特許第6871580号(P6871580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871580
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】スライド式教具
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/02 20060101AFI20210426BHJP
   G09B 1/14 20060101ALI20210426BHJP
   G06C 1/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   G09B19/02 E
   G09B1/14
   G06C1/00 W
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-195065(P2019-195065)
(22)【出願日】2019年10月28日
(65)【公開番号】特開2021-67903(P2021-67903A)
(43)【公開日】2021年4月30日
【審査請求日】2020年11月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519385065
【氏名又は名称】下段 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】下段 純子
【審査官】 宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−105658(JP,U)
【文献】 実公昭47−041546(JP,Y1)
【文献】 実開昭52−108150(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2019/0172369(US,A1)
【文献】 特開2012−018213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 19/02
G09B 1/14
G06C 1/00
A63H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイルがスライド自在な溝と、溝の一端から設けられたタイル10個分の目盛とを備えるケース、 及び
前記溝に収容するのに適した少なくとも10個のタイル、とから成り、
前記溝はタイル10個分よりも長く、溝の他端に目盛のない領域が有り、
前記溝が1個以上設けられ、
前記溝の一端の縁あるいは両端の縁に、前記タイルを前記溝に出し入れするための着脱自在なストッパが設けられていることを特徴とする、スライド式教具。
【請求項2】
前記溝は1個であることを特徴とする、請求項1のスライド式教具。
【請求項3】
前記タイルの表面にシールが着脱自在に貼り付けられていることを特徴とする、請求項1または2のスライド式教具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はスライド式教具に関し、特に数に習熟するための教具に関する。
【背景技術】
【0002】
数の理解が不十分な子供が増えている。例えば、10円玉、5円玉、1円玉の違いを認識できず、5円玉が2個で10円であることに認識できない子供が増えている。また100円で100円のお菓子を何個買えるか分からない子供も増えている。 10+30 のような簡単な計算に手こずる子供も多い。これらのことは、1から100までの数を順に唱えたり、九九を唱えたりすることとは別の問題である。例えば、実際の物と数字との対応、つまり、リンゴ2個が数字の2で表される、6個のリンゴの中にリンゴ2個が3セット含まれている、100円で20円のお菓子が5個買える、などの数の概念、すなわち数字が序数を表すだけでなく、物の数と対応したり、合成分解できたり、量を表すことができるという認識が育っていないためであると考えられる。
これはIT時代になり、ネットで買い物をしたり、キャッシュレスで買い物をすることが増え、現物のお金を使わない生活にどんどんなっていき、子どもたちが生活の中でお金や物を数えたり、分けたりする経験に乏しくなっているからだと思われる。
【0003】
数に習熟するための道具として、算盤がある。しかし算盤は9つの玉で10進法の計算をするため、数の入門期の子どもたちが使えるようになるためには、かなりの修練が必要である。そこで、特別な修練なしに使える「100玉そろばん」が注目を浴びている。100玉算盤は1段に10玉、10段で構成され、100玉の玉を指ではじきながら100までの数を数える学習に使うことを基本としている。
しかし、100玉算盤は1〜100までに序数を唱える練習にはよいが、物と物との対応には適しておらず、入門期の子どもたちにとって、具体物と算盤の玉との対応が理解しづらい。また、100までの数を一気に扱うので、入門期の子どもたちに大切な10までの加減の学習には適していない。また、5円玉が2つで10円とか10円玉が2個で20円とか、100円玉が2個で200円などというお金の計算には不向きであり、100円玉も収容されているため形状も大きく携帯には不向きである。
【0004】
関連する先行技術を示す。特許文献1(特開2005-292464)は、20個の玉と1から30までの目盛を備えた教具を提案している。これは言わば1段だけの算盤である。
【0005】
特許文献2(実開平6-36066)は、複数個のブロックを容器に収容し、ブロックの個数を数える教具を提案している。この教具では、ブロックを弾くということがない。また、小さな子どもたちには、容器からブロックを取り出しにくいだけでなく、ブロックを容器に収容しているだけであるため散らばったり紛失したりしやすく、扱いにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-292464
【特許文献2】実開平6-36066
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の課題は、タイルをスライドさせて楽しみながら、タイルの数を目盛と比較することにより数への感覚を養える、教具を提供することに有る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のスライド式教具は、タイルがスライド自在な溝と、好ましくは溝の一端から溝の中央部を越えて設けられた、タイル10個分の目盛とを備えるケースと、溝に収容するのに適した少なくとも10個のタイル、とから成り、溝はタイル10個分よりも長く、溝の他端に目盛のない領域が有ると共に、前記溝の一端の縁あるいは両端の縁に、前記タイルを前記溝に出し入れするための着脱自在なストッパが設けられている。携帯に適した教具にするため、溝は1個とすることが好ましい。
【0009】
この発明の教具を用い、子供達がタイルを1個ずつ操作することに慣れると、タイルを一度に2個、3個などまとめて弾くことにより、数の合成、約数、倍数などの概念に達することができる。例えば、6が2と2と2の合成であり、3と3の合成でもあることを発見できる。さらに6は2と3の倍数で、2と3は6の約数であることも発見できる。タイルに10円や100円などのお金を表示し、お金と目盛りの数を対応させると、お金の計算ができるようになったりする。また子供達は溝のタイルをスライドさせながら、タイルの数と目盛を比較し、数に習熟できる。子供は一般に物を弾く(スライドさせる)ことが好きで、かつタイルには適宜の表示を設けることができるので、楽しく学習できる。溝を1個にすると、携帯に適した大きさになる。
【0010】
1組のタイルで、タイル表面の表示を変更できるように、タイルの表面にシールを着脱自在に貼り付けることが好ましい。目盛も着脱自在に構成し、シールを貼り付けたり、目盛全体を取換え自在として、メモリの表示も変更できるようにすることが、好ましい。
【0011】
好ましくは、タイルの底面を摺動自在に支持するレールを溝の底面に平行に設け、タイルを滑らかにスライドさせる。
【0012】
また好ましくは、タイルの底面を支持し、かつ溝の一端から他端への方向と軸の向きが直角なローラを溝内に複数設け、ローラウェイとしてタイルをスライドさせる。
【0013】
好ましくは、溝の一端の縁あるいは両端の縁にタイルを溝に出し入れするための着脱自在なストッパを設け、タイルを溝から取り出してシールを交換し、溝に戻すことができるようにする。


【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例のスライド式教具の平面図
図2図1のスライド式教具の変形例を示し、A)はタイルに具体物を表示し、B)はタイルに10を表示し、C)は九九での3の段を表示し、D)は五円玉を表示する。
図3図1のスライド式教具のIII−III方向(上下方向)断面図
図4】変形例のスライド式教具の上下方向断面図
図5】第2変形例のスライド式教具の上下方向断面図
図6】第3変形例のスライド式教具の平面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図3に実施例のスライド式教具を示し、図4図6に3種の変形例を示す。
【実施例】
【0016】
図1はスライド式教具2を示し、この明細書では、図1の左下に示すように上下左右の方向を定める。またスライド式教具2は、図1に現れる面(上面)を上にして使用する。図において、4は左右に長い横長のケースで、中央の溝10を四方の縁5〜8が囲っている。ケース4の材質は任意であるが、好ましくはプラスチック製である。溝10の上側の縁5は下側の縁6よりも幅広で、縁5の表面にプラスチック等のシール9(目盛)が着脱自在に貼られ、例えば1から10の数字を表示している。なお下側の縁6にシール9を貼っても、あるいは上下の縁5,6の双方にシール9貼っても良い。またシール9を貼る側の縁は、貼らない側の縁よりも上下の幅が大きいことが好ましい。
【0017】
なお実施例では、一例として、目盛に着脱自在に貼り付けるシール9を用いているが、それ以外に、目盛全体を着脱自在なプラスチック板などとしても良い。このとき、例えば溝10に面した縁5全体を取り換える、あるいは数のある部分を取り換え可能としても良い。
【0018】
溝10には、平面視で長方形〜正方形のスライド式タイル11が10個収容され、溝10内をスライド自在である。また溝10の左右方向の長さは、タイル11の10個分の長さよりも長く、実施例ではタイル11の長さで3〜6個分だけ長い。ただしどの程度長くするかは任意である。シール9は溝10の左端から中央を越えて貼られ、シール9に面していないタイル11は溝10の右側にある。なおシール9を溝10の右端から中央を越えて配置し、シール9の右端で1、シール9の左端で10と表示しても良い。
【0019】
目盛の有る部分のタイルに目盛のない部分のタイルを一緒にして、足し算する。また目盛のある部分のタイルから一部を取り出し右側へ移すことにより、引き算する。例えばタイル3個とタイル2個で、 3+2=5 であり、タイル5個からタイル1個を除くと、 5−1=4 である。 2個ずつのタイルが2組で、 2+2=4 あるいは
2×2=4 である。
【0020】
タイル11は例えばプラスチック製で、タイル11は溝10に対し例えば着脱自在でかつスライド自在である。ストッパ12は縁7に着脱自在に係合し、ストッパ12をセットするとタイル11は溝10から抜け落ちず、ストッパ12を外すと、タイル11を溝10から取り出すことができる。なお、縁5にシール9を貼る場合、シール9の表示を見やすくするため、タイル11の上面に対し、シール9の上面が同じかやや高い位置にあることが好ましい。
【0021】
なお縁7を2個連結できるようにしても良い。例えばストッパ12を縁7の左右両端に設け、かつ縁7の左下部と右下部を着脱自在にする。すると縁7を2個連結できる。そして1から溝10のタイル11の収容能力までの目盛りを表すシール9と、収容能力+1から20までの目盛りを表すシール9’を用意する。すると縁7を2個連結することにより、20個のタイル11を用い、 7+5 等の繰り上がり、 12−5 等の繰り下がりを学習できる。
【0022】
図2は、シール9の表示とタイル11への表示の例を示す。図2A)ではタイル11に具体的な物(ここではカブト虫)を表示し、虫の数など具体的な物の数を数える。B)ではタイル11に数10を表示し、シール9には10,20,30,…,100のように表示し、10の倍数に慣れるようにする。C)では、シール9もタイル11も、表示は3が単位で、3の倍数に慣れ、九九の三の段に慣れるようにする。D)ではタイル11に5円玉を表示し、シール9にも5円単位での数を表示する。
【0023】
なお、目盛に着脱可能なプラスチック板などを用いる場合も同様に、タイル11と対応するようにプラスチック板にシール9を貼り付けるようにする。あるいは、予め数字を印字した複数の種類のプラスチック板を用意しておき、使用するタイル11の種類に応じて着脱するようにしても良い。
【0024】
タイル11に色々な表示をし、タイル11を溝10から着脱自在にし、かつタイル11の表示を変更可能にすることが好ましい。このため図3に示すように、タイル11の上面にプラスチックのシール21を粘着層22により着脱自在に貼り付ける。またシール9の表示を変更可能にするため、シール9を粘着層30により縁5に着脱自在にする(図3の左上参照)。なおこのような粘着層自体は公知である。
【0025】
溝10内にタイル11を置いたままで、シール21を交換することは難しい。そこでストッパ12を外し、タイル11を溝10から取り出す。そしてシール21を交換した後溝10に戻し、ストッパ12を縁7に固定する。このようにすると、1個のケース4と1組10個のタイル11を用い、表示を多様に変更できる。なおタイル11の表示を変更不能にし、複数組のタイル11を用いても良い。
【0026】
スライド式教具2では、タイル11を左右に滑らかにスライドさせることが重要である。子供達は物を弾くことが好きである。この発明では、タイル11を弾きながら、数の感覚を養う。このため、タイル11を滑らかにスライドさせる機構が必要である。なお特許文献2では、タイルに磁石を、ケースに鉄板を埋め込み、タイルを動きにくくする。この発明では、このような考え方は採らない。
【0027】
図3に示すように、溝10の上下(図1の方向での上下)に一対の長溝25を設け、タイル11の上下(図1の方向での上下)にも一対の突起24を設け、突起24の底部を長溝25の底部のガイド面26(レール)により支持する。また溝10の底面28はタイル11の底面よりも低い位置に配置し、この間に隙間を設け、埃、砂などが侵入しても、タイル11がスライドできるようにする。タイル11の両側を幅の狭いガイド面26により支持するため、タイル11は滑らかにスライドする。そして一対の突起24によりタイル11の脱落を防止する。なお図3とは溝と突起の配置を逆にし、タイル11の上下(図1の方向での上下)に溝を設け、溝10の上下に長い突起(レール)を設け、この突起によりタイル11の溝の底部を支持しても良い。
【0028】
図4は変形例のスライド機構を示し、特に指摘する点以外は実施例と同様である。42は新たなスライド式教具、44はケース、45はタイルである。ケース44の底面中央部からレール46を起立させ、タイル45の底部の溝47を支持する。この例では、溝25と突起24の他に、レール46と溝47が必要である。
【0029】
図5は第2の変形例でのスライド機構を示し、特に指摘する点以外は実施例と同様である。52は新たなスライド式教具で、下部ケース54と上部ケース55を備え、これらの間の隙間にローラ56の軸を配置する。ローラ56は溝10の全長に沿って配置し、軸の向きは溝10の長手方向に直角で、ローラウェイを構成し、タイル11をスライドさせる。ローラ56の直径により教具52は肉厚になりやすいので、タイル58をタイル11よりも薄くする。タイル58は、図3図4の摺動ではなく、ローラ56の回転によりスライドする。このためタイル58は滑らかにスライドするが、ローラ56のため教具52の構造が複雑になる。
【0030】
図1図5の実施例と変形例は、1から10までの数、あるいはその倍数に習熟することを目的としている。図6の変形例のスライド式教具62では、図1のスライド式教具2を上下10段に配置する。これにより1〜100の数を扱えるが、教具62の持ち運びが不便になる。なお図1図5のスライド式教具と、図6のスライド式教具62の折衷案として、図1のスライド式教具2を上下2段に配置し、1〜20の数を扱えるようにしても良い。
【符号の説明】
【0031】
2 スライド式教具
4 ケース
5〜8 縁
9 シール(目盛)
10 溝
11 スライド式タイル
12 ストッパ
21 シール
22,30 粘着層
24 突起
25 長溝
26 ガイド面
28 底面
42 スライド式教具
44 ケース
45 タイル
46 レール
47 溝
52 スライド式教具
54 下部ケース
55 上部ケース
56 ローラ
58 タイル
62 スライド式教具
図1
図2
図3
図4
図5
図6