(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているようなダクトカセットを用いた換気設備には、以下のような種々の問題があった。
【0007】
近年のシールド機は高速で掘進することが多い。また、ダクトカセットに詰め込み可能なビニールダクトの長さは200m程度が限界である。そのため、ダクトカセットを頻繁に交換し、新たなビニールダクトを補充する必要がある。例えば、1か月に600m掘進するシールド機に対して、長さが200mのビニールダクトを詰め込んだダクトカセットを用いる場合、1か月に3回もダクトカセットを交換する必要がある。
【0008】
このダクトカセットの交換作業中は、ダクト内に通風することができない。また、交換作業には時間を要し、トンネル坑内を換気できない時間が長くなる。具体的には、交換作業に半日程度の時間を要することが多い。そのため、粉じん等の有害物質の暴露を考慮して、掘削作業などの工事を一時的に止めざるを得ない。
【0009】
しかし、近年は納期が短くなる傾向にあることから、日中に工事を中断することが実質的に困難である。そのため、交換作業を休日や深夜に行わざるを得ず、勤務管理が煩雑になっているという問題がある。
【0010】
また、掘削作業などを行っていない状態であっても、坑内には粉塵等の有害物質が残っており、有害物質の暴露のリスクが依然として存在するという問題がある。また、特に夏季などの作業では、坑内の温度が上昇するため、換気設備が動いていない状況下では、熱中症のリスクが高まるという問題もある。また、一般的なダクトカセットは2トン程度の重量を有し、トンネル上部という高所での交換作業となるため、危険を伴うという問題もある。
【0011】
また、ダクトカセットを用いると費用が高額になるという問題もある。具体的には、カセット内に風管を詰め込む作業をトンネル坑内とは別の場所で行い、詰め込んだ完成品をトンネル坑内に運搬しているが、運搬時に11トンもの大型車が必要となるため、運搬費が高くなる。また、カセットにビニールダクトを人力で詰め込む作業や、出来上がったダクトカセットをトンネル内に設置する作業には、6名以上の作業員が携わっており、それぞれの作業に数時間〜数十時間かかることから、人件費が高くなる。また、カセットが大型で特注品となるため高額になる。試算では、既存のダクトに6kmのダクトカセットを取り付ける場合、必要となる総経費は数千万円にものぼる。
【0012】
さらに、ビニールダクトをカセットに詰め込むとき、ダクトカセットを運搬するとき、ダクトカセットを据え付けるとき等に、ビニールダクトを破損させるケースが頻発しており、資材コストの上昇につながっているという問題もある。
【0013】
特許文献2に記載されたような風管収納装置においても、支持筒に風管を装着し、その後に完成した風管保持体を交換する作業を行わなければならず、前述の労力と時間を要するものである。
【0014】
特許文献3のダクト延長設備によれば、前述の特許文献1や特許文献2のような不都合を解消することができる。
しかし、この特許文献3の実施例に開示された移動体は、ロッドレスシリンダ、ピストン、起伏板等からなるものである。切羽側へ進む際に起伏板を起立させ、坑口側へ戻る際に起伏板を倒伏させるため、新たなビニールダクトを収納する際に時間がかかるという問題があった。具体的には100mのビニールダクトを収納する際に30分程度の時間を要していた。
【0015】
また、外筒体の外側にロッドレスシリンダや起伏板などの突起物が存在するため、それらの突起物がビニールダクトに引っかかり、スムーズに移動できないおそれがあった。
【0016】
また、ロッドレスシリンダや起伏板を複数個設けることで、重量が重くなる傾向があった。移動体の重量が重いと、外筒体が軸方向へスムーズに動かなくなったり、トンネル延長設備全体の組み立て性が悪くなったりするおそれがあった。さらに、この実施例に開示された移動体は、多数の部材からなる特殊な構造であるため、コストが高いという不都合もあった。
【0017】
したがって、本発明の主たる課題は、トンネルの掘進に伴うダクトの延長作業を容易に行うことができるトンネル延長設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
(第1の態様)
トンネル坑内の既設ダクトに新たな延長ダクトを連結するダクト延長設備であって、
前記既設ダクトの端部より外方に配置された支持体と、
前記支持体によって支持され、前記支持体の両端部の間を往復移動し、前記延長ダクトの内面に一時的に固定可能とされた移動体を有し、
前記既設ダクトと反対の方向から前記支持体に前記延長ダクトを被せ、前記延長ダクトの内面に前記移動体を一時的に固定した状態で、前記移動体を前記既設ダクトへ向かって移動させることで、固定部分よりも既設ダクト側の延長ダクトに皺ができるとともに、それ以外の部分の延長ダクトが前記移動体に引かれて前記既設ダクトへ向かって移動し、
前記延長ダクトの移動後に、前記移動体の固定を解いた状態で、前記延長ダクトを移動後の位置に保ちながら、前記移動体のみを前記既設ダクトと反対方向へ移動させ、
前記移動体の往復移動を繰り返すことにより、前記延長ダクトを前記既設ダクト側へ次第に引き寄せ、前記既設ダクトの端部と隣接する位置に収縮した延長ダクトの形成を図る構成であり、
前記移動体は、
前記延長ダクトを内側から吸引する吸引部を有し、
前記移動体を前記既設ダクト側へ移動させる段階で、前記吸引部が前記延長ダクトを吸引することで、前記延長ダクトを前記移動体に一時的に固定し、
前記移動体を前記既設ダクトと反対方向へ移動させる段階で、前記吸引部が前記延長ダクトの吸引を止めることで、前記延長ダクトと前記移動体の固定を解除する構成としたことを特徴とするダクト延長設備。
【0019】
(作用効果)
移動体が、支持体の前方端部(切羽側端部)と後方端部(坑口側端部)の間を往復移動する構成にした。そして、移動体が、後方端部から前方端部へ移動する際に、延長ダクトを保持しながら移動する。すなわち、移動体に設けた吸引部が前記延長ダクトを吸引することにより、前記延長ダクトを前記移動体に一時的に固定し、その一時固定を保ちながら、移動体が切羽側に位置する既設ダクトへ向って移動する。そうすると、延長ダクトが前記既設ダクト側へ移動し、固定部分よりも既設ダクト側の延長ダクトが移動体に押されて皺(一般的には、複数の皺。以下、同様。)ができるとともに、固定部分より坑口側の延長ダクトが移動体に引かれて既設ダクトへ向かって移動する。このようにして、延長ダクトを移動させた後に、前記吸引部が前記延長ダクトの吸引を止めることで、移動体の一時固定を解く。そして、延長ダクトを引き寄せ後の位置に保ちながら、移動体のみを坑口側へ移動させる。この作業を繰り返すことにより、延長ダクトが切羽側の既設ダクト側へ次第に引き寄せられ、既設ダクトの坑口側端部と隣接する位置に収縮した延長ダクトの塊を形成することができる。
【0020】
なお、カプセル風管を用いた場合、ダクトカセットの交換に長時間(半日)を要していたが、本発明のように移動体を用いて延長ダクトを自動で引き寄せる構成にすることで、新たな延長ダクトの連結作業に要する時間を大幅に短縮できる。本発明者の試算によると、100mの延長ダクトをおよそ10分で収納することができる(200mの延長ダクトは、およそ20分で収納可能である)。したがって、シールドマシンの高速掘進サイクルにおいても、通風停止時間が著しく短くなるため、生産性を向上させることができる。また、通風停止時間が短くなることにより、坑内環境を良好に保つことができる。また、連結作業時間が短いため、連結作業を休日や深夜に行わなくても良くなり、作業者の勤務時間の改善に寄与することができる。さらに、カプセル風管を用いる場合に要していた、空の鞘管の取り出し作業、空の鞘管の運搬作業、空の鞘管に風管を詰める作業、風管を詰めたダクトカセットを運搬する作業、前記ダクトカセットを取り付ける作業が不要となるため、大幅な経費削減が実現できるとともに、省力化を図ることができる。また、延長ダクトを自動で引き寄せるため、ダクトカセットを取り付ける必要がなく、危険作業を減らすこともできる。さらに、風管が損傷するリスクが少ないため、損傷時の損害を減らすことができる。
【0021】
また、引用文献3の実施例に開示されたダクト延長設備の移動体のように、移動体を軸方向へ移動させる際に、起伏板を起立させたり、倒伏させたりする必要がないため、新たな延長ダクトを収納する際に要する時間を大幅に短縮することができる。具体的には、引用文献3の実施例のダクト延長設備では、100mの延長ダクト(ビニールダクト)を収納する際に30分程度の時間を要していたが、本発明のダクト延長設備では、その時間を10分程度の時間にすることができる。
【0022】
また、引用文献3の実施例のように、外筒体の外側にロッドレスシリンダや起伏板などの突起物が存在しないため、それらの突起物がビニールダクトに引っかかり、スムーズな移動が妨げられるということもなくなる。
【0023】
また、引用文献3の実施例のようなロッドレスシリンダや起伏板を設けないため、重量が重くならず、移動体が軸方向へスムーズに動きやすくなる。それとともに、ダクト延長設備も組み立てやすくなる。さらに、引用文献3の実施例のようなロッドレスシリンダや起伏板を設けないことで、イニシャルコストを低減することができる。
【0024】
(第2の態様)
前記吸引部は、
吸着パッドと、前記吸着パッドの内部に設けた吸引口を有する前記第1の態様のダクト延長設備。
【0025】
(作用効果)
移動体の吸引部として、吸引口を備えた吸着パッドを用いることで、特許文献3の実施例に開示された移動体(ロッドレスシリンダや起伏板等を備えたもの)よりもシンプルな構成になり、軽量化を実現できる。また、設備費用が抑えられ、メンテナンス性も良いものとなる。
【0026】
(第3の態様)
前記吸着パッドは、その外周端部がその本体部よりも薄い薄型吸着パッドである前記第2の態様のダクト延長設備。
【0027】
(作用効果)
吸着パッドの外周端部を薄くすることで、外周端部が柔軟に変形しやすくなる。その結果、吸着パッドの外周端部と延長ダクトの内周面の密着性が高くなり、延長ダクトを切羽側へ移動させる機能を高めることができる。
【0028】
また、延長ダクトが紫外線等によって劣化し、皺が発生している場合には、吸着パッドと延長ダクトの間に隙間が生じ、その隙間から空気が漏れてしまうおそれがあるという問題がある。このような場合においても、薄型吸着パッドを採用すると、吸着パッドの外周端部と延長ダクトの内周面の密着性が高くなるため、皺部分からの気体のリークを低減させることができる。なお、吸着パッドの外周端部の素材としては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴムなどが好適である。柔軟性が高いとともに、延長ダクトとの間で生じる摩擦力が高いためである。
【0029】
(第4の態様)
前記移動体は前記支持体の外周を覆う外筒体を有し、
前記外筒体の外表面に窪み部が設けられ、
前記窪み部の内部に前記薄型吸着パッドが配置され、
前記吸着パッドの外周端部の高さが前記支持体の外表面の高さと同じである、または、前記吸着パッドの外周端部の高さが前記支持体の外表面の高さよりも高く、前記吸着パッドの外周端部の高さと前記支持体の外表面の高さの差が20mm以内である前記第3の態様のダクト延長設備。
【0030】
(作用効果)
薄型吸着パッドを搭載する場合、移動体が坑口側へ移動するときに、吸着パッドの外周端部が延長ダクトに引っ掛かり、倒れてしまうおそれがある。そこで、外筒体に窪み部を設け、この窪み部の内部に薄型吸着パッドを配置することで、吸着パッドが延長ダクトに引っ掛かることを防止する形態が好ましい。
【0031】
(第5の態様)
前記吸引部は、前記延長ダクトの内面に沿って周方向に複数設けられている第1〜第4のいずれか1つの態様のダクト延長設備。
【0032】
(作用効果)
吸引部が延長ダクトの内面に沿って周方向に複数設けることで、吸引部と延長ダクトが周方向に接触する面積が増えるため、より確実に延長ダクトを引き寄せることができる。また、延長ダクトの内面に沿って軸方向に複数設けるよりも、移動体の移動力をより確実に延長ダクトに伝えることができるため、引き寄せ力が強くなる。
【0033】
複数の吸引部は、周方向に沿って直線状に配置することが好ましい。直線状に配置することにより、一箇所の吸引部に延長ダクトが吸着されると、延長ダクトがその吸引部と隣接する他の吸引部にも連続して次々に吸引されることになるからである。
【0034】
「直線状」とは、周方向に隣接する吸引部の位置が、幅方向(外筒体の軸方向を意味する)に重なりを有していることをいう。例えば、各吸引部の径が50mmであった場合において、周方向に隣接する吸引部が、幅方向に10mm重なっている場合も、前記直線状に含まれる。すなわち、「直線状」の文言には、隣接する吸引部の中心を繋げた仮想線が、周方向に沿って完全に一直線になる場合も含むが、それ以外の場合であって、前記仮想線が周方向に沿って多少蛇行をしているものも含まれる。
【0035】
(第6の態様)
前記支持体の切羽側端部から坑口側端部まで延在する挟み込み防止部材が設けられ、
前記挟み込み防止部材は、前記支持体と前記延長ダクトの間かつ前記外筒体と前記延長ダクトの間に配置されている第1〜第5のいずれか1つの態様のダクト延長設備。
【0036】
(作用効果)
支持体の切羽側端部と坑口側端部の間の前後方向の範囲を移動体が移動するときに、支持体と移動体の間に延長ダクトが挟み込まれ、移動体のスムーズな移動が阻害されるおそれがある。このような挟み込みを防ぐため、挟み込み防止部材を設けることが好ましい。
【0037】
挟み込み防止部材は、前後方向において、移動体が移動する範囲よりも広い範囲に設けることが好ましい。例えば、移動体が前後方向に2000mm移動する場合は、挟み込み防止部材は、移動体が移動する2000mmの範囲は勿論のこと、それ以外に、その範囲よりも切羽側に50〜200mm程度、坑口側も同様に50〜200mm程度長くして余裕を持たせた範囲に挟み込み部材を設けることが好ましい。移動体の前後方向の移動範囲を超えてさらに切羽側へ挟み込み防止部材を延在させることによって、移動体が最も切羽側へ移動したときにおいても、移動体の切羽側端部と支持体との間に延長ダクトが挟み込まれることを防止できる。同様に、移動体の前後方向の移動範囲を超えてさらに坑口側へ挟み込み防止部材を延在させることによって、移動体が最も坑口側へ移動したときにおいても、移動体の坑口側端部と支持体との間に延長ダクトが挟み込まれることを防止できる。なお、挟み込み防止効果の低減は避けられないが、移動体の前後方向の移動範囲にのみ挟み込み防止部材を設ける形態にしてもよい。また、挟み込み防止部材を移動体の前後方向の移動範囲に設けるとともに、挟み込み防止部材を移動体の前後方向の移動範囲を超えたさらに切羽側の範囲およびさらに坑口側の範囲のいずれか一方の範囲に設ける形態にしてもよい。
【0038】
本発明においては、支持体の前後方向の両端部の間を移動体が往復移動するため、支持体の両端部を繋ぐように挟み込み防止部材を設けることが好ましい。
【0039】
挟み込み部材としては、前後方向へ延在する細長状の硬質部材を用いることが好ましく、例えば、ワイヤや糸などを用いることが好ましい。前記糸としては、紡績糸、フィラメント糸、複合糸等を挙げることができ、特に、ナイロンライン、フロロカーボンライン、ポリエチレンライン、ポリエステルライン、これらの素材を任意に組み合わせたラインなどの釣り糸が好ましい。また、合成繊維からなる釣り糸ではなく、テグスなどを用いても良い。
【0040】
(第7の態様)
前記ダクト延長設備は、
前記支持体よりも切羽側の位置に設けられ、前記支持体と連なる筒体と、
前記筒体の上方に設けられ、前記移動体の前記既設ダクト側への移動によって生じた前記延長ダクトの皺を保つ保持体を有し、
前記保持体は、切羽側から坑口側へ向かって延在する延在部と、前記延在部の坑口側端部に設けられ、下方へ突出する突出部を有し、
前記移動体が切羽側へ移動して生じる前記延長ダクトの皺によって、前記延在部の坑口側端部が上方へ押し上げられ、前記延在部の下方に前記延長ダクトの皺が挿入され、
前記移動体が坑口側へ移動するときに、前記延長ダクトの皺を前記突出部によって保持する構成である第1〜第6のいずれか1つの態様のダクト延長設備。
【0041】
(作用効果)
移動体が切羽側へ移動することによって、延長ダクトが切羽側へ引き寄せられ、引き寄せられた延長ダクトの部分に皺が生じる。延長ダクトの引き寄せられた部分に皺が生じるということは、その皺の分だけ、延長ダクトが収納されたことを意味する。しかし、移動体が坑口側へ移動するときに、移動体が延長ダクトに触れたりすると、延長ダクトが坑口側へ引っ張られ、延長ダクトの皺が伸びてしまうおそれがある。このような不具合を防ぐため、延長ダクトの皺を保つ保持体を設けることが好ましい。
【0042】
本態様においては、この保持体が、切羽側から坑口側へ向かって延在する延在部(例えば棒状部材)と、前記延在部の坑口側端部に設けられ、下方へ突出する突出部を有するものである。好ましくは、延在部の切羽側端部を筒体に固定し、延在部の坑口側端部が上下方向に伏仰可能な構成にするとよい。
【0043】
移動体が切羽側へ移動して生じる前記延長ダクトの皺によって、前記延在部の坑口側端部が上方へ押し上げられ、前記延在部の下方に前記延長ダクトの皺が挿入される。前記延長ダクトの皺が坑口側へ戻ろうとしても、延在部の重力によって、その皺が押さえつけられるとともに、延在部の坑口側端部に設けた突出部によって、延長ダクトの皺(延長ダクトの皺が複数個がる場合は、坑口側の皺)が坑口側へ戻ることを堰き止める。すなわち、前記突出部は皺が坑口側へ戻ることを止めるストッパーの役割を果たしている。
【0044】
また、下方に突出する突出部の突出角度は、延長ダクトの皺の壁面に沿う角度になるように、延長ダクトと突出部の接続部分を起点として、突出部が回転可能な構成にすることが好ましい。
【0045】
保持体を前述のような構成にすることで、前記特許文献3に開示されたロッドシリンダを用いる保持体よりも簡易な構造となり、メンテナンス性の向上やイニシャルコストの低減を図ることができる。また、本態様の保持体は、ロッドシリンダのシリンダを移動させるものではなく、保持体の重力や延長ダクトの切羽側への移動力を利用して、保持体の延在部の坑口側端部を自然に伏仰させるものであるため、延長ダクトの収納スピードを向上することができる。すなわち、ロッドシリンダを用いる場合は、シリンダの移動が終わるまで、その他の作業(例えば移動体の移動)をストップしなければならないが、本態様の保持体によれば、このような待機時間をなくすことができる。
【0046】
本態様の保持体は、保持体の重力を活用して延在部を下降させるものであるため、その性質上、支持体の上方(支持体の外側であって、上下方向の上側)に設けることが好ましい。
【0047】
(第8の態様)
前記移動体には気体を吹き出す吹出部が設けられており、
前記吹出部から前記延長ダクトへ向かって気体を吹き出しながら、前記移動体を坑口側へ移動させることが可能である前記第1〜第7のいずれか1つの態様のダクト延長設備。
【0048】
(作用効果)
吹出部から延長ダクトへ向かって気体を吹き出すと、延長ダクトと移動体の間に隙間が発生する。そのため、移動体が坑口側へ移動するときに、移動体が延長ダクトと接して、延長ダクトが坑口側へ引き戻されてしまう可能性を低減することができる。
【0049】
(第9の態様)
前記吸引部は前記吹出部として用いることが可能である前記第8の態様のダクト延長設備。
【0050】
(作用効果)
吸引部と吹出部を兼用にすることで、部品点数が減るため、在庫管理が容易になるとともに、イニシャルコストの低減を図ることができる。
【0051】
(第10の態様)
前記吸引部および前記吹出部は、気体が流れる第一流路を介して、弁と連結され、
前記弁には、気体が流れる環状の第二流路の一端部と他端部がそれぞれ連結され、
前記第二流路の中間部に送風機が配置され、
前記送風機の運転を継続した状態で、前記第二流路の一端部と連結された前記弁の一端部と、前記第二流路の他端部と連結された前記弁の他端部を交互に開閉することにより、
前記吸引部が前記延長ダクトを吸引している状態と前記吹出部から気体を吹き出している状態の切り替えを行うことが可能である前記第8または第9の態様のダクト延長設備。
【0052】
(作用効果)
送風機の運転を続けたままで(送風機の運転を止めずに)、弁の一端部と他端部を交互に開閉する。すなわち、弁の一端部を開にしているときには弁の他端部を閉とし、弁の一端部を閉にしているときには弁の他端部を開とする。この弁の切り替えだけで、吸引状態と吹出状態を切り替えることができるため、切り替えが非常に速くなる。また、送風機と吸引装置の両方を設ける必要はなく、送風機だけ用意すれば足りるため、イニシャルコストの低減を図ることが可能である。
【0053】
また、弁と送風機の間にレシーバタンクを設けることが好ましい。レシーバタンクを設けると、そのダンク内に気体を一時的に貯留することができるため、気体を吹き出す際に、気体を一時に大量に吹き出すことが可能となる。その結果、延長ダクトと移動体の間の隙間空間が大きくなり、移動体を坑口側へ移動させる際に、延長ダクトも坑口側へ移動してしまう事態を防ぎやすくなる。
【0054】
(第11の態様)
トンネル坑内の既設ダクトに新たな延長ダクトを連結するダクト延長方法であって、
前記既設ダクトの端部より外方に配置された支持体と、
前記支持体によって支持され、前記支持体の両端部の間を往復移動し、前記延長ダクトの内面に一時的に固定可能とされた移動体を有するダクト延長設備を用いて、
前記既設ダクトと反対の方向から前記支持体に前記延長ダクトを被せ、前記移動体に設けた前記吸引部が前記延長ダクトを吸引することによって、前記延長ダクトを前記移動体に一時的に固定した状態で、前記移動体を前記既設ダクトへ向かって移動させ、固定部分よりも既設ダクト側の延長ダクトに皺ができるとともに、それ以外の部分の延長ダクトを前記移動体で引いて前記既設ダクトへ向かって移動させる、前記延長ダクトの引き寄せ工程と、
前記延長ダクトの移動後に、前記吸引部が前記延長ダクトの吸引を止めることによって、前記移動体の固定を解いた状態で、前記延長ダクトを移動後の位置に保ちながら、前記移動体のみを前記既設ダクトと反対方向へ移動させる、前記移動体の戻し工程と、を有し、
前記移動体の往復移動工程を繰り返すことにより、前記延長ダクトを前記既設ダクト側へ次第に引き寄せ、前記既設ダクトの端部と隣接する位置に収縮した延長ダクトの形成を図ることを特徴とするダクト延長方法。
【0055】
(作用効果)
第1の態様と同様の作用効果を奏する。
【0056】
(第12の態様)
前記移動体には気体を吹き出す吹出部が設けられており、
前記吹出部から前記延長ダクトへ向かって気体を吹き出しながら、前記移動体を坑口側へ移動させる前記第11の態様のダクト延長方法。
【0057】
(作用効果)
第8の態様と同様の作用効果を奏する。
【0058】
(第13の態様)
前記吸引部および前記吹出部は、気体が流れる第一流路を介して、弁と連結され、
前記弁には、気体が流れる環状の第二流路の一端部と他端部がそれぞれ連結され、
前記第二流路の中間部に送風機が配置され、
前記送風機の運転を継続しつつ、前記第二流路の一端部と連結された前記弁の一端側と、前記第二流路の他端部と連結された前記弁の他端側を交互に開閉することにより、
前記吸引部が前記延長ダクトを吸引している状態と前記吹出部から気体を吹き出している状態の切り替えを行う前記第12記載のダクト延長設備。
【0059】
(作用効果)
第10の態様と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、トンネルの掘進に伴うダクトの延長作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明に係るダクト延長設備およびダクト延長方法の好適な実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明及び図面は、本発明の実施形態の一例を示したものにすぎず、本発明の内容をこの実施形態に限定して解釈すべきでない。
【0063】
なお、以下の説明において、切羽側のことを前方といい、坑口側のことを後方ともいう。また、切羽側端部のことを前方端部といい、坑口側端部のことを後方端部という。そして、切羽と坑口を繋ぐ方向を前後方向という。一般的に、トンネル内に配置するダクトは坑口から切羽へ向かって延在させるため、ダクトの軸方向は前記前後方向と同じになることが多い。また、ダクトは外筒体や支持体や筒体に被せるため、ダクトの軸方向は、外筒体や支持体や筒体などの軸方向と同じになることが多い。外筒体や支持体や筒体などの軸方向は、幅方向ともいう。
【0064】
トンネルの上下方向は高さ方向ともいう。また、径方向とは、ダクト、外筒体、支持体、筒体などの径の方向をいう。
【0065】
(既設ダクト2)
図21に、トンネル内に既に配置されたダクト(以下、「既設ダクト2」という。)の一般的な構成を示した。坑口に送風機(図示しない)が配置され、そこからトンネル切羽の近傍に位置するシールドマシン50へ向かって、既設ダクト2が延在している。この既設ダクト2は、坑口から後続台車51の後端部まで延在する後方既設ダクト2Bと、後続台車51に固定され、そこからシールドマシン50のガーダー部まで延在する前方既設ダクト2Fに大別することができる。
【0066】
従来のダクトカセット56は、後続台車51に固定された既設ダクト2が切り離され、その間に挿入している。この切り離し部分の構造は、主に、円筒状の内筒52と、その内筒52の外周に設置された風管53と、内筒52の後端から、その径を次第に広げながら外方へ延在するフランジ54と、フランジ54の後端部の外周に取り付けられたリング状のパッキン55からなる。そして、トンネルの掘削に伴ってシールドマシン50が切羽側へ前進するのに伴い、ダクトカセット56に収納されていた風管53が坑口側へ引き出される構造になっている。他方、坑口側の既設ダクト2Bは、複数のビニール風管53が連結ファスナー57によって連結されている。この連結ファスナー57、57間に位置するビニール風管53は、過去にダクトカセット56の鞘管内に収納されていたものであるため、収納されていたビニール風管53の長さが200mである場合は、連結ファスナー57は200m置きに存在することになる。
【0067】
本発明に係るダクト延長設備1は、切羽側に位置する既設ダクト2Fの連結部(従来のダクトカセット56の部分)の構造を新たな構造にすることで、後述する延長ダクト3を自動で収納することができるようにしている。具体的には、切羽側既設ダクト2Fの後方端部(坑口側端部)は、新たに補充した延長ダクト3を収納するための収納部32となっており、延長ダクト3を補充する前は、筒体30の外周に切羽側既設ダクト2Fが被さった状態になっている。そして、収納部32の後方端部よりも後方には、後述する支持体4が位置しており、この支持体4の後方端部よりも後方には、案内部25が位置している。なお、案内部25はなくても良い。また、延長ダクト3を補充する前は、前記支持体4と案内部25の外周に坑口側既設ダクト2Bの前方端部(切羽側端部)が被さった状態になっており、切羽側既設ダクト2Fと坑口側既設ダクト2Bの間は例えば連結ファスナー57で連結されている。そして、新たな補充ダクト3を補充する際には、この連結ファスナー57の連結が解かれ、その間に延長ダクト3が挿入される。なお、前記切羽側既設ダクト2Fの後方端部は、多少の皺部分(収縮部分)を有しており、新たな延長ダクト3を補充するときに、その皺部分が支持体4や案内部25がある坑口側へ延伸し、その延伸先で延長ダクト3と連結する構造になっている。そして、本発明において、ダクト延長設備1によって引き寄せられる延長ダクト3には、この切羽側既設ダクト2Fの後方端部の前記延伸部分も含まれる。また、本発明におけるダクト延長設備1には、支持体4や案内部25はもちろんのこと、収納部32の部分も含まれる。
【0068】
(延長ダクト3)
延長ダクト3は、トンネル工事の進行に伴ってトンネルの長さが長くなり、既設ダクト2だけではダクトの長さが足りなくなった段階で、既設ダクト2に取り付けて、既設ダクト2の長さを延長するために用いる。既設ダクト2に延長ダクト3を連結する方法としては、延長ダクト3の端部と既設ダクト2の端部にそれぞれ線ファスナーを設け、務歯を噛み合わせる形態を例示できる。そのほか、延長ダクト3と既設ダクト2のどちらか一方のダクト径を、他方のダクトのダクト径よりも短くし、一方のダクトの端部を他方のダクトの端部で覆った後、ねじ止めする形態にしても良い。なお、以下では、線ファスナーを用いるケースについて説明する。
【0069】
前記延長ダクト3として、皺が寄る性質(可撓性)を有する軽量な風管を用いることが好ましい。例えば「ターポリン」の素材を用いたビニール風管を用いることができる。この延長ダクト3は伸縮可能であり、例えば、最も伸長した状態で全長200m、最も収縮した状態で全長40mの延長ダクト3を用いることができる。なお、ダクトカセットの鞘管に収納できる風管の長さ(最も伸長した状態の全長)は200m程度が限界であったが、本発明では鞘管に風管を収納する必要がないため、例えば最も伸長した状態で400mにもなる延長ダクト3を用いることもできる。このように、延長ダクト3の長さを長くすることができるため、延長ダクト3の取り付け作業を行う頻度が減り、トンネル工事の工期を短くできるとともに、取り付け作業に必要な人件費等の諸費用を抑えることができる。
【0070】
(支持体4)
本発明に係るダクト延長設備1は、切羽側既設ダクト2Fと坑口側既設ダクト2Bの間に延長ダクト3を挿入するために、切羽側既設ダクト2Fの後方端部(坑口側端部)よりも後方(坑口側)に支持体4を設けている。詳しくは、切羽側既設ダクト2Fは、筒体30(例えば円筒管30)に、その外周を覆うように被されており、図に示した支持体4は、その筒体30の後方端部より後方に位置している。この支持体4は、筒体30の後方端部に直接連結させても良いし、筒体30と支持体4の間に連結部材(図示しない)などを挟み込んで、支持体4を筒体30に間接的に連結させても良い。また、前記筒体30の後方端部を後方へ向かって延在し、その延在部分を支持体4としても良い。
【0071】
図に示した支持体4は、鋼材を円柱状に成型した円筒形である。一般的には、延長ダクト3の形状が円筒形であり、支持体4の外周面に延長ダクト3が被さることから、延長ダクト3が支持体4の上を移動する際に引っかかることを防ぐため、支持体4の形状も、延長ダクト3と同じ形状である円筒形にすることが好ましい。また、一般的に、内筒30も円筒形であることから、内筒30と連なる支持体4の形状も、この内筒30と同じ形状の円筒形にすることが好ましい。しかし、支持体4の形状はこれに限られず、角柱状の筒にするなど、任意の形状に変更しても良い。なお、送風機から送られた外気が支持体4の内部を通って切羽側へ流れるため、外気の通り道が確保できるように、支持体4の形状は内部が中空である筒状にすることが好ましい。このような筒状の支持体4を内筒体4という。また、支持体4は、後述する移動体5を取り付けるため硬質のものが好ましく、例えば板材を筒状に成型した筒体を用いることが好ましい。これに代えて、棒材を筒状に組み立てたものを用いることもできる。さらに、支持体4の素材は、一定の剛性を有するものであれば良く、鋼材以外の他の公知材料を用いても良い。
【0072】
(移動体5)
本発明に係るダクト延長設備1は、前記支持体4の前方端部と後方端部の間を往復移動する移動体5を有する。図に示した移動体5は、支持体4の外周に配置された外筒体6と、この外筒体6の周方向に沿って複数配置された吸引部46を有する。以下、前記各部材の詳細について説明する。
【0073】
(外筒体6)
外筒体6(別名として「駆動管」、「シャトル」ともいう。)は、支持体4の径方向外側に配置され、支持体4の軸方向に沿って移動するため、支持体4と同じ形状にすることが好ましい。図に示した外筒体6は、支持体4の外壁を周方向に沿って覆う円筒形である。また、外筒体6の径方向の長さは、支持体4の径方向の長さより多少長く形成され、具体的には、支持体4の径方向の長さよりも2〜3mm程度長くなるように形成し、外筒体6の内面と支持体4の外面の間に所定の隙間を設けることが好ましい。2mmよりも短いと、外筒体6の移動時に外筒体6が少し傾くと支持体4と擦れてしまうおそれがあり、3mmよりも長いと、外筒体6と支持体4の間に延長ダクト3が巻き込まれやすくなる。他方、外筒体6の軸方向の長さは、支持体4の軸方向の長さより短く形成することが好ましい。具体的には、200mm〜300mmの長さが好ましく、250mmの長さがより好ましい。200mmよりも短いと、吸着パッド42を取り付けるスペースの確保が難しくなり、300mmよりも長いと、外筒体6の一回の片道移動によって引き寄せることができる延長ダクト3の長さが短くなりすぎる。この外筒体6は、板材を筒状に成型した筒体が好ましい。また、外筒体6の素材は、延長ダクト3等を支持するために必要な一定の剛性を有するものであれば良く、例えば鋼材などを用いることができる。
【0074】
前述したとおり、支持体4の外壁面と外筒体6の内壁面の間には2〜3mm程度の隙間が設けられ、外筒体6が支持体4の軸方向に移動する際に、支持体4と擦れないようにしている。図示した形態では、外筒体6の内側にキャスター41を設けることで、前記の長さの隙間を形成・保持している。そのほか、支持体4の外壁面と外筒体6の内壁面との間にゴムパッキン等の中間部材(図示しない)を挟み込むことによって、前記隙間を形成しても良い。
【0075】
(キャスター41)
外筒体6が支持体4の外面上を移動しやすくするため(滑りやすくするため)、外筒体6の内面にキャスター41を取り付けることが好ましい。すなわち、キャスター41は、支持体4の外面と外筒体6の内面の間に位置することになる。キャスター41としては、例えば車輪状のものや、ボール状のものなどを用いることができる。このキャスター41は、外筒体6を傾かせずに移動させるため、外筒体6の周方向及び軸方向に沿って間隔を空けながら複数個設けることが好ましい。また、重力の影響を考慮すると、
図16や
図17の横断面図に示すように、支持体4の上下方向上方に特に多く設けることが好ましい。
【0076】
(吸引口40)
外筒体6には、延長ダクト3や既設ダクト2を内側から吸引する吸引口40が設けられている。図示した形態では、外筒体6の周方向に沿って複数の吸引口40が設けられており、言い換えれば、延長ダクト3よりも径方向内側の位置に、延長ダクト3の周方向に沿って複数の吸引口40が設けられていることになる。吸引口40を周方向に複数個設けることで、延長ダクト3と吸引口40の接触箇所が周方向に複数個できるため、移動体5が切羽側へ移動する際における延長ダクト3の引き寄せ力を高めることができる。
【0077】
吸引口40を設ける位置については、外筒体6の全周に等間隔に設けても良いが、外筒体6の下部には設けなくても良い。延長ダクト3の重力の影響によって、外筒体6の上部においては、延長ダクト3が外筒体6に密接する傾向があり、反対に外筒体6の下部においては、延長ダクト3が垂れ下がり、延長ダクト3と外筒体6の間に空間ASが生じやすい傾向があるからである。吸引口40を外筒体6の上部と側部に設けた場合、外筒体6の上部と側部で延長ダクト3を保持し、外筒体6の下部で延長ダクト3を保持しない状態で、延長ダクト3を切羽側へ移動させることになる。
【0078】
図17に例示した断面図においては、外筒体6の中心点CP(外筒体6の軸心軸に相当)から左側へ延在させた仮想線L1(「左側線」という)と、中心点CPから右側へ延在させた仮想線L2(「右側線」という)の間の角度θを240度にしている。より詳しくは、中心点CPから垂直方向(真上)に延在した仮想線L3(「垂直線」という)を基準として、左側線L1と垂直線L3の間の角度αを120度とし、右側線L2と垂直線L3の間の角度βを120度としている。
【0079】
左側線と右側線の間の角度θは任意に変更することができる。具体的には、角度θを180度〜240度にすることが好ましく、210度〜240度にすることがより好ましい。角度θが180度よりも小さいと、吸引口40を備えた移動体5が延長ダクト3を保持しながら切羽側へ引き寄せる力が弱くなり、延長ダクト3を切羽側へ引き寄せる際に、移動体5から延長ダクト3が剥がれてしまうおそれがある。
【0080】
また、角度θが180度よりも小さいと、移動体5が延長ダクト3を保持しながら切羽側へ移動するときに、延長ダクト3が斜めに傾きやすくなる。詳しくは、移動体5が切羽側へ移動すると、延長ダクト3の上部が切羽側に位置し、延長ダクトの側部および下部が延長ダクト3の上部よりも坑口側に位置する状態(延長ダクト3の上部が切羽側へ引っ張られ、延長ダクト3の上部に引っ張られる延長ダクト3の下部が、延長ダクト3の上部よりも坑口側に残った状態)になりやすい。
その理由は、次のとおりである。すなわち、延長ダクト3の上部は外筒体6の上部に設けられた吸引口40に吸着されるため、延長ダクト3の上部は外筒体6の上部に比較的しっかりと固定される。他方、前記角度θが180度よりも小さいと、外筒体6の側部および下部に吸引口40が設けられないことになる、もしくは、外筒体6の側部に吸引口40が設けられたとしても、その吸引口40の位置を考慮すると、延長ダクト3の側部が十分に外筒体6に固定できていない状態になる。その結果、移動体5が切羽側へ移動したときに、移動体5にしっかりと固定された延長ダクト3の上部は、移動体5とともに切羽側へ移動するが、移動体5にしっかりと固定されていない延長ダクト3の側部および下部は、移動体5とともに切羽側に移動しづらくなる。
このようにして、延長ダクト3が斜めに傾くと、延長ダクト3を切羽側へ引き寄せる際に、延長ダクト3の上部も移動体5から剥がれてしまうおそれがある。
【0081】
他方、角度θが240度よりも大きい場合は、吸引機能を発揮しづらい位置に吸引口40が設けられることになる。例えば、外筒体6の下部に吸引口40を設けた場合は、その吸引口40と延長ダクト3の間に隙間ASができやすく、延長ダクト3が吸引口40に固定されないおそれがある。また、延長ダクト3を吸引口40に固定できたとしても、その固定のために吸引力を高いものにしなければならない。したがって、いずれの場合にも、ブロワ72の吸引能力を必要以上に高くしなければならず、ランニングコストが高くなる。
【0082】
吸引口40は外筒体6の外面から内面へ向かって貫通させた貫通孔からなる。言い換えれば、吸引口40は外筒体6を厚み方向に貫通する貫通孔からなる。そして、その貫通孔の内部空間を空気が出入りする構造になっている。具体的には、吸引時には、外筒体6の外面よりも外側にある空気が貫通孔を通じて外筒体の内面よりも内側へ移動し、反対に吹出時には、外筒体6の内面よりも内側にある空気が貫通孔を通じて外筒体の外面よりも外側へ移動する。
【0083】
図示形態のように、吸引口40の形状を円形にすることができるが、円形に限定されるものではなく、多角形などの任意の形状にしてもよい。平面視における吸引口40の内径(吸引口40が真円形でない場合は、投影円相当径)は、例えば80〜120mmにすることができる。
【0084】
(吸着パッド42)
外筒体6は鋼材等の硬質の部材からなることが多いため、吸引口40から空気を吸引しても延長ダクト3が外筒体6に固定されづらい。また、仮に固定されたとしても剥がれやすい。そのため、外筒体6に対して吸着パッド42を設けることが好ましい。この吸着パッド42は、例えば、外筒体6の外面に取り付けたり、外筒体6の内部に吸着パッド42の一部が入り込んだ状態で取り付けたりすることができる。
【0085】
この吸着パッド42は、前記吸引口40と連通するものであるため、吸引口40と同じ位置に設けることが好ましい。具体的には、外筒体6の径方向に所定の間隔を空けながら複数個設けることが好ましく、前述の左側線と右側線の間の角度θに設けることが好ましい。角度θの好ましい角度より好ましい角度については、前述した角度と同様であるため、ここでは記載を省略する。
【0086】
図1等に例示するように、外筒体6の軸方向において、吸着パッド42を設ける位置は、外筒体6の軸方向の中間部(軸方向の両端部を除いた部分)に設けることが好ましく、軸方向の中央部(軸方向の真ん中の部分)に設けることがより好ましい。外筒体6の軸方向の端部に吸着パッド42を設けた場合、延長ダクト3に皺が生じた際に、吸着パッド42と延長ダクト3の間に隙間が生じて、吸引力が低下するおそれがある。
また、製造してから時間が経過した延長ダクト3には皺が生じやすい。延長ダクト3に紫外線が当たって硬化し、塑性変形して微細な皺が生じるからである。このように微細な皺が生じた延長ダクト3を用いる場合は、特に、外筒体6の軸方向中間部分に吸着パッド42を設けることが好ましい。当該部分に吸着パッド42を設けることにより、吸着パッド42を外筒体6の軸方向端部に設けた場合と比べて、吸着パッド42と延長ダクト3の間に隙間が生じにくくなり、吸引力の低下を抑えることができるからである。
【0087】
また、複数の吸着パッド42は、外筒体6の軸方向において、それぞれ同じ位置に設けることが好ましい。すなわち、例えば
図1等に示すように、上下方向に垂直に一直線状に並べて設けることが好ましい。吸着パッド42をこのように一直線状に配置することで、吸着パッド42と延長ダクト3の密着性が良くなり、延長ダクト3に皺が生じづらいという利点がある。詳しくは、吸着パッド42を一直線状に配置すると、上下方向の最も上側の吸着パッド42に延長ダクト3が密着すると、それよりも下側の吸着パッド42に対しても延長ダクト3が自動的に一気に連続して密着し、皺が生じづらいという利点がある。例えば、外筒体6の上側から下側へ向かって、複数の吸着パッド42を軸方向に交互に並べて配置して、千鳥状になるように配置しても良いが、このような配置にした場合は、延長ダクト3に皺が生じやすく、吸引力が低下しやすい。
【0088】
また、上下方向の同じ高さの位置に、吸着パッド42を軸方向に複数個並べても良いが、このような配置にした場合は、外筒体6の軸方向の長さをある程度長くしなければならず、重量が重くなってしまう。したがって、上下方向の同じ高さの位置には、吸着パッド42を1個のみ設けることが好ましい。
【0089】
なお、
図1等に例示した形態では、被覆部材43に円形状の貫通孔(被覆部材43を厚み方向に貫通する貫通孔)を設け、この貫通孔のことを吸着パッド42と称している。このように、吸着パッド42の構造を簡素なものにすることで、メンテナンス性が向上するとともに、イニシャルコストを低減させることができる。
【0090】
前述のように、被覆部材43に貫通孔を設けたものを吸着パッド42とする場合は、外筒体6の周方向における被覆部材43を設ける位置は、吸引口40を設ける位置と一致させることが好ましい。具体的には、前述の左側線と右側線の間の角度θの範囲に設けることが好ましい。角度θの好ましい角度より好ましい角度については、前述した角度と同様であるため、ここでは記載を省略する。なお、
図17に示した実施例では、外筒体6の径方向において、被覆部材43を240度の範囲(角度θが240度の範囲)に設けている。
【0091】
また、外筒体6の軸方向において被覆部材43を設ける範囲は、外筒体6の軸方向の長さを基準として80%以上の範囲に設けることが好ましく、90%以上の範囲に設けることがより好ましい。被覆部材43を設ける前記範囲が80%よりも短いと、被覆部材43に設ける貫通孔の内径を小さくしなければならない(吸引口40の内径を十分に確保できない)おそれがある。
図1に示した実施例では、外筒体6の軸方向において、被覆部材43を外筒体6の軸方向の長さの100%の範囲(すなわち、外筒体6の軸方向の全面)に設けている。なお、吸引口40を外筒体6の軸方向中間部分に設けることが好ましいため、被覆部材43も外筒体6の軸方向中間部分に設けることが好ましい。
【0092】
被覆部材43の素材は特に限定されないが、
図1に示すように、被覆部材43を外筒体6の外面に付着させる場合は、被覆部材43と外筒体6の付着性や被覆部材43の曲げ加工の容易性に優れるクロロプレンゴムが好適である。また、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴムなどを用いても良いし、鋼材などの金属材料を用いても良い。被覆部材43の形状としては、前述の素材からなるシート材が好適である。
【0093】
また、被覆部材43を設けずに、吸着パッド42を形成してもよい。例えば、外筒体6に吸引口40(貫通孔)を設けるとともに、外筒体6の外面に、吸引口40の周囲を覆うように、吸引口40よりも大径の穴部(非貫通孔)を設け、吸引口40と穴部を合わせたものを吸着パッド42としてもよい。この形態では被覆部材43を設けないため、部品点数が少なく、製造時の部品管理に優れるという利点がある。
【0094】
これまで吸着パッド42の種類を述べてきたが、本発明に係る吸着パッド42として最も好ましいものは、
図20に示すように、外周端部45が薄い吸着パッド(「薄型吸着パッド」という)である。吸着パッド42の外周端部45の厚さが、吸着パッド42の本体部48(吸着パッド42のうち、外周端部45よりも中心側に位置する部分)の厚さよりも薄いことによって、延長ダクト3を吸着する時に、吸着パッド42の外周端部45と延長ダクト3の間に隙間が生じにくくなるからである。なお、
図20における符号44は、上方へ向かって延在する外周端部45の基端部を示す。
【0095】
この利点について詳述する。延長ダクト3を固定した移動体5が切羽側へ移動するに伴って、延長ダクト3も切羽側へ引き寄せられるようにするためには、吸着パッド42と延長ダクト3の接触面に水平方向の摩擦力が十分に働かなくてはならない。しかし、前述したように、延長ダクト3が製造されてから時間が経過している場合は、延長ダクト3が紫外線によって硬化し、延長ダクト3に微細な皺が多数発生していることが多い。延長ダクト3に微細な皺が多数生じていると、吸着パッド42が延長ダクト3を吸着したときに、延長ダクト3の皺部分を通じて空気が流通するため、前述の水平方向の十分な摩擦力が確保しづらくなる。その結果、吸引ブロアによる吸引力を高めなければならず、ランニングコストが高くなるという問題がある。この問題は特に吸引パッド42の外周端部の厚みが厚いときに顕著である。吸引パッド42の外周端部の厚みが厚い場合、外周端部が柔軟に変形しないため、吸着パッド42と延長ダクト3の接触面積が低くなりやすいからである。
【0096】
そこで、吸着パッド42の外周端部45を薄くして、その外周端部を柔軟に変形可能にすることで、吸着パッド42の外周端部45と延長ダクト3の接触面積を高め、もって延長ダクト3の引き寄せを容易にする。
【0097】
ただし、吸着パッド42の外周端部45を薄くすると、移動体5が坑口側へ戻る際に、吸着パッド42の外周端部45が延長ダクト3にひっかかって捲れ、倒れてしまうおそれがある。そこで
図20Bに示すように、外筒体6の外面に窪み部90を設け、この窪み部90の内部に吸着パッド42を配置するようにすることが好ましい。このとき、外筒体6の外表面6fの高さ91と吸着パッド42の外周端縁45eの高さ92をほぼ同じにすることが好ましい。外筒体6の外表面6fの高さ91が吸着パッド42の外周端縁42eの高さ92よりも著しく低いと、延長ダクト3を吸引したときに、延長ダクト3の変形量が大きくなる(延長ダクト3が大きく窪む)。そのため、そのような吸引状態を実現するために、吸引ブロアによる吸引力を高めなければならないという問題がある。他方、外筒体6の外表面6fの高さ91が吸着パッド42の外周端縁42eの高さ92よりも著しく高いと、移動体5が坑口側へ戻る際に、吸着パッド42の外周端部45が捲れてしまうという前述の問題がある。
【0098】
吸着パッド42の外周端縁42eの高さ92は、外筒体6の外表面6fの高さ91よりも少しだけ高くすることが好ましい。具体的には、その高さの差(外周端縁42eの高さ92−外表面6fの高さ91)を20mm以内にすることが好ましく、10mm以内にすることがより好ましい。このように、吸着パッド42の外周端縁42eの高さを若干高くすることによって、吸着パッド42の外周端部45が柔軟に変形し、吸着パッド42の外周端部45と延長ダクト3の接触面積をより大きくすることができる。
【0099】
なお、平面視における吸着パッド42の形状は真円状にすることが好ましい。真円状にすると、延長ダクト3を吸引したときに風圧が均等にかかるため、吸着パッド42の端部全周を延長ダクト3が密接にシールした状態を形成することができる。真円状の吸着パッド42と比較して、前述のシール効果は低下するが、吸着パッド42の形状として、楕円状や半円状等の任意の形状にすることもできる。
【0100】
また、平面視における吸着パッド42の内径(吸着パッド42が真円形でない場合(例えば楕円形の場合)も考慮して、投影円相当径とする)は、例えば50〜200mmにすることが好ましい。吸着パッド42の内径が50mmよりも短いと、延長ダクト3の吸引力を十分に確保しづらいため、移動体5を切羽側へ移動させるときに、延長ダクト3が外筒体6から剥がれてしまうおそれがある。吸着パッド42の内径が200mmよりも長いと、外筒体6に吸着パッド42を設置するための広いスペースを確保しなければならないため、外筒体6が必要以上に大型化し、重量が増してしまう。
【0101】
平面視において、吸着パッド42の中心部に吸引口40を配置することが好ましい。吸着パッド42の中心部からズレた位置に吸引口40を配置した場合、吸着パッド42に作用する吸引力が吸着パッド42内部の所定の場所によって異なるものとなり、均等な吸引力が確保しづらい。その結果、吸着パッド42の各端部において、吸引口40からの距離が短い端部は延長ダクト3でシールされやすく、吸引口40からの距離が長い端部は延長ダクト3でシールされづらいという偏りが生じてしまうおそれがある。
【0102】
(吸引部46)
吸引部46とは、吸着パッド42を設けずに吸引口40のみを設けた場合は吸引口40が設けられた部分をいい、吸着パッド42と吸引口40の両方を設けた場合は吸着パッド42と吸引口40の両方を含んだ部分をいう。
【0103】
なお、延長ダクト3が吸着パッド42に吸着されたときは、延長ダクト3が吸着パッドの内部(径方向内側)にめり込んだ状態になっている。
【0104】
(吸気管47)
図16および
図17に、支持体4と外筒体6が重なっている箇所の断面図を示す。図示した実施形態では、外筒体6を貫通する吸引口40を計10個設けている。それとともに、外筒体6の外面、かつ、各吸引口40の周囲に、吸引口40よりも大径の穴部90(非貫通孔)を設け、その穴部90の内部に吸引パッド42を設置している。なお、吸引パッド42にも吸引口40が設けられている。詳しくは、平面視で、吸引パッド42の吸引口40と外筒体6の吸引口40がそれぞれ重なる位置に配置され、断面視で、吸引パッド42の吸引口40と外筒体6の吸引口40がそれぞれ繋がる位置に配置され、全体として一つの吸引口40を形成している。
【0105】
外筒体6と内筒体4の間の空間には、チャンバー43とキャスター41が配置されており、このチャンバー43とキャスター41は外筒体6の内面にそれぞれ固定されている。なお、
図16および
図17においては、外筒体6の頂部にチャンバー43を1個だけ設けているが、チャンバー43を複数個設ける形態にしても良い。チャンバー43を複数個設ける場合は、前述の左側線と右側線の間の角度θの範囲内に設けることが好ましい。詳しくは、外筒体6の周方向において、隣接するチャンバー43間の距離がほぼ同じになるように配置することが好ましい。後述するように、チャンバー43は吸気および排気の基点になるものであるため、複数個の吸引口40(および吹出口39)による吸引力(および吹出力)を同じにするため、複数個の吸引口40(および吹出口39)が存在する部分(すなわち前述の角度θの範囲)に、略均等に配置することが好ましいためである。
【0106】
また、内筒体4には、その壁面を厚み方向に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔をスリット76と称している。図示しないが、このスリット76は、坑口側から切羽側へ向かって線状(好ましくは直線状)に延在するように、内筒体4に形成されている。
【0107】
そして、前記チャンバー43は、このスリット76が設けられた位置に配置されており、スリット76の内部を通って、内筒体4の壁面を貫通して内筒体4の中心側へ延在する構造になっている。そして、外筒体6が切羽側(または坑口側)へ移動すると、外筒体6とともに前記チャンバー43も切羽側(または坑口側)へ移動することになるが、この移動の際に、チャンバー43は、前記スリット76の内部を通って移動する。すなわち、スリット76を言い換えるならば、チャンバー43の通り道であるということができる。
【0108】
図16および
図17では図示していないが、チャンバー43の端部(内筒体4の壁面よりも内側の部分)には、吸気管47が取り付けられている。この吸気管47は、内筒体4や外筒体6の外に配置されたブロワ72に連結されている。
【0109】
ブロワ72が作動すると、延長ダクト3と外筒体6の間にある空気が吸引される結果、延長ダクト3の内面が吸着パッド42の外面に吸着(一時的に固定)される。吸引された空気は、吸引口40の内部を通って、外筒体6と内筒体4の間の空間SPへと移動し、当該空間SPを周方向へ移動して、チャンバー43の内部に吸引される。チャンバー43の内部に吸引された空気は、チャンバー43と接続された吸気管47の内部を通過し、ブロワ72に達し、外部へ排出される。
【0110】
他方、空気を吹き出す場合は、前記吸気プロセスと逆のプロセスになる。すなわち、送風機71を作動させると、送風機71からの空気が吹出管49の内部を通過し、チャンバー43に達する。そして、前記空気は、チャンバー43から外筒体6と内筒体4の間の空間SPへ移動した後、吹出口39の内部を通り抜け、延長ダクト3と外筒体6の間の空間へ吹き出す。その結果、延長ダクト3と外筒体6の間に所定の隙間(空間AS)が生じることになる。なお、
図16および
図17の実施形態においては、吸気口40を吹出口39としても用いる形態を示したが、吸気口40と吹出口39を別々に設けても良い。例えば、
図16および
図17の実施形態において、10個の吸気口40の半分(5個)を吹出口39に代えても良い。この場合は、周方向において吸気口40と吹出口39を交互に配置することが好ましい。吸気口40を設ける位置が一部分に偏っていると、延長ダクト3の吸着をバランスよく行うことができないからである。このことは、吹出口39の配置においても同様である。
【0111】
なお、前記吸気管47の配置方法は任意に定めることができる。例えば、
図18の別の実施態様では、複数本の第1の吸気管47Aが、吸引口40から径方向内側へ向かって延在し、内筒体4を貫通して内筒体4の内壁面まで到達した後、第2の吸気管47Bに連結されている。第2の吸気管47Bは内筒体4の内壁面に沿って周方向に延在し、第2の吸気管47Bよりも径方向内側に位置する2本の第3の吸気管47Cと連結される。第3の吸気管47Cは、軸方向坑口側へ向かって延在した後、第4の吸気管47Dと連結される。
図18に例示したように、第4の吸気管47Dは内筒体4の下部の壁面を内側から外側へ向かって貫通した後、内筒体4や外筒体6の外に配置されたブロワ72に連結される。以上のように、吸気管47が内筒体4を貫通した状態で、移動体5が前後方向に移動するため、
図3等に示すように、内筒体4には軸方向に延在するスリット76を設けることが好ましい。なお、
図3の例では、スリット76を一箇所だけ表示しているが、吸気管47を
図18のように配置する場合は、第1の吸気管47Aの数(すなわち吸気口40の数)と同じ数のスリット76が設けられることになる。吸気管47(第1の吸気管47A)はこのスリット76の中を通って前後方向へ移動することになる。
【0112】
吸気管47として可撓性のホースを用いることができるが、ポリ塩化ビニル(PVC)、ゴムホースのような可撓性の他の部材を用いても良い。
【0113】
前記
図18はダクト延長設備1の一実施例であって、送風時と吸引時の空気の流れを説明するための概略図である。この実施形態において、移動体5が切羽側へ移動する際に、延長ダクト3を吸着パッド42に吸着させる制御を行う場合は、
図18Aに示すように、吸引装置72(例えば真空ポンプ)を作動させる。そうすると、外筒体6よりも外側に存在する空気が、吸引口40から吸引され、吸気管47の内部空間を順番に(47A、47B、47C、47D(47D2)の順に)通過し、吸引装置72へ到達する。なお、
図18Aに例示した態様では、第1の吸気管47Aと第2の吸気管47Bの間に分岐路78が設けられている。また、第4の吸気管47Dのうち、後述する三方弁67よりも吸引装置72側に位置する吸気管47D2には流量調節バルブ66が設けられ(特に、吸気管47D2に設けられた流量調節バルブを符号66Bで示す)、この流量調節バルブ66の開度を調整することによって、吸引量を調節することができる構成となっている。
【0114】
(吹出管49)
反対に、移動体5を坑口側へ戻す際に、延長ダクト3が吸着パッド42に吸着された状態を解き、かつ、延長ダクト3と吸着パッド42の間に所定の空間ASを設けるために、延長ダクト3へ向かって空気を吹き出させる制御を行う場合は、
図18Bに示すように、この吹出空気の通路として前記吸気管47を用いることが好ましい。吸気管47を吹出管49として活用することによって、ダクト延長設備全体を簡素化することができ、メンテナンス性の向上等の効果を得ることができる。このように吸気管47と吹出管49を兼用する場合は、前述の吸気管47を吹出管49と読み換えると良い。同様に、前述の吸気口40を吹出口39としても用いることが好ましく、この場合は、前述の吸気口40を吹出口39と読み換えると良い。以上のような構成にした場合、
図18Bに示すように、第4の吹出管49Dの中間部分に三方弁67を設け、この三方弁67から分岐させた通路(吹出管49D)に、送風機71(例えばコンプレッサー)を接続すると良い。
【0115】
吹出時には前記送風機71を作動させる。送風機71から送られた空気が吹出管49の内部空間を順番に(49D、49C、49B、49Aの順に)通過し、吹出口39から外筒体6の外側へ向かって空気が吹出される。なお、
図18Bに例示した態様では、第1の吹出管49Aと第2の吹出管49Bの間に分岐路78が設けられている。また、第4の吹出管49Dのうち、三方弁67よりも送付機71側に位置する吹出管49D1にも流量調節バルブ66が設けられ(特に、吹出管49D1に設けられた流量調節バルブを符号66Aで示す)、この流量調節バルブ66の開度を調整することによって、吹出量を調節することができる構成としている。
【0116】
なお、前記吸気管47のことを吸気通路と言い換えることができる。同様に、前記吹出管49のことを吹出通路と言い換えることもできる。
【0117】
また、前記の説明および各図面においては、吸気口40と吹出口39を兼用する場合を例示したが、吸気口40と吹出口39を別々に設けても良い。例えば、
図1の複数の吸気口40のうちの1個または複数個を、空気の吹き出しだけを行う吹出口39に変更しても良い。ただし、この場合においても、吸気口40による吸気は必要であるため、すべての吸気口40を吹出口39に変えてしまうことは好ましくない。
【0118】
(他の実施形態)
吸気・吹出の構造に関して、
図19に他の実施形態を示す。移動体5が切羽側へ移動する際に吸気した状態を
図19Aに示す。まず、コントローラー85によって、三方弁84(
図19A、Bでは三方電動弁を示す)のプラス側を閉じ、マイナス側を開ける。その状態で、送風機80(
図19A、Bではルーツブロアを示す)を運転すると、外筒体6の外側に在る空気が吸着パッド42に吸い込まれ、吸い込まれた空気は
図19Aの矢印に示したように流れる。すなわち、三方弁84、負圧タンク81、送風機80、加圧タンク82の順に通って、三方弁84のプラス側に達する。前述のように、三方弁84のプラス側は閉じられているため、吸い込まれた空気はそこを通過できず、結果として、加圧タンク82内の圧力が次第に高くなるとともに、負圧タンク81内の圧力も次第に高くなる。
【0119】
次の工程として、移動体5が坑口側へ移動する際に吹出した状態を
図19Bに示す。前述のコントローラー85によって、三方弁84のプラス側を開け、それとともにマイナス側を閉じる。なお、送風機80の運転は継続している。そうすると、空気は
図19Bの矢印に示したように流れ、加圧タンク82等に蓄積されていた圧縮空気が吸着パッド42から吹き出される。すなわち、空気は負圧タンク81、送風機80、加圧タンク82、三方弁84の順に通って、吸着パッド42から外方へ吹出される。前述のように、三方弁84のプラス側が開けられ、マイナス側が閉じられているため、結果として、負圧タンク82内の圧力が次第に低くなり、加圧タンク82内の圧力も次第に低くなる。その次の工程として、移動体5が切羽側へ移動することになるため、前述のように三方弁84の開閉を切り替える。
【0120】
以上のように、三方弁84のプラス側およびマイナス側の開閉を切り替えることで、吸着パッド42による吸気と吹出を容易に切り替えることができる。この実施形態の利点は、三方弁84の開閉を切り替えるだけで吸気と吹出が切り替わるため、吸気と吹出の切り替えが非常に速いことである。例えば、
図18の実施形態では、三方弁67の切り替えをするとともに、送風機71と吸引装置72の起動と停止をそれぞれ繰り返す必要があり、その起動と停止によって一定のタイムロスが生じやすい。他方、
図19の実施形態では、送風機80を常に運転させた状態で、三方弁84の開閉を切り替えるだけで足りる(吸気と吹出を切り替える際に送風機80の運転を停める必要がない)ため、吸気と吹出の切り替えが非常に速くなる。また、
図18の実施形態では送風機71と吸引装置72をそれぞれ設けているが、
図19の実施形態では送風機80を設ければ足りるため、イニシャルコストの低減を図ることができる。
【0121】
(挟み込み防止部材75)
図1等に例示したように、径方向において、内筒体4と延長ダクト3の間かつ外筒体6と延長ダクト3の間の位置に、挟み込み防止部材75を設けることが好ましい。外筒体6が前後方向へ移動する際に、この挟み込み防止部材75が設けられていることによって、外筒体6と内筒体4の間に延長ダクト3が挟み込まれることを防ぐことができる。この挟み込み防止部材75は前後方向に延在するように設けることが好ましい。挟み込み防止部材75は外筒体6の移動による挟み込みを防止することを目的とするから、少なくとも外筒体6が移動する範囲よりも前後方向の長さを長くすることが好ましい。
図1等に例示した態様では、支持体4の切羽側の端部と坑口側の端部にそれぞれリング74、74を設け、両リング74、74の間を連結するように挟み込み防止部材75を配置している。
図1等に例示した態様では、挟み込み防止部材75としてワイヤを用いているが、ワイヤに代えて、ナイロンライン、フロロカーボンライン、ポリエチレンライン、ポリエステルライン、これらの素材を任意に組み合わせたラインなどの釣り糸、テグスなどを用いてもよい。また、挟み込み防止部材75を設ける位置は、上下方向の上方に設けることが好ましい。前述のように、延長ダクト3の重力の影響によって、延長ダクト3の上部と外筒体6の上部が密着しやすく、延長ダクト3の下部と外筒体6の下部の間に隙間ができやすい性質がある。そのため、前記挟み込みは主に上下方向の上部で生じるからである。
【0122】
(保持体70)
移動体5が移動する前後方向の範囲よりも切羽側に位置する筒体30の径方向外側には、保持体70を設けることが好ましい。
図1等に示した保持体70は、前記筒体30の切羽側に設けられた固定部70Bと、固定部70Bから坑口側へ延在する延在部70Cと、前記延在部70Cの坑口側端部に設けられた突出部70Aを有する。
図1の例において、延在部70Cは一本の棒状の部材からなり、この棒状部材は固定部70Bを起点として、上下方向に伏仰可能である。また、この棒状部材の坑口側端部に設けられた突出部70Aは、棒状部材と突出部70Aの接続部分を中心に、その突出部分が回転可能な構成となっている。延長ダクト3が切羽側へ移動すると、延長ダクト3に皺が生じるが、このとき突出部70Aによって、延長ダクト3の皺の部分を引っ掛けることによって、皺ができた状態を維持する構成となっている。すなわち、本発明における保持体70は、延長ダクト3に皺ができた状態を維持するためのストッパーの役割を果たしている。なお、前記棒状部材からなる延在部70Bは、移動体5の切羽側への移動によって付随的に発生する延長ダクト3の皺の切羽側への移動力と、延在部70Bである棒状部材の重力の作用によって、自動で上下動することになる。そのため、この棒状部材を移動させるために、新たに外部から動力を付加しないでも良いという利点がある。
【0123】
特許文献3の発明においては、ロッドシリンダを上下に移動させて、随時皺を保持する構成を開示している。しかし、ロッドシリンダを上下動させるために時間がかかり、延長ダクト3を収納する時間が長くなる。また、ロッドシリンダを移動させる動力が必要となるとともに、イニシャルコストも安いものではない。前述のように、本発明で用いられる保持体70は、外部から動力を付加する必要がない。それとともに、必要なタイミングで自然に棒状部材70Bが上下動するため、特許文献3のように、皺を保持する作業を行う工程を設けなくても良いという利点もある。
【0124】
前記保持体70を複数個設けても良いが、
図1等に示すように、支持体4の上半分の位置に一つだけ設けるだけで足りる。保持体70の設置個数を少なくすることによって、メンテナンス性が向上するとともに、イニシャルコストを低減することができる。また、特許文献3の実施例に開示したようにロッドシリンダを設けた場合よりも故障の可能性を低減することができる。なお、保持体70を上下方向の上半分の位置に設ける理由は、次のとおりである。すなわち、延長ダクト3を切羽側へ引き寄せたときに、延長ダクト3の上側部分は、皺ができたで支持体4の上面に載っているが、延長ダクト3の下側部分は、重力によって垂れ下がり、皺が維持できなくなっているため、上側部分の皺ができた状態を保持するために、保持体70を上半分に設ける必要があるからである。
【0125】
(垂下防止板34)
既設ダクト2や延長ダクト3の下方に、既設ダクト2や延長ダクト3が下方へ垂れ下がることを防止する垂下防止板34を設けても良い。
【0126】
(案内部25)
支持体4の後方端部(坑口側端部)の外方(後方)に、延長ダクト3が支持体4の外周面に被さるように誘導する案内部25を設けることが好ましい。この案内部25は、支持体4の坑口側端部と直接連結させても良いし、他の連結部材を介して間接的に連結させても良い。この案内部25の切羽側端部の外径は、外筒体6の坑口側端部の外径とほぼ同一(両外径に差があるとしても約10mm以内)にすることが好ましい。両外径をほぼ同一にすることによって、延長ダクト3が案内部25から支持体4へ移行しやすくなるという利点がある。
【0127】
案内部25の形状は、図示したように切羽側の上部の形状を下方へ向かって傾斜する形状にすることが好ましい。このような形状にすることで、延長ダクト3を案内部25の外面に被せ、案内部25の外面に被さった延長ダクト3を外筒体6の外面に移動させるという流れがスムーズになる。この案内部25の形状は任意の形状に変更することができるが、延長ダクト3を外筒体6の外面に被せやすい形状が好ましい。
【0128】
(その他の構成)
制御装置(図示しない)が設けられており、延長ダクト3の引き寄せを含むダクト延長作業を自動で行うようにしている。
【0129】
(ダクト延長方法)
以下に、本発明にかかるダクト延長設備1を用いたダクト延長方法について説明する。
図11に、前回補充した延長ダクト3(
図11の坑口側既設ダクト2Bに相当する)の収縮していた部分がすべて伸び切った状態を示した。この状態になると、シールドマシンの掘進を一時停止し、新たな延長ダクト3を補充する必要がある。そこで、まずはトンネル天井面のセグメントサポート(図示しない)に、新たなメッセンジャーワイヤー58を布設する(S1)。そして、トンネル坑内に延長ダクト3を搬入する(S2)。
【0130】
次に、
図12に示すように、新たな延長ダクト3を挿入する部分の既設ダクト2の連結ファスナー57を切り離し、切羽側既設ダクト2F(パイロットダクトともいう。)と坑口側既設ダクト2B(旧延長ダクト)の2つに分ける(S3)。そして、坑口側既設ダクト2Bの前方端部を切羽側へ少し移動させ、切羽側既設ダクト2Fと坑口側既設ダクト2Bの間にスペースを空ける。その後、
図13に示すように、切羽側既設ダクト2Fの後方端部を引き出して、トンネル坑内の地面まで降ろす。そして、坑内の道路上で切羽側既設ダクト2Fの後方端縁と延長ダクト3の前方端縁を連結ファスナー57で連結する(S4)。その後、
図14に示すように、切羽側既設ダクト2Fの引き出した部分と延長ダクト3を連結したものを後続台車のウインチで吊り上げる(S5)。なお、S4の工程とS5の工程は逆にしても良い。すなわち、延長ダクト3の前方端部を後続台車のウインチで吊り上げた後に、トンネル天井付近で切羽側既設ダクト2Fの後方端縁と延長ダクト3の前方端縁を連結ファスナー57で連結させても良い。なお、坑内の道路上で切羽側既設ダクト2Fの後方端縁と延長ダクト3の前方端縁を連結ファスナー57で連結した方が容易である。
【0131】
その後、延長ダクト3を引き込む(S6)。この引き込みは、支持体4の前方端部と後方端部の間で移動体5を往復移動させることにより行う。具体的には、まず、支持体4の外面に延長ダクト3(連結のために引き出した切羽側既設ダクト2Fの後方端部を含む)が被さった状態から、支持体4の後方端部に位置する移動体5を延長ダクト3の内面に一時的に固定する(S6A)。この一時固定は、吸引機72を作動させて、
図16に示すように、延長ダクト3と外筒体6の間の空気を吸引部46から吸引し(符号WDは吸引方向を例示している)、吸引部46の外面に延長ダクト3の内面が被さった状態にすることによって行う。このように一時固定した状態で、前記移動体5を支持体4の前方へ向って(すなわち、既設ダクト2へ向って)移動させる(S6B)。この移動により、固定部分よりも既設ダクト2側の延長ダクト3に皺ができる。具体的には、当該箇所に複数の皺ができて、全体として蛇腹のような形状となる。図示形態では、この皺が生じる箇所は予め決められておらず(予め折り目が設けられておらず)、ランダムに自然に発生している。また、それ以外の部分の延長ダクト3は、移動体5に引かれて既設ダクト3へ向かって移動する。そして、この延長ダクト3の皺部分を保持体70によって保持するようにすると良い(S6C)。次に、支持体4の前方端部に位置する移動体5の一時固定を解除する。(S6D)。この一時固定の解除は、吸引機72の作動を停止し、吸引を止めることで行う。そして、延長ダクト3を引き寄せた場所に保ちながら、移動体5のみを支持体4の後方へ向って(すなわち、既設ダクト2と反対方向へ向って)移動させる(S6E)。このとき、移動体5の坑口側への移動によって、延長ダクト3が坑口側へ移動してしまうことを防止するため、移動体5と延長ダクト3の間に所定の空間ASを形成することが好ましい。具体的には、送風機71を作動させ、
図17に示すように、排出口40から径方向外側へ向かって空気を吹き出す(符号ARは吹出方向を例示している)ことにより、延長ダクト3が上下方向上方へ持ち上がるため、このような空間ASを形成することができる。移動体5の後方への移動が終了した時点(S6E工程の終了時点)で、前記送風機71の作動を終了させて良い。このようにして、移動体5を支持体4の後方端部に戻したら、延長ダクト3をさらに切羽側へ引き寄せるべく、S6Aの工程に戻り、S6A〜S6Eまでの工程を繰り返す。この移動体5の往復移動の繰り返しにより、延長ダクト3を既設ダクト2側(切羽側)へ次第に引き寄せ、既設ダクト2の後方端部と隣接する位置に収縮した延長ダクト3を形成する。光学センサーなどを用いて延長ダクト3の位置を検知し、切羽側既設ダクト2と支持体4の連結部まで、延長ダクト3の後方端部が引き寄せられたら、延長ダクト3の引き寄せを終了する。この引き寄せを終了した時点では、筒体30の外面に収縮したダクトが収まっている状態になる。なお、前記延長ダクト3の引き寄せ作業は、人件費の削減等を図るため、全て自動で行うようにすると良い。
【0132】
延長ダクト3の引き込みが終了したら、延長ダクト3のナス環をメッセンジャーワイヤーに通す(S7)。そして、延長ダクト3の後方端部と、それよりも坑口側の既設ダクト2Bの前方端部を連結ファスナー57で連結する(S8)。その後、延長ダクト3よりも切羽側に位置する既設ダクト2Fを切羽側へ移動させ、延長ダクト3の収縮状態を和らげる。そして、坑口に位置する送風機の運転を再開し(S9)、トンネルの掘削を再開する(S10)。再開した状態を
図20に示した。トンネルの掘削は、補充した延長ダクト3の収縮がなくなるまで行い、その後は、新たな延長ダクト3を補充するために、前記S1の工程に戻る。なお、S1工程に戻ったときは、前回補充した延長ダクト3は、既設ダクト2(坑口側既設ダクト2B)として取り扱う。
【0133】
移動体5を切羽側へ移動させる際に、延長ダクト3を一時固定するための吸引圧力は−20kPa〜−50kPaにすることが好ましく、−30kPa〜−40kPaにすることがより好ましい。吸引圧力が−20kPaよりも少ないと、一時固定が十分ではなく、移動体5が切羽側へ移動したときに、延長ダクト3が剥がれてしまうおそれがある。
【0134】
移動体5を坑口側へ移動させる際に、延長ダクト3と外筒体6の間に空間ASを形成するための吹出圧力は5kPa〜30kPaにすることが好ましく、約30kPaにすることがより好ましい。吹出圧力が5kPaよりも少ないと、前記空間ASが十分に形成されず、移動体5が坑口側へ移動したときに、延長ダクト3も坑口側へ移動してしまうおそれがある。
【0135】
なお、延長ダクト3がある程度切羽側へ移動してしまうことを許容するのであれば、移動体5が坑口側へ引き返す際に、空気を吹出しない制御にしてもよい。
【0136】
(その他)
各図面において吸引口40の数を任意に変更している。それぞれ異なるダクト延長設備1の実施形態であるからである。吸引口40の数が増えるほど吸着力が高くなり、延長ダクト3が剥がれにくい点で好ましい。他方、吸引装置72を運転するための電力がかかるため、ランニングコストが上昇してしまう不利益もある。そのため、吸引口40の数は5個〜20個にするのが好ましく、5個〜15個にすることがより好ましい。すなわち、吸引パッド42の数も5個〜20個にするのが好ましく、5個〜15個にすることがより好ましい。
【0137】
同様に、吹出口39の数が増えるほど吹き出し力が高くなり、外筒体6が坑口側へ移動する際に、延長ダクト3が坑口側へ引き戻されにくくなる点で好ましいが、送風装置を運転するための電力がかかるため、ランニングコストが上昇してしまう不利益もある。そのため、吹出口39の数は5個〜20個にするのが好ましく、5個〜15個にすることがより好ましい。