特許第6871579号(P6871579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6871579鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物と共生する緑化工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871579
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物と共生する緑化工法
(51)【国際特許分類】
   A01G 20/00 20180101AFI20210426BHJP
【FI】
   A01G20/00
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-100600(P2019-100600)
(22)【出願日】2019年5月29日
(65)【公開番号】特開2020-191839(P2020-191839A)
(43)【公開日】2020年12月3日
【審査請求日】2020年5月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000170646
【氏名又は名称】国土防災技術株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508320011
【氏名又は名称】紅大貿易株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳
(72)【発明者】
【氏名】吉原 敬嗣
【審査官】 佐藤 智子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0234474(US,A1)
【文献】 特開2018−057324(JP,A)
【文献】 特開平09−078586(JP,A)
【文献】 井出保行 ら,ケンタッキーブルーグラス(Poa pratensis L.)の種子繁殖と放牧家畜の排糞による種子散布,Grassland Science,1999年,Vol.45 No.2,157-162
【文献】 シバ型草地を含む放牧地における牛糞によるシバ種子の散布,農研機構,1995年,近畿中国四国農業研究センター1995年の成果情報
【文献】 石田良作,我が国におけるシバ及びシバ型草地研究の成果と展望,日本草地学会誌,1990年,36巻2号,210−217頁
【文献】 山本嘉人,シバ型放牧草地の造成法,牧草と園芸,2006年,第54巻第3号,p.1−5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 20/00
A01K 1/00−5/00
A23K 10/00−50/00
J−STAGE
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑化対象地に生息している鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物に,飼料に嗜好性の高いシバ属の種子を配合して発芽促進剤,植物活性剤を混合したペレット状の嗜好性の高い餌を散布することで積極的に食べさせ,糞に含まれたシバ属の種子が動物の移動によって広域に拡散し,その拡散した種子が発芽,生育することで緑化を行うことを可能とした鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物と共存できる緑化工法。
【請求項2】
緑化対象地に生息している鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物に,飼料に嗜好性の高いシバ属の種子を配合して発芽促進剤,植物活性剤を混合したペレット状の嗜好性の高い餌を散布することで積極的に食べさせ,糞に含まれたシバ属の種子が発芽,生育することで鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物の食害を受けた緑化対象地が早期に復元することを可能とした鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物と共存できる緑化工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,斜面,公園などの緑化において,その緑化対象箇所に生息している鯨偶蹄目・ウシ亜目(具体的には鹿,牛,羊,山羊など)の動物に飼料にシバ属を配合してペレット状とした嗜好性の高い餌を積極的に食べさせ,糞に含まれたシバ属の種子が動物の散布によって広域に拡散し,その拡散した種子が発芽,生育することで鹿と共生しながら緑化を行うものである。
【背景技術】
【0002】
山腹,斜面,公園において緑化を行う場合,鯨偶蹄目・ウシ亜目(具体的には鹿,牛,羊,山羊など)の動物が多数生息していると,緑化種として導入したイネ科等の植物が食害されることで,その緑化の機能が維持できなくなる事例が多くなっている。
【0003】
このような鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物の食害を回避する目的で,緑化箇所に動物を侵入させない柵ネットを用いる手法,鹿が侵入しても導入した植物の全てを食べさせないようにネットを張る手法,導入した植物を覆って保護する手法等が導入されている。
【0004】
上記のような手法は,基本的に鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物を緑化している植物に近づけない,もしくは阻害する手法であることから柵ネット等の施設の経年劣化や鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物の個体数の増加に伴って柵ネット等の施設を突破し,被害が発生する場合が多くなっていた。
【0005】
また,化学的物質による臭いや刺激物によって鹿を遠ざけようとする手法も,効果が持続され難く,鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物に慣れが生じて侵入を許すなど,食害の被害を防止するに至っていない現状がある。
【0006】
一方で,生物的な手法として,鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物の不嗜好性植物を活用する方法もあるが,不嗜好性のみが生育する植生群落となり,生物多様性保全上からも問題が多くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−68129号公報
【0008】
上記特許文献1の発明の構成は,種子とナトリウム,カルシウム,マグネシウムの少なくとも一つを含む必須要素資材とを有する植生シートを熱接着性のある完全生分解プラスチックを用いた被覆材で被覆したことを特徴とする緑化帯を鹿などの草食哺乳動物と共生し,両者の協力により互いに好適な環境を作り出すことができることを可能としたものである。
【0009】
また,特許文献1の発明にあっては,緑化帯として植生シート(種子,肥料,必須要素資材,土壌改良剤を含む)を熱接着性のある完全生分解プラスチックを用いた被覆材で被覆して鹿の餌場を作ることによって鹿と共存しようとしたものである。
【0010】
一方で本発明においては,鹿に対して植物を積極的に食べさせ,糞に含まれたシバ属の種子が動物の移動によって拡散し,その拡散した種子が発芽,生育することで鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物と共生しながら緑化を行うことを可能としたものであることから新規性があり,特許文献1と異なっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで,本発明では,山腹,斜面,公園などの緑化において,その緑化対象箇所に生息している鯨偶蹄目・ウシ亜目(具体的には鹿,牛,羊,山羊など)の動物の飼料にシバ属の種子単独または地下茎単独,種子と地下茎両方を配合してペレット状とした嗜好性の高い餌を散布することで積極的に食べさせ,糞に含まれたシバ属の種子が動物の移動によって拡散し,その拡散した種子が発芽,生育することで鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物と共生しながら緑化を行うことを可能としたものである。
【0012】
本発明の第1は,鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物と共存できる緑化工法において,緑化対象箇所に生息している鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物の飼料に嗜好性の高いシバ属の種子単独,地下茎単独,種子と地下茎両方を配合してペレット状とした嗜好性の高い餌を散布,またはシバ属の種子単独,地下茎単独,種子と地下茎両方を散布することで積極的に食べさせ,糞に含まれたシバ属の種子が動物の移動によって広域に拡散し,その拡散した種子が発芽,生育することで緑化を行うことを可能としたものである。
【0013】
本発明の第2は,鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物と共存できる緑化工法において,緑化対象箇所に生息している鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物の飼料に嗜好性の高いシバ属の種子単独,地下茎単独,種子と地下茎両方を配合してペレット状とした嗜好性の高い餌を散布,またはシバ属の種子単独,地下茎単独,種子と地下茎両方を散布することで積極的に食べさせ,糞に含まれたシバ属の種子が発芽,生育することで鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物の食害を受けた緑化箇所が早期に復元することを可能としたものである。
【0014】
本発明の第3は,鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物と共存できる緑化工法において,飼料に嗜好性の高いシバ属の種子単独,地下茎単独,種子と地下茎両方を配合してペレット状とした嗜好性の高い餌を散布,またはシバ属の種子単独,地下茎単独,種子と地下茎両方を散布することによって,生息している鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物による緑化対象の周辺箇所の食害圧力を低減することを可能としたものである。
【0015】
本発明の第4は,鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物と共存できる緑化工法において,飼料に嗜好性の高いシバ属の種子単独,地下茎単独,種子と地下茎両方を配合してペレット状とした嗜好性の高い餌,またはシバ属の種子単独,地下茎単独,種子と地下茎両方,もしくは,不嗜好性のススキやチカラシバ,マツカゼソウなど種子単独または地下茎単独,種子と地下茎両方を緑化箇所に散布することによって,生息している鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物の食害を受けても嗜好性と不嗜好性の植物が混在する緑化を可能としたものである。
【0016】
本発明の第5は,鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物と共存できる緑化工法において,飼料に嗜好性の高いシバ属の種子単独,地下茎単独,種子と地下茎両方を配合してペレット状とした嗜好性の高い餌を散布,またはシバ属の種子単独,地下茎単独,種子と地下茎両方を緑化の目的で施工した植生シート,植生マット,植生基盤吹付工,客土吹付工に散布することで生息している鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物による緑化対象の周辺箇所の食害圧力を低減することを可能としたものである。
【0017】
本発明の第6は,鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物と共存できる緑化工法において,飼料に嗜好性の高いシバ属の種子単独,地下茎単独,種子と地下茎両方を配合してペレット状とした嗜好性の高い餌を散布,またはシバ属の種子単独,地下茎単独,種子と地下茎両方を緑化の目的で施工した植生シート,植生マット,植生基盤吹付工,客土吹付工に散布し,この上面に緑化植物の種子が結実するまでに保護できる部材(金網,プラスチック)を設置することで生息している鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物による緑化対象の周辺箇所の食害圧力を低減することを可能としたものである。
【0018】
本発明の第7は,鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物と共存できる緑化工法において,緑化対象箇所に生息している鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物に飼料に嗜好性の高いシバ属の種子単独または地下茎単独,種子と地下茎両方を配合してペレット状にした餌については,鹿の誘因効果の高い物質を混合することを可能としたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記の構成であるから,次の効果がある。緑化対象箇所に生息している鯨偶蹄目・ウシ亜目(具体的には鹿,牛,羊,山羊など)の動物に飼料に嗜好性の高いシバ属の種子単独または地下茎単独,種子と地下茎両方を配合してペレット状とした餌を積極的に食べさせ,糞に含まれたシバ属の種子が動物の散布によって拡散し,その拡散した種子が発芽,生育することで緑化が可能となる。また,加えて食害を受けた緑化箇所の早期復元に加えて動物の食害を低減して多様な植物群落を形成して鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物と共存しながら緑化を進めることに効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施工程を示す概略説明図である。
図2】本発明の実施後の効果を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るシバ属については,利用名「野芝(ノシバ)」シバ(Z.japonica.),コウライシバ(Z. pacifica (Goudswaard) Hotta & Kuroki),コウシュンシバ(Z. matrella (L.) Merr.),オニシバ(Z. macrostachya Franch. et Savat.),ナガミオニシバ(Z. sinica Hance var. nipponica Ohwi)とする。
【0022】
本発明に係るシバ属を配合してペレット状にするために利用する飼料については,緑化対象箇所の周辺で採取した刈り草,藁,家畜用の配合資材材料(とうもろこし,小麦,大麦,大豆)を混合し,食用の固化材(澱粉,寒天,ペクチン)で固める仕様を標準とする。
【0023】
本発明に係るシバ属を配合してペレット状にするために利用する飼料には,鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物を誘因する鉄分,塩化ナトリウム,塩化カルシウム,塩化マグネシウム)混合や種子の発芽促進材,植物活性剤を混合することも可能である。
【実施例1】
【0024】
次に,本発明の実施例を説明する。
【0025】
図において,1は,緑化対象箇所の周辺で採取した刈り草,藁,家畜用の配合資材材料(とうもろし,小麦,大麦,大豆)であり,鹿その他の野生動物が好む餌材を用いている。2は,食用の固化材であり,具体的には澱粉,寒天,ペクチンで配合資材1をペレット状に固化加工してある。ここで,ペレットとは,比較的小さい塊や錠剤,粒状の形状を意味する。3は,シバ属の種子と地下茎であり,具体的には利用名「野芝(ノシバ)」シバ(Z.japonica.),コウライシバ(Z. pacifica (Goudswaard) Hotta &Kuroki),コウシュンシバ(Z. matrella (L.) Merr.),オニシバ(Z. macrostachya Franch. et Savat.),ナガミオニシバ(Z. sinica Hance var. nipponica Ohwi)が存在する。4は,ペレット状の飼料であり,配合資材材料1を食用固化材2で混ぜ合わせたものをペレット状に加工する。5は,鹿その他鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物から排出された糞に混ざっている種子の発芽と生育によって形成された植生群落,6は,ペレット状にする飼料を補植する鹿,7は,種子を混入した糞を排出する鹿を示す。8は,金網又はプラスチック材料から成る保護部材であり,緑化対象地Gに散布して緑化植物の種子が結実するまで覆って保護するものである。
【0026】
嗜好性のペレット飼料についての製造は,以下により行う。
(1) 緑化対象箇所の周辺で採取した刈り草,藁,家畜用の配合資材材料1(とうもろこし,小麦,大麦,大豆)を混合し,食用の固化材(澱粉,寒天,ペクチン)2で混ぜ合わせたものをペレット状に成形する。
(2) 成型されたペレット状の飼料4を数日間乾燥させる。
(3) 乾燥させたペレット状の飼料4を緑化対象地Gに散布する。
【0027】
[効果確認試験1]
日本産のノシバのようなシバ属種子と地下茎3を同一の鹿に5日で10g(15,000粒相当)の餌を食べさせ,
5日後に排出された糞に含まれている種子の量を調べた結果,40%弱の種子が排出されることが確認している。(種子の排出量の確認)
【0028】
[効果確認試験2]
日本産のノシバのようなシバ属種子と地下茎3を同一の鹿に5日間で10g(15,000粒相当)食べさせ,鹿から排出された糞10粒から50粒以上確認されたノシバの種子の平均発芽率を調べた結果,通常の種子の発芽率73.0%に対して鹿の採食後の種子の発芽率は68.9%となり大幅な発芽低下とならないことを確認している。(排出後の発芽率の確認)
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は,緑化対象箇所に生息している鯨偶蹄目・ウシ亜目(具体的には鹿,牛,羊,山羊など)の動物に飼料にシバ属の種子単独または地下茎単独,種子と地下茎両方を配合してペレット状とした嗜好性の高い餌を積極的に食べさせ,糞に含まれたシバ属の種子が動物の散布によって拡散し,その拡散した種子が発芽,生育することによる緑化が可能となる。また,加えて食害を受けた緑化箇所の早期復元に加えて動物の食害を低減して多様な植物群落を形成して鯨偶蹄目・ウシ亜目の動物と共存しながら緑化を進めることに特長がある。
【符号の説明】
【0030】
1…緑化対象箇所の周辺で採取した刈り草,藁,家畜用の配合資材材料(とうもろし,小麦,大麦,大豆)
2…食用の固化材(澱粉,寒天,ペクチン)
3…シバ属の種子と地下茎
4…ペレット状の飼料
5…鹿から排出された種子の発芽,生育によって形成された植生群落
6…ペレット状の飼料を補植する鹿
7…種子が混入した糞を排出する鹿
8…金網又はプラスチック材料から成る保護部材
G…緑化対象地
図1
図2