【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例をあげて、本発明のシアル酸誘導体をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
本発明のシアル酸誘導体の製造方法は、
図1に示すように、下記に示す工程を含むことを特徴とする。
すなわち、下記式(3a)1R、(3b)1S:
【化13】
及び/又は下記式(4a)1R、(4b)1S:
【化14】
で表わされる化合物をそれぞれ酸化剤を用いて酸化し、
下記式(5a)1R、(5b)1S:
【化15】
及び/又は下記式(6a)1R、(6b)1S:
【化16】
で表わされる化合物を得る工程、を含むことを特徴とする上記式(I)及び/又は上記式(II)で表わされるシアル酸誘導体の製造方法である。
【0055】
[化合物(2a)及び(2b)の合成]
化合物(2a)(アセチル=4−アセタミド−3,6,7,8−テトラ−O−アセチル−2,4−ジデオキシ−α−D−グリセロ−D−ガラクト−オクトピラノシド)及び化合物(2b)(化合物(2a)のβ−体)は公知の方法(例えば、非特許文献2)に従ってシアル酸から合成することができる。
【0056】
具体的には、まずシアル酸をピリジンと無水酢酸の混合物(モル比で1:1)に溶解させる。次に、室温で6〜24時間混合した後、すばやく加熱し、1〜4時間還流する。得られた溶液を減圧下で蒸発させ、残渣をクロロホルム中で再懸濁させる。
【0057】
次に、再懸濁した有機層をNaHCO
3、1M HCl、及びブラインの水溶液で洗浄し、得られた有機層をMgSO
3で乾燥して、減圧下でセライトろ過し濃縮する。そして、濃縮された未精製の生成物をEtOAc:ヘキサンの傾きをもったシリカ・フラッシュ・クロマトグラフィを用いて分離することにより化合物(2a)及び(2b)を約1:5のモル比で含む混合物を得ることができる。
【0058】
[化合物(3a)及び(3b)並びに化合物(4a)及び(4b)の合成]
化合物(2a)及び(2b)を約1:5のモル比で含む混合物(254mg,0.534mmol)を窒素雰囲気下で、蒸留した1,2−ジクロロエタン(6mL)に溶解し、約−10℃で氷冷した。次に、氷冷した混合溶液にチオ酢酸(0.227mL,3.22mmol)及びトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル(0.581mL,3.21mmol)を加えてそのまま徐々に20℃に加温しながら反応が終了するまで20時間攪拌した。
【0059】
次に、得られた反応液に氷及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてクロロホルムで抽出した。そこで有機層を分離し、水及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、得られた固体をセライトで濾過して濾液を減圧濃縮した。そして、残渣をシリカゲル(15g)を用いたカラムクロマトグラフィーで精製(溶出液は酢酸エチル)し、油状物質として化合物(3a)、(3b)及び化合物(4a)、(4b)(144mg、約58%収率)をモル比で約16:30:1:34の混合物として得た。
【0060】
合成した化合物(3a)及び(3b)の混合物の分析値を下記に示す。
(3b)(1S−アノマー:アキシアル位SAc基アノマー,CJV055401(=実験で得た物質につけた番号、以下同様)).Rf=0.4(EtOAc);
1H−NMR(600MHz,CDCl
3):1.91(1s,3H,NHAc),1.98−2.12(4s,12H,4OAc),2.15−2.19(ddd,1H,J
2ax,1=1.6,J
2ax,2eq=13.6,J
2ax,3=5.1,H−2ax),2.30−2.36(m,1H,H−2eq),2.34(1s,3H,SAc),3.90−3.92(dd,1H,J
5,4=10.4,J
5,6=1.9,H−5),4.01−4.05(m,2H,H−4とH−8)4.26−4.29(dd,1H,J
8',7=2.9,J
8',8=12.6,H−8’),4.98−5.03(ddd,1H,J
3,2eq=4.7,J=10.3,J=11.7,H−3),5.11−5.14(ddd,1H,J
7,6=7.2,J
7,8=6.3,J
7,8'=2.9,H−7),5.30−5.32(dd,1H,J
6,5=1.9,J
6,7=7.2,H−6),5.40−5.42(d,1H,J=10,NH),6.13−6.14(d,1H,J
1,2ax=4.7,H−1);+ESIHRMS計算値C
20H
29NNaO
11S:514.1359,実測値:m/z514.1393[M+Na]
+(150710−CJV031302).
【0061】
合成した化合物(4a)及び(4b)の混合物の分析値を下記に示す。
(4b)(1S−アノマー:アキシアル位SAc基アノマー,CJV055401,CJV030702).Rf=0.4(EtOAc);
1H−NMR(600MHz,CDCl
3):1.99,2.02,2.10,2.13(4s,12H,(4a)c),2.36(1s,3H,SAc)3.84−3.86(dd,1H,J
5,4=10,J
5,6=1.8,H−5),4.10−4.13(m,1H,H−8),4.29−4.32(dd,1H,J
8',8=12.6,J
8',7=2.6,H−8’),4.48−4.51(t,1H,J
4,3とJ
4,5=9.7,H−4),5.19−5.22(ddd,1H,J
7,6=7.8,J
7,8=5.6,J
7,8'=2.6H−7),5.31−5.33(dd,1H,J
6,5=1.8,J
6,7=7.8,H−6),5.52−5.54(d,1H,J
NH,4=9.4Hz,NH)5.80(s,2H,H−2,H−3)6.27(s,1H,H−1);+ESIHRMS計算値C
18H
25NNaO
9S:454.1148,実測値:m/z454.1177[M+Na]
+(150710−CJV031302).
【0062】
合成した化合物(3a)及び(3b)並びに化合物(4a)及び(4b)の混合物の分析値を下記に示す。
(3a)及び(3b)並びに(4a)及び(4b)の混合物.主成分の
13C−NMRピーク(150MHz,CDCl
3,CJV055401):20.67,20.70,20.91,21.06,23.16と23.34(CH
3COO,CH
3CONHとCH
3COS),31.19,36.13,43.55,50.10,62.05,62.07,67.3467.37,69.26,69.60,69.86,72.45,78.66と79.01(C−1〜C−8),125.62と131.15((4a)と(4b)のC−2とC−3),169.41,169.56,169.79,170.00,170.48,170.50と170.97(CH
3COOとCH
3CONH),191.40と192.82(CH
3COS);
【0063】
合成した化合物(3a)及び(3b)並びに化合物(4a)及び(4b)の混合物の分析値を下記に示す。
(3a)及び(3b)並びに(4a)及び(4b)の混合物.副成分の
13C−NMRピーク(150MHz,CDCl
3,CJV055401):20.45,20.71,20.73,20.76,20.85,23.11,23.18と23.29(CH
3COO,CH
3CONHとCH
3COS),30.55,30.58,30.75,33.01,35.47,43.17,48.24,49.13,61.37,67.28,67.73,68.26,70.06,70.14,70.24,71.89と76.17(C−1〜C−8),91.18,126.89と130.62((4a)と(4b)のC−2とC−3),167.82,168.97,169.35,169.41,169.56,169.72,169.86,170.12,170.15,170.24,170.54と170.86(CH
3COOとCH3CONH),192.14と192.75(CH
3COS).
CJV055401は約15%の1,7−ラクトン環化体(5−アセタミド−2,4,8,9−テトラ−O−アセチル−β−D−グリセロ−D−ガラクト−2−ノヌロピラノソン−7−オリド)を含む:
13C−NMR(150MHz,CDCl
3,CJV045301):20.47,20.74,20.76,20.79,20.95と23.19(CH
3COO,CH
3CONHとCH
3COS),30.91,33.05,48.23,61.39,67.67,70.31,71.94と76.18(C−2〜C−8),91.18,91.35,164.42,167.86,169.01,169.33,169.78,170.59(CH
3COOとCH
3CONH).
【0064】
[化合物(5)及び(5b)並びに化合物(6b)の合成]
前記で得られた化合物(3a)及び(3b)並びに化合物(4a)及び(4b)のモル比で約16:30:1:34の混合物(854mg、約1.8mmol)の酢酸(12mL)溶液に、酢酸アンモニウム(約1g、約13mmol、約7.8当量)とオキソン(登録商標)(3.67g、11.9mmol、7.17当量)を加えて20℃で約19時間攪拌した。次に、得られた反応液にメタノール(約10mL)を加えて、不溶物をセライトを用いて濾過し、濾液を減圧濃縮した。そして、残渣をシリカゲル(12.6g)を用いたカラムクロマトグラフィーで精製(溶出液は酢酸エチルとエタノールの割合を順次変化させた)し、油状物質として化合物(5a)及び(5b)並びに化合物(6b)(525mg)をモル比で約2:5.6:1の混合物として得た。
【0065】
合成した化合物(5a)の分析値を下記に示す。
(5a)(1R−アノマー:エクアトリアルスルホナート).Rf=0.39(EtOAc:EtOH=2:1);
1H−NMR(400MHz,CD
3OD,CJV043403):1.8−2.0(m,1H,H−2ax)1.85(s,1H,NAc),1.97−2.08(4s,12H,4OAc),2.46−2.51(ddd,1H,J
2eq,1=2.1,J
2eq,2ax=12.6,J
2eq,3=5.1,H−2eq),3.79−3.83(dd,1H,J
5,4=10.4,J
5,6=2.3,H−5),3.93−4.00(q,1H,J
4,3=10.4,J
4,5=10.4,H−4),4.19−4.25(dd,1H,J
8,7=12.3,J
8,8'=6.3,H−8)4.24−4.28(dd,1H,J
1,2ax=11.8,J
1,2eq=2.1,H−1),4.51−4.55(dd,1H,J
8',7=2.8,J
8',8=12.4,H−8’),4.96−5.03(ddd,1H,J
3,2ax=11.3,J
3,2eq=5.1,J
3,4=10.2,H−3),5.28−5.32(td,1H,J
7,6=6.2,J
7,8=6.2,J
7,8'=2.7,H−7),5.38−5.41(m,1H,H−6);−ESIHRMS計算値C
18H
26NO
13S
-:496.1130,実測値:m/z496.1142[M−H]
-(160212−CJV051301).
【0066】
合成した化合物(5b)の分析値を下記に示す。
(5b)(1S−アノマー:アキシアルスルホナート).Rf=0.4(EtOAc:EtOH=2:1);1H−NMR(600MHz,CD
3OD,CJV060501):1.84(s,3H,NAc)1.9−2.1(m,1H,H2ax),1.97,2.00,2.07と2.08(4s,12H,4OAc),2.66−2.70(ddd,1H,J
2eq,1=1,J
2eq,2ax=13.9,J
2eq,3=5.4H−2eq),3.94−3.97(t,1H,J
4,3=10.3,J
4,5=10.3,H−4),4.11−4.14(dd,1H,J
8,7=5.3,J
8,8'=12.6,H−8),4.41−4.43(dd,1H,J
8',7=2.9,J
8',8=12.3,H−8’),4.65−4.67(dd,1H,J
1,2ax=6.7,H−1),4.76−4.78(dd,1H,J
5,4=10.4,J
5,6=2.2,H−5),5.20−5.22(ddd,1H,J
7,6=7.8,J
7,8=5.1,J
7,8'=2.6,H−7),5.39−5.40(dd,1H,J
6,5=2.2,J
6,7=7.8,H−6),5.55−5.60(td,1H,J
3,2ax=10.5,J
3,2eq=5.4,J
3,4=10.5,H−3);
13C−NMR(150MHz,CDCl
3):20.69,20.83,20.87,21.29と22.63(CH
3COOとCH
3CONH),31.45(C−2),50.70(C−4),63.06,69.07,70.97,71.01と72.95(C−3とC−5〜C−8),85.83(C−1),171.64,171.98,172.18と172.58(CH
3COOとCH
3CONH);−ESIHRMS計算値C
18H
26NO
13S
-:496.1130,実測値:m/z496.1142[M−H]
-(160212−CJV051301).
【0067】
合成した化合物(6b)の分析値を下記に示す。
(6b)(1S_アノマー:アキシアルスルホナート).Rf=0.39(EtOAc:EtOH=2:1);
1H−NMR(600MHz,CD
3OD,CJV060503):4.90−4.93(m,1H,H−1),5.81−5.84(dt,1H,J
3,1=1.9,J
3,2=10.1,J
3,4=1.9,H−3),6.09−6.12(dt,1H,J
2,1=2.9,J
2,3=10.1,J
2,4=2.9,H−2);−ESIHRMS計算値C
16H
22NO
11S
-:436.0919,実測値:m/z436.0928[M−H]
-(160212−CJV051301).
【0068】
[化合物(7a)及び(7b)並びに化合物(8a)及び(8b)の合成]
前記で得られた化合物(5a)及び(5b)並びに化合物(6b)をモル比で約4:5:1の混合物(10mg)とし20℃で0.1M水酸化ナトリウムのメタノール溶液に懸濁し、12時間攪拌した。次に、反応液のpHを酢酸を用いて中性にし、得られた溶液を陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR120 H)でろ過し、溶媒を減圧濃縮した。そして、残渣を高速液体クロマトグラフィー(カラム:Inertsil ODS−3セミ分取カラム10X250mm、ジーエルサイエンス社製;検出波長210nm、移動相:15%メタノール水溶液+約40mM酢酸アンモニウム、1mL/min)で精製し、化合物(7a)及び(7b)並びに化合物(8b)を得た。
【0069】
合成した化合物(7a)の分析値を下記に示す。
(7a)(1R−アノマー、エクアトリアルスルホン酸,CJV054801).Rf=0.13(アセトン:1−ブタノール:H
2O=7:2.7:0.3);
1H−NMR(600MHz,CD
3OD):1.76−1.82(q,1H,J
2ax,1=12,J
2ax,2eq=12,J
2ax,3=12,H−2ax),2.00(s,3H,NAc),2.43−2.46(ddd,1H,J
2eq,1=2.2Hz,J
2eq,2ax=12.7,J
2eq,3=4.8,H−2eq),3.46−3.47(d,1H,J=8.8,J=0.9Hz,H−6),3.62−3.65(m,2H,H−5,H−8),3.74−3.89(m,4H,H−3,H−4,H−7,H−8’),4.26−4.29(dd,1H,J
1,2ax=11.7,J
1,2eq=2.1HZ,H−1);−ESIHRMS計算値C
10H
18NO
9S
-:328.0708,実測値:m/z318.0724[M−H]
-(160303−CJV052802).
【0070】
合成した化合物(7b)の分析値を下記に示す。
(7b)(1S−アノマー、アキシアルスルホン酸,CJV055203,CJV060401).Rf=0.16(アセトン:1−ブタノール:H
2O=7:2.7:0.3);[α]D24.8=−0.33(c=1cm、H
2O);
1H−NMR(600MHz,CD
3OD):1.89−1.95(ddd,1H,J
2ax,1=7,J
2ax,2eq=14,J
2ax,3=10.9,H−2ax),2.01(s,3H,NAc),2.61−2.64(ddd,1H,J
2eq,1=0.7,J
2eq,2ax=14,J
2eq,3=5.5,H−2eq),3.43−3.45(dd,1H,J
6,5=1.2,J
6,7=9.1,H−6),3.57−3.60(m,1H,H−8),3.74−3.77(t,1H,J
4,3=10.1,J
4,5=10.1,H−4),3.79−3.84(m,2H,H−7,H−8’),4.24−4.26(dd,1H,J
5,4=10.6,J
5,6=1.5Hz,H−5),4.38−4.43(td,1H,J
3,2ax=10.3,J
3,2eq=5.4,J
3,4=10.3,H−3),4.70−4.71(d,1H,J
1,2ax=6.7,H−1);
13C−NMR(600MHz,CDCl
3):22.58(CH
3CONH),34.31(C−2),54.29(C−4),64.62,67.15,70.21,72.42と74.32(C−3とC−5〜C−8),86.66(C−1),175.35(CH
3CONH);−ESIHRMS計算値C
10H
18NO
9S
-:328.0708,実測値:m/z328.0725[M−H]
-(160303−CJV052802).
【0071】
合成した化合物(8b)の分析値を下記に示す。
(8b)(1S−アノマー、アキシアルスルホン酸,CJV060702).Rf=0.34(アセトン:1−ブタノール:H
2O=7:2.7:0.3);
1H−NMR(600MHz,CD
3OD):1.9(s,3H,NAc),3.49−3.50(dd,1H,J
6,5=1.5,J
6,7=9.1,H−6),3.60−3.63(dd,1H,J
8,7=6.2,J
8,8'=11.4,H−8),3.82−3.85(dd,1H,J
8',7=2.9,J
8',8=11.4,H−8’),3.90−3.93(ddd,1H,J
7,6=9.1,J
7,8=6.2,J
7,8'=2.9,H−7),4.34−4.36(dd,1H,J
5,4=9.5,J
5,6=1.6,H−5),4.67−4.69(dddd,1H,J
4,1=2.3,J
4,2=2.3,J
4,3=2.3,J
4,5=9.5,H−4),4.95−4.97(ddd,1H,J
1,2=2.6,J
1,3=2.6,J
1,3=2.6,H−1),5.92−5.94(dt,1H,J
3,1=2.1,J
3,2=10.3,J
3,4=2.1,H−3),6.12−6.14(dt,1H,J
2,1=2.8,J
2,3=10.3,J
2,4=2.8,H−2).
【0072】
(測定装置及び試薬)
NMRデータは、Agilent社製核磁気共鳴装置400MR(
1H:400MHz)とNMRSystem600(1H:600MHz、
13C:150MHz)で測定した。化学シフト値(δ)はppmで示し、クロロホルム(7.26ppm)及びメタノール(3.31ppm)の残存ピークを
1H−NMRの基準値、クロロホルム(77.0ppm)及びメタノール(49.0ppm)の残存ピークを
13C−NMRの基準値とした。NMRスピン結合定数(J)はヘルツ(Hz)で示した。
【0073】
高分解能質量分析(HRMS)は、Agilent社製6520Accurate−MassQ−TOFで測定した。比旋光度は、日本分光社製P−2200で測定し、補正していない。高速液体クロマトグラフィーには、日立製作所製L−7100ポンプ及びL−7400紫外吸収検出器を用いた。
【0074】
試薬としては、1,2−ジクロロエタン、メタノール、酢酸、エタノールは、和光純薬社製を用いた。トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、チオ酢酸は、東京化成工業社製を用いた。オキソン(登録商標)は、アルドリッチ社製を用いた。セライトはナカライ社製を用いた。重クロロホルム及び重メタノールはケンブリッジアイソトープラボラトリー社を用いた。R
f値を算出した分析用薄層シリカゲルクロマトグラフィーにはメルク社製シリカゲル60F254、0.25mm厚、蛍光剤入りを用いた。シリカゲルクロマトグラフィーにはメルク社製シリカゲル60(70−230メッシュ)を用いた。炭酸水素ナトリウム、酢酸アンモニウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウムは、和光純薬社製を用いた。アンバーライトIR120HはChemCruz社製を用いた。
【0075】
(電気誘因性効果)
下記の表1に、本発明に係る化合物(5b)及び(7b)とホスホン酸とカルボン酸誘導体の
13C−NMR化学シフトの比較を示した。表1に示すように、本発明に係るアノマー位にスルホ基が結合したシアル酸誘導体のNMR解析から、アノマー位スルホ基は、カルボキシ基及びホスホノ基よりも遥かに強力な電気誘引性(誘起)効果を示すことがわかる。すなわち、本発明に係るアノマー位にスルホ基が結合したシアル酸誘導体は、シアリダーゼを非共有結合的(静電気的、疎水性相互作用的)相互作用と同時に或いは共有結合的(可逆的及び非可逆的)相互作用を通じて阻害する。
【0076】
なお、表1中、下記に示す多アセチル化アキシアル型ホスホン酸エチルエステル(axPO
3Et
2)の値は文献値(JACS(2011)133:17959−17965)を参照した。また、下記に示す脱保護化アキシアル型ホスホン酸(axPO
3H)の値は文献値(Helvetica Chimica Acta(1990)73:1359−1372)を参照した。また下記に示す多アセチル化アキシアル型カルボン酸メチルエステル(axCO
2Me)及び脱保護化アキシアル型カルボン酸(axCO
2H)の値は文献値(Tetrahedron Letters(1988)29:3643−3646)を参照した。
【0077】
【表1】
【0078】
【化17】
【0079】
(シアリダーゼ阻害評価)
本発明に係るシアル酸誘導体のシアリダーゼ(NA)活性の阻害について、IC
50及びKi値をもって評価を行った。IC
50は50%阻害濃度を示し、濃度の単位はμMである。IC
50は
、既に報告されている方法(例えば、Nature Communications(2013)4:1491)に基づいて蛍光を検出する方法で測定した。
【0080】
まず、シアリダーゼ阻害剤とシアリダーゼを、室温で約20分間、前培養した。次に、その培養液に、基質である4−メチルウンベリフェリル=α−D−シアロシドを加え、インフルエンザウイルスA/RI/5+/1957(H2N2)株のシアリダーゼ及びStreptococcus 6646K株のシアリダーゼ(Amsbio社)に対しては終濃度120μM、Clostridium perfringens NanJ(Sigma社)のシアリダーゼに対しては終濃度60μMになるように添加した。そして、上記それぞれの添加溶液を用いて、遊離する4−メチルウンベリフェリロンの蛍光(Ex.355nm,Em.460nm)を室温でThermoScientific社Varioskan(登録商標)フラッシュミクロプレートリーダーで測定し、IC
50を求めた。
【0081】
また、Ki値はチェン=プルソフ式(Ki=IC
50/(1+[S]/Km))を用いて評価した。Kiは阻害物質の結合親和性を示し、[S]は基質の濃度、Kmは酵素活性が最大値の半分となるときの基質の濃度である。インフルエンザウイルスA/RI/5+/1957(H2N2)株のシアリダーゼのKmは文献値(Nature Communications(2013)4:1491)から46.5μMとした。
【0082】
下記の表2に、インフルエンザウイルスA/RI/5+/1957(H2N2)株のシアリダーゼ(N2)、Clostridium perfringensのシアリダーゼ(CpNA)及びStreptococcus 6646K株のシアリダーゼ(S6NA)の阻害について、アノマー位にスルホ基が結合したシアル酸誘導体(7a)、(7b)及び(8b)のIC
50値及びKi値を、本評価例と同様の方法により得た(S6NAを除く)比較例(eqPO
3H)とともに示した。表中、括弧内は統計的な信頼区間示す。
【0083】
表2に示すように、本発明に係るスルホ基を有するシアル酸誘導体は、ホスホノ基を有するものに比べてIC
50が小さく、シアリダーゼ阻害活性が強いことを示した。
【0084】
【表2】
【0085】
図2に、アノマー位にスルホ基が結合したシアル酸誘導体のシアリダーゼ阻害活性を示す。これらは、インフルエンザウイルスA/RI/5+/1957(H2N2)株の4−メチルウンベリフェリル=α−D−シアロシド酸加水分解反応に対する、アノマー位にスルホ基が結合したシアル酸誘導体(7a)、(7b)、(8b)及びeqPO
3Hの阻害活性である。
【0086】
図3に、アノマー位にスルホ基が結合したシアル酸誘導体のシアリダーゼ阻害活性を示す。これらは、Clostridium perfringensのシアリダーゼの4−メチルウンベリフェリル=α−D−シアロシド酸加水分解反応に対する、アノマー位にスルホ基が結合したシアル酸誘導体(7a)及びeqPO
3Hの阻害活性である。
【0087】
図4に、アノマー位にスルホ基が結合したシアル酸誘導体のシアリダーゼ阻害活性を示す。これらは、Streptococcus 6646K株のシアリダーゼの4−メチルウンベリフェリル=α−D−シアロシド酸加水分解反応に対する、アノマー位にスルホ基が結合したシアル酸誘導体(7a)の阻害活性である。