(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1及び
図2は、本発明の実施形態に係る雪上車1の側面図及び正面図である。
図2では、雪上車1の前部を覆うフロントカバー9(
図1参照)の図示を省略している。以下の説明では、これらの図において矢印Y1、Y2で示す方向をそれぞれ前方、後方と称し、矢印Z1、Z2で示す方向をそれぞれ上方、下方と称し、矢印X1、X2で示す方向をそれぞれ右方向、左方向と称する。
【0016】
図2に示されるように、雪上車1は、車体フレーム30の右方向に配置される右スキー41Rと、車体フレーム30の左方向に配置される左スキー41Lとを接地部として有している。右スキー41Rは、ロアアーム42Rとアッパーアーム43Rによって支持されている。同様に、左スキー41Lは、ロアアーム42Lとアッパーアーム43Lによって支持されている。右側のアーム42R、43Rは、車体フレーム30に連結された基部から右方向に伸び、右スキー41Rが下端に連結されたナックル44に連結されている。左側のアーム42L、43Lは、車体フレーム30に連結された基部から左方向に伸び、左スキー41Lが下端に連結されたナックル44に連結されている。アーム42R、43R、42L、43Lの基部は、車体フレーム30に回転可能に連結されており、これによりスキー41R、41Lは車体フレーム30に対して相対的に上下動可能となっている。
【0017】
雪上車1は、本発明の実施形態に係るショックアブソーバ50R,50L(以下、「ショックアブソーバ50」とも総称する。)を有している。右ショックアブソーバ50Rは、右ダンパー51Rと右スプリング52Rとを有している。左ショックアブソーバ50Lは、左ダンパー51Lと左スプリング52Rとを有している。ダンパー51R、51L(以下、「ダンパー51」とも総称する。)の一端は車体フレーム30に設けられたブラケット301にそれぞれ連結されており、ダンパー51R、51Lの他端はロアアーム42R、42Lに設けられたブラケット421にそれぞれ連結されている。スプリング52R,52L(以下、「スプリング52」とも総称する。)は、例えばコイルスプリングであり、ダンパー51R、51Lの伸縮に応じてばね力を発揮する。ショックアブソーバ50R、50Lの詳細な構成は後述する。
【0018】
図1に示されるように、雪上車1は、駆動系としてエンジン11と変速機12とを有している。エンジン11は、クランク軸(不図示)を収容するクランクケース11dと、クランクケース11dに取り付けられたシリンダブロック11bと、シリンダブロック11bに取り付けられたシリンダヘッド11cとを有している。シリンダブロック11bの内部にはシリンダが形成されている。シリンダヘッド11cの内部にはシリンダの燃焼室に繋がる吸気通路と排気通路とが形成されている。クランクケース11dは、車体側面視において、スキー41R、41Lを支持するアーム42R、43R、42L、43Lよりも後方に位置している。シリンダブロック11bとシリンダヘッド11cは、シリンダの軸線が後方に傾斜するように配置されている。エンジン11の姿勢は、図示の例に限られない。
【0019】
変速機12は、例えば無段変速機であり、クランク軸からトルクを受ける駆動プーリ12aと、駆動プーリ12aからトルクを受ける被駆動プーリ12bとを有している。プーリ12a、12bには、駆動プーリ12aのトルクを被駆動プーリ12bに伝えるベルトが掛けられている。駆動プーリ12aは例えばクランク軸の端部に設けられている。被駆動プーリ12bは、例えばクランク軸より後方に位置し且つクランク軸よりも高い位置に位置するセカンダリ軸(不図示)に設けられる。変速機12は必ずしも無段変速機でなくてもよく、例えば複数の変速段に対応したギアを有するギア式であってもよい。
【0020】
雪上車1は、トラックベルト16に引っ掛かるスプロケットが設けられたトラックベルト駆動軸14を有している。トラックベルト駆動軸14は、ベルト又はチェーン等を介してセカンダリ軸と連結されており、変速機12を通してエンジン11のトルクを受ける。トラックベルト16の内側には、トラックベルト16をガイドするガイド輪15a、15b、15c及びスライドレール17と、車体フレーム30に支持されたガイド輪15cとスライドレール17との間に介在するリンク構造18及びショックアブソーバ19とが配置されている。トラックベルト16をガイドするスライドレール17は、リンク構造18によって車体フレーム30に対して相対的に上下動可能となっている。ショックアブソーバ19は、車体フレーム30とトラックベルト16との間に配置されている。
【0021】
雪上車1は、運転者が座るためのシート8を有している。シート8は、トラックベルト16の上方に配置されている。シート8の前方には、スキー41R、41Lを操舵するためのステアリングハンドル21が配置されている。ステアリングハンドル21は、ステアリングコラム22の上部に取り付けられている。ステアリングコラム22は、ステアリングハンドル21の中央部から下方且つ前方に斜めに伸びている。ステアリングハンドル21は、ステアリングコラム22とタイロッド45(
図2参照)とを通してスキー41R、41Lに連結されている。
【0022】
以下、本発明の実施形態に係るショックアブソーバ50について説明する。このショックアブソーバ50は、後述するように、油圧による力が収縮方向に作用するショックアブソーバである。
図3及び
図4は、ショックアブソーバ50の正面図及び側面図である。
図5及び
図6は、ショックアブソーバ50をシリンダ60の軸線CAを通るように
図4のV−V線に沿って切断したときのショックアブソーバ50の断面図である。
図5はショックアブソーバ50が最も伸長した状態を示し、
図6はショックアブソーバ50が最も収縮した状態を示している。
【0023】
以下の説明では、これらの図において、シリンダ60の軸線CAと平行な矢印Z3、Z4で示す方向をそれぞれ上方、下方と称する。ショックアブソーバ50における上方、下方は、雪上車1における上方、下方に対応している。
【0024】
ショックアブソーバ50のダンパー51は、オイルで満たされた円筒状のシリンダ60と、シリンダ60内で上下方向に摺動可能なピストン65と、ピストン65に対して下方に延びる第1のロッド(主ロッド)61と、ピストン65に対して上方に延びる第2のロッド(副ロッド)62とを有している。第1のロッド61の下方の端部には、緩衝の目的となる2つの対象の一方に取り付けられるロッド取付部材81が設けられており、シリンダ60の上方の端部には、当該2つの対象の他方に取り付けられるシリンダ取付部材95が設けられている。スプリング52は、ロッド取付部材81とシリンダ取付部材95との相対移動に応じて伸縮する。
【0025】
シリンダ60は、円筒状のシリンダチューブ64と、シリンダチューブ64の上方の端部に設けられ、第1のロッド61が貫通する第1のロッドガイド70と、シリンダチューブ64の下方の端部に設けられ、第2のロッド62が貫通する第2のロッドガイド75とを有している。第1のロッドガイド70は、シリンダチューブ64の下方の端部に嵌め入れられている。第1のロッドガイド70は、略中空筒状のガイド本体71と、ガイド本体71の下方に位置する蓋体72と、第1のロッド61とガイド本体71の間に介在するオイルシール73と、ガイド本体71の上部に取り付けられたゴム部材74とを有している。蓋体72は、シリンダチューブ64の下端の開口を塞ぎ、ガイド本体71にネジ留めされている。ゴム部材74は、ショックアブソーバ50が最も伸長したときに後述するストッパ66に当接する(
図5参照)。
【0026】
第2のロッドガイド75は、シリンダチューブ64の上方の端部に取り付けられるキャップ部材90に嵌め入れられており、シリンダチューブ64の上端の開口を塞ぐように配置されている。第2のロッドガイド75は、略中空筒状のガイド本体76と、ガイド本体76の上方に位置する円環状の板部材77と、第2のロッド62とガイド本体76の間に介在するオイルシール78と、ガイド本体76の下部に取り付けられた円環状の板部材79とを有している。板部材79は、ショックアブソーバ50が最も収縮したときに後述するストッパ67に当接する(
図6参照)。ガイド本体76の下部の径はシリンダチューブ64の上端の開口の径よりも小さく、シリンダチューブ64の上端と第2のロッドガイド75との間には隙間759が形成されている。シリンダ60内の空間は、この隙間759を通じて後述する加圧機構100に連結される。
【0027】
ピストン65は、シリンダチューブ64内の第1のロッドガイド70と第2のロッドガイド75との間で、シリンダ60の軸方向である上下方向に摺動可能に配置されている。ピストン65は、シリンダチューブ64内の第1のロッドガイド70と第2のロッドガイド75との間のオイルで満たされる空間を、第1の油室60Aと第2の油室60Bとに仕切っている。第1の油室60Aはピストン65と第1のロッドガイド70との間の空間であり、第2の油室60Bはピストン65と第2のロッドガイド75との間の空間である。
【0028】
また、ピストン65には、第1の油室60Aと第2の油室60Bとを連通させる連通路65aが形成されている。ショックアブソーバ50が伸長するとき、すなわちピストン65が下方に移動するとき、第1の油室60Aから第2の油室60Bに連通路65aを通じてオイルが移動する。一方、ショックアブソーバ50が収縮するとき、すなわちピストン65が上方に移動するとき、第2の油室60Bから第1の油室60Aに連通路65aを通じてオイルが移動する。このように連通路65aを通じてオイルが移動することで、減衰力が発生する。
【0029】
ピストン65の下側には第1のロッド61が設けられており、ピストン65の上側には第1のロッド61よりも大径の第2のロッド62が設けられている。第1のロッド61は、ピストン65から下方に延び、第1の油室60Aを通り、第1のロッドガイド70を摺動可能に貫通して、シリンダ60の外部に突出している。第1のロッド61は、ピストン65が下方に向かうほどシリンダ60の外部に排出され、ピストン65が上方に向かうほどシリンダ60の内部に収容される。
【0030】
一方、第2のロッド62は、ピストン65から上方に延び、第2の油室60Bを通り、第2のロッドガイド75を摺動可能に貫通している。第2のロッド62は、ピストン65が最も下方の位置(
図5参照)よりも上方に位置するときに、第2のロッドガイド75からシリンダ60の外部に突出する。第2のロッド62は、ピストン65が下方に向かうほどシリンダ60の内部に収容され、ピストン65が上方に向かうほどシリンダ60の外部に排出される。キャップ部材90は、第2のロッドガイド75を収容してシリンダチューブ64の上方の端部に取り付けられる本体部91の上方に、上下方向に貫通する貫通穴93aを有する円筒状の筒部93を有しており、第2のロッド62は、筒部93の貫通穴03aを貫通してシリンダ60の外部、さらにはキャップ部材90の外部に飛び出す。
【0031】
ピストン65から僅かに下方に離れた位置には、円環板状のストッパ66が設けられている。このストッパ66は、ショックアブソーバ50が最も伸長したとき、すなわちピストン65が最も下方に位置するときに、第1のロッドガイド70のゴム部材74に当接する(
図5参照)。また、ピストン65から僅かに上方に離れた位置にも、円環板状のストッパ67が設けられている。このストッパ67は、ショックアブソーバ50が最も収縮したとき、すなわちピストン65が最も上方に位置するときに、第2のロッドガイド75の板部材79に当接する(
図6参照)。
【0032】
より詳しくは、第1のロッド61の上方の端部は、ピストン65を貫通してピストン65の上方に至っており、第1のロッド61よりも大径の第2のロッド62の下方の端部にねじ込まれている。ストッパ66は、ピストン65の下面と対向するように第1のロッド61の外周に嵌められている。一方、ストッパ67は、ピストン65の上面と対向するように第1のロッド61の外周に嵌められており、第2のロッド62の下面に当接している。また、第1のロッド61には、ピストン65の連通路65aと第1の油室60Aとを連通させる副連通路61aが形成されるとともに、副連通路61aの開度を調整して減衰力を増減させるためのニードル弁612が収容されている。
【0033】
ショックアブソーバ50のダンパー51は、シリンダ60の内部に満たされたオイルを加圧する加圧機構100をさらに有している。加圧機構100は、上下方向を軸方向とする円筒状のシリンダ101と、シリンダ101内で上下方向に摺動可能なピストン102とを有している。ピストン102は、シリンダ101内の空間を、高圧ガスで満たされた気室100Aと、シリンダ60に連通する、オイルで満たされた油室100Bとに仕切っている。加圧機構100は、シリンダチューブ64の上方の端部に取り付けられるキャップ部材90に取り付けられている。
【0034】
より詳しくは、キャップ部材90は、シリンダチューブ64の上方の端部に取り付けられる本体部91から径方向に延びる加圧機構取付部92を有しており、加圧機構100は、加圧機構取付部92の下面に連結されている。加圧機構取付部92には、ダンパー51のシリンダ60と加圧機構100のシリンダ101とを連通させる連通路92aが形成されている。連通路92aは、シリンダチューブ64の上端と第2のロッドガイド75との間に形成された隙間759を通じてシリンダ60内の空間と連通されている。シリンダ101の気室100A内に封入された高圧ガスによってピストン102から油室100B内のオイルに印加される圧力は、加圧機構取付部92に形成された連通路92aを通じてダンパー51のシリンダ60内のオイルに伝わる。
【0035】
本実施形態のショックアブソーバ50では、上述したように、上側に位置する第2のロッド62が下側に位置する第1のロッド61よりも大径に形成されている。この場合、第1のロッド61と第2のロッド62との境界部分において油圧による力が上方向に作用する。本実施形態では、第1のロッド61と第2のロッド62との境界にストッパ67が配置されており、ストッパ67の上側の受圧面の面積が下側の受圧面よりも小さいため、ストッパ67には油圧による力が上方向に作用する。その結果、ストッパ67に連結された第1のロッド61等にも、油圧による力が上方向、すなわち第1のロッド61がシリンダ60に収容される方向に作用する。このようにして、ショックアブソーバ50には油圧による力が収縮方向に作用する。なお、ストッパ67に限られず、ピストン65又はストッパ66が第1のロッド61と第2のロッド62との境界に配置されてもよい。
【0036】
また、このようにストッパ67及びこれに連結された第1のロッド61等には油圧による力が上方向に作用していることから、ショックアブソーバ50が収縮して第1のロッド61が上方に移動すると、加圧機構100のピストン102もオイルの加圧方向である上方向に移動する(
図6参照)。これとは逆に、ショックアブソーバ50が伸長して第1のロッド61が下方に移動すると、加圧機構100のピストン102も下方向に移動する(
図5参照)。
【0037】
第1のロッド61の下方の端部には、上下方向に延びるロッド端連結部材80が取り付けられている。具体的には、第1のロッド61の下方の端部が、ロッド端連結部材80の上方の端部にねじ込まれている。ロッド端連結部材80の下方の端部には、ロッド取付部材81が設けられている。ロッド取付部材81は、前後方向に貫通する貫通穴81aが形成されている。
【0038】
ロッド端連結部材80の上方の端部にはフランジ部82が設けられており、フランジ部82にはスプリングシート83が設けられている。一方、シリンダチューブ64の中途にもスプリングシート69が設けられており、スプリング52は、シリンダチューブ64のスプリングシート69とロッド端連結部材80のスプリングシート83との間で支持されている。スプリング52は、シリンダ60の軸線CAに沿って配置され、シリンダ60と第1のロッド61を囲んでいる。
【0039】
ロッド端連結部材80の中途には、減衰力を調整するためのアジャスタ84が設けられている。アジャスタ84は、ロッド端連結部材80の内部に設けられた調整子841を径方向に移動させることで、第1のロッド61の内部に設けられた内ロッド611を上下方向に移動させる。これに伴って内ロッド611の上方に配置されたニードル弁612も上下方向に移動され、その結果、ニードル弁612により副連通路61aの開度が調整される。
【0040】
シリンダ取付部材95は、シリンダチューブ64の上方の端部に取り付けられるキャップ部材90に設けられている。シリンダ取付部材95には、前後方向に貫通する貫通穴95aが形成されている。ロッド取付部材81に形成された貫通穴81aと、シリンダ取付部材95に形成された貫通穴95aとは、ショックアブソーバ50の揺動を可能とするため、同じ方向を向いている。
【0041】
ここで、シリンダ取付部材95は、シリンダ60の軸線CAに対してオフセットして配置されている。言い換えると、シリンダ取付部材95は、シリンダ60の軸線CAに対してシリンダ60の径方向の外方に設けられている。具体的には、シリンダ取付部材95は、第2のロッド62と干渉しないように、第2のロッド62よりもシリンダ60の径方向の外方に配置されている。さらには、シリンダ取付部材95は、シリンダ60よりもシリンダ60の径方向の外方に配置されている。
【0042】
また、シリンダ取付部材95は、ショックアブソーバ50が最も収縮したときの第2のロッド62の上端の位置FEよりも下方に配置されている(
図6を参照)。さらに、シリンダ取付部材95は、ショックアブソーバ50が最も収縮したときの第2のロッド62の上下方向の中央の位置HEよりも下方に配置されている。一方、シリンダ取付部材95は、シリンダ60の上方の端部に設けられた第2のロッドガイド75よりも上方に配置されている。また、シリンダ取付部材95は、ショックアブソーバ50が最も伸長したときの第2のロッド62の上端よりも上方に配置されている(
図5を参照)。
【0043】
また、シリンダ取付部材95は、シリンダ60の軸線CAに対して加圧機構100とは反対の方向にオフセットしている。また、シリンダ取付部材95は、キャップ部材90の筒部93から径方向に離れた位置に設けられている。キャップ部材90は、筒部93から径方向に延びる支持部94を有しており、シリンダ取付部材95は支持部94の先端部分に設けられている。シリンダ取付部材95は、筒部93の上端よりも下方に設けられている。
【0044】
また、シリンダ60の軸線CAと、シリンダ取付部材95の貫通穴95aを通る軸線BBとは、3次元空間上、交差せず且つ平行でないねじれの位置にある。すなわち、シリンダ60の軸線CAと、シリンダ取付部材95の貫通穴95aを通る軸線BBとは径方向に離れているため、両者は交差していない。さらに、シリンダ60の軸線CAは上下方向に延びており、シリンダ取付部材95の貫通穴95aを通る軸線BBは前後方向に延びているため、両者は平行でもない。
【0045】
図2に示されるように、ショックアブソーバ50のロッド取付部材81は、雪上車1のロアアーム42R、42Lに設けられたブラケット421に連結されている。一方、ショックアブソーバ50のシリンダ取付部材95は、雪上車1の車体フレーム30に設けられたブラケット301に連結されている。ここでは、シリンダ取付部材95は、シリンダ60よりも車幅方向の内方に位置している。これとは逆に、シリンダ取付部材95は、シリンダ60よりも車幅方向の外方に位置してもよい。なお、ロッド取付部材81とシリンダ取付部材95の連結対象は、これとは逆であってもよい。すなわち、ロッド取付部材81が上方に位置し、シリンダ取付部材95が下方に位置するように各ブラケット301,421に連結されてもよい。
【0046】
図2では、右スキー41Rが左スキー41Lよりも雪面から大きな反力を受けて、右ショックアブソーバ50Rが左ショックアブソーバ50Lよりも収縮した状態を示している。このため、右ショックアブソーバ50Rでは、キャップ部材90から外部に第2のロッド62が飛び出している。
【0047】
以上に説明した本実施形態では、
図3、5及び6に示されるように、シリンダ取付部材95がシリンダ60の軸線CAに対してオフセットして配置されている。具体的には、シリンダ取付部材95は、第2のロッド62よりもシリンダ60の径方向の外方、さらには、シリンダ60よりもシリンダ60の径方向の外方に配置されている。これによると、第2のロッド62の可動範囲を確保しつつ、シリンダ60の軸方向(上下方向)に沿ったシリンダ取付部材95の位置の自由度を高めることが可能である。
【0048】
また、本実施形態では、
図6に示されるように、シリンダ取付部材95は、ショックアブソーバ50が最も収縮したときの第2のロッド62の軸方向の外方(上方)の端よりも軸方向の内方(下方)に配置されている。これによると、当該特徴を有しない場合と比べて、ロッド取付部材81とシリンダ取付部材95との間隔を短縮することが可能である。
【0049】
また、本実施形態では、
図5及び6に示されるように、シリンダ取付部材95は、第2のロッドガイド75よりも軸方向の外方(上方)に配置されている。これによると、当該特徴を有しない場合と比べて、ロッド取付部材81とシリンダ取付部材95とを結ぶ直線と、シリンダ60の軸線CAとが成す角度の増大を抑制することが可能である。また、シリンダ取付部材95を第2のロッド62により近づけることが可能である。この結果、シリンダ取付部材95を片持ちで支持する支持部94に作用する応力を抑制することが可能である。
【0050】
また、本実施形態では、
図5及び6に示されるように、シリンダ取付部材95は、シリンダチューブ64の端部に取り付けられるキャップ部材90の筒部93に対してシリンダ60の径方向の外方に設けられている。これによると、当該特徴を有しない場合と比べて、シリンダ取付部材95を片持ちで支持する支持部94の長さを短縮でき、支持部94に作用する応力に対する強度を向上させることが可能である。
【0051】
また、本実施形態では、
図5及び6に示されるように、シリンダ60の軸線CAと、シリンダ取付部材95に形成された貫通穴95aを通る軸線BBとは、交差せず且つ平行でないねじれの位置にある。これによると、当該特徴を有しない場合と比較して、シリンダ取付部材95が連結されるブラケット等の連結対象や連結に用いられるボルト等の連結部材が第2のロッド62の可動範囲を阻害することを抑制することが可能である。
【0052】
また、本実施形態では、
図5及び6に示されるように、第2のロッドガイド75はシリンダチューブ64の端部に設けられ、第2のロッド62は第2のロッドガイド75からシリンダチューブ64の外部に飛び出す。これによると、当該特徴を有しない場合と比べて、シリンダチューブ64の長さを短縮でき、ひいてはショックアブソーバ50全体の長さを短縮することが可能である。
【0053】
また、本実施形態では、
図5及び6に示されるように、加圧機構100は、シリンダチューブ64の外部に配置されている。これによると、当該特徴を有しない場合と比べて、シリンダチューブ64の長さを短縮でき、ひいてはショックアブソーバ50全体の長さを短縮することが可能である。
【0054】
また、本実施形態では、
図5及び6に示されるように、シリンダ取付部材95は、シリンダ60の軸線CAに対して加圧機構100とは反対に設けられている。これによると、当該特徴を有しない場合と比べて、加圧機構100がシリンダ取付部材95の連結を阻害することを抑制し、ショックアブソーバ50のレイアウト性を向上させることが可能である。
【0055】
また、本実施形態では、
図5及び6に示されるように、スプリング52は、ロッド取付部材81とシリンダ取付部材95とを結ぶ直線に対して傾斜し、且つシリンダ60の軸線CAに沿って配置されている。これによると、ダンパー51の伸縮に対してより直接的にスプリング52のばね力を発揮させることが可能である。
【0056】
なお、これに限られず、
図7に示す変形例のように、スプリング52は、シリンダ60の軸線CAに対して傾斜して配置されてもよい。この変形例では、シリンダチューブ64に設けられる上方のスプリングシート691はシリンダ取付部材95のオフセット方向に広がっており、ロッド端連結部材80に設けられる下方のスプリングシート831はこれとは反対の方向に広がっている。スプリング52は、ピストン65がシリンダ60の中途にあるとき(例えば、ショックアブソーバ50が最も伸長した状態から3分の1程度圧縮したとき)のロッド取付部材81とシリンダ取付部材95とを結ぶ直線CLに沿って配置される。これによると、スプリング52の圧縮により第1のロッド61に加わる曲げ力を低減することが可能である。
【0057】
また、
図8に示す変形例のように、スプリング52は、シリンダ60の軸線CAに対してオフセットして配置されてもよい。この変形例では、スプリング52は、シリンダ60の軸線CAに対してシリンダ取付部材95と同じ方向にオフセットするとともに、シリンダ60の軸線CAに沿って配置されている。シリンダチューブ64とロッド端連結部材80に設けられるスプリングシート693,833は、シリンダ取付部材95のオフセット方向に広がっている。これによると、上記実施形態と同様に、スプリング52の圧縮により第1のロッド61に加わる曲げ力を低減することが可能である。
【0058】
また、本実施形態では、
図2に示されるように、ショックアブソーバ50のロッド取付部材81は雪上車1のロアアーム42R、42Lに取り付けられ、ショックアブソーバ50のシリンダ取付部材95は雪上車1の車体フレーム30に取り付けられている。これによると、第2のロッド62が上方に向かって飛び出すため、第2のロッド62と地面とのクリアランスを考慮する必要がない。
【0059】
また、本実施形態では、
図2に示されるように、シリンダ取付部材95は、シリンダ60よりも車幅方向の内方に位置している。すなわち、シリンダ取付部材95が車体の方向にオフセットしている。これによると、シリンダ取付部材95が取り付けられる車体フレーム30と、シリンダ60との干渉を抑制し、ショックアブソーバ50のレイアウト性を向上させることが可能である。
【0060】
なお、本発明の実施形態に係るショックアブソーバは、以上に説明した実施形態に限られない。例えば、特許文献1のように、第2のロッド(副ロッド)の可動範囲がシリンダチューブの内側に収まるように、シリンダチューブを長くし、第2のロッドガイドをシリンダチューブの中途に設けてもよい。さらに、特許文献1のように、バネ等を含む加圧機構をシリンダチューブの内側に設けてもよい。また、本発明の実施形態に係るショックアブソーバは、トラックベルト16の内側に配置されるショックアブソーバ19(
図1参照)に適用されてもよい。
【0061】
以下、本発明の実施形態に係るショックアブソーバを不整地走行用の車両に適用した変形例について説明する。以下の説明において、上記実施形態と共通する構成については同番号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0062】
図9及び
図10は、上述のショックアブソーバ50R、50Lが適用された車両200、300の正面図である。
図9に示される車両200は、ATV(All Terrain Vehicle)と呼ばれる、ステアリングバー201を備える鞍乗り型の四輪車両である。
図10に示される車両300は、ROV(Recreational Off highway Vehicle)と呼ばれる、車幅方向に並ぶ複数のシート308とステアリングホイール309とを備える四輪車両である。
【0063】
図9及び
図10に示されるように、車両200、300は、車体フレーム30の前部の左右両方に配置される前車輪46R、46Lを接地部として有している。右側の前車輪46Rは、ロアアーム42Rとアッパーアーム43Rによって支持されており、左側の前車輪46Lは、ロアアーム42Lとアッパーアーム43Lによって支持されている。アーム42R、43R、42L、43Lの基部は、車体フレーム30に回転可能に連結されており、これにより前車輪46R、46Lは車体フレーム30に対して相対的に上下動可能となっている。
【0064】
車両200、300は、ショックアブソーバ50R、50Lを有している。ショックアブソーバ50R、50Lは、ダンパー51R、51Lとスプリング52R、52Lとをそれぞれ有している。ショックアブソーバ50R、50Lの下部に設けられたロッド取付部材81は、ロアアーム42R、42Lに設けられたブラケット421に連結されている。一方、ショックアブソーバ50の上部に設けられたシリンダ取付部材95は、車体フレーム30に設けられたブラケット301に連結されている。ショックアブソーバ50R、50Lは、前車輪46R、46Lだけでなく、後車輪(不図示)の懸架に用いられてもよい。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が当業者にとって可能であるのはもちろんである。なお、本発明の実施形態に係る雪上車に適用されるショックアブソーバおいては、シリンダ取付部材95がシリンダ60の軸線CAに対してオフセットしていなくてもよい。