特許第6871590号(P6871590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871590
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】燃焼システムおよび燃焼方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 27/04 20060101AFI20210426BHJP
   F23L 7/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   F02M27/04 C
   F23L7/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-198449(P2016-198449)
(22)【出願日】2016年10月6日
(65)【公開番号】特開2018-59466(P2018-59466A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】515243246
【氏名又は名称】株式会社サイライズ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】藤野 俊
(72)【発明者】
【氏名】深町 尭
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02631461(EP,A1)
【文献】 特開2002−070662(JP,A)
【文献】 特開2008−101595(JP,A)
【文献】 特開2009−293577(JP,A)
【文献】 特開2012−246854(JP,A)
【文献】 特開2001−355526(JP,A)
【文献】 特開2009−276042(JP,A)
【文献】 特開2004−068800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 27/04
F23L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置と、前記燃焼装置に燃料を供給する燃料配管と、前記燃焼装置に酸素含有気体を供給する気体配管と、前記燃焼装置に供給される前記酸素含有気体を電磁波処理する電磁波処理装置とを備える燃焼システムであって、
前記電磁波処理装置は、前記酸素含有気体に電磁波を照射する電磁波発振部と、前記電磁波発振部に交流電流を流す交流電流発生器とを有し、
前記気体配管は、湿度が50%RH以上55%RH以下の酸素含有気体を前記燃焼装置に供給し、
前記交流電流発生器は、5300Hz以上7700Hz以下の範囲内で互いに周波数の異なる2つの単一周波数の交流電流を前記電磁波発振部に流し、磁束密度が200mG以上の電磁波を発生させる、燃焼システム。
【請求項2】
前記燃焼装置に供給される前記燃料には電磁波処理を行わない、請求項に記載の燃焼システム。
【請求項3】
燃料および酸素含有気体を燃焼装置に供給して前記燃料を燃焼させる燃焼方法であって、
前記酸素含有気体の湿度が50%RH以上55%RH以下であり、
前記燃焼装置に供給される前記酸素含有気体に対し、5300Hz以上7700Hz以下の範囲内で互いに周波数の異なる2つの単一周波数の交流電流を用いて発生させた、磁束密度が200mG以上の電磁波を照射する電磁波処理工程を含む、燃焼方法。
【請求項4】
前記燃焼装置に供給される前記燃料には電磁波処理を行わない、請求項に記載の燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼システムおよび燃焼方法に関し、特には、電磁波処理技術を用いた燃焼システムおよび燃焼方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼装置に供給される液体燃料を電磁波処理することにより、排ガス中の一酸化炭素、炭化水素および一酸化窒素の濃度を低減させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、特許文献1では、自動車エンジンにガソリンを供給する配管の外周面にケーブルを巻き付けてなるコイルに対し、4000〜6000Hzの範囲で周波数が時間的に変化する方形波の交流電流を流すことにより、発生した電磁波を用いてガソリンを電磁波処理している。そして、電磁波処理によりガソリン中の粒子のゼータ電位を変化させて、排ガス中の一酸化炭素、炭化水素および一酸化窒素の濃度を低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−276042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、近年では排ガス中に含まれている窒素酸化物(NO)等に対する規制が厳しくなっているところ、コイルに方形波の交流電流を流した際に生じる電磁波を用いて液体燃料を電磁波処理する上記従来の技術には、排ガス中に含まれているNOの濃度を更に低減させるという点において改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、排ガス中のNO濃度を低減可能な燃焼システムおよび燃焼方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた。そして、本発明者は、燃焼装置に供給される空気等の酸素含有気体に対して所定の電磁波処理を施すと排ガス中のNO濃度が著しく低減することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の燃焼システムは、燃焼装置と、前記燃焼装置に燃料を供給する燃料配管と、前記燃焼装置に酸素含有気体を供給する気体配管と、前記燃焼装置に供給される前記酸素含有気体を電磁波処理する電磁波処理装置とを備える燃焼システムであって、前記電磁波処理装置は、前記酸素含有気体に電磁波を照射する電磁波発振部と、前記電磁波発振部に交流電流を流す交流電流発生器とを有し、前記交流電流発生器は、単一周波数の交流電流、または、互いに周波数の異なる2つの単一周波数の交流電流を前記電磁波発振部に流すことを特徴とする。このように、所定の交流電流を電磁波発振部に流して発生させた電磁波を用いて酸素含有気体を電磁波処理する電磁波処理装置を設ければ、排ガス中のNO濃度を十分に低減することができる。
【0009】
ここで、本発明の燃焼システムは、前記交流電流発生器が、周波数が5300Hz以上7700Hz以下の範囲内の交流電流を前記電磁波発振部に流し、磁束密度が50mG以上の電磁波を発生させることが好ましい。上記範囲の周波数の交流電流を電磁波発振部に流し、磁束密度が上記下限値以上の電磁波を発生させる交流電流発生器を用いれば、酸素含有気体を良好に電磁波処理し、排ガス中のNO濃度を更に低減することができるからである。
【0010】
また、本発明の燃焼システムは、前記気体配管が、湿度が20%RH以上の酸素含有気体を前記燃焼装置に供給することが好ましい。電磁波処理される酸素含有気体の湿度が上記下限値以上であれば、酸素含有気体を良好に電磁波処理し、排ガス中のNO濃度を更に低減することができるからである。
【0011】
更に、本発明の燃焼システムは、前記燃焼装置に供給される前記燃料には電磁波処理を行わないことが好ましい。燃料を電磁波処理するための電磁波処理装置を設けるとコストが増加する一方、燃料の電磁波処理を実施しなくても上述した電磁波処理装置を用いて酸素含有気体を電磁波処理すれば排ガス中のNO濃度を十分に低減することができるからである。
【0012】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の燃焼方法は、燃料および酸素含有気体を燃焼装置に供給して前記燃料を燃焼させる燃焼方法であって、前記燃焼装置に供給される前記酸素含有気体に対し、単一周波数の交流電流、または、互いに周波数の異なる2つの単一周波数の交流電流を用いて発生させた電磁波を照射する電磁波処理工程を含むことを特徴とする。このように、所定の交流電流を用いて発生させた電磁波を使用して酸素含有気体を電磁波処理すれば、排ガス中のNO濃度を十分に低減することができる。
【0013】
ここで、本発明の燃焼方法は、前記交流電流の周波数が5300Hz以上7700Hz以下であり、前記電磁波の磁束密度が50mG以上であることが好ましい。上記範囲の周波数の交流電流を使用し、磁束密度が上記下限値以上の電磁波で酸素含有気体を電磁波処理すれば、酸素含有気体を良好に電磁波処理し、排ガス中のNO濃度を更に低減することができるからである。
【0014】
また、本発明の燃焼方法は、前記酸素含有気体の湿度が20%RH以上であることが好ましい。酸素含有気体の湿度が上記下限値以上であれば、酸素含有気体を良好に電磁波処理し、排ガス中のNO濃度を更に低減することができるからである。
【0015】
更に、本発明の燃焼方法は、前記燃焼装置に供給される前記燃料には電磁波処理を行わないことが好ましい。燃料も電磁波処理するとコストが増加する一方、燃料の電磁波処理を実施しなくても上述した酸素含有気体の電磁波処理を実施すれば排ガス中のNO濃度を十分に低減することができるからである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、排ガス中のNO濃度を低減可能な燃焼システムおよび燃焼方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に従う燃焼システムの一例の概略構成を示す説明図である。
図2】交流電流を用いて発生させた電磁波について、周波数と磁束密度との関係を示すグラフであり、(a)は単一周波数の交流電流を用いた場合を示し、(b)は互いに周波数の異なる2つの単一周波数の交流電流を用いた場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
ここで、本発明の燃焼システムおよび燃焼方法は、燃料および酸素含有気体を燃焼装置に供給して燃料を燃焼させる際に用いられる。そして、本発明の燃焼システムおよび燃焼方法では、燃焼装置に供給される酸素含有気体に対して所定の電磁波処理を施すので、燃料を燃焼させた際に生じる排ガス中のNO濃度を低減することができる。
【0019】
(燃料)
なお、本発明の燃焼システムおよび燃焼方法で燃焼させる燃料としては、特に限定されることなく、例えば、石炭ガス、天然ガスなどの気体燃料、並びに、石油およびその分留成分(例えば、重油、軽油、灯油、ガソリン等)などの液体燃料が挙げられる。中でも、燃料としては、液体燃料が好ましい。
【0020】
(酸素含有気体)
また、本発明の燃焼システムおよび燃焼方法で用いる酸素含有気体としては、特に限定されることなく、例えば、空気、乾燥空気、加湿空気、酸素ガス、酸素ガスと不活性ガス(窒素ガスや希ガスなど)との混合ガスなどが挙げられる。中でも、排ガス中のNO濃度を更に低減する観点からは、酸素含有気体としては、空気および加湿空気などの酸素および水分を含有する気体が好ましく、酸素および水分を含有し、且つ、湿度が20%RH以上である気体がより好ましい。なお、排ガス中のNO濃度を更に低減する観点からは、酸素含有気体の湿度は、40%RH以上であることが更に好ましく、50%RH以上であることが特に好ましい。一方、燃料の燃焼効率を高める観点からは、酸素含有気体の湿度は、60%RH以下であることが好ましく、55%RH以下であることがより好ましい。
【0021】
(燃焼装置)
また、本発明の燃焼システムおよび燃焼方法で用いる燃焼装置としては、特に限定されることなく、例えば、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関、ボイラー、焼却炉、乾燥炉などが挙げられる。中でも、本発明の燃焼システムおよび燃焼方法で用いる燃焼装置は、自動車用、船舶用または発電用の内燃機関であることが好ましく、自動車用、船舶用または発電用のディーゼルエンジンであることがより好ましい。燃焼装置が自動車用、船舶用または発電用の内燃機関である場合、排ガス中のNO濃度を低減するだけでなく、燃費を向上させることもできるからである。
【0022】
(燃焼システム)
ここで、本発明の燃焼システムの一例の概略構成を図1に示す。図1に示す燃焼システム10は、燃焼装置1と、燃焼装置1に燃料を供給する燃料配管2と、燃焼装置1に酸素含有気体としての空気を供給する気体配管3と、燃焼装置1で生成した排ガスを排出する排ガス配管4と、燃焼装置1に供給される空気を電磁波処理する電磁波処理装置5とを備えている。
なお、燃焼システム10は、燃料を燃焼装置1へと送るためのポンプ(図示せず)および空気を燃焼装置1へと送るためのブロア(図示せず)を更に備えていてもよい。また、燃焼システム10は、燃焼装置1に供給される空気を加湿するための加湿器(図示せず)を電磁波処理装置5よりも上流側(空気の吸い込み口側)に備えていてもよい。
【0023】
また、燃焼システム10の電磁波処理装置5は、気体配管3内を流れる空気に電磁波を照射する電磁波発振部としてのコイル51と、コイル51に交流電流を流す交流電流発生器52とを有している。具体的には、電磁波処理装置5は、気体配管3の外周面にケーブルを巻き回して形成したコイル51よりなる電磁波発振部と、ケーブルが電気的に接続された交流電流発生器52とを有している。
なお、燃焼システム10において気体配管3内を流れる空気に対して電磁波を良好に照射する観点からは、コイル51は、気体配管3のうち、電磁波を透過させ易い材料(例えば、塩化ビニル樹脂等のプラスチックなど)からなる部分の外周に配置することが好ましい。
【0024】
そして、燃焼システム10では、交流電流発生器52が、単一周波数の交流電流、または、互いに周波数の異なる2つの単一周波数の交流電流をコイル51に流す必要がある。所定の交流電流を使用して発生させた電磁波を用いて空気を電磁波処理しなければ、排ガス中のNOの濃度を十分に低減させることができないからである。
なお、所定の交流電流を使用して発生させた電磁波を用いて空気等の酸素含有気体を電磁波処理することで排ガス中のNOの濃度を十分に低減させることができる理由は、明らかではないが、電磁波処理によって酸素含有気体中に含まれている微粒子や水分(水粒子)などのゼータ電位が十分に変化し(例えば、大幅に低下してマイナスになり)、燃焼装置1において燃料を十分に燃焼させることが可能になるためであると推察される。
【0025】
ここで、単一周波数の交流電流、または、互いに周波数の異なる2つの単一周波数の交流電流を発生させることができる交流電流発生器としては、特に限定されることなく、特開2011−255345号公報や特開2013−167160号公報に記載の電磁波発生器を用いることができる。なお、通常、交流電流の周波数と、電磁波発振部に交流電流を流した際に発生する電磁波の周波数とは一致する。そのため、単一周波数の交流電流を用いて発生させた電磁波については、周波数と磁束密度との関係が図2(a)に示すようになり、互いに周波数の異なる2つの単一周波数の交流電流を用いて発生させた電磁波については、周波数と磁束密度との関係が図2(b)に示すようになる。また、本発明において、「単一周波数」とは、厳密な意味で一つの周波数のみを有するという意味ではなく、主要周波数の数が一つである(例えば、横軸を周波数とし、縦軸を強度としたグラフにおけるピークの数が一つである)ことを意味する。
【0026】
そして、排ガス中のNOの濃度を更に低減させる観点からは、交流電流発生器52は、周波数が5300Hz以上7700Hz以下の範囲内の交流電流をコイル51に流すことが好ましい。即ち、交流電流の単一周波数(主要周波数)は、5300Hz以上7700Hz以下であることが好ましい。
【0027】
また、排ガス中のNOの濃度を更に低減させる観点からは、コイル51に上記交流電流を流した際に生じる電磁波の磁束密度は、50mG以上であることが好ましく、200mG以上であることがより好ましい。
なお、電磁波の磁束密度は、例えば交流電流の電流値などを変化させることにより調整することができる。
【0028】
なお、上述した一例の燃焼システム10では、気体配管3の外周面上に電磁波発振部としてのコイル51を配置したが、電磁波発振部を設ける位置は気体配管3の外周面上に限定されるものではない。具体的には、電磁波発振部は、例えば、燃焼装置に供給する酸素含有気体を貯留している貯留槽内に配置されていてもよい。また、上述した一例の燃焼システム10では酸素含有気体としての空気のみを電磁波処理したが、本発明の燃焼システムでは、酸素含有気体に加えて燃料を電磁波処理してもよい。但し、排ガス中のNOの濃度を十分に低減しつつイニシャルコストおよびランニングコストを低減する観点からは、燃料配管側には電磁波処理装置を設置せず、酸素含有気体のみを電磁波処理することが好ましい。
【0029】
(燃焼方法)
本発明の燃焼方法は、特に限定されることなく、例えば上述した燃焼システム10において実施することができる。
ここで、本発明の燃焼方法は、燃料および酸素含有気体を燃焼装置に供給して燃料を燃焼させる燃焼方法であって、燃焼装置に供給される酸素含有気体に対し、単一周波数の交流電流、または、互いに周波数の異なる2つの単一周波数の交流電流を用いて発生させた電磁波を照射する電磁波処理工程を含むことを特徴とする。
【0030】
そして、本発明の燃焼方法では、所定の交流電流を使用して発生させた電磁波を酸素含有気体に照射して酸素含有気体の電磁波処理を行っているので、排ガス中のNOの濃度を十分に低減させることができる。
【0031】
なお、電磁波処理工程において、単一周波数の交流電流、または、互いに周波数の異なる2つの単一周波数の交流電流は、特に限定されることなく、本発明の燃焼システムの交流電流発生器と同様の発生器を用いて得ることができる。そして、電磁波は、上記交流電流をコイルなどに流すことにより発生させることができる。
【0032】
また、交流電流の単一周波数(主要周波数)は、5300Hz以上7700Hz以下であることが好ましい。交流電流の周波数が上記範囲内であれば、排ガス中のNOの濃度を更に低減させることができるからである。
【0033】
更に、酸素含有気体に照射する電磁波の磁束密度は、50mG以上であることが好ましく、200mG以上であることがより好ましい。電磁波の磁束密度が上記下限値以上であれば、排ガス中のNOの濃度を更に低減させることができるからである。
【0034】
また、電磁波を照射される酸素含有気体の湿度は、20%RH以上であることが好ましく、40%RH以上であることがより好ましく、50%RH以上であることが更に好ましく、60%RH以下であることが好ましく、55%RH以下であることがより好ましい。湿度が上記下限値以上であれば、排ガス中のNO濃度を更に低減することができるからである。また、湿度が上記上限値以下であれば、燃料の燃焼効率を高めることができるからである。
【0035】
なお、本発明の燃焼方法では、酸素含有気体に加えて燃料を電磁波処理してもよいが、低コストで排ガス中のNOの濃度を十分に低減する加点からは、酸素含有気体のみを電磁波処理することが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
燃焼装置として日産パトロールのディーゼルエンジン(形式:TCSYb1)を使用し、燃焼試験を行った。
具体的には、エンジンのプラスチック製の吸気吸込口にケーブルを巻き付けてコイルを形成すると共に、当該ケーブルを特開2011‐255345号公報の図2に記載の装置と同様の構成を有する交流電流発生器に電気的に接続した。そして、2つの単一周波数(6000Hzおよび6500Hz)の交流電流をコイルに流して吸気(空気、湿度:57%RH)に電磁波処理を施しつつ、エンジンで燃料(軽油)を燃焼させた。そして、排出される排ガス中のNO濃度を排ガス測定装置(堀場製作所製、MEXA-9400H)で測定すると共に、速度60km換算での燃費を測定した。
結果を表1に示す。
【0038】
(比較例1)
吸気に対する電磁波処理を行わなかった以外は実施例1と同様にしてエンジンで燃料(軽油)を燃焼させた。そして、排出される排ガス中のNO濃度および燃費を測定した。
結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
(実施例2〜7)
交流電流の電流値を変更して電磁波の磁束密度を240mGに変更し、更に吸気吸込口から吸い込まれる空気の湿度を表2に示すように調整した以外は、それぞれ実施例1と同様にしてエンジンで燃料(軽油)を燃焼させた。そして、排出される排ガス中のNO濃度および燃費を測定した。
結果を表2に示す。
【0041】
(比較例2〜7)
吸気に対する電磁波処理を行わなかった以外は実施例2〜7と同様にしてエンジンで燃料(軽油)を燃焼させた。そして、排出される排ガス中のNO濃度および燃費を測定した。
結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
(実施例8)
交流電流の電流値を変更して電磁波の磁束密度を350mGに変更し、更に吸気吸込口から吸い込まれる空気の湿度を50%RHに調整した以外は実施例1と同様にしてエンジンで燃料(軽油)を燃焼させた。そして、排出される排ガス中のNO濃度および燃費を測定した。
結果を表3に示す。
【0044】
(比較例8)
吸気に対する電磁波処理を行わなかった以外は実施例8と同様にしてエンジンで燃料(軽油)を燃焼させた。そして、排出される排ガス中のNO濃度および燃費を測定した。
結果を表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
(参考例1〜3)
日野自動車製の産業用ディーゼルエンジン(J08C、7961cc、定格出力147/2900)を使用し、燃焼試験を行った。
具体的には、エンジンのプラスチック製の吸気吸込口にケーブルを巻き付けてコイルを形成すると共に、当該ケーブルを特開2013−167160号公報の図5に記載の装置と同様の構成を有する交流電流発生器に電気的に接続した。そして、5000〜8000Hzの範囲で周波数が時間的に変化する方形波の交流電流をコイルに流して表4に示す湿度の吸気に電磁波処理を施しつつ、出力50kWとなるようにエンジンで燃料(軽油)を燃焼させた。そして、排出される排ガス中のNO濃度を排ガス測定装置(ホダカ製、HT-1600N)で測定した。
結果を表4に示す。
【0047】
(参考例4〜6)
吸気に対する電磁波処理を行わなかった以外は参考例1〜3と同様にしてエンジンで燃料(軽油)を燃焼させた。そして、排出される排ガス中のNO濃度を測定した。
結果を表4に示す。
【0048】
(参考例7〜12)
出力100kWとなるようにエンジンで燃料(軽油)を燃焼させた以外は参考例1〜6と同様にしてエンジンで燃料(軽油)を燃焼させた。そして、排出される排ガス中のNO濃度を測定した。
結果を表4に示す。
【0049】
(参考例13)
特開2011‐255345号公報の図2に記載の装置と同様の構成を有する交流電流発生器を使用し、4つの単一周波数(7250Hz、7500Hz、7750Hzおよび8000Hz)の交流電流をコイルに流して吸気(空気、湿度:44%RH)に電磁波処理を施しつつ、エンジンで燃料(軽油)を燃焼させた以外は参考例1と同様にしてエンジンで燃料(軽油)を燃焼させた。そして、排出される排ガス中のNO濃度を測定した。
結果を表5に示す。
【0050】
(参考例14)
吸気に対する電磁波処理を行わなかった以外は参考例13と同様にしてエンジンで燃料(軽油)を燃焼させた。そして、排出される排ガス中のNO濃度を測定した。
結果を表5に示す。
【0051】
(参考例15〜16)
出力100kWとなるようにエンジンで燃料(軽油)を燃焼させた以外は参考例13〜14と同様にしてエンジンで燃料(軽油)を燃焼させた。そして、排出される排ガス中のNO濃度を測定した。
結果を表5に示す。
【0052】
(参考例17〜18)
交流電流の電流値を変更して電磁波の磁束密度を120mGに変更した以外は参考例13,15と同様にしてエンジンで燃料(軽油)を燃焼させた。そして、排出される排ガス中のNO濃度を測定した。
結果を表5に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
表1〜3より、所定の電磁波処理を行った実施例1〜8では、電磁波処理を行わなかった比較例1〜8と比較し、NO濃度を低減しつつ燃費を改善できることが分かる。
また、表4より、方形波の交流電流や4つの単一周波数の交流電流を用いた電磁波処理では、NO濃度を十分に低減できないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、排ガス中のNO濃度を低減可能な燃焼システムおよび燃焼方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 燃焼装置
2 燃料配管
3 気体配管
4 排ガス配管
5 電磁波処理装置
10 燃焼システム
51 コイル
52 交流電流発生器
図1
図2