(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6871659
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】水中原油付着防止用塗料、その調製方法及び応用
(51)【国際特許分類】
C09D 133/14 20060101AFI20210426BHJP
C09D 133/26 20060101ALI20210426BHJP
C09D 133/06 20060101ALI20210426BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20210426BHJP
C08F 220/06 20060101ALI20210426BHJP
C08F 220/56 20060101ALI20210426BHJP
C08F 220/28 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D133/26
C09D133/06
C09D5/16
C08F220/06
C08F220/56
C08F220/28
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-152297(P2020-152297)
(22)【出願日】2020年9月10日
【審査請求日】2020年9月10日
(31)【優先権主張番号】202010347343.0
(32)【優先日】2020年4月28日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519295166
【氏名又は名称】▲広▼州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】呉 旭
(72)【発明者】
【氏名】黄 建嘉
(72)【発明者】
【氏名】于 丹鳳
(72)【発明者】
【氏名】徐 秀彬
(72)【発明者】
【氏名】梁 月燕
【審査官】
上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第107779032(CN,A)
【文献】
特開2018−012770(JP,A)
【文献】
特開2010−024351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中原油付着防止用塗料であって、
原料としてのアクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチルまたはアクリルアミドを含む組成物である親水性アクリル系モノマー、スチレン、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルを含む組成物である疎水性アクリル系モノマー、開始剤及び親水性溶剤を重合反応させてなることにより、前記水中原油付着防止用塗料によって形成されたコーティング表面における原油及びほかの有機油の水中接触角が150±10度に達し、原油などが前記コーティング表面に付着できなくなることを特徴とする水中原油付着防止用塗料。
【請求項2】
前記親水性アクリル系モノマーと疎水性アクリル系モノマーの質量比が(5:0)〜(0:5)であり、且つ、親水性アクリル系モノマーと疎水性アクリル系モノマーの質量がともに0ではない、ことを特徴とする請求項1に記載の水中原油付着防止用塗料。
【請求項3】
前記親水性アクリル系モノマーと疎水性アクリル系モノマーの全質量と、親水性溶剤との質量比が(1:9)〜(3:2)である、ことを特徴とする請求項1に記載の水中原油付着防止用塗料。
【請求項4】
前記開始剤の重量は、親水性アクリル系モノマーと疎水性アクリル系モノマーの全質量の0.5%〜5%である、ことを特徴とする請求項1に記載の水中原油付着防止用塗料。
【請求項5】
前記開始剤はアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソヘプトニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチルから選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の水中原油付着防止用塗料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の水中原油付着防止用塗料の調製方法であって、 開始剤の一部を親水性溶剤に均一に溶解して、混合溶液を得るステップ(1)と、
親水性アクリル系モノマー、疎水性アクリル系モノマー及び残りの開始剤を均一に混合し、次にステップ(1)の混合溶液に滴下して反応させ、反応が終了すると、水中原油付着防止用塗料を得るステップ(2)と、を含む、ことを特徴とする調製方法。
【請求項7】
含油汚水処理、油水分離、原油採掘、原油輸送、原油保管又は原油加工における、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水中原油付着防止用塗料の使用。
【請求項8】
水中原油付着防止コーティングの製造方法であって、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の水中原油付着防止用塗料を基材の表面に塗布し、次に、水に浸漬して、水中原油付着防止コーティングを得るステップを含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規高分子機能性材料、高性能高分子構造材料、ポリマーコーティング材料の分野に属し、特に水中原油付着防止用塗料、その調製方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
国際エネルギー機関(IEA)の関連研究によれば、少なくとも次の半世紀の間、原油は人間の主要なエネルギー源であり続ける。オフショア石油の大量採掘やオフショア石油流出の頻繁な発生により、海上流出油の対処や石油回収は世界的な課題となっている。したがって、原油を回収する目的で、海上流出油に対処するための多くの装置及び方法が開発されてきた。しかしながら、原油が高粘度と疎水効果を有するので、含油廃水の対処や油の回収をするときに油が装置の表面に付着し、その結果、汚水処理や回収の効率が低下したり、装置が詰まったりする。したがって、装置への油の付着を減らすことは非常に重要なことである。
【0003】
装置表面へコーティングを塗布することは、原油の付着を防止するための簡単で効果的な方法である。CN107779032Aでは、ポリマー、架橋成分及び低表面エネルギー成分を原料として、原油の付着力が低い防汚コーティングを製造しているが、このコーティングは、基材の表面に塗布した後、高温で焼き付ける必要があるので、時間や手間がかかり、原油がコーティングの表面に一定時間滞在することができ、原油付着防止性が不十分である。CN110484121Aでは、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、及び溶剤Aを均一に混合し、イソホロンジイソシアネートと触媒を加えて昇温して反応させ、反応終了後、温度を下げ、次に溶剤Bと水の混合溶液を加え、ポリオールとイソシアネートの重縮合によって、水中超疎油性塗料としてのポリウレタン溶液を得て、この水中超疎油性塗料は、原油の付着を効果的に防止することができるものの、鉄シートに対する付着力がわずか131.1kPaであり、向上させる余裕がある。現在のところ、原油付着防止性がCN110484121Aの水中超疎油性塗料に近く、またより強力な付着力を有する技術は開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第110484121号明細書
【0005】
本発明は、ポリウレタン材料の分野に属し、水中超疎油性塗料及びその調製方法を開示する。この水中超疎油性塗料は、基材上に塗布されて、次に、溶媒交換法によって、基材に対して優れた付着力を有する水中超疎油性ヒドロゲルコーティングを形成することができる。形成されたヒドロゲルコーティングは、様々な油に対して付着防止性を有し、様々な油に対する水中接触角が約150°であり、油滴がヒドロゲルコーティングから容易に転がり落ちる。さまざまな過酷な環境(酸浸漬、アルカリ浸漬)でも、溶媒交換法によって形成された水中超疎油性ヒドロゲルコーティングは、水中超疎油性を維持できる。水に7日間浸漬した後も、ポリウレタンヒドロゲルコーティングは、脱落せず、そして落花生油に対する水中接触角が150°より大きく維持されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、原油の付着を効果的に防止するとともに、高付着力を有する水中原油付着防止用塗料、その調製方法及び応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は下記技術案により実現される。
水中原油付着防止用塗料であって、
原料としての親水性アクリル系モノマー、疎水性アクリル系モノマー、開始剤及び親水性溶剤を重合反応させてなる。
【0008】
前記親水性アクリル系モノマーと疎水性アクリル系モノマーの質量比が(5:0)〜(0:5)であり、且つ、親水性アクリル系モノマーと疎水性アクリル系モノマーの質量がともに0ではない。前記親水性アクリル系モノマーと疎水性アクリル系モノマーの質量比が、好ましくは(2.5:2.5)〜(4:1)である。
【0009】
前記親水性アクリル系モノマーと疎水性アクリル系モノマーの全質量と、親水性溶剤との質量比が(1:9)〜(3:2)、好ましくは、(1:4)〜(1:1)である。
【0010】
前記開始剤の重量は、親水性アクリル系モノマーと疎水性アクリル系モノマーの全質量の0.5%〜5%、好ましくは、0.8%〜3%である。
【0011】
前記親水性アクリル系モノマーは、アクリル酸、アクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチル及びアクリル酸ヒドロキシプロピルから選ばれる少なくとも1種である。
【0012】
前記疎水性アクリル系モノマーは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸イソボルニル及びスチレンから選ばれる少なくとも1種である。
【0013】
前記開始剤はアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソヘプトニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチルから選ばれる少なくとも1種である。
【0014】
前記親水性溶剤は、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドから選ばれる少なくとも1種である。
【0015】
水中原油付着防止用塗料の調製方法であって、
開始剤の一部を親水性溶剤に均一に溶解して、混合溶液を得るステップ(1)と、
親水性アクリル系モノマー、疎水性アクリル系モノマー及び残りの開始剤を均一に混合し、次にステップ(1)の混合溶液に滴下して反応させ、反応が終了すると、水中原油付着防止用塗料を得るステップ(2)と、を含む。
【0016】
ステップ(1)では、前記開始剤の溶解温度が70〜100℃である。
【0017】
ステップ(2)では、前記反応温度が70〜100℃であり、反応時間が2〜24hである。
【0018】
ステップ(1)及びステップ(2)では、開始剤の重量比が(0:6)〜(4:2)である。
【0019】
含油汚水処理、油水分離、原油採掘、原油輸送、原油保管、原油加工における上記水中原油付着防止用塗料の使用。
【0020】
水中原油付着防止コーティングの製造方法であって、上記水中原油付着防止用塗料を基材表面に塗布し、次に、水に浸漬して、水中原油付着防止コーティングを得るステップを含む。
【0021】
前記浸漬時間は、10〜120min、好ましくは60minである。
【0022】
前記水中原油付着防止用塗料の塗布量は、0.8〜2g/cm
2、好ましくは1〜1.4g/cm
2である。
【0023】
前記基材は、ガラス、木材、金属、セラミックス、ポリマーから選ばれる少なくとも1種である。
【0024】
本発明では、親水性アクリル系モノマー及び疎水性アクリル系モノマーを特定の比率で用いて、ビニル基のラジカル重合を行い、疎水性ポリアクリレートセグメント及び親水性ポリアクリレートセグメントの両方を持つポリアクリレート溶液を合成し、水中原油付着防止用塗料とする。水中原油付着防止用塗料を基材の表面に塗布し、次に素早く水に浸漬すると、使用される親水性溶剤が水と相溶化するため、溶剤の交換過程、すなわちコーティングへの水の拡散(それと同時に、塗料中の親水性溶剤は水に拡散するが、親水性溶剤の量が水の量よりもはるかに少ないので、この拡散プロセスは無視できる)が発生し、同時に、疎水性鎖の凝集が発生し、つまり、疎水性ポリアクリレートセグメントは基材に凝集し、コーティングを基材の表面に強固に付着させ、親水性ポリアクリレートセグメントは水相とコーティングとの界面に露出しており、水分子をコーティングの表面に吸着させて水和層を形成することができ、それによって、原油などの疎水性物質がコーティングの表面に付着できなくなる。
さらに、水中原油付着防止用塗料中の疎水性ポリアクリレートセグメントと親水性ポリアクリレートセグメントが絡み合って連結されており、疎水性ポリアクリレートセグメントと親水性ポリアクリレートセグメントが酸・アルカリに不溶である性質をもっているので、水中原油付着防止用塗料によって形成されたコーティングに、優れた柔軟性と酸・アルカリ耐性を持たせる。
【発明の効果】
【0025】
従来技術に比べて、本発明において、異なる特性の原料及び反応機構を利用して調製された水中原油付着防止用塗料は、以下の技術的効果を有する。
(1)水中原油付着防止用塗料は、水中で優れた超疎油能力を有し、コーティング表面における原油及びほかの有機油の水中接触角が150±10℃に達し、それにより、原油などがコーティング表面に付着できなくなる。
(2)水中原油付着防止用塗料は、さまざまな基材表面に対して優れた付着性を有する。
(3)水中原油付着防止用塗料によって形成されたコーティングは、優れた柔軟性を有するので、基材の変形によるその水中原油付着防止性能への影響が極めて小さい。
(4)水中原油付着防止用塗料によって形成されたコーティングは、優れた酸・アルカリ耐性を有するので、さまざまなpHの水溶液で水中超疎油性を維持できる。
(5)水中原油付着防止用塗料は、調製方法が簡単で、エネルギー消費が少なく、工業的生産に適している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例1で調製された水中原油付着防止コーティングの表面における、n−ヘキサン(a)、ヘキサデカン(b)、トルエン(c)、ポンプオイル(d)、落花生油(e)及び原油(f)の水中接触角である。
【
図2】実施例2で表面に水中原油付着防止コーティングを形成した鉄シートを曲げ(a)、次にコーティングに原油(b)を注ぎ、水できれいにリンスする(c及びd)プロセスを示す図である。
【
図3】付着力のテストの模式図であり、図aは測定サンプルの調製過程であり、図bは付着力のテスト過程である。
【
図4】実施例2及び比較例1で調製された水中原油付着防止用塗料が溶剤を交換して形成した水中原油付着防止コーティングの鉄シートへの付着力のデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、具体的な実施例にて本発明の技術案をさらに説明する。
【0028】
実施例1 本実施例は、原料としての親水性アクリル系モノマー、疎水性アクリル系モノマー、開始剤及び溶剤を重合反応させてなる水中原油付着防止用塗料を提供する。
親水性アクリル系モノマーは、アクリル酸とアクリル酸ヒドロキシエチルの混合物から選ばれ、疎水性アクリル系モノマーは、スチレン、アクリル酸ブチル及びメタクリル酸メチルの混合物から選ばれ、開始剤はアゾビスイソブチロニトリルから選ばれ、溶剤はN,Nジメチルアセトアミドから選ばれる。
本実施例の水中原油付着防止用塗料の調製方法は、以下のステップを含む。
(1)機械的撹拌機と凝集管を備えた乾燥三口フラスコに、アゾビスイソブチロニトリル0.2g、N,Nジメチルアセトアミド50gを加え、混合して均一に撹拌し、80℃に昇温して(後続でモノマーとラジカル重合するように、アゾビスイソブチロニトリルを予め分解してラジカルを発生させる)、使用時まで保温した。
(2)疎水性アクリル系モノマー(スチレン3g、アクリル酸ブチル12g、メタクリル酸メチル5gを含む)20g、親水性アクリル系モノマー(アクリル酸10g、アクリル酸ヒドロキシエチル20gを含む)30g、及びアゾビスイソブチロニトリル0.3gの混合物を、1.5hかけて、ステップ(1)の混合溶液に均一に滴下し、保温(80℃)して4h反応させた。反応終了後、降温して、ポリアクリル酸エステル溶液である水中原油付着防止用塗料を得た。
測定したところ、該ポリアクリル酸エステル溶液の固形分は50.2%であった。
上記水中原油付着防止用塗料を、1g/cm
2の塗料の使用量で、鉄シートの表面に塗布し、次に水中に60min浸漬し、鉄シートの表面に水中原油付着防止コーティングを形成させた。
【0029】
実施例2
本実施例は、原料としての親水性アクリル系モノマー、疎水性アクリル系モノマー、開始剤及び溶剤を重合反応させてなる水中原油付着防止用塗料を提供する。
親水性アクリル系モノマーはアクリル酸とアクリルアミドの混合物から選ばれ、疎水性アクリル系モノマーはスチレン、アクリル酸ブチル及びメタクリル酸メチルの混合物から選ばれ、開始剤はアゾビスイソブチロニトリルから選ばれ、溶剤はN,Nジメチルアセトアミドから選ばれる。
本実施例の水中原油付着防止用塗料の調製方法は、下記ステップを含む。
(1)機械的撹拌機と凝集管を備えた乾燥三口フラスコに、アゾビスイソブチロニトリル0.2g、N,Nジメチルアセトアミド60gを加え、混合して均一に撹拌し、85℃に昇温して、使用時まで保温した。
(2)疎水性アクリル系モノマー(スチレン2g、アクリル酸ブチル5g、メタクリル酸メチル3gを含む)10g、親水性アクリル系モノマー(アクリル酸10g、アクリルアミド20gを含む)30g及びアゾビスイソブチロニトリル0.2gの混合物を、1hかけてステップ(1)の混合溶液に均一に滴下し、保温(85℃)して4h反応させた。反応終了後、降温して、ポリアクリル酸エステル溶液である水中原油付着防止用塗料を得た。
測定したところ、該ポリアクリル酸エステル溶液の固形分は40.2%であった。
上記水中原油付着防止用塗料を、1g/cm
2の塗料の使用量で、鉄シートの表面に塗布し、次に、水中に60min浸漬し、鉄シートの表面に水中原油付着防止コーティングを形成させた。
【0030】
比較例1
本比較例は、原料としての親水性アクリル系モノマー、開始剤及び溶剤を重合反応させてなる水中原油付着防止用塗料を提供する。
親水性アクリル系モノマーはアクリル酸とアクリルアミドの混合物から選ばれ、開始剤はアゾビスイソブチロニトリルから選ばれ、溶剤はN,Nジメチルアセトアミドから選ばれる。
本実施例の水中原油付着防止用塗料の調製方法は、下記ステップを含む。
(1)機械的撹拌機と凝集管を備えた乾燥三口フラスコに、アゾビスイソブチロニトリル0.2g、N,Nジメチルアセトアミド60gを加え、混合して均一に撹拌し、85℃に昇温して、使用時まで保温した。
(2)40g親水性アクリル系モノマー(アクリル酸15g、アクリルアミド25gを含む)及びアゾビスイソブチロニトリル0.2gの混合物を、1hかけてステップ(1)の混合溶液に均一に滴下し、保温(85℃)して4h反応させた。反応終了後、降温して、ポリアクリル酸エステル溶液である水中原油付着防止用塗料を得た。
測定したところ、該ポリアクリル酸エステル溶液の固形分は40.2%であった。
上記水中原油付着防止用塗料を、1g/cm
2の塗料の使用量で、鉄シートの表面に塗布し、次に、水中に60min浸漬し、鉄シートの表面に水中原油付着防止コーティングを形成させた。
【0031】
性能テスト
(1)水中疎油性及び柔軟性
実施例1で表面にコーティングを形成した鉄シートを水に浸漬し、水中原油付着防止コーティングの表面におけるn−ヘキサン、ヘキサデカン、トルエン、落花生油、ポンプオイル、原油の水中接触角を測定し、結果を
図1及び表1に示す。
【表1】
図1及び表1から分かるように、n−ヘキサン、ヘキサデカン、トルエン、落花生油、ポンプオイル、及び原油はすべて、水中原油付着防止コーティングの表面で150±10°と大きい接触角を持っており、このことから、本発明の水中原油付着防止コーティングが良好な水中疎油性を有することを示している。
さらに、実験したところ、表面にコーティングを形成した鉄シートを曲げた後、コーティングにクラックが発生することがなく、次にコーティングの表面に原油を注ぎ、その後、水でリンスすると、原油を簡単に洗い落とせることを見出した。このプロセスを
図2のa→dに示し、それは、コーティングは優れた柔軟性を有し、基材の変形によるその水中原油付着防止性への影響が極めて少ないことを示している。
【0032】
(2)酸・アルカリ耐性
実施例2で表面にコーティングを形成した鉄シートをpH1〜14の酸又はアルカリ溶液に浸漬し、各pHでは、コーティング表面における原油の水中接触角を測定し、結果を表2に示す。
【表2】
表2に示すように、各pH値の溶液環境において、水中原油付着防止コーティングの表面における原油の水中接触角は約150°であり、これは、本発明の水中原油付着防止コーティングが優れた酸・アルカリ耐性を有し、pHによるその疎油性への影響が極めて小さいことを示している。
【0033】
(3)付着性
次のステップでコーティングの付着性をテストした。
ステップ1、実施例2で調製された固形分40.2%の水中原油付着防止用塗料を鉄シートの面積の1/2に塗布した。
ステップ2、別の同じ鉄シートの1/2の面積を、ステップ1に記載の鉄シートの固形分40.2%の水中原油付着防止用塗料がコーティングされた部分に貼着した。
ステップ3、ステップ(2)の水中原油付着防止用塗料が1層コーティングされた鉄シートを水中にすばやく入れて、60分間浸漬した(模式図は
図3a参照)。
ステップ4、万能試験機を使用して引張試験を行った(テスト方法の模式図を
図3bに示す)。コーティングの引張プロセスでの最大重量キログラム(kgf)の値を取得し、式
【数1】
により水中原油付着防止用塗料が溶剤を交換して形成した水中原油付着防止コーティングの付着力を算出し、ここで、Fは付着力、kgfは重量キログラム、Sは2枚の鉄シートの貼着面積であった。
ステップ5、ステップ1〜4に従って、比較例1で調製された水中原油付着防止コーティングの付着力をテストした。
図4は、実施例2及び比較例1で調製された水中原油付着防止用塗料が溶剤を交換して形成した水中原油付着防止コーティングの鉄シートに対する付着力を示す図である。
図4に示すように、親水性アクリル系モノマーと疎水性アクリル系モノマーの両方を使用して調製された水中原油付着防止用塗料(実施例2)が溶剤を交換して形成した水中原油付着防止コーティングは、付着力が156.2kPaであり、従来技術のCN110484121Aの付着力131.1kPaより高く、また、親水性アクリル系モノマーのみで調製された水中原油付着防止用塗料(比較例1)が溶剤を交換して形成した水中原油付着防止コーティングの付着力(30.5kPa)よりも高かった。このことから、疎水性アクリル系モノマーを追加して合成された水中原油付着防止用塗料が溶剤を交換して形成した水中原油付着防止コーティングは、鉄シートへの付着力が向上することを示している。
【0034】
以上説明したように、本発明の水中原油付着防止用塗料を用いて水中で形成するコーティングは、超疎油性及び柔軟性を有し、コーティング表面における原油及び他の有機油の水中接触角が150±10℃に達し、pHによるその疎油性への影響が極めて小さく、付着力が高く、含油汚水処理、油水分離、原油採掘、輸送、保管、加工などの分野に適用できる。
【0035】
上記実施例は、本発明の好ましい実施形態であるが、本発明の実施形態は、上記実施例により制限されず、本発明の趣旨及び原理から逸脱することなく行われる他の変更、修正、置換、組み合わせや簡略化は、すべて同等の置換方式であり、いずれも本発明の特許範囲に含まれる。
【要約】 (修正有)
【課題】さまざまな基材表面に対し優れた付着性を有し、さまざまなpHで超疎油特性を維持できる水中原油付着防止用塗料、及びその調製方法の提供。
【解決手段】親水性アクリル系モノマー、疎水性アクリル系モノマー、開始剤及び溶剤を重合反応させてなる水中原油付着防止用塗料。調製方法は、親水性アクリル系モノマー、疎水性アクリル系モノマー、開始剤及び溶剤を均一に混合し、反応させるステップを含む。コーティング表面における原油及びほかの有機油の水中接触角が150±10℃に達し、それにより原油などがコーティング表面に付着できない。
【選択図】
図1