【実施例1】
【0017】
[洗堀防止構造]
<1>全体の構成(
図1)。
本発明の洗堀防止構造Aは、構造物Bの周辺の砂の洗堀防止機能と、基部B1周辺の砂の吸出し防止機能を兼備した構造である。
洗堀防止構造Aは、構造物Bの基部B1と地盤の境界の少なくとも一部を、後述する洗堀防止ユニット1で被覆してなる。
洗堀防止ユニット1は、基部B1を囲むように複数ユニットを連続配置するのが望ましい。この際、隣接する洗堀防止ユニット1を拘束面材20で相互に連結してもよい。
本例では、相互に連結した複数の洗堀防止ユニット1で、基部B1の3面を囲い込んで配置する。
このように、連結した洗堀防止ユニット1で、構造物Bの基部B1の角部や湾曲部を囲むことで、基部B1の片側に、洗堀防止ユニット1を基部B1から引き離すような水流が生じた際に、基部B1の反対側の洗堀防止ユニット1が基部B1に引っ掛かってこれに抵抗するという、相互拘束効果を生じさせることができる。
これによって、例えば津波による短期的な押し波と引き波の反復に対して、基部B1両側の洗堀防止ユニット1が一体に抵抗することで、洗堀防止ユニット1の流失を防ぐことができる。
【0018】
<2>構造物。
本発明の洗堀防止構造Aを適用する構造物Bは、水底に基部B1を有する構造物である。
本例では、構造物Bとして、コンクリート製ケーソンからなる防波堤(直立提)の例について説明する。
ただし、構造物Bはこれに限られず、海岸堤防、河川堤防、洋上風力発電施設の基礎等にも適用可能である。また、防波堤も直立提に限らず、傾斜提又は混成提であってもよい。
要は水底に基部B1があり、水流によって洗堀を受ける可能性があれば、いかなる構造物Bにも適用できる。
【0019】
<3>洗堀防止ユニット(
図2)。
洗堀防止ユニット1は、複数の根固め材10と、拘束面材20と、を少なくとも備える、マット状の部材である。
詳細には、地盤上に展開した拘束面材20の上に、複数の根固め材10を並列し、各根固め材10を拘束面材20に固定してなる。
本例では、根固め材10の下方の数か所で、根固め材10の袋体11の網目と拘束面材20の網目にロープを連通して締結する。ただし根固め材10の固定手段はこれに限られず、公知の各種手段を採用することができる。
また、本例では隣り合う根固め材10の隙間に間詰材30を充填している。
本例では、略正方形の拘束面材20上に、3個×3列=合計9個の根固め材10を、等間隔に配置する。ただし、根固め材10の数や配列はこれに限らず、適宜の数と配列を採用することができる。例えば根固め材10を千鳥状に配置してもよい。
本例では、根固め材10同士を直接連結はしないが、ロープ等を介して隣り合う根固め材10同士を直接連結してもよい。
本発明の洗堀防止ユニット1は、根固め材10及び拘束面材20の変形追従機能と、拘束面材20の応力分散機能の組合せによって、津波などによる局所的な速い水流に対して、構造全体で抵抗可能な、粘り強い構造に特徴を有する。
【0020】
<3.1>根固め材。
根固め材10は、荷重により地盤を抑え込む部材である。
根固め材10は、袋体11と、袋体11の内部に充填した中詰材12と、を少なくとも備える。
袋体11は、袋状の編地からなる。より詳細には、例えばポリエステル繊維からなる筒状のラッセル編地の下端を絞り込んで底網を形成し、上端部側の開口を袋口として形成した円形袋状の構造を採用する。ただしこれに限らず、編地はナイロン製、ポリエチレン製等であってもよい。また、袋体11は円形袋状に限らず、直方体形状であってもよい。
袋体11の袋口には、袋口を絞って閉じるための、袋口ロープを挿通する。
本例では中詰材12として、直径150mm程度の砕石を採用する。ただしこれに限らず、適宜の直径の、玉石その他の自然骨材やコンクリートガラ等を採用することができる。
【0021】
<3.2>拘束面材。
拘束面材20は、地盤を面状に拘束する部材である。
拘束面材20は、地盤の起伏に追従可能な柔軟性を備える、ネット体又はシート体からなる。
拘束面材20は、透水性、不透水性いずれであってもよいが、水流によるめくれを防ぐためには透水性を有する構造とすることが望ましい。
本例では拘束面材20として、ポリエステル繊維製の網体を採用する。
拘束面材20を網体とすることで、津波等によって局所的にかかる水圧を、網体の張力によって拘束面材20全体に分散して抵抗することができる。
拘束面材20はポリエステル繊維製の網体に限らず、例えばポリウレタン繊維製の網体、メッシュシート、適宜の素材の不織布や多重布等を採用してもよいが、十分な引張強度と耐摩耗性を備えた素材・構造とすることに留意する。
【0022】
<3.3>間詰材。
間詰材30は、複数の根固め材10の隙間に間詰する部材である。
複数の根固め材10の隙間を間詰材30で塞ぐことで、複数の根固め材10同士の一体性を高めて一体に挙動させるとともに、洗堀防止ユニット1全体の重量を増加させ、後述する地盤拘束機能を高めることができる。
本例では間詰材30として、直径150mm程度の砕石を採用する。ただしこれに限らず、適宜の直径の、玉石その他の自然骨材やコンクリートガラ等を採用することができる。
【0023】
<3.4>地盤拘束機能(
図3)。
洗堀防止ユニット1は、地盤の先行洗堀に伴い、拘束面材20が自律的に地盤を拘束する、地盤拘束機能を備える。詳細には、洗堀防止ユニット1は以下のように機能する。
構造物Bの基部B1と地盤の境界を洗堀防止ユニット1で覆うことで、水流による基部B1前面の地盤の洗堀を防ぐ。一方、水流が洗堀防止ユニット1前方の地盤(詳細には拘束面材20の縁部付近の地盤)を洗堀することで、地盤上に先行洗堀部Cが形成される。
洗堀が進み、先行洗堀部Cが深くなると、最前列の根固め材10が先行洗堀部C内に落ち込み、落ち込んだ根固め材10の荷重により拘束面材20の前縁部が下方に引っ張られる。
一方、拘束面材20の他部は、上方に残った他の根固め材10の荷重により地盤に支圧されているため、拘束面材20の下方への移動が規制される。
こうして、先行洗堀部C内の根固め材10の荷重と、先行洗堀部C外の根固め材10の荷重とにより、拘束面材20が上下方向に引っ張られることで、拘束面材20が背面の地盤を包み込むように拘束する。
以上のように、本発明の洗堀防止ユニット1は、基部B1の洗堀を防ぎつつ、拘束面材20の前方に先行洗堀部Cを形成することで、拘束面材20によって地盤を抱き込むように拘束し、極めて速い水流に対しても安定した洗堀防止効果を奏することができる。