(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マスクやフェイスシールドを着用したままの飲食は困難であり、飲食時には外す必要がある。よって、飛沫の拡散防止という観点からすると不十分であった。
一方で、口とマスクとの間に空間を確保すべく、フェイスシールドのような形状やマスクの鼻先が突出する形状とした場合、その構造上、手元や足元の視界を阻害するという欠点がある。さらにフェイスシールドの場合、眼前に透明板が配設されることによる不快感を生じる場合もある。
さらに、従来のマスクは不織布等を何層も積層させて形成するために重量があり、長時間の着用に不快感を覚える場合もあった。さらに、ゴム紐等の耳掛けによりマスク本体を顔面に密着させるマスクは、耳の後ろに耳掛けが触れることやマスク本体の密着による不快感が生じることもあった。
【0007】
即ち、飛沫の拡散抑制というマスクの機能を保持しつつ、飲食の容易さや呼吸のしやすさ、着用に際しての不快感の軽減、そして手元や足元の視界確保を鼎立することが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、以下の手段を採用している。
(1)請求項1の発明は、上下方向の中心線を境に右側部分と左側部分とを備えるマスク本体部と、粘着部と、を備えるマスクであって、前記中心線は上から上側中心線部と下側中心線部とをこの順に備え、前記上側中心線部は右側舌片と左側舌片を接合することにより形成され、前記下側中心線部は接合によらずに形成され、前記右側部分は周縁部に右側上辺部、右側端部、および右側下辺部を備え、前記右側上辺部は、中心線から右端に向かって右上切込部と右上短辺部とをこの順に備え、前記右側下辺部は、右端から中心線に向かって右下切込部と右下短辺部とをこの順に備え、前記左側部分は周縁部に左側上辺部、左側端部、および左側下辺部を備え、前記左側上辺部は、中心線から左端に向かって左上切込部と左上短辺部とをこの順に備え、前記左側下辺部は、左端から中心線に向かって左下切込部と左下短辺部とをこの順に備え、前記右上切込部および前記左上切込部は、装着者の顔表面とマスク本体との間に隙間を形成し、前記右下短辺部および前記左下短辺部は、装着者の顔表面から離間することを特徴とする、マスクを提供する。
(2)請求項2の発明は、前記上側中心線部と下側中心線部の長さの比が2:1から1:1の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載のマスクを提供する。
この場合、着用者の口元とマスクの間の空間を確保し、飲食のし易さを確保しつつ、着用者の下方向の視界を確保することができる。
(3)請求項3の発明は、前記マスク本体部の厚さが200マイクロメートル以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のマスクを提供する。
この場合、マスクが軽量になり、マスク装着時の不快感を低減するとともに、マスクが自然に脱落することを抑制する。
(4)請求項4の発明は、前記粘着部は少なくとも前記右側部分の内側上部に配設される右上粘着部と、前記左側部分の内側上部に配設される左上粘着部と、を備えることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載のマスクを提供する。
この場合、粘着部が着用者の頬骨付近に配設されるため、マスク着用時にマスクが安定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマスクは、右側舌片と左側舌片の接合により形成される上側中心線部部分が前方に突出しているため、鼻下および口周辺部に空間を確保することができる。このことにより、マスクを装着したままでも飲食ができるという利点がある。また、右下切込部や左下切込部、さらに右端切込部や左端切込部により、飲食物がマスクに接触せず、飲食しやすいという効果がある。さらに、右上切込部や左上切込部により着用者の顔面とマスク上部との間に隙間ができるため、着用者の手元や足元といった下方向の視界が良好になるという利点がある。
即ち、本発明のマスクは、飛沫の拡散抑制という従来のマスクの機能を保持しつつ、飲食の容易さや、手元や足元の視界の確保が利点として挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の各実施形態では、同一又は対応する部分については同一の符号を付して説明を適宜省略する場合がある。また、以下に用いる図面は本実施形態を説明するために用いるものであり、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
マスクの向きや方向を説明するに際し、上側とはマスク装着者の額側を、下側とはマスク装着者の顎側を指す。また、右側とはマスク装着者側から見て右側を、左側とはマスク装着者側から見て左側を指す。さらに、前後方向はマスク装着者の前後方向を指す。例えば、マスク装着者の視線方向は前方向である。
裏面とはマスク装着者に接する面を指し、表面とはその反対面を指す。なお、上下方向を垂直方向と、前後左右方向を水平方向と表現する場合がある。
【0013】
(実施形態の概要)
本実施形態のマスク1は、マスク本体部10と、装着者の顔面にマスクを密着させる粘着部40とを備える。
マスク本体部10の右側舌片170と左側舌片220の接合により形成される上側中心線部122部分が、装着時に前方に突出するため、装着者の鼻下および口周辺に空間を確保する。これにより、着用者はマスクを装着したままでも飲食が可能になる。また、右下切込部162や左下切込部212、右端切込部154や左端切込部204により、飲食物がマスクに接触せず、飲食が容易になる。さらに、右上切込部142や左上切込部192により着用者の顔面とマスク上部との間に隙間ができるため、着用者の手元や足元といった下方向の視界が良好になる。
【0014】
(実施形態の詳細)
以下、図を用いて本実施形態の詳細を説明する。
【0015】
(第一の実施形態)
本実施形態に係るマスク1は、中心線12を境に右側部分14と左側部分19とを備えるマスク本体部10と、粘着部40とを備える。以下、図面を用いて説明する。なお、粘着部40については
図3で説明する。
【0016】
図1は第一の実施形態に係るマスク1を着用者が着用した状態を、右側から観察した図である。
図1を用いてマスク本体部10の右側部分14について説明する。
図1に示すように、右側部分14は周縁に中心線12、右側上辺部140、右側端部150および右側下辺部160を備える。
【0017】
<中心線12>
中心線12はマスク本体部10の表面に沿って、マスク本体部10の上端から下端まで縦断する。中心線12はマスク本体部10を右側部分14と左側部分19に分割する境界部分である。第一の実施形態に係るマスクの右側部分14と左側部分19は、中心線12を含む面を対象面とした対称構造を備える。
なお以後の説明に際し、中心線12はマスク1の表側、裏側の双方の説明に用いるが、特に区別する必要がある場合は中心線12表側、中心線12裏側などと表記する。
【0018】
中心線12は上側中心線部122と下側中心線部124に区分される。
上側中心線部122は後述する右側舌片170と左側舌片220を接合することにより形成される。上側中心線部122は装着者の鼻筋に沿う。
下側中心線部124は一体として形成されるマスク1の右側部分14と左側部分19の境界部分である。下側中心線部124は、本実施形態のマスク1が折り畳む際の折り目となる線(折目線)である。即ち、下側中心線部124は上側中心線部122と異なり、接合によらずに形成される。
【0019】
本実施形態のマスク1において、上側中心線部122と下側中心線部124の長さの比(以下、中心線線分比と称する)は1.5:1である。中心線線分比は2:1から1:1の範囲にあることが好ましく、1.75:1から1.25:1の範囲にあることがさらに好ましい。この範囲より上側中心線部122の方が長くなると、マスクの形状が前方向に突出するため、マスク装着者の下方向の視界を阻害する。また、この範囲より下側中心線部124の方が長くなると、装着者の顔面とマスクとが密接するため、装着者の飲食の阻害となる。
【0020】
なお、以下マスク本体部10の説明において、装着者の鼻筋に向かう方向を中心線方向や中心線側、耳側(端側)に向かう方向を外側方向や端方向、端側とも表現する。
【0021】
<右側上辺部140>
右側上辺部140は端部で接続する右上切込部142と右上短辺部144を備える。右側上辺部140は、中心線側から右端に向かって右上切込部142と右上短辺部144とをこの順に備える。右上切込部142は曲線である。右上切込部142の中心線側の端は上側中心線部122の上端に接する。また、右上短辺部144は直線である。
【0022】
右上切込部142の中心線側は、装着者の鼻に接する。また、右上短辺部144は装着者の右頬の頬骨周辺に接する。一方で、右上切込部142の一部は装着者に接触せず、装着者の顔表面との間に隙間を与える(
図5)。これは、この部分を裁断し、切込を入れることで、当該隙間を確保し、装着者の下方向の視界を確保するものである。この隙間により、例えば飲食時において手元や口元を確認することができる。
【0023】
<右側端部150>
右側端部150は端部で接続する右端直線部152と右端切込部154を備える。右側端部150は上側から下側に向かって右端直線部152と右端切込部154とをこの順に備える。右端直線部152は直線である。また、右端切込部154も直線である。右端直線部152の上側の端は右上短辺部144の端に接する。また、右端切込部154の下側の端は後述する右下切込部162の端に接する。
【0024】
本実施形態のマスク1着用に際し、右端直線部152が垂直方向となるように装着する。また、右端切込部154により、箸やストローなどの器具がマスクに接触することを回避し、装着者の飲食が容易になる。
【0025】
<右側下辺部160>
右側下辺部160は、端部で接続する右下切込部162と右下短辺部164を備える。右側下辺部160は、右端から中心部に向かって右下切込部162と右下短辺部164とをこの順に備える。右下切込部162は曲線である。また、右下短辺部164は直線である。右下短辺部164の中心線側の端は下側中心線部124の下端に接する。
【0026】
右下短辺部164と装着者の顔表面は離間する。また、右下切込部162の中心線側と装着者の顔表面も離間する。よって、右側下辺部160と装着者の顔表面との間には隙間がある。即ち、装着者の口元周辺とマスク本体部10との間には空間が確保されており、その空間は下方向に開放されている。このことにより、装着者は本実施形態のマスク1を着用したままで飲食をすることができる。
ここで、本実施形態のマスク1が右下切込部162を備えることにより、箸やストローなどの器具がマスクに接触することを回避し、飲食がより容易になる。例えば右下切込部162が無く、上述の右端直線部152と右下短辺部164が直接接続しても下方向の空間は確保されるため、飲食は可能であるが、右下切込部162を設けることで、飲食がさらに容易になる。
【0027】
上述のように、本実施形態のマスクは右端切込部154と右下切込部162を備える。説明のために右側端部150と右側下辺部160で分けているが、マスク右側部分14は右上切込部142以外に2つの切込部分を備えることが特徴である。飲食を容易にする点で右下切込部162の役割が大きいが、2つの切込部分を備えることでより飲食が容易になる。
【0028】
図2は本実施形態に係るマスク1を着用者が着用した状態を、左側から観察した図である。
図2を用いてマスク本体部10の左側部分19について説明する。
図2に示すように、左側部分19は周縁に中心線12、左側上辺部190、左側端部200および左側下辺部210を備える。中心線12については既に説明しているため、それ以外の要素について説明する。
【0029】
<左側上辺部190>
左側上辺部190は端部で接続する左上切込部192と左上短辺部194を備える。左側上辺部190は、中心線側から左端に向かって左上切込部192と左上短辺部194とをこの順に備える。左上切込部192は曲線である。左上切込部192の中心線側の端は上側中心線部122の上端に接する。また、左上短辺部194は直線である。
【0030】
左上切込部192の中心線側は装着者の鼻に接する。また、左上短辺部194は装着者の左頬の頬骨周辺に接する。一方で、左上切込部192の一部は装着者に接触せず、装着者の顔表面との間に隙間を与える(
図5)。これは右上切込部142と同様であるため説明を省略する。
【0031】
<左側端部200>
左側端部200は端部で接続する左端直線部202と左端切込部204を備える。左側端部200は上側から下側に向かって左端直線部202と左端切込部204とをこの順に備える。左端直線部202は直線である。また、左端切込部204も直線である。左端直線部202の上側の端は左上短辺部194の端に接する。また、左端切込部204の下側の端は後述する左下切込部212の端に接する。
【0032】
本実施形態のマスク1着用に際し、左端直線部202が垂直方向となるように装着する。また、左端切込部204により、箸やストローなどの器具がマスクに接触することを回避し、装着者の飲食が容易になる。
【0033】
<左側下辺部210>
左側下辺部210は、端部で接続する左下切込部212と左下短辺部214を備える。左側下辺部210は、左端から中心部に向かって左下切込部212と左下短辺部214とをこの順に備える。左下切込部212は曲線である。また、左下短辺部214は直線である。左下短辺部214の端は下側中心線部124の下端に接する。
【0034】
左下短辺部214と装着者の顔表面は離間する。また、左下切込部212の中心線側と装着者の顔表面も離間する。よって、左側下辺部210と装着者の顔表面との間には隙間がある。これは右側下辺部160と同様であるため説明を省略する。
本実施形態のマスク1が左下切込部212を備えることにより、箸やストローなどの器具がマスクに接触することを回避し、飲食がより容易になる点、左下切込部212を設けることで、飲食がさらに容易になる点も同様である。
【0035】
上述のように、本実施形態のマスクは左端切込部204と左下切込部212を備える。説明のために左側端部200と左側下辺部210で分けているが、マスク左側部分19は左上切込部192以外に2つの切込部分を備えることが特徴である。飲食を容易にする点で左下切込部212の役割が大きいが、2つの切込部分を備えることでより飲食が容易になる。
【0036】
図3は縫合前マスク1Aを図示したものである。縫合前マスク1Aは本実施形態に係るマスク1の縫合前の状態である。
図3は裏面から観察した状態を表した図である。縫合前マスク1Aの右側舌片170と左側舌片220を縫合糸30で縫合することにより、本実施形態のマスク1が形成される。
【0037】
縫合前マスク1Aは、右側部分14Aと左側部分19Aを備えるマスク本体部10Aと、粘着部40を備える。
右側部分14Aは周縁に右側上辺部140、右側端部150、右側下辺部160を備える。また、右側部分14Aは右側舌片170を備える。
図3に示すように、右側舌片170は右側舌片側辺部172、右側舌片上辺部174、右側折目部176、舌片共有辺部180で囲まれる部分である。
右側舌片上辺部174の端は右上切込部142の端と接続する。右側折目部176の上端も、右上切込部142の端と接続する。
なお便宜上、右側舌片170の表側を右側接合面と表記する。
【0038】
左側部分19Aはその周縁部に左側上辺部190、左側端部200、左側下辺部21Aを備える。また、左側部分19Aは左側舌片220を備える。
図3に示すように、左側舌片220は左側舌片側辺部222、左側舌片上辺部224、左側折目部226、舌片共有辺部180で囲まれる部分である。
左側舌片上辺部224の端は左上切込部192の端と接続する。左側折目部226の上端も、左上切込部192の端と接続する。
なお便宜上、左側舌片220の表側を左側接合面と表記する。
【0039】
図3のうち、右側上辺部140、右側端部150、右側下辺部160、左側上辺部190、左側端部200、左側下辺部210に対応する部分については
図1で説明済みのため、説明は省略する。
【0040】
<右側舌片170・左側舌片220>
図3に示すように、右側舌片170はマスク1の右側部分14の中心線側に配設される。左側舌片220はマスク1の左側部分19の中心線側に配設される。上述したように、右側舌片170と左側舌片220とが接合糸で縫合されることにより、上側中心線部122が形成される。
【0041】
具体的には、右側舌片170を右側折目部176に沿って紙面手前側に折り込み、また左側舌片220を左側折目部226に沿って紙面手前側に折り込む。向かい合わせになった右側接合面(右側舌片170の表側)と左側接合面(左側舌片220の表側)が接するように重ね合わせる。そして、右側接合面と左側接合面が接合した状態で右側舌片170と左側舌片220を縫合糸30により縫合する。ここで、縫合の方法は右側舌片170と左側舌片220を接合できれば良く、任意の方法が用いられる。例えば本実施形態では、1本針3本糸のロックミシンで縫合を行っている。
なお、右側部分14と左側部分19を接合する方法は縫合に限られるものではない。例えば、右側舌片170と左側舌片220は接着剤で接合されても良い。
【0042】
縫合等の接合により形成された上側中心線部122部分は、接合されてない下側中心線部124部分と比べ、高い強度を有する。そのため、上側中心線部122部分は装着時に折れることなく、マスクと装着者の口元周辺との空間を長時間維持する。
本実施形態のマスク1は後述するように不織布で形成されている。そのため、縫合等の接合を用いないと、マスク本体部10が風の影響等で容易に折れ曲がってしまい、その形状を維持できず、実用上の問題がある。しかしながら、本実施形態のマスクは接合により強度が増しているため、マスクの軽量性を維持しつつも、強固に形状を維持し、長時間の使用に耐え得る。
【0043】
<粘着部40>
本実施形態のマスク1は粘着部40を備える。粘着部40はマスク1を装着者の顔表面に固定する。第一の実施形態におけるマスク1は、粘着部40として右上粘着部42、左上粘着部44の他、右端粘着部46と左端粘着部48を備える。マスク1Aとマスク1で粘着部40の位置は一致するため、粘着部40の位置は
図3を用いて説明する。
【0044】
<右上粘着部42>
右上粘着部42は右側上辺部140の右上短辺部144に沿って配設される粘着体により構成される。本実施形態において、粘着体は両面テープである。当該両面テープは、製造販売時において剥離紙により保護されている。使用時に剥離紙を剥がすことにより本実施形態のマスク1を使用する。
なお、左上粘着部44は左右が異なる以外は右上粘着部42と構造や機能が同一であるため、説明を省略する。
【0045】
<右端粘着部46>
右端粘着部46は右側端部150の右端直線部152に沿って配設される粘着体により構成される。本実施形態において、粘着体は両面テープである。着用時の使用方法は右上粘着部42と同一であるため説明を省略する。
なお、左端粘着部48は左右が異なる以外は右端粘着部46と構造や機能が同一であるため、説明を省略する。
【0046】
粘着部40は右上粘着部42と左上粘着部44だけでも良い。右端粘着部46と左端粘着部48のみに粘着体を配設する場合と比べ、着用者の頬骨近辺にマスク1を粘着することで、着用時の安定性が向上する。しかしながら、右上粘着部42と左上粘着部44に加えてさらに右端粘着部46と左端粘着部48を備えることにより、マスクが外れにくくなり、さらに安定するという利点がある。
【0047】
図4は本実施形態のマスク1を折り畳んだ状態を示す図である。上述したように、右側部分14と左側部分19は中心線12を含む面を対称面とする対称構造である。そのため、右側上辺部140と左側上辺部190、右側端部150と左側端部200、右側下辺部160と左側下辺部210は側面視で重なり合い、
図4のようになる。
右側舌片170と左側舌片220を縫合糸30で縫合した部分および粘着部40は表側に表れないため、破線で表示する。図中のジグザグ線は縫合糸30による縫合部分を表す。
【0048】
以下、マスクの周縁を形成する直線部分や曲線部分の接線等が成す角度について説明する。この角度は装着者の視界や装着感、マスクの飛沫拡散防止性能に大きく影響する。以下の角度は
図4に示したように折り畳んだ状態における角度であり、すべて内角で表示する。
【0049】
本実施形態において、折り畳み状態における上側中心線部122と下側中心線部124が成す角は155度である。
この上側中心線部122と下側中心線部124が成す角は150度から165度の範囲内であることが好ましい。165度より大きくなるとマスクが水平方向に突出するような形となり、装着者の下方向の視界の妨げになる。また、150度より小さくなると、飲食に際してマスクが妨げとなる。
【0050】
本実施形態において、右上切込部142の中心側の端における接線と、上側中心線部122が成す角は90度である。この角度は80度から100度の範囲内であることが好ましい。この角度が80度より小さくなると、上曲線部によりマスクと装着者との間に生じる空隙が小さくなり、装着者の手元や口元の視界が阻害される。この角度が100度より大きい場合は右上切込部142によりマスクと装着者との間に生じる空隙が大きくなり、マスクの安定装着感を損なう。
同様に、左上切込部192の中心側の端における接線と、上側中心線部122が成す角は90度である。この角度は80度から100度であることが好ましい。
【0051】
本実施形態において、右端直線部152と右上短辺部144の成す角は115度である。この角度は、110度から120度の範囲内であることが好ましい。120度より大きくなるとマスクが水平方向に突出するような形となり、装着者の下方向の視界の妨げになる。また、110度より小さくなると、右上切込部142によりマスクと装着者との間に生じる空隙が小さくなり、装着者の手元や口元の視界が阻害される。
同様に、左端直線部212と左上短辺部194の成す角は115度である。この角度は、110度から120度の範囲内であることが好ましい。
【0052】
図5は本実施形態のマスク1を装着者が装着した状態を説明する図である。図中の二点鎖線は装着者の顔表面のラインを示す。即ち、装着者の顔表面のラインと、マスクの上辺部(右側上辺部140、左側上辺部190)との間には隙間がある。上述したように、この隙間があることで、装着者の下方向の視界、即ち手元や口元の視界が確保される。
【0053】
(第二の実施形態)
図6は第二の実施形態に係るマスクの立体形状を六面図で表したものである。以下
図7から
図12はこの六面図から各図面を切り出したものである。
図6中、上段の図は平面図を表す。中段の図は左から順に左側面図、正面図、右側面図、背面図である。下段の図は底面図を表す。
ここでは、着用者から見たマスクの向き、即ちマスクの裏面側から観察した図を正面図として表す。粘着部40は織り込まれた部分に隠れるため、図示していない。また、布の折れにより生じる線(折り目)は表示していない。第二の実施形態に係るマスクは、第一の実施形態に係るマスクとは寸法が異なる。
【0054】
図7は第二の実施形態のマスク1の平面図である。
【0055】
図8は第二の実施形態のマスク1の左側面図である。
【0056】
図9は第二の実施形態のマスク1の正面図である。
【0057】
図10は第二の実施形態のマスク1の右側面図である。
【0058】
図11は第二の実施形態のマスク1の背面図である。マスクを表側から観察した図である。
【0059】
図12は第二の実施形態のマスク1の底面図である。
【0060】
本実施形態におけるマスク本体部10は不織布で構成される。粘着部40を皮膚に直接貼り付けて使用するため、マスク本体部10は薄く、軽量であることが好ましい。
例えば本実施形態におけるマスク本体部10は、一層の不織布で構成される。これにより、多層の不織布を重ねたマスクや、プラスチック製のフェイスシールドと比べ、薄く軽量である。
【0061】
本実施形態において、マスク本体部10の厚さは200マイクロメートルである。マスク本体部10の厚さは400マイクロメートル以下であることが好ましく、200マイクロメートル以下であることがより好ましい。マスク本体部10の厚さが400マイクロメートル以下であればマスクが軽くなるため、装着者の顔面からマスクが自然に脱落してしまうことが抑制される。その結果、長時間の使用に耐え得る。さらに200マイクロメートル以下の厚みであれば、マスクがより軽くなるため、装着者の顔面からマスクが自然に脱落することがほぼ抑制され、さらに長時間の使用に耐え得る。
【0062】
本実施形態のマスク1は右側部分14と左側部分19が中心線12を含む面を対称面とする対称構造である。しかしながら、これに限られるものではなく、発明の趣旨を超えない範囲において、右側部分14と左側部分19が非対象構造を有していても良い。例えば、右利きの装着者と左利きの装着者に対応するように、適宜改良を加えても良い。具体的には、右利きの装着者の利便性を上げるため、右下切込部162を(左下切込部212に比べて)マスク中央方向に深く裁断し、開放する空間をより大きくすることが考えられる。
【0063】
本実施形態において、粘着体は両面テープである。しかしながらこれに限られるものではなく、マスク本体部10と着用者の顔面を密着するという目的を達するものであれば代替可能である。そのようなものとして、例えば粘着性を有するゲルなどが挙げられる。この場合、洗って乾燥させることで粘着性が回復し、再利用が可能になるなどの利点がある。
また、粘着部40は右側と左側で別々に配設されるものに限られない。例えば、右上切込部142と左上切込部192近傍を横方向に横断する1本の粘着体を用いても良い。
【0064】
なお、
図4および
図6から
図12において、意匠的特徴部分については実線で示している。本願を意匠登録出願に変更する場合、図面において実線で示した部分を「意匠登録を受けようとする意匠」とすることができる。即ち、マスク1の全体形状を「意匠登録を受けようとする意匠」として意匠登録出願に変更してもよい。この場合、図面に描かれた引出線や符号は変更出願の必要に応じて適宜削除される。また、
図1〜
図12の図面のうち、任意の図面を変更出願における参考図に用いても良い。
図1〜
図12の図面により、マスク1を特定できるあらゆる態様の意匠が記載されている。
【課題】飛沫の拡散抑制という従来のマスクの機能を保持しつつ、飲食の容易さや呼吸のしやすさ、着用に際しての不快感の軽減、そして手元や足元の視界確保を鼎立することが課題であった。
【解決手段】本実施形態のマスク1は、マスク本体部10と、装着者の顔にマスクを密着させる粘着部40とを備える。マスク本体部10の右側舌片170と左側舌片220の接合により形成される上側中心線部122部分が装着時に装着者の前方に突出するため着用者の口周辺に空間を確保する。これにより、装着者はマスクを装着したままでも飲食が可能になる。また、右下切込部162や左下切込部212、右端切込部154や左端切込部204により、飲食物がマスクに接触せず飲食が容易になる。さらに、右上切込部142や左上切込部192により着用者の顔面とマスク上部との間に隙間ができるため、着用者の手元など下方向の視界が良好になる。