特許第6871697号(P6871697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871697
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】教育学習活動支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/20 20120101AFI20210426BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   G06Q50/20
   G09B19/00 Z
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-165191(P2016-165191)
(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公開番号】特開2018-32276(P2018-32276A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年7月10日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)開催日 平成28年6月4日 名 称 New Education Expo2016(東京)、フューチャークラスルームライブ (2)開催日 平成28年6月18日 名 称 New Education Expo2016(大阪)、フューチャークラスルームライブ (3)掲載日 平成28年7月7日 掲載アドレス http://www.uchida.co.jp/company/news/press/160707.html (4)会見日 平成28年7月7日 会見場所 株式会社内田洋行、新川オフィス(東京都中央区新川2丁目4番7号) (5)発行日 平成28年7月7日 刊行物 日本経済新聞電子版 平成28年7月7日付サイト (6)掲截日 平成28年7月7日 ウェブサイトのアドレス http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/070702021/?ST=print (7)放送日 平成28年7月7日 放送番組 テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」
(73)【特許権者】
【識別番号】000152228
【氏名又は名称】株式会社内田洋行
(74)【代理人】
【識別番号】100119585
【弁理士】
【氏名又は名称】東田 潔
(72)【発明者】
【氏名】島田 誠
(72)【発明者】
【氏名】小森 智子
(72)【発明者】
【氏名】馬庭 智憲
(72)【発明者】
【氏名】藤原 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】森下 誠太
(72)【発明者】
【氏名】永井 正一
(72)【発明者】
【氏名】松田 孝
(72)【発明者】
【氏名】斎田 健太郎
【審査官】 松野 広一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/015569(WO,A1)
【文献】 特開2016−085284(JP,A)
【文献】 特開2009−048381(JP,A)
【文献】 特開2004−229948(JP,A)
【文献】 特開2015−103026(JP,A)
【文献】 特開2012−173566(JP,A)
【文献】 特開2008−257359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
G09B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
教員の教育活動と生徒の学習活動の過程及び成果の情報の活用を支援する教育学習活動支援システムであって、
複数の異なるファイルフォーマットで構成され、複数の異なる媒体に記録された音声データ、画像データ及びテキストデータを含む教育学習活動の過程及び成果情報を記録した活動記録データ及び各活動記録データの少なくとも、時間、主体、場所、客体、手段のいずれかのデータを含む個別ログデータを蓄積するとともに、定型データと非定型データが混在した前記教育学習活動の運営管理を行うための校務情報を記録した校務支援データから、前記定型データを少なくとも、成績表データ、出席簿データ、保健データを含むトランザクションデータと、少なくとも、学籍データ、時間割データを含むマスタデータとして各別に蓄積する蓄積部と、
前記個別ログデータによって、前記各活動記録データに対応するイベント情報と、前記イベント情報に対応する前記トランザクションデータ及び前記マスタデータとして蓄積された各種定型情報との連携関係を所定の形式で特定する連携関係ログデータを生成する生成部と、
前記連携関係ログデータは、前記蓄積部に蓄積され、所定の属性情報に基づく紐付けキーを指定すると、指定された紐けキーに対応する前記連携関係ログデータを前記蓄積部から抽出、前記抽出された連携関係ログデータで特定された前記活動記録データと前記トランザクションデータ及び前記マスタデータとを抽出する演算部と、
前記演算部で抽出された連携関係ログデータと前記活動記録データと前記トランザクションデータ及び前記マスタデータとから、前記過程及び成果の情報を活動量の変化として経時的に表示する時系列データに加工する加工処理部とを有することを特徴とする教育学習活動支援システム。
【請求項2】
前記連携関係ログデータは、少なくとも、前記イベント情報を日時分による時間データ、IPアドレスによる場所データ、イベントの行為をする者の識別コードデータ、使用するツールを示すデータ、前記活動記録データのファイルフォーマットのデータを示す個別ログデータによって特定するものであることを特徴とする請求項1記載の教育学習活動支援システム。
【請求項3】
前記紐けキーは、少なくとも、時間、主体、場所、客体、手段のいずれかの情報が含まれることを特徴とする請求項1または請求項2記載の教育学習活動支援システム。
【請求項4】
前記加工処理部は、前記紐付けキーを前記時系列データの特定の時間に指定し、前記過程及び成果の情報を時間以外の単一又は複数の紐付けキーによって横断的に表示する特定時対比データを加工可能とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の教育学習活動支援システム。
【請求項5】
前記活動記録データは、学校外における生徒の行動及び活動に関する補足データを含み、前記補足データは、所定のセンサーによって取得されたデータを含むことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の教育学習活動支援システム。
【請求項6】
前記校務支援データは、自治体、教育委員会等の学校外から提供される外部データを含むことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の教育学習活動支援システム。
【請求項7】
前記時系列データは、前記活動量がゼロの状態も表示することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の教育学習活動支援システム。
【請求項8】
前記時系列データは、所定の授業の時間内における教員と単一若しくは複数の生徒の前記活動量又は生徒間の前記活動量を対比可能に表示したものであることを特徴とする請求項から請求項7までのいずれか1項に記載の教育学習活動支援システム。
【請求項9】
前記加工処理部は、前記対比可能に表示された活動量に対応する任意の時点の活動記録データを読み出して表示するとともに、前記活動量の経時的変化に対応する活動記録データの変遷過程を表示可能とする表示データを加工することを特徴とする請求項8記載の教育学習活動支援システム。
【請求項10】
前記加工処理部は、前記授業における進行に関するイベント情報から構成される活動記録データに基づいて、進行表示データに加工し、前記時系列データとともに表示することを特徴とする請求項8又は請求項9記載の教育学習活動支援システム。
【請求項11】
前記加工処理部は、前記紐付けキーを前記時系列データの特定の時間に指定し、前記過程及び成果の情報を時間以外の単一又は複数の紐付けキーによって横断的に表示するとともに、前記授業において、前記生徒の学習活動におけるイベント情報の活動量をリアルタイムで表示する特定時対比データを加工可能とすることを特徴とする請求項8から請求項10までのいずれか1項に記載の教育学習活動支援システム。
【請求項12】
前記特定時対比データは、複数の生徒の前記活動量を対比可能にリアルタイムで表示するとともに、直前の活動量との増減を表示するものであることを特徴とする請求項11記載の教育学習活動支援システム。
【請求項13】
前記加工処理部は、前記時系列データ又は特定時対比データにおける特定の生徒の活動量を前記定型データ上に表示できるように加工することを特徴とする請求項から請求項12までのいずれか1項に記載の教育学習活動支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、教員の教育活動と生徒の学習活動の過程及び成果の情報の活用を支援する教育学習活動支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、教育現場では、インタラクティブな授業を展開するアクティブラーニングの実施、教育及び学習活動に対するデータ分析を行うラーニングアナリティクスの導入に伴い、ICT活用が推進されている。従来、かかるICTを活用したシステムが多数提案されていた。
【0003】
例えば、教師用端末装置では,教師の操作画面がキャプチャされてファイルサーバに保存され、各生徒用端末装置で教師操作画面がリプレイされる一方、各生徒用端末装置では、生徒の操作画面がキャプチャされ、ファイルサーバに保存されるとともに、並行して教師が巡回指導中に生徒の操作画面を確認すると、携帯する識別情報読み取り装置によって、確認した生徒の生徒用端末装置の識別情報が読み取られ、ファイルサーバでは、読み取られた識別情報が確認済みの生徒用端末装置を示す巡回指導情報として記憶され、教師用端末装置では、指導終了後に巡回指導情報が参照され、巡回指導の結果(生徒の操作画面の確認の有無)が確認され、生徒操作画面が表示される教育支援システムが提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
かかる先行技術によれば、複数の生徒が各自の端末装置で行った操作過程や操作結果などを確認する場合に、生徒の巡回指導中に、操作結果などを確認した生徒用端末装置の識別情報を教師が携帯する端末で読み取ったり、教師の端末に格納された確認情報を生徒用端末装置で読み取らせたりして、確認した生徒用端末装置と未確認の生徒用端末装置とを区別できるようになる。従って、巡回指導中に確認を行わなかった生徒用端末装置の生徒操作情報を表示させることができるため、教師は、生徒操作情報確認のチェックを容易かつ効果的に行うことができる。
【0005】
また、参加者等が、随時、意思表示の信号を発信する意思表示発信手段と、この意思表示の信号を受信する意思表示受信手段と、発表の内容を音声及び映像によって収録する収録手段と、前記受信した意思表示のログデータと収録された収録データとを各々生成、保存し、このログデータから、意思表示がなされたことを示すマークと意思表示がなされた収録データとを対応づけるフィードバックデータ処理手段と、このフィードバックデータを蓄積する蓄積手段と、前記マークを時系列に配列表示するとともに、所望のマークを指定すると、指定されたマークに対応する収録データを再生、表示する再生表示手段と、を備えたシステムが提案されていた(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
かかる先行技術によれば、多数の参加者に対して行われる発表について、参加者の意思表示を詳細にフィードバックすることができ、発表の中で重要なポイントを確実に確認することも可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4755043号公報
【特許文献2】特許第4848329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
効果的なアクティブラーニングの実施及び高精度のラーニングアナリティクスの導入を実現するためには、教育現場において取得できる多様なデータを収集することが要求されるが、前記先行技術において収集される情報は、いずれも、授業において、生徒が積極的に発信したイベント情報に限定されており、データの活用、分析が限定的になるという不都合が生じていた。
【0009】
収集するデータが限定的とならざるをえない理由は、第一に、そもそもどのようなデータを活用することが有効なのか事前に定義することが難しいためであった。例えば、生徒の「考える力」を検証するために必要なデータは、授業中の生徒のレスポンスの速さだけでは不十分である。このように、収集するデータをあらかじめ定義できなければ、当然、どのようなデータを収集すればよいかが確定せず、ICTを活用した的確な分析ができなくなるという結果になる。
【0010】
次に、ICTの活用によって、教育学習活動のすべてを記録することができないという理由もあった。特に、アナログ情報、さらには、生徒の行動が停止している場合など、外見上、積極的な行動に対応して発信された信号のみを受信するICT機器等では検知しにくい行動は記録から漏れるおそれがあった。
【0011】
また、ICT機器で記録できるデータについても、データ、ファイルの形式が異なる場合、手書きの文字を一方の機器はテキストデータとして認識し、他方の機器は画像データとして認識する場合など、同種のイベント情報に対して、必ずしも、統一的な認識ができるとは限らず、収集できたデータを有効に活用することはできないという不都合があった。
【0012】
さらに、前記アナログ情報やデータ、ファイル形式の異なるデータを活用できるようにするために、デジタル化処理、変換処理等を行えばよいが、データ量が多いため、作業負荷が生じるという問題も生じていた。
【0013】
本発明は、上記課題を解消させるためのものであり、教員の教育活動と生徒の学習活動に関連して取得しうる多様なデータを収集するとともに、収集したデータから容易に統一的な形式のデータを生成し、上記多様なデータを縦横に連携させて分析可能なように表示させることができる教育学習活動支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成させるために、本発明にかかる教育学習活動支援システムは、教員の教育活動と生徒の学習活動を記録した活動記録データと前記教育学習活動の運営管理を行うための校務情報を記録した校務支援データとから、各々のデータの連携関係を所定の形式で特定した連携関係ログデータを生成し、所定の紐付けキーを指定することにより、連携関係ログデータ及び連携関係ログデータに特定された各種データを抽出し、前記活動の情報を経時的な活動量の変化として表示する時系列データに加工することができるシステムを提供する。
【0015】
すなわち、本発明は、教員の教育活動と生徒の学習活動の過程及び成果の情報の活用を支援する教育学習活動支援システムであって、
複数の異なるファイルフォーマットで構成され、複数の異なる媒体に記録された音声データ、画像データ及びテキストデータを含む教育学習活動の過程及び成果情報を記録した活動記録データ及び各活動記録データの少なくとも、時間、主体、場所、客体、手段のいずれかのデータを含む個別ログデータを蓄積するとともに、定型データと非定型データが混在した前記教育学習活動の運営管理を行うための校務情報を記録した校務支援データから、前記定型データを少なくとも、成績表データ、出席簿データ、保健データを含むトランザクションデータと、少なくとも、学籍データ、時間割データを含むマスタデータとして各別に蓄積する蓄積部と、
前記個別ログデータによって、前記各活動記録データに対応するイベント情報と、前記イベント情報に対応する前記トランザクションデータ及び前記マスタデータとして蓄積された各種定型情報との連携関係を所定の形式で特定する連携関係ログデータを生成する生成部と、
前記連携関係ログデータは、前記蓄積部に蓄積され、所定の属性情報に基づく紐付けキーを指定すると、指定された紐けキーに対応する前記連携関係ログデータを前記蓄積部から抽出、前記抽出された連携関係ログデータで特定された前記活動記録データと前記トランザクションデータ及び前記マスタデータとを抽出する演算部と、
前記演算部で抽出された連携関係ログデータと前記活動記録データと前記トランザクションデータ及び前記マスタデータとから、前記過程及び成果の情報を活動量の変化として経時的に表示する時系列データに加工する加工処理部とを有することを最も主要な特徴とする。
【0016】
この構成によれば、発生源及び形式が異なる多様なデータを収集し、これらのデータを連携させて教員、生徒の活動量を時系列に分析することができる。
【0017】
なお、前記加工処理部は、紐付けキーを前記時系列データの特定の時間に指定し、前記過程及び成果の情報を時間以外の単一又は複数の紐付けキーによって横断的に表示する特定時対比データを加工することも可能である。
【0018】
この構成によれば、前記経時的な分析のほか、特定の時間における断面的な視点から多様なデータを連携させて分析することも可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の教育学習活動支援システムは、教員の教育活動と生徒の学習活動に関連して取得しうる多様なデータを収集するとともに、収集したデータから統一的な形式のデータを容易に生成し、上記多様なデータを縦横に連携させて分析可能なように表示させることができるという効果を奏する。
【0020】
また、授業の振り返りや授業研究のために、高精度かつ多角的分析が可能なデータを提供できるため、ハイレベルのフィードバックが可能となり、授業力向上に寄与するという効果を奏する。さらに、個別にフォローが必要な子供を容易に抽出することができるという効果、学校に求められる情報公開、説明責任のエビデンスとして信頼性の高いデータを提供することができるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明にかかる教育学習活動支援システムのブロック構成図である。
図2図2は、連携関係ログデータと連携するデータの関係例を示した図である。
図3図3は、目的別紐付けキーと抽出先データとの関係を表によって例示した図である。
図4図4は、加工処理部で加工される時系列データと特定時対比データの相関関係を示したイメージ図である。
図5図5は、教育学習活動支援システムにおけるデータの加工処理までの流れを示したフロー図である。
図6図6は、時系列データの対比を教員の教育活動量と生徒全体(平均)の学習活動量とした場合の表示例を示した図である。
図7図7は、時系列データの対比を個々の生徒間の学習活動量とした場合の表示例を示した図である。
図8図8は、特定時対比データの表示例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、教員と生徒とのインタラクティブな授業等を通じて行われる教育学習活動の過程及び成果に関する情報を活用するためのシステムである。ここで、教育学習活動とは、教員による教育活動と、生徒による学習活動の双方を示す包括的な意味であり、活動の場所は教室内、学校内に限定されない。また、教員とは、小学校、中学校、高等学校及び大学ほかに属する、すべての教職者を含み、生徒とは、児童、生徒、学生すべてを含む学校等の在籍学習者を含む。
【0023】
図1は、本発明にかかる教育学習活動支援システムのブロック構成図を示したものである。1は、教育学習活動支援システム本体であり、蓄積部11と生成部12と演算部13と加工処理部14から構成されている。
【0024】
図1は、本発明に直接的に関係する機能のみを記載したものであり、実際には教育学習活動支援システム本体1は、コンピュータとしての汎用的機能を備えている。すなわち、少なくとも、コンピュータプログラムによって各種処理及び制御を行うCPU、前記コンピュータプログラム及び前記処理で得られたデータを一時的に記憶するメモリ、各種データのやり取りを行う入出力装置、各種データを格納する外部記憶装置、他の通信装置と通信を行うための通信部(いずれも図示せず)を備えている。そして、以下で説明する各機能は、コンピュータプログラムによって実行されるが、前記CPUが、前記メモリに格納された所定のコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、教育学習活動支援システム本体1に存在する構成要素として機能するものである。すなわち、学習活動支援システム本体1は、前記コンピュータプログラムであるソフトウェアが前記CPU等のハードウェアに読み込まれることにより、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現し、当該使用目的に応じた特有の情報処理装置が構築されているものである。
【0025】
ところで、学校等の授業及び校務においては、多種多様な情報が電子データ化されている。たとえば、授業中に取得される授業データCとしては、授業の進行に伴い、マイク、デジタルカメラ、電子黒板、タブレット等のデジタル機器Cdによって記録される多様なファイルフォーマットを有し、異なる記録媒体に記録される活動記録データのほか、電子媒体の教材Cm、電子媒体の成果物Cw(例えば、生徒の提出物など)、教員が授業に際して、記録する座席表データCsなどがある。なお、前記活動記録データは、動画データ、画像データ、音声データ、テキストデータ及び日時分など、これらのデータのログデータが含まれる。
【0026】
前記授業データCのほか、教育学習活動の運営管理を行うために、時間割データ、成績表データ、出席簿データ、保健データ、学籍データなどの校務支援データAも存在する。なお、校務支援データAは、リレーショナルデータベースなどによって管理された定型データ(構造化データ)と、教員が、生徒の授業における態度等から、テキストで記載する「気づき」などの非定型データ(非構造化データ)が混在している。
【0027】
さらに、授業データCや校務支援データAのほか、教育学習活動の一環として取得されるデータとしては、生徒の家庭での学習の成果物データ、センサーなどによって取得される日常生活のバイタルデータなどの補足データH、校務支援データAの一部として、教育委員会、自治体から学校などに提供される外部データEなどもある。
【0028】
業データ、校務支援データは、複数の異なるファイルフォーマットで構成され、複数の異なる媒体に記録されているが、いずれも、蓄積部11に各別に蓄積される。具体的には、活動記録データは、動画像ファイル11a、音声ファイル11b、テキストファイル(図示せず)、成果物ファイルCw及びこれらの個別ログデータ11cとして蓄積され、校務支援データのうち、定型データについては、トランザクションデータ11d及びマスタデータ11eとして各々別個に蓄積される。ここで、トランザクションデータ11dとして蓄積されるのは、主に、成績表データ、出席簿データ、保険データなど、流動性のある定型データが該当する。一方、マスタデータ11eとして蓄積されるのは、学籍データなど、教員、生徒を特定する固定的な定型データが該当する。
【0029】
生成部12では、個別ログデータ11cをベースとして、前記各活動記録データに対応するイベント情報、かかるイベント情報に対応するトランザクションデータ11d、マスタデータ11eの各種定型情報とを所定の形式で特定する連携関係ログデータが生成される。生成された連携関係ログデータも、前記蓄積部11で前記各種データとは別に蓄積される。ここで、イベント情報とは、例えば、生徒が、ある授業において、タブレット等のデジタル機器Cdを使って、入力を行った、というような活動に関する情報である。
【0030】
図2は、前記連携関係ログデータと連携する他のデータとの関係例を示した図である。本実施形態では、生徒が、授業において、タブレットCm1を介して、入力用ペンCm2を使用して入力をしたというイベント情報を例とする。なお、タブレットCm1は通信機能を有し、LANなどによって、教育学習活動支援システム本体1に直接又は間接的に入力データを送信することが可能である。
【0031】
連携関係ログデータLは、日時分による時間データL1(2016−05−11 17:15:06)と、IPアドレスによる場所データL2(192.168.24.100)と、ユーザの識別コードデータL3(username@example.com)、さらに、当該生徒が、イベント発生において、使用したツールを示すデータ(pen,black)によって特定される。時間データL1によって、校務支援データAを成す時間割データAtの授業の教科、単元等を特定する情報が取得可能となる。また、場所データL2によって、座席表データCsに対応する学習の場所(例えば、教室、クラスなど。)を特定する情報が取得可能となる。さらに、識別コードデータL3によって、公務支援データAを成す学籍データAiの生徒個人を特定する情報が取得可能となる。
【0032】
図2の連携関係ログデータは、例示であって、この形式に限定する趣旨ではないが、基本的に、前記イベント情報は、少なくとも、時間(いつ)、主体(誰が)、場所(どこで)、客体(何を)、手段(何を使って)に関するデータによって特定することにより、前記多様な形式のデータを連携させて活用することが可能となる。なお、教育分野において、様々なアプリケーション、デバイスが生成する履歴を統合的、一元的に管理する規格が存在するが(xAPI、Caliper)、連携関係ログデータも、この規格に準拠したものとなっている。
【0033】
演算部13は、所定の紐付けキーを指定することにより、蓄積部11から、後述する加工処理に必要なデータを抽出(すなわち、集合演算及び/又は関係演算処理を)する。ここで、紐付けキーとは、所定の属性情報に基づいて設定されるものであり、主に時間、主体(人)であるが、場所、客体、手段も紐付けキーになりうる。
【0034】
図3は、目的別に使用する紐付けキーと、当該紐付けキーによって抽出するデータの種類を例示的に示した表である。ここで、目的は、後述する時系列データを閲覧する主体別に分類されている。すなわち、教員、生徒、管理職・教育委員会の三主体に分けられている。
【0035】
教員が閲覧する場合は、例えば、「授業改善」「個別指導」などの目的がある。「授業改善」の場合は、紐付けキーは、「時間」であり、画像ファイルと連携関係ログデータが中心的な抽出データとなる。一方、「個別指導」の場合は、紐付けキーは、「人」であり、連携関係ログデータ、トランザクションデータ、マスタデータが中心的な抽出データとなり、画像ファイルは補足的な抽出データとなる。生徒が閲覧する場合は、例えば、学習過程の成果物等を収集し整理する「ポートフォリオ」、個々の生徒に合わせて学習内容等を調整する「アダプティブラーニング」などの目的がある。「ポートフォリオ」の場合は、紐付けキーは、「人」であり、画像ファイル、連携関係ログデータが中心的な抽出データとなり、トランザクションデータ、マスタデータは、補足的なデータとなる。一方、「アダプティブラーニング」の場合は、紐付けキーは、「人」であり、画像ファイル、連携関係ログデータ、トランザクションデータが中心的な抽出データであり、マスタデータが補足的なデータとなる。管理職(校長、教頭)や教育委員会が閲覧する場合は、例えば、教師の授業内容に関する「効果測定」などの目的がある。この場合の紐付けキーは、「時間」であり、連携関係ログデータ及びトランザクションデータが中心的な抽出データとなる。
【0036】
以上の通り、目的の違いにかかわらず、演算部13におけるデータの抽出では、指定した紐付けキーに合致する連携関係ログデータを必須の抽出データとし、これに基づいて必要な他のデータを抽出すればよい。
【0037】
このように、データの抽出に際し、連携関係ログデータが介在することにより、例えば、ファイルフォーマットが異なるデータを相互に連携させることが容易にできるようになる。
【0038】
演算部13で抽出された連携関係ログデータと活動記録データとトランザクションデータ及びマスタデータは、加工処理部14で、前記過程及び成果の情報の活動量の変化を経時的に表示する時系列データに加工される。ここで、活動量とは、前記イベント情報にかかわる教員や生徒の行為の回数、その他定量的に計測可能な量を示すもので、典型的には、デジタル機器Cdに、入力する行為(例えば、ペン入力の動作回数、マウスのクリック回数、インターネットの検索回数等)の回数である。
【0039】
さらに、時系列データだけでなく、加工処理部14は、紐付けキーを前記時系列データの特定の時間に指定し、前記過程及び成果の情報を時間以外の単一又は複数の紐付けキーによって抽出し、横断的に表示する特定時対比データを加工処理することも可能である。前記特定時対比データは、単一の特定時を対比する静的なデータのみならず、リアルタイムで、時々刻々変化する活動量を逐次表示する動的なデータも含まれる。
【0040】
図4は、時系列データTと特定時対比データMの関係を示したイメージ図である。時系列データT、特定時対比データMは、ともに、2人の生徒X、Yの活動量を対比したものである。時系列データTは、縦軸を活動量、横軸を時間とし、生徒Xと生徒Yの活動量の変化を時系列的に表示している。一方、特定時対比データMは、時系列データの特定の時間t1の生徒X、Yの活動量を、縦軸を活動量、横軸を生徒として表示している。なお、この特定時対比データをリアルタイムで逐次表示すれば、各生徒の動きの変化を複数の生徒の活動量の変化と対比しながら観察することができる。
【0041】
以上の通り、加工処理部14で加工される表示データは、経時的な活動量の変化、特定時の観察対象者の活動量の対比など、縦横に対比のバリエーションがある。
【0042】
図5は、教育学習活動支援システムにおけるデータの加工処理までの流れを示したフロー図である。ただし、図5のフロー図は、例示であり、本発明にかかる教育学習活動支援システムの処理フローは、これに限定されるものではない。
【0043】
授業データC、校務支援データAが記録、入力されると(S1)、これらのデータが前記活動記録データかどうかを判断する(S2)。活動記録データに該当する場合(S2のY)、活動記録ファイル(動画像ファイル11a、音声ファイル11bなど)および個別ログデータ11cとして(S3)、蓄積部11に蓄積される(S7)。
【0044】
一方、活動記録データに該当しない場合(S2のN)、これが定型データかどうか判断する(S4)。定型データに該当する場合(S4のY)、トランザクションデータ11d、マスタデータ11eとして(S5)、蓄積部11に蓄積される(S7)。定型データに該当しない場合(S4のN)、非定型データとして(S6)、蓄積部11に蓄積される。
【0045】
前記蓄積された各データから、生成部12で連携関係ログデータが生成され(S8)、生成された連携関係ログデータも蓄積部11に蓄積される(S9)。
【0046】
蓄積された各データから、演算部13において、連携関係ログデータのほか、必要に応じて各データが抽出され(S10)、加工処理部14で、抽出されたデータによって時系列データ又は特定時対比データに加工される(S11)。
【0047】
図6は、時系列データの表示例を示した図である。本実施の形態では、時系列データの対比の対象を教員(以下、図6において、「先生」と表示する。)の教育活動量と生徒全体(平均)の学習活動量とした場合を示している。
【0048】
時系列データは、対比対象指定部T1と第1対象表示部T2と第2対象表示部T3とから構成されている。さらに、対比対象指定部T1は、時系列データを時間軸に沿って自動的にスクロールさせる進行ボタンT11と、停止ボタンT12と、グラフの態様を選択するプルダウンメニューT13と、「先生」、生徒平均及び各生徒をチェックボックスで選択する対象者選択部T14とから構成されている。本実施の形態は、前記した通り、「先生」と生徒平均の対比を表示する例であるため、「先生」と「生徒平均」がチェックされている。
【0049】
第1対象表示部T2は、対象者表示部T21に「先生」が表示されている。横軸に時間軸T22が設けられ、時間軸T22に沿って、活動量が棒グラフで示されているが、ここでは、「先生」の活動量として「話す」活動量表示部T23及び「書く」活動量表示部T24の2態様が示されている。活動量とともに、授業の進行を示す進行表示部T25も表示されている。進行表示部T25は、例えば、「先生」が、デジタル教材のページをめくる、などのイベント情報に対応して、区切りが表示されるものである。本実施の形態では、閲覧目的を「先生」の授業改善を想定したものであるが、例えば、進行表示部T25とカリキュラム等と対比すれば、管理職、教育委員会の効果測定の判断にも資するものと考えられる。なお、「先生」の活動量に特定の箇所を指定すると、その時点の「先生」の活動記録データ(本実施の形態では、電子黒板又は教師用タブレットで記載した内容を示す電子データ)が表示される(T26)。
【0050】
第2対象表示部T3は、対象者表示部T31に「生徒平均」が表示されている。生徒平均は、全生徒の活動量の平均値を求める必要があるため、加工処理部14で算出部を設けるようにすればよい(図示せず)。第1対象表示部T2同様、時間軸T32、進行表示部T35が設けられているが、生徒の活動量として「書く」活動量表示部T33のみが示されている。もちろん、インタラクティブな授業において、生徒個々の発言を収録できる環境においては、第1対象表示部T2同様、「話す」を活動量として追加することも可能である。さらに、「先生」が生徒の活動量について、気になる箇所をチェックできる「いいね」表示部T34も表示されている。気になる箇所に「いいね」表示をしておけば、後から、ピンポイントで気になる部分のチェック(例えば、「いいね」表示が付された部分の活動量表示に対応する活動記録データの閲覧)ができる。
【0051】
発生源が異なるデータ、形式が異なるデータから、図6のような時系列データを作成するためには、通常、手作業による作業負荷が多くなるが、本発明にかかる教育学習活動支援システムを利用すれば、連携関係ログデータを介して、これら各データを変換等の作業負荷なしに統一的に取り扱うことができ、図6のような時系列データを容易に作成することができる。
【0052】
図7は、時系列データの対比を個々の生徒間の学習活動量とした場合の表示例を示した図である。すなわち、対比対象指定部T1の対象者選択部T14では、「○○○子」と「○□○夫」がチェックされている。
【0053】
第1対象表示部T4、第2対象表示部T5は、図6の表示例と同様、対象者表示部T41、T51、時間軸T42、T52、活動量表示部T43、T53、進行表示部T44、T54を有する。また、第1対象表示部T4では、「○○○子」の活動記録データが表示されているが(T45)、これは、図6と異なり、学習活動の変遷過程(例えば、設問に対する解答を導き出すまでの過程の画面を時系列に並べたスナップショット)を表示している。このように、解答の結果だけではなく、授業中の個々の生徒の解答過程をチェックできるため、教員が、例えば、授業改善のために行う分析は、個人の生徒レベルでも、高精度に行うことができる。
【0054】
ところで、第2対象表示部T5の2分から7分の間、「○□○夫」の活動量はまったくない。本発明では、このような非活動領域T55についても表示することとしている。また、非活動領域T55の直前の活動表示部の活動記録データT56を表示させることにより、非活動領域T55が形成された理由を追及することも可能となる。従来のこの種のシステムでは、ICT機器から積極的に活動を表示する信号のみで生徒の活動内容を把握するようにしているが、本発明では、かかる信号の発信がない場合も、生徒の活動記録として把握できるようにし、より精度の高い分析が可能となっている。
【0055】
なお、図6及び図7では、対比する対象を教員(先生)と全生徒(平均)、個々の生徒間としたが、これに限定する趣旨ではない。たとえば、教員と個々の生徒との対比、生徒の一部(グループ)間の対比等であってもよい。
【0056】
図8は、特定時対比データの表示例を示した図である。本実施の形態では、複数名(10名)の生徒の活動量の変化を示すものである。
【0057】
特定時対比グラフMは、グラフの態様を選択するプルダウンメニューM1、時間表示部M2、座席表表示変換ボタンM3、対象者表示部M4、活動量を示す移動ポインタM5乃至M7から構成されている。
【0058】
時間表示部M2は、時々刻々変換する活動量について、現時点で活動量を表示している時間を示したものである。したがって、各生徒の移動ポインタの位置が図8のようになっているのは、時間表示部M2が表示している11分31秒時点のものである。移動ポインタは、活動回数に対応して画面上を上下するものであるが、活動回数とは、たとえば、タブレットなどの画面をタッチした回数などであり、本発明では、これを検知して、教育学習活動支援システム本体1に送信するようにしている。具体的には、所定のインターバル(例えば、10秒間隔)ごとに前記回数のカウント値を送信し、これを移動ポインタの動きに連動させればよい。ただし、表示画面の制約上、絶対的な回数を表示することとした場合、例えば、1人の生徒だけが、突出した回数の活動をすると、他の生徒に対応する移動ポインタの動きが、見かけ上動かないものとなる可能性がある。そこで、上限回数を決めるか、相対的な動きに変換するか、等の処理を加工処理部14で行うようにすればよい。
【0059】
また、多角的に活動量を観察するために、直前の動きとの比較で活動量の増減を表示するマークをポインタに表示させてもよい。具体的には、直前(1インターバル前、すなわち、例えば、10秒前)の活動量に比べて増加した場合、減少した場合、移動ポインタの色を変える、「増」「減」の文字を付すなどの識別表示をすればよい。本実施の形態では、例えば、「○○○男」と「△○○子」の移動ポインタが他の移動ポインタと異なる表示になっている。11分31秒時点の活動量は、「○○○男」が多く、「△○○子」の活動量は少ないが、直前との比較で、「○○○男」の活動量が減少したという表示になり、「△○○子」の活動量が増加したという表示だった場合、単に、現時点のみの活動量を観察した場合と比べて、より細やかな評価が瞬時にできる可能性がある。
【0060】
座席表表示変換ボタンM3は、特定時対比グラフMの表示を座席表データCsの表示画面上に表示させるものである。例えば、前記増減のあった生徒の座席表のみ点滅等で表示するなどが可能である。特定時対比グラフMのように、移動ポインタによる全員の活動量を可視化することはできないが、活動量の増減のあった生徒の位置を直感的に把握することできる。従って、目的に従って適宜いずれの表示で観察するかを決めればよい。
【符号の説明】
【0061】
1 教育学習活動支援システム本体
11 蓄積部
12 生成部
13 演算部
14 加工処理部
C 授業データ
A 校務支援データ
L 連携関係ログデータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8