(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸の少なくとも1つ以上の成分からなり、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物(グルタミン酸ソーダ、イノシン酸ソーダ、グアニル酸ソーダの1種またはそれ以上を含む調味料を含む組成物を除く)に配合され、果汁又は野菜汁に起因するフレッシュ感、フルーツ感、コクの向上、果汁又は野菜汁に起因するえぐみ、苦み又は野菜臭の抑制、果汁又は野菜汁に起因する風味の引き立てのいずれか1以上のために用いられる剤。
重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸の少なくとも1つ以上の成分からなり、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物に配合され、
リンゴ又はトマト汁に起因するフレッシュ感の向上、
トマト又はグレープフルーツ汁に起因するフルーツ感の向上、
ブドウ、オレンジ、又はトマト汁に起因するコクの向上、
グレープフルーツ汁に起因する苦みの引き立て、
バナナ汁に起因するえぐみの抑制、
キュウリ、セロリ、又はタマネギ汁に起因する苦みの抑制、
キュウリ、セロリ、又はタマネギ汁に起因する野菜臭の抑制、又は
バナナ、リンゴ、又はトマト汁に起因する風味の引き立て
のいずれか1以上のために用いられる剤。
野菜汁含有飲食品組成物(グルタミン酸ソーダ、イノシン酸ソーダ、グアニル酸ソーダの1種またはそれ以上を含む調味料を含む組成物を除く)において、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸の少なくとも1つ以上の成分を含有させることによって、果汁又は野菜汁に起因するフレッシュ感、フルーツ感、コクの向上、果汁又は野菜汁に起因するえぐみ、苦み又は野菜臭の抑制、果汁又は野菜汁に起因する風味の引き立てのいずれか1以上を付与する方法。
野菜汁含有飲食品組成物において、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸の少なくとも1つ以上の成分を含有させることによって、
リンゴ又はトマト汁に起因するフレッシュ感の向上、
トマト又はグレープフルーツ汁に起因するフルーツ感の向上、
ブドウ、オレンジ、又はトマト汁に起因するコクの向上、
グレープフルーツ汁に起因する苦みの引き立て、
バナナ汁に起因するえぐみの抑制、
キュウリ、セロリ、又はタマネギ汁に起因する苦みの抑制、
キュウリ、セロリ、又はタマネギ汁に起因する野菜臭の抑制、又は
バナナ、リンゴ、又はトマト汁に起因する風味の引き立てのいずれか1以上を付与する方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1においては、素材特有の甘味があること、また特許文献2においては、高甘味度甘味料はそれ自身に苦みや金属味といった不快な味があることにより、嗜好性に悪影響を及ぼしてしまうことがあるため、野菜及び果汁の呈味改善剤としては十分ではなかった。また、特許文献3においては、多糖を添加することにより、飲食品に粘度が付与され、嗜好性を損なう恐れがあった。
【0006】
また、有機酸により、果汁・野菜汁に酸味を付与して呈味を改善することが従来より行われているが、有機酸自体の味(例えば、乳酸の発酵臭、酢酸のすっぱ味、酒石酸の収斂味等)により、味を損ねる恐れがあった。
【0007】
したがって、特許文献1〜3に記載された呈味改善剤や、有機酸による呈味改善は、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の呈味改善剤、呈味改善方法として十分に満足できるものでなかった。
【0008】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の呈味改善効果に優れた新規な呈味改善剤、及び、このような呈味改善剤により呈味が改善された野菜汁含有飲食品組成物、及び野菜汁含有飲食品組成物の呈味を改善する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸を用いることで、素材の風味を活かしつつ、フレッシュ感の向上、えぐみの低減等により、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の呈味を改善できることを見出し、本発明に至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0010】
(1)重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上の成分を含有する、果汁・野菜汁含有飲食品組成物。
【0011】
(2) 飲食品組成物中の前記成分の含量が0.01〜70wt%である(1)に記載の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物。
【0012】
(3) 前記糖カルボン酸が、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、及びセロビオン酸からなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む、(1)又は(2)に記載の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物。
【0013】
(4) 前記糖カルボン酸が、マルトオリゴ糖酸化物、分岐オリゴ糖酸化物、水飴酸化物、粉飴酸化物又はデキストリン酸化物の形態で含まれる、(1)から(3)のいずれかに記載の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物。
【0014】
(5) さらに、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸の塩を含有する、(1)から(4)のいずれかに記載の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物。
【0015】
(6) 重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上の成分からなる、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の呈味改善剤。
【0016】
(7) 野菜汁含有飲食品組成物において、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上の成分を含有させることによって、呈味を改善する方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の呈味改善効果に優れた新規な呈味改善剤、及び、このような呈味改善剤により呈味が改善された野菜汁含有飲食品組成物、及び野菜汁含有飲食品組成物の呈味を改善する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0020】
<果汁又は野菜汁含有飲食品組成物>
本発明の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分(以下、単に「糖カルボン酸」と称する場合がある)を含む。
【0021】
本発明の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物によれば、糖カルボン酸を用いることにより、改善された呈味を奏することができる。特に、本発明の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物によると、素材本来の呈味を活かした果汁又は野菜汁の呈味改善が可能となり、加熱処理等を施した加工食品においても、同様に呈味改善が可能となる。糖カルボン酸の酸味強度は、有機酸であるクエン酸の10分の1程度で、穏やかな酸味を呈し、酒石酸のような収斂味がないという特徴がある。前記の通り、糖カルボン酸自身は特許文献1〜3に記載された呈味改善剤や、有機酸のような独特の味を呈さないため、えぐみ等の不快味をマスキングしつつ、違和感なく果汁又は野菜汁の風味を引き立てることができると考えられる。
【0022】
糖カルボン酸の酸味がクエン酸等の有機酸と比較して穏やかであることを上述したが、酸味の強度だけでなく、酸味の質も大きく異なる。糖カルボン酸であるマルトビオン酸と有機酸であるクエン酸の酸味強度をそろえた場合の時間と酸味の関係について官能評価を行い、その酸味曲線を
図1に示した。
図1に示すように、クエン酸は酸味の立ち上がりが早く鋭い酸味を呈するのに対して、マルトビオン酸は酸味が緩やかに立ち上がって持続するため、その酸味を感じる時間が果汁又は野菜汁の酸味を呈する時間に近くなる。このことも、呈味の改善に大きく寄与していると考えられる。
【0023】
また、果汁・野菜汁本来の風味は、食品加工時の加熱によって損なわれるため、酸味を付与するためにクエン酸等の有機酸を用いた酸味の付与が行われる。しかし、有機酸それ自身の酸味も加熱によって損なわれることがある。本発明の糖カルボン酸は糖質素材であるため、加熱による酸味の損失がほとんどない。ゆえに、加工の初期段階からの添加が可能であり、加熱工程を経て製造される果汁又は野菜汁飲食品組成物の呈味改善剤としても適していると考えられる。
【0024】
本発明において、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物とは、果汁又は野菜汁の少なくとも一方を含有する飲食品用の組成物のことを指す。食品組成物の形状は特に限定されず、例えば、固体状(ゼリー等の半固体状のものも含む)、ペースト状、液状等であってよい。より具体的には、果汁又は野菜汁を含有する果実又は野菜、果汁又は野菜汁そのもの(果汁又は野菜汁(濃縮果汁及び野菜汁、並びに濃縮還元果汁及び野菜汁でないもの)、濃縮果汁又は野菜汁、濃縮還元果汁又は野菜汁を含む)及びそれらを含有する飲食品組成物等が挙げられる。なお、本発明において、果汁又は野菜汁(濃縮果汁及び野菜汁、並びに濃縮還元果汁及び野菜汁でないもの)とは果実又は野菜を搾汁して得られるいわゆる天然果汁又は野菜汁(ストレート果汁・野菜汁)をいい、濃縮果汁又は野菜汁とは、果実又は野菜の搾汁を一旦濃縮したものをいい、濃縮還元果汁又は野菜汁とは、果実又は野菜の搾汁を一旦濃縮したもの(濃縮果汁又は野菜汁)に水等を加えて元の状態に戻したものをいう。
【0025】
果汁又は野菜汁としては、例えば、リンゴ、バナナ、トマト、セロリ、赤ピーマン、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、パイナップル、レモン、ウメ、アンズ、モモ、キウイフルーツ、イチジク、ザクロ、アセロラ、サクランボ、シークワーサー等の果汁又は野菜汁〔果実又は野菜、果汁又は野菜汁そのもの{果汁又は野菜汁(濃縮果汁及び野菜汁、並びに濃縮還元果汁及び野菜汁でない)、濃縮果汁又は野菜汁、濃縮還元果汁又は野菜汁を含む}〕が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記果汁又は野菜汁において、呈味の改善に適していることから、リンゴ、バナナ、トマト、セロリ、赤ピーマン、ブドウ、オレンジ、グレープフルーツが好ましく、リンゴ、バナナ、トマト、セロリ、赤ピーマン、ブドウ、オレンジがより好ましく、リンゴ、バナナ、トマトがさらにより好ましい。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
また、果汁又は野菜汁(果実又は野菜、果汁又は野菜汁、濃縮果汁又は野菜汁、濃縮還元果汁又は野菜汁等)を含有する飲食品組成物としては、果汁又は野菜汁入り清涼飲料、果汁又は野菜汁入り炭酸飲料、果汁又は野菜汁入り乳飲料、果汁・野菜汁入り混合飲料、果汁又は野菜汁入りアルコール飲料等の飲料、ケーキ、ゼリー、ムース、ジャム、キャンディー、グミ、キャラメル、ガム、クッキー、和菓子等の菓子類、ヨーグルト、アイスクリーム等の乳製品類、フルーツシロップ等のシロップ類、ジャム類、フィリング類、漬物類、ドレッシング、タレ、ソース等の調味料類、スープ類、冷凍食品、チルド食品、レトルトパウチ食品、惣菜等の調理食品、インスタント食品、果実又は野菜缶及び瓶詰食品、漬物、ペースト、乾燥果実・野菜等の果実・野菜加工食品類等の飲食品組成物が例示できる。
【0027】
(糖カルボン酸)
本発明の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含有する。糖カルボン酸は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化されたものであれば、特に限定されない。澱粉分解物又は転移反応物の重合度は、例えば、2〜100等であってもよい。より具体的には、糖カルボン酸は、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、セロビオン酸、パノース酸化物等が挙げられる。これらのうち、果汁又は野菜汁の風味を活かしつつ、呈味を改善する能力が高い点で、マルトビオン酸、マルトトリオン酸が好ましく、マルトビオン酸がより好ましい。これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。また、糖カルボン酸は、遊離の酸であってもよく、ラクトンであってもよい。
【0028】
上記成分(重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分)の飲食品組成物中の含有量は、特に限定されず、例えば、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物中、0.01〜70wt%であり、0.1〜15wt%が好ましく、0.5〜5wt%がより好ましく、1〜3wt%がさらにより好ましい。また、上記成分(重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分)の含有量は、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の目的、用途等に応じて、適宜設定してもよく、例えば、飲食品組成物が果汁又は野菜汁入り飲料、アルコール類、ペースト、スープ等であるときは、0.01〜3wt%であることが好ましく、飲食品組成物がパスタソース、ペースト加工品等であるときは、0.5〜5wt%であることが好ましく、飲食品組成物がキャンディー、グミ、ゼリー、缶詰フルーツ、アイス、漬物等であるときは、0.1〜10wt%であることが好ましく、飲食品組成物がドレッシング、タレ、ソース等であるときは1〜15wt%であることが好ましく、飲食品組成物がジャム、フィリング等であるときは1〜20wt%であることが好ましく、飲食品組成物がシロップ、フルーツソース等であるときは20〜70wt%であることが好ましい。なお、「wt%」は、本発明の飲食品組成物全体の質量に対する、飲食品組成物中に含まれる対象成分の質量を意味する。
【0029】
本発明の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物は、さらに、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸の塩を含有してもよい。糖カルボン酸の塩としては、特に限定されないが、上述で説明した糖カルボン酸の、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩等が挙げられる。これらのうち、特に、カルシウム塩を含むことが好ましい。これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。通常、塩類の味質は、マグネシウム塩やカルシウム塩では苦味を、ナトリウム塩は、塩辛さを感じるが、糖カルボン酸はこれら塩の持つ苦味等をマスキングすることができる。果汁又は野菜汁含有飲食品組成物へ、糖カルボン酸塩を配合することで、糖カルボン酸塩の僅かな雑味が、果汁や野菜汁の味を複雑にし、風味の奥行きや広がりを増すことが、コクとして感じられる。このことから、本発明の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物は、糖カルボン酸の塩をさらに含むことが好ましい。本発明の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物が糖カルボン酸の塩を含む場合、糖カルボン酸塩の飲食品組成物中の含有量は、特に限定されず、例えば、糖カルボン酸に対して7倍量以下とすることが好ましく、4倍量以下とすることがより好ましい。
【0030】
糖カルボン酸の含有量は、HPAED−PAD法(パルスドアンペロメトリー検出器、CarboPac PA1カラム)により測定する。測定は、溶出:35℃、1.0ml/min、水酸化ナトリウム濃度:100mM、酢酸ナトリウム濃度:0分−0mM、5分−0mM、10分−40mM、30分−50mMの条件で行う。
【0031】
糖カルボン酸は、どのような形態で含まれてもよく、例えば、マルトオリゴ糖酸化物、分岐オリゴ糖酸化物、水飴酸化物、粉飴酸化物又はデキストリン酸化物の形態で含まれてもよい。また、液体であっても粉末であってもよい。
【0032】
糖カルボン酸は、常法に従って製造することができる。例えば、澱粉分解物又は転移反応物を化学的な酸化反応により酸化する方法や、澱粉分解物又は転移反応物にオリゴ糖酸化能を有する微生物、又は酸化酵素を作用させる反応により製造することができる。
【0033】
化学的な酸化反応としては、例えば、パラジウム、白金、ビスマス等を活性炭に担持させた酸化触媒の存在下で、マルトース等の重合度2以上のアルドースと酸素をアルカリ雰囲気下で接触酸化させることにより、糖カルボン酸を製造することができる。以下に、化学的な酸化反応によるマルトビオン酸の製造方法について、より具体的な一例を説明する。
【0034】
まず、50℃に保持した20%マルトース溶液100mlに白金−活性炭触媒3gを加え、100mL/minで酸素を吹き込みながら600rpmで攪拌する。反応pHは、10N水酸化ナトリウム溶液を滴下することによって、pH9.0に維持する。そして、反応開始から5時間後、遠心分離とメンブレンフィルターろ過により触媒を取り除いて、マルトビオン酸ナトリウム溶液を得ることができる。得られたマルトビオン酸ナトリウム溶液をカチオン交換樹脂又は電気透析により脱塩することで、マルトビオン酸を得ることができる。
【0035】
オリゴ糖酸化能を有する微生物を用いた方法としては、例えば、アシネトバクター属、ブルクホルデリア属、アセトバクター属、グルコノバクター属等を用いた微生物変換・発酵法により糖カルボン酸を製造することができる。
【0036】
酵素反応による製造方法としては、例えば、オリゴ糖酸化能を有する微生物から酸化酵素を抽出する方法で製造することができる。
【0037】
(他の成分)
また、本発明の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物は、上記以外の従来公知のいずれの成分を加えてもよく、加えなくてもよい。このような成分としては、例えば、香料、増粘剤、甘味料(砂糖、異性化糖、ぶどう糖、果糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖、はちみつ、水飴、粉飴、マルトデキストリン、ソルビトール、マルチトール、還元水飴、マルトース、トレハロース、黒糖等)、酸味料(クエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸)、ミネラル類(カルシウム、マグネシウム、鉄、カリウム、亜鉛、銅等)、乳化剤、機能性成分、保存料、安定剤、酸化防止剤、ビタミン類等が挙げられる。これらの成分の添加量は、得ようとする効果に応じて適宜調整できる。
【0038】
本発明の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物は、上述の通り、有機酸と併用することができ、有機酸又は、有機酸を含有する果汁又は野菜汁の一部を糖カルボン酸に置き換えての使用も可能である。これにより、加工時に消失してしまう有機酸の酸味を補う、又は、有機酸特有の角のある酸味をまろやかにし、果実又は野菜の風味を引き立てることによって、嗜好性を向上させることが可能となる。また、糖カルボン酸と併用可能な有機酸として、クエン酸、酢酸、乳酸、酒石酸等が挙げられる。これら有機酸1種単独で用いても、2種以上を併用しても良い。これら有機酸の添加量は目的に応じて適宜調整できる。
【0039】
本発明の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の製法は、特に限定されないが、各飲食品組成物の製造工程の実状に適した添加方法を採用することができ、例えば、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の原料に対して初めから混合してもよく、製造工程中、あるいは加工終了時に添加してもよい。また、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物に対して、各種成分を混合する際、加熱して各種成分を溶解させてもよいし、容器詰めした後加熱殺菌し、常温で長期保存可能なようにしてもよい。例えば、容器としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)等のプラスチックボトル、スチールやアルミ等の金属缶、紙パック、パウチ容器等が挙げられる。
【0040】
<果汁又は野菜汁含有食品組成物の呈味改善剤>
本発明の果汁又は野菜汁含有食品組成物の呈味向上剤は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上の成分からなる、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物における呈味改善剤である。
【0041】
本発明の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の呈味改善剤によれば、糖カルボン酸を用いることにより、果汁又は野菜汁の呈味を改善でき、特に、上述のとおり、果汁又は野菜汁本来の風味を活かした呈味改善が可能となる。
【0042】
本発明における「呈味改善」とは、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の呈味が改善されることを指す。改善される呈味は、果汁又は野菜汁の種類によって異なるが、例えば、フレッシュ感の向上(リンゴ、トマト等)、フルーツ感の向上(トマト、グレープフルーツ等)、えぐみの抑制(バナナ等)、苦みの抑制(キュウリ、セロリ、タマネギ等)、野菜臭の抑制(キュウリ、セロリ、タマネギ等の野菜汁)、コクの向上(ブドウ、オレンジ、トマト等)、風味の引き立て、酸味の向上等の呈味改善効果が挙げられる。
【0043】
なお、上記果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の呈味改善剤の糖カルボン酸は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化されたものであれば、特に限定されず、上述の野菜汁含有飲食品組成物における糖カルボン酸と同様のものを例示できるが、澱粉分解物又は転移反応物の重合度は、例えば、2〜100等であってもよい。より具体的には、糖カルボン酸は、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、セロビオン酸、パノース酸化物等が挙げられる。これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。また、糖カルボン酸は、遊離の酸であってもよく、及びラクトンであってもよい。
【0044】
<果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の呈味を改善する方法>
本発明の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の呈味を改善する方法は、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物において、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含有させることによって、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の呈味を改善する方法である。
【0045】
本発明の果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の呈味改善方法によれば、上述のとおり、糖カルボン酸を用いることにより、果汁・野菜汁本来の風味を活かした呈味改善が可能となる。
【0046】
なお、上記果汁又は野菜汁含有飲食品組成物の呈味改善方法の糖カルボン酸は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化されたものであれば、特に限定されず、上述の野菜汁含有飲食品組成物における糖カルボン酸と同様のものを例示できるが、澱粉分解物又は転移反応物の重合度は、例えば、2〜100等であってもよい。より具体的には、糖カルボン酸は、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、セロビオン酸、パノース酸化物等が挙げられる。これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。
【実施例】
【0047】
(糖カルボン酸試験物質)
以下の評価試験では、マルトビオン酸(Brix70%)(サンエイ糖化株式会社製)、及びマルトオリゴ糖酸(Brix70%)(サンエイ糖化株式会社製)を用いた。なお、マルトオリゴ糖酸中(HPLC法;固形分換算)には、マルトビオン酸 70.0wt%に加えて、グルコン酸 1.0wt%、マルトトリオン酸15.0wt%及びマルトテトラオン酸(重合度4)以上のマルトオリゴ糖酸14.0wt%が含まれる。また、マルトビオン酸は純品相当のものを用いた。
【0048】
<果汁飲料>
マルトビオン酸(サンエイ糖化株式会社製)を用い、下記の表1に示すサンプル(実施例1〜4)を調製し、官能評価を行った。なお、実施例1〜4のそれぞれについてマルトビオン酸無添加のサンプルを準備し、それぞれの対照とした。官能評価において、実施例1〜4をそれぞれの対照サンプルと比較して、呈味が非常に良好であるものを◎、:呈味が良好であるものを○、変化無し又は呈味に違和感があるものを×として評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
評価の結果、表1に示すとおり、各種果汁にマルトビオン酸を1%程度添加すると、マルトビオン酸の酸味が果実本来の風味を引き上げ、えぐみ等の不快味のマスキング、フレッシュ感及びコクの向上が感じられ、呈味が向上することが確認された。
【0051】
<野菜飲料>
マルトビオン酸(サンエイ糖化株式会社製)を用い、下記の表2に示すサンプル(実施例5〜7)を調製し、官能評価を行った。なお、実施例5〜7のそれぞれについて、マルトビオン酸無添加のサンプルを準備し、それぞれの対照とした。官能評価において、実施例5〜7をそれぞれの対照サンプルと比較して、呈味が非常に良好であるものを◎、:呈味が良好であるものを○、変化無し又は呈味に違和感があるものを×として評価を行った。その結果を以下の表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
評価の結果、表2に示すとおり、各種野菜ペーストにマルトビオン酸を2%程度添加すると、マルトビオン酸の酸味が野菜本来の風味を引き上げ、苦味等の不快のマスキング、フレッシュ感及びコクの向上が感じられ、呈味が向上することが確認された。
【0054】
<ミルクバナナ>
マルトオリゴ糖酸(サンエイ糖化株式会社製)を用い、下記の表3に示すミルクバナナ(実施例8、比較例1、2)を調製し、官能評価を行った。官能評価では、呈味が非常に良好であるものを◎、:呈味が良好であるものを○、変化無し又は呈味に違和感があるものを×として評価を行った。その結果を以下の表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
評価の結果、表3に示すとおり、マルトオリゴ糖酸を添加した実施例8は、無添加の比較例1と比べてバナナのえぐ味が無く、酸味のバランスが良くフレッシュ感の向上が感じられた。レモン汁を添加した比較例2は、えぐ味のマスキングが十分でなく、また、後味にレモンの酸味が強く、バナナ感が薄れていた。マルトオリゴ糖酸は、素材の不快味のマスキングとフレッシュ感の向上というように、多方面から呈味改善が可能であることが示された。
【0057】
<リンゴのコンポート>
マルトオリゴ糖酸(サンエイ糖化株式会社製)を用い、下記の表4に示す処方にて、全ての材料を鍋に入れて加熱し、落とし蓋をして弱火で25分煮込んだ後、冷蔵保存したリンゴのコンポート(実施例9、比較例3)を調製し、前記のミルクバナナと同様に官能評価を行った。なお、比較例3と実施例9は酸味の強度を揃えて比較した。酸味の強度を揃えることは、あらかじめそれぞれの酸味の相対的な強さを官能評価し、その結果に基づいて行った。その結果を以下の表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
評価の結果、表4に示すとおり、レモン汁を添加した比較例3は、酸味が飛び、甘さが強く味がぼやけているが、マルトオリゴ糖酸を添加した実施例9は、比較例3よりも甘さがすっきりとし、酸味が緩やかに上昇した後、持続することでリンゴの風味が引き立ち、フレッシュ感が向上していた。また、マルトオリゴ糖酸カルシウム塩を配合することにより、濃厚感も感じられた。比較例3のレモン汁と実施例9のマルトビオン酸は酸味の強さを揃えて添加しているが、レモン汁の酸味は、加熱によって飛んでしまうのに対し、マルトオリゴ糖酸の酸味は、加熱しても飛ばないため、リンゴの風味を引き立てた酸味の付与が可能となっている。このことより、コンポートをはじめとする、加熱を伴う食品においても、呈味改善効果を発揮できることが示された。
【0060】
<リンゴジャム>
マルトオリゴ糖酸(サンエイ糖化株式会社製)を用い、下記の表5に示す処方にて、全ての材料を鍋に入れて、リンゴが透き通ってとろみがつくまで加熱した後、冷蔵保存したリンゴのジャム(実施例10)を調製し、前記のミルクバナナと同様に官能評価を行った。その結果を以下の表5に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
評価の結果、表5に示すとおり、ジャムのように糖度の高い食品においても、マルトオリゴ糖酸を添加することにより、リンゴの風味が引き立ち、フレッシュ感が感じられた。
【0063】
<リンゴゼリー>
マルトオリゴ糖酸(サンエイ糖化株式会社製)を用い、下記の表6に示す処方にて、全ての材料を煮溶かした後に、容器に充填して冷やし固めたリンゴのゼリー(実施例11)を調製し、前記のミルクバナナと同様に官能評価を行った。その結果を以下の表6に示す。
【0064】
【表6】
【0065】
評価の結果、表6に示すとおり、ゼリーのように、半固形状態の食品においても、マルトオリゴ糖酸を用いることにより、リンゴの風味が引き立ち、フレッシュ感が感じられた。
【0066】
<トマトピューレ加工品>
マルトオリゴ糖酸(サンエイ糖化株式会社製)を用い、下記の表7に示す処方にて、全ての材料を混合、加熱撹拌し、沸騰後さらに弱火で3分間加熱撹拌して、容器に充填したトマトピューレ加工品(実施例12、13、比較例4〜6)を調製し、前記のミルクバナナと同様に官能評価を行った。なお、比較例5と実施例12、比較例6と実施例13はそれぞれ酸味の強度を揃えて比較した。その結果を以下の表7に示す。
【0067】
【表7】
【0068】
評価の結果、表7に示すとおり、比較例4は加熱により、トマトの風味が飛び、酸味及びコクの無いトマトピューレとなっていた。クエン酸を添加した比較例5及び6は、酸味は付与されるものの、酸味の質がトマトと異なり、クエン酸の酸味が目立った。マルトオリゴ糖酸を添加した実施例12及び13は、程よく酸味が付与されて、トマトのコクとフレッシュ感が向上していた。
【0069】
<トマトミックスソース>
マルトオリゴ糖酸(サンエイ糖化株式会社製)を用い、下記の表8に示す処方にて、表8の※1の材料を混合、加熱撹拌し、85℃に達したら表8の※2の材料を加え、沸騰後さらに弱火で3分間加熱撹拌して、容器に充填したトマトミックスソース(実施例14、15、比較例7〜9)を調製し、前記のミルクバナナと同様に官能評価を行った。なお、比較例8と実施例14、比較例9と実施例15はそれぞれ酸味の強度を揃えて比較した。その結果を以下の表8に示す。
【0070】
【表8】
【0071】
評価の結果、表8に示すとおり、マルトオリゴ糖酸及びクエン酸を無添加の比較例7は、加熱処理により、酸味が損なわれ、フレッシュ感が感じられなかった。比較例8と実施例14、比較例9と実施例15は、酸味の強度を揃えた配合としているが、クエン酸を添加した比較例8及び9は、酸味は感じられるものの、トマトの風味とのバランスが悪かった。一方、マルトオリゴ糖酸を添加した実施例14及び15は、マルトオリゴ糖酸の酸味がトマトの風味とマッチし、素材本来の風味を引き立てることで、コクとフレッシュ感が向上していることが確認された。
【0072】
<ガスパチョ>
マルトオリゴ糖酸(サンエイ糖化株式会社製)を用い、下記の表9に示す処方にて、全ての材料をフードミキサーで均一にして、容器に充填したガスパチョ(実施例16、比較例10)を調製し、前記のミルクバナナと同様に官能評価を行った。その結果を以下の表9に示す。
【0073】
【表9】
【0074】
評価の結果、表9に示すとおり、比較例10では、セロリの苦味が感じられ、野菜臭さが強かったが、マルトオリゴ糖酸を添加した実施例16では、野菜臭さ及び、セロリの苦味がマスキングされ、さらに、トマト風味が引き立ちフレッシュ感が向上していた。この結果から、マルトオリゴ糖酸を用いることにより、トマトの風味向上のみでなく、野菜特有の不快味をマスキングし、呈味性を向上させることが確認された。
【0075】
<フルーツソース>
マルトオリゴ糖酸(サンエイ糖化株式会社製)を用い、下記の表10に示す処方にて、フルーツソース(実施例17〜18)を調製し、前記のミルクバナナと同様に官能評価を行った。その結果を以下の表10に示す。
【0076】
【表10】
【0077】
評価の結果、表10に示すとおり、マルトオリゴ糖酸を用いると、マルトオリゴ糖酸特有の穏やかな酸味が素材の風味と合っているため、強い酸味を有しながらも、素材本来の風味が活きたフルーツソースを作製できた。