(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871688
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】椅子用電気機械式制御アセンブリ
(51)【国際特許分類】
A47C 7/72 20060101AFI20210426BHJP
A63B 23/00 20060101ALI20210426BHJP
A63B 24/00 20060101ALI20210426BHJP
A47C 7/02 20060101ALI20210426BHJP
A47C 7/46 20060101ALI20210426BHJP
A47C 7/00 20060101ALI20210426BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20210426BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
A47C7/72
A63B23/00 Z
A63B24/00
A47C7/02 D
A47C7/46
A47C7/00 A
A61B5/00 101R
A61B5/00 102C
H04M1/00 R
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-89198(P2016-89198)
(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公開番号】特開2017-74354(P2017-74354A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2019年4月17日
(31)【優先権主張番号】10 2015 208 215.6
(32)【優先日】2015年5月4日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514062655
【氏名又は名称】スタビラス ゲ―エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】レーケン、ラルス
(72)【発明者】
【氏名】プロプスト、ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ピロス、ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、マルクス
【審査官】
松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3194304(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0245979(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0275939(US,A1)
【文献】
特開2013−046548(JP,A)
【文献】
特開2008−308135(JP,A)
【文献】
特開2013−112178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/62,7/72,31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ送信のために互いに接続された、または、接続することができる椅子(10)と携帯端末(50)とを含むシステムであって、
前記椅子(10)は、少なくとも1つの電気機械式アクチュエータ(22、24、26、28)、少なくとも1つのセンサ素子(32、34、36、38)、および、エネルギー貯蔵装置(42)を備え、
前記携帯端末(50)は、
ユーザからの入力を受け取り、前記入力に基づいて前記少なくとも1つの電気機械式アクチュエータ(22、24、26、28)を制御し、および/または、
前記少なくとも1つのセンサ素子(32、34、36、38)によって収集されたデータを受信し、処理するように設計され、
前記椅子(10)と前記携帯端末(50)は、各々、該椅子(10)と該携帯端末(50)との間でデータを無線送信するように設計された少なくとも1つの通信手段(44)を備え、
前記電気機械式アクチュエータ(26)は、椅子用キャスター(20)を駆動することができ、
前記椅子(10)が、前記椅子用キャスター(20)を用いて事前定義された位置に自律的に着くように設計されていること
を特徴とするシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電気機械式アクチュエータ(22、24、26、28)は、前記椅子(10)の少なくとも1つの位置パラメータを制御すること
を特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記椅子(10)の位置パラメータの少なくとも1つが周期的に変化するように設計されていること
を特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの電気機械式アクチュエータ(22、24、26、28)は、触覚刺激、例えば、振動や局所的な圧力を、前記椅子(10)に着座したユーザに伝達するように設計されていること
を特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのセンサ素子(32、34、36、38)が、前記ユーザが加えた力と、着座中の運動と、前記ユーザの脈拍と、前記ユーザの体重と、気温とのうちの、少なくとも一つを検出するように設計されていること
を特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記通信手段(44)は、Bluetooth、W−LAN、赤外線通信、または無線伝送のうちの少なくとも一つによって、データを無線送信するように設計されていること
を特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記携帯端末(50)は、ハンズ−フリーで操作することができる入力装置、例えば、音声コマンドまたはブレイン−コンピュータ・インタフェース装置を備えること
を特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記携帯端末(50)は、携帯電話またはタブレット・コンピュータであり、かつ、前記ユーザによる前記入力、および/または、前記少なくとも1つのセンサ素子(32、34、36、38)によって収集された前記データの前記処理は、前記入力、および/または、前記データの前記処理のために設計されたソフトウェア・アプリケーションによって実行されること
を特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記ソフトウェア・アプリケーションは、処理されたデータの入力および/または表示のためのグラフィカル・インタフェース(100、110)を有すること
を特徴とする、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記エネルギー貯蔵装置(42)は、無線で充電することができるように設計されていること
を特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの電気機械式アクチュエータ(22、24、26、28)、センサ(32、34、36、38)、エネルギー貯蔵装置(42)、および前記椅子(10)の通信手段(44)は、前記椅子(10)に追加され、前記椅子(10)の椅子支持柱(16)の中に収容されること
を特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記椅子(10)に配置された、少なくとも1つの電気機械式アクチュエータ(22、24、26、28)を制御するため、および前記椅子(10)に配置されたセンサ素子(32、34、36、38)によって収集されたデータを、前記携帯端末(50)によって受信、処理、および表示するために、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のシステムを使用するための方法であって、
前記携帯端末(50)は、グラフィカル・インタフェース(100、110)を前記ユーザに提供するコンピュータ・プログラムを実行し、該グラフィカル・インタフェース(100、110)を用いて、前記ユーザが前記少なくとも1つの電気機械式アクチュエータ(22、24、26、28)を制御し、および/または、収集し処理した前記データをグラフ表示することができ、
該方法は、
前記椅子(10)と前記携帯端末(50)との間でデータを無線送信する処理、
前記電気機械式アクチュエータ(26)に、前記椅子用キャスター(20)を駆動するように制御する処理、及び
前記椅子(10)が、前記椅子用キャスター(20)を用いて事前定義された位置に自律的に着くようにする処理を含むこと
を特徴とする、方法。
【請求項13】
ユーザ関連データを前記携帯端末(50)に格納し、そして、
一旦、前記携帯端末(50)と前記椅子(10)が相互に接続されると、前記椅子(10)は、前記格納されたデータに基づいて、かつ、前記少なくとも1つの電気機械式アクチュエータ(22、24、26、28)を用いて、事前に定義された動作を実行すること
を特徴とする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ送信のために互いに接続された、または、接続することができる椅子と携帯端末とを含むシステムに関する。また、本発明は、携帯端末を用いて、椅子に配置された少なくとも1つの電気機械式アクチュエータを制御するための方法、および/または、椅子に配置されたセンサ素子が収集したデータを、受信、処理、および表示するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、明らかになってきたことは、相当な量の時間を座ったまま過ごす人が、特にサービス業で、多いということである。一方、データを処理することができる携帯端末、特にスマートフォンやタブレット・コンピュータを所有する人口の割合が大きくなって来たことも明らかである。この流れの中で活発に議論されている二つの傾向は、「インターネット・オブ・シングズ」と「自己定量化」である。
【0003】
「インターネット・オブ・シングズ」と言う表現は、単体のワークステーションの形のパーソナルコンピュータがますます重要性を失い、代わりに「インテリジェント・オブジェクト」に置き換わっていることを示している。このため、プロセッサ、センサ部品、およびアクチュエータが、人間の邪魔にならないように、あるいは全く人間に気付かれずに人間を支援するために、日常の物の中に埋め込まれている。この分野における一つの極めて変化の激しい市場は、センサおよび/または操作インタフェースが、例えば衣類やアクセサリーの物品に組み込まれた「ウェアラブル製品」の市場である。また、「自己定量化」と言う用語は、個人データを、特に前述のウェアラブル製品により記録し、収集したデータを分析し評価する過程を説明する場合に使用される用語である。そうすることで、ユーザは自分自身の、健康やスポーツ関連の習慣を分析することができ、理想的な状況では、より意識的かつ健康的なライフスタイルに近づくことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の発明者は、椅子と携帯端末を含むシステムは「インターネット・オブ・シングズ」と「自己定量化」の両方に関連する応用の最適なプラットフォームになることができると考えた。この理由は、上記のように、前記2つの物は日常生活の中で中心的な役割を果たしており、したがって、上記応用目的に最も適しているからである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、データ送信のために互いに接続された、または、接続することができる椅子と携帯端末とを含むシステムに関する。前記椅子は、少なくとも1つの電気機械式アクチュエータ、および/または、少なくとも1つのセンサ素子を備え、また、前記携帯端末は、ユーザからの入力を受け取り、これらの入力に基づいて少なくとも1つのアクチュエータを制御し、および/または、センサ素子によって収集されたデータを受信、処理するように設計されている。このため、前記椅子と前記携帯端末は、該椅子と該携帯端末の間でデータを無線送信するように設計された少なくとも1つの通信手段を、各々、備えている。
【発明の効果】
【0006】
上記のように提供されるシステムは、特に無線送信されるデータのおかげで高い設計柔軟性を持つことができる。また、本システムが適用可能な椅子は、既に知られている種類の椅子、肘掛け椅子を含む広い範囲の多様な椅子であり、また、上記目的のために特別に設計された椅子、例えば、主に、解剖学的に有利な着座位置を提供するように、または、使用者の背中を支持して運動ができるように設計された椅子にも適用できる。
【0007】
現代の携帯端末は、特に、すでに非常に高性能なプロセッサを搭載しているので、椅子に備えられる電子機器を比較的シンプルにすることができる。これによって、上述のように、通常のユーザは既に携帯端末を所有しているので、比較的費用効果の高いやり方で、必要な部品を新しい椅子に装備し、または既存の椅子を改造して必要な部品を装備することができる。
【0008】
また、前記椅子および携帯端末のそれぞれに配置される通信手段は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、椅子がセンサ素子のみを有し、アクチュエータを何ら備えていない場合は、前記椅子には送信機のみを取り付ければよい。逆に、センサ素子と電気機械式アクチュエータの両方を備えている椅子には送受信器を取り付ければよい。
【0009】
前記のような高い設計柔軟性のおかげで、本発明による前記システムは、広い範囲に亘る設計と応用が可能になる。提供される機能の第一の例は、前記椅子の少なくとも1つの位置パラメータを制御することができる少なくとも一つの電気機械アクチュエータである。この応用例では、携帯端末によって、椅子の高さと椅子の角度、椅子の背もたれの位置またはアームレストの位置等のパラメータを制御する処理を含むことができる。上述のように、前記機能が前記システムにおいて提供される唯一の機能である場合、このシステムの椅子に取り付けられる電子機器を非常に簡単にすることができる。この理由は、受信した命令を前記アクチュエータ(単数または複数)に転送するために最終的に必要なものは、例えば、通信手段と、一つまたは複数の電気機械式アクチュエータと、単一のマイクロプロセッサとだけであるからである。
【0010】
一つの展開形では、また、前記システムの設計を、前記椅子の位置パラメータの少なくとも1つが自律的かつ周期的に変化するように行うことも考えられる。そうすることで、ユーザは、常に人間工学的に正しく着座位置を変更するための支援を受けることができ、例えば、背中の不具合防止に役立てることができる。この機能はまた、特に携帯端末のプロセッサにより調整することができ、従って周期的な命令を携帯端末から椅子のアクチュエータに送信する必要がある。これによって上記の利点を得ることができ、この利点によって椅子に取り付けられている電子機器をシンプルにしておくことができる。さらに、本実施形態では、椅子と携帯端末が互いに接続されると、その時点における椅子の位置パラメータの周期的変更を確実に容易に行うことができる。このことが特に意味するところは、ユーザと前記ユーザの携帯端末が椅子から一定距離離れていて、このために、2つの部品同士がその時点で相互に接続されていない場合、位置パラメータが定期的に変更されることはなく、当然のこととしてエネルギーが節約されることである。
【0011】
代替的にまたは追加的に、電気機械式アクチュエータのうちの少なくとも一つは、触覚刺激、例えば、振動や局所的な圧力を、椅子に着座したユーザに伝送するように設計することができる。本発明によるシステムのこの展開形は、ある程度、携帯電話から知らされる振動アラート、またはスマート・ウオッチに使用されるコール・ウェイトに対応することができ、かつ、ユーザに携帯端末への入力メッセージまたは近々の予定について通知することができる。
【0012】
代替的にまたは追加的に、前記システムの設計は、また、少なくとも1つのセンサ素子が、検出対象のうち、少なくとも一つを検出するように設計することができる。この検出対象には、ユーザが加えた力、着座中の運動、ユーザの脈拍、ユーザの体重、および、気温がある。このように設計されたセンサシステムには、「自己定量化」の分野における実用的な応用が多数あると考えられる。上述のように、椅子は、ユーザの脈拍や体重を比較的長い期間にわたってモニターするための最適なプラットフォームになる。特に、ユーザは比較的長い期間、椅子に座っていることが多いので、身体に装着するべきウェアラブル製品を追加しないでモニターすることが可能となる。さらに、より複雑な応用が考えられる。例えば、ユーザが自分の上半身の力を強化するために信号に応答して背もたれに力を加えるように動作し、次に、ユーザが加えた力を測定し、可能な運動の進捗を経時的に追跡することができる、ユーザのための総合的な運動機能が考えられる。
【0013】
当業者にはよく知られている、データ無線送信用のすべての通信手段を本発明によるシステムで使用することができる。特に、Bluetooth(登録商標)、W-LAN、赤外線通信、または無線伝送のうちの少なくとも一つを使用できる。この点で、特に注目すべきことは、現代の多くの端末、例えば、携帯電話やタブレット・コンピュータは、既にBluetoothおよびW-LANによる接続を確立するために必要なハードウェアを備えているので、追加の作業を必要とせずに、信頼性が高く資源効率のよいデータ伝送を保証することができる。
【0014】
携帯端末のボタンまたはソフトキーによる、制御コマンドの従来の入力方法に加えて、前記端末は、ハンズ−フリーで操作することができる入力装置、例えば、音声コマンドまたはブレイン−コンピュータ・インタフェース装置を具備することも考えられる。この目的に必要なハードウェアは、既に前記携帯端末内に備わっており、例えば、音声コマンドは前記携帯電話の分野において既に標準であり、または、前記携帯端末から分離し無線接続される追加部品、例えば、特定のブレイン−コンピュータ・インタフェース装置に必要な電極、を持つことができる。明確性と読みやすさのために、本発明の説明においては、追加の部品を設ける場合、前記部品が構造的に空間的に前記携帯端末から分離されている場合でも、前記携帯端末の一部であると考えることにする。
【0015】
このようなハンズ−フリーの入力装置を使用することで、例えば、ユーザは、椅子の位置パラメータを調整するために携帯端末を手に取る必要がなくなる。携帯端末を手に取ることは、状況によっては、ユーザがそのときに行っている動作から気をそらされる結果を招く恐れがある。
【0016】
既に複数の例で述べたように、本発明に係るシステムは、携帯端末、すなわち、携帯電話またはタブレット・コンピュータを含むことができ、この場合、ユーザによる入力、および/または、少なくとも1つのセンサ素子によって収集されたデータの処理は、このために設計されたソフトウェア・アプリケーションによって実行される。専用ソフトウェア・アプリケーションに機能を移すことによって、アクチュエータの作動、およびセンサによって収集されたデータの受信および処理を抽象化でき、本システムの機能を携帯端末で使用されるソフトウェア・プラットフォームからは独立に得ることができるようになる。このため、異なるオペレーティング・システム、例えばiOS、 Android、またはWindows Mobileが使用されている特定の椅子と携帯端末との間でデータを無線送信することができる。この場合、当業者は、ソフトウェア・アプリケーションの設計の点でほぼ完全な自由度を有するが、入力および/または処理されたデータの表示のためにグラフィカル・インタフェースを設けることが有利である。そのようなグラフィカル・インタフェースは、前述のユーザの使用上の傾向に対応し、本発明によるシステムを直感的に操作することが可能になる。
【0017】
前記椅子の前記電気・電子部品に電力を供給するために、前記椅子は、エネルギー貯蔵装置を備えることができ、また、このエネルギー貯蔵装置は、無線で充電できるように設計することができる。この場合には、前記エネルギー貯蔵装置は、例えば座面、アームレスト、または構造的に類似した前記椅子の構成部品内に組み込みことができ、前記装置が外部から見えず、したがって、椅子の形状に影響を及ぼさないようにできる。前記エネルギー貯蔵装置は、電磁誘導的方法で無線によって充電することができ、例えば、本発明によるシステムを、対応するフロアマットと組み合わせることによって、そして、椅子に配置された受信アンテナによって交流電磁場を発生させることによりエネルギー貯蔵装置を充電することができる。しかしながら、当然のことながら、また、ケーブルを使用する従来の方法で椅子に電力を供給することも考えられる。
【0018】
代替的にまたは付加的に、前記椅子は、該椅子に設けられた椅子用キャスターを駆動するためのアクチュエータを備えることができる。この結果、前記椅子が、駆動可能な椅子用キャスターによって、事前定義された位置に自律的に着くことができる。この設計の可能な応用では、例えば、前記椅子が、エネルギー貯蔵装置を充電するために、一定の間隔で自律的に充電ステーションに移動することが考えられる。前記椅子は、前記エネルギー貯蔵装置が所定の充電レベルに達するまで充電ステーションに留まる。
【0019】
本発明によるシステムの前記機能を、既に生産中または既に購入済みの椅子に問題なく追加するために、すべての機能要素、特に、アクチュエータ、センサ、エネルギー貯蔵装置、および椅子の通信手段は、該椅子の椅子支持柱の中に収容することができる。その結果、既存の椅子を本発明によるシステム内に組み込むためには、この椅子支持柱を交換するだけでよいことになる。
【0020】
最後に、本発明は、特に、前述の特徴を有するシステムで椅子を使用するために、椅子に配置された少なくとも一つの電気機械式アクチュエータを制御するための方法、および/または、椅子に配置されたセンサ素子によって収集されたデータを、携帯端末によって受信、処理、および表示するための方法に関し、前記携帯端末は、グラフィカル・インタフェースをユーザに提供するコンピュータ・プログラムを実行し、前記グラフィカル・インタフェースによって、前記ユーザが少なくとも1つのアクチュエータを制御することができ、および/または、収集し処理したデータをグラフ表示することができる。この場合、前記方法は、前記椅子と前記携帯端末との間でデータを無線送信する処理を含む。
【0021】
本発明による方法の展開形は、携帯端末と特定の椅子の間に固定された組み合わせがないようにすることができ、むしろ、各場合によって、ユーザがそのときに座っている特定の椅子に、前記携帯端末を接続するようにできる。これにより、特に、一日の間にワークステーションを複数回変更するユーザのために、前記方法の柔軟性を増すことができる。
【0022】
同様に、特定の一つの椅子を、複数のユーザから成るグループのどのユーザが現在使用しているか、に応じて、異なる携帯端末に接続することができる。この場合、前記該当する携帯端末にユーザ関連のデータを格納し、一旦、前記ユーザの対応する携帯端末が前記椅子に接続されると、前記格納されたデータに基づいて、少なくとも1つのアクチュエータを用いて、前記椅子が事前に定義された動作を実行するようにすることが考えられる。前記動作は、例えば、ユーザによって予め設定された位置に前記椅子の位置パラメータを自動調整する処理を含む。この場合、前記携帯端末は、前記事前に定義された動作を実行する前に、例えば、ソフトウェア・アプリケーションのダイアログ・ウィンドウを用いて、ユーザに確認を求めるか、または、単に前記椅子に接続されている前記携帯端末に応答して、この動作を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
次に、本発明の詳細な説明を、好ましい実施形態に基づいて、かつ、添付の図面を参照して行う。図面には以下のものがある。
【
図1】本発明によるシステムの一部である事務用椅子の形の椅子を示す図である。
【
図2】本発明によるシステムに含まれ、対応するソフトウェア・アプリケーションを実行中の携帯端末を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1において、参照符号10は、本発明によるシステムの一部である事務用椅子の公知の形のものを示す。既知の方法では、前記事務用椅子10は、背もたれ12、座面14、長さが調節可能な椅子支持柱16、ベース18、および、伝統的に5つある椅子用キャスター20を備える。しかし、規定された従来型の構造的特徴に加えて、図示の椅子10は、複数のアクチュエータ、センサ、および追加の電子部品を備えている。
【0025】
これらの部品は、背もたれ12の傾斜角を調整するように設計された背もたれ傾斜角用アクチュエータ22と、ベース18に対する座面14の高さを椅子支持柱16の長さを変えることにより調整するように設計された椅子の高さ調整用のアクチュエータ24と、複数の椅子用キャスター20の各々に割り当てられ、対応する椅子用キャスター20を駆動することができる駆動用アクチュエータ26とを含む。この場合、特に、椅子の高さ調整用のアクチュエータ24は、従来の事務用椅子の時代から知られている椅子の高さを調整するための空気圧ばねと置き代わる。必要に応じて、アクチュエータ24、または追加のアクチュエータ(図示せず)を、座面14の高さを調整することに加えて、ベース18に対して座面14を回転させるように設計することができる。また、当業者は、その総合的な知識を用いて、本発明に係る事務用椅子10に使用される電気機械式アクチュエータ22、24および26、それぞれの種類を自由に選択することができ、特に、DCモータまたは整流子モータを使用することも考えられる。
【0026】
振動アクチュエータ28は、背もたれ部12に設けられ、ユーザに、イベント、例えば、
図2の携帯端末50に着信するテキスト・メッセージを通知する。この通知は、携帯電話においてよく知られているように、振動により行われる。
【0027】
図示の事務用椅子10には、また、複数のセンサが設けられている。これらのセンサには、背もたれ12と座面14に配置された圧力センサ32および34が含まれ、ユーザが背もたれ12にかける力、またはユーザの体重を、座面14にかけられる圧力に基づいて検出することができる。また、位置センサ36は、事務用椅子10のベース18に配置されて、室内での事務用椅子10の現在の位置を、周囲に配置された外部の部品(図示せず)、例えば、基地局と相互通信することにより、決定することができる。また、ユーザの脈拍および周囲温度を測定するように設計された統合センサ38が、背もたれ12に設けられている。
【0028】
図2に示す、本発明によるシステムの携帯端末50との通信のため、かつ、個々のセンサ32、34、36、および38によって収集されたデータを照合するため、かつ、各種アクチュエータ22、24、26、および28の全てを作動させるために、制御素子40が椅子支持柱16内に設けられている。該制御素子40は、例えば、マイクロプロセッサとして構成され、インタフェースを介してそれぞれのアクチュエータ22、24、26、および28を作動させ、かつ、事務用椅子10に配置されたセンサ32、34 、36、および38からの信号を受信する。さらに、制御素子40は、
図2の携帯端末50との通信接続を担うアンテナ44に動作可能に接続されている。この様子は、
図1で、伝播中の波Kによって概略的に表されている。制御素子40とすべてのアクチュエータ22、24、26、および28とは、電池の形態のエネルギー貯蔵装置42によって集中給電される。前記電池は、座面14に配置され、外部からは見えず、このため、座面14はその通常の形状を保つことができる。簡明にするために、エネルギー貯蔵装置42から個々のアクチュエータ22、24、26、28に延びる電気コードは、
図1には気記載されていない。
【0029】
図2は、本発明によるシステムに含まれる携帯端末を示す。前記端末の全体は、参照符号50によって示されている。前記端末は、具体的には、タッチスクリーン52と補助的な入力部54とを有する。前記タッチスクリーン52の機能は、概略的には、情報を表示し、命令を入力し、端末50を作動させることである。前記入力部54は、携帯端末の物理的ボタンの形で示されている。また、携帯端末50は通信手段を有し、該通信手段は、該携帯端末のハウジング内に内蔵されたアンテナとして設計されている。この様子は、本実施例では、単に、前記携帯端末50から伝播する波Kによって示される。特に、
図1および
図2に示す装置は、Bluetooth接続を介して相互接続することができるので、上記目的を十分に満足するための動作範囲は、盗聴防止暗号化と資源効率化設計と両立することができる。
【0030】
タッチスクリーン52を見てわかることは、携帯端末50が、
図1の椅子10を模式的に表示したソフトウェア・アプリケーションを、現在、実行していることである。この模式的表示は、
図2に参照番号100で示されている。前記模式的な表示100内にはボタンの対102、104、106および108があり、各々が矢印を持っている。これらのボタンの対は、ユーザによって押されると、
図1の椅子10のアクチュエータのそれぞれを作動させる。より具体的には、前記ユーザは、コマンドボタン102によって椅子10の背もたれ12の傾きを制御し、コマンドボタン104によって椅子10の座面14の高さを制御し、コマンドボタン106によって椅子面14をベース18の周りで回転させ、かつ、コマンドボタン108によって椅子10を前後に移動させることができる。
【0031】
椅子10の模式的表示100に加えて、テキスト・フィールド110がタッチスクリーン52の下部に設けられている。該テキスト・フィールドは、椅子10および携帯端末50によって作られた前記システムの状態に関する全般的な情報、および、センサ32および34によって受取られたデータを表示する。図示の例では、上から下に向けて、以下が表示されている。
・椅子10および携帯端末50が現在互いに接続されているか否かを示す指示(図示の例は接続中の場合である)
・椅子10のエネルギー貯蔵装置42の充電レベル(この場合は58%)
・現在、椅子に座っているユーザの体重(この場合は75キログラム)
・椅子に座っているユーザの現在の脈拍(この場合、毎分62回)
・室温(この場合は22°C)、
・運動量表示。この場合、例えば、ユーザが当日に特定の運動量の35%を行ったことを示している。この運動量は、例えば、前記背もたれ12にかけられた圧力の回数であり、背もたれ12にあるセンサ32によって記録される。