(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871725
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】中皿の使用方法及び中皿
(51)【国際特許分類】
B65D 77/04 20060101AFI20210426BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
B65D77/04 A
B65D81/34 Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-229679(P2016-229679)
(22)【出願日】2016年11月28日
(65)【公開番号】特開2018-87015(P2018-87015A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】391011825
【氏名又は名称】中央化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 繁
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−270300(JP,A)
【文献】
特開昭63−296941(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0184025(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00−79/02
B65D 81/18−81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
B65D 81/32−81/36
A23L 5/00− 5/30
A23L 29/00−29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小売業者や食品業者により、
耐オーブン適性を有する熱可塑性樹脂製の中皿に食材を盛り付け、
盛り付けられた食材を前記中皿ごと150〜220℃で加熱調理し、
加熱調理された食材を前記中皿ごと別途内容物が盛られた容器本体に重ねる
ことを含むことを特徴とする中皿の使用方法。
【請求項2】
耐オーブン適性を有する熱可塑性樹脂製の中皿に食材を盛り付け、
盛り付けられた食材を前記中皿ごと150〜220℃で加熱調理し、
加熱調理された食材を前記中皿ごと別途食材が盛られた容器本体に重ねる
ことを含むことを特徴とする中皿の使用方法。
【請求項3】
耐オーブン適性を有する熱可塑性樹脂製の中皿に食材を盛り付け、
盛り付けられた食材を前記中皿ごと150〜220℃で加熱調理し、
加熱調理された食材を前記中皿ごと別途内容物が盛られた容器本体に重ねることで商品として販売可能な状態にする
ことを含むことを特徴とする中皿の使用方法。
【請求項4】
加熱調理された食材を前記中皿ごと冷凍する
ことを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の中皿の使用方法。
【請求項5】
消費者が、前記中皿が重ねられた前記容器本体を購入後、
加熱調理された食材を前記中皿又は当該容器本体ごと温め直す
ことを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の中皿の使用方法。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の中皿の使用方法に用いられ、
加熱調理に伴い収縮することにより前記容器本体に重なるように設計されている
ことを特徴とする中皿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、食材の包装用容器の一部として着脱自在な中皿の使用方法及び中皿に関し、さらに詳しくは、加熱調理後の容器変更が不要な中皿の使用方法及び中皿に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、スーパーやコンビニエンスストアで販売される惣菜や弁当の種類の増加に伴い、これらを包装する容器の種類も増加してきた。さらに近年では、消費者の食に対する傾向として、比較的高価な食材を店舗で購入し、家やオフィス等で食事を楽しむようになってきた。そこで、多種の食材をセットで購入したい消費者に対応するため、一つの容器内で複数の食材を包含すると共に、食事前にそのまま食材を温められる包装用容器の需要が高まってきた。
【0003】
例えば、異なる食材(麺とスープ等)を上下に収納し、そのまま電子レンジで調理加熱可能な1食完結型の包装用容器(例えば特許文献1参照。)が提案されている。詳細には、上側の食材が中皿に収納されていることで、風味を損なわず直接的に調理加熱することができると共に、加熱後に中皿を傾けることで簡単に下側の食材と混ぜ合わせることができるものである。そして、中皿はPPF(ポリプロピレンフィルム樹脂)、容器本体はPP−C(ポリプロピレン樹脂)にて形成されることが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3202469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、購入後に消費者が抱く再加熱に関する課題の解決策に特化され、製造過程に小売業者や食品業者が抱く調理や盛り付けに対する問題への配慮がなされていない。さらに、例示されている中皿や容器本体を形成する合成樹脂の耐熱性を考えると、通常の電子レンジ機能以上の高温な調理加熱への配慮がなされていない。
【0006】
惣菜や弁当を扱う小売業者や食品業者にとって食材を加熱調理するには、調理場(バックヤード)や調理人に対する作業コストがかさむだけではなく、加熱調理された高温の食材を小さめな中皿に盛り付けるため商品の品質に対する責任が大きい。このため、食材を加熱調理する工程及び加熱調理された食材を包装用容器に盛り付ける工程の見直しが求められている。
【0007】
また、消費者にとって食材を電子レンジで温め直す行為は、食欲を低下しかねない。すなわち、電子レンジで温め直した食材は、本来の加熱調理直後の食材と比べて見た目も味も劣るばかりでなく、心情的に味気のない食事と感じさせてしまう恐れがある。このため、消費者に対して簡単かつ一手間かけた実感を抱かせ、食材としての商品価値を向上させる加熱調理の提供ニーズが高まっている。
【0008】
このような課題に対し、発明者等は小売業者や食品業者のバックヤードにも消費者のキッチンにも普及しているオーブンの利点に着目した。オーブンはワンタッチ操作かつ電子レンジより高温のため、加熱温度や加熱時間を設定変更すれば、多品種の食材の加熱調理を大量に行うことができる。実際、小売業者や食品業者では、食材の加熱調理にオーブンが活用される機会が増えている。
【0009】
しかしながら、オーブンでの加熱調理では、食材を耐熱性のコンテナや大きめのトレーに入れているため、調理後に食材を中皿に盛り付けなければならない。すなわち、食材を盛り付けた中皿をそのままオーブンに投入して加熱調理できれば、調理後の容器の移し変えが不要になるため、加熱調理された食材を包装用容器に盛り付ける工程を省くことができるはずである。
【0010】
このことから、発明者等はオーブンでの加熱調理に対応すると共に、別の食材が盛られた包装用容器と組み合わせた商品販売に適した中皿の使用に上述した課題を克服する活路を見出した。すなわち、小売業者や食品業者が抱える加熱調理に対する負担や消費者が抱く加熱調理に対する願望を軽減するには、中皿の使用方法の見直しが必要であることに気づいたのである。
【0011】
そこで、本発明の第一の目的は、商品販売前に手間のかかる食材の容器変更を省略する中皿の使用方法及び中皿を提供することにある。また、本発明の第二の目的は、商品販売後に食材の加熱調理の簡単な実行を可能にする中皿の使用方法及び中皿を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明による中皿の使用方法は、耐オーブン適性を有する熱可塑性樹脂製の中皿に食材を盛り付け、盛り付けられた食材を上記中皿ごと150〜220℃で加熱調理し、加熱調理された食材を上記中皿ごと別途内容物が盛られた容器本体に重ねることを含むことを特徴とする。
【0013】
また、加熱調理された食材を上記中皿ごと冷凍することを含むことが望ましい。
【0014】
また、消費者が、上記中皿が重ねられた上記容器本体を購入後、加熱調理された食材を上記中皿又は上記容器本体ごと温め直すことが望ましい。
【0015】
また、加熱調理に伴い収縮することにより上記容器本体に重なるように設計されていることが望ましい。
【0016】
ここで、「耐オーブン適性を有する熱可塑性樹脂」とは、例えば、剛性があり耐衝撃性も高い結晶性PET(PET:Polyethylene Terephthalate、ポリエチレンテレフタレート)でもよい。「耐オーブン適性」とは、220℃での加熱における収縮率が5.0%以下、または180℃での加熱による収縮率が2.0%以下のいずれかの条件を満たしてもよい。
【0017】
「中皿」とは、発泡性素材、非発泡性素材、又は発泡性素材及び非発泡性素材が積層されたものでもよい。ここで、発泡性素材の見掛け密度は0.1〜0.7g/cm
3であってもよいし、非発泡性素材の見掛け密度は1.2〜1.45g/cm
3であってもよい。
【0018】
「食材」とは、調理されていないもの、一部調理(味付けや調理のための準備を含む)されているもの、又は単に焼いたり煮たり炊いたり蒸したりされているものでもよく、例えば、野菜類、肉類、魚類、米類、麺類、又はパン類に関するものでもよく、具体的には、グラタン、ハンバーグ、ラザニア、パエリア、又はキッシュといったメニューでもよい。「内容物」とは、「食材」のみならず、食材に関するもの(例えば、ドライアイス等の保冷剤や保温材)でもよい。
【0019】
「盛り付けられた食材」とは、加熱調理後に商品として販売可能な状態に盛り付けられた食材であることを意味してもよい。「加熱調理された食材」とは、加熱調理後に商品として販売可能な状態に調理された食材であることを意味してもよい。
【0020】
「150〜220℃で加熱調理」する手段としては、一般的な加熱調理機でもよく、例えば、オーブン(スチーム機能を有するものを含む)、電子レンジ、又は圧力釜でもよい。150℃以下ではオーブン機能による加熱調理ができず、220℃以上では熱可塑性樹脂製の中皿が破損する恐れ(収縮率の急上昇や変色の危険性)があるからである。
【0021】
加熱調理された食材を中皿又は容器本体ごと「温め直す」とは、例えば、上述した一般的な加熱調理機で再加熱すること、湯煎すること、又は所定の蒸器で蒸すことでもよい。
【0022】
「容器本体に重なる」とは、例えば、中皿のフランジ部が容器本体のフランジ部に引っ掛かり中皿が容器本体内で浮いている状態、容器本体内部に設けられた所定の段部に中皿の底部が載置されている状態、又は中皿が容器本体の底部の一部に載置されている状態にすることを示していてもよい。
【0023】
加熱調理に伴い「収縮する」とは、加熱調理前と比較して、中皿がわずかに小さくなることを意味してもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明による中皿の使用方法は、食材を盛り付けた耐オーブン適性を有する熱可塑性樹脂製の中皿ごと150〜220℃で加熱調理した後、そのまま別途内容物が盛られた容器本体に中皿を重ねることにより、小売業者や食品業者の負担となる加熱調理された高温の食材を中皿に盛り付ける工程を省略することができる。すなわち、加熱調理された中皿上の食材は食事可能な状態であり、容器本体に重ねることで商品として販売可能な状態となるため、加熱調理後に食材の容器変更が不要となる。したがって、従来行われていた3つの作業工程(コンテナ内の食材を加熱調理する工程、加熱調理した食材を中皿に移し替える工程、食材が盛られた中皿を容器本体に重ねる工程)から、2つの作業工程(中皿内の食材を中皿ごと加熱調理する工程、加熱調理された食材と共に中皿を容器本体に重ねる工程)への改善が実現し、作業効率の向上が期待できる。
【0025】
また、加熱調理された食材を中皿ごと冷凍することにより、賞味期限が短めの惣菜や弁当のみならず賞味期限が長めの冷凍食品としても販売することができる。すなわち、冷凍保存(例えば、−20℃)にも対応可能な中皿のため、加熱調理後に冷凍用の容器への移し替えが不要な分、高い作業効率を維持することができる。
【0026】
また、食事の前に消費者は食材を温め直す手段を選択することもできる。例えば、中皿を容器本体から取り出し、中皿ごと150〜220℃の出力が可能な加熱調理機を使用すれば、食材の質(見た目や味や触感)は、通常の電子レンジで温め直したものよりも高いことが期待できるため、消費者に対して簡単かつ一手間かけた実感を抱かせることが期待できる。一方、食材の質より食事の時間を優先したい消費者は、容器本体ごと通常の電子レンジで食材を温め直すこともできる。
【0027】
また、加熱調理で中皿が収縮すると容器本体に重なる設計にすることにより、中皿と容器本体との重なり具合を最適化することができる。例えば、収縮後の中皿の外周が容器本体の内周より小さいと、中皿が容器本体内へ落下する危険性がある。一方、収縮後の中皿の内周が容器本体の内周と同じか大きいと、中皿が容器本体に重なりきらないため、ガタついたり蓋を装着できなかったりする恐れがある。したがって、加熱に伴う収縮率を考慮して中皿を設計することで、欠陥品の販売を未然に防ぐ効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】中皿の使用方法の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1〜
図2を参照しつつ、本発明の一実施形態による中皿の使用方法及び中皿の特徴について説明する。
図1は、小売業者や食品業者における中皿の使用の流れを示す。
図2は、中皿を重ねた容器本体に蓋を装着した状態を示す。
図3は、各々の内周に応じた容器本体に対する中皿の重なり状態を示す。
なお、図解の便宜上、想像線(二点鎖線)で描写しているところもある。
【0030】
まず、
図1を参照しつつ、中皿の使用方法の一例の概要を説明する。
【0031】
図1に示すように、中皿の使用方法の一例としては、耐オーブン適性を有する熱可塑性樹脂製の中皿1に食材Fを盛り付け、盛り付けられた食材をこの中皿ごと150〜220℃で加熱調理し、加熱調理された食材をこの中皿ごと別途内容物Xが盛られた容器本体2に重ねてもよい。
【0032】
また、加熱調理された食材Fを中皿1ごと冷凍してもよい。
【0033】
また、消費者が、中皿1が重ねられた容器本体2を購入後、加熱調理された食材Fを中皿1又は容器本体2ごと温め直してもよい。
【0034】
また、中皿1が、加熱調理に伴い収縮することにより容器本体2に重なるように設計されていてもよい。
【0035】
ここで、
図2を参照しつつ、中皿、容器本体、及び蓋体の詳細を説明する。
【0036】
中皿1は、水平な机上に載置した状態における平面視略円形状で、食材が盛り付けられる中皿底部11と、この中皿底部の周縁から上方に立ち上がっている中皿側壁部12と、この中皿側壁部の上端で形成される開口縁から外方に延出している中皿フランジ部13とを少なくとも備えていてもよい。
なお、中皿1は、平面視略矩形状や楕円形状でもよく、各部の形状や寸法に限定はなく、例えば、縦×横×高さの寸法は88〜185mm×88〜185mm×30〜47mm、厚みは0.1〜1.0mm、より好ましくは0.3〜0.6mm、容量は185〜350ccでもよく、業務用であれば縦×横×高さの寸法は20〜50cm×20〜50cm×1〜7cm、厚み0.4〜1.5mmでもよいが、これに限定はされることはない。中皿1の内周(特に、容器本体2と重なる部分の内周)は、加熱調理に伴う収縮率を考慮し、少なくともこの容器本体の内周より大きめに成型してもよい。
【0037】
中皿1の素材は、結晶化ポリエチレンテレフタレート(Crystallized PET、以下、「C‐PET」ともいう)でもよい。C‐PETは、耐オーブン適性に優れており、周辺の温度が融点(250℃)に近づいても変形し難いため、オーブンや高温機能を有する電子レンジでの使用にも向いている。
なお、C‐PETを原料として耐オーブン適性を有する包装用容器を成型するためには、加熱金型の温度を169〜200℃まで、養生時間を3秒以上としてもよい。高温にさらすことにより、冷却・固定後の結晶化温度を高めるためである(通常のPETの耐熱温度は70〜80℃で、そのための成型温度は65℃である)。
【0038】
中皿1を構成するC−PETの結晶化度について特に制限はないが、25〜35%が好ましく、30〜35%がより好ましい。こういった構成によれば、150〜220℃で加熱調理された際に、中皿1を構成するC−PETの収縮率を低減することができる。ここで、加熱調理された後の中皿を構成するC−PETの結晶化度は45%以下が好ましく、36〜45%がより好ましい。結晶化度が45%を超えると収縮率が極端に大きくなったり、変色してしまったりすることが懸念される。なお、C−PETの結晶化度は以下のように比重から算出することができる。
【0039】
まず、試料の冷結晶化熱量と融解熱量とを測定する。ここで、冷結晶化熱量および融解熱量は示差走査熱量測定法によることが望ましい。
示差走査熱量測定法では、測定資料と標準品とのヒーターが独立に作動し、定速加熱の過程で両者間に温度差が生じると、どちらかの熱量の増加又は抑制機構が自動的に働いてこれを打ち消すので、この熱流速度差が直線記録させるようになっている。
結晶化度は、理論的には次の数式に従って計算される。
(モル当たりの融解熱量−モル当たりの冷結晶化熱量)÷完全結晶PETのモル当たりの融解熱量×100=結晶化度(%)
ここで、完全結晶PETのモル当たりの融解熱量は、高分子データハンドブック(培風館発行)によれば、26.9KJとされているので、これを使用することとする。
【0040】
容器本体2は、水平な机上に載置した状態における平面視略円形状で、食材が盛り付けられる本体底部21と、この本体底部の周縁から上方に立ち上がっている本体側壁部22と、この本体側壁部の上端で形成される開口縁から外方に延出している本体フランジ部23とを少なくとも備えていてもよい。
なお、容器本体2は、平面視略矩形状や略楕円形状でもよく、中皿1を内部に重ねられる容量があれば、各部の形状や寸法に限定はない。
【0041】
中皿1は、容器本体2の開口に対して中皿底部11から挿入され、中皿フランジ部13が本体フランジ部23に引っ掛かり、この中皿が容器本体内で浮いている状態で容器本体に重なってもよい。このとき、
図3(a)に示すとおり、中皿1の中皿側壁部12における最上端の内周が、容器本体2の本体側壁部22における最上端の内周よりわずかに小さいと、この中皿が容器本体内にちょうど収まる。一方、
図3(b)に示すとおり、中皿側壁部12の最上端の内周が、容器側壁部22の最上端の内周より小さすぎると、この中皿が容器本体内に落ちてしまう恐れがある。さらに、
図3(c)に示すとおり、中皿側壁部12の最上端の内周が、容器側壁部22の最上端の内周より同じか大きいと、この中皿が容器本体内に重なりきらないため、ガタついたり傾いたりしてしまう恐れがある。
【0042】
蓋体Cは、中皿1の上方から、中皿フランジ部13及び本体フランジ部23に外嵌合する形状でもよい。
なお、蓋体Cは、トップシール用蓋材でもよく、中皿又は容器本体のフランジ部分に接着して密閉することにより、短時間で簡単に食材を包装できる上、ラップ包装や成型された蓋材の使用時よりも密閉性が高いため、食品の保存期間の長期化が実現する。
【0043】
次に、
図1を参照しつつ、中皿の使用方法の詳細を説明する。
【0044】
まず、食品業者のバックヤードにて、所定の食材Fを中皿1に盛り付け、この中皿の各々をスチームコンベクションオーブン(以下、単に「オーブン」ともいう。)に投入してもよい(工程1)。盛り付け方としては、加熱調理後に商品販売できる状態でもよい。オーブンには、食材Fに適した加熱温度や時間が設定してもよいが、食材の種類や分量に応じて150〜220℃の範囲で調整してもよい。加熱調理終了後、オーブンから取り出した中皿1の各々を、別の食材Fが盛られた容器本体2の上から挿入するように重ね合わせてもよい(工程2)。このとき、中皿1のうち容器本体2と近接するフランジ部上端の外周が、加熱調理に伴い収縮し、容器本体2の開口縁の内周よりわずかに小さくなったため、重なり具合が程よい。また、加熱調理後の中皿1は高熱を帯びている恐れもあり、必要に応じて取り出し用の治具を用いたり、中皿に取っ手を設けて、高熱を帯びている部分を直に触れることないように形状を工夫するなどしてもよい。例えば、取っ手部分またはフランジ部分を発泡性素材で構成してもよいし、別途耐熱性素材をコーティングするなどしてもよい。
【0045】
このように、本発明の一実施形態による中皿の使用法によれば、食材Fを盛り付けた耐オーブン適性を有する熱可塑性樹脂製の中皿1ごと150〜220℃に加熱できるオーブンで加熱調理した後、そのまま別途内容物Xが盛られた容器本体2にこの中皿を重ねることにより、小売業者や食品業者の負担となる加熱調理された高温の食材を中皿に盛り付ける工程を省略することができる。すなわち、加熱調理された中皿1上の食材はそのまま食事可能な状態であり、容器本体2に重ねることで商品として販売可能な状態となるため、加熱調理後に食材の容器変更が不要となる。したがって、従来行われていた3つの作業工程(コンテナ内の食材を加熱調理する工程、加熱調理した食材を中皿に移し替える工程、食材が盛られた中皿を容器本体に重ねる工程)から、2つの作業工程(中皿1内の食材をこの中皿ごとオーブンで加熱調理する工程、加熱調理された食材Fと共に中皿1を容器本体2に重ねる工程)への改善が実現し、作業効率の向上が期待できる。
【0046】
また、加熱調理で中皿1が収縮すると容器本体2に重なる設計にすることにより、この中皿と容器本体との重なり具合を最適化することができる。例えば、収縮後の中皿1の外周が容器本体2の内周より小さいと、この中皿がこの容器本体内へ落下する危険性がある。一方、収縮後の中皿1の内周が容器本体2の内周と同じか大きいと、この中皿がこの容器本体に重なりきらないため、ガタついたり蓋体Cを装着できなかったりする恐れがある。したがって、加熱に伴う収縮率を考慮して中皿を設計することで、欠陥品の販売を未然に防ぐ効果が期待できる。
【符号の説明】
【0047】
1 中皿
2 容器本体
F 食材