【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
頂部を切り欠いた円錐状体の外周斜面に刃が形成されたコニカル内刃と、前記刃の周囲を覆う筒状胴部の内周に前記刃に所定の隙間をもって対向する対向刃が形成されたコニカル外刃と、前記隙間の大きさを調整する隙間調整機構と、コニカル内刃とコニカル外刃とを相対回転させて前記隙間に落下するコーヒー豆を前記隙間の大きさに応じた粒度で粉砕する回転駆動機構と、粉砕したコーヒー豆を排出する排出口と、コニカル内刃と共に回転して粉砕したコーヒー豆を排出口に掃き出す回転羽根とを備えて構成されるコーヒー豆粉砕機構において、
コニカル内刃およびコニカル内刃の底部に設けられる回転羽根の周囲を囲み排出口につながる空間を有する筒状のドラムが形成され、回転羽根の底面がドラムの底面に接してコニカル内刃および回転羽根がドラムの底面中央を貫通する回転軸に着脱自在に取り付けられると共に、回転軸の軸心に平行にドラムに形成された案内凹部にコニカル外刃の外周に突出する案内凸部が係合してコニカル外刃を軸心方向に移動自在にドラム内に収納するベースと、
ドラムの外周に回転自在に嵌まるリング状をし、ドラムの外周に嵌まることで前記軸心に平行にドラムに形成された切り欠きからドラムの外周に突出するコニカル外刃の外周に形成されたピンに螺合する雌ネジが内周に刻まれ、回転して雌ネジに螺合するピンがネジ作用で動くことでコニカル外刃を前記軸心方向に移動させて前記隙間の大きさを変える、前記軸心に平行に突出する突出部が外周に形成された上下移動カムと、
ドラムの外周に回転自在に嵌まる筒状をしてドラムの外周に嵌まった上下移動カムに乗せられ、上下移動カムの外周に形成された突出部に係合する係合溝および前記軸心に平行な方向に刻まれて周方向に並ぶ歯からなるウォームホイールが外周に形成されて、係合溝に突出部が係合することで上下移動カムと共に回転する粒度調整用回転部品と、
ドラムに隣接する位置のベースに設けられ、ウォームホイールに螺合するウォームギヤが形成された粒度調整設定部材と
を備えることを特徴とする。
【0009】
本構成によれば、コニカル外刃は、外周に突出する案内凸部がドラムに形成された案内凹部に係合して回転が固定され、コニカル内刃および回転羽根が回転軸の回転に伴って回転することで、コニカル内刃はコニカル外刃に対して相対回転する。したがって、コニカル内刃とコニカル外刃との間の隙間に落下するコーヒー豆は、コニカル内刃の外周斜面に形成された刃と、この刃に対向してコニカル外刃の筒状胴部の内周に形成された対向刃とによって粉砕されて、粉体に挽かれる。挽かれたコーヒー豆は、コニカル内刃の底部に設けられて、底面がドラムの底面に接してコニカル内刃と共に回転する回転羽根により、ドラムの内部に形成される空間につながる排出口へ掃き出される。
【0010】
コーヒー豆を挽く粗さ、つまり、挽き豆の粒度は、コニカル内刃とコニカル外刃との間の隙間の大きさが隙間調整機構によって調整されることで、調節される。本構成では、隙間調整機構は、ドラムに形成された切り欠きからドラムの外周に突出するコニカル外刃の外周に形成されたピン、このピンに螺合する雌ネジが内周に刻まれた上下移動カム、この上下移動カムの外周に形成された突出部に係合する係合溝およびウォームホイールが外周に形成された粒度調整用回転部品、および、ウォームホイールに螺合するウォームギヤが形成された粒度調整設定部材によって構成される。粒度調整設定部材に形成されたウォームギヤを回転させることで、ウォームギヤに螺合するウォームホイールが外周に形成された粒度調整用回転部品が、ウォームギヤの回転量に応じた分だけドラムの周囲を回転する。ウォームホイールが回転すると、粒度調整用回転部品の外周に形成された係合溝に突出部が係合する上下移動カムも、粒度調整用回転部品と共にドラムの周囲を回転する。上下移動カムの内周には、コニカル外刃の外周に形成されたピンに螺合する雌ネジが刻まれているので、上下移動カムがドラムの周囲を回転すると、ドラムに形成された切り欠きからドラムの外周に突出するピンが、雌ネジとのネジ作用によって回転軸に平行な方向に動く。この結果、コニカル外刃は、上下移動カムの回転量、すなわち、粒度調整設定部材の外周に形成されたウォームギヤの回転量および回転の向きに応じて、回転軸の軸心方向に移動し、コニカル内刃とコニカル外刃との間の隙間の大きさが調節される。
【0011】
このような構成をしたコーヒー豆粉砕機構は、簡単に分解することができる。すなわち、粒度調整用回転部品、上下移動カムおよびコニカル外刃は、それぞれ回転軸の軸心に平行な方向に移動させることで、ドラムから引き離すことができる。また、コニカル内刃および回転羽根は回転軸に着脱自在に取り付けられるので、ベースから簡単に取り外すことができる。したがって、各部品が分離し、ドラム内に堆積する挽き残り粉や各部品に付着する挽き粉は簡単に除去することができる。このため、コーヒー豆の粉体がコーヒー豆粉砕機構内に堆積したまま取り残され、取り残されて腐食した粉体が、正常に粉砕されたコーヒー豆の粉体に混入して、食品被害を引き起こす懸念の無いコーヒー豆粉砕機構を提供することができる。
【0012】
また、本発明は、
ドラムの下方における回転軸に同軸に設けられて回転軸に動力を伝達するコニカル内刃の円錐状体の底面外径よりも小さな外径をした歯車を備え、
排出口が、円錐状体の底面外周における前記刃とコニカル外刃の筒状胴部内周における対向刃との対向箇所からコーヒー豆の挽き粉を垂直に落下させる通路を歯車に並んで有し、回転羽根が、円錐状体の底面外周と同じで通路の歯車側内側壁に並ぶもしくは歯車側内側壁の形成位置を超える外径、または円錐状体の底面外周より小さく通路の歯車側内側壁に並ぶもしくは歯車側内側壁の形成位置を超える外径をした円筒側面の外周囲に、所定間隔をあけて複数の羽根がドラムの内周壁へ向けて突出して設けられ、羽根の先端がドラムの内周壁に近接すると共に排出口に張り出る
ことを特徴とする。
【0013】
本構成によれば、回転軸に動力を伝達する歯車の外径がコニカル内刃の円錐状体の底面外径よりも小さいので、円錐状体の底面外周におけるコニカル内刃の刃とコニカル外刃の筒状胴部内周における対向刃との対向箇所からコーヒー豆の挽き粉を垂直に落下させる通路を持つ排出口を、歯車に並んで設けることができる。ドラムの底面に落下する挽き粉は、円筒側面から羽根が突出し、羽根先端がドラムの内周壁に近接して、底面がドラムの底面に接する回転羽根の回転により、ほぼ全てが排出口に寄せ集められる。したがって、ドラムの底面に落下する挽き粉は、回転羽根の回転によりほぼ全てが排出口に寄せ集められて、排出口に張り出る羽根によって排出口へ確実に掃き出される。また、排出口に臨む箇所で各刃が対向する部分から落下する挽き粉は、そのまま直接排出口に放出される。従来の特許文献1に開示されたコーヒー豆粉砕機構では、排出部から排出される挽き粉は、所定長に平坦に形成された排出通路を介して押し出されるため、排出通路に挽き粉が堆積してしまう。しかし、本構成によれば、従来のような排出通路が無いので、コーヒー豆の粉体がコーヒー豆粉砕機構内に堆積したまま取り残されるおそれはさらに低くなり、食品被害を引き起こす懸念がさらに低減されたコーヒー豆粉砕機構が提供される。
【0014】
また、本発明は、
粒度調整用回転部品が、途切れた一部によって係合溝を構成する段部およびウォームホイールが外周の所定周方向位置に所定軸心方向高さで弧状に突出して形成され、
上下移動カムが、突出部が係合溝に係合することで粒度調整用回転部品に対する相対位置が規定され、
粒度調整用回転部品をドラムの外周に嵌める際に、上下移動カムの内周に形成された雌ネジの回転位置がコニカル外刃の筒状胴部外周に形成されたピンに対して粒度調整の初期位置になるときにのみ、段部およびウォームホイールに干渉せずに粒度調整用回転部品を通過させてその取り付け位置に嵌めさせ、粒度調整用回転部品がその取り付け位置に嵌まって回転すると、所定軸心方向高さに切り欠かれて側面に形成された各溝に段部およびウォームホイールをそれぞれ挟持する、ドラムの外周近傍におけるベースに互いに離間して突出して設けられた一対のフック部を備える
ことを特徴とする。
【0015】
本構成によれば、ベースに設けられた一対のフック部により、粒度調整用回転部品は、上下移動カムの内周に形成された雌ネジの回転位置がコニカル外刃の筒状胴部外周に形成されたピンに対して粒度調整の初期位置になるときにのみ、ドラムのその取り付け位置に嵌まる。そして、粒度調整用回転部品の取り付け位置が定まるのに伴い、粒度調整用回転部品によって相対位置が定まる上下移動カムの取り付け位置も自動的に定まる。したがって、誰が粒度調整用回転部品および上下移動カムをベースに組み付けても、粒度調整用回転部品および上下移動カムは決まった位置に取り付けられ、粒度調整の初期位置に取り付けられる。このため、組立性の向上したコーヒー豆粉砕機構が提供される。
【0016】
また、本発明は、上下移動カムが、コーヒー豆の粉砕粒度を示す目盛りが外周に形成され、ベースに、現在のコーヒー豆の粉砕粒度に対応する目盛りを指し示す指示部が形成されることを特徴とする。
【0017】
本構成によれば、粒度調整設定部材に形成されたウォームギヤの回転は、粒度調整用回転部品を介して上下移動カムに伝達される。上下移動カムの回転位置は、ベースに形成された指示部が指し示す、上下移動カムの外周に形成された目盛りを読むことで知れる。このため、コーヒー豆粉砕機構によって挽かれるコーヒー豆の粉砕粒度を容易に把握することができ、使い勝手の向上したコーヒー豆粉砕機構が提供される。
【0018】
また、本発明は、
コニカル内刃の前記刃が、円錐状体の外周斜面上方から下方にかけて複数本刻まれた螺旋状溝の両端に突出して複数形成された第1刃と、外周斜面下方に第1刃より細かく複数傾斜して形成された第2刃とから構成され、螺旋状溝の第2刃側の終端は第2刃の形成領域に食い込み、食い込んだ第2刃の形成領域に螺旋状溝に連なる窪みが形成され、
コニカル外刃の対向刃が、第1刃の周囲を覆う筒状胴部内周に第1刃に所定の隙間をもって対向して粗く形成された第1対向刃と、第2刃の周囲を覆う筒状胴部内周に第2刃に所定の隙間をもって対向して細かく形成された第2対向刃とから構成される
ことを特徴とする。
【0019】
本構成によれば、コニカル内刃とコニカル外刃との間の隙間に落下するコーヒー豆は、コニカル内刃の回転に伴って、コニカル内刃の外周斜面上方から下方にかけて複数本刻まれた螺旋状溝に沿って落下する。この落下時、コーヒー豆は、螺旋状溝の両端に突出して複数形成されたコニカル内刃の第1刃と、この第1刃に対向してコニカル外刃の筒状胴部内周に粗く形成された第1対向刃とに挟まれて粗く粉砕される。粗く粉砕されたコーヒー豆は、さらに落下することで、コニカル内刃の第1刃下方に第1刃より細かく複数傾斜して形成された第2刃と、この第2刃に対向してコニカル外刃の筒状胴部内周に細かく形成された第2対向刃とに挟まれて細かく挽かれる。細かく挽かれたコーヒー豆は、第2刃と第2対向刃との間の隙間から落ちきれない分が、第2刃の形成領域に食い込んで形成された螺旋状溝に連なる窪みに溜まる。この窪みに溜まる挽き豆には、窪みに対向するコニカル外刃に細かく形成された第2対向刃および上方から落下する粉砕されたコーヒー豆によって下方に向かう排出力が作用し、この排出力によって速やかに第2刃と第2対向刃との間の隙間から押し出される。
【0020】
特許文献2に開示されたコーヒーミルでは、オス刃の周斜面下部に傾斜した細かな刃によって形成された圧漬部と、メス刃の下部に向かって傾斜状に拡径する傾斜面に形成された圧漬部との間に、挽き豆の粉体が目詰まりし、挽き豆の吐出量が少なかった。しかし、本構成によれば、上記のように、螺旋状溝に連なる窪みに溜まる挽き豆に作用する排出力により、第2刃と第2対向刃との間の隙間から落ちきれない挽き豆の粉体が速やかに押し出されるため、特許文献2に開示されたコーヒーミルのように目詰まりはせず、挽き豆の吐出量を増大させることができる。
【0021】
また、本発明は、コニカル外刃の第2対向刃が、第1対向刃の刃数の2.5倍程度の刃数に形成され、窪みの高さに並ぶ高さを有することを特徴とする。
【0022】
本構成によれば、コニカル外刃の筒状胴部内周に第1刃に所定の隙間をもって対向して粗く形成される第1対向刃と、筒状胴部内周に第2刃に所定の隙間をもって対向して細かく形成される第2対向刃との各刃数の関係、および第2対向刃の高さが最適化され、挽き豆の吐出量をさらに増大させることができる。
【0023】
また、本発明は、コニカル外刃の外周とドラムの内周との間に所定の隙間が形成されることを特徴とする。
【0024】
特許文献2に開示されたコーヒーミルでは、外筒の内部にオス刃が固着されると共に、内筒の内部にメス刃が固着される。したがって、オス刃およびメス刃共にその回転中心が固定されてしまい、オス刃とメス刃との間に形成される隙間は、外筒と内筒の各軸中心が偏心することで、オス刃の周りに幅を持って形成され、この幅以下に小さくすることができない。また、特許文献3に開示されたコーヒーミルでも、ミルは、ギヤードモータの出力軸にカップリングを介して連結される駆動軸に固定され、サイドミルは、コーンの下端開口部にミルの周囲に対向して固定される。したがって、これらミルおよびサイドミルもその回転中心が固定されてしまい、ミルとサイドミルとの間に形成される隙間は、駆動軸とサイドミルの各軸中心が偏心することで、ミルの周りに幅を持って形成され、この幅以下に小さくすることができない。しかし、本構成では、コニカル外刃はドラムの内部に固定されずに収納されて取り付けられ、コニカル外刃の外周とドラムの内周との間に形成される所定の隙間により、遊動することが可能である。したがって、コニカル外刃は、コニカル内刃の回転中心に一致するようにドラム内で位置を変えることができる。このため、本構成によれば、コニカル外刃のコニカル内刃に対する自動調心により、コニカル外刃とコニカル内刃の各回転中心が一致し、コニカル外刃の内周とコニカル内刃の外周との間に形成される隙間を小さくすることができる。この結果、コーヒー豆をより細かく細挽きすることが可能になる。
【0025】
また、本発明は、粒度調整設定部材が、ウォームギヤを回転させるつまみを端部に有することを特徴とする。
【0026】
本構成によれば、コーヒー豆を挽く粗さは、つまみを手で操作してウォームギヤを回転させることで、手動で調節される。このため、コーヒー豆の粒度調整は、ウォームギヤを電動で回転させて行う調整に限定されなくなり、操作性が向上したコーヒー豆粉砕機構が提供される。