特許第6871670号(P6871670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6871670-水頭圧式食品加熱装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871670
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】水頭圧式食品加熱装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/14 20060101AFI20210426BHJP
   A23L 7/109 20160101ALN20210426BHJP
【FI】
   A47J27/14 J
   !A23L7/109 K
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-182066(P2019-182066)
(22)【出願日】2019年10月2日
(65)【公開番号】特開2021-53297(P2021-53297A)
(43)【公開日】2021年4月8日
【審査請求日】2020年5月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】沖山 丈嗣
【審査官】 川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−076367(JP,A)
【文献】 特公昭42−021721(JP,B1)
【文献】 特公昭49−035434(JP,B1)
【文献】 特開昭60−198114(JP,A)
【文献】 特開昭60−207558(JP,A)
【文献】 特開平09−285282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14−27/18
A23L 3/00−3/3598
A23L 5/00−5/30
A23L 29/00−29/10
A23L 7/109−7/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃よりも高い温度の高温水を貯留する本槽と、前記本槽と連通し前記本槽内の水に所要の水頭圧を付与する高さを有し上面が開放されている前予備槽および後予備槽とを備え、前記本槽と前記前予備槽および前記本槽と前記後予備槽とのそれぞれの間に設けられ前記本槽の天板よりも高い位置に天板を有する非密封状態の前連通室および後連通室と、前記本槽と前記前予備槽および前記本槽と前記後予備槽との間をそれぞれ隔てて上端が前記本槽の天板よりも高い位置にあるように前記前連通室内または前記後連通室内に上記上端が突出して設けられる一対の断熱隔壁と、前記前連通室および前記後連通室よりも高い位置に設けられ上面が前記前予備槽内および前記後予備槽内の水面よりも高い位置にある排水槽と、前記前連通室および前記後連通室の各天板にそれぞれ入口開口を有し前記排水槽内の前記前予備槽内および前記後予備槽内の水面よりも高い位置に出口開口を有する一対の排圧配管と、を含んでなる水頭圧式食品加熱装置。
【請求項2】
前記排圧配管の途中に突沸を抑えるために給水する給水口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の水頭圧式食品加熱装置。
【請求項3】
前記前連通室と前記後連通室の何れかに設けられ所定の突沸温度を検出する温度センサと、前記温度センサが前記所定の突沸温度を検出したときには前記排圧配管の途中に設けられた給水口から給水するように給水装置を作動させる制御装置と、を含んでなる請求項2に記載の水頭圧式食品加熱装置。
【請求項4】
前記前連通室と前記後連通室にそれぞれ設けられ所定の突沸温度を検出する複数の温度センサと、前記前連通室に設けられた前記温度センサが前記所定の突沸温度を検出したときには前記前連通室側の前記排圧配管の途中に設けられた給水口から給水し、前記後連通室に設けられた前記温度センサが前記所定の突沸温度を検出したときには前記後連通室側の前記排圧配管の途中に設けられた給水口から給水するように給水装置を作動させる制御装置と、を含んでなる請求項2に記載の水頭圧式食品加熱装置。
【請求項5】
前記本槽と前記前予備槽と前記後予備槽をそれぞれ独立して加熱する加熱装置と、前記本槽と前記予備槽と前記後予備槽のそれぞれに設けられ所定の突沸温度を検出する複数の温度センサと、複数の前記温度センサの何れかが前記所定の突沸温度を検出したときには前記本槽と前記前予備槽と前記後予備槽の加熱を停止するように前記加熱装置を動作させる制御装置と、を含んでなる請求項1に記載の水頭圧式食品加熱装置。
【請求項6】
前記前予備槽および前記後予備槽のそれぞれに冷水または上水を供給するための供給配管が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の水頭圧式食品加熱装置。
【請求項7】
前記前予備槽に設けられ前記前予備槽の水位を規定するオーバーフロー排出口と、前記後予備槽に設けられ前記後予備槽に差し水を供給する給水口と、を含んでなる請求項1に記載の水頭圧式食品加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の加熱を連続して行なう食品加熱装置に関する。特に、100よりも高い温度の水によって食品の加熱を連続して行なう水頭圧式食品加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水頭圧式食品加熱装置は、水頭圧を利用して100℃よりも高い温度の水によって、麺、レトルト食品、缶詰のような食品を加熱する装置である。高温による加熱は、食品の種類によって食感を向上できる場合があり、あるいは、加熱時間の短縮によって品質の低下を抑えることができるので、例えば、茹麺や殺菌に利用されている。以下の説明において、特段のことわりがない限り、100℃を超える温度を「高温」といい、100℃を超える温度の水を「高温水」という。また、一般的に湯と称される状態の水を含めて、単に「水」という。
【0003】
水頭圧式食品加熱装置においては、本槽の水面上と本槽に隣接する前予備槽および後予備槽の各水面上とにわたって蒸気の層が形成されるが、蒸気の層が水頭圧によって薄くなるので、本槽の高温水の熱が各予備槽の水に伝達しやすく、本槽と各予備槽との間の断熱性が比較的低い。そのため、各予備槽において、相対的に短時間内に低い温度の水を貯留することができなくなる。
【0004】
特許文献1は、高温水を貯留する本槽と、本槽の高温水の温度よりも低い温度の水を貯留する前予備槽および後予備槽との間を連通室で接続して、連通室に加圧気体または加圧液体の加圧流体を供給する構成の水頭圧式食品加熱装置を開示している。特許文献1の発明の食品加熱装置によると、連通室内の加圧流体が断熱の機能を有し、本槽と各予備槽との間の断熱性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019−76367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
連通室に加圧流体を供給して断熱する構成の水頭圧式食品加熱装置においては、連通室が実質的に密閉されている圧力容器と同じ強固な構造を有し比較的大型である。圧力容器は規制の対象であるので、製造に所定の資格が要求されるとともに、規定の定期点検を行なう必要がある。そのため、製造コストとランニングコストが高くなる。
【0007】
また、上記水頭圧式食品加熱装置は、断熱性に優れるものの、本槽内の高温水が徐々に連通室に流入し、断熱のための加圧流体と混合して加圧流体の温度が上昇することを避けることができず、時間の経過と共に予備槽内の水温が上昇する。長時間の運転を可能にするためには、低い温度の水を供給して予備槽内の水の温度を下げる必要がある。このとき、連通室において対流が生じて冷却のための比重が小さい低い温度の水が少なからず本槽に混入するので、本槽内の下層に位置する水の温度が高温水として要求される温度を下回る。その結果、加熱効率が低下する。
【0008】
加えて、少しずつ発生し続ける蒸気が本槽から連通室に流入するが、長時間の運転によって連通室内の気圧が上昇して蒸気を留めることができなくなると、高圧の蒸気が予備槽に流れ込んでしまって、予備槽の上側の開放部位から噴き上がるおそれがある。このとき、蒸気圧による見かけ上の容量の増大を低減するために、本槽と連通室の排気を行なうと、加圧流体による断熱効果が低下するので、運転を中断しなければならないおそれがある。また、排気の作業が簡単ではないので、作業者の負担が大きくなる。
【0009】
このようないくつかの改善するべき点は、連通室に加圧流体を供給して断熱する技術思想を有する水頭圧式食品加熱装置の優位性を失わせるものではないが、食品加熱装置の導入を促進する上では、さらなる改良が望まれる。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みて、比較的構成が簡単でより長時間の連続運転を可能にする水頭圧式食品加熱装置を提供すること主たる目的とする。その他の本発明のいくつかの有利な点は、本発明の実施な形態の説明において、その都度詳しく示される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の水頭圧式食品加熱装置は、上記課題を解決するために、100℃よりも高い温度の高温水を貯留する本槽(10)と、本槽(10)と連通し本槽(10)内の水に所要の水頭圧を付与する高さを有し上面が開放されている前予備槽(20)および後予備槽(30)とを備え、本槽(10)と前予備槽(20)および本槽(10)と後予備槽(30)とのそれぞれの間に設けられ本槽(10)の天板(10A)よりも高い位置に天板(40A,50A)を有する前連通室(40)および後連通室(50)と、本槽(10)と前予備槽(20)および本槽(10)と後予備槽(30)との間をそれぞれ隔てて上端(12)が本槽(10)の天板(10A)よりも高い位置にあるように前連通室(40)内と後連通室(50)内に上端(12)が突出して設けられる一対の断熱隔壁(11)と、前連通室(40)および後連通室(50)よりも高い位置に設けられ上面が前予備槽(20)内および後予備槽(30)内の水面(L1)よりも高い位置にある排水槽6と、前連通室(40)および後連通室(50)の各天板(40A,50A)にそれぞれ入口開口を有し排水槽(6)内の前予備槽(20)内および後予備(30)槽内の水面(L1)よりも高い位置に出口開口を有する一対の排圧配管(7)と、を含んでなるようにする。
【0012】
上記水頭圧式食品加熱装置は、排圧配管(7)の途中に突沸を抑えるために給水する給水口(F1,F2)が設けられる。
【0013】
特に、上記水頭圧式食品加熱装置は、前連通室(40)と後連通室(50)の何れかに設けられ所定の突沸温度を検出する温度センサ(8G,8H)と、温度センサ(8G,8H)が所定の突沸温度を検出したときには排圧配管(7)の途中に設けられた給水口(F1,F2)から給水するように給水装置(3)を作動させ制御装置(4)と、を含んでなる。また、前連通室(40)と後連通室(50)にそれぞれ設けられ所定の突沸温度を検出する複数の温度センサ(8G,8H)と、前連通室(40)に設けられた温度センサ(8G)が所定の突沸温度を検出したときには前連通室(40)側の排圧配管(7A)の途中に設けられた給水口(F1)から給水し、後連通室(50)に設けられた温度センサ(8H)が所定の突沸温度を検出したときには後連通室(50)側の排圧配管(7B)の途中に設けられた給水口(F2)から給水するように給水装置(2)を作動させる制御装置と、を含んでなる。
【0014】
また、上記水頭圧式食品加熱装置は、本槽(10)と前予備槽(20)と後予備槽(30)をそれぞれ独立して加熱する加熱装置(2)と、本槽(10)と前予備槽(20)と後予備槽(30)のそれぞれに設けられ所定の突沸温度を検出する複数の温度センサ(8D,8E,8F)と、複数の前記温度センサ(8D,8E,8F)の何れかが所定の突沸温度を検出したときには本槽(10)と前予備槽(20)と後予備槽(30)の加熱を停止するように加熱装置(2)を動作させる制御装置(4)と、を含んでなる。
【0015】
また、上記水頭圧式食品加熱装置は、前予備槽(20)および後予備槽(30)のそれぞれに冷水または上水を供給するための給水口(F4,F5)が設けられる。
【0016】
また、上記水頭圧式食品加熱装置は、前予備槽(20)に設けられ前予備槽(30)の水位を規定するオーバーフロー排出口(20A)と、後予備槽(30)に設けられ後予備槽(30)に差し水を供給する給水口(F3)と、を含んでなる。

【0017】
括弧内の符号は、図中の符号と一致する。ただし、括弧内の符号は、本発明をより理解しやすくするために、説明の便宜上付されたものであって、本発明を図に示される具体的な実施の形態の水頭圧式食品加熱装置に限定するものではない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の水頭圧式食品加熱装置は、水頭圧により高温水による加熱処理を連続的に行なうことができる。このとき、連通室に排圧配管を設けて連通室の過剰な圧力を開放するようにすることによって、実質的に密封されていない構成としたので、圧力容器の規制の対象外である。そのため、比較的構造が簡単で小型であり、コストを低減できる。また、各槽の水位で圧力の制御を行なうので、取扱いが容易である。
【0019】
本発明の食品加熱装置は、加圧流体を使わずに、高温水と低温水または温水との比重差を利用して高温水の層と低温水または温水の層とを分離形成させることによって、連続的に被加熱食品の加熱と冷却を行なうことができるようにしたので、例えば、被加熱食品がうどんであるときには、麺の中心までもちもちとした粘りのある食感に茹で上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の全体の構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の水頭圧式食品加熱装置の典型的な実施の形態をブロック図で示す。図1に示される実施の形態の食品加熱装置において、「前」は、方法として加熱処理の前処理工程を示し、装置として食品加熱装置の全体の被加熱食品を加熱槽に導入する側面側をいい、「後」は、方法として加熱処理の工程の後処理工程を示し、装置として食品加熱装置の全体の被加熱食品を加熱槽から取り出す側面側をいう。以下、図1を参照して、本発明の食品加熱装置の実施の形態をより詳しく説明する。
【0022】
実施の形態の食品加熱装置は、加熱槽1と、加熱装置2と、給水装置3と、制御装置4と、食品搬送装置5とを含んでなる。加熱槽1は、本槽10と、前予備槽20と、後予備槽30と、前連通室40と、後連通室50とからなる。本槽10と前予備槽20との間に前連通室40が設けられ、本槽10と後予備槽30との間に後連通室50が設けられる。また、加熱槽1の本槽10の上側に排水槽6が設置されている。加熱槽1と排水槽6との間は、複数の排圧配管7で接続されている。
【0023】
本槽10は、100℃よりも高い温度の高温水を貯留する。前予備槽20は、上面が開放されている。前予備槽20は、前連通室40を介在して本槽10と連通し本槽10内の水に要求される水頭圧を付与する高さを有する。後予備槽30は、上面が開放されている。後予備槽30は、後連通室50を介在して本槽10と連通し本槽10内の水に要求される水頭圧を付与する前予備槽20と同じ高さを有する。図1に示すように、前予備槽20および後予備槽30のそれぞれに、第4の供給口F4および第5の供給口F5をそれぞれ有する、冷水または上水を供給するための供給配管が設けられている。
【0024】
前連通室40は、本槽10と前予備槽20との間に設けられる。前連通室40は、本槽10の天板10Aよりも高い位置に天板40Aを有する。後連通室50は、本槽10と後予備槽30との間に設けられる。後連通室50は、本槽10の天板10Aよりも高い位置であって前連通室40の天板40Aと同じ高さの天板50Aを有する。
【0025】
加熱槽1に一対の断熱隔壁11が設けられる。前側断熱隔壁11Aは、本槽10と前予備槽20との間を隔てて上端12Aが本槽10の天板10Aよりも高い位置にあるように前連通室40内に上端12Aが突出して設けられる。したがって、前側断熱隔壁11Aは、前予備槽20の水が本槽10との間で直接流通することなく前連通室40を迂回して本槽10に流入するように形成されている。
【0026】
後側断熱隔壁11Bは、本槽10と予備槽0との間を隔てて上端12Bが本槽10の天板10Aよりも高い位置にあるように後連通室50内に上端12Bが突出して設けられる。したがって、後側断熱隔壁11Bは、後予備槽30の水が本槽10との間で直接流通することなく後連通室50を迂回して本槽10に流入するように形成されている。
【0027】
排水槽6は、前連通室40および後連通室50よりも高い位置に設けられる。排水槽6は、上面6Aが前予備槽20内および後予備槽30内の最高水位であるときの水面L1よりも高い位置にある。実施の形態の食品加熱装置においては、排水槽6は、上面6Aの位置が前予備槽20と後予備槽30の上面の高さ位置以上にあるように設置される。
【0028】
前予備槽20には、貯留する水を溢出させて前予備槽20の水位を水面L1に規定制限するためのオーバーフロー排出口20Aが設けられている。実質的に、加熱槽1の全体の水位もオーバーフロー排出口20Aの高さに制限される。排水槽6の槽底は、前予備槽20のオーバーフロー排出口20Aの高さ位置よりも低い位置にあり、底面と同じ高さのドレイン6Bが設けられている。
【0029】
一対の排圧配管7は、前連通室40と排水槽6との間に設けられる前連通室40側の第1の排圧配管7Aと、後連通室50と排水槽6との間に設けられる後連通室50側の第2の排圧配管7Bとでなる。第1の排圧配管7Aは、前連通室40の天板40Aに入口開口を有し排水槽6内の前予備槽20内および後予備槽30内の水面L1よりも高い位置、言い換えると、オーバーフロー排出口20Aよりも高い位置に出口開口を有する。第2の排圧配管7Bは、後連通室50の天板50Aに入口開口を有し排水槽6内の前予備槽20内および後予備槽30内の水面L1よりも高い位置に出口開口を有する。
【0030】
第1の排圧配管7Aと第2の排圧配管7Bは、共に排水槽6の底板を貫通して、排水槽6の中に出口開口が位置するように設置される。各出口開口は、完全に塞がれないように遮蔽材によって覆われる。第1の排圧配管7Aの途中には、突沸を抑えるために給水する第1の給水口F1が設けられ、第2の排圧配管7Bの途中には突沸を抑えるために給水する第2の給水口F2が設けられている。前連通室40または後連通室50の高圧蒸気は、一対の排圧配管7を通って出口開口から噴出する。蒸気が水になったときは、水は、一旦排水槽6に回収され、ドレイン6Bから排出槽6の外に排出される。
【0031】
後予備槽30の上面側には、第3の給水口F3が設けられている。第3の給水口F3は、加熱槽1の主給水口である。加熱槽1が空のときには、主に第3の給水口F3から上水を供給する。また、第3の給水口F3は、後予備槽30に差し水を供給する。例えば、加熱槽1の水が蒸して減水し加熱槽1の水量が不足するときには、適宜第3の給水口F3から差し水を供給することによって加熱槽1に上水を補充して、加熱槽1の水量を保持する。
【0032】
実施の形態の食品加熱装置においては、作業者が給水するように示されているが、制御装置によって自動的に給水し補充するようにすることができる。なお、90℃以上100℃以下の中高温域の水を貯留するように運用されることが多い前予備槽20にオーバーフロー排出口20Aを設け、低温水を貯留するように運用されることが多い後予備槽30に第3の給水口(主給水口)L3を設けるようにしているので、加熱槽1の温度変化が小さく抑えられている。
【0033】
加熱槽1に設けられる複数の温度センサ8は、各槽の水の温度を検出する温度調整用の温度センサ8A,8B,8Cと、突沸検出用の温度センサ8D,8E,8F,8G,8Hと、がある。温度調整用の温度センサ8A,8B,8Cは、温度を検出信号として制御装置4に出力し続ける。突沸検出用の温度センサ8D,8E,8F,8G,8Hは、閾値となる設定温度を予め決められている突沸温度として、所定の突沸温度を検出したときに制御装置4に検出信号を出力する。
【0034】
実施の形態の食品加熱装置においては、温度調整用の温度センサ8A,8B,8Cは、水槽内の平均的な温度を検出できるように、それぞれ本槽10と前予備槽20と後予備槽30との各槽の中位に可能な限り近い位置に設置される。
【0035】
突沸検出用温度センサ8D,8E,8Fは、水槽内で突沸が発生したことを検出できるように、それぞれ本槽10と前予備槽20と後予備槽30との各水槽の底面に可能な限り近い位置に設置される。突沸検出用の温度センサ8G,8Hは、各連通室内で突沸が発生したことを検出できるように、それぞれ前連通室40と後連通室50との各連通槽の上面近くに設けられる。
【0036】
加熱装置2は、本槽10と前予備槽20と後予備槽30をそれぞれ独立して加熱することができる。加熱装置2は、複数の加熱ユニット2A,2B,2Cと、加熱装置2の中に含まれ図示しない加熱源を含んでなる。加熱ユニット2Aは、本槽10の底面側に設けられる。加熱ユニット2Bは、前予備槽20の底面側に設けられる。加熱ユニット2Cは、後予備槽30の底面側に設けられる。温度センサ8D,8E,8Fの何れかが所定の突沸温度を検出したときは、制御装置4は、加熱源を操作して本槽10と前予備槽20と後予備槽30の加熱を停止するように加熱装置2を動作させる。
【0037】
加熱装置2は、蒸気式あるいは電熱式の加熱器である。蒸気式の加熱器と電気式の加熱器の2種類の加熱器を同時に設置して、加熱する目的に対応して2種類の加熱器を同時に稼働するようにし、あるいは交代で稼働するように使い分けるようにすることができる。蒸気式の加熱器は、例えば、加熱源がボイラである。あるいは、電気式の加熱器は、例えば、加熱源は、電源と熱交換器である。
【0038】
給水装置3は、図示しない水源の冷却水または上水を複数の給水口F1ないしF5から供給する。必要に応じて、加熱装置2または冷却装置を通して温度調整された水を供給するようにすることができる。例えば、冷却装置に水道水を供給して所定の温度に冷却し、冷却水を第4の給水口F4または第5の給水口F5から供給する。
【0039】
食品搬送装置5は、無端のチェーン5Aと、速度制御可能なモータのような不図示の駆動源に接続される1以上の駆動スプロケット5Bと、食品を収容するためのチェーン5Aに均一な所定の間隔で設けられる不図示のバケットと、被加熱食品をバケットに投入するシュート5Cと、バケットから被加熱食品を取り出すシュート5Dとを含む。
【0040】
以下に、図1に示される実施の形態の食品加熱装置の動作を説明する。空の状態の加熱槽1を満水にするために給水する上水は、制御装置4の操作盤から不図示のバルブを操作して第3の給水口F3から供給される。望ましくは、後予備槽30に水位を検出する液面センサを設けて、加熱槽1が満水になったときに自動で給水を停止するようにする。給水の時間を短縮するために、第4の給水口F4と第5の給水口F5から同時に上水を供給するようにすることができる。
【0041】
加熱槽1の水を加熱するときは、制御装置4によって加熱装置2を作動させて加熱槽1の各槽を加熱する。実施の形態の食品加熱装置は、様々な形態で運用できる。例えば、本槽10の水を100℃超の高温にして、前予備槽20と後予備槽30の水を共に常温ないし冷却水(以下、常温を含めて低温水という)にしたり、前予備槽20または後予備槽30の一方の水を100℃以下の熱水(以下、温水という)にしたり、または、前予備槽20と後予備槽30の水を共に温水にして、食品加熱装置を稼働させることができる。
【0042】
温度調整用の温度センサ8A,8B,8Cから出力される検出信号によって加熱槽1の各槽の水温を測定している制御装置4は、各槽の水温がそれぞれ所定の温度に達したときに、チェーン5Aを駆動して、被加熱食品をシュート5Cからバケットに所定のタイミングで連続的に投入する。
【0043】
例えば、前予備槽20に98℃の温水を貯留し、後予備槽30に25℃の低温水を貯留して、水頭圧によって本槽10に110℃の高温水を貯留するようにすることができる。例えば、被加熱食品が生うどんである場合は、より短時間に食感よく茹で上げることができる。このとき、前後の連通室を含めて加熱槽1の全体が実質的に開放型であるとともに、突沸を抑制する構成を有しているので、後予備槽30において低温水でうどんを締めるときに、うどんが破裂するように破損するおそれがない。
【0044】
制御装置4は、食品加熱装置が稼働している期間中に常時複数の温度センサ8から出力される検出信号をモニタリングしており、所定のタイミングで加熱装置2と給水装置3を制御操作して加熱槽1の本槽10と前予備槽20と後予備槽30との各槽の水温を所定の温度に維持している。例えば、前予備槽20の水温が所定の温度である98℃よりも1℃程度下がったときに、制御装置4が加熱装置2を作動して加熱ユニット2Bの温度を上げる。また、例えば、予備槽0の水温が所定の温度である25℃よりも1℃上昇したときは、5℃の低温水を供給して温度を下げる。
【0045】
加熱槽1の水の蒸によって水位が下がったときは、第3の給水口F3から差し水を供給する。第3の給水口F3、前予備槽20の第4の給水口F4、または後予備槽30の第5の給水口F5から給水して加熱槽1の水量が所定量を超えたときは、前予備槽20の水位が上昇して前予備槽20のオーバーフロー排出口20Aから余剰の水が排出される。
【0046】
例えば、被加熱食品が生うどんであるとき、食品搬送装置5のバケット内のうどん玉は、前予備槽20において98℃まで加熱される。バケットは、前予備槽20から前連通室40を通って本槽10に入り、110℃の高温水で茹で上げられる。このように、前予備槽20において、被加熱食品を予備的に加熱することによって、高温水で急激に加熱することがない。
【0047】
被加熱食品毎に理想の加熱温度と加熱時間が判っており、例えば、あるうどんの望ましい茹で時間に対応した速度でバケットが本槽10を通過し、後連通室50を通って後予備槽30に入る。低温水が貯留されている後予備槽30を所定の速度で通るバケットの中の茹で上げられた直後のうどん玉は、あたかも冷水で洗い流されるようにして締められる。
【0048】
加熱ユニット2Aによって前予備槽20および後予備槽30に対して独立して局所的に加熱される本槽10の中の水は、前予備槽20と後予備槽30の高さに相応する水頭圧が加えられているので、100℃を超える高温になる。このとき、高温水の比重が低温水や温水よりも小さいので、本槽10の高温水は、対流によって本槽10よりも上位に位置する前連通室40と後連通室50に徐々に流入する。
【0049】
前連通室40の下位には、槽10と前予備槽20との間を隔てる前側断熱隔壁11Aが設けられ、後連通室50の下位には、本槽10と後予備槽30との間を隔てる後側断熱隔壁10Bが設けられている。前側断熱隔壁11Aと後側断熱隔壁11Bは、それぞれ前連通室40の内壁40Wと後連通室50の内壁50Wよりも高くなっており、いわゆるラビリンス構造を形成している。
【0050】
したがって、例えば、後予備槽30が低温水槽になっている場合は、本槽10における対流によって本槽10から後連通室50に徐々に流入する高温水は、後予備槽30の中の低温水との比重差によって上層に留まる。そのため、後予備槽30と後連通室50との継目に当たる後側断熱隔壁11Bと後連通室50とによって囲まれているところに高温水と低温水の境界面L2が存在し、境界面L2においてのみ高温水と低温水との間で熱交換が生じる。その結果、前予備槽20または後予備槽30が低温水槽であるときは、低温水の温度が保持される。
【0051】
食品加熱装置を相当の長時間運転すると、例えば、前予備槽20の温度が上昇し続けて、遂には境界面が前予備槽20と前連通槽40との間で流路に沿って側面方向に広がっていくが、高温水と温水との比重差によって、前予備槽20に流入した高温水は、前予備槽20の内壁面に沿って上昇する。このような現象が発生すると、高温水は、温水よりも先にオーバーフロー排出口20Aに到達するので、温水よりも早く高温水が排出される。そのため、前予備槽20の水温は、加熱ユニット2Bで短時間加熱するだけで水温を維持することができる程度にしか変化しない。
【0052】
一方、後予備槽30においては、蒸した水を補給するために第3の給水口F3から差し水として低温水が供給されており、後予備槽30の水温の上昇が抑えられている。このとき、注ぎ足した水量に相応して前予備槽20と後予備槽30の水位が平均的に上昇するので、余剰の水は、前予備槽20のオーバーフロー排出口20Aから排出される。その結果、水位と水温は維持されて、最大水頭圧は変わらない。
【0053】
なお、差し水の注水によって見かけ上の水位が上昇するとき、圧力によって高温水と低温水の境界面L2が上昇し、後側断熱隔壁11Bを超えて低温水が本槽10に流入する可能性がある。このときは、本槽10において高温水の水量が増加したようになるので、高温水が前連通室40の方向に押し出されて前連通室40における高温水と温水の境界面を押し下げるが、高温水は、依然としてオーバーフロー排出口20Aから積極的に排出され続けるので、前予備槽20の水温は維持される。
【0054】
ところで、前連通室40の天板(上面)40Aと後連通室50の天板(上面)50Aが本槽10の天板10Aよりも高い位置に配置されているので、前連通室40と後連通室50の室内における水圧が本槽10の中の水圧よりも低い状態にある。本槽10の水が高温であることによって生じる対流によって高温水が前連通室40および後連通室50に流入すると、水温が100℃を超えている状態で水圧が一気に低下するため、急激に水蒸気が発生する。その結果、水蒸気が噴き出す突沸現象が発生するおそれがある。
【0055】
実施の形態の食品加熱装置においては、前連通室40の天板(上面)40Aと後連通室50の天板(上面)50Aそれぞれ入口開口を有する一対の排圧配管7が設けられているので、突沸現象が発生したときは、噴出する水蒸気が上昇して排圧配管7の中に逃れて、排圧配管7の出口開口から排出される。出口開口から出る水蒸気は、水蒸気の飛散を防止する排水槽6に回収される。そして、水蒸気が冷えてできた水は、ドレイン6Bから排出される。
【0056】
このとき、排圧配管7の中は、水が充満している。制御装置4は、複数の突沸検出用の温度センサ8G,8Hの検出信号に基づいて突沸が発生したときには、必要に応じて排圧配管7Aの第1の給水口F1または排圧配管7Bの第2の給水口F2から低温水を供給する。排圧配管7の途中から供給される低温水は、緩やかに高温水と熱交換しながら連通室40または後連通室50に入るので、高温水の急激な温度の低下を防止しながら突沸を抑えることができる。
【0057】
一方、温度センサ8D,8E,8Fが突沸を検出したときは、制御装置4は、各温度センサ8D,8E,8Fが出力する検出信号に基づいて加熱装置2を停止させる。本槽10と前予備槽20と後予備槽30の各槽は、加熱ユニット2A,2B,2Cによって直接加熱することができるから、給水なしに水温を下げることができ、高温水の急激な温度の低下を防止しながら突沸を抑えることができる。
【0058】
被加熱食品を加熱中、制御装置4は、加熱槽1の各槽に設けられている温度調整用の温度センサ8A,8B,8Cの検出信号に基づいて加熱装置2の加熱ユニット2Aと、加熱ユニット2Bと、加熱ユニット2Cの加熱温度を比例的に制御して各槽の水温をそれぞれ所定の温度に維持している。
【0059】
対流によって高温水が前連通室40および後連通室50に流入したときは、急激に水蒸気が発生するので、高い応答性で水温を直ぐに下げることは困難である。しかしながら、実施の形態の食品加熱装置によると、排圧配管7の途中に設けている第1の排出口F1と第2の排出口F2とから低温水を供給する構成であるので、低温水が排圧配管7の中を比較的緩やかに下降しながら高温水と熱交換をするので、高温水の温度を急激に低下させずに突沸を抑えることができる。
【0060】
本発明の食品加熱装置は、以上に説明される具体的な実施の形態の食品加熱装置の構成に限らず、すでにいくつかの例が示されているが、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、加熱装置、給水装置、搬送装置の具体的な構成は、既知の食品加熱装置で実施されている構成にすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、食品を高温で加熱する食品加熱装置に適用できる。本発明は、食品加熱装置を改良してより安全に短時間に食品を高温で加熱することができる。本発明は、食品機械の進歩に貢献する。
【符号の説明】
【0062】
1 加熱槽
2 加熱装置
3 給水装置
4 制御装置
5 食品搬送装置
6 排水槽
7 排圧配管
8 温度センサ
10 本槽
11 断熱隔壁
12 上端
10A 天板
20 前予備槽
20A オーバーフロー排出口
30 後予備槽
40 前連通室
40A 天板
50 後連通室
50A 天板
図1