特許第6871672号(P6871672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871672
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】光デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/30 20060101AFI20210426BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20210426BHJP
   G02B 6/34 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   G02B6/30
   G02B6/32
   G02B6/34
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-136862(P2013-136862)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-11203(P2015-11203A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年5月24日
【審判番号】不服2019-13154(P2019-13154/J1)
【審判請求日】2019年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】平 洋一
【合議体】
【審判長】 井上 博之
【審判官】 佐藤 洋允
【審判官】 山村 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−44290(JP,A)
【文献】 特開平10−26707(JP,A)
【文献】 特開2005−115176(JP,A)
【文献】 特開2009−92687(JP,A)
【文献】 特開昭62−86307(JP,A)
【文献】 特開平4−288510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板の上に形成されたシリコン薄膜導波路を伝播する伝播光を、前記シリコン基板の方へ直角に曲げて、前記シリコン基板を通る平行光に変え、前記シリコン基板の前記シリコン薄膜導波路が形成された側とは反対側より前記シリコン基板から出すグレーティング手段と、
前記グレーティング手段により前記シリコン基板の前記反対側から前記シリコン基板を出た前記平行光を光ファイバのコアに集光するレンズ手段と、
を含
前記グレーティング手段は、複数のV溝が平行に設けられ、当該各V溝の一方の側の面は45度の傾斜をなす反射面である、
光デバイス。
【請求項2】
前記レンズ手段は、前記平行光の側に凸レンズ面を有し、前記光ファイバの側に前記光ファイバを設ける凹所を有し,当該凹所で前記光ファイバのコアに前記平行光が集光するように当該凹所は形成されている、請求項1に記載の光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信技術に関し、特に光導波路と光ファイバを光結合する光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信において、シリコン光導波路は、その中を伝播する伝播光をその外部の光ケーブルに光結合する必要がある。通常、シリコン光導波路のスラブ(slab)構造内に作られるグレーティング(回折格子)構造が、伝播光を光ファイバのコアに集光するのに用いられている。図1にその光デバイスの概要を示す。
【0003】
図1では、(a)に光デバイス10の側断面図を示し、(b)に下平面図を示す。光デバイス10では、シリコン基板11の上に酸化物層(酸化シリコン、酸化窒化シリコン、又は窒化シリコン)12が設けられ、酸化物層12の上にシリコン光導波路13が形成されている。さらに、シリコン光導波路13の一方の端にグレーティングカプラ14が形成されている。グレーティングカプラ14には、複数の溝が平行に同心円状に設けられている。グレーティングカプラ14により集光させた光ビームを光ファイバ16のコア15に位置合わせして、シリコン光導波路13と光ファイバ16との間で光結合が行われる。
【0004】
特許文献1に、ガラス基板の一方の面に光ファイバをガラス基板に結合させるための光ファイバガイド部を形成し、ガラス基板の他方の面に光ファイバガイド部と中心を一致させてレンズを形成し、ガラス基板を通る光をレンズで光ファイバのコアに集光させることが示されている。
【0005】
特許文献2に、光導波路が形成されている基板の面に対して光導波路端面を斜めに形成して、斜めの端面で光を反射させ、斜めの端面近傍の光導波路の上にレンズを形成して、斜めの端面で反射した光をレンズで集光させ光素子に導くことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−357737号公報
【特許文献2】特開平5−241044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光デバイス10のように、グレーティングカプラ14により光ビームを集光させて集束光を直に光ファイバ16のコア15に位置合わせする構造では、高い光結合効率を達成するために、1マイクロメートルよりもさらに高い精度で光ファイバの位置合わせを行わなければならない。本発明は、そのような高い精度で直に光ファイバを位置合わせする必要のない、光導波路と光ファイバの光結合の実現を目的とする。本発明の目的には、そのような光導波路と光ファイバの光結合を実現する光デバイスの提供が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により提供される1実施態様の光デバイスは、光導波路を伝播する伝播光を平行光に変えて出す変換手段と、変換手段から出た平行光を光ファイバのコアに集光するレンズ手段とを含む。
【0009】
好ましくは、変換手段は、グレーティング手段(光回折格子(グレーティング)による光回折手段)を含み、伝播光を直角に曲げて平行光にする。
【0010】
好ましくは、グレーティング手段は、複数のV溝が平行に設けられ、当該各V溝の一方の側の面は45度の傾斜をなす反射面である。
【0011】
好ましくは、変換手段は、伝播光を反射する45度の傾斜をなす反射手段と、反射手段で伝播光が反射される地点に焦点を有し、反射手段で反射される反射光を平行光にする他のレンズ手段とを含む。
【0012】
好ましくは、レンズ手段は、平行光の側に凸レンズ面を有し、光ファイバの側に光ファイバを設ける凹所を有し,当該凹所で光ファイバのコアに平行光が集光するように当該凹所は形成されている。
【0013】
好ましくは、光導波路は、シリコン薄膜導波路である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、高い精度で光ファイバを位置合わせする必要のない、光導波路と光ファイバの光結合が実現される。特に、光ファイバの位置合わせは、1マイクロメートルよりもさらに高い精度は必要でなく、10マイクロメートル又はそれよりも低い精度まで緩和されて、高い光結合効率を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】光導波路と光ファイバを光結合する従来の光デバイスを概略的に示す図である。
図2】本発明の1実施形態に係る、光導波路と光ファイバを光結合する光デバイスを概略的に示す図である。
図3図2に示す光デバイスのグレーティング手段に設けられたV溝の部分断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る、光導波路と光ファイバを光結合する光デバイスを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、記載された実施形態の内容に限定して解釈されるべきではない。なお、実施形態の説明の全体を通じて同じ構成部分乃至構成要素には同じ番号を付している。
【0017】
図2に、本発明の1実施形態に係る、光導波路と光ファイバを光結合する光デバイス20を概略的に示す。図2でも、(a)に光デバイス20の側断面図を示し、(b)に下平面図を示す。
【0018】
光デバイス20でも、シリコン基板11の上に酸化物層12が設けられ、酸化物層12の上にシリコン光導波路13が形成されている。しかし、光デバイス20では、シリコン光導波路13の一方の端に、シリコン光導波路13を伝播する伝播光を平行光に変えて出す変換手段として、グレーティング手段21が形成されている。
【0019】
グレーティング手段21は、シリコン光導波路13を伝播してそこに入る伝播光を、一旦は広げてシリコン基板11の方へ向かう平行な光ビームの平行光に変えて出す。平行光は、シリコン基板11を通り、シリコン基板11を出て光ファイバ16がある上の方に向かう。
【0020】
図3に、回折格子構造30としてグレーティング手段21に設けられたV溝の部分断面図を示す。図1のグレーティングカプラ14と同様に、複数のV溝は平行に同心円状に設けられている。各V溝では、光の回折効率の向上および指向性の向上のために、一方の側の微細面31は概ね基板面21に対し45度の傾斜を持ち、もう一方の側の微細面32はできるだけ垂直になるように形成されている。また、微細面31には、反射面とするために金、銀、アルミニウムなどの金属膜33が形成されている。
【0021】
図2に戻って、シリコン基板11を出た平行光は、平行光を光ファイバ16のコア15に集光するレンズ手段として設けられているレンズ22の凸レンズ面23に当たる。平行光が当たる凸レンズ面23は、レンズ22内で平行光が集光して焦点を結ぶように形成されている。
【0022】
レンズ22では、凸レンズ面23と反対側に、光ファイバ16を設ける凹所24が形成されている。凹所24は、その中心にレンズ22内で集光される平行光が焦点を結ぶように形成されている。光ファイバ16のコア15は凹所24の中心に位置する。従って、光ファイバ16を凹所24に設けると、光ファイバの位置合わせは行われる。
【0023】
図1の光デバイス10のように、グレーティングカプラ14により集光させて集束光を直に光ファイバ16のコア15に位置合わせする構造に比べて、図2の光デバイス20のように、グレーティング手段21により平行にした平行光を光ファイバ16のコア15にレンズ22を介して位置合わせする構造は、高い精度で直に光ファイバを位置合わせする必要がない。レンズ22の凸レンズ面23および凹所24は、例えばモールド成型などにより高い精度で製造できるので、光デバイス20は、高い光結合効率を達成する。
【0024】
図4に、本発明の他の実施形態に係る、光導波路と光ファイバを光結合する光デバイス40を概略的に示す。図4では光デバイス40の側断面図だけを示す。
【0025】
光デバイス40でも、シリコン基板11の上に酸化物層12が設けられ、酸化物層12の上にシリコン光導波路13が形成されている。しかし、光デバイス40では、シリコン光導波路13の一方の端に、シリコン光導波路13を伝播する伝播光を平行光に変えて出す変換手段として、グレーティング手段21に代えて、酸化物層12の上には、シリコン光導波路13の延長部分41と延長部分41の一端で伝播光を反射する45度の傾斜をなす反射板42が設けられ、さらに、酸化物層12とは反対側のシリコン基板11の上には、反射板42で伝播光が反射される地点に焦点を有し、反射板42で反射される反射光を平行光にするレンズ43が設けられている。
【0026】
レンズ43は、それが設けられているシリコン基板11と反対側に凸レンズ面44を有する。反射板42で反射された反射光は、レンズ43内を広がって凸レンズ面44に達し、凸レンズ面44から出て平行光になる。
【0027】
レンズ43の凸レンズ面44を出た平行光は、図2の光デバイス20と同様に、平行光を光ファイバ16のコア15に集光するレンズ手段として設けられているレンズ22の凸レンズ面23に当たる。光デバイス40も、光デバイス20と同様に、レンズ22により、高い精度で直に光ファイバを位置合わせする必要がない。また、レンズ43の凸レンズ面44も、例えばモールド成型などにより高い精度で製造できるので、光デバイス40も、高い光結合効率を達成する。
【0028】
図2および図4では、光がシリコン光導波路13から出て光ファイバ16に入る通信の光結合が示されているが、光デバイス20および40は、光が光ファイバ16から出てシリコン光導波路13に入る通信の光結合でも使用することができ、高い光結合効率を達成する。
【0029】
以上、実施態様を用いて本発明の説明をしたが、本発明の技術的範囲は実施態様について記載した範囲には限定されない。実施態様に種々の変更又は改良を加えることが可能であり、そのような変更又は改良を加えた態様も当然に本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
10、20、40 光デバイス
15 コア
16 光ファイバ
21 グレーティング手段
22、43 レンズ
23、44 凸レンズ面
24 凹所
42 反射板
図1
図2
図3
図4