(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871577
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】浸漬ノズル
(51)【国際特許分類】
B22D 11/10 20060101AFI20210426BHJP
B22D 41/50 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
B22D11/10 330E
B22D41/50 520
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2018-181131(P2018-181131)
(22)【出願日】2018年9月27日
(65)【公開番号】特開2020-49510(P2020-49510A)
(43)【公開日】2020年4月2日
【審査請求日】2019年10月30日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000244176
【氏名又は名称】明智セラミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 正成
【審査官】
米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4665056(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00〜11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端にタンディッシュとの接続口を設け、他端に底部を設けた有底の円筒構造を有し、底部近傍の周壁を貫通する斜め下向きの2本の貫通穴で2個の吐出口を円筒構造の中心線を挟んで対向するように形成した浸漬ノズルであって、
底部の内面を上向きの平皿形に形成し、平皿形の上向きの外縁面が貫通穴の中間部に交差し、貫通穴における外縁面との交差点から内側において、外縁面が貫通穴の下側内面を形成し、
前記平皿形の底面全体を湾曲面で形成したことを特徴とする浸漬ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶鋼をタンディッシュからモールド内へ注入するとき溶鋼が空気に触れて酸化しないようにするため、タンディッシュノズルに接続してモールド内の溶鋼に浸漬する浸漬ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の浸漬ノズル1は、
図4に示すように、一端にタンディシュノズルに接続される接続口2を設け、他端に底部3を設けた有底の円筒構造を有する。そして、底部3の近傍の周壁を貫通する2本の貫通穴4で2個の吐出口5が形成されている。2個の吐出口5は円筒構造の中心線6を挟んで対向するように配置されている。各貫通穴4は吐出口5から溶鋼が吐出するときにモールドパウダーを溶鋼中に巻き込まれないようにするため、斜め下向きに形成されている。
【0003】
図5に、この浸漬ノズル1からモールド7内に注入した溶鋼8の流動状態を示すコンピュータシミュレーションに基づく説明図を示す。
図5の(A)は浸漬ノズル1の主要部とモールド7の長辺側断面を示し、
図5(B)は浸漬ノズル1の吐出口5の部分拡大断面を示す。
【0004】
図5の(A)に示すように、溶鋼8は斜め下向きの強いジェット流となって吐出口5から吐出する。そして、左右の吐出口5で吐出する溶鋼8の流速分布が異なり、不均一になっている。
【0005】
また、
図5(B)に示すように、吐出口5の外側端面の上角隅部で溶鋼8の流速が急激に変化して淀みが発生し、吐出口5への巻き込みが生じている。そのため、モールド7内の溶鋼8の流動状態が不安定となり、モールドパウダーが溶鋼8中に巻き込まれてしまう。
【0006】
一方、特許第4665056号公報には、モールド内の溶鋼の流動状態を安定させてモールドパウダーの巻き込み防止を図った浸漬ノズルが開示されている。この浸漬ノズルは、吐出口を形成する貫通穴の断面形状を内径が内端面から外端面に向けて漸減するラッパ形状に形成されている。
しかしながら、貫通穴をラッパ形状にしたこの浸漬ノズルも、満足できるモールドパウダーの巻き込み防止効果を奏するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4665056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点に鑑み、モールド内の溶鋼の流動状態を安定させ、モールドパウダーの巻き込みを効果的に防止できる浸漬ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、
一端にタンディッシュとの接続口を設け、他端に底部を設けた有底の円筒構造を有し、底部近傍の周壁を貫通する斜め下向きの2本の貫通穴で2個の吐出口を円筒構造の中心線を挟んで対向するように形成した浸漬ノズルであって、
底部の内面を上向きの平皿形に形成し、平皿形の上向きの外縁面が貫通穴の中間部に交差し、貫通穴における外縁面との交差点から内側において、外縁面が貫通穴の下側内面を形成し、
前記平皿形の底面全体を湾曲面で形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、吐出口から斜め下方に吐出するジェット流が拡散し、左右の吐出口の流速分布が均一化する。そして、吐出口の外側端面の上角隅部における溶鋼の流速の変化がなだらかになり、淀みが発生し難くなる。そのため、吐出口への巻き込みが抑制されるので、モールド内の溶鋼の流動状態が安定し、モールドパウダーの溶鋼中への巻き込みを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の
参考例に係る浸漬ノズルを示す縦断断面図である。
【
図2】同浸漬ノズルからモールド内に注入した溶鋼の流動状態を示すコンピュータシミュレーションに基づく説明図である。
【
図3】本発明
の実施例に係る浸漬ノズルを示す縦断断面図である。
【
図5】同浸漬ノズルからモールド内に注入した溶鋼の流動状態を示すコンピュータシミュレーションに基づく説明図である。
【0012】
以下に本発明を図面に基づき説明する、
図1には本発明の
参考例に係る浸漬ノズル10が示されている。当該浸漬ノズル10は、有底の円筒構造を有し、一端にタンディッシュノズルとの接続口11が設けられ、他端に底部12が設けられている。底部12の近傍には周壁13を貫通する2本の貫通穴14で2個の吐出口15が形成されている。2本の貫通穴14は、吐出口15が円筒構造の中心線16を挟んで対向し、その吐出方向が下向きとなるように斜め下向きに形成されている。
【0013】
底部12の内面17は上向きの平皿形に形成されている。底部の内面17は中央平面17aと、中央平面17aに連接する斜め上向きの外縁面17bで形成され、外縁面17bは央面17aに対して鈍角を成して斜め上方に延びている。そして、外縁面17bが貫通穴14の略中央部で貫通穴14に交差している。これにより、外縁面17bが貫通穴14の中央部から内側において、貫通穴14の下側内面14aを形成している。
【0014】
本
参考例に係る浸漬ノズル10の構造は以上の通りであって、
図2に、浸漬ノズル10からモールド7内に注入した溶鋼8の流動状態を示すコンピュータシミュレーションに基づく説明図を示す。
本参考例によれば、
図2(A)に示すように、吐出口15から斜め下方に吐出する溶鋼8のジェット流が拡散し、左右の吐出口15で流速分布が均一化する。そして、
図2(B)に示すように、吐出口15の外側端面の上角隅部における溶鋼8の流速の変化がなだらかになり、淀みが発生し難くなる。そのため、吐出口15へ溶鋼8の巻き込みが抑制されるので、モールド内の溶鋼8の流動状態が安定し、モールドパウダーの溶鋼8中への巻き込みを防止できる。
【0015】
上述した浸漬ノズル10では底部12の内面17を中央平面17aと、中央平面17aに対して鈍角を成して連接する一つの外縁面17bで構成したが、中央平面17aと順次鈍角を成して連接する複数の外縁面で構成することも可能である。
【実施例】
【0016】
図3に本発明の実施例に係る浸漬ノズル20を示す。この浸漬ノズル20では、底部12の内面18全体
が緩やかな湾曲面で形成
され、浸漬ノズル10と同様の作用効果を得ることができる。
なお、この浸漬ノズル20の他の構成は浸漬ノズル10と同じであるので、
同一の構成要素に同一の符号を付して説明を省略する。
【符号の説明】
【0017】
10,20…浸漬ノズル
11…接続口
12…底部
13…周壁
14…貫通穴
14a…下側内面
15…吐出口
16…中心線
17…底部内面
17a…中央平面
17b…外縁面
18…底部内面