(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施の形態]
〔蛍光体の特徴〕
第1の実施の形態に係る単結晶蛍光体は、Y
3Al
5O
12(YAG)系結晶又はLu
3Al
5O
12(LuAG)系結晶を母結晶とするYAG系又はLuAG系単結晶蛍光体であり、組成式(Y
1−x−y−zLu
xGd
yCe
z)
3+aAl
5−aO
12(0≦x≦0.9994、0≦y≦0.0669、0.001≦z≦0.004、−0.016≦a≦0.315)で表される組成を有する。ここで、Lu、Gdは、Yを置換する発光中心とならない成分である。Ceは、Yを置換する発光中心となり得る成分(付活剤)である。
【0019】
なお、上記の単結晶蛍光体の組成のうち、一部の原子は結晶構造上の異なる位置を占めることがある。また、上記の組成式における組成比のOの値は12と記述されるが、上記の組成は、不可避的に混入または欠損する酸素の存在により組成比のOの値が僅かに12からずれた組成も含む。また、組成式におけるaの値は、単結晶蛍光体の製造上、不可避的に変化する値であるが、−0.016≦a≦0.315程度の数値範囲内での変化は、単結晶蛍光体の物性にほとんど影響を及ぼさない。
【0020】
また、本実施の形態の蛍光体は、Ba、Sr等の2族元素及びF、Br等の17族元素を含まず、高い純度を有することを特徴とする。これらの特徴により高輝度で高寿命な蛍光体を実現できる。
【0021】
Ceの濃度を表す上記組成式におけるzの数値の範囲が0.001≦z≦0.004であるのは、zの数値が0.001未満の場合、粒子状の単結晶蛍光体の吸収率が小さく、外部量子効率が小さくなり、結果として発光強度が小さくなるという問題が生じ、zが0.004を超える場合、粒子状の単結晶蛍光体の高温時の温度特性が低下するためである。例えば、300℃における蛍光体の内部量子効率は、0.9未満になる。0.001≦z≦0.004は、粒子状の単結晶蛍光体について最適化されたCeの濃度範囲であり、例えば、板状の単結晶蛍光体にとって適したCeの濃度範囲とは異なる。
【0022】
また、本実施形態の蛍光体は、粒径(D50)が20μm以上の粒子状の単結晶蛍光体である。ここで、D50とは、累積分布における50vol%のときの粒径をいう。
【0023】
粒径が大きくなると、体積に対する表面積が小さくなるため、外部量子効率を向上させることができる。
【0024】
また、粒子状の蛍光体を透明な封止部材に封入して用いる場合、蛍光体の粒径が大きいほど、封止部材の材料に対する蛍光体の体積比が大きくなる。通常、封止材は蛍光体よりも熱伝導率が低く、結果として熱抵抗が大きくなるため、封止部材の材料に対する蛍光体の体積比を大きくすることにより、全体(蛍光体を含む封止部材)の熱抵抗を低減することができる。
【0025】
なお、従来のYAG多結晶蛍光体は、Y
2O
3、Al
2O
3、CeO
2等の酸化物粉末原料を固相反応によって合成するため、15〜20μm程度以上に大きな粒子径の蛍光体を製造することが困難である。一方、本実施の形態に係る単結晶YAG蛍光体は、融液成長した単結晶蛍光体のインゴットを粉砕して作製するため、100μm以上の粒径のものも得ることができる。
【0026】
インゴットの粉砕には、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の既知の粉砕装置を用いることができる。粉砕量が少量の場合には、乳鉢や乳棒を用いてもよい。粉砕装置におけるミルやボール等のYAGと接触する部材の材料は、硬度が高いものであることが好ましく、また、汚染の観点から、単結晶YAGであることが最も望ましいが、生産性の観点から、高純度アルミナであってもよい。
【0027】
図1は、YAG蛍光体の粒径(D50)と熱抵抗の関係を示すグラフである。
図1のグラフにおいて、D50が15μmのプロット点は従来の焼結YAG蛍光体のものであり、その他は本実施の形態の粒子状の単結晶YAG蛍光体(蛍光体単結晶インゴットの組成が(Y
0.9990Ce
0.0010)
3.175Al
4.825O
x〜(Y
0.9985Ce
0.0015)
3.167Al
4.833O
xの範囲で分布している領域を粉砕して得られたもの)のものである。
図1の縦軸は、それぞれの蛍光体をSiO
2系の無機封止材で封止した100μmの膜の熱抵抗であり、従来の焼結YAG蛍光体の封止膜の熱抵抗値を1としたときの相対値で表される。なお、D50が100μmの蛍光体を含む封止膜の厚さは110μmであった。
【0028】
図1に示されるように、例えば、蛍光体の粒径(D50)を20μmにすることにより、熱抵抗を従来の焼結により作製されたYAG多結晶蛍光体よりも低くすることができ、また、60μmにすることにより、熱抵抗を従来のYAG多結晶蛍光体のおよそ半分以下にすることができる。また、無機封止材のようなバインダーを含まない厚さ100μmの単結晶YAGプレートの熱抵抗は0.1程度であり、粒子状の蛍光体の粒子径を100〜120μm程度にすることで、単結晶YAGプレートとほぼ同等の熱抵抗を実現できることが、本発明者らの実験により確認されている。
【0029】
また、上述のように、YAG系単結晶蛍光体は、焼結法等により作製したYAG系多結晶蛍光体よりも温度の上昇に伴う蛍光強度の低下が少ない。蛍光強度の低下が少ないのは、内部量子効率の低下が少ないことによる。また、LuAG系単結晶蛍光体についても同様である。
【0030】
本実施の形態の蛍光体は、このようなYAG系又はLuAG系単結晶蛍光体が本来有する高温条件下での優れた発光特性に加えて、粒径の制御により蛍光体含有部材の熱抵抗を低減するという効果を有するため、高温条件下での使用により適している。例えば、励起光がレーザー光であるレーザープロジェクタやレーザーヘッドライトのように、単位面積当たりの輝度が極めて高い発光装置に用いられる蛍光体として優れた機能を発揮することができる。また、本実施の形態の蛍光体は、粒子状であるため、光の散乱を大きくする効果があり、より均一な発光強度や発光色を実現することができる。
【0031】
なお、従来のYAG系又はLuAG系粉末蛍光体は、焼結法により作製される多結晶粉末であり、D50=10〜15μmの粒子系を有する。YAG系又はLuAG系化合物は融点が非常に高いため、固相反応に基づく焼結法では時間的、品質的制限によりD50を20μm以上にすることは非常に困難である。
【0032】
また、本実施の形態の蛍光体を白色照明等に用いる場合には、粒径(D50)が120μm以下であることが好ましい。これは、120μmを超えると、蛍光体の蛍光色である黄色が強くなりすぎて、所望の色度の白色光を得ることが困難になる場合があるためである。
【0033】
この粒子状の蛍光体は、例えば、CZ法(Czochralski Method)、EFG法(Edge-Defined Film-Fed Growth Method)、ブリッジマン法等の原料融液から結晶を引き上げる方法によって育成された単結晶蛍光体のインゴットを粉砕することにより得られる。
【0034】
〔蛍光体の製造方法〕
以下に、本実施の形態に係る蛍光体の製造方法の一例について具体的に述べる。以下の例においては、CZ法により単結晶蛍光体を育成する。
【0035】
まず、出発原料として、高純度(99.99%以上)のY
2O
3、Lu
2O
3、Gd
2O
3、CeO
2、Al
2O
3の粉末を用意し、乾式混合を行い、混合粉末を得る。なお、Y、Lu、Gd、Ce、及びAlの原料粉末は、上記のものに限られない。また、Lu又はGdを含まない単結晶蛍光体を製造する場合は、それらの原料粉末は用いない。
【0036】
図2は、CZ法による単結晶蛍光体インゴットの引き上げを模式的に示す断面図である。結晶育成装置10は、イリジウム製のルツボ11と、ルツボ11を収容するセラミックス製の筒状容器12と、筒状容器12の周囲に巻回される高周波コイル13とを主として備えている。
【0037】
得られた混合粉末をルツボ11内に入れ、窒素雰囲気中で高周波コイル13により30kWの高周波エネルギーをルツボ11に供給して誘導電流を生じさせ、ルツボ11を加熱する。これにより混合粉末を溶融し、融液14を得る。
【0038】
次に、YAG単結晶である種結晶15を用意して、その先端を融液14に接触させた後、10rpmの回転数で回転させながら1mm/h以下の引き上げ速度で引き上げ、1960℃以上の引き上げ温度で<111>方向に単結晶蛍光体インゴット16を育成する。この単結晶蛍光体インゴット16の育成は、筒状容器内に毎分2Lの流量で窒素を流し込み、大気圧下、窒素雰囲気中で行われる。
【0039】
こうして、組成式(Y
1−x−y−zLu
xGd
yCe
z)
3+aAl
5−aO
12(0≦x≦0.9994、0≦y≦0.0669、0.0002≦z≦0.0067、−0.016≦a≦0.315)で表される組成を有する単結晶からなる単結晶蛍光体インゴット16が得られる。単結晶蛍光体インゴット16のサイズは、例えば、直径約2.5cm、長さ約5cmである。
【0040】
YAG系又はLuAG系単結晶蛍光体においては、Ceイオン半径が母結晶であるYAG系又はLuAG系単結晶のYイオン半径と比べて格段に大きいため、結晶中に取り込まれにくい。このため、CZ(Czochralski)法等の引き上げ法によりYAG系又はLuAG系単結晶蛍光体を育成する場合には、結晶育成の進行に伴って原料融液中のCe濃度が増加するため、YAG系又はLuAG系単結晶蛍光体のCe濃度分布は、結晶の引き上げ方向に向かってCe濃度が低下するような勾配を有する。すなわち、YAG系又はLuAG系単結晶蛍光体のシード(種結晶)側からテール側に向かってCe濃度が増加する。
【0041】
図3は、育成した単結晶蛍光体インゴット16の模式図である。単結晶蛍光体インゴット16においては、種結晶15側からテール17側に向かってCe濃度が増加する。
【0042】
本実施の形態においては、例えば、単結晶蛍光体インゴット16のCe濃度を表す組成式のzが0.001≦z≦0.004である領域を粉砕領域18として切り出す。粉砕領域18においては、単結晶蛍光体インゴット16の引き上げ方向に沿ってCe濃度を表す組成式のzが0.001〜0.004の間で連続的に分布している。このCe濃度分布の連続性は、具体的には、「日本結晶成長学会誌 Vol. 42, No. 2, 2015、P119-129」に記載の
図3及び式(1)(以下に記載する)で定義される実効偏析係数に関する。なお、Ce濃度は、ICP−MS法等により測定される。
【0044】
ここで、式(1)の“C
crystal”は結晶のCe濃度、“C
melt”は融液の初期Ce濃度、“k
eff”は実効偏析係数、“g”は固化率(結晶重量÷融液の初期重量)をそれぞれ表す。
【0045】
次に、粉砕領域18を粉砕し、粒子状の蛍光体を得る。この粒子状の蛍光体は、当然ながら、粉砕領域18と同じ組成を有する。
【0046】
例えば、粉砕領域18の組成式のzが0.001≦z≦0.004であり、0.001以上0.004以下の範囲で連続的に分布している場合は、粉砕領域18を粉砕して得られる粒子状の蛍光体の各粒子の組成式のzは0.001≦z≦0.004であり、粒子状の蛍光体の群の組成式のzは0.001以上0.004以下の範囲で連続的に分布している。
【0047】
蛍光体の発光色は、Ce濃度により変化する。具体的には、例えば、蛍光体がYサイトにLuを含まない場合は、Ce濃度が増加すると、CIE色度(x,y)が黄色側から赤色側にシフトする。また、YサイトにLuを含む場合は、緑色側から黄色側にシフトする。
【0048】
このため、粒子状の単結晶蛍光体の群の組成式のCe濃度が所定の範囲内で連続的に分布している場合、Ce濃度が一定の場合と比較して、発光スペクトルの半値幅が増加し、演色性が向上する。
【0049】
粒子状の蛍光体の各粒子の組成式のzが0.001≦z≦0.004であり、粒子状の蛍光体の群の組成式のzが0.001以上0.004以下の範囲で連続的に分布していることが好ましく、粒子状の蛍光体の各粒子の組成式のzが0.0015≦z≦0.0035であり、0.0015以上0.0035以下の範囲で連続的に分布していることがより好ましい。
【0050】
なお、焼結法等により作製されたCeを含む粉末蛍光体も、通常、ある程度のCe濃度の分布を有するが、これは所望のCe濃度からのばらつきによるものであり、正規分布である。一方、本実施の形態による、単結晶蛍光体インゴットを粉砕することにより得られる粒子状の単結晶蛍光体のCe濃度分布は、正規分布ではない。
【0051】
また、粉砕領域18は、単結晶蛍光体インゴット16の全体に近い領域を占める必要はない。例えば、単結晶蛍光体インゴット16の種結晶15側の端部に近い部分における組成式のzが0.001であり、テール17側の端部に近い部分における組成式のzが0.004である場合に、zが0.003以上0.004以下の範囲で分布する領域を粉砕領域18として単結晶蛍光体インゴット16から切り出してもよい。この場合の粉砕領域18から得られる粒子状の単結晶蛍光体は、zが0.001以上0.004以下の範囲で分布する粉砕領域18から得られる粒子状の単結晶蛍光体よりも赤色寄りのCIE色度(x、y)を有する。
【0052】
また、例えば、zが0.001以上0.002以下の範囲で分布する粉砕領域18から得られる粒子状の単結晶蛍光体は、zが0.001以上0.004以下の範囲で分布する粉砕領域18から得られる粒子状の単結晶蛍光体よりも緑色寄りのCIE色度(x、y)を有する。
【0053】
また、例えば、zが0.002以上0.003以下の範囲で分布する粉砕領域18から得られる粒子状の単結晶蛍光体は、zが0.003以上0.004以下の範囲で分布する粉砕領域18から得られる粒子状の単結晶蛍光体と、zが0.001以上0.002以下の範囲で分布する粉砕領域18から得られる粒子状の単結晶蛍光体との中間のCIE色度(x、y)を有する。
【0054】
また、粉砕領域18の組成式のzの分布範囲の最大値と最小値の差を0.0005以上とすることで、蛍光スペクトルの半値幅を広げる効果が現れるとともに、単結晶蛍光体インゴット16の使用領域を増やし、蛍光体の製造コストを下げることができる。
【0055】
さらに、単結晶蛍光体インゴットを粉砕することにより得られた粒子状の単結晶蛍光体にフッ化水素酸処理を施すことにより、吸収率を大幅に向上させることができる。
【0056】
図4は、粒子状の単結晶蛍光体(蛍光体単結晶インゴットの組成がY
0.6462Lu
0.3528Ce
0.0010)
3.177Al
4.823O
x〜(Y
0.6870Lu
0.3109Ce
0.0021)
3.130Al
4.870O
xの範囲で分布している領域を粉砕して得られたもの)にフッ化水素酸処理を施す前と後の吸収率の変化を示すグラフである。
【0057】
具体的には、フッ化水素酸処理として、40℃の濃度40%のフッ化水素酸を用いて、粒子状の単結晶蛍光体の表面にエッチング処理を1時間施した。
【0058】
図4は、フッ化水素酸処理により、粒子状の単結晶蛍光体の吸収率が大幅に向上することを示している。蛍光体の発光強度と大きく関係する外部量子効率は、内部量子効率に吸収率を乗じた値で示されるため、フッ化水素酸処理により、粒子状の単結晶蛍光体の発光強度を大幅に向上させることができるといえる。
【0059】
図5(a)、(b)は、それぞれフッ化水素酸処理を施す前と後の粒子状の単結晶蛍光体の状態を示すSEM(Scanning Electron Microscope)写真である。
【0060】
図5(b)に示されるフッ化水素酸処理後の単結晶蛍光体は、各々の粒子の稜が丸められ、
図5(a)に示されるフッ化水素酸処理前の単結晶蛍光体に比べて曲面が多くなっている。このように、単結晶蛍光体の粒子の表面が曲面的になることにより、表面での光反射が低減し、吸収率が向上したものと考えられる。また、粉砕によって、蛍光体表面に生じた結晶欠陥層を除去する効果ももつと考えられる。また、蛍光体形状が丸みを帯びるため、無機封止材中に分散する際の分散性が高まり、膜中の蛍光体密度が向上し、熱抵抗を低減させる効果も有する。
【0061】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態に係る単結晶蛍光体を用いた発光装置である。
【0062】
図6は、第2の実施の形態に係る発光装置であるレーザーヘッドライト20の光源部の模式図である。レーザーヘッドライト20は、コリメートレンズ21を有する3個のレーザーダイオード22と、レーザーダイオード22から発せられた青色レーザー光を集光する集光レンズ23と、集光レンズ23により集光された光を吸収して蛍光を発する蛍光体含有部材24と、蛍光体含有部材24から発せられた蛍光を反射してレーザーヘッドライト20の前方に配光させるミラー25を有する。レーザーヘッドライト20においては、レーザーダイオード22から発せられる青色光と、蛍光体含有部材24から発せられる黄色光との混色により、白色光が得られる。
【0063】
図7(a)、(b)は、第2の実施の形態に係る蛍光体含有部材24の平面図及び断面図である。蛍光体含有部材24は、基板24aと、基板24aの表面上に形成された封止材24bと、封止材24bに封止された粒子状の蛍光体24cと、を有する。
【0064】
基板24aは、ミラー基板等の、表面が高い反射率を有する基板である。また、基板24aは、CuやAl等からなる熱伝導率の大きい放熱器に接続されることが好ましい。基板24aの平面形状は特に限定されない。
【0065】
封止材24bは、ガラス、SiO
2系、又はAl
2O
3系等の透明な無機材料からなる。このため、シリコーン等の有機材料からなる封止材と比べて、耐熱性に優れる。封止材24bの平面形状は、
図7(b)に示されるような四角形でもよいし、
図7(c)に示されるような円形でもよい。
【0066】
蛍光体24cは、第1の実施の形態に係る粒子状のYAG系又はLuAG系単結晶からなる蛍光体である。すなわち、組成式(Y
1−x−y−zLu
xGd
yCe
z)
3+aAl
5−aO
12(0≦x≦0.9994、0≦y≦0.0669、0.001≦z≦0.004、−0.016≦a≦0.315)で表される組成を有する単結晶からなる、粒径(D50)が20μm以上の粒子状の蛍光体である。
【0067】
また、蛍光体24cは、例えば、上記組成式のzが0.001≦z≦0.004であり、0.001〜0.004の間で連続的に分布している粒子状の蛍光体の群である。
【0068】
このため、蛍光体24cは、高温条件下での優れた発光特性を有し、高出力のレーザーダイオード22を励起光源として用いても、安定して効率よく蛍光を発することができる。
【0069】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態に係る単結晶蛍光体を用いたプロジェクターである。
【0070】
図8は、第3の実施の形態に係るプロジェクター30の構成を表す模式図である。プロジェクター30は、光源である青色のレーザーダイオード31と、レーザーダイオード31から発せられ、集光レンズ32を通過した青色光の一部を吸収して励起し、黄色の蛍光を発する蛍光体含有部材33と、蛍光体含有部材33から発せられる黄色の蛍光と蛍光体含有部材33に吸収されずに透過する青色光からなる白色光の進行方向を揃えるレンズ34と、レンズ34を通過した白色光のうち、青色光を透過させて、その他の光を反射するダイクロイックミラー35aと、ダイクロイックミラー35aに反射された光のうち、赤色光を透過させて、その他の色である緑色光を反射するダイクロイックミラー35bと、ダイクロイックミラー35aを透過した青色光を反射するミラー36aと、ダイクロイックミラー35bを透過した赤色光を反射するミラー36b、36cと、所望の画像を形成するように駆動制御され、ミラー36aに反射された青色光を所望のパターンで透過させる液晶パネル37aと、所望の画像を形成するように駆動制御され、ダイクロイックミラー35bに反射された緑色光を所望のパターンで透過させる液晶パネル37bと、所望の画像を形成するように駆動制御され、ミラー36cに反射された赤色光を所望のパターンで透過させる液晶パネル37cと、液晶パネル37a、37b、37cを透過した青色光、緑色光、及び赤色光を合成するプリズム38と、プリズム38に合成された光を拡げて、外部のスクリーン100に画像として照射するレンズ39と、を有する。
【0071】
レンズ34、ダイクロイックミラー35a、35b、ミラー36a、36b、36c、液晶パネル37a、37b、37c、プリズム38は、プロジェクター30における蛍光体含有部材33から発せられる蛍光及びレーザーダイオード31から発せられる光を加工して画像を形成する画像形成部である。すなわち、プロジェクター30は、この画像形成部が蛍光体含有部材33から発せられる蛍光を用いて形成した画像を、外部のスクリーン100に投影する。
【0072】
図9(a)、(b)は、第3の実施の形態に係る蛍光体含有部材33の平面図及び断面図である。蛍光体含有部材33は、円盤状の透明基板33aと、透明基板33aの表面上に、外周に沿って形成された環状の封止材33bと、封止材33bに封止された粒子状の蛍光体33cと、を有する。
【0073】
透明基板33aは、例えば、熱伝導率の大きいサファイアからなり、その円周方向に回転可能にプロジェクター30内に設置されている。
【0074】
封止材33bは、ガラス、SiO
2系、又はAl
2O
3系等の透明な無機材料からなる。このため、シリコーン等の有機材料からなる封止材と比べて、耐熱性に優れる。
【0075】
蛍光体33cは、第1の実施の形態に係る粒子状のYAG系又はLuAG系単結晶からなる蛍光体である。すなわち、組成式(Y
1−x−y−zLu
xGd
yCe
z)
3+aAl
5−aO
12(0≦x≦0.9994、0≦y≦0.0669、0.001≦z≦0.004、−0.016≦a≦0.315)で表される組成を有する単結晶からなる、粒径(D50)が20μm以上の粒子状の蛍光体である。
【0076】
また、蛍光体33cは、例えば、上記組成式のzが0.001≦z≦0.004であり、0.001〜0.004の間で連続的に分布している粒子状の蛍光体の群である。
【0077】
このため、蛍光体33cは、高温条件下での優れた発光特性を有し、高出力のレーザーダイオード31を励起光源として用いても、安定して効率よく蛍光を発することができる。
【0078】
また、プロジェクター30の動作時に蛍光体含有部材33が回転することにより、レーザーダイオード31から発せられる青色光の照射位置33dを経時的に変化させ、蛍光体含有部材33の熱の上昇を抑えることができるため、高温条件下での動作がより安定する。
【0079】
また、蛍光体33cは高温下での発光特性に優れるため、場合によっては、蛍光体含有部材33のような回転式の代わりに、固定式の蛍光体含有部材を用いることができる。このような使用方法は、高温下での発光特性に優れていなければ温度消光が生じるため、従来の多結晶蛍光体では用いることが困難である。
【0080】
また、このような固定式の蛍光体含有部材は、透明基板を用いた蛍光体含有部材33のような透過型であってもよいが、反射型であってもよい。反射型の蛍光体含有部材は、例えば、
図7に示される蛍光体含有部材24と同様の構造を有する。この場合、基板24aとして、AgやAl基板のような反射率の高い金属基板を用いることが好ましい。または、金属基板の表面に反射率の高いAg、Al系材料等によるコーティングがされていてもよい。
【0081】
なお、プロジェクター30においては、光源である発光素子としてレーザーダイオード31の代わりにLEDを用いてもよいが、光出力のレーザーダイオードを用いたときに、高温条件下での発光特性に優れるという蛍光体含有部材33の効果がより大きく発揮される。
【0082】
また、プロジェクター30は、蛍光体の黄色発光スペクトルを緑色スペクトルと赤色スペクトルに分光する方式のプロジェクターであるが、第1の実施の形態に係る単結晶蛍光体は、蛍光体の緑色発光スペクトルから直接緑色スペクトルを取り出す方式のプロジェクターにも適用することができる。また、第1の実施の形態に係る単結晶蛍光体は、プロジェクターの画像形成部の方式に依らず、適用することができる。
【0083】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態によれば、外部量子効率に優れ、かつ高温条件下における発光特性に優れるYAG系又はLuAG系単結晶からなる粒子状の蛍光体を得ることができる。また、この粒子状の蛍光体を用いることにより、動作性能や信頼性に優れた発光装置及びプロジェクターを製造することができる。
【0084】
また、上記実施の形態によれば、下記[1]、[2]の蛍光体、下記[3]の蛍光体含有部材、下記[4]、[5]の発光装置、下記[6]、[7]のプロジェクター、下記[8]、[9]の蛍光体の製造方法を提供することができる。
【0085】
[1]引き上げ法により育成された単結晶蛍光体インゴットを粉砕することにより得られた単結晶蛍光体粒子の群で構成される蛍光体であって、
各々の前記単結晶蛍光体粒子が組成式(Y
1−x−y−zLu
xGd
yCe
z)
3+aAl
5−aO
12(0≦x≦0.9994、0≦y≦0.0669、0.001≦z≦0.004、−0.016≦a≦0.315)で表される組成を有し、
前記単結晶蛍光体粒子の群において、前記組成式のzが、0.001以上0.004以下の範囲で連続的に分布している、蛍光体。
【0086】
[2]各々の前記単結晶蛍光体粒子の前記組成式のzは、0.0015≦z≦0.0035であり、
前記単結晶蛍光体粒子の群において、前記組成式のzが、0.0015以上0.0035以下の範囲で連続的に分布している、上記[1]に記載の蛍光体。
【0087】
[3]上記[1]又は[2]に記載された蛍光体と、
前記蛍光体を封止する透明な無機材料からなる封止部材、又は前記蛍光体の粒子同士を接合する無機材料からなるバインダーと、
を有する、蛍光体含有部材。
【0088】
[4]上記[1]又は[2]に記載された蛍光体、及び前記蛍光体を封止する透明な無機材料からなる封止部材又は前記蛍光体の粒子同士を接合する無機材料からなるバインダーを有する、蛍光体含有部材と、
前記蛍光体を励起させるための青色光を発する発光素子と、を有する、発光装置。
【0089】
[5]前記発光素子はレーザーダイオードである、
上記[4]に記載の発光装置。
【0090】
[6]上記[1]又は[2]に記載された蛍光体、及び前記蛍光体を封止する透明な無機材料からなる封止部材又は前記蛍光体の粒子同士を接合する無機材料からなるバインダーを有する、蛍光体含有部材と、
前記蛍光体を励起させるための青色光を発する発光素子と、
前記蛍光体含有部材から発せられた蛍光を用いて画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部が形成した前記画像を外部の投影面に投影するレンズと、
を有する、プロジェクター。
【0091】
[7]前記発光素子はレーザーダイオードである、
上記[6]に記載のプロジェクター。
【0092】
[8]引き上げ法により育成された単結晶蛍光体インゴットを粉砕し、各々が組成式(Y
1−x−y−zLu
xGd
yCe
z)
3+aAl
5−aO
12(0≦x≦0.9994、0≦y≦0.0669、0.001≦z≦0.004、−0.016≦a≦0.315)で表される組成を有する単結晶蛍光体粒子の群からなる蛍光体を形成する工程を含み、
前記単結晶蛍光体粒子の群の前記組成式のzが、0.001以上0.004以下の範囲で連続的に分布している、蛍光体の製造方法。
【0093】
[9]各々の前記単結晶蛍光体粒子の前記組成式のzが0.0015≦z≦0.0035であり、
前記単結晶蛍光体粒子の群において、前記組成式のzが、0.0015以上0.0035以下の範囲で連続的に分布している、
上記[8]に記載の蛍光体の製造方法。
【実施例1】
【0094】
本実施例において、上記第1の実施の形態に係る単結晶蛍光体インゴット16のCe濃度分布を調べた。
【0095】
次の表1は、CZ法により育成された、YサイトにLuを含む単結晶蛍光体インゴット16における、種結晶15との界面からの育成方向に平行な方向の距離と、Ce濃度を表す組成式のzの値、CIE色度のx座標、及びCIE色度のy座標との関係を示す。
【0096】
【表1】
【0097】
表1は、種結晶15との界面からの距離が大きくなるほどCe濃度が増加し、また、蛍光色が緑色側から黄色側にシフトすることを示している。
【実施例2】
【0098】
本実施例において、
図7(a)、(b)に示される形態の蛍光体含有部材の発光特性の温度依存性を調べた。
【0099】
本実施例に係る蛍光体含有部材においては、基板としてAl基板が用いられ、封止材としてSiO
x系の無機封止材が用いられ、蛍光体として、粒径(D50)がおよそ60μmである、第1の実施の形態に係る粒子状の単結晶蛍光体が用いられている。
【0100】
図10は、実施例2に係る評価光学系の構成を示す模式図である。この評価光学系は、光源である青色のレーザーダイオードアレイ41と、レーザーダイオードアレイ41から発せられて集光レンズ42を通過した青色光の一部を吸収して励起し、黄色の蛍光を発する蛍光体含有部材43と、蛍光体含有部材43から発せられる黄色の蛍光と蛍光体含有部材43に吸収されずに反射される青色光からなる白色光のうち、青色光を透過させて、黄色の蛍光を反射するダイクロイックミラー44と、黄色光を受光して光電流を発生させるフォトダイオード45と、ダイクロイックミラー44で反射された光のみをフォトダイオード45に受光させるための遮光板46と、を有する。
【0101】
図11(a)は、蛍光体含有部材43中の蛍光体に従来のYAG系多結晶蛍光体を用いた場合の、レーザーダイオードアレイ41の出力と、封止材の厚さの異なる3種の蛍光体含有部材43の封止された蛍光体の表面温度との関係を示すグラフである。
【0102】
図11(b)は、蛍光体含有部材43中の蛍光体に従来のYAG系多結晶蛍光体を用いた場合の、レーザーダイオードアレイ41の出力と、封止材の厚さの異なる3種の蛍光体含有部材43の蛍光強度との関係を示すグラフである。
【0103】
ここで、
図11(a)、(b)に係る従来のYAG系多結晶蛍光体の粒径(D50)は、15μmである。また、3種の蛍光体含有部材43の封止材の厚さは、53μm、100μm、149μmである。
【0104】
図12(a)は、蛍光体含有部材43中の蛍光体に第1の実施形態のYAG系単結晶蛍光体(蛍光体単結晶インゴットの組成が(Y
0.6462Lu
0.3528Ce
0.0010)
3.177Al
4.823O
x〜(Y
0.6870Lu
0.3109Ce
0.0021)
3.130Al
4.870O
xの範囲で分布している領域を粉砕して得られたもの)を用いた場合の、レーザーダイオードアレイ41の出力と、封止材の厚さの異なる3種の蛍光体含有部材43の封止された蛍光体の表面温度との関係を表すグラフである。
【0105】
図12(b)は、蛍光体含有部材43中の蛍光体に第1の実施形態のYAG系単結晶蛍光体(蛍光体単結晶インゴットの組成が(Y
0.6462Lu
0.3528Ce
0.0010)
3.177Al
4.823O
x〜(Y
0.6870Lu
0.3109Ce
0.0021)
3.130Al
4.870O
xの範囲で分布している領域を粉砕して得られたもの)を用いた場合の、レーザーダイオードアレイ41の出力と、封止材の厚さの異なる3種の蛍光体含有部材43の蛍光強度との関係を表すグラフである。
【0106】
ここで、
図12(a)、(b)に係るYAG系単結晶蛍光体の粒径(D50)は、20μmである。また、3種の蛍光体含有部材43の封止材の厚さは、77μm、101μm、162μmである。
【0107】
図11(a)と
図12(a)を比較すると、レーザーダイオードアレイ41の出力に対する蛍光体の表面温度上昇の傾きは、従来のYAG系多結晶蛍光体よりも第1の実施形態のYAG系単結晶蛍光体の方が小さい(すなわち熱抵抗が小さい)ことがわかる。
【0108】
また、従来のYAG系多結晶蛍光体は、表面温度が概ね100〜150℃を超えると、内部量子効率の低下に伴い、温度上昇の傾きが大きくなるのに対し、第1の実施形態のYAG系単結晶蛍光体は、概ね200℃程度まで、温度上昇の傾きがほぼ一定である。
【0109】
これらの結果として、
図11(b)と
図12(b)に示されるように、従来のYAG系多結晶蛍光体の蛍光強度の最大値が、封止材の厚さが53μmのときの29であったの対して、第1の実施形態のYAG系単結晶蛍光体の蛍光強度の最大値は、封止材の厚さが101μmのときの39であった。なお、封止材の厚さが77μmであるときの第1の実施形態のYAG系単結晶蛍光体の蛍光強度は、レーザーダイオードアレイ41の出力が78Wまで上昇しても飽和しておらず、より高い蛍光強度が得られることが期待される。
【0110】
本発明は、上記の実施の形態及び実施例に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。例えば、第2の実施の形態においては、第1の実施の形態の蛍光体と発光素子を用いた発光装置として、ヘッドライトを一例として挙げたが、発光装置はこれに限定されるものではない。
【0111】
また、上記の実施の形態及び実施例において用いられている粒子状の蛍光体を封止する封止材の代わりに、蛍光体の粒子同士を接合させるバインダーを用いてもよい。バインダーにより接合された蛍光体の粒子は、上記の実施の形態及び実施例における反射型の蛍光体含有部材として用いられる場合には、ミラー基板等の表面が高い反射率を有する基板上に設置される。また、バインダーにより接合された蛍光体の粒子は自立可能な強度を有するため、透過型の蛍光体含有部材として用いられる場合には、平板状に接合された状態で、単体で用いられることができる。ただし、放熱のために、サファイア基板等の熱伝導率の大きい透明基板上に設置されてもよい。バインダーは、SiO
2系あるいはAl
2O
3系等の無機材料からなる。
【0112】
また、上記の実施の形態及び実施例は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。