特許第6871719号(P6871719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6871719アルコール飲料及びその製造方法、並びにアルコール飲料の香味向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871719
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】アルコール飲料及びその製造方法、並びにアルコール飲料の香味向上方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/06 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   C12G3/06
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-221335(P2016-221335)
(22)【出願日】2016年11月14日
(65)【公開番号】特開2018-78804(P2018-78804A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 あゆみ
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−208095(JP,A)
【文献】 特開2016−036319(JP,A)
【文献】 特開平11−313664(JP,A)
【文献】 特開2013−066490(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/029605(WO,A1)
【文献】 特開2014−117200(JP,A)
【文献】 特開2012−206999(JP,A)
【文献】 特開2007−159557(JP,A)
【文献】 特開2007−014749(JP,A)
【文献】 特開2009−213410(JP,A)
【文献】 特開2007−289091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 3/06
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲン含有量が85.7〜770.0mg/100mLであるとともに、シネオール、テルピノレン、及びγテルピネンからなる香気成分の合計含有量が0.08〜1.00ppmであるアルコール飲料。
【請求項2】
前記香気成分の合計含有量が0.15〜0.55ppmである請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
前記香気成分の合計含有量が0.20〜0.50ppmである請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
前記コラーゲンの含有量が、570.0mg/100mL以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアルコール飲料。
【請求項5】
前記コラーゲンの含有量が、420.0mg/100mL以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアルコール飲料。
【請求項6】
コラーゲンを含有するアルコール飲料の製造方法であって、
前記コラーゲン含有量が85.7〜770.0mg/100mLであるとともに、シネオール、テルピノレン、及びγテルピネンからなる香気成分の合計含有量を0.08〜1.00ppmとする工程を含むアルコール飲料の製造方法。
【請求項7】
アルコール飲料に含有されるコラーゲンによるコラーゲン臭及び呈味をマスキングする香味向上方法であって、
前記コラーゲンの含有量が85.7〜770.0mg/100mLであるアルコール飲料について、シネオール、テルピノレン、及びγテルピネンからなる香気成分の合計含有量を0.08〜1.00ppmとする工程を含むアルコール飲料の香味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール飲料及びその製造方法、並びにアルコール飲料の香味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者の多様なニーズに応えるべく、様々なRTD(Ready to Drink)アルコール飲料が開発されている。そのような中で、例えば、美容と健康に配慮し、アルコール飲料にコラーゲンを含有させることが考えられる。しかしながら、コラーゲンには特有の臭気(「コラーゲン臭」などと呼称されている)や呈味があるため、アルコール飲料をはじめとする種々の飲料や食品にコラーゲンを含有させた場合、前記したコラーゲン臭や特有の呈味を呈してしまうことが多い。アルコール飲料などにコラーゲンを含有させることによって呈されるコラーゲン臭及び呈味をマスキングし得る技術が幾つか提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、スクラロースを、コラーゲン臭又はコラーゲンの不快味(呈味)をマスキング有効量含有するコラーゲン入り可食性製品が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、魚類由来コラーゲンペプチドと難消化性デキストリンを含有することを特徴とするゼリー飲料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−100146号公報
【特許文献2】特開2006−180812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、スクラロースでコラーゲン臭及び不快味(呈味)をマスクしているが、スクラロースの甘味が強いため、アルコール飲料の呈味に影響を与えない程度の含有量で含有させてもコラーゲン臭及び呈味を十分にマスキングできない場合があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術は、難消化性デキストリンで魚臭(コラーゲン臭)及び風味(呈味)をマスキングしているが、難消化性デキストリンを含有させると香味がぼやける傾向があり、アルコール飲料の香味に影響を与えない程度の含有量で含有させてもコラーゲン臭及び呈味を十分にマスキングできない場合があった。
【0007】
本発明は前記状況に鑑みてなされたものであり、コラーゲン臭及び呈味がマスキングされたアルコール飲料及びその製造方法、並びにアルコール飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、コラーゲン臭及び呈味がマスキングされたRTDアルコール飲料を開発するため、様々な物質を用いて数多くの実験を行った。その結果、特定の香気成分に着目し、この特定の香気成分の合計含有量を制御することにより、前記した課題を解決できることを見出し、本発明を創出した。
【0009】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1) コラーゲン含有量が85.7〜770.0mg/100mLであるとともに、シネオール、テルピノレン、及びγテルピネンからなる香気成分の合計含有量が0.08〜1.00ppmであるアルコール飲料。
(2) 前記香気成分の合計含有量が0.15〜0.55ppmである前記(1)に記載のアルコール飲料。
(3) 前記香気成分の合計含有量が0.20〜0.50ppmである前記(1)に記載のアルコール飲料
(4) 前記コラーゲンの含有量が、570.0mg/100mL以下である前記(1)から(3)のいずれか1つに記載のアルコール飲料。
) 前記コラーゲンの含有量が、420.0mg/100mL以下である前記(1)から(3)のいずれか1つに記載のアルコール飲料。
) コラーゲンを含有するアルコール飲料の製造方法であって、前記コラーゲン含有量が85.7〜770.0mg/100mLであるとともに、シネオール、テルピノレン、及びγテルピネンからなる香気成分の合計含有量を0.08〜1.00ppmとする工程を含むアルコール飲料の製造方法。
) アルコール飲料に含有されるコラーゲンによるコラーゲン臭及び呈味をマスキングする香味向上方法であって、
前記コラーゲンの含有量が85.7〜770.0mg/100mLであるアルコール飲料について、シネオール、テルピノレン、及びγテルピネンからなる香気成分の合計含有量を0.08〜1.00ppmとする工程を含むアルコール飲料の香味向上方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るアルコール飲料は、特定の香気成分の合計含有量を所定範囲内としているので、コラーゲン臭及び呈味をマスキングすることができる。
本発明に係るアルコール飲料の製造方法は、特定の香気成分の合計含有量を所定範囲内とすることによって、コラーゲン臭及び呈味がマスキングされたアルコール飲料を製造できる。
本発明に係る香味向上方法は、特定の香気成分の合計含有量を所定範囲内とすることによって、アルコール飲料に含有されるコラーゲンによるコラーゲン臭及び呈味がマスキングされており、これによってアルコール飲料の香味が向上している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るアルコール飲料の製造方法の内容を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るアルコール飲料及びその製造方法、並びにアルコール飲料の香味向上方法を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0013】
[アルコール飲料]
本実施形態に係るアルコール飲料は、コラーゲンを含有するとともに、シネオール、テルピノレン、及びγテルピネンからなる群より選ばれる一種以上の香気成分の合計含有量を0.08〜1.00ppmとしている。
【0014】
(アルコール)
アルコールは飲用することができるアルコールであればよく、種類、製法、原料などに限定されることはないが、蒸留酒又は醸造酒であることが好ましい。蒸留酒としては、例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー、ラム等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。醸造酒としては、例えば、ビール、発泡酒、果実酒、甘味果実酒、清酒などを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、前記した様々な酒類に果実等を漬け込んだ浸漬酒を使用してもよい。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。
【0015】
(アルコール度数)
アルコール飲料のアルコール度数は、特に限定されないが、例えば、1v/v%以上であることが好ましく、3v/v%以上であることがさらに好ましい。また、アルコール飲料のアルコール度数は、20v/v%以下であることが好ましく、10v/v%以下であることがさらに好ましい。アルコール度数が所定値以下であることにより、アルコール飲料の総合評価(アルコール飲料として好ましいバランスであるか否か)をより良い結果とすることができる。
アルコール飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3−4アルコール分(振動式密度計法)に基づいて測定することができる。
【0016】
(コラーゲン)
コラーゲンは、動物の結合組織を構成する主要タンパク質成分である。コラーゲンを含有することにより、美容と健康に配慮したアルコール飲料を提供することができる。
本実施形態で用いることのできるコラーゲンとしては、例えば、ウシ、ブタなどの家畜類や、サケ、ヒラメ、スズキなどの魚類の肉、骨、皮、鱗などを原料として得られるもの(煮凝りやコラーゲンと呼称されることがある)、コラーゲンを加熱して抽出・精製したゼラチン、ゼラチンを酵素分解したコラーゲンペプチドなどが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前記したように、コラーゲンペプチドはゼラチンを酵素分解して得られたものであるので、分子量が小さく、水に溶け易いだけでなく、ゲル化能を有していないため、飲料に用い易い。また、コラーゲンペプチドは体への吸収率も高いため、美容と健康を向上させる効果が期待できる。そのため、本実施形態に係るアルコール飲料はこれらの中でもコラーゲンペプチドを用いることが好ましい。なお、コラーゲンペプチドの分子量は、例えば、平均分子量が約300〜10000であることが好ましく、約3000〜7000であることがより好ましい。
【0017】
(コラーゲンの含有量)
本実施形態に係るアルコール飲料は、コラーゲンを含んでいるが、その含有量は特に限定されない。コラーゲンの含有量は、例えば、770.0mg/100mL以下、570.0mg/100mL以下や、420.0mg/100mL以下などとすることができる。
コラーゲンの含有量は、例えば、コラーゲン加水分解処理後に、ヒドロキシプロリンというアミノ酸の含有量を測定することにより測定することができる。
【0018】
(香気成分及びその合計含有量)
本実施形態に係るアルコール飲料は、シネオール、テルピノレン、及びγテルピネンからなる群より選ばれる一種以上の香気成分の合計含有量を0.08〜1.00ppm(0.08〜1.00mg/L)としている。シネオールは、樟脳やハッカに似た清涼な香気を有している。テルピノレンは、ライム様の香りを有している。γテルピネンは、ハーブ調の香りを有している。本実施形態に係るアルコール飲料は、これらの香気成分の合計含有量を前記した所定範囲内とすることにより、コラーゲン臭及び呈味をマスキングすることができる。前記した香気成分はいずれか一種でもよく、二種以上を組み合わせてもよい。二種以上を組み合わせる場合においてその混合比率は特に限定されず、消費者のニーズに合わせて適宜変更できる。
【0019】
前記した香気成分の合計含有量が0.08ppm未満であると、コラーゲン臭及び呈味をマスキングできないおそれがある。その一方で、前記した香気成分の合計含有量が1.00ppmを超えると、柑橘類の香りが強過ぎるため、アルコール飲料として適さないものになるおそれがある。前記した香気成分の合計含有量は、コラーゲン臭及び呈味をマスキングし、柑橘類の香りを高める観点から、0.15ppm以上とするのが好ましく、0.20ppm以上とするのがより好ましい。また、柑橘類の香りを適度に抑え、アルコール飲料としてより適するものとする観点から、0.55ppm以下とするのが好ましく、0.50ppm以下とするのがより好ましい。
【0020】
(発泡性)
本実施形態に係るアルコール飲料は、非発泡性であっても、発泡性であってもよい。ここで、本実施形態における発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.5kg/cm2以上であることをいい、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.5kg/cm2未満であることをいう。
【0021】
(その他)
本実施形態に係るアルコール飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、香料、塩類、食物繊維、着色料など(以下、適宜「添加剤」という)を添加することもできる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。着色料としては、例えば、カラメル色素、アントシアニン、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素などを用いることができる。
【0022】
また、本実施形態に係るアルコール飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で果汁を配合することもできる。
果汁は、果実を搾った汁である。果汁の由来となる果実としては、例えば、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、ライム、イヨカン、ウンシュウミカン、カボス、キシュウミカン、キノット、コウジ、サンボウカン、シトロン、ジャバラ、スダチ、ダイダイ、タチバナ、タンゴール、ナツミカン、ハッサク、ハナユズ、ヒュウガナツ、ヒラミレモン(シークヮーサー)、ブンタン、ポンカン(マンダリンオレンジ)、ユズ、セイヨウリンゴ(いわゆるリンゴ)、エゾノコリンゴ、カイドウズミ、ハナカイドウ、イヌリンゴ(ヒメリンゴ)、マルバカイドウ、ノカイドウ、ズミ(コリンゴ、コナシ)、オオウラジロノキ、ブドウ、イチゴ、モモ、メロン、パイナップル、グァバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、パパイヤ、パッションフルーツ、ウメ、ナシ、アンズ、スモモ、キウイフルーツ、カシス、ブルーベリー、ラズベリーなどが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらに限定されるものではない。なお、前記した果汁を用いた場合、当該果汁にシネオール、テルピノレン、及びγテルピネンが香気成分として含まれている可能性がある。そのため、前記した果汁を用いる場合は、含まれ得るこれらの香気成分の含有量を考慮してアルコール飲料の香気成分の調整を行うのが好ましい。
【0023】
果汁は、例えば、濃縮果汁、還元果汁、ストレート果汁といった各種果汁、果実ピューレ(火を通した果実あるいは生の果実をすりつぶしたり、裏ごししたりした半液体状のもの)、これらの希釈液、濃縮液、混合液などを用いることができる。本実施形態に係るアルコール飲料に含有させる果汁の含有量は任意に設定することができる。
前記したコラーゲン、添加剤、果汁は、一般に市販されているものを使用することができる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料は、前記した香気成分の合計含有量が所定範囲内となっていることから、コラーゲン臭及び呈味をマスキングできる。また、本実施形態に係るアルコール飲料は、前記した香気成分の合計含有量を所定範囲内とすることによって、コラーゲン臭及び呈味を抑制しているので香味がよく、アルコール飲料としてのバランスが好ましいものとなっている。
【0025】
本実施形態に係るアルコール飲料は、RTD飲料として各種容器に入れて提供することができる。各種容器にアルコール飲料を入れることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0026】
[アルコール飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法を説明する。
この製造方法は、コラーゲンを含有するアルコール飲料を製造する方法であって、コラーゲンを含有させるとともに、前記した香気成分の合計含有量を0.08〜1.00ppmとする工程を含む。詳細には、本製造方法は、混合工程S1と、後処理工程S2と、を含んでおり、以下のようにしてアルコール飲料を製造する。
【0027】
混合工程S1では、混合タンクに、水、コラーゲン、前記した香気成分、飲用アルコール、必要により添加剤などを投入して混合後液を製造する。なお、これらの原料は順不同で混合タンクに投入することができる。
この混合工程S1において、前記した香気成分の合計含有量を0.08〜1.00ppmとなるように混合し、調整する。なお、前記した香気成分の合計含有量は0.15〜0.55ppmであるのが好ましく、0.20〜0.50ppmであるのがより好ましい。また、好ましくは、コラーゲンの含有量を770.0mg/100mL以下となるように混合し、調整する。なお、コラーゲンの含有量は、570.0mg/100mL以下や、420.0mg/100mL以下などとすることができる。
【0028】
そして、後処理工程S2では、例えば、ろ過、殺菌、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程S2のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程S2の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程S2の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填するのが好ましい。そして、後処理工程S2での各処理の順序は特に限定されない。
【0029】
なお、混合工程S1及び後処理工程S2にて行われる各処理は、RTD飲料などを製造するために一般的に用いられている設備で行うことができる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、前記した香気成分の合計含有量を所定範囲内とする工程を含むことから、コラーゲン臭及び呈味がマスキングされたアルコール飲料を製造できる。
【0031】
[アルコール飲料の香味向上方法]
次に、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法を説明する。
この香味向上方法は、アルコール飲料に含有されるコラーゲンによるコラーゲン臭及び呈味をマスキングする香味向上方法であって、アルコール飲料について、前記した香気成分の合計含有量を所定範囲内とする工程を含むものである。
【0032】
詳細には、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法は、前記した香気成分の合計含有量を0.08〜1.00ppmとし、0.15〜0.55ppmとするのが好ましく、0.20〜0.50ppmとするのがより好ましい。また、コラーゲンの含有量を770.0mg/100mL以下や、570.0mg/100mL以下、420.0mg/100mL以下などとすることができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法は、アルコール飲料の前記した香気成分の合計含有量を所定範囲内とすることから、コラーゲン臭及び呈味をマスキングできる。また、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法は、前記した香気成分の合計含有量を所定範囲内とすることによって、コラーゲン臭及び呈味を抑制するとともに柑橘類の香りが付与されているので香味がよく、アルコール飲料としてのバランスが好ましいものとなっている。つまり、本実施形態に係るアルコール飲料の香味向上方法によれば、アルコール飲料の香味を向上させることができる。
【実施例】
【0034】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0035】
[実施例1]
まず、実施例1では、コラーゲンの含有量を一定とし、シネオール、テルピノレン、及びγテルピネンからなる群より選ばれる一種以上の香気成分の合計含有量を変動させた場合における、コラーゲン臭及び呈味のマスキング効果を確認した。
【0036】
(サンプルの準備)
コラーゲンとしてコラーゲンペプチド(ニッピ社製ニッピペプタイドPS−1)を用いた。そして、コラーゲンペプチド、前記した香気成分、原料アルコール、水を混合して、サンプル中の含有量が表1のNo.1〜6に示す組成となるようにサンプル液を準備した。
なお、各サンプルのアルコール度数(Alc.)は5v/v%とした。
【0037】
(試験内容)
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された専門のパネル6名が下記評価基準に則って「コラーゲン臭及び呈味」、「柑橘類の香り」、「総合評価」について、1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲んで評価し、香りの評価については、サンプルを飲む前、飲んでいる際、及び、飲んだ後に感じられる香りを総合的に評価した。
【0038】
(コラーゲン臭及び呈味:評価基準)
5点:かなり強い。
4点:強い。
3点:弱い。
2点:かなり弱い。
1点:感じない。
【0039】
(柑橘類の香り:評価基準)
5点:強過ぎる。
4点:やや強い。
3点:ちょうどよい。
2点:弱い。
1点:弱過ぎる。
【0040】
(総合評価:評価基準)
5点:非常に好ましいバランスである。
4点:かなり好ましいバランスである。
3点:好ましいバランスである。
2点:許容できるバランスである。
1点:不適なバランスである。
【0041】
表1に、各サンプルの規格を示すとともに、各評価の結果を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
(結果の検討)
表1に示すように、No.1に係るサンプルは、前記した香気成分を含有していなかったので、コラーゲン臭及び呈味がマスキングされていなかった(比較例)。そのため、No.1に係るサンプルは、総合評価が低くなった。
これに対し、No.2〜6に係るサンプルは、前記した香気成分の合計含有量が所定範囲内であったので、No.1に係るサンプルと比較して、コラーゲン臭及び呈味がマスキングされていた(実施例)。
また、No.2〜6に係るサンプルは、前記した香気成分の合計含有量が所定範囲内であったので、含有量に応じて柑橘類の香りが付与されていた。
これらの実施例の中では、No.3〜5に係るサンプルが、コラーゲン臭及び呈味がマスキングされており、総合評価も高く、好ましい態様であることが確認された。
特に、No.3、4に係るサンプルは、コラーゲン臭及び呈味がマスキングされており、総合評価が非常に高く、より好ましい態様であることが確認された。
【0044】
[実施例2]
次に、実施例2では、前記した香気成分の合計含有量を一定とし、コラーゲンの含有量を変動させた場合における、コラーゲン臭及び呈味のマスキング効果を確認した。
【0045】
(サンプルの準備)
前記[実施例1]と同様の原料を用い、[実施例1]と同様にして、表2のNo.7〜10に示す組成のサンプル液を準備した。
なお、各サンプルのアルコール度数(Alc.)は、[実施例1]と同様、5v/v%とした。
【0046】
(試験内容、評価基準)
試験内容、及び、各試験の評価基準については、[実施例1]と同様とした。
【0047】
表2に、各サンプルの規格を示すとともに、各評価の結果を示す。
【0048】
【表2】
【0049】
(結果の検討)
表2に示すように、No.7〜9に係るサンプルは、前記した香気成分を含有していたので、実施例1のNo.1に係るサンプルと比較して、コラーゲン臭及び呈味がマスキングされていた(実施例)。そのため、No.7〜9に係るサンプルは、総合評価が良好であった。
これらの実施例の中では、No.7、8に係るサンプルが、コラーゲン臭及び呈味がマスキングされており、総合評価も高く、好ましい態様であることが確認された。
これに対し、No.10に係るサンプルは、前記した香気成分を含有していたが、コラーゲンの含有量が高過ぎたのでコラーゲン臭及び呈味が十分にマスキングされていなかった(比較例)。そのため、No.10に係るサンプルは、総合評価が低くなった。
【0050】
[実施例3]
次に、実施例3では、前記した香気成分の合計含有量とコラーゲンの含有量の含有比率を一定としつつ、これらの含有量を変動させた場合における、コラーゲン臭及び呈味のマスキング効果を確認した。
【0051】
(サンプルの準備)
前記[実施例1]と同様の原料を用い、[実施例1]と同様にして、表3のNo.11〜14に示す組成のサンプル液を準備した。
なお、各サンプルのアルコール度数(Alc.)は、[実施例1]と同様、5v/v%とした。
【0052】
(試験内容、評価基準)
試験内容、及び、各試験の評価基準については、[実施例1]と同様とした。
【0053】
表3に、各サンプルの規格を示すとともに、各評価の結果を示す。
【0054】
【表3】
【0055】
(結果の検討)
表3に示すように、No.11〜14に係るサンプルは、前記した香気成分の合計含有量が所定範囲内であったので、No.1に係るサンプルと比較して、コラーゲン臭及び呈味がマスキングされていた(実施例)。
ただし、No.14に係るサンプルは前記した香気成分の合計含有量が高く、柑橘類の香りが強過ぎるため、好ましくない香味となった。そのため、No.14に係るサンプルは、アルコール飲料としてのバランスが好ましくない結果となった。
これらの実施例の中では、No.12、13に係るサンプルが、コラーゲン臭及び呈味がマスキングされており、総合評価も高く、好ましい態様であることが確認された。
【0056】
[まとめ]
[実施例1]〜[実施例3]の結果から、前記した香気成分の合計含有量が0.15〜0.55ppmであれば確実にコラーゲン臭及び呈味をマスキングでき、0.20〜0.50ppmであればより確実にコラーゲン臭及び呈味をマスキングできることが確認できた。また、今回の結果から、前記した香気成分の合計含有量0.08〜1.00ppmであればコラーゲン臭及び呈味をマスキングできると考えられた。
【符号の説明】
【0057】
S1 混合工程
S2 後処理工程
図1