【実施例】
【0057】
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために含まれる。以下の実施例で開示される技術は、本発明の実施において良好に機能するように本発明者らによって発見された技術であり、したがって、その実施のための好ましい方法を構成すると見なし得ることが当業者に認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示される特定の態様に多くの変更を行うことができ、それでもやはり同様のまたは類似の結果が得られ得ることを認識すべきである。
【0058】
本明細書において、本発明者らは、開示される方法を使用することにより、高齢者の細胞などの質および量が低い骨髄間質細胞からより欠陥の少ないMSCの小さな亜集団を単離および拡大培養することが可能になることを開示する。さらに、本発明者らは、MSCの再生能力を回復するための新規方法を開示する。
【0059】
実施例1
S+BM-MSCの単離および培養
高齢対象(65歳以上)から骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)を採取した。サイズおよびSSEA-4発現に基づき、フローサイトメトリを用いて細胞を選別した。採取したBM-MSCの約5%〜10%は、SSEA-4陽性の小型細胞(小型+)であった。
図4および
図7参照。本発明者らは、細胞選別後の小型+に富む画分が、他の亜集団と比較して、コロニー形成単位(CFU-F)アッセイによって測定されたように幹細胞が濃縮されていることを見出した。次いで、若齢ドナー(23歳以下)由来の骨髄間質細胞によって作製されたECM(若齢ECM)またはTCPのいずれかに亜集団をプレーティングした。若齢ドナー由来のBM-MSCを対照として使用した。次いで、若齢ECMまたはTCPを用いて細胞を培養し、自己複製、免疫表現型および分化能に基づいて比較した。培養後、細胞を分割し、保存した。
図20は、上記で説明した一般的なアプローチの態様を例示する。
【0060】
簡単に述べると、BM-MSCを細胞3,000個/cm
2でTCPまたは若齢ECM上に播種し、7日間培養した。
図4Aは、6日目の培養下の細胞の明視野顕微鏡検査を示す。若齢間葉系幹細胞(MSC)は、高齢細胞に比べてより多くの細胞数を有し、より紡錘状の形態を示すようである。高齢細胞では、TCP対ECMでの培養に関して細胞の総数または全体的な外観においても実質的な差がない。これは、培養7日後の細胞の密度によって実証される(
図4B)。細胞数は、若齢細胞がTCPに比べてECM上で有意により多く増殖することを示し(p=0.015)、高齢MSCの細胞密度で認められる小さな差は統計的に有意ではなかった(p=0.0781)。これは、若齢ECMで高齢MSCの増殖が2倍に増加したという、マウスモデルにおける以前に報告された観察と一致しない。
【0061】
7日間の培養後、細胞を、コロニー形成単位-線維芽細胞(CFU-F)、-脂肪細胞(-AD)および-骨芽細胞(-OB)アッセイのために剥離し、TCP上にクローン密度で再播種するか、またはフローサイトメトリによる免疫表現型分類のために使用した。
図4Cに示されているように、高齢BM-MSCによるコロニー形成および分化は、ECM上での予備拡大培養によって実質的に影響されない。さらに、両方の群におけるコロニー形成は若齢BM-MSCよりも少ない。これとは対照的に、ECM上で予備拡大培養した若齢BM-MSCは、各々の条件でより大きく、より密度が高く、より多数のコロニーを形成した。増殖および分化アッセイは4群間の明確な差異を明らかにするが、MSCに関連する標準的な表面マーカーにおける差異は明らかではなかった。CD73、CD90およびCD105の発現は、いずれの培養条件およびどちらの年齢群についても同様であった(示していない)。これは、MSCマーカーの発現が、年齢および/または分化能に関わりなく高いままであるという示唆(Bonab, et al, 2006)と一致する。高齢BM-MSCの複製および骨形成は、若齢ECMでの培養によって確実には回復しなかった。
【0062】
材料および方法:この実施例および以下の実施例で使用される材料および方法を以下で簡単に説明する。
【0063】
若齢ドナー由来の骨髄 - 若齢ドナー由来の骨髄をLONZA(Walkersville, MD, USA)から購入した。骨髄試料は、23歳未満の健常男性ドナーから得た。新鮮な未処理の試料を氷上にて一晩で輸送し、受領後、赤血球を溶解して、単核細胞を標準的な増殖培地(以下で述べる組成)中でTCP容器に播種した(5×10
5細胞/cm
2)。コロニーが形成し始めたとき、培地を取り出し、PBSを用いて非付着細胞を静かに洗い流して、新鮮な培地を添加した。これらの細胞を1回または2回継代のために拡大培養し(P1、P2)、実験に使用した。あるいは、将来の使用のために、細胞を、培地+10%(v/v)ジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する20%血清中2×10
6細胞/mLで液体窒素中に保存した。これらの試験で使用した細胞は、5名の異なるドナーに由来した。
【0064】
高齢ドナー由来の骨髄 - 膝/股関節全置換術を受けた同意患者から、高齢ドナー(65歳以上)由来の骨髄細胞を得た。手術部位からの海綿骨を取り出し、直ちに4℃の単離緩衝液(ハンクス緩衝生理食塩水+5%(v/v)ウシ胎仔血清)に入れた。臨床試料を患者から取り出して3〜4時間以内に研究室に戻し、4℃で鋭利な鋏を用いて小片に切断し、その後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解したコラゲナーゼ2型(400単位/mL)を用いて37℃で30分間、撹拌しながら消化した。完了時に、消化物を4℃で5分間遠心分離し(600×g)、上清を除去した。次いで、ペレットを単離緩衝液中に再懸濁し、骨断片を取り出すために100ミクロンの細胞ストレーナで濾過した。細胞ストレーナ上に収集した骨断片を明るい白色になるまで洗浄した。細胞を含む残りの溶液を4℃で5分間遠心分離し(600×g)、細胞ペレットを増殖培地に再懸濁した。増殖培地中でTCP容器に細胞を播種し(5×10
5細胞/cm
2)、コロニーが形成し始めるまで標準的な条件下で培養した。ひとたびコロニーが出現すれば、完全培地を取り出し、PBSを用いて非付着細胞を静かに洗い流して、新鮮な培地を添加した。これらの細胞を拡大培養し(P1、P2)、実験において直ちに使用するか、または将来の使用のために液体窒素中に入れた。13名のドナー由来の細胞を試験したが、11名の細胞だけを使用した。表現型組成のために4つの亜集団すべてに十分な数の細胞を選別することができなかったので、2名のドナーは利用しなかった。
【0065】
細胞外マトリックス - 骨髄由来細胞外マトリックスは、StemBioSys, Inc.(San Antonio, TX, USA)によって提供された。
【0066】
細胞培養 - 骨髄MSCを37℃、5%CO
2の加湿インキュベータで培養した。特に指示がない限り、細胞は、α-Minimal Essential Medium(MEM)、15%の予め選択したFBS(Atlanta Biologics, Flowery Branch, GA, USA)、2mM L-グルタミン(Life Technologies, Grand Island, NY, USA)、および1%(v/v)ストレプトマイシン/ペニシリン(Life Technologies, Grand Island, NY, USA)を含有する「標準増殖培地」で培養した。培養の間3日ごとに培地の半分の交換を実施した。
【0067】
コロニー形成単位アッセイ - CFU-線維芽細胞(CFU-F)アッセイのために、細胞を、標準増殖培地中で細胞10および30個/cm
2にて6ウェルプレートに播種した。高密度のコロニーが形成されたとき(典型的には、培養10〜14日目)、培地を除去し、ウェルをPBSで1回洗浄して、細胞を室温で固定した(100%メタノールで10分間)。固定後、細胞をPBSで1回洗浄し、室温で10分間乾燥させた。次いで、コロニーをメチルバイオレット(MP Biomedicals, Solon, OH, USA)で10分間染色した。再使用のために染色溶液を収集し、残留染色剤を、バックグランドが透明に見えるまで脱イオン水で洗い流した。
【0068】
CFU-脂肪細胞(AD)および骨芽細胞(OB)アッセイのために、細胞を細胞20および60個/cm
2にて6ウェルプレートに播種した。CFU-ADおよびCFU-OB培養を、CFU-Fアッセイのための培養と同時に開始した。CFU-Fプレートを染色する時点で、CFU-ADおよびCFU-OBプレートをそれぞれの誘導培地に切り替えた。CFU-AD培養のために、培地に5mM 3-イソブチル-L-メチルキサンチン(IBMX)、1mMインドメタシン、1μMデキサメタゾン、および10μg/mLインスリンを補充した。CFU-OB培養のために、培地に100nMデキサメタゾン、10mM β-グリセロリン酸、および50μM L-アスコルビン酸2-リン酸を補充した。ADおよびOB誘導のためのすべての培地添加物は、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO, USA)から購入した。
【0069】
コロニーが、光学顕微鏡で観察される、脂質またはミネラルをそれぞれ含むことが視覚的に認められた場合にCFU-ADおよびCFU-OBプレートを染色した。これは、典型的には、脂質生成の場合は10〜14日後、骨形成の場合は17〜21日後であった。10%ホルマリンで細胞を室温で1時間固定し、続いて脱イオン水で静かに洗浄した後、CFU-AD培養物を新鮮調製したオイルレッドOで室温にて1時間染色した。染色後、溶液を除去し、バックグランドが透明になるまでウェルを脱イオン水で静かに洗浄した。CFU-OBについては、10%ホルマリンを用いて細胞を室温で1時間固定し、脱イオン水で洗浄した後、紫外線下に室温で一晩、1%硝酸銀(AgNO
3)で染色した。翌日、AgNO
3溶液を除去し、5%チオ硫酸ナトリウムで2分間処理して過剰の銀を除去した。その後、過剰の染色剤の除去を防ぐためにウェルを脱イオン水で洗浄した。
【0070】
蛍光活性化細胞選別 - フルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合抗SSEA-4およびIgG3アイソタイプ対照抗体は、BD Biosciences(San Jose, CA, USA)から購入した。小型および大型BM-MSC集団を選択するためのゲーティング方法を、様々な若齢および高齢ドナー由来の細胞を使用して数週間にわたって開発し、若齢ドナー細胞を小型細胞の対照として使用した。電圧およびサイズのゲーティングは、前方散乱(FSC)に基づき、すべての細胞選別について一定に保持した。FITCゲーティングをアイソタイプ対照に基づいて毎回再評価した。ダブレット識別を用いて細胞ダブレットを除去した。
【0071】
10μg/mLの抗体および4℃で1時間のインキュベーションを用いて、単一細胞懸濁液(10×10
6細胞/mL)で染色を実施した。細胞を単離緩衝液で2回洗浄し、BD Biosciences(San Jose, CA, USA)のFACSAria Cell Sorterを用いた滅菌選別に供するまで氷上に置いた(3時間未満)。選別は、FACSDivaソフトウェアシステムを使用して実行した。
【0072】
フローサイトメトリ - マウス抗ヒト非結合抗体は、BD Biosciences(San Jose, CA, USA)から購入した。単一細胞懸濁液(100μL中1×10
5個)を一次抗体(10μg/mL)と共に4℃で少なくとも1時間インキュベートした。染色した細胞を染色緩衝液(PBS+5%v/v FBS+0.01%m/vアジ化ナトリウム)で2回洗浄した後、FITC結合ヤギ抗マウスIgGと共に4℃で30分間インキュベートした。次いで、細胞を染色緩衝液で2回洗浄し、直ちに分析するか、または新鮮調製した1%パラホルムアルデヒドで固定して72時間以内に分析した。分析は、BD Bioscience LSRIIフローサイトメータを用いて実施した。FACSDivaソフトウェアシステムを用いて試料を測定し、生成されたデータを後ほど解析して、FlowJoソフトウェアパッケージを用いて図面を作成した。各試料について10,000事象を解析し、主要転帰はアイソタイプ対照と比較した陽性細胞のパーセントであった。前述したプロトコルを、アネキシン5について検定する場合は膜の透過性を上げる抗体と共にジメチルスルホキシドを含むように変更した。
【0073】
直径中央値 - 培養後、細胞を剥離し、懸濁液に入れた。懸濁した細胞をスライドガラスの上、カバーガラスの下に広げた。明視野顕微鏡の画像を撮影し、Olympus CellSensソフトウェアを使用して解析し、各条件において少なくとも100個の細胞の拡散形態を解析した。高齢細胞の場合、n=150;若齢細胞の場合、n=276。MATLABテクニカルコンピューティングソフトウェアを用いて記述統計を計算した。
【0074】
細胞内活性酸素種 - CellROX緑色フローサイトメトリアッセイキット(ThermoFisher Scientific, Bedford, MA, USA)を用いて細胞内活性酸素種(ROS)を分析した。3本のチューブを調製し、各々が約100μL中に5×10
5細胞/mLを含んだ。陰性対照チューブに、1mM N-アセチルシステイン(NAC)を添加して試料の抗酸化能を高めた。陽性対照については、tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP; 200μM)を使用して酸化ストレスを誘導した。3本のチューブすべてを37℃で1時間インキュベートした後、CellROX ROS検出試薬で染色した。染色した試料を、BD Bioscience LSRIIフローサイトメータを用いて直ちに(1時間以内に)分析した。
【0075】
アデノシン三リン酸 - アデノシン三リン酸(ATP)測定キット(Molecular Probes, Eugene, OR, USA)を用いてATPレベルを測定した。試験培養物由来の25,000個の細胞を三重に測定し、キットと共に供給されるATP標準品を用いて作成したATP標準曲線と比較した。ルミネセンスはホタルルシフェラーゼの活性によるものであり、標準曲線を用いて各試料の平均ATP濃度を決定した。
【0076】
β-ガラクトシダーゼ - 96ウェルの細胞老化アッセイキット(Cell Biolabs, San Diego, CA, USA)を用いてβ-ガラクトシダーゼ(β-Gal)を測定した。
【0077】
96ウェルプレート中の細胞を細胞溶解緩衝液と共に4℃で5分間インキュベートした。全細胞溶解物を微量遠心分離管に移し、2000×gで10分間遠心分離した。細胞溶解物の上清を分析のために回収した。試料50μLを、新鮮調製したアッセイ緩衝液(キットと共に供給される)50μLと共に、光から保護して37℃で3時間インキュベートした。3時間後、反応液50μLを96ウェルプレート中の停止液200μLに添加した。蛍光を360nm励起/465nm発光で直ちに測定した。
【0078】
テロメラーゼ活性 - TeloTAGGGテロメラーゼPCR ELISA
PLUSキット(Roche Diagnostics, Indianapolis, IN, USA)を用いてテロメラーゼ活性を定量化した。アッセイキットは2段階工程である。第1段階では、テロメラーゼがテロメア反復配列をビオチン標識プライマーの末端に付加し、次いでプライマーおよび伸長産物がPCRによって増幅される。次の段階では、PCR産物をテロメア反復配列に特異的なジゴキシゲニン(DIG)標識検出プローブにハイブリダイズさせ、次いでビオチン標識を介してマイクロプレートに固定化する。その後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)に結合した抗体でそれらを検出する。試料の吸光度値およびすべての実験対照を使用して、所与の実験内の種々の試料について相対テロメラーゼ活性を計算することができる。
【0079】
細胞形態 - 細胞増殖の様々な段階でOlympus IX73倒立顕微鏡(Olympus, Shinjuku, Tokyo, Japan)を用いて画像を撮影した。細胞形態の測定のために、細胞形態が細胞-細胞接触によって実質的に影響されないようにコンフルエントになる前に画像を撮影した。画像は、OlympusのCellSens Dimensionソフトウェアを用いて分析した。細胞は、フリーハンドポリゴンツールを使用して輪郭を描き、円形度および面積の測定値は自動的に計算された。
【0080】
統計解析 - 細胞数、CFU、β-ガラクトシダーゼ、ATP、およびテロメラーゼアッセイを、独立した実験ごとに三重に実施した。フローサイトメトリは、それぞれの独立した実験において各群の各マーカーについて1回実施した。異なる組織ドナー由来の細胞を用いて、すべての種類の実験を少なくとも3回反復した。
【0081】
各アッセイの複製データをプールし(すなわち増殖、CFUアッセイ、テロメラーゼ活性、ATPレベル、および遺伝子発現)、その後分析した。平均、標準偏差、および信頼区間を計算し、必要に応じてANOVA分析および事後検定を用いて群を比較した。
【0082】
分化能を、CFU-Fに対するCFU-ADおよびCFU-OBの比率として計算し、修正Wald法を用いて信頼区間を決定した。
【0083】
フローサイトメトリデータは、試料サイズが非常に大きいため、集団全体における様々なマーカーを発現する細胞の数を表すと仮定した。群内の種々のドナーからの結果を平均し、増殖試験について述べたようにANOVAを用いて比較した。フィッシャーの正確確率検定を用いて、大型細胞は小型細胞よりも老化のマーカーを発現している傾向が強いかどうかを判定した。
【0084】
実施例2
SSEA-4の形態学的相違および発現の識別
若齢および高齢BM-MSCの特性を比較し、高齢MSC集団のレスキューを妨げる上での制限要因となり得る特性を同定するため、および若齢MSCの特性を他のMSC集団の機能を測定するための基準として使用し得るように、若齢MSCと高齢MSCとの相違を最も確実に明らかにするアッセイを同定するために対比させた。
【0085】
高齢MSCの増殖速度は、若齢MSCに比べてはるかに遅い。
図4参照。さらに、高齢BM-MSCの形態学的表現型は、若齢MSCに比べてより大きく、より紡錘状でないようである。
図4参照。しかし、形態学的相違は、単に、より若齢の細胞の集密度に起因する細胞-細胞接触の結果である可能性がある。若齢BM-MSCがコンフルエントに達する前にこれらの形態学的相違が存在するかどうかを判定するために、細胞-細胞接触の影響が最小限である培養3日後に画像を撮影した。若齢BM-MSCと高齢BM-MSCの形態の大きな相違は、細胞がコンフルエントに達する前の明視野顕微鏡検査によって定性的に認められた。
図5A参照。この相違は、細胞伸展面積の比率を、等しい外周(円形度)を有する円の比率と比較することによって定量化することができる。高齢BM-MSCは、若齢MSCに比べて25%超、より円形である(より紡錘状でない)(p<0.00001)。
【0086】
培養の間の細胞形状の相違を測定した後、若齢および高齢BM-MSCの代謝活性の相違を調べた。高齢BM-MSCは、若齢BM-MSCより約50%低いレベルのATPを含むことが示された(p=0.023)(
図5B)。これは驚くにはあたらず、代謝活性が年齢と共に低下することは公知である。さらに、多くの細胞過程がATPの形でエネルギーを必要とするので、この低下は、MSCで観察される加齢に関連した機能損失に重要である可能性がある。
【0087】
MSCが不均一な集団であることは公知であり、造血細胞での最近の数多くの試験は、細胞の集団レベルでの老化を、すべての細胞の個別の老化ではなくクローン組成のシフトと記述している。若齢BM-MSCと比較して高齢BM-MSC集団の表現型組成を理解するために、広範な免疫表現型分類を実施した。BM-MSCの従来の免疫表現型マーカーに相違は見られなかったが、マーカー発現のいくつかの相違は、フローサイトメトリによる幹細胞性および老化と相関した(
図5C)。代謝活性の低下にもかかわらず、有意な数の高齢BM-MSCは、非常に高い細胞内活性酸素種(ROS)含量を有する。これは、これらの細胞が、細胞内ROSを除去する能力が実質的に低下していることを示唆する。このシナリオに因果関係が存在するかどうかは不明であるが、同様の割合の細胞が、早期アポトーシスマーカーであるアネキシン5も発現する。これは、培養下の高齢MSCのかなりの部分がアポトーシスを受ける準備をしていることを示唆する。理論に拘束されるものではないが、これは、高齢BM-MSCの比較的大きな部分がSSEA-4を発現することについての1つの可能な説明である。
【0088】
SSEA-4は分化能を有するMSCのマーカーとして使用されており、幹細胞性の信頼できるマーカーであり得る(Sun, et al., 2011; Gang, et al., 2007; Kawanabe, et al., 2014; Pipino, et al., 2015)。しかし、これが当てはまる場合、SSEA-4(+)MSCの割合が比較的少ない細胞集団では、SSEA-4表現型が他の細胞よりも迅速に増殖することによって優性表現型になると予想され得る。実際には、そうではない。高齢MSC集団では、SSEA-4発現は連続継代の間に減少する傾向があり、最終的に培養は失敗する。理論に拘束されるものではないが、高齢ドナーにおけるMSCの大きな割合がアポトーシスを受けているとすれば、迅速に分裂する細胞は迅速にアポトーシスも受けており、それらが培養物の優性表現型になるのを妨げるとも考えられる。
【0089】
第2の可能な説明は、高齢BM-MSCの形態によって示唆される。高齢BM-MSCは、形状の変化に加えて、はるかにより大きい伸展面積中央値(14,326μm
2対2,123μm
2)および直径中央値(33.10μm対18.20μm-表1)を有する。高齢BM-MSCおよび若齢BM-MSCの細胞伸展面積および細胞サイズの分布(フローサイトメトリにおける前方散乱によって測定)をそれぞれ
図3および
図5Dに示す。サイズ中央値は、若齢MSCと比較して高齢MSCでは実質的により大きいようであるが、集団間で有意な重複部分があり、それらは同様の範囲を占めるようである。高齢ドナー由来の小型のBM-MSCは、若齢ドナーで見られるBM-MSCのサイズと同様のサイズである。高齢ドナー由来のBM-MSCに関してここで観察された細胞サイズおよび形状の変化は、老化表現型を獲得する細胞の特徴である(Zhou, et al., 2008; Wagner, et al., 2008)。過去10年の間に、高齢化における老化の役割の理解に大きな進歩がなされた。この多くは、多面的な機構を同定し、老化に関連する分泌表現型と呼ばれるものを介して老化細胞がパラクリン作用によって隣接細胞に害を及ぼし得ることを示すことに集中してきた(Campisi, et al., 2011; Freund, et al., 2010; Coppe, et al., 2008)。理論に拘束されるものではないが、これらのより大きく、より平らで、より円形の細胞が老化した場合、分泌因子を介して「若い」隣接細胞を阻害している可能性がある。
【0090】
【表1】
【0091】
実施例3
高齢BM-MSC細胞からの分泌因子の増加の同定および細胞増殖へのその影響
高齢MSC集団が、老化細胞によって分泌される可溶性因子によって阻害される「若い」MSCの亜集団を含むことが妥当であるかどうかを試験するために、高齢集団および若齢集団における老化BM-MSCの集団を測定した。
【0092】
若齢および高齢集団における老化細胞の相対数を比較するために、同数の若齢および高齢BM-MSCを収集し、β-ガラクトシダーゼ発現を測定した。β-ガラクトシダーゼ発現は老化のマーカーである。高齢ドナー由来のBM-MSCは、若齢BM-MSCよりも老化細胞の頻度が高い。(
図6A)(p=0.017)。
【0093】
次に、若齢BM-MSCを若齢または高齢MSCから収集した馴化培地で処理し、高齢BM-MSCからの分泌因子が「若い」MSCの機能を阻害する能力を有するかどうかを判定した。高齢MSCからの馴化培地(高齢CM)は、対照または若齢BM-MSCからの馴化培地と比較して、若齢BM-MSCの増殖を有意に阻害する(
図6B)(それぞれp=0.004またはp=0.007)。
図8も参照のこと。理論に拘束されるものではないが、このデータは、高齢MSCが隣接する老化細胞によって阻害される「若い」亜集団を含み得る可能性を許容するのに十分である。
【0094】
この作用の原因となり得る特定の因子を同定するために、サイトカインマイクロアレイを用いて高齢および若齢ドナーからの馴化培地を分析し、80のサイトカインの相対濃度を調べた。試験したサイトカインのうちの44が、老化関連分泌表現型の一部として同定されている。予想されたように、高齢MSCからの馴化培地は、老化関連分泌表現型のほとんどの成分の濃度がより高かった。高齢BM-MSC集団では、44のうち36(81.8%)についてサイトカインが上昇していた。これら36例中19例における差は統計的に有意であった。このデータを
図6Cに要約する。
【0095】
総合すると、これらのデータは、高齢MSCがより高濃度の老化細胞を含むこと、これらの細胞は、以前の試験で他の細胞型について記述され、Freund, et al., 2010に要約されたものと同様の老化関連分泌表現型を発現すること、およびこれらの分泌因子は「若い」MSCの増殖を阻害する能力を有することを示唆する。
【0096】
実施例4
若齢MSCと類似の高齢MSC細胞亜集団の単離
高齢MSCは健常MSCの増殖を抑制すると思われ、一部の高齢MSCは若齢MSCの指標である表現型マーカーを示すので、若齢MSCに表現型的に類似する高齢MSCの亜集団は、年齢と無関係に、保存された機能を有し得ると考えられる。フローサイトメトリを用いてSSEA-4発現対若齢および高齢BM-MSCの細胞サイズをプロットすると、若齢BM-MSCは、これらの側面からは比較的均一であり、大多数の細胞は小型のSSEA-4(+)表現型(小型(+))を発現することが観察された。
図7A参照。これに対し、高齢BM-MSCははるかにより不均一であり、サイズおよびSSEA-4発現に基づいて4つの集団に容易に分けることができる(
図7A)。高齢BM-MSCを4つの集団に選別し、高齢BM-MSCの小型(+)亜集団が若い機能を有するかどうか、およびこれらのマーカーの両方が細胞機能と相関するかどうかを判定した。
図7Bの選別方法参照。ダブレット除去後、FSCで測定したSSEA-4(陽性対陰性)および細胞サイズ(小型対大型)の発現に基づいて細胞を4つの集団に分けた。より高い純度を有する集団を得るために、中間のFSCまたはFITC強度を有する細胞を廃棄した。選別により、65歳以上の個人由来のMSCの8.24±3.63%だけが、これらの側面から測定した場合に若い表現型を有すると決定された。
【0097】
実施例5
高齢ドナー由来のBM-MSCの亜集団の特徴付け
得られた集団を、インビトロアッセイを用いて若齢BM-MSCならびに高齢ドナー由来の未分画BM-MSCと比較した。検査により、若齢細胞は各条件において最も多くのコロニーを有するようであるが、小型(+)集団は、高齢ドナーから単離されたBM-MSCと比較して実質的に増加している(
図10A)。これは、手作業でコロニーを数えることによって実証される(
図10Bおよび
図11)。実際に、小型(+)BM-MSCと若齢BM-MSCとの間にコロニー形成において統計的に有意な差はなかった。これは、若齢細胞と比較して、小型(+)高齢亜集団のMSCの数および効力における差は、あるとしても極めてわずかである可能性が高いことを示唆する。より高齢のドナー由来の未選別、小型および大型のBM-MSCについても、細胞数によって細胞増殖を測定した。小型細胞は、同じ期間に大型細胞よりも65%多い細胞を増殖させた。小型細胞はまた、サイズによって選別しなかった細胞よりも迅速に増殖した(
図9)。
【0098】
若さおよび老化に関連するいくつかのタンパク質を発現する細胞の割合および検出可能なROSレベルを有する細胞の割合を、小型、大型およびサイズ未選別の高齢ドナー由来の細胞において測定した。小型の細胞は、大型細胞よりもSSEA-4および血小板由来増殖因子PDGFを高発現し、HLAdrおよび細胞内ROSの発現がより低かった。
図12参照。これは、小型細胞が、より高いSSEA-4、より低いHLAdr、およびより低い細胞内活性酸素種(ROS)などの、若齢細胞により類似した表現型を有することを実証する。
【0099】
高齢ドナー由来のBM-MSC細胞の4つの亜集団について、ATP濃度、高レベルのATPを有する細胞数、細胞のATP含量、テロメラーゼレベル、およびβ-ガラクトシダーゼ発現を測定した。小型BM-MSCは、SSEA-4発現とは無関係に、若齢BM-MSCと同等のATP濃度を示す。一方、大型BM-MSCは、SSEA-4発現にかかわらず、若齢BM-MSCのおよそ半分のATPレベルを有する(
図10C、
図14および
図30B)。小さなサイズおよびSSEA-4の存在は、より高いATP含量を有する細胞の数の増加、細胞あたりのより高いATP含量、高齢者からの骨髄間質細胞由来の他の細胞群と比較してわずかに高いテロメラーゼレベルと相関する(
図13〜15)。適切には、大型BM-MSCは小型BM-MSCまたは若齢BM-MSCよりも有意に多くの老化細胞を有し、大型(-)細胞は最も高いβ-ガラクトシダーゼ(β-Gal)発現を示し、β-Galは老化のマーカーであって、発現を、蛍光測定法を用いて相対蛍光として報告する(
図10D)。破線は、若齢BM-MSCの平均β-ガラクトシダーゼ発現を表す。小型BM-MSCは、若齢BM-MSCと統計的に同等であった。理論に拘束されるものではないが、小型(+)細胞が低頻度の老化細胞を有するという証拠は、それらが、通常の条件では老化した隣接細胞によって抑制される高齢MSCの亜集団であり得るという学説に合致する。
【0100】
小型(+)細胞が高齢MSCよりも若齢MSCに類似しているかどうかを判定するために、老化に関連する分泌表現型を特徴付けるサイトカインの発現を試験した。
図10Eのヒートマップは、SASPの一部であることが公知の試験した44のサイトカインの発現を示す。Multiway ANOVAとそれに続くTukeyのHonest Significant Difference法は、高齢BM-MSCが、若齢または小型(+)BM-MSCよりも高いSASPサイトカインの発現を有することを明らかにする(それぞれp<0.0001またはp=0.039)。若齢BM-MSCと小型(+)BM-MSCの間でSASP因子の発現に有意差はなかった(p=0.068)。
【0101】
小さな細胞サイズ(小型)または大きな細胞サイズ(大型)を有する高齢ドナーのBM-MSCの亜集団からの分泌物、サイズで選別していない高齢ドナーのBM-MSCからの分泌物(未選別)、および若齢ドナーのBM-MSCからの分泌物(若齢CM)で馴化された増殖培地で増殖させた若齢ドナー由来のBM-MSCについても細胞増殖を測定した。
図16参照。若齢ドナー由来のBM-MSCの増殖速度は、大型および未選別馴化培地で培養した場合には、細胞数によって測定されたように阻害されたが、小型および若齢馴化培地での培養は、ほとんどまたは全く差を示さなかった。これは、高齢ドナーにおいてMSC増殖を阻害する環境要因が、大型MSCによって導入される有害な因子に少なくとも部分的に依存する可能性があることを示唆する。
【0102】
実施例6
TCPおよびBM-ECM上での幹細胞の培養
機能低下した高齢MSC集団からMSCの画分を単離することが可能であることを実証する結果は有望である。しかし、いくつかの細胞ベースの治療法は、高い質の細胞を大量に必要とする。非常に高い質の細胞の画分を得ることができたとしても、それらはもとの集団の小さなサブセットであり得、臨床的に適切であるための十分な数の細胞を得ることは困難である。これを克服するために、細胞を拡大培養し得る。しかし、このアプローチはそれ自体の落とし穴を伴う。伝統的に、MSCがTCP上で拡大培養されるにつれて自発的分化を受ける可能性があり、最初に単離された細胞とは大きく異なる表現型を有する集団をもたらし得るため、質と量は競合する要求である。この問題に対処するために、細胞が幹細胞性を維持しながら増殖することを可能にすることが示された亜集団を(Sun, et al., 2011)、若齢ECM上で拡大培養した。若齢ドナー由来のBM-MSCならびに高齢ドナー由来の小型、大型およびサイズ未選別のBM-MSC中の幹細胞の数を、組織培養プラスチック(TCP)および骨髄細胞外マトリックス(BM-ECM)上での培養の前後にコロニー形成単位(CFU)の数を数えることによって決定した。より高齢のドナー由来の小型細胞を培養すると、高齢ドナー由来の大型および未選別細胞と比較して、レスキューされる幹細胞の増加を示した。さらに、BM-ECMでの培養は、TCP上での培養と比較して幹細胞の増加を示した(
図17)。
【0103】
若齢ドナー由来のBM-MSCならびに高齢ドナー由来の小型、大型およびサイズ未選別のBM-MSCのCFUを、線維芽細胞(CFU-F)、骨芽細胞(CFU-OB)、および脂肪細胞(CFU-AD)への分化のマーカーを染色することによって示されるそれらの分化能も測定するために試験した。高齢ドナー由来の小型細胞のCFUは、若齢ドナー由来の細胞と同様の分化能を示した(
図18)。
【0104】
TCPおよびBM-ECM上で培養した4つの亜集団に分けた高齢ドナー由来のBM-MSCについて、細胞増殖、コロニー形成能および分化能を測定した。7日間培養した細胞では、TCPおよびBM-ECM上で培養した小型(+)BM-MSCは、未選別の高齢MSCと比較して著明な回復を示す(
図19Aおよび
図22)。それらは若齢ドナー由来の細胞と形態学的に類似すると思われ、培養7日後に高度に集密的である。興味深いことに、小型(-)BM-MSCはまた、高齢BM-MSC集団よりも実質的に健常であると思われ、比較的迅速に増殖することができる。若齢ECM上で培養した細胞は、TCP上で培養した細胞と比較して細胞増殖の改善を示した。小型細胞はまた、大型BM-MSCおよび非分離BM-MSCと比較して、増殖速度の増加も示した。小型+細胞は、TCPおよび若齢ECMの両方で細胞増殖の増加を示した。小型細胞については、細胞をBM-ECM上で拡大培養した場合に有意な改善があった(
図19B、
図23、および
図24)。BM-ECM上で培養した小型(+)細胞は、実際にTCPまたはBM-ECM上で拡大培養した若齢細胞よりも迅速に増殖した(
図19Bおよび
図24)。この結果は、若齢ECMがすべての亜集団および若齢ドナー由来の細胞の増殖速度を増加させることを示唆する。さらに、小さな細胞サイズも増殖速度を増加させるようである。
【0105】
培養7日後、CFU-F、CFU-ADおよびCFU-OBアッセイのために細胞を剥離し、クローン密度で再播種した(
図19C)。CFUアッセイの結果は、観察された増殖と一致した。ECM上で拡大培養した小型細胞は、より大きく、より密度が高く、より多数のコロニーを形成した。これは、大型(+)細胞が若齢ECMでの培養後に骨形成の増加を示すという注目すべき例外を除き、いずれの大型細胞集団にも当てはまらない。また、大型(+)集団は、全般的に実質的な骨形成能を有するようであることも言及に値する。理論に拘束されるものではないが、この集団は、既に骨形成運命に拘束されている可能性がある。
図19D〜Fにおいて、CFUの結果を定量化する。ここで、小型陽性細胞は、ECM上での培養後の3つのアッセイのすべてについて、一貫してCFUの総数に高い変化倍率を有することが示される。
【0106】
また、未分画(若齢;高齢)および分画高齢BM-MSCの総変化倍率を4継代後に測定した。TCP対若齢ドナーからのBM-MSC由来のECM(若齢ECM)上での培養下で7日ごとに細胞を継代した。播種密度は細胞1500個/cm
2であった。TCPまたは若齢ECM上での若齢および高齢BM-MSCならびにBM-MSCの高齢亜集団(小型+、小型−)由来のBM-MSCの継代後に、SSEA-4陽性細胞の数は劇的に増加した。若齢ECMでの連続継代は、若齢ECM上で小型+BM-MSCを拡大培養した場合、約6,000倍の変化をもたらした(
図32)。
【0107】
したがって、データは、高齢者の老化した骨髄細胞からより欠陥の少ないBM-MSCの小さな亜集団(〜10%)を単離することができ、それらの増殖能は、若齢ドナー由来の骨髄間質細胞によって作製されたECMの提供によって著明に改善され得ることを示唆する。
【0108】
実施例7
BM-ECMおよびTCP上で培養したBM-MSCの特徴付け
若齢BM-ECMおよびTCP上で培養した未選別および分画BM-MSCをさらに特徴付けた。
【0109】
SSEA-4は、初期状態のMSCのマーカーである。若齢ドナー由来のBM-MSCならびに高齢ドナー由来の小型、大型およびサイズ未選別のBM-MSCの5継代後のSSEA-4陽性細胞の数を、BM-ECMおよび組織培養プラスチック(2D)上で培養した後に測定した。より高齢のドナー由来の小型細胞を培養すると、高齢ドナー由来の大型および未選別細胞と比較して、5継代後のSSEA-4陽性細胞の増加を示した(
図29)。さらに、BM-ECMでの培養は、2Dでの培養と比較して幹細胞の増加を示した。
【0110】
TCPまたは若齢ドナーからのBM-MSCに由来するECM上で培養した、高齢ドナーから単離されたBM-MSCの4つの亜集団(S+、S-、L+、L-)ならびに若齢および高齢ドナーからの未選別BM-MSC細胞について、SSEA-4発現、ROS濃度、細胞あたりのATP含量およびテロメラーゼレベルも測定した。小型(+)細胞はSSEA-4の高発現を有し、ほとんどの群において若齢ECM上での培養はSSEA-4発現を増加させることが認められた。
図25および
図31参照。さらに、小型BM-MSCは他の群よりも細胞内ROSが低く、若齢ECM上での培養は、平均細胞内ROSをさらに低下させる(
図26および
図31)。また、TCP上で培養した小型(+)BM-MSCは、有意により高いATP濃度を有し、若齢ECM上での培養は、ほとんどの細胞群についてATP濃度を増加させる(
図27)。さらに、小型(+)細胞は、はるかに高いテロメラーゼ活性を有する(
図28)。
【0111】
TCPまたは若齢ドナーからのBM-ECM由来のECM(若齢ECM)上で培養した場合の、小型(+)および小型(-)MSC集団を、未選別の若齢および高齢BM-MSCとさらに比較し、対比させた。β-Gal発現の結果は、小型の亜集団が培養の間、低いレベルの老化を維持することを示唆した。具体的には、高齢ドナーから単離された小型BM-MSCは、培養の間、低いβ-Gal発現を維持する。また、若齢型MSCと小型MSCのβ-galレベルに有意差はなかった(
図30A)。これは、この集団が一過性ではなく、培養下で維持され得ることを示唆する。BM-MSCをECM上で培養した場合、ATPレベルは平均して増加し、ECMでの培養は、すべての群についてTCP上での培養と比較して平均ATPレベルの増加をもたらした(
図30B)。この差は、試験した4群のうち3群において統計的に有意であった。また、TCP上で培養した小型(+)BM-MSCは、有意により高いATP濃度を有する(
図30B)。
【0112】
若齢、高齢および小型(+)BM-MSCのサイトカインプロフィールを比較した(
図30C)。高齢BM-MSCが若齢または小型(+)BM-MSCよりもはるかに高いレベルのSASPサイトカインを発現する(それぞれp=0.0001および0.011)という同様の傾向が出現し、一方若齢BM-MSCと小型(+)BM-MSCのSASPプロフィールは有意に異ならなかった(p=0.2756)。
【0113】
BM-ECMが多数の高い質のMSCの拡大培養を可能にするかどうかを判定するために、小型BM-MSCをTCPおよびECM上での拡大培養後に免疫表現型分類し、若齢および高齢MSCと比較した(表2および
図31)。ECM上で培養した小型(+)BM-MSCは、細胞内活性酸素種(ROS)のレベルを最小限に抑えながら、SSEA-4発現において他のすべての群を上回った。ECM上で培養したすべての群がアネキシン5の同様の発現を有していたが、小型(+)BM-MSCが、TCPに比べてECMで有意により低いレベルを発現したことは注目すべきである。総合すると、フローサイトメトリは、小型(+)BM-MSC群において加齢に関連する表現型変化の実質的な逆転を示す。ECM上で培養した小型(+)BM-MSCは、TCP培養と比較してより高いSSEA-4発現およびより低いROSおよびアネキシン5を有する。これは、小型BM-MSCが、より高いSSEA-4、より低いアネキシン5、およびより低い細胞内活性酸素種(ROS)などの、若齢細胞により類似した表現型を有することを実証する。これらのデータはまた、MSCの「若い」亜集団を、「若い」表現型を維持しつつ拡大培養し得ることを示す。
【0114】
【表2】
【0115】
実施例8
分化能ならびに組織修復および再生のための効力
上記で提示したデータに基づき、本発明者らは、小型+細胞では、MSCの他の亜集団および未選別MSCと比較して、分化能ならびに組織修復および再生のための効力が高いと予測する。さらに、ECM上で培養した細胞、特に小型+細胞は、TCP上で培養した細胞よりも分化能ならびに組織修復および再生のための効力が大きいと予測される。
【0116】
単離されたMSCの細胞分化能は、当業者に周知の方法によって測定することができる。小型+細胞は、MSCの他の亜集団および未選別MSCと比較して高い細胞分化能を示すことが期待される。さらに、若齢ECM上で培養した細胞、特に小型+細胞は、TCP上で培養した小型+細胞よりも極めて高い細胞分化能を有することが期待される。
【0117】
単離されたMSCの組織修復および再生は、当業者に周知の方法によって測定することができる。小型+細胞は、MSCの他の亜集団および未選別のMSCと比較して高い組織修復および再生のための効力を示すことが期待される。さらに、若齢ECM上で培養した細胞、特に小型+細胞は、TCP上で培養した小型+細胞よりも極めて高い組織修復および再生のための効力を有することが期待される。
【0118】
本発明において開示され、特許請求される方法のすべては、本開示に照らして過度の実験を行うことなく作製し、実行することができる。本発明の組成物および方法を好ましい態様に関して説明したが、当業者には、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書で述べる方法および本明細書で述べる方法の工程または工程の順序において変更を適用し得ることは明らかであろう。より具体的には、化学的および生理学的に関連する特定の剤が、同じまたは類似の結果を達成しつつ、本明細書で述べる剤を置き換え得ることは明らかであろう。当業者に明らかなこのような類似の置換および改変はすべて、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神、範囲および概念の範囲内であると見なされる。
【0119】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書で示すものを補足する例示的な手順または他の詳細を提供する限り、参照により本明細書に明確に組み込まれる。