル51に向けて送られ、圧力噴霧ノズル51から缶体2内に噴霧される。なお、挿通筒32には、液配管52中の被乾燥溶液が固結しないように冷却用の空気が供給される。
【0043】
図10ではクロスハッチングを施して示すように、缶体2の缶体入口211には、中心部分に挿通筒32が貫通した状態で熱風供給部材53が設けられている。熱風供給部材53は、詳しくは後述する高温熱風F1を噴霧室92に整流して導入するための、例えば多孔板から成る部材である。
【0044】
熱風室構成体3の熱風受入口31には不図示のダクトが接続し、このダクトからはバーナ等で加熱された、例えば200℃前後の高温熱風F1が供給され、熱風受入口31から熱風室91内に受け入れられる。熱風室91内に受け入れられた熱風は、
図10では太い下向きの矢印で示すように熱風供給部材53から缶体2内に供給される。
【0045】
図10および
図11(a)に示すように、缶体2は、内側に、天井面61、側面62および底面63を有している。天井面61は、天井部21の内面であり、底面63は、樋状の熱ガス吹込室構成体2Bの底を構成する面である。また、側面62は、胴体部22の内面と、熱ガス吹込室構成体2Bの壁部の内面とによって構成されている。
【0046】
図11(a)に示すように、側面62は、天井面61に連なる上部側面部621と、底面63に連なる下部側面部623と、上部側面部621と下部側面部623とを連結する中間側面部622とを有している。
【0047】
図10および
図11(a)に示すように、缶体2には、缶体本体2Aのフランジ2Aaと、熱ガス吹込室構成体2Bのフランジ2Baとによって挟まれた状態で床板8が配置されている。この床板8は、缶体2内の下部領域を仕切り、底面63との間に熱ガス吹込室95を形成する板材である。
【0048】
缶体2には、床板8よりも所定高さ上方位置まで天井面61から垂下し、缶体2内を仕切る仕切板7が設けられている。本実施形態の仕切板7は、その下端71が、上部側面部621の下端と略同じ高さ、あるいは上部側面部621の下端よりもやや上方に位置している。この仕切板7によって、缶体2内における、仕切板7の下端71よりも上側の空間が仕切られている。これにより、仕切板7の一方側に噴霧室92が形成され、仕切板7の他方側に気流乾燥室93が形成されている。また、缶体2内における、仕切板7の下端71の高さ位置から床板8までの空間が反転室94になる。この反転室94は、噴霧室92の下方になる噴霧室側下方領域94aと、気流乾燥室93の下方になる気流乾燥室側下方領域94bとが、仕切板7の下端71と床板8との間に形成された導通開口96によって導通した空間である。なお、
図10では、導通開口96の範囲を直線の両矢印で示し、
図11(a)では、導通開口96の範囲を網掛けで示している。
【0049】
図11(b)に示すように、上部側面部621は、仕切板7に相対する円弧面6211と、円弧面6211とは反対側で仕切板7に相対する第1平面6212と、円弧面6211の一端側と第1平面6212の一端側を結ぶ第2平面6213と、円弧面6211の他端側と第1平面6212の他端側を結ぶ第3平面6214とからなる面である。これにより、気流乾燥室93は、3つの平面6212,6213,6214および仕切板7によって水平断面視が矩形状に画定される空間となり、噴霧室92は、円弧面6211によって画定される水平断面視が甲丸状の空間となる。
【0050】
また、本実施形態では、
図11(a)に網掛けして示す導通開口96の開口面積は、
図11(b)に示す気流乾燥室93の水平断面積に対して約1.4倍に設定されている。この導通開口96の開口面積は、仕切板7の下端71の高さ位置を変更することで調整することができる。なお、
図11(a)では、導通開口96の開口面積が気流乾燥室93の水平断面積に対して2倍になる、仕切板7の下端72の高さ位置と、導通開口96の開口面積が気流乾燥室93の水平断面積に対して0.5倍になる、仕切板7の下端73の高さ位置を二点鎖線で示している。
【0051】
図10に示すように、熱ガス吹込室95には、熱ガス受入口41から熱ガスF2が供給される。この熱ガスF2は、熱風室91に供給される高温熱風F1よりも温度が低く、缶体2の内部温度をいくらか上回る程度に電気ヒータ等によって加熱され熱風ファン等によって供給される熱風である。
【0052】
床板8は、気流乾燥室93の下方位置に、熱ガス吹込室95に供給された熱ガスを気流乾燥室93に向けて上方に噴出する複数の噴出口81を有している。本実施形態では、複数の噴出口81それぞれの開口面積を異ならせており、
図11(a)において床板8の一部を上から見た図を円で囲んで示すように、下部側面部623に近いほど、例えば噴出口81の開口面積を大きく設定している。また、
図10に示すように、床板8は、噴霧室92の下方位置に、熱ガス吹込室95に供給された熱ガスをスライダガスとして気流乾燥室93の下方側(気流乾燥室側下方領域94b)に向けて噴出する複数のスライダガス噴出口82が下方に切り起こされて形成されている。なお、本実施形態では、一方側から他方側に向けて下方に傾斜した底面63を採用している。このように底面63を傾斜させるのは、噴出口81やスライダガス噴出口82から熱ガス吹込室95に入り込んでしまった被処理物や熱ガス吹込室95内を洗浄した後の水等を他方側に流し、熱ガス吹込室構成体2Bの他方側に設けた不図示の排出部から排出するためである。
【0053】
次に、本実施形態のスプレードライヤー装置1を用いて被処理物を乾燥させる処理の一例について説明する。
【0054】
不図示の液タンクから供給された被乾燥溶液(被処理物)が圧力噴霧ノズル51から噴霧室92内に液滴状に噴霧されるとともに、この噴霧された被乾燥液滴Mを包み込むようにして熱風供給部材53から熱風が供給される。これにより圧力噴霧ノズル51から噴霧された被乾燥液滴Mは噴霧室92内を降下しながら乾燥が進行する。
【0055】
図11(a)に示すように、中間側面部622における幅方向に対向する部分の間隔は下方に向かうに従い徐々に狭まり、噴霧室側下方領域94aの幅方向の大きさも下方に向かうに従い徐々に小さくなっている。このため、噴霧室側下方領域94aを降下する被処理物は、幅方向の中央に集められながら床板8に向かって降下する。
【0056】
圧力噴霧ノズル51から噴霧された被乾燥液滴Mの粒子径は通常正規分布となっており、数μmの微細粒子から平均粒子径の数倍の大粒子径のものまでが含まれている。これら異なる粒子径の被乾燥液滴Mが所定の水分含有率まで乾燥される時間は異なる。噴霧された被乾燥液滴Mのうち小さいものは噴霧室92と噴霧室側下方領域94aを降下する間に完全に乾燥する場合もあるが、大きな被乾燥液滴Mなどは完全には乾燥されず未だ水分を含んだ状態の場合がある。これらの被乾燥物を含んだ熱風は、噴霧室側下方領域94aから導通開口96を通過して気流乾燥室側下方領域94bに流入する。本実施形態では、床板8に設けられたスライダガス噴出口82から導通開口96に向けてスライダガスが噴き出されるため、被乾燥物が円滑に導通開口96を通過し、気流乾燥室側下方領域94bに流入する。なお、
図10の一点鎖線で示すように、胴体部22の下側の部分にスライダガス噴出口82を設け、このスライダガス噴出口82から、熱ガス吹込室95に供給された熱ガスとは別の熱風を気流乾燥室側下方領域94bに向けて噴出させる態様としてもよい。
【0057】
気流乾燥室側下方領域94bに流入した被乾燥物は、床板8の噴出口81から上方に噴出する熱ガスによって気流乾燥室93内を上昇する。すなわち、熱風とともに降下してきた被乾燥物は反転室94で反転して気流乾燥室93内を上昇していく。これにより、気流乾燥室93内においても被乾燥物の乾燥が進み、結果として乾燥時間を延長することができる。噴霧室92内を降下した被乾燥液滴Mのうち水分値が高い大径の粒子などは、反転室94に留まりやすく、より具体的には床板8上に集まり、スライダガス噴出口82や噴出口81からの熱ガスの作用を大きく受けることにより乾燥が進むと気流乾燥室93に向けて上昇する。これにより、被処理物のうち乾燥に時間がかかるものも乾燥時間が選択的に延長される作用が奏されることとなる。これらにより、スプレードライヤー装置1の装置高さを高くすることなく、被処理物の乾燥時間を十分に確保できる。
【0058】
また、
図11(b)に示すように、本実施形態では、気流乾燥室93を水平断面視が矩形状に画定される空間で構成しており、気流乾燥室93の断面積は設計により自由に寸法を調整することができる。これにより、気流乾燥室93内を上昇する被処理物を含む熱風の流速が上がりすぎてしまうことを抑え、気流乾燥室93における乾燥時間の短縮を防ぐことができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、導通開口96の開口面積を、気流乾燥室93の水平断面積に対して0.5倍以上2倍以下に設定している。ここで、導通開口96の開口面積が気流乾燥室93の水平断面積に対して0.5倍を下回ると、噴霧室92から気流乾燥室93へ反転して流れることになる熱風の慣性により被処理物が側面62や第1平面6212、第二平面6213等に付着しやすくなる。一方、2倍を越えると、被処理物を含んだ熱風が導通開口96を通過する際の流速が過度に低下してしまい、導通開口96に対して被処理物が一律に通過しにくくなり、噴霧室92から気流乾燥室93へ短時間に流通するショートパスする被処理物、必要以上の長時間で噴霧室92に滞留して過乾燥する被処理物を生じる虞がある。また、
図11(a)において一点鎖線で示すように、仕切板7の下端における幅方向の中央部分に切欠711を設けてもよく、本図においては半楕円的な切欠711として示した。切欠711を設けることで、導通開口96を通過する被処理物が幅方向の中央に集まりやすくなり、中間側面部622等への被処理物の付着を抑えることができる。
【0060】
さらに、
図11(a)において円で囲んで示すように、下部側面部623に近いほど噴出口81の開口面積を大きく設定しているため、下部側面部623に近いほど熱ガスの噴出量が多くなり、下部側面部623への被処理物の付着も抑えることができる。なお、噴出口81の開口面積を異ならせる態様は本実施形態に限定されるものではなく、被処理物の素材等によっては、下部側面部623に近いほど噴出口81の開口面積を小さく設定してもよい。さらに、下部側面部623との距離に応じて噴出口81から噴出する熱ガスの噴出速度を異ならせる調整も可能である。
【0061】
気流乾燥室93を上昇した被乾燥物は、乾燥粉体となって排気とともに排出口42から排出され、不図示のサイクロンによって排気と分離される。サイクロンで分離された乾燥粉体は、必要に応じて、除湿冷風による空気輸送または流動冷却層により所定の粉温まで冷却処理される。サイクロンで分離された排ガスは、必要に応じてバグフィルターなどを用いて微細な粉体が分離される。
【0062】
次に、
図1〜
図11に示す第1実施形態のスプレードライヤー装置1に用いられる缶体2の変形例について説明する。以下に説明する変形例は、
図1〜
図11に示す缶体2とは、胴体部22の中間胴体222から下側の構成が相違する。したがって、この相違点を中心に説明し、
図1〜
図11に示す缶体2における構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0063】
図12は、第1変形例の缶体2を示す図である。同図(a)は、第1変形例の缶体2の
図10に対応する断面図である。また、
図12(b)は、第1変形例の缶体2の
図7に対応する右側面図であり、
図12(c)は、第1変形例の缶体2の
図8(b)に対応する底面図である。
【0064】
図12に示すように、第1変形例の缶体2は、中間胴体222の一方側の部分が1つの曲面部222cによって構成され、
図7に示す三角形状部222aのような平面部を有していない。曲面部222cは、上部胴体221の一方側部分221aに連なり、下方に向かうに従い幅方向の大きさが小さくなる部分である。なお、曲面部222cの下側の下部胴体223には、鉛直姿勢に配置された鉛直部223aが設けられている。曲面部222cの内面には中間円弧面6221が形成されている。この中間円弧面6221は、
図11(b)を用いて説明した、上部側面部621の円弧面6211に連なり、下方に向かうに従い幅方向の大きさが小さくなる面である。
【0065】
図13は、第2変形例の缶体2を示す図である。同図(a)は、第2変形例の缶体2の
図10に対応する断面図である。また、
図13(b)は、第2変形例の缶体2の
図7に対応する右側面図であり、
図13(c)は、第2変形例の缶体2の
図8(b)に対応する底面図である。
【0066】
図13(a)および同図(c)に示すように、第2変形例の缶体2は、中間胴体222の一方側に設けられた三角形状部222aが、下方に向かうに従い他方側に傾斜している。これにより、
図13(a)に示すように、三角形状部222aの内面に傾斜面6221aが形成されている。この傾斜面6221aは、導通開口96に相対し下方に向かうに従い導通開口96に近づく方向に傾斜した面である。すなわち、中間側面部622は、導通開口96に相対し下方に向かうに従い導通開口96に近づく方向に傾斜した傾斜面6221aを有するものである。なお、
図13(a)では、
図10に示す缶体2の熱ガス受入口41とその周辺部分に相当する位置を一点鎖線で示しており、第2変形例の缶体2は、
図10に示す缶体2と比べて熱ガス受入口41の位置が他方側に設けられている。また、三角形状部222aの下側の下部胴体223には、鉛直姿勢に配置された鉛直部223aが設けられている。
【0067】
第2変形例の缶体2によれば、熱風とともに噴霧室92を降下した被処理物は、噴霧室側下方領域94aにおいて傾斜面6221aに案内され導通開口96に向けて移動しやすくなる。
【0068】
図14は、第3変形例の缶体2を示す図である。同図(a)は、第3変形例の缶体2の
図10に対応する断面図である。また、
図14(b)は、第3変形例の缶体2の
図7に対応する右側面図であり、
図14(c)は、第3変形例の缶体2の
図8(b)に対応する底面図である。
【0069】
図14(b)および同図(c)に示すように、第3変形例の缶体2は、
図13(b)および同図(c)に示す第2変形例の缶体2における、三角形状部222aおよび一対の曲面部222bに代えて、1つの曲面部222cが設けられている。これにより、
図14(a)に示すように、曲面部222cの内面に傾斜面6221aが形成されている。また、
図13(a)および同図(b)に示す第2変形例の缶体2における平面の鉛直部223aに代えて、1つの曲面部223cが形成されている。
【0070】
次いで、本発明の第2実施形態のスプレードライヤー装置1について説明する。この第2実施形態の説明においては、
図1〜
図4、
図10および
図11に示す第1実施形態のスプレードライヤー装置1との相違点を中心に説明し、同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0071】
図15(a)は、第2実施形態のスプレードライヤー装置1を、他方側の右斜め上方から見た斜視図である。この
図15(a)では、一部を破断し缶体2の内部構造を示している。
図15(b)は、同図(a)のD−D線切断部端面図である。
【0072】
図15(a)に示すように、第2実施形態のスプレードライヤー装置1における缶体2は、円板状の天井部21と円筒状の胴体部22とを有し、底面63は円形に構成されている。
図15(b)に示すように、側面62は、円筒状の胴体部22の内周面からなり、全体が円弧状の面によって構成されている。
【0073】
仕切板7は平面視における両端部分が折曲されて構成されたものであり、缶体2内を噴霧室92と気流乾燥室93とに仕切っている。また、床板8は円板状に構成され、底面63との間に円柱状の熱ガス吹込室95を形成している。なお、
図15(a)では、
図10に示す噴出口81やスライダガス噴出口82は省略している。
【0074】
第2実施形態のスプレードライヤー装置1によれば、缶体2の構造が非常に単純になり、側面62に角部がなくなる。
【0075】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、上記実施形態では、噴霧ノズルとして圧力噴霧ノズル51を採用しているが、これに代えて2流体式の噴霧ノズルを採用してもよい。また、リブ26、ノッカ24およびブラケット25は必要に応じて設けられるものであり、省略する態様とする場合もある。
【0076】
なお、以上説明した実施形態や変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の実施形態や変形例に適用してもよい。