特許第6871724号(P6871724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871724
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/16 20200101AFI20210426BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20210426BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   B60W30/16
   G08G1/16 E
   B60W30/10
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-227963(P2016-227963)
(22)【出願日】2016年11月24日
(65)【公開番号】特開2018-83539(P2018-83539A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】桑原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】保科 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】関島 康博
(72)【発明者】
【氏名】阿部 聡之
【審査官】 佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−154872(JP,A)
【文献】 特開2007−168502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−10/30
B60W 30/00−60/00
G08G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行する走行環境情報を取得すると共に、自車両の走行情報を検出し、前記走行環境情報と前記走行情報に基づいて複数の運転制御を協調させた自動運転制御を実行する車両の走行制御装置において、
自車両の前方に存在する立体物情報を含む走行環境情報を前記走行環境情報として認識する周辺環境認識手段と、
予め記憶されている地図データ上の自車位置情報を前記走行環境情報として検出する自車位置情報検出手段と、
前記自車位置情報検出手段によって前記地図データ上の前方設定距離以内に自車両が通過すべき料金所が検出されているとき、前記自動運転制御のモードとして料金所通過モードを実行する料金所通過モード実行手段と、
前記料金所通過モードの実行時に、前記料金所までの自車通過経路を設定する自車通過経路設定手段と、
前記料金所通過モードの実行時に、前記周辺環境認識手段によって前記自車通過経路に沿って走行する先行車が検出されているとき前記先行車に追従する追従走行制御を行い、前記周辺環境認識手段によって前記自車通過経路に沿って走行する先行車が検出されていないとき前記自車通過経路に沿った走行制御を行う料金所通過時走行制御手段と、を備え、
前記料金所通過時走行制御手段は、前記料金所通過モードの実行時における前記追従走行制御の目標車間距離を、前記料金所通過モードの実行時以外における前記目標車間距離よりも相対的に長く設定し、
前記周辺環境認識手段は、前記料金所通過モードの実行時に、前記走行環境情報を認識するまでのサンプリング回数を、前記料金所通過モードの実行時以外における前記サンプリング回数よりも少なくすることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記料金所通過時走行制御手段は、前記周辺環境認識手段により前記料金所の認識がされておらず且つ前記先行車が存在するとき、前記料金所通過モードの実行時における前記追従走行制御の前記目標車間距離を、前記先行車の車高が高くなるほど長くなるように一時的に設定することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行環境を認識し、自車両の走行情報を検出して自動運転制御を行う車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、走行環境を認識し、自車両の走行情報を検出して操舵制御や加減速制御を協調して実行し、自動運転を行えるようにした様々な技術が提案、実用化されている。例えば、特開2015−24746号公報(以下、特許文献1)には、一般道から高速道路の本線合流地点に至るランプウェイ経路において、アクセルやブレーキの加減速制御を、操作制御に対して先行して、手動運転モードから自動運転モードに切り替え、ドライバに違和感を与えることを抑制する自動運転制御装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−24746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に開示されるような自動運転制御装置の技術では、自動運転の継続が困難と判断される場合には、できるだけ速やか、かつ安全に、ドライバへ運転を引き継ぐ必要がある。
【0005】
その一方で、自動運転の継続が困難と判断される場合にも、走行環境や自車両の走行情報により、様々なケースが存在し、必ずしも全ての運転制御を解除して自動運転を手動運転に移行する必要がない場合もある。
【0006】
例えば、高速道路等の各種有料道路の料金所においては、車線数よりも多い複数の料金所ゲートが設置されることが一般的であり、このような料金所の手前のエリアでは、道路幅が急激に拡幅し、車線区画線も消失する。従って、料金所手前のエリアでは、車載カメラ等の情報に基づいて自車走行レーンを認識することが困難となり、運転モードが自動運転から手動運転へと移行することが想定される。
【0007】
しかしながら、料金所手前のエリアにおける車線区画線の消失等は予め想定され得るため、このようなケースに対して自動運転を継続するための対策を行うことが望ましい。
【0008】
その一方で、料金所前のエリアでは前方の距離感を把握することが困難であるため、先行車等の周辺車両が想定外の挙動を示す場合があり、自動運転を継続するためには、このような周辺車両の挙動に対しても対策を施す必要がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、料金所手前のエリアにおいても自動運転を解除することなく、自車両を適切に料金所ゲートまで誘導することができる車両の走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様による車両の走行制御装置は、自車両が走行する走行環境情報を取得すると共に、自車両の走行情報を検出し、前記走行環境情報と前記走行情報に基づいて複数の運転制御を協調させた自動運転制御を実行する車両の走行制御装置において、自車両の前方に存在する立体物情報を含む走行環境情報を前記走行環境情報として認識する周辺環境認識手段と、予め記憶されている地図データ上の自車位置情報を前記走行環境情報として検出する自車位置情報検出手段と、前記自車位置情報検出手段によって前記地図データ上の前方設定距離以内に自車両が通過すべき料金所が検出されているとき、前記自動運転制御のモードとして料金所通過モードを実行する料金所通過モード実行手段と、前記料金所通過モードの実行時に、前記料金所までの自車通過経路を設定する自車通過経路設定手段と、前記料金所通過モードの実行時に、前記周辺環境認識手段によって前記自車通過経路に沿って走行する先行車が検出されているとき前記先行車に追従する追従走行制御を行い、前記周辺環境認識手段によって前記自車通過経路に沿って走行する先行車が検出されていないとき前記自車通過経路に沿った走行制御を行う料金所通過時走行制御手段と、を備え、前記料金所通過時走行制御手段は、前記料金所通過モードの実行時における前記追従走行制御の目標車間距離を、前記料金所通過モードの実行時以外における前記目標車間距離よりも相対的に長く設定し、前記周辺環境認識手段は、前記料金所通過モードの実行時に、前記走行環境情報を認識するまでのサンプリング回数を、前記料金所通過モードの実行時以外における前記サンプリング回数よりも少なくするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両の走行制御装置によれば、料金所手前のエリアにおいても自動運転を解除することなく、自車両を適切に料金所ゲートまで誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車両の走行制御装置の全体構成図
図2】料金所通過制御ルーチンを示すフローチャート(その1)
図3】料金所通過制御ルーチンを示すフローチャート(その2)
図4】先行車車速と目標車間距離との関係を示すマップ
図5】料金所ゲートまでの距離と目標車速との関係を示すマップ
図6】自車前方に料金所ゲートが存在するときの画像の一例を示す説明図
図7】自車前方の料金所ゲートが先行車によって遮られているときの画像の一例を示す説明図
図8】先行車との目標車間距離変更後の料金所ゲートの画像の一例を示す説明図
図9】料金所ゲートまでの自車通過経路の一例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係り、図1は車両の走行制御装置の全体構成図、図2,3は料金所通過制御ルーチンを示すフローチャート、図4は先行車車速と目標車間距離との関係を示すマップ、図5は料金所ゲートまでの距離と目標車速との関係を示すマップ、図6は自車前方に料金所ゲートが存在するときの画像の一例を示す説明図、図7は自車前方の料金所ゲートが先行車によって遮られているときの画像の一例を示す説明図、図8は先行車との目標車間距離変更後の料金所ゲートの画像の一例を示す説明図、図9は料金所ゲートまでの自車通過経路の一例を示す説明図である。
【0014】
図1において、符号1は、車両の走行制御装置を示し、この走行制御装置1には、走行制御部10に、周辺環境認識装置11、ドライバ状態検出装置12、走行パラメータ検出装置13、自車位置情報検出装置14、車車間通信装置15、道路交通情報通信装置16、スイッチ群17の各入力装置と、エンジン制御装置21、ブレーキ制御装置22、ステアリング制御装置23、表示装置24、スピーカ・ブザー25の各出力装置が接続されている。
【0015】
周辺環境認識装置11は、車両の外部環境を撮影して画像情報を取得する車室内に設けた固体撮像素子等を備えたカメラ装置(ステレオカメラ、単眼カメラ、カラーカメラ等)と、車両の周辺に存在する立体物からの反射波を受信するレーダ装置(レーザレーダ、ミリ波レーダ等)、ソナー等(以上、図示せず)で構成されている。
【0016】
周辺環境認識装置11は、カメラ装置で撮像した画像情報を基に、例えば、距離情報に対して周知のグルーピング処理を行い、グルーピング処理した距離情報を予め設定しておいた三次元的な道路形状データや立体物データ等を比較することにより、車線区画線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データ、車両(先行車、対向車、並走車、駐車車両)等の立体物データ等を、自車両からの相対的な位置(距離、角度)および速度と共に抽出する。
【0017】
また、周辺環境認識装置11は、レーダ装置で取得した反射波情報を基に、反射した立体物の存在する位置(距離、角度)を、速度と共に検出する。このように、周辺環境認識装置11は、自車両が走行する走行環境情報を取得する走行環境情報取得手段を構成するための、周辺環境認識手段として設けられている。
【0018】
ドライバ状態検出装置12は、例えば、特開2012−219979号公報に開示されるような運転席又はハンドルに設けられた心拍数センサで構成され、心拍数センサにより検出された心拍検出信号から心拍数を測定し、この心拍数に基づいてドライバの覚醒度を検出する。このように、本実施の形態では、ドライバ状態検出装置12は、覚醒度検出手段として設けられている。
【0019】
走行パラメータ検出装置13は、自車両の走行情報、具体的には、車速、操舵トルク、ハンドル角、ヨーレート、アクセル開度、スロットル開度、及び走行する路面の路面勾配、路面摩擦係数推定値等を検出する。このように、走行パラメータ検出装置13は、走行情報検出手段の機能を有して設けられている。
【0020】
自車位置情報検出装置14は、例えば、公知のナビゲーションシステムであり、例えば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)衛星から発信された電波を受信し、その電波情報に基づいて現在位置を検出して、フラッシュメモリや、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイ(Blu-ray:登録商標)ディスク、HDD(Hard Disk drive)等の予め記憶しておいた地図データ上に自車位置を特定する。
【0021】
この予め記憶される地図データとしては、道路データおよび施設データを有している。道路データは、リンクの位置情報、種別情報、ノードの位置情報、種別情報、ノードにおけるカーブ曲率(或いは、カーブ半径)、および、ノードとリンクとの接続関係の情報、すなわち、道路の分岐、合流地点情報と分岐路における最大車速情報等を含んでいる。施設データは、施設毎のレコードを複数有しており、各レコードは、対象とする施設の名称情報、所在位置情報、施設種別(デパート、商店、レストラン、駐車場、公園、車両の故障時の修理拠点の別)情報を示すデータを有している。そして、地図位置上の自車位置を表示して、操作者により目的地が入力されると、出発地から目的地までの経路が所定に演算され、ディスプレイ、モニタ等の表示装置24に表示され、また、スピーカ・ブザー25により音声案内として誘導自在になっている。このように、自車位置情報検出装置14は、走行環境情報取得手段を構成するための、自車位置情報検出手段として設けられている。
【0022】
車車間通信装置15は、例えば、無線LANなど100(m)程度の通信エリアを有する狭域無線通信装置で構成され、サーバなどを介さずに他の車両と直接通信を行い、情報の送受信を行うことが可能となっている。そして、他の車両との相互通信により、車両情報、走行情報、交通環境情報等を交換する。車両情報としては、車種(本実施形態では、乗用車、トラック、二輪車等の種別)を示す固有情報がある。また、走行情報としては、車速、位置情報、ブレーキランプの点灯情報、右左折時に発信される方向指示器の点滅情報、緊急停止時に点滅されるハザードランプの点滅情報がある。更に、交通環境情報としては、道路の渋滞情報、工事情報等の状況によって変化する情報が含まれている。このように、車車間通信装置15は、走行環境情報取得手段を構成するための、車車間通信手段として設けられている。
【0023】
道路交通情報通信装置16は、所謂、道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Information and Communication System:登録商標)で、FM多重放送や道路上の発信機から、渋滞や事故、工事、所要時間、駐車場の道路交通情報をリアルタイムに受信し、この受信した交通情報を、上述の予め記憶しておりた地図データ上に表示する装置となっている。このように、道路交通情報通信装置16は、走行環境情報取得手段を構成するための、道路交通情報通信手段として設けられている。
【0024】
スイッチ群17は、ドライバの運転支援制御に係るスイッチ群で、例えば、速度を予め設定しておいた一定速で走行制御させるスイッチ、或いは、先行車との車間距離、車間時間を予め設定しておいた一定値に維持して追従制御させるためのスイッチ、走行車線を設定車線に維持して走行制御するレーンキープ制御のスイッチ、走行車線からの逸脱防止制御を行う車線逸脱防止制御のスイッチ、先行車(追い越し対象車両)の追い越し制御を実行させる追い越し制御実行許可スイッチ、これら全ての制御(総じて操舵制御と加減速制御とに分類される運転制御)を協調して行わせる自動運転制御を実行させるためのスイッチ、これら各制御に必要な車速、車間距離、車間時間、制限速度等を設定するスイッチ、或いは、これら各制御を解除するスイッチ等から構成されている。
【0025】
エンジン制御装置21は、例えば、吸入空気量、スロットル開度、エンジン水温、吸気温度、酸素濃度、クランク角、アクセル開度、その他の車両情報に基づき、車両のエンジン(図示せず)についての燃料噴射制御、点火時期制御、電子制御スロットル弁の制御等の主要な制御を行う公知の制御ユニットである。
【0026】
ブレーキ制御装置22は、例えば、ブレーキスイッチ、4輪の車輪速、ハンドル角、ヨーレート、その他の車両情報に基づき、4輪のブレーキ装置(図示せず)をドライバのブレーキ操作とは独立して制御可能で、公知のアンチロック・ブレーキ・システム(Antilock Brake System)や、横すべり防止制御等の車両にヨーモーメントを付加するヨーモーメント制御(ヨーブレーキ制御)を行う公知の制御ユニットである。そして、ブレーキ制御装置22は、走行制御部10から、各輪のブレーキ力が入力された場合には、該ブレーキ力に基づいて各輪のブレーキ液圧を算出し、ブレーキ駆動部(図示せず)を作動させる。
【0027】
ステアリング制御装置23は、例えば、車速、操舵トルク、ハンドル角、ヨーレート、その他の車両情報に基づき、車両の操舵系に設けた電動パワーステアリングモータ(図示せず)によるアシストトルクを制御する、公知の制御装置である。また、ステアリング制御装置23は、上述の走行車線を設定車線に維持して走行制御するレーンキープ制御、走行車線からの逸脱防止制御を行う車線逸脱防止制御、及び、障害物回避操舵制御が可能となっており、これら操舵制御に必要な操舵角、或いは、操舵トルクが、走行制御部10により算出されてステアリング制御装置23に入力され、入力された制御量に応じて電動パワーステアリングモータが駆動制御される。
【0028】
表示装置24は、例えば、モニタ、ディスプレイ、アラームランプ等のドライバに対して視覚的な警告、報知を行う装置である。また、スピーカ・ブザー25は、ドライバに対して視覚的な警告、報知を行う装置である。すなわち、表示装置24、スピーカ・ブザー25は報知手段として設けられている。
【0029】
そして、走行制御部10は、上述の各装置11〜17からの各入力信号に基づいて、障害物等との衝突防止制御、定速走行制御、追従走行制御、レーンキープ制御、車線逸脱防止制御、追い越し制御、障害物回避操舵制御等の操舵制御や加減速制御を協調させて行って自動運転制御等を実行する。
【0030】
この場合において、走行制御部10は、自車両の前方に先行車が存在しないとき、自動運転制御に係る車速制御として、ドライバが設定したセット車速Vsetを目標車速Vtrgとする定速走行制御を行う。すなわち、走行制御部10は、自車速V0をセット車速Vsetに収束させるための目標加速度aを算出し、この目標加速度aに基づき、エンジン制御装置21に信号出力してスロットル弁の開度をフィードバックし、或いは、ブレーキ制御装置22に減速信号を出力して自動ブレーキを作動させる。
【0031】
また、走行制御部10は、自車両の前方に先行車が存在するとき、自動運転制御に係る車速制御として、先行車との車間距離Lを目標車間距離Dtrgに収束させるための車速制御を行う。すなわち、走行制御部10は、例えば、以下の(1)式を用いて目標加速度aを算出し、この目標加速度aに基づき、エンジン制御装置21に信号出力してスロットル弁の開度をフィードバックし、或いは、ブレーキ制御装置22に減速信号を出力して自動ブレーキを作動させることにより、車間距離Lを目標車間距離Dtrgに収束させる。
a=af+((V0−Vf)/(L−Dtrg)) …(1)
ここで、(1)式中において、afは先行車の加速度、V0は自車速度、Vfは先行車速度である。また、目標車間距離Dtrgは、例えば、図4に実線で示すように、予め設定されたマップ等を参照して可変設定されるものであり、この目標車間距離Dtrgは先行車速度Vfが大きくなるほど大きな値が設定される。
【0032】
また、走行制御部10は、例えば、自車位置情報検出装置14等によって地図データ上の前方設定距離L0以内に自車両が通過すべき料金所50が検出されているとき、自動運転制御の制御モードとして料金所通過モードを実行する。
【0033】
そして、料金所通過モードが実行されると、走行制御部10は、料金所50の手前で車線区画線が消失等した場合にも自動運転制御を継続するための経路として、料金所50までの自車通過経路を設定し、この自車通過経路に従った自車両の運転制御(料金所通過制御)を行う。
【0034】
具体的には、周辺環境認識装置11によって料金所50の料金所ゲート50aが認識されたとき(例えば、図6等参照)、走行制御部10は、認識した料金所ゲート50aまでの自車通過経路を設定する。すなわち、周辺環境認識装置11によって、自車前方の料金所50に複数の料金所ゲート50aが認識されると、走行制御部10は、これらの中から、予め設定された各種条件(例えば、料金所ゲートが「ETC専用ゲート」であるか「一般ゲート」であるかの別、料金所通過後の自車両の進行方向、各料金所ゲートの混雑具合等の各種条件)に基づいて自車両が通過すべき料金所ゲート50aを選択し、選択した料金所ゲート50aまでの経路(例えば、図9中に破線で示す自車通過経路)を設定する。
【0035】
一方、周辺環境認識装置11による料金所ゲート50aの認識が困難である場合、走行制御部10は、周辺環境認識装置11によって料金所ゲート50aが認識されるまでの間、例えば、自車位置情報検出装置14の地図データ等に予め設定されている経路を、仮の経路(自車通過経路)として設定する。
【0036】
そして、走行制御部10は、周辺環境認識装置11等からの情報に基づき、自車走行経路に沿って走行する先行車が存在するか否かを調べ、自車走行経路に沿って走行する先行車が存在する場合には、当該先行車に追従する追従走行制御を行う。その際、走行制御部10は、先行車に対する目標車間距離Dtrg(例えば、図4中の一点鎖線参照)を、料金所通過モードの実行時以外の通常時の目標車間距離Dtrg(例えば、図4中の実線参照)よりも相対的に長く設定する。
【0037】
一方、自車走行経路に沿って走行する先行車が存在しない場合には、走行制御部10は、自車走行経路に沿った走行制御を行う。その際、走行制御部10は、例えば、図5中に示すように、目標車速Vtrgとして予め設定された値Vtrg0を設定し、料金所までの距離Ltollが設定距離Lth未満となったとき、目標車速Vtrgを所定の極定速(例えば、20Km/h以下)まで漸次減少させる。
【0038】
ここで、例えば、図7に示すように、周辺環境認識装置11によって料金所ゲート50aが認識されておらず、且つ、自車両の前方に先行車51が認識されている場合、走行制御部10は、先行車51に対する目標車間距離Dtrgを現在の値よりも大きな値に補正し、先行車51との車間距離を一時的に離間方向に制御する。
【0039】
このように、本実施形態において、走行制御部10は、料金所通過モード実行手段、自車通過経路設定手段、料金所通過時走行制御手段、及び、車間距離離間制御手段としての各機能を実現する。
【0040】
次に、走行制御部10において実行される料金所通過制御について、図2,3に示す料金所通過制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、例えば、自動運転制御中に実行される割り込みルーチンであり、ルーチンがスタートすると、走行制御部10は、先ず、ステップS101において、自車位置情報検出装置14からの情報に基づき、地図データ上の前方設定距離以内に、自車両が通過すべく料金所50が検出されているか否かを調べる。
【0041】
そして、ステップS101において、料金所50が検出されていないと判定した場合、走行制御部10は、自動運転制御の制御モードとして料金所通過モードを実行することなく、そのままルーチンを抜ける。
【0042】
一方、ステップS101において、料金所50が検出されていると判定した場合、走行制御部10は、以下の処理によって料金所通過モードを実行すべく、ステップS102に進む。
【0043】
ステップS101からステップS102に進むと、走行制御部10は、周辺環境認識装置11等で認識される走行環境情報に対する制御応答性を通常時よりも高く設定するための変更を行う。
【0044】
具体的には、走行制御部10は、例えば、周辺環境認識装置11等が備えるセンサ類が各種走行環境情報を認識するまでのサンプリング回数が通常時よりも少なくなるよう設定変更を行うことにより、制御応答性を高くする。
【0045】
また、ステップS102において、走行制御部10は、周辺環境認識装置11によって自車両の前方に先行車が認識されている場合には、当該先行車に対する目標車間距離Dtrgを設定する。
【0046】
具体的には、走行制御部10は、例えば、図4中に一点鎖線で示すように、予め設定されたマップ等を参照して、先行車速度Vfに応じた目標車間距離Dtrgを設定する。この場合、図4からも明らかなように、料金所通過モードの実行時における目標車間距離Dtrgは、先行車速度Vfが高くなるほど長く設定される。また、料金所通過モードの実行時における目標車間距離Dtrgは、料金所通過モードの実行時以外に同一の先行車速度Vfにおいて設定される目標車間距離Dtrg(図4中の実線参照)よりも、相対的に長く設定される。
【0047】
さらに、ステップS102において、走行制御部10は、自車通過経路に沿った走行制御を行うための目標車速Vtrgを設定する。
【0048】
具体的には、走行制御部10は、例えば、図5に示すように、予め設定されたマップ等を参照して、目標車速Vtrgを設定する。この場合、図5からも明らかなように、料金所までの距離Ltollが設定距離Lth以上である場合には予め設定された固定値Vtrg0を目標車速Vtrgとして設定し、料金所ゲートまでの距離Ltollが設定距離Lth未満となったとき、目標車速Vtrgを所定の極定速(例えば、20Km/h以下)まで漸次減少させる。
【0049】
ステップS102からステップS103に進むと、走行制御部10は、周辺環境認識装置11によって認識された料金所ゲート50aに基づいて自車通過経路が設定されているか否かを調べる。
【0050】
そして、ステップS103において、料金所ゲート50aに基づく自車通過経路が設定されていると判定した場合、走行制御部10はステップS111に進む。
【0051】
一方、ステップS113において、料金所ゲート50aに基づく自車通過経路が設定されていないと判定した場合(すなわち、周辺環境認識装置11によって自車両の前方に料金所ゲート50aが認識されていないと判定した場合)、走行制御部10は、ステップS104に進む。
【0052】
ステップS103からステップS104に進むと、走行制御部10は、現在、周辺環境認識装置11によって料金所ゲート50aが認識されているか否かを調べ、自車両の前方に料金所ゲート50aが認識されていると判定した場合(例えば、図6参照)、ステップS110に進む。
【0053】
一方、ステップS104において、自車両の前方に料金所ゲート50aが認識されていないと判定した場合、走行制御部10は、ステップS105に進む。
【0054】
ステップS104からステップS105に進むと、走行制御部10は、周辺環境認識装置11によって自車両の前方に先行車が認識されているか否かを調べ、先行車が認識されていないと判定した場合、ステップS109に進む。
【0055】
一方、ステップS105において、先行車51が認識されていると判定した場合、走行制御部10は、料金所ゲート50aが認識されない原因として、例えば、図7に示すように料金所ゲート50aが先行車によって遮蔽されている可能性が高いと判断して、ステップS106に進む。
【0056】
ステップS105からステップS106に進むと、走行制御部10は、先行車の車高に応じた目標車間距離Dtrgを設定する。すなわち、ステップS106において、走行制御部10は、上述のステップS102において設定された目標車間距離Dtrgを、一時的に、先行車の車高に応じた目標車間距離Dtrgに設定し直す。
【0057】
ここで、ステップS106において一時的に再設定される目標車間距離Dtrgは、例えば、追従走行制御において通常設定される目標車間距離Dtrgよりも十分に長い車間距離であり、予め実験等によって設定されたマップ等(図示せず)に基づき、先行車の車高が高くなるほど長くなるよう設定される。
【0058】
そして、ステップS106からステップS107に進むと、走行制御部10は、ステップS106において一時的に再設定した目標車間距離Dtrgに基づき、先行車51に対する車間距離制御を行う。
【0059】
すなわち、走行制御部10は、ステップS106で再設定した目標車間距離Dtrgを上述の(1)式に代入することにより、先行車51との車間距離Lを目標車間距離Dtrgに収束させるための目標加速度(目標減速度)aを算出し、減速による車間距離制御を行う。
【0060】
そして、ステップS108に進むと、走行制御部10は、先行車51との車間距離制御によって料金所ゲート50aを認識できたか否かを調べ、未だ料金所ゲートを認識できていない場合にはステップS109に進む。
【0061】
一方、ステップS108において、先行車51との車間距離制御によって料金所ゲート50aが認識できたと判定した場合(例えば、図8参照)、走行制御部10は、ステップS110に進む。
【0062】
ステップS104或いはステップS108からステップS110に進むと、走行制御部10は、現在認識されている料金所ゲート50aの中から、予め設定された条件に基づいて自車両が通過すべき料金所ゲート50aを選択し、選択した料金所ゲート50aまでの自車通過経路を設定する(図9中の破線参照)。
【0063】
また、ステップS103或いはステップS110からステップS111に進むと、走行制御部10は、現在選択されている料金所ゲート50aに車両を誘導するための誘導線50bが周辺環境認識装置11によって認識されているか否かを調べ、誘導線50bが認識されていないと判定した場合、ステップS113に進む。
【0064】
一方、ステップS111において、周辺環境認識装置11によって誘導線50bが認識されていると判定した場合、走行制御部10は、認識された誘導線50bに基づいて自車通過経路をより緻密に再設定した後、ステップS113に進む。
【0065】
また、ステップS105或いはステップS108からステップS109に進むと、走行制御部10は、周辺環境認識装置11によって料金所ゲート50aが認識されるまでの仮の経路として、例えば、自車位置情報検出装置14の地図データ等に予め設定されている経路を自車通過経路として設定した後、ステップS113に進む。
【0066】
ステップS109、ステップS111、或いは、ステップS112からステップS113に進むと、走行制御部10は、現在設定されている自車通過経路と進行方向が一致する先行車が存在するか否かを調べる。
【0067】
すなわち、ステップS113において、走行制御部10は、自車両の前方に先行車が認識されているか否かを調べ、先行車が認識されている場合には、例えば、当該先行車の向き及び横速度から推定される進行方向が自車通過経路に対して所定の誤差範囲内で一致しているか否かを調べる。
【0068】
そして、ステップS113において、自車通過経路と進行方向が一致する先行車が存在すると判定した場合、走行制御部10は、ステップS114に進み、上述のステップS102で設定された目標車間距離Dtrgに基づいて、先行車に対する追従走行制御を行った後、ステップS101に戻る。
【0069】
一方、ステップS113において、自車両の前方に先行車が認識されていないと判定した場合、或いは、自車両の前方に先行車が認識されているものの当該先行車と自車通過経路とが一致しないと判定した場合、走行制御部10は、ステップS115に進み、ステップS102で設定された目標車速Vtrgに基づいて、自車通過経路に沿った走行制御を行った後、ステップS101に戻る。
【0070】
このような実施形態によれば、自車位置情報検出装置14によって地図データ上の前方設定距離以内に自車両が通過すべき料金所が検出されているとき自動運転制御のモードとして料金所通過モードを実行し、この料金所通過モードの実行時に、周辺環境認識装置11によって料金所50の料金所ゲート50aが認識されたとき当該料金所ゲート50aまでの自車通過経路を設定し、設定した自車通過経路に従って自車両の運転制御を行うことにより、料金所の手前においても自動運転を解除することなく、リアルタイムに取得される情報に基づいて自車両を適切に料金所ゲートまで誘導することができる。
【0071】
この料金所通過モードの実行時において、周辺環境認識装置11によって料金所ゲート50aが認識されておらず且つ自車両の前方に先行車51が認識されているとき、先行車51との車間距離を一時的に離間方向に制御することにより、先行車51が前方を遮蔽することに起因して料金所ゲート50aを認識されていない場合にも、速やかに料金所ゲート50aを認識することができる。
【0072】
また、料金所通過モードの実行時に、周辺環境認識装置11によって料金所ゲート50aが認識されるまでの間、自車位置情報検出装置14の地図データ上に予め設定されている料金所50までの経路を自車走行経路として設定することにより、料金所ゲート50aが認識されるまでの間も、継続的に自動運転制御を行うことができる。
【0073】
また、このような料金所通過モードの実行時において、周辺環境認識装置11によって自車通過経路に沿って走行する先行車が検出されている場合には、当該先行車に追従する追従走行制御によって自車通過経路に沿った走行を実現することにより違和感のない走行制御を実現することができる。この場合において、料金所通過モードの実行時における追従走行制御の目標車間距離Dtrgを、料金所通過モードの実行時以外における目標車間距離Dtrgよりも相対的に長く設定することにより、前方の距離感を把握することが困難な料金所前のエリアにおいて、先行車等の周辺車両が急減速等の想定外の挙動を示した場合にも安全性の高い走行制御を実現することができる。
【0074】
さらに、料金所通過モードの実行時には、走行環境情報に対する制御応答性を、料金所通過モードの実行時以外よりも高く設定することにより、より安全性の高い走行制御を実現することができる。
【0075】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。
【符号の説明】
【0076】
1 … 走行制御装置
10 … 走行制御部
11 … 周辺環境認識装置(周辺環境認識手段(走行環境情報取得手段))
12 … ドライバ状態検出装置(覚醒度検出手段)
13 … 走行パラメータ検出装置(走行情報検出手段)
14 … 自車位置情報検出装置(自車位置情報検出手段(走行環境情報取得手段))
15 … 車車間通信装置(車車間通信手段(走行環境情報取得手段))
16 … 道路交通情報通信装置(道路交通情報取得手段(走行環境情報取得手段))
17 … スイッチ群
21 … エンジン制御装置
22 … ブレーキ制御装置
23 … ステアリング制御装置
24 … 表示装置
25 … スピーカ・ブザー
50 … 料金所
50 … 誘導線
50 … 料金所
50a … 料金所ゲート
51 … 先行車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9