(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871607
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】水素の製造方法、触媒及び燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/46 20060101AFI20210426BHJP
C01B 3/40 20060101ALI20210426BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20210426BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20210426BHJP
B01J 27/224 20060101ALI20210426BHJP
B01J 27/24 20060101ALI20210426BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
B01J23/46 301M
C01B3/40
B01J23/42 M
B01J23/44 M
B01J23/46 M
B01J23/46 311M
B01J27/224 M
B01J27/24 M
B01J37/02 301P
【請求項の数】22
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-93903(P2017-93903)
(22)【出願日】2017年5月10日
(65)【公開番号】特開2018-187582(P2018-187582A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年3月18日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「炭酸ガス水素化反応の低温化に寄与する触媒の検討」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(74)【代理人】
【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝之
(72)【発明者】
【氏名】魯 保旺
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基史
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−018414(JP,A)
【文献】
特開2010−155234(JP,A)
【文献】
特開2008−183496(JP,A)
【文献】
特開2009−131835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C01B 3/00 − 3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
200℃以上250℃以下の温度において炭化水素を触媒に接触させることで、前記炭化水素が水素と炭素に分解する反応が進行することにより水素を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であることを特徴とする水素の製造方法。
【請求項2】
200℃以上250℃以下の温度において炭化水素を触媒に接触させることで、前記炭化水素が水素と炭素に分解する反応が進行することにより水素を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であり、
前記触媒は、内部の断面形状が円形または多角形を有する真空容器を、前記断面に対して垂直方向を回転軸として回転又は振り子動作させることにより、前記真空容器内の担体を攪拌しながらスパッタリングを行うことで、前記担体の表面に前記金属または前記金属を含む材料が分散担持されたものであることを特徴とする水素の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記炭化水素を前記触媒に接触させる際に、前記触媒に水蒸気が供給され、前記水蒸気が前記金属または前記担体の表面に付着することを特徴とする水素の製造方法。
【請求項4】
250℃超350℃以下の温度において炭化水素と水蒸気を触媒に接触させることで、前記炭化水素が水素と炭素に分解する反応と、水素とCO2に分解する反応が進行することにより水素を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であることを特徴とする水素の製造方法。
【請求項5】
250℃超350℃以下の温度において炭化水素と水蒸気を触媒に接触させることで、前記炭化水素が水素と炭素に分解する反応と、水素とCO2に分解する反応が進行することにより水素を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であり、
前記触媒は、内部の断面形状が円形または多角形を有する真空容器を、前記断面に対して垂直方向を回転軸として回転又は振り子動作させることにより、前記真空容器内の担体を攪拌しながらスパッタリングを行うことで、前記担体の表面に前記金属または前記金属を含む材料が分散担持されたものであることを特徴とする水素の製造方法。
【請求項6】
350℃超500℃以下の温度において炭化水素と水蒸気を触媒に接触させることで、前記炭化水素が水素とCO2に分解する反応が進行することにより水素を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であることを特徴とする水素の製造方法。
【請求項7】
350℃超500℃以下の温度において炭化水素と水蒸気を触媒に接触させることで、前記炭化水素が水素とCO2に分解する反応が進行することにより水素を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であり、
前記触媒は、内部の断面形状が円形または多角形を有する真空容器を、前記断面に対して垂直方向を回転軸として回転又は振り子動作させることにより、前記真空容器内の担体を攪拌しながらスパッタリングを行うことで、前記担体の表面に前記金属または前記金属を含む材料が分散担持されたものであることを特徴とする水素の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項において、
前記担体は、炭素微粒子、金属微粒子、窒化物微粒子、ポリマー微粒子、ケイ素化物微粒子及び酸化物微粒子からなる群から選択される一つの微粒子であることを特徴とする水素の製造方法。
【請求項9】
担体と、前記担体に担持された金属または前記金属を含む材料とを有する触媒であって、
前記触媒は、炭化水素を分解して水素を得るために用いられるものであり、
前記金属または前記担体の表面にH2Oが付着されており、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であり、
前記担体は、炭素微粒子、金属微粒子、窒化物微粒子、ポリマー微粒子、ケイ素化物微粒子及び酸化物微粒子からなる群から選択される一つの微粒子であることを特徴とする触媒。
【請求項10】
担体と、前記担体に担持された金属または前記金属を含む材料とを有する触媒であって、
前記触媒は、炭化水素を分解して水素を得るために用いられるものであり、
前記金属または前記担体の表面にH2Oが付着されており、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であることを特徴とする触媒。
【請求項11】
請求項9または10において、
前記金属は、粒径が8nm以下の粒子であることを特徴とする触媒。
【請求項12】
200℃以上250℃以下の温度において天然ガスまたは液化石油ガスを触媒に接触させることで、前記天然ガス、または前記液化石油ガスの一部が水素と炭素に分解する反応が進行することにより、前記水素と前記天然ガスまたは前記液化石油ガスが混合した燃料を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であることを特徴とする燃料の製造方法。
【請求項13】
200℃以上250℃以下の温度において天然ガスまたは液化石油ガスを触媒に接触させることで、前記天然ガス、または前記液化石油ガスの一部が水素と炭素に分解する反応が進行することにより、前記水素と前記天然ガスまたは前記液化石油ガスが混合した燃料を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であり、
前記水素と前記炭素に分解した後に、前記炭素は回収されることを特徴とする燃料の製造方法。
【請求項14】
200℃以上250℃以下の温度において天然ガスまたは液化石油ガスを触媒に接触させることで、前記天然ガス、または前記液化石油ガスの一部が水素と炭素に分解する反応が進行することにより、前記水素と前記天然ガスまたは前記液化石油ガスが混合した燃料を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であり、
前記担体は、炭素微粒子、金属微粒子、窒化物微粒子、ポリマー微粒子、ケイ素化物微粒子及び酸化物微粒子からなる群から選択される一つの微粒子であることを特徴とする燃料の製造方法。
【請求項15】
250℃超350℃以下の温度において天然ガスまたは液化石油ガスと水蒸気を触媒に接触させることで、前記天然ガス、または前記液化石油ガスの一部が水素と炭素に分解する反応と、水素とCO2に分解する反応が進行することにより、前記水素と前記天然ガスまたは前記液化石油ガスが混合した燃料を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であることを特徴とする燃料の製造方法。
【請求項16】
250℃超350℃以下の温度において天然ガスまたは液化石油ガスと水蒸気を触媒に接触させることで、前記天然ガス、または前記液化石油ガスの一部が水素と炭素に分解する反応と、水素とCO2に分解する反応が進行することにより、前記水素と前記天然ガスまたは前記液化石油ガスが混合した燃料を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であり、
前記水素と前記炭素に分解した後に、前記炭素は回収されることを特徴とする燃料の製造方法。
【請求項17】
250℃超350℃以下の温度において天然ガスまたは液化石油ガスと水蒸気を触媒に接触させることで、前記天然ガス、または前記液化石油ガスの一部が水素と炭素に分解する反応と、水素とCO2に分解する反応が進行することにより、前記水素と前記天然ガスまたは前記液化石油ガスが混合した燃料を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であり、
前記担体は、炭素微粒子、金属微粒子、窒化物微粒子、ポリマー微粒子、ケイ素化物微粒子及び酸化物微粒子からなる群から選択される一つの微粒子であることを特徴とする燃料の製造方法。
【請求項18】
請求項12、14、15及び17のいずれか一項において、
前記水素と前記炭素に分解した後に、前記炭素は回収されることを特徴とする燃料の製造方法。
【請求項19】
350℃超500℃以下の温度において天然ガスまたは液化石油ガス及び水蒸気を触媒に接触させることで、前記天然ガス、または前記液化石油ガスの一部、あるいは全部が水素とCO2に分解する反応が進行することにより、前記水素と前記天然ガスまたは前記液化石油ガスが混合した燃料、あるいは前記水素の燃料を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であることを特徴とする燃料の製造方法。
【請求項20】
350℃超500℃以下の温度において天然ガスまたは液化石油ガス及び水蒸気を触媒に接触させることで、前記天然ガス、または前記液化石油ガスの一部、あるいは全部が水素とCO2に分解する反応が進行することにより、前記水素と前記天然ガスまたは前記液化石油ガスが混合した燃料、あるいは前記水素の燃料を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であり、
前記担体は、炭素微粒子、金属微粒子、窒化物微粒子、ポリマー微粒子、ケイ素化物微粒子及び酸化物微粒子からなる群から選択される一つの微粒子であることを特徴とする燃料の製造方法。
【請求項21】
請求項12乃至14のいずれか一項において、
前記天然ガスまたは前記液化石油ガスを前記触媒に接触させる際に、前記触媒に水蒸気が供給され、前記水蒸気が前記金属または前記担体の表面に付着することを特徴とする燃料の製造方法。
【請求項22】
請求項12乃至21のいずれか一項において、
前記触媒は、内部の断面形状が円形または多角形を有する真空容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転又は振り子動作させることにより、前記真空容器内の担体を攪拌しながらスパッタリングを行うことで、前記担体の表面に前記金属または前記金属を含む材料が分散担持されたものであることを特徴とする燃料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素の製造方法、触媒及び燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼により水しか生成しない水素は、次世代エネルギーとして世界中で注目されている。この水素は、これまでのアンモニア等の化学製品原料、石油精製における脱硫材、還元製鉄における還元剤などに使用されてきた。近年、水素は、進展が著しい家庭用燃料電池や燃料電池自動車の燃料としても利用されており、今後、更なる需要が見込まれる。さらに、それ以外の潜在的な水素利用のニーズも拡大すると思われる。
【0003】
現在、水素の製造方法として、メタン等の炭化水素と水蒸気の触媒反応である水蒸気改質反応(例えば、CH
4+2H
2O→ 4H
2+CO
2)が広く用いられている。水蒸気改質反応は吸熱反応であるため、一般的には600〜800℃程度の加熱を必要とする。このような高温条件下での水蒸気改質反応は熱力学的には有利であるが、設備品質、熱交換媒体など制限事項が厳しいだけでなく、使用される触媒にも、高活性、高温安定性などが要求される。また、反応に必要な熱は石油、石炭の燃焼により供給されるため、温室効果ガスである二酸化炭素(CO
2)を生成する。さらに、反応時に生成する一酸化炭素(CO)は燃料電池で使用される電極触媒の被毒物質であるため、CO変成器(CO+H
2O→CO
2+1/2H
2)によりppmオーダーにまで低減されている。現状では、COを含まない水素の製造は難しい。
【0004】
一般に、上記の水蒸気改質反応には酸化アルミナや酸化マグネシウム、スピネル系化合物などの担体にルテニウム、ロジウム、ニッケルなどの活性金属を担持した触媒が用いられている。しかし、これらの触媒は高温での反応が要求されるだけでなく、ウェットプロセスで調製されているため、加熱や廃液処理が必須であり、調製時の環境負荷が大きい。これに対し、最近、反応温度を低下することを目的に、ナノサイズの細孔を有する炭素材に貴金属を担持した触媒やNi−Al金属間化合物のナノ粒子からなる触媒が報告されている(例えば特許文献1,2参照)。これらの触媒を使用した水蒸気改質反応では水素が250〜350℃で生成し始めるが、その活性は低い。また、反応にCO
2やCOも生成する。上記触媒もウェット法を用いて調製されているため、触媒調製時の環境負荷も改善されていない。
【0005】
依って、炭化水素からCOを生成しないで低温で安定、且つ、CO
2フリー、あるいは低CO
2で水素を生成する高活性な触媒を創成することは、将来の水素エネルギー社会の実現に向けた大きな挑戦である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−007599号公報
【特許文献2】特開2010−201302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、炭化水素から水素を生成する際にCO
2フリー、あるいはCO
2排出を抑制できる水素の製造方法または触媒を提供することを課題とする。
本発明の一態様は、低温で高い活性を持つ触媒とそれを用いた水素の製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明の一態様は、CO
2の排出を抑制できる燃料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、本発明の種々の態様について説明する。
[1]200℃以上250℃以下の温度において炭化水素を触媒に接触させることで、前記炭化水素が水素と炭素に分解する反応が進行することにより水素を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であることを特徴とする水素の製造方法。
【0009】
上記[1]の水素の製造方法によれば、炭素を固定化することで、CO
2の排出を抑制することができる。
なお、上記の反応は、炭化水素が水素と炭素と少量の不飽和炭化水素に分解する反応であってもよい。また、上記の水素を製造する際に、CO
2、及びCOを生成しないことが好ましい。
【0010】
[2]上記[1]において、
前記炭化水素を前記触媒に接触させる際に、前記触媒に水蒸気が供給され、前記水蒸気が前記金属または前記担体の表面に付着することを特徴とする水素の製造方法。
上記の水素の製造方法によれば、反応時に水蒸気が金属または担体の表面に付着することにより、触媒とH
2Oが一体化され、前記触媒の高活性化が図られる。
【0011】
[3]250℃超350℃以下の温度において炭化水素と水蒸気を触媒に接触させることで、前記炭化水素が水素と炭素に分解する反応と、水素とCO
2に分解する反応が進行することにより水素を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であることを特徴とする水素の製造方法。
【0012】
上記[3]の水素製造方法によれば、炭化水素を水素と炭素に分解する反応はCO
2を生成しないため、触媒によって水素とCO
2に分解する反応が起こっても、全体としてCO
2排出を抑制することができる。また、上記[3]の水素の製造方法ではCOを生成しないことが好ましい。
なお、上記の前者の反応は、炭化水素が水素と炭素と少量の不飽和炭化水素に分解する反応であってもよい。また、上記の前者の反応と後者の反応が同時に進行してもよい。
【0013】
[4]350℃超500℃以下の温度において炭化水素と水蒸気を触媒に接触させることで、前記炭化水素が水素とCO
2に分解する反応が進行することにより水素を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であることを特徴とする水素の製造方法。
【0014】
上記[4]の水素の製造方法によれば、触媒が高活性であることにより、炭化水素が水素とCO
2に分解する反応を従来のものより低温化できる。このことから、加熱エネルギー投入量が少なくても高い収率で水素を製造できる。なお、上記の水素を製造する際に、COを生成しないことが好ましい。
【0015】
[5]上記[1]乃至[4]のいずれか一項において、
前記担体は、炭素微粒子、金属微粒子、窒化物微粒子、ポリマー微粒子、ケイ素化物微粒子及び酸化物微粒子からなる群から選択される一つの微粒子であることを特徴とする水素の製造方法。
【0016】
[6]上記[1]乃至[5]のいずれか一項において、
前記触媒は、内部の断面形状が円形または多角形を有する真空容器を、前記断面に対して垂直方向を回転軸として回転又は振り子動作させることにより、前記真空容器内の担体を攪拌しながらスパッタリングを行うことで、前記担体の表面に前記金属または前記金属を含む材料が分散担持されたものであることを特徴とする水素の製造方法。
【0017】
[7]担体と、前記担体に担持された金属または前記金属を含む材料とを有する触媒であって、
前記金属または前記担体の表面にH
2Oが付着されており、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であることを特徴とする触媒。
【0018】
[8]上記[7]において、
前記担体は、炭素微粒子、金属微粒子、窒化物微粒子、ポリマー微粒子、ケイ素化物微粒子及び酸化物微粒子からなる群から選択される一つの微粒子であることを特徴とする触媒。
【0019】
[9]上記[7]または[8]において、
前記金属は、粒径が8nm以下(好ましくは4nm以下)の粒子であることを特徴とする触媒。
【0020】
[10]200℃以上250℃以下の温度において天然ガスまたは液化石油ガスを触媒に接触させることで、前記天然ガス、または前記液化石油ガスの一部が水素と炭素に分解する反応が進行することにより、前記水素と前記天然ガスまたは前記液化石油ガスが混合した燃料を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であることを特徴とする燃料の製造方法。
【0021】
上記[10]の燃料の製造方法によれば、天然ガスまたは液化石油ガスの一部を分解して水素が生成することにより、水素と天然ガス、あるいは液化石油ガスが混合した燃料を製造できる。また、水素は燃焼によりCO
2を生成しないため、燃料使用時のCO
2排出も燃料中の水素割合に従って抑制できる。
なお、上記の反応は、前記天然ガスまたは前記液化石油ガスの一部が水素と炭素と少量の不飽和炭化水素に分解する反応であってもよい。また、上記の燃料を製造する歳にCO
2やCOを排出しないことが好ましい。
【0022】
[11]250℃超350℃以下の温度において天然ガスまたは液化石油ガスと水蒸気を触媒に接触させることで、前記天然ガス、または前記液化石油ガスの一部が水素と炭素に分解する反応と、水素とCO
2に分解する反応が進行することにより、前記水素と前記天然ガスまたは前記液化石油ガスが混合した燃料を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であることを特徴とする燃料の製造方法。
【0023】
上記[11]の水素の製造方法によれば、触媒によって、天然ガス、または前記液化石油ガスの一部が水素と炭素に分解する反応が水素とCO
2に分解する反応とともに起こることで、燃料製造時にCO
2排出を抑制できる。また、水素は燃焼によりCO
2を生成しないため、燃料使用時のCO
2排出も燃料中の水素割合に従って抑制できる。
なお、上記の前者の反応は、前記天然ガス、または前記液化石油ガスの一部が水素と炭素と少量の不飽和炭化水素に分解する反応であってもよい。また、上記の前者の反応と後者の反応が同時に進行してもよい。また、上記の燃料を製造する際に、COを生成しないことが好ましい。
【0024】
[12]上記[10]または[11]において、
前記水素と前記炭素に分解した後に、前記炭素は回収されることを特徴とする燃料の製造方法。
なお、上記の分解の際に少量の不飽和炭化水素が生成されるときには前記不飽和炭化水素も回収されるとよい。
【0025】
[13]350℃超500℃以下の温度において天然ガスまたは液化石油ガス及び水蒸気を触媒に接触させることで、前記天然ガス、または前記液化石油ガスの一部、あるいは全部が水素とCO
2に分解する反応が進行することにより、前記水素と前記天然ガスまたは前記液化石油ガスが混合した燃料、あるいは前記水素の燃料を製造する方法であって、
前記触媒は、担体に担持された金属または前記金属を含む材料であり、
前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であることを特徴とする燃料の製造方法。
なお、上記の燃料を製造する際に、COを生成しないことが好ましい。
【0026】
上記[13]の水素の製造方法によれば、触媒が高活性であることにより、天然ガスまたは液化石油ガスが水素とCO
2に分解する反応を従来のものより低温化できる。このことから、少ない加熱エネルギー投入で、COを生成せずに水素と天然ガスまたは液化石油ガスが混合した燃料、あるいは水素の燃料を製造できる。また、水素は燃焼によりCO
2を生成しないため、燃料使用時のCO
2排出も抑制できる。
【0027】
[14]上記[10]において、
前記天然ガスまたは前記液化石油ガスを前記触媒に接触させる際に、前記触媒に水蒸気が供給され、前記水蒸気が前記金属または前記担体の表面に付着することを特徴とする燃料の製造方法。
【0028】
上記の燃料の製造方法によれば、反応時に水蒸気が前記金属または前記担体の表面に付着することにより、前記触媒とH
2Oが一体化され、前記触媒の高活性化が図られる。
【0029】
[15]上記[10]乃至[14]のいずれか一項において、
前記担体は、炭素微粒子、金属微粒子、窒化物微粒子、ポリマー微粒子、ケイ素化物微粒子及び酸化物微粒子からなる群から選択される一つの微粒子であることを特徴とする燃料の製造方法。
【0030】
[16]上記[10]乃至[15]のいずれか一項において、
前記触媒は、内部の断面形状が円形または多角形を有する真空容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転又は振り子動作させることにより、前記真空容器内の担体を攪拌しながらスパッタリングを行うことで、前記担体の表面に前記金属または前記金属を含む材料が分散担持されたものであることを特徴とする燃料の製造方法。
【0031】
[17]200℃以上900℃以下の温度において天然ガスまたは液化石油ガスを触媒に接触させることで、前記天然ガス、または前記液化石油ガスの一部、あるいは全部が水素とCO
2に分解する反応が進行することにより、前記水素と前記天然ガスまたは前記液化石油ガスが混合した燃料、あるいは前記水素の燃料を製造することを特徴とする燃料の製造方法。
なお、上記[10]〜[17]に係る発明の燃料は、燃料として使用できる程度であれば不純物を含んでいてもよい。
【0032】
[18]上記[13]または[17]において、
前記燃料中の水素割合が温度により0〜100%に調整可能であることを特徴とする燃料の製造方法。
【発明の効果】
【0033】
本発明の一態様によれば、炭化水素から水素を生成する際にCO
2フリー、あるいはCO
2排出を抑制できる水素の製造方法または触媒を提供することができる。
また、本発明の一態様によれば、低温で高い活性を持つ触媒とそれを用いた水素の製造方法を提供することができる。
また、本発明の一態様によれば、CO
2の排出を抑制できる燃料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】固定床流通式反応装置を模式的に示す断面図である。
【
図2】第2の実施形態の触媒の試料(BS-Ru/C)及び比較例の触媒の試料(Ref.-Ru/C)それぞれのRu担持状態をTEMで観察した結果を示す図である。
【
図3】第2の実施形態のBS-Ru/C試料の触媒性能評価結果を示す図である。
【
図4】(A)はメタンの直接分解反応の温度領域(I)における触媒の耐久性を評価した結果を示す図、(B)はメタンの直接分解反応と水蒸気改質反応が同時に起こる温度領域(II)における触媒の耐久性を評価した結果を示す図である。
【
図5】水蒸気改質反応の温度領域(III)における第2の実施形態のBS-Ru/C試料の耐久性評価結果を示す図である。
【
図6】Ru/C試料、Ni/C試料、Pt/C試料、Pd/C試料、Rh/C試料、及びIr/C試料それぞれの触媒性能を評価した結果を示す図である。
【
図7】Ru/C試料、Ru/Si試料、Ru/Si
3N
4試料、Ru/SiC試料それぞれの触媒性能を評価した結果を示す図である。
【
図8】メタンの直接分解反応の温度領域(I)で第2の実施形態のBS-Ru/C触媒の耐久性を、反応時にH
2Oを導入せずに評価した結果を示す図である。
【
図9】本発明の一態様に係る触媒を作製する際に用いる多角バレルスパッタ装置の概略を示す構成図である。
【
図10】本発明の一態様に係る燃料の製造方法を説明するための模式図である。
【
図11】本発明の一態様に係る燃料の製造方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下では、本発明の実施形態及び実施例について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施形態の記載内容及び実施例に限定して解釈されるものではない。
【0036】
[第1の実施形態]
図9は、本発明の一態様に係る触媒を作製する際に用いる多角バレルスパッタ装置の概略を示す構成図である。この多角バレルスパッタ装置は、担体である微粒子材料の表面に、該微粒子より粒径の小さいナノ粒子(ここでのナノ粒子とは粒径がnmオーダーの粒子をいう)を乾式法であるスパッタリング法で分散担持させるための装置である。
【0037】
本発明の一態様に係る触媒は、担体と、前記担体に担持された金属または前記金属を含む材料とを有する触媒であって、前記金属または前記担体の表面にH
2Oが付着されており、前記金属は、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも一つの金属であるとよい。なお、担体に担持された金属または前記金属を含む材料に付着したH
2Oが一体化した触媒であってもよい。前記金属は、粒径が8nm以下の粒子であることが好ましく、より好ましくは粒径が4nm以下の粒子である。
【0038】
前記担体は、炭素微粒子、金属微粒子、窒化物微粒子、ポリマー微粒子、ケイ素化物微粒子及び酸化物微粒子からなる群から選択される一つの微粒子であるとよい。
【0039】
多角バレルスパッタ装置は、粉末状の担体(粉体試料)3にナノ粒子を高分散担持させる真空容器1を有しており、この真空容器1は直径200mmの円筒部1aとその内部に設置された断面が多角形のバレル(例えば、六角型バレル)1bとを備えている。ここで示す断面は、重力方向に対して略平行な断面である。なお、本実施の形態では、六角形のバレル1bを用いているが、これに限定されるものではなく、六角形以外の多角形のバレルを用いることも可能であり、円形のバレルを用いることも可能である。
【0040】
真空容器1には回転機構(図示せず)が設けられており、この回転機構により六角型バレル1bを矢印のように回転又は振り子動作させることで該六角型バレル1b内の粉末状の担体(粉体試料)3を攪拌しながら担持処理を行うものである。前記回転機構により六角型バレルを振り子動作又は回転させる際の回転軸は、ほぼ水平方向(重力方向に対して垂直方向)に平行な軸である。また、真空容器1内には円筒の中心軸上にスパッタリングターゲット2が配置されており、このターゲット2は角度を自由に変えられるように構成されている。これにより、六角型バレル1bを振り子動作又は回転させながら担持処理を行う時、ターゲット2を粉体試料3の位置する方向に向けることができ、それによってスパッタ効率を上げることが可能となる。なお、本実施の形態におけるスパッタリングターゲット2は、例えば、Ru、Ni、Pt、Pd、Rh及びIrからなる群から選択される少なくとも一つの金属又は該金属を含む材料からなるターゲットを用いるとよい。スパッタリングターゲット2は、高純度(99質量%以上)であることが好ましい。
【0041】
真空容器1には配管4の一端が接続されており、この配管4の他端には第1バルブ12の一方側が接続されている。第1バルブ12の他方側は配管5の一端が接続されており、配管5の他端はターボ分子ポンプ(TMP)10の吸気側に接続されている。ターボ分子ポンプ10の排気側は配管6の一端に接続されており、配管6の他端は第2バルブ13の一方側に接続されている。第2バルブ13の他方側は配管7の一端に接続されており、配管7の他端はポンプ(RP)11に接続されている。また、配管4は配管8の一端に接続されており、配管8の他端は第3バルブ14の一方側に接続されている。第3バルブ14の他方側は配管9の一端に接続されており、配管9の他端は配管7に接続されている。
【0042】
本装置は、真空容器1内の粉体試料3を加熱するためのヒーター17を備えている。また、本装置は、真空容器1内の粉体試料3に振動を加えるためのバイブレータ18を備えている。また、本装置は、真空容器1の内部圧力を測定する圧力計19を備えている。また、本装置は、真空容器1内に窒素ガスを導入する窒素ガス導入機構15を備えていると共に真空容器1内にアルゴンガスを導入するアルゴンガス導入機構16を備えている。また、本装置は、ターゲット2と六角型バレル1bとの間に高周波を印加する高周波印加機構(図示せず)を備えている。
【0043】
上記実施形態によれば、六角型バレルを振り子動作又は回転させることで粉末状の担体自体を攪拌でき、更にバレルを六角型とすることにより、粉末状の担体を重力により定期的に落下させ、バレル壁面に衝突させることができる。そのため、攪拌効率を飛躍的に向上させることができ、粉体を扱う時にしばしば問題となる水分や静電気力による粉体の凝集を防ぐことができる。つまり振り子動作や回転動作により攪拌と、凝集した粉末状の担体の粉砕を同時かつ効果的に行うことができ、粉末状の担体に、粒径がnmオーダーのナノ粒子を担持することが可能となる。具体的には、粒径が30μm以下の担体でもその表面にナノ粒子を担持できる。
【0044】
また、本実施形態では、真空容器1の外側にヒーター17を取り付けており、このヒーター17により六角型バレル1bを200℃まで加熱することができる。そのため、真空容器1の内部を真空にする際、ヒーター17で六角型バレルを加熱することにより、該六角型バレル内の水分を気化させ排気することができる。したがって、粉体を扱う時に問題となる水を六角型バレル内から除去でき、粉体の凝集をより効果的に防ぐことができる。なお、粉末状の担体にナノ粒子を担持又は被覆する際、ヒーター17で六角型バレルを加熱することにより、スパッタリングを行う際の粉末状の担体3の温度を200℃まで加熱することができる。
【0045】
また、本実施形態では、真空容器1の外側にバイブレータ18を取り付けており、このバイブレータ18により六角型バレル内の粉体3に振動を加えることができる。これにより、粉体を扱う時に問題となる凝集(この場合はバレル壁面への凝集・付着)をより効果的に防ぐことが可能となる。
【0046】
尚、上記実施の形態では、バイブレータ18により六角型バレル内の粉体3に振動を加えているが、バイブレータ18の代わりに、又は、バイブレータ18に加えて、六角型バレル内に種々の形状を有する補助部材(例えば棒状部材)を収容した状態で該六角型バレルを振り子動作または回転させることにより、粉体3に振動を加えることも可能である。これにより、粉体を扱う時に問題となる凝集・付着をより効果的に防ぐことが可能となる。
【0047】
[第2の実施形態]
本発明の一態様に係る水素の製造方法について説明する。詳細には、活性金属にRu、担体にカーボン微粒子を用いた触媒(Ru/C)と、この触媒を用いてメタンから水素を製造する方法について以下に説明する。
【0048】
<本実施形態の触媒>
図9に示す多角バレルスパッタ装置を用いて触媒(Ru/C)を作製した。以下に詳細に説明する。
まず、八角型バレル1b内に、カーボン微粒子材料からなる担体3を導入した。また、ターゲット2にはRuを用いた。
【0049】
次いで、ターボ分子ポンプ10を用いて八角型バレル1b内を8.0×10
−4Pa以下に減圧した。その後、アルゴンガス供給機構16により八角型バレル1b内に高純度Arガス(99.995)を導入した。この際のArガス圧は1Paである。そして、回転機構により八角型バレル1bを角度±75°、動作速度14秒/回で振り子動作させることで、八角型バレル内の凝集した粉体試料(カーボン微粒子)3を撹拌、粉砕させた。その際、ターゲットは粉体試料の位置する方向に向けられる。その後、バレルを揺動運動させ、RF発振器などの高周波印加機構によりターゲット2と六角型バレル1bとの間に100Wの高周波を印加することで、粉体試料3の表面にRuナノ粒子を室温で(加熱なしで)30分間スパッタリングにより高分散担持させた。このようにして粉末状の担体3の表面にRuナノ粒子を高分散担持することができた。スパッタリング終了後、八角型バレル1b内に窒素(N
2)ガスを導入し、大気圧に到達した後、試料を回収した。この試料(BS-Ru/C)のRu担持量はXRF測定より0.6wt%であった。
【0050】
このようにして得られたRu粒子が担持された粉末状の担体は、水素製造用の触媒であり、メタンなどの炭化水素を分解する反応に低温で高い活性を示す。なお、本明細書において「炭化水素」とはC
mH
2m+2(mは自然数)を言い、それ以外は「不飽和炭化水素」に該当する。
【0051】
<比較例の触媒>
従来の湿式法による比較例の触媒の調製法について説明する。
0.06gRuCl
3(40%Ru)を溶解した水溶液(6g)に3gのカーボン微粒子材料入れ、超音波により1時間攪拌した。この分散液を80℃の乾燥機に入れ、水を蒸発させた後、試料をU字石英反応管に詰め、350℃で50ml/minの混合ガス(H
2:Ar=4:1)で、5時間加熱還元し、比較例の触媒である試料(Ref.-Ru/C)を得た。この試料のRu担持量は0.8wt%であった。
【0052】
本実施形態の触媒試料(BS-Ru/C)及び比較例の触媒試料(Ref.-Ru/C)それぞれのRu担持状態をTEMで観察した。その結果を
図2に示す。いずれの試料にもRuナノ粒子がカーボン担体に担持されている。しかし、本実施形態のBS-Ru/CにおけるRu粒子の粒径は8nm以下に分布しているのに対し、比較例のRef.-Ru/CにおけるRu粒子の粒径は8nm以上にも広く分布していた。また、本実施形態のBS-Ru/CのRu粒子の平均粒子径1.8nmは、比較例のRef.-Ru/CのRu粒子の平均粒子径3.9nmの約1/2倍であった。本実施形態の触媒のRu粒子は比較例の触媒より微細化されていた。
【0053】
<メタン(CH
4)からの水素生成>
図1は、メタンから水素を生成させる触媒の性能を評価するための固定床流通式反応装置を模式的に示す断面図である。
図1に示す装置により本実施形態の触媒及び比較例の触媒それぞれの水素生成性能を以下のように評価した。
【0054】
石英ウール22を詰めた内径10mmのU字石英反応管21に1gの触媒23を入れた。触媒層の高さは17mmであった。反応管21は電気炉であるヒーター24により加熱し、触媒23の層に挿入した熱電対T2により反応温度を測定した。反応前に、50ml/minの水素とアルゴンの混合ガス(H
2:Ar=4:1)で10分間触媒23を還元した。続いて、水素がなくなるまでArガスで触媒23を含む反応管21をパージした後、10%のCH
4(バランスガス:Ar)とArガスを混合したガス(メタン濃度:5%)を28.8ml/minの流量で所定温度(例えば100℃)の水バブラー25を通して反応管21の上部から導入し、反応管21内でメタンの分解反応を行うとともに、ガス組成をGC−TCD(ガスクロマトグラフ分析熱伝導度検出器:Gaschromatograph−Thermal Conductivity Detector)で測定した。なお、反応管21で反応したガスは、液体の水が容器26に回収された後、GC−TCDに送られる。また水バブラー25はヒーター24によって温度調節されており、水バブラー25と反応管21との間の管もヒーター24によって温度調節されている。また熱電対T1は水バブラー25の温度を測定し、熱電対T3はヒーター24の温度を測定している。
【0055】
S/C、水素収率、CO
2収率及びCO収率それぞれは以下のように定義する。
S/C=スチームの量/導入したメタン量
水素収率=100(%)×水素生成量/(2または3×導入したメタン量)
CO
2収率=100(%)×CO
2生成量/導入したメタン量
CO収率=100(%)×CO生成量/導入したメタン量
CO
2/H
2=CO
2収率/水素収率
CO/H
2=CO収率/水素収率
【0056】
図1の固定床流通式反応装置を用いて評価した本実施形態のBS-Ru/C試料の触媒性能評価結果を
図3に示す。
図3において横軸は触媒層の温度を示し、縦軸は水素収率を示す。
図3に示すように、200℃から水素が生成し、その収率は温度上昇とともに増加した。これは、
図3に示す従来触媒の文献データ(V. Palma et al. Int. J. Hydrogen Energy, 42(2017)1629)より反応温度が200℃以上低下したことを示す。なお、CO
2に関しては、250℃付近から生成が認められた。すなわち、本実施形態の触媒において、200℃〜250℃の温度領域(I)では触媒上でメタンが水素と炭素、及び少量の不飽和炭化水素に分解する直接分解反応(CH
4 → 2H
2+C(及び不飽和炭化水素))により水素が生成し、350℃以上の温度領域(III)ではメタンと水蒸気が触媒上で水素とCO
2に分解する水蒸気改質反応(CH
4+2H
2O → 4H
2+CO
2)により水素が生成し、250℃〜350℃の温度領域(II)ではメタンの直接分解反応と水蒸気改質反応の両方により水素が生成する。
【0057】
メタンの直接分解反応の温度領域(I)における触媒の耐久性を評価した。その結果を
図4(A)に示す。
図4(A)に示すように、200℃の温度において、本実施形態のBS-Ru/Cでは5〜8%の水素収率が少なくとも15日間継続したのに対し、比較例のRef.-Ru/Cでは5時間付近で水素収率が2%未満と急激に低くなり、5時間で0%に低下した。
【0058】
一方、
図4(B)に示すように、メタンの直接分解反応と水蒸気改質反応が同時に起こる温度領域(II)に該当する340℃の温度においては、本実施形態のBS-Ru/C及び比較例のRef.-Ru/Cのいずれも水素収率の向上が認められるが、BS-Ru/Cでは90%以上の水素収率が少なくとも15日間継続した。また、BS-Ru/Cの水素収率は、比較例のRef.-Ru/Cの水素収率に比べて非常に高いことが確認された。
【0059】
水蒸気改質反応の温度領域(III)における本実施形態のBS-Ru/C試料の耐久性評価結果を
図5に示す。この評価の反応温度は400℃である。
図5に示すように、80%程度の水素収率が少なくとも9日間継続した。この結果より本実施形態の触媒は従来の触媒より低温でも水蒸気改質反応が安定的に起こることが確認された。
【0060】
本実施形態の触媒を用いることで、メタンの直接分解反応により水素と炭素、及び少量の不飽和炭化水素に分解することができる。これにより、炭素、及び不飽和炭化水素を固定化することができ、CO
2やCO生成を抑制できる。つまり、メタンの直接分解反応の温度領域(I)で本実施形態の触媒を用いれば、CO
2やCOフリーで水素を製造することが可能となる。また、メタンの直接分解反応と水蒸気改質反応が同時に起こる温度領域(II)で本実施形態の触媒を用いてもCOは生成せず、且つ、CO
2の排出を抑制して水素を製造することが可能となる。また、温度領域(III)で本実施形態の触媒を用いれば、CO生成なしで高い収率を維持しつつ低温で水素を製造することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態の水素の製造方法を用いることで、水素供給施設(水素ステーション等)や水素供給設備を有する機器(家庭用燃料電池等)にて炭化水素から水素を製造し、燃料電池や水素ガスタービン等に供給することを可能とする。
【0062】
なお、本実施形態では、カーボン微粒子からなる担体にRu粒子を担持させた触媒を用いているが、担体に他の金属(例えばNi、Pt、Pd、Rh及びIrからなる群から選択される少なくとも一つの金属)を担持させた触媒を用いてもメタンから水素を製造することが可能である。これについては以下に詳細に説明する。
【0063】
本実施形態と同様の方法により、カーボン微粒子からなる担体にNi微粒子を担持させたNi/C試料、前記担体にPt微粒子を担持させたPt/C試料、前記担体にPd微粒子を担持させたPd/C試料、前記担体にRh微粒子を担持させたRh/C試料、及び前記担体にIr微粒子を担持させたIr/C試料を準備し、
図1の固定床流通式反応装置を用いて本実施形態と同様の方法で触媒性能を評価した結果を
図6に示す。
図6に示すように、担体にNi、Pt、Pd、Rh及びIrからなる群から選択される少なくとも一つの金属を担持させた触媒を用いてもメタンから水素を製造することが可能であるといえる。
【0064】
また、本実施形態では、カーボン微粒子からなる担体を用いているが、他の担体(例えば金属微粒子、窒化物微粒子、ポリマー微粒子、ケイ素化物微粒子及び酸化物微粒子からなる群から選択される一つの微粒子)を用いてもメタンから水素を製造することが可能である。これについては以下に詳細に説明する。
【0065】
本実施形態と同様の方法により、Si微粒子からなる担体にRu微粒子を担持させたRu/Si試料、Si
3N
4微粒子からなる担体にRu微粒子を担持させたRu/Si
3N
4試料、SiC微粒子からなる担体にRu微粒子を担持させたRu/SiC試料を準備し、
図1の固定床流通式反応装置を用いて本実施形態と同様の方法で触媒性能を評価した結果を
図7に示す。
図7に示すように、カーボン微粒子以外からなる担体を用いてもメタンから水素を製造することが可能であるといえる。
【0066】
また、本実施形態では、メタンの直接分解反応の温度領域(I)においてメタンを水素と炭素、及び少量の不飽和炭化水素に分解する反応時にBS-Ru/C試料の他にH
2Oも導入しているが、メタンの直接分解反応の温度領域(I)においては反応時にH
2Oを導入せずにBS-Ru/C試料のみでも直接分解反応を起こさせることが可能である。これについては以下に詳細に説明する。
【0067】
メタンの直接分解反応の温度領域(I)である200℃における本実施形態のBS-Ru/C触媒の耐久性を、反応時にH
2Oを導入せずに評価した。その結果を
図8に示す。
図8に示すように、本実施形態のBS-Ru/CではH
2Oを導入しなくても水素収率が30分間継続した。従って、メタンの直接分解反応の温度領域(I)においてH
2Oを導入しなくても直接分解反応を起こさせることが可能であるといえる。なお、H
2Oを導入しないと触媒の耐久性(水素生成の継続時間)は低いが、
図4に示すようにH
2Oを導入することで触媒の耐久性が高くなる。このことから、本反応のメタンの直接分解反応ではH
2Oの供給により耐久性が向上すると言え、この時、供給された水蒸気が金属や担体材料表面に付着することで金属や担体とH
2Oが一体化した触媒が形成される。その結果、触媒の高活性化が図られる。
【0068】
また、本実施形態では、BS-Ru/Cの触媒を用いてメタンから水素を生成しているが、BS-Ru/Cの触媒を用いてメタン以外の炭化水素から水素を生成することも可能である。
【0069】
[第3の実施形態]
図10は、本発明の一態様に係る燃料の製造方法を説明するための模式図であり、この燃料を用いて発電機のガスタービンと蒸気タービンを回して発電する機構を示している。この発電機は例えば火力発電所に適用することも可能である。
【0070】
天然ガス(CH
4等)31は反応炉32aに導入後、燃焼部36と補助バーナ34に送られる。燃焼部36で生成された高温のガスはガスタービン35に送られ、回転運動エネルギーを得る。使用後の排ガスは補助バーナ34で再加熱され、排熱回収ボイラーに送られる。排熱回収ボイラーでは、高圧蒸気42(600℃)と低圧蒸気41(33℃)が生成され、ガスタービン35と連結した蒸気タービン37に送られる。
【0071】
蒸気タービンで使用された高圧蒸気42はコンデンサー39で冷却され、反応炉32aの熱源として使用される。その後、この蒸気は排熱回収ボイラー40で再加熱され、中圧蒸気43(620℃)が生み出される。中圧蒸気43は蒸気タービン37で再度使用される。最終的に、高圧蒸気42、低圧蒸気41、中圧蒸気37から蒸気タービン37で生み出された回転エネルギーはガスタービン35で生み出された回転エネルギーとともに発電機38に伝えられ、電気エネルギーが生成する。
【0072】
反応炉32aは運転が進むにつれ、所定の温度(例えば200℃以上500℃以下)にまで加熱される。反応炉32aには天然ガス31が供給されているとともに、第2の実施形態と同様のBS-Ru/C触媒が入れられている。また、この反応時にはH
2Oが含まれていてもよい。そのため、反応炉32a内では天然ガスの一部、あるいは全部が第2の実施形態で説明したメタンの直接分解反応または水蒸気改質反応により分解され、水素が生成される。これにより、反応炉32aからは水素ガスと天然ガスが混合した燃料、または水素33の燃料が排出され、燃焼部36、及び補助バーナ34に導入され、燃焼される。なお、メタンの直接分解反応では水素とともに炭素32、及び少量の不飽和炭化水素も生成されるが、これらは反応炉内に固定化後、回収される。また、反応炉32aから排出される燃料33は、燃料として使用できる程度であれば不純物を含んでいてもよい。
【0073】
反応炉32aから排出される燃料33は、その燃料33中の水素の割合が高いほど燃焼時のCO
2の排出量を低減することができ、燃料33中の水素の割合は温度により0〜100%で調整できる。
【0074】
本実施形態によれば、第2の実施形態の触媒を用いて天然ガスの一部、または全部を分解して水素を生成することで、燃料の一部、または全部を水素に変換することができる。水素は燃焼によりCO
2を生成しないため、燃料を燃焼する際にCO
2の排出量を抑制することができる。
また、本実施形態による燃料の製造方法では、CO変成器や化石燃料を使用した加熱器を必要とせずシステムの簡略化や省エネを可能とする。
【0075】
なお、本実施形態では、天然ガスを第2の実施形態の触媒に接触させ、天然ガスの一部、または全てを分解して水素と天然ガスが混合した燃料、あるいは水素のみを製造する際の反応炉32a内の天然ガスの加熱温度を例えば200℃以上500℃以下としているが、これに限定されるものではなく、天然ガスを第2の実施形態の触媒以外の他の触媒に接触させてもよいし、天然ガスの加熱温度を200℃以上900℃以下にしてもよい。つまり、200℃以上900℃以下の温度の天然ガスを触媒に接触させて前記天然ガスの一部を分解することで水素と天然ガスが混合した燃料、あるいは水素のみを製造することも可能である。但し、この場合の触媒は、天然ガスを分解して水素を製造できる触媒であり、例えば酸化アルミナや酸化マグネシウム、スピネル系化合物などの担体にルテニウム、ロジウム、ニッケルなどの活性金属を担持した触媒が挙げられる。なお、混合燃料は水素を別系統で製造し、再度、天然ガスに混合して製造しても良い。この場合、水分解から製造した水素や副生水素等を用いることもできる。
【0076】
[第4の実施形態]
図11は、本発明の一態様に係る燃料の製造方法を説明するための模式図であり、この燃料を自動車の燃料に適用する機構を示している。
【0077】
図11に示す自動車はLNG(液化天然ガスCH
4)、あるいはLPG(液化石油ガス)を収容するタンク52を備えている。LPGは、プロパン(C
3H
8)、ブタン(C
4H
10)等を含む。タンク52内のLNG、あるいはLPGを反応炉53に導入後、空気51とともにエンジン55に送り、燃焼させることで運動エネルギーを得る。
【0078】
エンジン55で生成した高温の排ガスは三元触媒56により400〜600℃の温度でNOx、SOxなどの有害物質が無害化される。無害化された排ガスはコンデンサー57で冷却され、反応炉53の熱源として用いられた後、サブサイレンサー58、メインサイレンサー59を通り、外部へ排ガス60として排出される。
【0079】
反応炉53は運転が進むにつれ、所定の温度(例えば200℃以上500℃以下)に加熱される。反応炉53内にはLNG、あるいはLPGが送られているとともに、第2の実施形態と同様のBS-Ru/C触媒が入れられている。また、この反応時にはH
2Oが含まれていてもよい。そのため、反応炉53内ではLNG、あるいはLPGの一部、または全部に第2の実施形態で説明した直接分解反応または水蒸気改質反応が起こり、水素が生成される。これにより、反応炉53からは水素ガスとLNG、あるいはLPGが混合した燃料、あるいは水素54が排出され、エンジン55に供給される。なお、メタンの直接分解反応では水素とともに炭素49、及び少量の不飽和炭化水素も生成されるが、これらはカートリッジ50に回収される。また、反応炉53から排出される燃料54は、燃料として使用できる程度であれば不純物を含んでいてもよい。
【0080】
反応炉53から排出される燃料54は、その燃料54中の水素の割合が高いほど燃焼時のCO
2の排出量を低減することができ、燃料33中の水素の割合は温度により調整できる。
【0081】
本実施形態によれば、第2の実施形態の触媒を用いてLNG、あるいはLPGの一部、または全部を分解して水素を生成することで、燃料の一部、または全部を水素に変換することができる。水素は燃焼によりCO
2を生成しないため、燃料を燃焼する際にCO
2の排出量を抑制することができる。
また、本実施形態による燃料の製造方法では、CO変成器や化石燃料を使用した加熱器を必要とせずシステムの簡略化や省エネを可能とする。
【0082】
なお、本実施形態では、液化天然ガス、あるいは液化石油ガスを第2の実施形態の触媒に接触させ、液化天然ガス、あるいは液化石油ガスの一部、または全てを分解して水素と液化天然ガス、あるいは液化石油ガスが混合した燃料、または水素のみを製造する際の反応炉53内の液化石油ガスの加熱温度を例えば200℃500℃以下としているが、これに限定されるものではなく、液化石油ガスを第2の実施形態の触媒以外の他の触媒に接触させてもよいし、液化石油ガスの加熱温度を200℃以上900℃以下にしてもよい。つまり、200℃以上900℃以下の温度の液化石油ガスを触媒に接触させて前記液化天然ガス、あるいは液化石油ガスの一部または全部を分解することで水素と液化天然ガス、あるいは液化石油ガスが混合した燃料、または水素のみを製造することも可能である。但し、この場合の触媒は、液化石油ガスを分解して水素を製造できる触媒であり、例えばLNG用として酸化アルミナや酸化マグネシウム、スピネル系化合物などの担体にルテニウム、ロジウム、ニッケルなどの活性金属を担持した触媒、LPG用として酸化アルミナや酸化ジルコニウム、酸化セリウムなどの担体にルテニウムやニッケルなどの活性金属を担持した触媒が挙げられる。なお、混合燃料は水素を別系統で製造し、再度、LNGやLPGに混合して製造しても良い。この場合、水分解から製造した水素や副生水素等を用いることもできる。
【0083】
また、上記の第1乃至第4の実施形態を適宜組み合わせて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…真空容器
1a…円筒部
1b…六角型バレル
2…ターゲット
3…微粒子(粉体試料)
4〜9…配管
10…ターボ分子ポンプ(TMP)
11…ポンプ(RP)
12,13,14…第1バルブ,第2バルブ,第3バルブ
15…窒素ガス導入機構
16…アルゴンガス導入機構
17…ヒーター
18…バイブレータ
19…圧力計
21…U字石英反応管
22…石英ウール
23…触媒
24…ヒーター
25…水バブラー
26…容器
31…天然ガス(CH
4等)
32…炭素(C)
32a…反応炉
33…燃料
34…補助バーナ
35…ガスタービン
36…燃焼部
37…蒸気タービン
38…発電機
39…コンデンサー
40…排熱回収ボイラー
41…低圧蒸気
42…高圧蒸気
43…中圧蒸気
49…炭素(C)
50…カートリッジ
51…空気
52…タンク
53…反応炉
54…燃料
55…エンジン
56…三元触媒
57…コンデンサー
58…サブサイレンサー
59…メインサイレンサー
60…排ガス