(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の樹脂シート用改質剤は、アルカリ金属元素を含む無機化合物である成分(A)
と、上記の成分(B)及び(C)とを含有する。本発明により、基材樹脂シートの少なくとも1面側に、防曇性、滑性及び帯電防止性に更に優れた改質層を与えることができる。
【0012】
上記成分(A)に含まれるアルカリ金属元素は
、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等から選ばれた少なくとも1つとすることができる。これらのうち、
本発明の樹脂シート用改質剤では、リチウム、ナトリウム及びカリウムである。尚、上記成分(A)に含まれるアルカリ金属元素は、1つでも2つ以上でもよい。
【0013】
上記成分(A)は、無機化合物であり、ハロゲン化物(塩化物、臭化物、ヨウ化物)、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酸化物、硫化物、水酸化物等とすることができる。これらのうち、
本発明の樹脂シート用改質剤は、ハロゲン化物及び硫酸塩
であり、塩化物及び硫酸塩が特に好ましい。
【0014】
本発明の樹脂シート用改質剤に含まれる上記成分(A)の含有割合は、樹脂シート用改質剤の全体に対して、0.1〜15質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。
【0015】
本発明の樹脂シート用改質剤は、基材樹脂シートの少なくとも1面側に改質層を形成するために用いられるものである。改質層を形成する場合には、他の成分の1つとして、接着剤成分を含有する組成物(以下、「改質層形成用組成物」という)であることが好ましいが、本発明の樹脂シート用改質剤は、このような改質層形成用組成物の調製に用いられる成分として、接着剤以外の他の成分、例えば、添加剤を併含するものであってもよい。
【0016】
上記接着剤成分は、改質層形成用組成物を基材樹脂シートに塗布する場合に、その塗布性の観点から、通常、液状媒体とともに併含される。そのため、上記接着剤成分は、通常、この液状媒体の液性により選択される。本発明において、改質層形成用組成物は、水性の液状媒体(水、又は、水及び有機溶剤との混合液)を含むことが好ましく、上記接着剤成分は、好ましくは親水性樹脂である。
【0017】
上記親水性樹脂は、水性媒体に溶解するものであってよいし、水性媒体に溶解せず、その中で分散するものであってもよい。本発明においては、上記親水性樹脂は、水性媒体に溶解する樹脂であることが好ましく、カルボン酸(その塩を含む)構造を含む構造単位、ヒドロキシ基を含む構造単位、アミノ基を含む構造単位、アミド基を含む構造単位及び4級アンモニウム構造を含む構造単位から選ばれた少なくとも1種を含む樹脂であることがより好ましい。
【0018】
上記親水性樹脂は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物であって、カルボン酸(その塩を含む)構造、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基及び4級アンモニウム構造から選ばれた少なくとも1種を有する化合物の1種又は2種以上に由来する構造単位を含む
、具体的には、下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位を含むアクリル樹脂(以下、「親水性アクリル樹脂(B)」又は「成分(B)」という)である。上記成分(B)は、親水性基を有さない構造単位を含んでもよい。
【0019】
上記成分(B)は、基材樹脂シートへの接着性、並びに、得られる表面改質樹脂シートにおける防曇性、滑性及び帯電防止性の観点から、下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(s−1)」という)を含む重合体である。
【化1】
(式中、R
1は、水素原子又はメチル基であり、R
2は、炭素原子数1〜4の2価の炭化水素基であり、R
3及びR
4は、互いに、同一の又は異なる、炭素原子数1〜4の炭化水素基である。)
【0020】
上記式(1)において、R
1は水素原子又はメチル基であり、R
2は、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基又はテトラメチレン基である。R
3及びR
4は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等とすることができる。R
3及びR
4は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0021】
上記式(1)で表される化合物としては、以下の化合物が好ましい。
(m1−1)R
1がメチル基であり、R
2がエチレン基であり、R
3及びR
4がメチル基である化合物
(m1−2)R
1がメチル基であり、R
2がエチレン基であり、R
3及びR
4がエチル基である化合物
(m1−3)R
1が水素原子であり、R
2がエチレン基であり、R
3及びR
4がエチル基である化合物
【0022】
上記成分(B)が、上記構造単位(s−1)を含む場合、この構造単位(s−1)の含有割合は、重合体を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは10〜60質量%である。尚、上記成分(B)に含まれる上記構造単位(s−1)は1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。
【0023】
上記成分(B)は、更に、下記式(2)で表される化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(s−2)」という)、下記式(3)で表される化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(s−3)」という)、及び、下記式(4)で表される化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(s−4)」という)から選ばれた少なくとも一種を含むことが好ましい。
【化2】
(式中、R
5は、水素原子又はメチル基であり、R
6は、ヒドロキシ基を1つ有する炭素原子数1〜4の炭化水素基、又は、ヒドロキシ基を2つ有する炭素原子数2〜4の炭化水素基である。)
【化3】
(式中、R
7は、水素原子又はメチル基であり、R
8は、水素原子、又は、炭素原子数1〜18の炭化水素基である。)
【化4】
(式中、R
9は、水素原子又はメチル基であり、R
10及びR
11は、互いに、同一の若しくは異なる、水素原子、又は、炭素原子数1〜3の炭化水素基である。但し、R
10及びR
11の両方が水素原子であることを除く。)
【0024】
上記式(2)において、R
5は水素原子又はメチル基であり、R
6は、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基等のモノヒドロキシアルキル基、又は、2,2−ジヒドロキシエチル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、4,4−ジヒドロキシブチル基等のジヒドロキシアルキル基とすることができる。
【0025】
上記式(2)で表される化合物としては、ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2,2−ジヒドロキシエチルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、4,4−ジヒドロキシブチルアクリレート、2,2−ジヒドロキシエチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、4,4−ジヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。これらのうち、2−ヒドロキシエチルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが特に好ましい。
【0026】
上記式(3)において、R
7は水素原子又はメチル基であり、R
8は、水素原子、又は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等とすることができる。
【0027】
上記式(3)で表される化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、イソオクタデシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、イソオクタデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等が挙げられる。これらのうち、エチルアクリレート、メチルメタクリレート及びブチルアクリレートが好ましく、メチルメタクリレートが特に好ましい。
【0028】
上記式(4)において、R
9は水素原子又はメチル基であり、R
10及びR
11は、水素原子、又は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等とすることができる。尚、R
10及びR
11は同時に水素原子にはならない。
【0029】
上記式(4)で表される化合物としては、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド等が挙げられる。これらのうち、N,N−ジメチルアクリルアミドが好ましい。
【0030】
上記成分(B)が、構造単位(s−1)と、構造単位(s−2)、(s−3)及び(s−4)から選ばれた少なくとも1種とからなる共重合体である場合、構造単位の全量を100質量%とした場合に、構成単位(s−1)の含有割合は、防曇性、滑性及び帯電防止性の観点から、好ましくは10〜60質量%である。また、この構成を有する樹脂の数平均分子量は、好ましくは10000〜100000である。
上記数平均分子量は、水系GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて、公知の方法により測定することができる。
【0031】
上記成分(B)として、好ましい共重合体は、以下に示される。
(B−1)上記化合物(m1−1)に由来する構造単位と、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位と、メチルメタクリレートに由来する構造単位とからなる共重合体
(B−2)上記化合物(m1−1)に由来する構造単位と、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位と、メチルメタクリレートに由来する構造単位とからなる共重合体
(B−3)上記化合物(m1−1)に由来する構造単位と、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位と、メチルメタクリレートに由来する構造単位とからなる共重合体
(B−4)上記化合物(m1−2)に由来する構造単位と、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位と、メチルメタクリレートに由来する構造単位とからなる共重合体
(B−5)上記化合物(m1−3)に由来する構造単位と、ヒドロキシエチルアクリレートに由来する構造単位と、エチルアクリレートに由来する構造単位とからなる共重合体
(B−6)上記化合物(m1−1)に由来する構造単位と、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位と、N,N−ジメチルアクリルアミドに由来する構造単位とからなる共重合体
(B−7)上記化合物(m1−1)に由来する構造単位と、ヒドロキシエチルメタクリレートに由来する構造単位と、ブチルアクリレートに由来する構造単位とからなる共重合体
(B−8)メチルメタクリレートに由来する構造単位と、エチルアクリレートに由来する構造単位と、ブチルアクリレートに由来する構造単位と、アクリル酸に由来する構造単位とからなる共重合体
【0032】
上記成分(B)としては、公知の方法、例えば、上記式(1)で表される化合物と、上記式(2)で表される化合物、上記式(3)で表される化合物及び上記式(4)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種とをメタノール等の溶媒に溶解し、重合開始剤、連鎖移動剤等を適宜添加した後、窒素雰囲気下、ラジカル重合反応を行うことにより合成されたものを用いることができる。
【0033】
本発明の樹脂シート用改質剤が、上記成分(B)を含有する場合、その含有割合は、樹脂シート用改質剤の全体に対して、好ましくは35〜85質量%、より好ましくは38〜65質量%である。
【0034】
本発明の樹脂シート用改質剤を製造する場合、上記親水性樹脂用の製造原料としては、上記成分(B)の水溶液が好ましく用いられる。
【0035】
上記のように、親水性樹脂は、水性媒体に溶解せず、その中で分散するものであってもよい。この場合、ラテックス、エマルション等を用いることができる。
【0036】
本発明の樹脂シート用改質剤が添加剤を含有する場合、この添加剤としては、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、離型剤等が挙げられる。本発明の樹脂シート用改質剤は、滑剤(以下、「成分(C)」という)を含有する
。
【0037】
上記
滑剤としては、有機カルボン酸、有機カルボン酸塩、有機カルボン酸エステル、有機カルボン酸アミド、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル、シリカ粒子、シリコーン樹脂粒子、タルク粉末等が挙げられ
、本発明の樹脂シート用改質剤は、これらの成分の1種のみを含有してよいし、2種以上を含有してもよい。本発明において
、成分(C)は、
炭化水素基の炭素原子数が14〜22の脂肪族カルボン酸のナトリウム塩及びカリウム塩から選ばれた少なくとも1つの有機カルボン酸塩
である。
【0038】
有機カルボン酸は、R−COOH(Rはヒドロキシ基を含んでもよい炭化水素基である)で表される化合物であり、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ソルビン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リシノレイン酸等が挙げられる。
本発明においては、これらのうち、得られる表面改質樹脂シートにおける滑性の観点から、炭素原子数14〜22の脂肪族カルボン酸(ヒドロキシ基を含んでもよい)
を用いる。また、塩はリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩等の1価のアルカリ金属塩が好まし
いが、本発明においては、ナトリウム塩及びカリウム塩
を用いる。
【0039】
本発明の樹脂シート用改質剤は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する。この場合、成分(A)と成分(B)及び成分(C)の含有割合は、樹脂シート用改質剤(改質層形成用組成物)を用いた基材樹脂シートへの接着性、並びに、得られる表面改質樹脂シートにおける防曇性、滑性及び帯電防止性の観点から、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、0.1〜15.0質量%、35.0〜85.0質量%及び15.0〜60.0質量%、より好ましくは0.1〜10.0質量%、38.0〜65.0質量%及び30.0〜60.0質量%である。
【0040】
本発明の樹脂シート用改質剤は、基材樹脂シートの表面に、防曇性、滑性及び帯電防止性に優れた改質層を有する表面改質樹脂シートを製造する原料である。好ましくは、成分(A)等が液状媒体(水、アルコール等から選ばれた少なくとも1つであり、好ましくは、水、又は、水と炭素原子数1〜3のアルコールとの混合液)とともに含まれて、基材樹脂シートへの塗布に好適な液状の改質層形成用組成物である。この液状組成物において、液状媒体の含有割合は、特に限定されない。
【0041】
上記基材樹脂シートに液状の改質層形成用組成物からなる樹脂シート用改質剤を塗布する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、スプレーコート法、グラビアコート法、エアナイフコート法、バーコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等が挙げられる。樹脂シート用改質剤を塗布した後、通常、塗膜の乾燥が行われる。乾燥温度は、好ましくは60℃〜120℃である。
【0042】
本発明において、樹脂シート用改質剤を塗布することなる基材樹脂シートとしては、公知の樹脂を含むものが使用できる。上記基材樹脂シートは、好ましくは、熱可塑性樹脂シートであり、この熱可塑性樹脂は、例えば、1)ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体等の芳香族ビニル樹脂、2)ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、3)ポリ乳酸等の脂肪族エステル樹脂、4)ポリ塩化ビニル、エチレン・塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、5)ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・スチレン共重合体等のアクリル系樹脂、6)6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、7)ポリカーボネート樹脂、8)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらのうち、ポリスチレン等の芳香族ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、及びポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂を含むシートは、アモルファスシート、無延伸シート、同時二軸延伸シート、逐次二軸延伸シート等のいずれでもよく、従来、公知のシート成形手段で製造されたものを用いることができる。また、上記基材樹脂シートは、必要に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、酸又はアルカリによる薬液処理等の表面処理が施されたものであってもよい。液状の改質層形成用組成物からなる樹脂シート用改質剤が塗布される表面の、JIS K 6768に準じて測定されるぬれ張力は、特に制限はないが、樹脂シート用改質剤の接着性の観点から、35mN/m〜70mN/mであることが好ましい。
上記基材樹脂シートの厚さは、特に限定されない。
【0043】
本発明の表面改質樹脂シートは、基材樹脂シートに由来して樹脂を含む基層と、該基層の少なくとも1面側に配された、上記本発明の樹脂シート用改質剤を含む改質層とを備える。好ましくは、液状の改質層形成用組成物からなる樹脂シート用改質剤が基材樹脂シートの少なくとも1面側に塗布されて得られたものであり、特に、上記本発明の樹脂シート用改質剤が、1面側あたり、固形分換算で、好ましくは10〜200mg/m
2、より好ましくは30〜200mg/m
2の量で表面に添着された樹脂シートである。
【0044】
本発明の表面改質樹脂シートにおいて、改質層の厚さは、特に限定されない。本発明の表面改質樹脂シートが、両面に改質層を備える場合、各改質層の厚さは、同一であってよいし、異なってもよい。
【0045】
本発明の表面改質樹脂シートは、改質層の表面に、必要に応じて、離型層を備えることもできる。離型層は、シリコーンオイル、ポリオキシアルキレン重合体等を含むものとすることができる。改質層及び離型層を、順次、備える表面改質樹脂シートを製造する方法としては、基材樹脂シートの表面に改質層を形成した後、この改質層の表面に、離型剤組成物を塗布する方法、基材樹脂シートの表面に、離型剤を併含する樹脂シート用改質剤を塗布し、その後、離型剤を表面側にマイグレートさせる方法等とすることができる。本発明の表面改質樹脂シートが、1面側のみに改質層を備える場合、改質層のない側に、離型層を備えてもよい。
【0046】
本発明の表面改質樹脂シートは、防曇性に優れるため、このシートを通して反対側に位置する物品の視認性が高く、改質層において滑性に優れるため、改質層が物品と接触した場合に物品の損傷又は改質層の破断がなく、改質層において帯電防止性に優れるため、塵やほこりの付着を抑制することができる。このような作用は、シートのみならず、このシートを加工して得られた成形品においても得ることができる。
【0047】
上記成形品は、上記本発明の表面改質樹脂シートを成形することによって製造することができる。成形方法としては、真空成形、圧空成形等が挙げられる。また、成形品は、飲料及び食品用容器の蓋やトレー、電子部品の包装容器等に利用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例を挙げるが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、「%」及び「部」は、質量基準である。
以下において、はじめに、液状媒体を含有する樹脂シート用改質剤(改質層形成用組成物)を製造し、その後、この改質剤を、基材樹脂シートに塗布して、表面改質樹脂シートを製造した例を示すが、本発明は、液状媒体を含有しない構成の樹脂シート用改質剤とすることができることはいうまでもない。
【0049】
1.試験区分1(樹脂シート用改質剤の原料)
実施例及び比較例に用いた原料を示す。
【0050】
1−1.原料(A)
本発明に係る成分(A)に対応する原料は以下の通りである。
(A−1)塩化ナトリウム粉末
(A−2)硫酸ナトリウム粉末
(A−3)塩化カリウム粉末
(A−4)塩化リチウム粉末
(a−1)塩化マグネシウム粉末
(a−2)硫酸マグネシウム粉末
(a−3)炭酸カルシウム粉末
【0051】
1−2.原料(B)
本発明に係る成分(B)に対応する原料を、以下の合成例1〜8により得た。
【0052】
合成例1(ビニル共重合体(B−1)の合成)
撹拌装置及び還流装置を備える反応容器に、イソプロパノール300g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート65.9g(0.42モル)、ヒドロキシエチルメタクリレート45.1g(0.35モル)、メチルメタクリレート90.3g(0.90モル)及びアゾビスイソブチロニトリル1.2gを仕込み、これらを混合し、窒素ガス雰囲気下に、80℃で3時間かけてラジカル重合反応を行った。次に、得られた反応液に、モノクロル酢酸ナトリウム48.7g(0.42モル)と水629gとからなる水溶液を、10分かけて滴下し、その後、90℃まで昇温してイソプロパノール180gを留去した。得られた水溶液を、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置で、塩化ナトリウムが残存しなくなるまで、イオン交換水及びアセトンを用いて精製した。次いで、水溶液中の反応生成物を分析した結果、下記の構造単位を所定の割合で含み、GPCによる数平均分子量が55000であることが分かった。以下、この親水性アクリル樹脂を、「ビニル共重合体(B−1)」という。
【化5】
【0053】
後に、樹脂シート用改質剤を製造する際には、このビニル共重合体(B−1)を25%の濃度で含有する水溶液(以下、「水溶液(B−1x)」という)を用いた。
【0054】
合成例2〜8(ビニル共重合体(B−2)〜(B−8)の合成)
合成例1と同様にして、ビニル共重合体(B−2)〜(B−8)を合成した。
【0055】
ビニル共重合体(B−2)は、下記の構造単位を所定の割合で含み、GPCによる数平均分子量が25000の共重合体である。
【化6】
【0056】
ビニル共重合体(B−3)は、下記の構造単位を所定の割合で含み、GPCによる数平均分子量が80000の共重合体である。
【化7】
【0057】
ビニル共重合体(B−4)は、下記の構造単位を所定の割合で含み、GPCによる数平均分子量が50000の共重合体である。
【化8】
【0058】
ビニル共重合体(B−5)は、下記の構造単位を所定の割合で含み、GPCによる数平均分子量が50000の共重合体である。
【化9】
【0059】
ビニル共重合体(B−6)は、下記の構造単位を所定の割合で含み、GPCによる数平均分子量が12000の共重合体である。
【化10】
【0060】
ビニル共重合体(B−7)は、下記の構造単位を所定の割合で含み、GPCによる数平均分子量が45000の共重合体である。
【化11】
【0061】
ビニル共重合体(B−8)は、下記の構造単位を所定の割合で含み、GPCによる数平均分子量が40000の共重合体である。
【化12】
【0062】
その後、これらのビニル共重合体(B−2)〜(B−8)を、いずれも25%の濃度で含有する水溶液(以下、「水溶液(B−2x)」〜「水溶液(B−8x」という)を用いた。
【0063】
1−3.原料(C)
本発明に係る成分(C)に対応する原料は以下の通りである。
(C−1)オクタデカン酸ナトリウム粉末
(C−2)オクタデセン酸ナトリウム粉末
(C−3)ヘキサデセン酸ナトリウム粉末
(C−4)オクタデセン酸カリウム粉末
(C−5)オクタデカン酸カリウム粉末
(C−6)テトラデカン酸ナトリウム粉末
(C−7)ドコセン酸カリウム粉末
【0064】
2.試験区分2(樹脂シート用改質剤の調製)
試験区分1で示した原料を用いて、基材樹脂シートに塗布するための液状の改質層形成用組成物からなる樹脂シート用改質剤を調製した(表1参照)。尚、以下の実験では、液状の改質層形成用組成物の製造原料として、ビニル共重合体(B−1)の水溶液(B−1x)を用いたが、上記のように、水溶液ではなく、液状媒体を含まない単離されたビニル共重合体のみを用いた樹脂シート用改質剤とすることも可能である。
【0065】
実施例1−1
8.0部の水と4.4部の水溶液(B−1x)と、0.8部のオクタデカン酸ナトリウム(C−1)と、0.1部の塩化ナトリウム(A−1)とを混合して、固形分15%の樹脂シート用改質剤(E−1)を調製した。この樹脂シート用改質剤(E−1)において、アルカリ金属含有無機化合物/親水性アクリル樹脂/有機カルボン酸塩の固形分比(質量比)は、5/55/40である。
【0066】
実施例1−2〜1−
11、
参考例1−1〜1−2及び比較例1−1〜1−6
表1の原料を用いて、実施例1と同様にして、改質剤(E−2)〜(E−
11)
、(EE−1)〜(EE−2)及び(e−1)〜(e−6)を調製した。
【0067】
【表1】
【0068】
3.試験区分3(表面改質樹脂シートの製造及び評価)
試験区分2にて製造した樹脂シート用改質剤を用いて塗工液を調製し、その後、この塗工液及び基材樹脂シートを用いて、表2に示す表面改質樹脂シートを製造した。以下に使用した基材樹脂シートを示す。
(S−1)ポリエステル系樹脂シート(ポリエチレンテレフタレート樹脂未結晶タイプ)
(S−2)ポリエステル系樹脂シート(ポリエチレンテレフタレート樹脂二軸延伸タイプ)
(S−3)脂肪族エステル系樹脂シート(無延伸タイプ、コロナ処理により、JIS K 6768に準ずるぬれ張力が44mN/mであるもの)
(S−4)ポリスチレン系樹脂シート(無延伸タイプ、コロナ処理により、JIS K 6768に準ずるぬれ張力が44mN/mであるもの)
(S−5)ポリスチレン系樹脂シート(二軸延伸タイプ、コロナ処理により、JIS K 6768に準ずるぬれ張力が44mN/mであるもの)
(S−6)ポリオレフィン系樹脂シート(ポリプロピレン、無延伸タイプ、コロナ処理により、JIS K 6768に準ずるぬれ張力が44mN/mであるもの)
(S−7)ポリメタクリル酸メチルシート(無延伸タイプ、コロナ処理により、JIS K 6768に準ずるぬれ張力が44mN/mであるもの)
【0069】
実施例2−1
実施例1−1で作製した固形分15%の樹脂シート用改質剤(E−1)13.3gと、水/イソプロピルアルコール=90/10(質量比)の溶媒86.7gとを混合することで、有効濃度2%の塗工液を調製した。
その後、ポリエステル系樹脂シート(S−1)に、調製した塗工液をバーコーターにて塗布した(塗布量:5g/m
2)。その後、塗膜を70℃で乾燥させて、絶乾塗布量が100mg/m
2である改質層を有する表面改質樹脂シート(P−1)を作製した。
次に、得られた表面改質樹脂シート(P−1)について、改質層表面における防曇性、滑性及び帯電防止性の評価を行った。その結果を表2に併記した。
【0070】
(1)防曇性
表面改質樹脂シートを、直径7cmの円形に切り取り、60℃のお湯100mlを入れた200ml容のビーカーに改質層の表面がビーカーの内側となるように被せ、5℃の冷蔵庫内に24時間放置した。その後、表面改質樹脂シートの改質層の表面における水滴の付着程度を観察し、下記の基準で防曇性を評価した。
<防曇性の評価基準>
◎:水滴の付着が無く透明であった(防曇性が優れている)
○:大きな水滴の付着があったが透明であった(防曇性が良好である)
△:水滴の付着がありやや不透明であった(防曇性が劣っている)
×:小さな水滴の付着があり不透明であった(防曇性が著しく劣り実用的でない)
【0071】
(2)滑性
JIS−K7125に準拠して改質層の表面における動摩擦係数を測定し、下記の基準で滑性を評価した。
<滑性の評価基準>
◎:動摩擦係数が0.25未満であった
○:動摩擦係数が0.25以上0.30未満であった
△:動摩擦係数が0.30以上0.35未満であった
×:動摩擦係数が0.35以上であった
【0072】
(3)帯電防止性
表面改質樹脂シートを、温度20℃及び相対湿度65%の条件下に24時間載置して調湿した後、同条件で表面比抵抗(Ω)を測定した。測定機器は、シシド電気社製表面抵抗値測定装置(商品名:メガレスタHT−301)である。表面抵抗値から、以下の基準で帯電防止性を評価した。
<帯電防止性の評価基準>
◎:表面比抵抗が5.0×10
8Ω未満であった
○:表面比抵抗が5.0×10
8Ω以上1.0×10
9Ω未満であった
△:表面比抵抗が1.0×10
9Ω以上5.0×10
9Ω未満であった
×:表面比抵抗が5.0×10
9Ω以上であった
【0073】
実施例2−2〜2−
11、
参考例2−1〜2−2及び比較例2−1〜2−6
樹脂シート用改質剤(E−1)に代えて、樹脂シート用改質剤(E−2)〜(E−
11)
、(EE−1)〜(EE−2)及び(e−1)〜(e−6)を用いた以外は、実施例2−1と同様にして、各塗工液を調製した。次に、塗工液を、表2に示す基材樹脂シートの表面に塗布し、改質層を備える表面改質樹脂シート(P−2)〜(P−
11)
、(PP−1)〜(PP−2)及び(p−1)〜(p−6)を得た。
その後、実施例2−1と同様にして表面改質樹脂シートの評価を行った。その結果を表2に併記した。
【0074】
【表2】
【0075】
4.試験区分4(成形品の製造)
試験区分3にて製造した表面改質樹脂シートを圧空成形に供し、改質層を内表面とする角錐台状の成形品(開口部:70mm×70mm、底部:60mm×60mm、深さ:30mm)を製造した。
【0076】
実施例3−1
実施例2−1で得られた表面改質樹脂シート(P−1)を圧空成形機により加工し、角錐台状の成形品を作製した。改質層の剥離等の不具合は見られず、外観性も良好であった。
【0077】
実施例3−2〜3−
11及び参考例3−1〜3−2
表2に記載の表面改質樹脂シートを用いて、実施例3−1と同様にして、角錐台状の成形品を作製した。いずれの成形品においても、改質層の剥離等の不具合は見られず、外観性も良好であった。
【課題】1面側に配された改質層において、防曇性、滑性及び帯電防止性に優れた表面改質樹脂シート及びその改質層の形成材料として好適な樹脂シート用改質剤、並びに、成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂シート用改質剤は、(A)アルカリ金属元素(リチウム、ナトリウム又はカリウム)を含む無機化合物を含有することを特徴とする。更に、(B)親水性アクリル樹脂、(C)滑剤等を含有することができる。