特許第6871706号(P6871706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871706
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/22 20100101AFI20210426BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20210426BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   H01L33/22
   H01L33/32
   H01L21/302 105A
   H01L21/302 105B
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-194153(P2016-194153)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-56499(P2018-56499A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504097823
【氏名又は名称】SCIVAX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 紀隆
(72)【発明者】
【氏名】稲津 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】須崎 泰正
(72)【発明者】
【氏名】縄田 晃史
(72)【発明者】
【氏名】田中 覚
【審査官】 大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/016150(WO,A1)
【文献】 特開2010−074008(JP,A)
【文献】 特開2007−123446(JP,A)
【文献】 特開2008−060286(JP,A)
【文献】 特開2012−124257(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0014702(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/053363(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光取出面を有する光取出層を備える半導体発光素子の製造方法であって、
前記光取出層上にアレイ状のパターンを有するマスクを形成する工程と、
前記マスクの上から前記マスクおよび前記光取出層をエッチングする工程と、を備え、
前記エッチングする工程は、前記マスクの全体が除去されるまでドライエッチングする第1ドライエッチング工程と、前記マスクが除去されてから前記光取出層をマスクレスでさらにドライエッチングする第2ドライエッチング工程とを含むことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記第2ドライエッチング工程により前記光取出層がエッチングされる深さ方向の第2エッチング量は、前記第1ドライエッチング工程により前記光取出層がエッチングされる深さ方向の第1エッチング量の10%以上20%以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2ドライエッチング工程は、前記第1ドライエッチング工程とエッチレートが同じであり、
前記第2ドライエッチング工程が実行される第2ドライエッチング時間は、前記第1ドライエッチング工程が実行される第1ドライエッチング時間の10%以上20%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記半導体発光素子は、サファイア(Al)層、窒化アルミニウム(AlN)層および酸化シリコン(SiO)層の少なくとも一つを含むベース構造体と、前記ベース構造体の上に形成され、深紫外光を発する窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体層を含む発光構造体と、を備え、
前記光取出層は、前記ベース構造体のサファイア層、AlN層またはSiO層であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記エッチングする工程は、エッチングガスとして塩素(Cl)または三塩化ホウ素(BCl)を用いることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記マスクは、樹脂であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記マスクは、アレイ状に配置される複数の柱状部を有し、前記複数の柱状部のそれぞれは、高さ方向に直交する方向の幅が一定であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記マスクは、アレイ状に配置される複数の柱状部を有し、前記複数の柱状部のそれぞれは、角柱、円柱、角錐台または円錐台形状を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、青色光を出力する発光ダイオードやレーザダイオード等の半導体発光素子が実用化されており、さらに波長の短い深紫外光を出力する発光素子の開発が進められている。深紫外光は高い殺菌能力を有することから、深紫外光の出力が可能な半導体発光素子は、医療や食品加工の現場における水銀フリーの殺菌用光源として注目されている。このような深紫外光用の発光素子は、基板上に順に積層される窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系のn型クラッド層、活性層、p型クラッド層などを有し、活性層が発する深紫外光が基板の光取出面から出力される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5594530号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Applied physics express 3 (2010) 061004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
深紫外光発光素子では、基板の光取出面を通じて出力される深紫外光の外部量子効率が数%程度と低く、発光波長を短波長化するにつれて外部量子効率がより低くなることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、半導体発光素子の光取出効率を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の半導体発光素子は、光取出面を有する光取出層を備える半導体発光素子であって、光取出層は、光取出面にアレイ状に形成される複数の錐形状部と、錐形状部の側面部および隣接する錐形状部の谷間に位置する平坦部の双方に形成される複数の粒状部と、を有する。
【0008】
この態様によると、光取出面にアレイ状の複数の錐形状部を形成して凹凸構造を設けることで、光取出面の内側で生じる光の全反射を抑制し、光取出面からの光出力効率を高めることができる。また、複数の錐形状部の側面部および隣接する錐形状部の谷間に位置する平坦部の双方に微細な粒状部を形成することにより、全反射の抑制効果をさらに高めることができる。本態様によれば、錐形状部と粒状部が組み合わされた凹凸構造を光取出面に形成することで、光取出効率をさらに向上させることができる。
【0009】
錐形状部は、側面部の傾斜角が錐形状部の底部付近より錐形状部の頂部付近において小さくてもよい。
【0010】
光取出面の平面視において、複数の錐形状部が占める面積の割合が70%以上85%以下であってもよい。
【0011】
錐形状部の底部の直径は、100nm以上1000nm以下であり、粒状部の直径は、10nm以上90nm以下であってもよい。
【0012】
半導体発光素子は、サファイア(Al)層および窒化アルミニウム(AlN)層の少なくとも一方を含むベース構造体と、ベース構造体の上に形成され、深紫外光を発する窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体層を含む発光構造体と、を備えてもよい。光取出層は、ベース構造体のサファイア層、AlN層または酸化シリコン(SiO)層であってもよい。
【0013】
本発明の別の態様は、半導体発光素子の製造方法である。この方法は、光取出面を有する光取出層を備える半導体発光素子の製造方法であって、光取出層上にアレイ状のパターンを有するマスクを形成する工程と、マスクの上からマスクおよび光取出層をドライエッチングする工程と、を備える。ドライエッチングする工程は、マスクの全体が除去されるまでドライエッチングする第1ドライエッチング工程と、マスクが除去されてから光取出層をさらにドライエッチングする第2ドライエッチング工程とを含む。
【0014】
この態様によると、第1ドライエッチング工程によりアレイ状の複数の錐形状部を形成し、第2ドライエッチング工程により錐形状部の側面部および隣接する錐形状部の谷間に位置する平坦部の双方に微細な粒状部を形成することができる。つまり、一つのマスクに対するドライエッチング工程により、錐形状部と粒状部が組み合わされた凹凸構造を形成することができる。本態様によれば、錐形状部と粒状部のそれぞれを形成するために別々のマスクやエッチング工程を用意する必要がなく、光取出効率が高められた光取出面をより簡便に製造することができる。
【0015】
第2ドライエッチング工程により光取出層がエッチングされる深さ方向の第2エッチング量は、第1ドライエッチング工程により光取出層がエッチングされる深さ方向の第1エッチング量の10%以上20%以下であってもよい。
【0016】
第2ドライエッチング工程は、第1ドライエッチング工程とエッチレートが同じであり、第2ドライエッチング工程が実行される第2エッチング時間は、第1ドライエッチング工程が実行される第1エッチング時間の10%以上20%以下であってもよい。
【0017】
半導体発光素子は、サファイア(Al)層および窒化アルミニウム(AlN)層の少なくとも一方を含むベース構造体と、ベース構造体の上に形成され、深紫外光を発する窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体層を含む発光構造体と、を備えてもよい。光取出層は、ベース構造体のサファイア層、AlN層または酸化シリコン(SiO)層であってもよい。
【0018】
ドライエッチングする工程は、エッチングガスとして塩素(Cl)または三塩化ホウ素(BCl)を用いてもよい。
【0019】
マスクは、樹脂であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、半導体発光素子の光取出効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態に係る半導体発光素子の構成を概略的に示す断面図である。
図2】凹凸構造の構成を概略的に示す上面図である。
図3】凹凸構造の構成を概略的に示す断面図である。
図4】凹凸構造の構成を概略的に示す断面図である。
図5】半導体発光素子の製造方法を示すフローチャートである。
図6】凹凸構造の製造工程を模式的に示す図である。
図7】凹凸構造の製造工程を模式的に示す図である。
図8】凹凸構造の製造工程を模式的に示す図である。
図9】凹凸構造の製造工程を模式的に示す図である。
図10図10(a)および図10(b)は、第1ドライエッチング工程で形成される凹凸構造を示す電子顕微鏡画像である。
図11図11(a)および図11(b)は、第2ドライエッチング工程で形成される凹凸構造を示す電子顕微鏡画像である。
図12】変形例に係る半導体発光素子の構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、説明の理解を助けるため、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の発光素子の寸法比と一致しない。
【0023】
図1は、実施の形態に係る半導体発光素子10の構成を概略的に示す断面図である。半導体発光素子10は、ベース構造体20と、発光構造体30とを備える。ベース構造体20は、基板22、第1ベース層24、第2ベース層26を含む。発光構造体30は、n型クラッド層32、活性層34、電子ブロック層36、p型クラッド層38、p型コンタクト層40、p側電極42、n型コンタクト層44、n側電極46を含む。
【0024】
半導体発光素子10は、中心波長が約365nm以下となる「深紫外光」を発するように構成される半導体発光素子である。このような波長の深紫外光を出力するため、活性層34は、バンドギャップが約3.4eV以上となる窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料で構成される。本実施の形態では、特に、中心波長が約280nmの深紫外光を発する場合について示す。
【0025】
本明細書において、「AlGaN系半導体材料」とは、主に窒化アルミニウム(AlN)と窒化ガリウム(GaN)を含む半導体材料のことをいい、窒化インジウム(InN)などの他の材料を含有する半導体材料を含むものとする。したがって、本明細書にいう「AlGaN系半導体材料」は、例えば、In1−x−yAlGaN(0≦x+y≦1、0≦x≦1、0≦y≦1)の組成で表すことができ、AlN、GaN、AlGaN、窒化インジウムアルミニウム(InAlN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)を含むものとする。
【0026】
また「AlGaN系半導体材料」のうち、AlNを実質的に含まない材料を区別するために「GaN系半導体材料」ということがある。「GaN系半導体材料」には、主にGaNやInGaNが含まれ、これらに微量のAlNを含有する材料も含まれる。同様に、「AlGaN系半導体材料」のうち、GaNを実質的に含まない材料を区別するために「AlN系半導体材料」ということがある。「AlN系半導体材料」には、主にAlNやInAlNが含まれ、これらに微量のGaNが含有される材料も含まれる。
【0027】
基板22は、サファイア(Al)基板である。基板22は、変形例において窒化アルミニウム(AlN)基板であってもよい。基板22は、第1主面22aと、第1主面22aの反対側の第2主面22bとを有する。第1主面22aは、結晶成長面となる一主面であり、例えば、サファイア基板の(0001)面である。第2主面22bは、光取出面となる一主面であり、サブミクロン程度の微小な凹凸構造(テクスチャ構造)50が形成される。凹凸構造50の詳細な構造については別途後述する。基板22の第1主面22a上には、第1ベース層24および第2ベース層26が積層される。第1ベース層24は、AlN系半導体材料で形成される層であり、例えば、高温成長させたAlN(HT−AlN)層である。第2ベース層26は、AlGaN系半導体材料で形成される層であり、例えば、アンドープのAlGaN(u−AlGaN)層である。
【0028】
基板22、第1ベース層24および第2ベース層26は、n型クラッド層32から上の層を形成するための下地層(テンプレート)として機能する。またこれらの層は、活性層34が発する深紫外光を外部に取り出すための光取出層として機能し、活性層34が発する深紫外光を透過する。第1ベース層24および第2ベース層26は、活性層34からの深紫外光の透過率が高まるように、活性層34よりもAlN比率の高いAlGaN系またはAlN系材料で構成されることが好ましく、活性層34より低屈折率の材料で構成されることが好ましい。また、第1ベース層24および第2ベース層26は、基板22より高屈折率の材料で構成されることが好ましい。例えば、基板22がサファイア基板(屈折率n=1.8程度)であり、活性層34がAlGaN系半導体材料(屈折率n=2.4〜2.6程度)である場合、第1ベース層24や第2ベース層26は、AlN層(屈折率n=2.1程度)や、AlN組成比が相対的に高いAlGaN系半導体材料(屈折率n=2.2〜2.3程度)で構成されることが好ましい。
【0029】
n型クラッド層32は、第2ベース層26の上に設けられるn型半導体層である。n型クラッド層32は、n型のAlGaN系半導体材料で形成され、例えば、n型の不純物としてシリコン(Si)がドープされるAlGaN層である。n型クラッド層32は、活性層34が発する深紫外光を透過するように組成比が選択され、例えば、AlNのモル分率が40%以上、好ましくは、50%以上となるように形成される。n型クラッド層32は、活性層34が発する深紫外光の波長よりも大きいバンドギャップを有し、例えば、バンドギャップが4.3eV以上となるように形成される。n型クラッド層32は、100nm〜300nm程度の厚さを有し、例えば、200nm程度の厚さを有する。
【0030】
活性層34は、n型クラッド層32の一部領域上に形成される。活性層34は、AlGaN系半導体材料で形成され、n型クラッド層32と電子ブロック層36に挟まれてダブルヘテロ接合構造を構成する。活性層34は、単層もしくは多層の量子井戸構造を構成してもよい。このような量子井戸構造は、例えば、n型のAlGaN系半導体材料で形成されるバリア層と、アンドープのAlGaN系半導体材料で形成される井戸層とを積層させることにより形成される。活性層34は、波長355nm以下の深紫外光を出力するためにバンドギャップが3.4eV以上となるように構成され、例えば、波長310nm以下の深紫外光を出力できるようにAlN組成比が選択される。
【0031】
電子ブロック層36は、活性層34の上に形成される。電子ブロック層36は、p型のAlGaN系半導体材料で形成される層であり、例えば、p型の不純物としてマグネシウム(Mg)がドープされるAlGaN層である。電子ブロック層36は、例えば、AlNのモル分率が40%以上、好ましくは、50%以上となるように形成される。電子ブロック層36は、AlNのモル分率が80%以上となるように形成されてもよく、実質的にGaNを含まないAlN系半導体材料で形成されてもよい。電子ブロック層36は、1nm〜10nm程度の厚さを有し、例えば、2nm〜5nm程度の厚さを有する。
【0032】
p型クラッド層38は、電子ブロック層36の上に形成される。p型クラッド層38は、p型のAlGaN系半導体材料で形成される層であり、例えば、MgドープのAlGaN層である。p型クラッド層38は、電子ブロック層36よりもAlNのモル分率が低くなるように組成比が選択される。p型クラッド層38は、300nm〜700nm程度の厚さを有し、例えば、400nm〜600nm程度の厚さを有する。
【0033】
p型コンタクト層40は、p型クラッド層38の上に形成される。p型コンタクト層40は、p型のAlGaN系半導体材料で形成され、電子ブロック層36やp型クラッド層38よりもAl含有率が低くなるように組成比が選択される。p型コンタクト層40は、AlNのモル分率が20%以下であることが好ましく、AlNのモル分率が10%以下であることがより望ましい。p型コンタクト層40は、実質的にAlNを含まないp型のGaN系半導体材料で形成されてもよい。p型コンタクト層40のAlNのモル分率を小さくすることにより、p側電極42との良好なオーミック接触を得ることができる。また、p型コンタクト層40のバルク抵抗を下げることができ、活性層34へのキャリア注入効率を向上させることができる。
【0034】
p側電極42は、p型コンタクト層40の上に設けられる。p側電極42は、p型コンタクト層40との間でオーミック接触が実現できる材料で形成され、例えば、ニッケル(Ni)/金(Au)の積層構造により形成される。各金属層の厚さは、例えば、Ni層が60nm程度であり、Au層が50nm程度である。
【0035】
n型コンタクト層44は、n型クラッド層32の上の活性層34が設けられていない露出領域に設けられる。n型コンタクト層44は、n型クラッド層32よりもAl含有率が低くなるように組成比が選択されるn型のAlGaN系半導体材料またはGaN系半導体材料で構成される。n型コンタクト層は、AlNのモル分率が20%以下であることが好ましく、AlNのモル分率が10%以下であることがより望ましい。
【0036】
n側電極46は、n型コンタクト層44の上に設けられる。n側電極46は、例えば、チタン(Ti)/Al/Ti/Auの積層構造により形成される。各金属層の厚さは、例えば、第1のTi層が20nm程度であり、Al層が100nm程度であり、第2のTi層が50nm程度であり、Au層が100nm程度である。
【0037】
凹凸構造50は、光取出層である基板22の第2主面(光取出面ともいう)22bに形成される。凹凸構造50は、第2主面22bにおける反射または全反射を抑制し、第2主面22bから出力される深紫外光の外部取出効率を高める。凹凸構造50は、光取出面にアレイ状に形成される複数の錐形状部52と、錐形状部52の側面部に形成される複数の粒状部56とを有する。本実施の形態では、相対的に大きな突起部である錐形状部52と、相対的に小さな突起部である粒状部56とを組み合わせた凹凸構造50が形成される。凹凸構造50は、第2主面22bの略全面にわたって形成される。変形例においては、第2主面22bの一部領域のみに凹凸構造50が形成されてもよい。
【0038】
図2は、凹凸構造50の構成を模式的に示す上面図であり、複数の錐形状部52の配置を模式的に示す。図2では、説明を分かりやすくするために粒状部56の記載を省略している。複数の錐形状部52は、図示されるように、三角格子状に並んで配置される。錐形状部52は、四方格子状に配置されてもよい。錐形状部52は、基板22と同じ材料で構成され、例えばサファイア(Al)や窒化アルミニウム(AlN)で構成される。錐形状部52は、光取出面の平面視において、外郭が円形となる円錐形状を有する。錐形状部52は、外郭が完全な円形である必要はなく、六角形などの多角形に近い形状の外郭を有してもよい。したがって、錐形状部52は、六角錐などの多角錐に近い形状を有してもよいし、円錐と角錐の中間のような形状を有してもよい。
【0039】
錐形状部52は、隣接する錐形状部52の間のピッチpが100nm以上1000nm以下となるよう形成され、好ましくは、250nm以上600nm以下となるように形成される。ここで、錐形状部52のピッチpとは、隣接する錐形状部52(例えば52bおよび52c)の頂点間の距離である。なお、錐形状部52のピッチpは、出力波長λを基準に決定されてもよく、例えば、出力波長λの0.5倍以上3倍以下となるように形成され、好ましくは出力波長λの0.8倍以上2倍以下となるよう形成されてもよい。例えば、出力波長λ=280nmとすると、錐形状部52の直径φは、140nm以上840nm以下であってよく、230nm以上560nm以下となるよう形成されてもよい。錐形状部52の直径φは、例えば、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm程度であってもよい。
【0040】
錐形状部52は、錐形状部52の底部の直径φがピッチpよりわずかに小さくなるように形成され、隣接する二つの錐形状部52の間に間隙dが設けられるように形成される。錐形状部52の直径φは、ピッチpの0.7倍以上0.95倍以下となるように形成され、好ましくはピッチpの0.8倍以上0.9倍以下となるよう形成される。例えば、錐形状部52のピッチpが300nmであれば、錐形状部52の直径φは、210nm以上280nm以下となるように形成され、好ましくは240nm以上270nm以下となるように形成される。したがって、隣接する二つの錐形状部52の間隙dは、20nm以上90nm以下となるように形成され、好ましくは30nm以上60nm以下となるように形成される。
【0041】
光取出面には、錐形状部52が形成されていない領域である平坦部58が設けられる。平坦部58は、三角格子を構成する三つの錐形状部52(例えば52a,52bおよび52d)に囲われる谷間に位置する。つまり、平坦部58は、光取出面の平面視において、隣接する三つの錐形状部52に囲われる略三角形状の領域である。ここで、平坦部58とは、ベース構造体20および発光構造体30の積層方向に直交する平面(基板22のc面)と略平行となる箇所をいい、錐形状部52の側面部のように傾斜した部分と対比される箇所を示す。平坦部58には、後述する図4に示されるように粒状部56が設けられる。したがって、平坦部58は、完全にフラットな平面を意味するのではなく、錐形状部52のような相対的に大きな突起形状と比較して相対的に平坦であることを意味する。
【0042】
複数の錐形状部52は、光取出面の平面視において、ある一定の割合の面積を占めるように形成される。複数の錐形状部52は、光取出面の単位面積あたりに70%以上85%以下の面積を占めるように形成される。仮に、複数の錐形状部52が六方最密充填となるように配置された場合、その占める面積の割合は約90%である。しかしながら、複数の錐形状部52は、六方最密充填よりも小さい割合の面積を占めるように形成される。その結果、隣接する二つの錐形状部52の間に間隙dが設けられるとともに、六方最密充填とした場合と比べて相対的に面積割合の大きい平坦部58が設けられる。
【0043】
図3は、凹凸構造50の構成を概略的に示す断面図であり、図2のA−A線断面を示す。図示されるように、複数の錐形状部52(52a,52b、52c)は、所定のピッチpで並んでいる。複数の錐形状部52は、ほぼ均一な高さhを有するように形成される。錐形状部52の高さhは、錐形状部52のピッチpの0.5倍以上2倍以下であり、好ましくはピッチpの0.8倍以上1.5倍以下である。例えば、錐形状部52のピッチpが300nmであれば、錐形状部52の高さhは150nm以上600nm以下であり、好ましくは240nm以上400nm以下である。
【0044】
錐形状部52は、図示する断面視において、側面部53の傾きが底部54よりも頂部55において小さくなる形状を有する。錐形状部52は、側面部53の底部54付近の傾斜角θと頂部55付近の傾斜角θを比較すると、θ>θとなる形状を有する。つまり、錐形状部52は、頂部55付近において側面部53の傾斜がなだらかとなる形状を有しており、厳密な錐形状と比較して頂部55付近が丸みを帯びた形状を有している。その結果、錐形状部52の側面部53は、錐形状部52の外側に向かって凸となる曲面形状を有する。
【0045】
錐形状部52の側面部53には、複数の粒状部56が形成される。粒状部56は、半球形状または半球に近似した形状を有し、錐形状部52の側面部53の全体にわたって分散配置されている。粒状部56は、錐形状部52と同じ材料または錐形状部52を構成する元素の一部を少なくとも含む材料で構成される。基板22および錐形状部52がサファイアまたは窒化アルミニウムである場合、粒状部56は、サファイア(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミニウム(Al)、または、アルミニウムを含む化合物などで構成される。
【0046】
粒状部56は、その粒径または直径sの平均値が10nm以上90nm以下であり、好ましくは20nm以上60nm以下である。粒状部56の直径sは、出力波長λを基準に決められてよく、例えば、出力波長λの0.05倍以上0.3倍以下となるように形成され、好ましくは出力波長λの0.1倍以上0.2倍以下となるように形成されてもよい。例えば、出力波長λ=280nmとすると、粒状部56の直径sの平均値は、15nm以上80nm以下であり、好ましくは30nm以上50nm以下である。なお、ここに例示する粒状部56の大きさは目安であり、それぞれの粒状部56の直径sが所定の範囲内に厳密に含まれなければならないことを意味するものではない。
【0047】
図4は、凹凸構造50の構成を概略的に示す断面図であり、図2のB−B線断面を示す。図4に示す断面では、隣接する錐形状部52の谷間に位置する平坦部58が含まれている。図示されるように、粒状部56は、錐形状部52の側面部53と、平坦部58とに設けられている。粒状部56は、平坦部58において分散して複数形成される。平坦部58に形成される粒状部56の形状、大きさ、材料は、錐形状部52の側面部53に形成される粒状部56と同様である。
【0048】
つづいて、半導体発光素子10の製造方法について述べる。図5は、半導体発光素子10の製造方法を示すフローチャートである。まず、光取出層を備える発光素子を準備し(S10)、光取出層上にアレイ状パターンの樹脂マスクを形成する(S12)。つづいて、マスクの上からマスクと光取出層をドライエッチングし、マスク全体が除去されるまでエッチングする第1ドライエッチング工程を実行する(S14)。つづいて、第1ドライエッチング工程にてマスクが除去されてから光取出層をさらにドライエッチングする第2ドライエッチング工程を実行する(S16)。本実施の形態では、マスクが除去されるまでの第1ドライエッチング工程と、マスクが除去されてからさらにオーバエッチングする第2ドライエッチング工程とを実行する。
【0049】
発光素子を準備する工程では、凹凸構造50が形成されていない基板22を用意し、基板22の第1主面22a上に第1ベース層24、第2ベース層26、n型クラッド層32、活性層34、電子ブロック層36、p型クラッド層38、p型コンタクト層40を順に積層させる。AlGaN系またはGaN系半導体材料で形成される第2ベース層26、n型クラッド層32、活性層34、電子ブロック層36、p型クラッド層38およびp型コンタクト層40は、有機金属化学気相成長(MOVPE)法や、分子線エピタキシ(MBE)法などの周知のエピタキシャル成長法を用いて形成できる。
【0050】
次に、n型クラッド層32の上に積層される活性層34、電子ブロック層36、p型クラッド層38およびp型コンタクト層40の一部を除去し、n型クラッド層32の一部領域を露出させる。例えば、p型コンタクト層40上の一部領域を避けてマスクを形成し、反応性イオンエッチングやプラズマ等を用いたドライエッチングを行うことにより、活性層34、電子ブロック層36、p型クラッド層38およびp型コンタクト層40の一部を除去し、n型クラッド層32の一部領域を露出させることができる。
【0051】
次に、露出したn型クラッド層32の一部領域上にn型コンタクト層44が形成される。n型コンタクト層44は、有機金属化学気相成長(MOVPE)法や、分子線エピタキシ(MBE)法などの周知のエピタキシャル成長法を用いて形成できる。つづいて、p型コンタクト層40の上にp側電極42が形成され、n型コンタクト層44の上にn側電極46が形成される。p側電極42およびn側電極46を構成する各金属層は、例えば、MBE法などの周知の方法により形成できる。
【0052】
次に、基板22の第2主面22bに凹凸構造50が形成される。図6図9は、凹凸構造50の製造工程を模式的に示す図であり、凹凸構造50が未形成の光取出層60の被処理面60cに対する処理工程を示す。光取出層60は、光取出面が形成されるべき層であり、図1に示す半導体発光素子10の基板22に対応する層である。
【0053】
図6は、光取出層60の上にマスク62を形成する工程を示す。光取出層60の被処理面60cは、例えばサファイア基板の(0001)面(c面)である。マスク62は、凹凸構造50の錐形状部52に対応したアレイ状のパターンを有し、アレイ状に配置される複数の柱状部64を有する。複数の柱状部64は、三角格子状に配置され、それぞれが角柱または円柱形状を有する。柱状部64は、例えば六角柱であってもよい。柱状部64にはわずかなテーパ角が設けられてもよく、角錐台または円錐台形状であってもよい。マスク62は、例えば、ナノインプリント技術を用いてレジスト樹脂により形成される。なお、マスク62を形成する方法は特に限定されず、露光や電子ビーム描画などによるリソグラフィ技術を用いて形成されてもよい。
【0054】
マスク62は、隣接する柱状部64のピッチpが錐形状部52のピッチpと同じとなるように形成される。柱状部64の高さhは、錐形状部52の高さhと、光取出層60およびマスク62のエッチングレート比とに基づいて決められる。光取出層60のエッチングレートをe、マスク62のエッチングレートをeとすると、柱状部64の高さはh≒h・e/eの式から求めることができる。なお、柱状部64の高さhは、上記式で算出される値よりも少しだけ大きくてもよく、h・e/eの値より5%〜15%程度大きくてもよい。柱状部64の直径φは、柱状部64のピッチpよりもわずかに小さく、例えば、ピッチpの80%〜95%程度である。
【0055】
つづいて、マスク62の上からドライエッチング処理が実行される。光取出層60およびマスク62のドライエッチング方法として、反応性イオンエッチング(RIE;Reactive Ion Etching)を用いることができ、より具体的には、誘導結合型プラズマ(ICP;Inductive Coupling Plasma)によるプラズマエッチングを用いることができる。プラズマエッチングに用いるガス種は特に限定されないが、エッチングガスとして塩素(Cl)や三塩化ホウ素(BCl)などの塩素系ガスを用いることが好ましい。これらのエッチングガスを用いることにより、光取出層60を構成するサファイアまたは窒化アルミニウム、および、マスク62を構成するレジスト樹脂を好適にエッチングできる。
【0056】
図7は、ドライエッチングされる光取出層60およびマスク62を模式的に示し、上述の第1ドライエッチング工程の中途の状態を示す。第1ドライエッチング工程では、柱状部64が上方および側方から等方的にエッチングされ、エッチング工程が進むにつれて柱状部64の高さhおよび直径φが小さくなっていく。一方、マスク62の下に位置する光取出層60は、マスク62に覆われていない箇所がエッチングされていく。柱状部64の被覆領域は時間経過とともに柱状部64の中心に向かって縮小していくため、光取出層60がエッチングされる領域は時間経過とともに増大していく。その結果、柱状部64の中心からの距離に応じて光取出層60の深さ方向のエッチング量が異なり、マスク62の下方には傾斜面67を有する円錐台または角錐台に近似した形状の突部66が形成される。突部66は、マスク62のアレイ状パターンに対応する位置に形成され、複数の柱状部64のそれぞれに対応する位置に形成される。
【0057】
図8は、ドライエッチングされる光取出層60およびマスク62を模式的に示し、第1ドライエッチング工程の終了直前の状態を示す。図7に示す状態からさらにドライエッチング工程を進めると、柱状部64はさらに小さくなり、最終的には光取出層60の上からマスク62の全体が除去される。光取出層60は、突部66の頂部68の幅(直径)がより小さくなるようエッチングされる。その結果、頂部68が尖った円錐または角錐に近似した形状の突部66が形成される。このときの突部66の高さhは、第1ドライエッチング工程により光取出層60がエッチングされる深さ方向のエッチング量(第1エッチング量ともいう)に相当し、h=h・e/eの式で表すことができる。ここで、hはマスク62の初期の高さであり、eは光取出層60のエッチングレートであり、eはマスク62のエッチングレートである。
【0058】
本実施の形態では、第1ドライエッチング工程にてマスク62全体が除去された後、光取出層60をさらにドライエッチングする第2ドライエッチング工程が実行される。第2ドライエッチング工程は、第1ドライエッチング工程とエッチング条件が実質的に同じエッチング工程であり、第1ドライエッチング工程と連続して実行される。つまり、エッチング処理室に発光素子を入れたままの状態で第1ドライエッチング工程につづいて第2ドライエッチング工程が実行される。なお変形例においては、第2ドライエッチング工程が第1ドライエッチング工程と分離して実行されてもよく、第1ドライエッチング工程と第2ドライエッチング工程の間に何らかの追加処理が実行されてもよい。また、第1ドライエッチング工程と第2ドライエッチング工程の処理条件を異ならせてもよい。例えば、エッチングガス、エッチングレートなどの処理条件を異ならせてもよい。
【0059】
図9は、ドライエッチングされる光取出層60を模式的に示し、第2ドライエッチング工程の実行により錐形状部52および粒状部56が形成された状態を示す。第2ドライエッチング工程は、マスク62が存在しない状態で実行され、いわゆるマスクレスでのフリーランニングのドライエッチング処理である。第2ドライエッチング工程では、ドライエッチングにより生じる反応生成物がランダムに光取出層60の表面に付着したり、光取出層60の微視的な組成の不均一性に起因してエッチング量が場所に応じて異なったりする。その結果、錐形状部52の側面部53には粒状部56が形成され、側面部53に微細な凹凸が生じることなる。これは、図8に示される表面粗さの低い傾斜面67とは対照的である。
【0060】
第2ドライエッチング工程では、マスクレスでのエッチング処理が実行され、隣接する錐形状部52の間に間隙dが形成される。また、隣接する三つの錐形状部52の谷間に位置する平坦部58(図2参照)が形成され、平坦部58にも粒状部56(図4参照)が形成される。また、第2ドライエッチング工程の開始時は、突部66の頂部68が尖っているため、プラズマエッチング中に印加される電界が頂部68に集中しやすく、頂部68の近傍におけるエッチングレートが相対的に高くなる。その結果、頂部68の付近がより多くエッチングされることとなり、その結果、形成される錐形状部52の頂部55が丸みを帯びたような形状となる。
【0061】
第2ドライエッチング工程は、第1ドライエッチング工程よりも処理時間またはエッチング量が少ない。例えば、第2ドライエッチング工程により光取出層60がエッチングされる深さ方向のエッチング量(第2エッチング量ともいう)は、第1ドライエッチング工程における第1エッチング量の10%以上20%以下となるように調整される。第2ドライエッチング工程における第2エッチング量は、マスク62が形成されていた被処理面60cから錐形状部52の頂部55までの高さhに相当する。第1ドライエッチング工程と第2ドライエッチング工程のエッチレートが同じであれば、第2ドライエッチング工程が実行される第2ドライエッチング時間は、第1ドライエッチング工程が実行される第1ドライエッチング時間の10%以上20%以下である。第2ドライエッチング工程をこのように制御することで、錐形状部52が占める面積割合を70%以上85%以下にするとともに、錐形状部52の側面部53に粒状部56が分散形成されるようにできる。
【0062】
図10(a)および図10(b)は、ある実施例に係る第1ドライエッチング工程で形成される凹凸構造を示す電子顕微鏡画像である。図10(a)は断面図であり、図10(b)は上面図である。本図は、第1ドライエッチング工程の終了後の状態を示し、図8に示す状態に対応する。本図に示す実施例では、ピッチp=300nmとしている。図示されるように、第1ドライエッチング工程後の状態では、円錐ないし角錐形状の突部の傾斜面の表面粗さが低く、比較的平坦であることが分かる。
【0063】
図11(a)および図11(b)は、ある実施例に係る第2ドライエッチング工程で形成される凹凸構造を示す電子顕微鏡画像である。図11(a)は断面図であり、図11(b)は上面図である。本図は、第2ドライエッチング工程の終了後の状態を示し、図9に示す状態に対応する。図示されるように、第2ドライエッチング工程後の状態では、錐形状部の側面部に粒状部が分散形成されていることが分かる。また、隣接する三つの錐形状部の谷間に位置する平坦部にも粒状部が形成されていることが分かる。これは、図10(a)および図10(b)に示す凹凸構造と対照的である。
【0064】
つづいて、本実施の形態が奏する効果について述べる。本実施の形態に係る凹凸構造50の効果を定量化するため、光取出面の構造が異なる二つの比較例を作成した。比較例1では、基板22の第2主面22bに凹凸構造を形成せずに平坦面のままとした。比較例2では、基板22の第2主面22bにアレイ状の錐形状部のみからなる凹凸構造を形成した。比較例2に係る光取出面は、図10(a)および図10(b)に対応する。実施例では、基板22の第2主面22bに錐形状部52と粒状部56を組み合わせた凹凸構造50を形成した。実施例に係る光取出面は、図11(a)および図11(b)に対応する。光取出面からの出力強度を比較したところ、比較例2では、比較例1に対して出力強度が約22%向上し、実施例では、比較例1に対して出力強度が約32%向上することが分かった。このことから、光取出面にアレイ状に錐形状部52を形成するとともに、錐形状部52の側面部53および隣接する錐形状部52の谷間に位置する平坦部58の双方に粒状部56を形成することで、光取出面からの光取出効率をさらに高めることができる。
【0065】
本実施の形態によれば、錐形状部52と粒状部56を組み合わせた構造の形成に1種類のマスクのみを用いればよいため、製造工程を簡略化し、製造コストを下げることができる。従来では、サイズの異なる凹凸形状を組み合わせて形成しようとする場合、形成しようとする凹凸のサイズに合わせて複数種類のマスクを適用する必要があり、使用するマスクの種類数に対応する工程数が必要であった。一方、本実施の形態によれば、1種類のマスクのみを用いればよく、第1ドライエッチング工程と第2ドライエッチング工程を連続的に実行すればよいため、製造工程数が少なくて済む。したがって、本実施の形態によれば、製造コストの増加を抑えながら、半導体発光素子10の光取出効率を高めることができる。
【0066】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0067】
図12は、変形例に係る半導体発光素子10の構成を概略的に示す断面図である。本変形例では、ベース構造体20に第3ベース層28がさらに設けられ、第3ベース層28の一主面である光取出面28bに凹凸構造50が形成される。以下、本変形例について、上述の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0068】
ベース構造体20は、基板22と、第1ベース層24と、第2ベース層26と、第3ベース層28を有する。基板22は、平坦面である第1主面22aおよび第2主面22bを有する。第3ベース層28は、基板22の第2主面22bの上に設けられる。したがって、第3ベース層28は、基板22を挟んで発光構造体30と反対側に設けられる。第3ベース層28は、光取出層として機能する。
【0069】
第3ベース層28は、活性層34が発する深紫外光の波長に対して、活性層34より屈折率が低く、基板22より屈折率が高い材料で構成される。基板22がサファイア(屈折率n=1.8程度)であり、活性層34がAlGaN系半導体材料(屈折率n=2.4〜2.6程度)である場合、第3ベース層28は、AlN(屈折率n=2.1程度)や、AlN組成比の相対的に高いAlGaN系半導体材料(屈折率n=2.2〜2.3程度)で構成されることが好ましい。第3ベース層28は、窒化シリコン(SiN、屈折率n=1.9〜2.1程度)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化シリコン(SiOであってもよい。第3ベース層28は、活性層34が発する深紫外光の透過率が高いと好ましく、内部透過率が90%以上となるよう構成されることが好ましい。
【0070】
第3ベース層28は、例えば、アンドープのAlGaN系半導体材料やAlNなどで構成され、有機金属化学気相成長(MOVPE)法や、分子線エピタキシ(MBE)法などの周知のエピタキシャル成長法を用いて形成できる。第3ベース層28は、基板22の第1主面22aの上に第1ベース層24、第2ベース層26および発光構造体30を形成した後に形成されてもよいし、基板22の第1主面22aの上に各層が形成される前に形成されてもよい。第3ベース層28は、第1ベース層24や第2ベース層26を形成する工程と同時に形成されてもよい。本変形例によれば、基板22の第2主面22bに基板22よりも低屈折率の第3ベース層28を設けることで、光取出面28bにて生じる全反射の影響をさらに緩和することができる。
【0071】
上述の実施の形態および変形例では、発光構造体30を形成した後に光取出層に凹凸構造50を形成する場合を示した。さらなる変形例においては、光取出層に凹凸構造50を形成した後に発光構造体30を形成してもよい。例えば、凹凸構造50があらかじめ形成された基板22を用意し、その基板上に発光構造体30を形成してもよい。
【0072】
上述の実施の形態および変形例では、深紫外光を出力する半導体発光素子10に対して凹凸構造50を形成する場合を示した。さらなる変形例においては、深紫外光以外の光を出力する半導体発光素子に対して上述の凹凸構造50を適用してもよい。例えば、360nm〜400nmの紫外光を出力する発光素子、400nm〜450nmの青色光を出力する発光素子に凹凸構造50を適用してもよい。また、凹凸構造50は、緑色、黄色、赤色などの可視光を出力する発光素子に適用されてもよいし、赤外光を出力する発光素子に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…半導体発光素子、20…ベース構造体、22…基板、22a…第1主面、22b…第2主面、28b…光取出面、30…発光構造体、50…凹凸構造、52…錐形状部、53…側面部、54…底部、54…粒状部、55…頂部、56…粒状部、58…平坦部、60…光取出層、62…マスク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12