(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向とこれに直交する横方向とを有し、表面シートと、該表面シートよりも着用者の肌から遠い位置に配された裏面シートと、両シート間に介在配置された吸収性コアとを具備する吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、該吸収性コアの肌対向面を形成し、吸水性ポリマーよりも吸水性繊維の含有量が多い肌側層と、該吸収性コアの非肌対向面を形成し、該肌側層よりも吸水性繊維の含有量に対する吸水性ポリマーの含有量の比が大きい非肌側層との積層構造を有し、
前記吸水性ポリマーが抗菌剤を有しており、
前記肌側層の肌対向面に接する第1シートと、該肌側層と前記非肌側層との間に介在配置され両層と接する第2シートとを具備し、該第2シートは、該第1シートに比して平面方向の液拡散性が高く、
前記第2シートのクレム吸水高さと前記第1シートのクレム吸水高さとの比率が、前者/後者として、1.2以上である吸収性物品。
着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向とこれに直交する横方向とを有し、表面シートと、該表面シートよりも着用者の肌から遠い位置に配された裏面シートと、両シート間に介在配置された吸収性コアとを具備する吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、該吸収性コアの肌対向面を形成し、吸水性ポリマーよりも吸水性繊維の含有量が多い肌側層と、該吸収性コアの非肌対向面を形成し、該肌側層よりも吸水性繊維の含有量に対する吸水性ポリマーの含有量の比が大きい非肌側層とが一体となった単層構造を有し、
前記吸水性ポリマーが抗菌剤を有しており、
前記肌側層に接する第1シートと、前記非肌側層に接する第2シートとを具備し、該第2シートは、該第1シートに比して平面方向の液拡散性が高く、
前記第2シートのクレム吸水高さと前記第1シートのクレム吸水高さとの比率が、前者/後者として、1.2以上である吸収性物品。
前記吸収性コアの肌対向面における着用者の排泄部に対向配置される部位に、周辺部に比して低坪量の溝が形成されている請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の吸収性物品を、その一実施形態である吸収性パッドに基づき図面を参照して説明する。本実施形態の吸収性パッド1は、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有すると共に、着用者の腹側に配される腹側部F及び背側に配される背側部R並びにそれらの間に位置する股下部Mとを有する。股下部Mは、着用時に着用者の排泄部に対向配置される図示しない排泄部対向部を含んでいる。排泄部対向部は通常、吸収性パッド1の縦方向Xの中央部よりもやや背側部R寄りに偏倚した位置にある。具体的には、排泄部対向部が存在するのは、吸収性パッド1(吸収性物品)の縦方向Xの中央から縦方向Xの前側(腹側)に吸収性パッド1の縦方向Xの全長の10%に相当する距離離間した位置と、該中央から縦方向Xの後側(背側)に該全長の15%に相当する距離離間した位置とに挟まれた領域で、且つ該領域の横方向Yの中央である。
【0017】
吸収性パッド1は、
図1及び
図2に示すように、着用時に着用者の肌と接触し得る液透過性の表面シート2と、該表面シート2よりも着用者の肌から遠い位置に配された裏面シート3と、両シート2,3間に介在配置された吸収性コア4とを備える。吸収性コア4は、少なくとも股下部Mに配される。吸収性パッド1においては、吸収性コア4は
図1に示すように、腹側部Fから股下部Mを介して背側部Rにわたって縦方向Xに延在している。吸収性パッド1(吸収性コア4)は、
図1に示す如き平面視において縦方向Xに長い縦長の形状を有し、その長手方向が縦方向Xに一致し、幅方向が横方向Yに一致している。
【0018】
本実施形態の吸収性パッド1は、
図4に示すように、別体の吸収性物品としての使い捨ておむつ100の肌対向面側に配置して使用することができる。吸収性パッド1と併用される使い捨ておむつ100は、肌対向面を形成する液透過性の表面シート101、非肌対向面を形成する液難透過性の裏面シート102、及び両シート101,102間に介在された吸収体103を具備しており、吸収性パッド1と同様に一方向に長い縦長である。使い捨ておむつ100の肌対向面側の縦方向Xに沿う両側には、弾性部材を有する一対の防漏カフ104,104が設けられており、また、吸収体103の横方向Yの外方には、弾性部材を有する一対のレッグフラップ部105,105が設けられている。
【0019】
尚、本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収性コア4)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌から遠い側である。尚、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置が維持された状態を意味し、吸収性物品が適正な着用位置からずれた状態にある場合は含まない。
【0020】
表面シート2及び裏面シート3は、それぞれ、吸収性コア4よりも大きな寸法を有し、吸収性コア4の周縁から外方に延出し、その延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。表面シート2及び裏面シート3は、それぞれ、
図1に示す如き展開且つ伸張状態の吸収性パッド1の外形を形成している。
図2に示すように、表面シート2は、吸収性コア4の肌対向面の全域を被覆し、また裏面シート3は、吸収性コア4の非肌対向面の全域を被覆し、さらに吸収性コア4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出している。表面シート2及び裏面シート3としては、それぞれ、この種の吸収性物品に従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては各種の不織布や開孔フィルム等を用いることができ、裏面シート3としては樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布等とのラミネート等を用いることができる。裏面シート3には、例えば、液難透過性のフィルムシート単独の形態と、該フィルムシートの非肌対向面側に外装シートとしての不織布を積層配置した形態とがある。
【0021】
吸収性パッド1の肌対向面における縦方向Xに沿う左右両側部には、液難透過性且つ通気性の防漏カフ形成用シート13から構成された一対の防漏カフ14,14が設けられている。各防漏カフ14の自由端部の近傍には糸状の防漏カフ形成用弾性部材15が1本以上縦方向Xに伸長状態で配されている。防漏カフ形成用シート13は、
図2に示すように、吸収性コア4の縦方向Xに沿う両側縁部と重なる位置において、接着剤や融着などの公知の接合手段によって表面シート2に接合されており、吸収性パッド1の着用時には、防漏カフ14は、その接合部16を起点として、着用者の肌側に向かって起立する。
【0022】
吸収性コア4は、
図1〜
図3に示すように、吸収性コア4の肌対向面(吸収性コア4において着用者の肌に最も近い面)を形成する肌側層(上層)40と、吸収性コア4の非肌対向面(吸収性コア4において着用者の肌から最も遠い面)を形成する非肌側層(下層)41との積層構造(2層構造)を有する。肌側層40は、
図3(a)に示すように、腹側部Fから股下部Mにわたって、該肌側層40の横方向Yの長さ即ち幅が周辺部に比して短い括れ部を有しているのに対し、非肌側層41は、
図3(b)に示すように、平面視矩形形状をなしていて括れ部は有しておらず、非肌側層41の縦方向Xに沿う両側縁は、その全長にわたって縦方向Xと平行である。
【0023】
吸収性パッド1においては、
図1及び
図3に示すように、非肌側層(下層)41は肌側層(上層)40に比して平面視における寸法が小さくなされており、より具体的には、少なくとも縦方向Xの長さについては、非肌側層41が肌側層40よりも短くなされている。非肌側層41は少なくとも、尿等の排泄物が集中的に排泄される前記排泄部対向部及びその周辺部に配され、吸収性パッド1においては
図1に示すように、股下部Mの縦方向Xの全長にわたって配され、さらに股下部Mから前方部F及び後方部Rそれぞれに延出している。つまり、吸収性コア4はその全体が積層構造とはなっておらず、非肌側層41が配されていない縦方向Xの前後両端部は、肌側層40のみからなる単層構造となっている。
【0024】
図2に示すように、肌側層40の肌対向面には第1シート5が配され、肌側層40と非肌側層41との間には第2シート6が介在配置されている。第1シート5は、肌側層40の肌対向面と接しており、該肌対向面の全域を被覆している。第2シート6は、肌側層40の非肌対向面及び非肌側層41の肌対向面の双方と接しており、双方それぞれの全域を被覆している。第1シート5と肌側層40との間、第2シート6と肌側層40及び非肌側層41との間は、それぞれ、接着剤によって接合されている。
【0025】
吸収性パッド1においては、
図2に示すように、第1シート5及び第2シート6に加えてさらに、非肌側層41の非肌対向面に接する第3シート9が配されている。第3シート9は、非肌側層41の非肌対向面の全域を被覆している。これらのシート5,6,9は、何れも液透過性のシートであり、それぞれ、紙、各種製法による不織布などを用いることができる。
【0026】
吸収性パッド1においては、
図1〜
図3に示すように、吸収性コア4の肌対向面即ち肌側層40の肌対向面における前記排泄部対向部に、周辺部に比して低坪量の溝7が形成されている。また吸収性パッド1においては、吸収性コア4の非肌対向面即ち非肌側層41の非肌対向面における前記排泄部対向部にも、周辺部に比して低坪量の溝8が形成されている。また吸収性パッド1において溝7は、
図2に示すように、肌側層40を厚み方向に貫通する開口部であり、溝7には肌側層40の形成材料は存在していない。同様に、溝8は非肌側層41を厚み方向に貫通する開口部であり、溝8には非肌側層41の形成材料は存在していない。
【0027】
溝7,8は、それぞれ、吸収性コア4を横方向Yに二分して縦方向Xに延びる仮想中心線CL(
図3参照)を挟んで一対対称に形成されている。溝7,8は、それぞれ、
図3に示す如き平面視において縦方向Xに延びる線状(帯状)をなし、前記排泄部対向部を含む股下部Mから腹側部Fにわたって延在している。溝7,8は、それぞれ、股下部Mに位置し、縦方向Xに延びる直線状部と、腹側部Fに位置し、該直線状部の腹側部F寄りの縦方向Xの端から縦方向Xの前方且つ横方向Yの外方に向かって延びる屈曲部とを有し、該直線状部と該屈曲部とは繋がっている。溝7は、
図3(a)に示すように、肌側層40の周縁部に開放されておらずに、その長さ方向の前後端それぞれに閉鎖端部を有し、また、溝8も、
図3(b)に示すように、非肌側層41の周縁部に開放されておらずに、その長さ方向の前後端それぞれに閉鎖端部を有している。
【0028】
図1及び
図2に示すように、肌側層40の溝7と非肌側層41の溝8とは重なっている。より具体的には、溝7と溝8とは平面視形状が互いに相似の関係にあり、且つ溝8の方が溝7に比して長さ及び幅が大きいことから、
図1に示す如き吸収性パッド1の肌対向面側(表面シート2側)の平面視における、両溝7,8の重なり部分の平面視形状は、相対的に長さ及び幅が小さい溝7のそれと同一である。このように肌側層40の溝7と非肌側層41の溝8とが互いに相似の関係にあると、吸収性パッド1が両溝7,8で屈曲して3次元的に変形したときに、溝7と溝8とが重なってできる低剛性部と、溝(低坪量部)が形成されておらず相対的に高坪量の高剛性部との間に、相対的に幅広の溝(吸収性パッド1において溝8)における、平面視において相対的に幅狭の溝(吸収性パッド1においては溝7)から横方向Yの外方に延出する部分が存在する中剛性部が形成され、この中剛性部が緩衝部として機能するため、吸収性パッド1の着用時における変形の際に、溝7,8が潰れたり重なったりしてできる屈曲部の曲率が滑らかになり、吸収性パッド1が着用者の身体に一層沿いやすくなり、着用時の違和感が一層低減される。
【0029】
本実施形態の吸収性パッド1の主たる特徴の1つとして、第2シート6が第1シート5に比して、平面方向の液拡散性が高い点が挙げられる。ここでいう「平面方向の液拡散性」は、下記方法により測定されるクレム吸水高さと液透過時間を指標とすることができる。このクレム吸水高さ及び液透過時間の双方の値が十分大きいほど、当該シートは平面方向の液拡散性に優れる、即ち、シートの厚み方向と直交する面方向において液が拡散しやすいと評価できる。液透過時間は、液透過速度の指標となるものであり、液透過時間が長いほど液透過速度が遅いとみなされ、液拡散性に優れる(液透過性に劣る)として高評価となる。
【0030】
<クレム吸水高さの測定方法>
測定方法は、JIS P8141に準じる。測定対象のシートを縦200mm、横20mmの平面視長方形形状に裁断して測定サンプルとし、測定サンプルの長手方向を鉛直方向に一致させて、測定サンプルの下端から上方に15mmにわたる部分を、容器に入れられた脱イオン水中に浸漬する。脱イオン水中に浸漬してから10分経過時点での、測定サンプルにおける脱イオン水の上昇高さを測定し、その測定値をクレム吸水高さとする。測定サンプルにおける脱イオン水の上昇高さの測定を容易にする観点から、測定サンプルが浸漬される脱イオン水を、青色1号やメチレンブルー等の染料で着色しても良い。測定は3回行い、その平均値を当該シートのクレム吸水高さとする。測定環境は、室温22±2℃、湿度65±2%RHとする。測定対象のシートの縦方向は、吸収性物品の縦方向と同じ方向を指す。
尚、測定対象のシートが、前述の測定サンプルの寸法に満たない小サイズのものである場合は、前述の測定方法においてその小サイズのシートをそのまま測定サンプルとして用い、且つ該測定サンプルにおける脱イオン水の上昇高さの測定時を、脱イオン水に浸漬してから2分経過時点とする。
【0031】
<液透過時間の測定方法>
図8に示すように、上下端が開口している内径35mmの2本の円筒91,92を、両円筒91,92の軸を一致させて上下に配し、8cm四方の測定サンプルSを上下の円筒91,92間に挟み込む。このとき、上側の円筒91の下端及び下側の円筒92の上端に設けられた環状のフランジ部にクリップ93を嵌合させ、上下の円筒91,92を連結させることが好ましい。符号94は、円筒91,92の内径と同径同形状の貫通孔を有するゴム製等のパッキンである。このように、上下の円筒91,92で測定サンプルSを挟持固定した状態で、上側の円筒91内に、
図8中符合Wで示す生理食塩水(塩化ナトリウム濃度0.9質量%の水溶液)を40g±1g供給する。供給された生理食塩水は、測定サンプルSを透過するか又は測定サンプルSに吸収されて上側の円筒91内からなくなる。生理食塩水の供給開始時から、生理食塩水の水面が測定サンプルSの表面(上側の円筒91側の面)と同位置になるまでの時間を測定し、その時間を液透過時間とする。
吸収性物品からの測定サンプルSとなる対象シート(第1シート、第2シート)の取り出し方法は次の通りである。吸収性物品の表面シート側から、コールドスプレー(ニチバン株式会社製、商品名)を吹きかける。その後、吸収性物品から、測定対象(例えば対象シート)以外の吸収性物品の構成部材を丁寧に剥がす。
【0032】
吸収性物品の吸収体は、典型的には
図5(a)に示すように、吸収性コア4Zと、吸収性コア4Zの肌対向面を被覆する肌側コアラップシート5Zと、吸収性コア4Zの非肌対向面を被覆する非肌側コアラップシート6Zとを含んで構成されているところ、該吸収性物品の着用中に着用者の排泄部から排尿がなされた場合、その排泄物たる尿は通常、肌側コアラップシート5Zを透過して吸収性コア4Zにおける前記排泄部対向部を中心として吸収、通液され、吸収性コア4Zの構成繊維の毛管力によって、徐々に平面方向即ち縦方向X及び横方向Yの両方向に拡散しながら、厚み方向において非肌対向面側即ち非肌側コアラップシート6Z側へ移行しそこに集中する。
図5中の矢印は排泄物Uの移動方向ないし拡散方向を示している。ここで、吸収性コア4Zにおける平面方向の液拡散性が低い、即ち液が縦方向Xや横方向Yに拡散し難いものであると、
図5(a)に示すように、吸収性コア4Zにおける前記排泄部対向部及びその近傍(股下部M)に位置する部位において排泄物Uが飽和状態となって、吸収性コア4Zの肌対向面を含む表層部(肌側コアラップシート5Z側)に排泄物Uと該排泄物Uを腐敗させる菌とが長時間存在するようになり、その結果、吸収性コア4Zの肌対向面側が不快な尿臭の発生源となり得る。
【0033】
そこで、本発明の一実施形態である吸収性パッド1においては、斯かる排泄物由来の悪臭の課題を解決するために、前述した通り、積層構造の吸収性コア4において相対的に着用者の肌から近い位置に配される肌側層40に着目し、肌側層40の肌対向面と接してこれを被覆する第1シート5と、肌側層40の非肌対向面と接してこれを被覆する第2シート6とを採用すると共に、第2シート6として、第1シート5との比較において平面方向の液拡散性が高い(クレム吸水高さ及び液透過時間の双方の値が大きい)シートを採用した。斯かる構成により、肌側層40においては
図5(b)に示すように、第1シート5を通過した排泄物Uは、相対的に平面方向の液拡散性が高い第2シート6の作用により、平面方向に速やかに拡散されつつ第2シート6側に移行するため、排泄物Uは第2シート6側即ち非肌対向面側に偏在し、第1シート5側即ち肌対向面側に存する排泄物Uの量は、
図5(a)に示す従来の吸収性コア4Zの肌対向面側に存する排泄物Uの量に比して低減される。従って、吸収性パッド1によれば、吸収性コア4における着用者の肌から比較的近い位置での不快な臭気(悪臭)の発生が効果的に抑制される。また、肌側層40の肌対向面側は、排泄物Uが残留し難いために、それ自体が悪臭の発生源とならないばかりか、排泄物Uが集中する肌側層40の非肌対向面側から悪臭が発生しても、その悪臭が着用者の肌側へ透過するのを防止する「蓋」としての機能を発揮するため、悪臭が吸収性コア4の肌対向面から放出されることが効果的に抑制される。尚、
図5(b)では、肌側層40の溝7(
図2参照)の図示を省略している。
【0034】
前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、第2シート6のクレム吸水高さと第1シート5のクレム吸水高さとの比率は、前者/後者として、好ましくは1.1以上、さらに好ましくは1.2以上である。第2シート6のクレム吸水高さは大きければ大きいほど好ましく、斯かる比率の上限値に特に制限は無い。
同様の観点から、第2シート6の液透過時間は、第1シート5の液透過時間よりも長いことを前提として、好ましくは8秒以上、さらに好ましくは10秒以上である。第1シート5の液透過時間は、第2シート6の液透過時間よりも短いことを前提として、好ましくは7秒以下、さらに好ましくは6秒以下である。
【0035】
シート5,6のクレム吸水高さ及び液透過時間(液透過速度)の調整、即ち、平面方向の液拡散性の調整は、構成繊維の選択、クレープ率、叩解度、添加薬剤等によって調整することができる。平面方向の液拡散性(クレム吸水高さ及び液透過時間)に関して、「第1シート5<第2シート6」なる大小関係が成立し得る形態として、下記形態A及びBを例示できる。下記形態A及びBにおいては、シート5,6として、湿式抄紙により製造された紙が好ましく用いられる。下記形態A及びBは適宜組み合わせて利用できる。
【0036】
・形態A:第2シート6が、第1シート5に比して広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を多く含有する。
・形態B:第2シート6が、第1シート5に比してクレープ率が高い。
【0037】
前記形態Aに関し、LBKPは、この種のシートの形成材料としてLBKPと同様に汎用されている針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)に比して、繊維径が小さく、繊維長も短いのでパルプ繊維内の毛管力や繊維間の毛管力が大きくなる。さらに繊維間距離が小さくなるので液のシート上での滞留時間が大きくなるという特徴を有し、斯かる特徴がシートの平面方向の液拡散性の向上に寄与する。
第2シート6におけるLBKPの含有量と第1シート5におけるLBKPの含有量との比率は、前者/後者として、好ましくは4以上、さらに好ましくは10以上である。第2シート6におけるLBKPの含有量は多ければ多いほど好ましく、斯かる比率の上限値に特に制限は無い。
第2シート6におけるLBKPの含有量は、第2シート6の全質量に対して、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
第1シート5におけるLBKPの含有量は、第1シート5の全質量に対して、好ましくは5質量%以下であり、ゼロ即ちLBKPを含有しなくても良い。
【0038】
前記形態Bに関し、クレープは、シートの皺であり、クレープ率が高いほど、当該シートの表面に皺が多数形成されていることになる。クレープを有する紙は、クレープを有しない紙に比して平面方向の液拡散性が高く、クレープ率が高くなるほど該液拡散性が高まる傾向がある。クレープとしては、例えば、シート5,6が湿式抄紙で形成される紙である場合に、その湿式抄紙のドライヤパートにおけるヤンキードライヤ等から乾燥状態の繊維ウエブをドクターナイフ等で剥離する際に生じる、ドライクレープを採用することができる。クレープ率は下記方法により測定される。
【0039】
<クレープ率の測定方法>
水中伸度法により測定する。測定対象のシートを100mm×100mmに切断して測定試料を作製し、該測定試料を水中に浸漬した後引き上げ、寸法の変化量から次式によりクレープ率を算出する。測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とする。クレープ率(%)={(水に浸漬した後の寸法)/(水に浸漬する前の寸法)−1}×100
【0040】
第2シート6のクレープ率と第1シート5のクレープ率との比率は、前者/後者として、少なくとも1.2以上が好ましく、さらに大きければ大きいほど好ましい。
第2シート6のクレープ率は、好ましくは16%以上、さらに好ましくは20%以上である。第2シート6のクレープ率は大きければ大きいほど好ましく、斯かる比率の上限値に特に制限は無い。
第1シート5のクレープ率は、好ましくは15%以下であり、ゼロ即ちクレープが形成されていなくても良い。
【0041】
吸収性パッド1においては、前述したように、吸収性コア4の肌対向面側を構成する肌側層40の肌対向面及び非肌対向面を被覆するシート5,6について、平面方向の液拡散性(クレム吸水高さ及び液透過時間)に関して、第1シート5<第2シート6なる大小関係を成立させることで、肌側層40における吸収された尿等の排泄物を、
図5(b)に示すように非肌対向面側即ち第2シート6側に偏在させ、肌対向面側即ち第1シート5側には排泄物がほとんど存在しないようにしているところ、斯かる構成による作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、さらに別の構成を採用している。即ち吸収性パッド1においては、前述した肌側層40の厚み方向における排泄物の偏在を、吸収性コア4全体に拡張してなされるようにし、具体的には、肌側層40と非肌側層41との積層構造からなる吸収性コア4において、吸収した排泄物を非肌側層41に集中させ、肌側層40には排泄物が極力存在しないようにしている。
【0042】
即ち、吸収性パッド1においては、吸収性コア4の肌対向面を形成する肌側層40を、吸水性ポリマーよりも吸水性繊維の含有量が多い繊維高含有率層とし、吸収性コア4の非肌対向面を形成する非肌側層41を、肌側層40よりも吸水性繊維の含有量に対する吸水性ポリマーの含有量の比が大きい吸水性ポリマー高含有率層としている。尚、吸収性パッド1においては後述するように、吸収性コア4(肌側層40、非肌側層41)に含有される吸水性ポリマーの一部又は全部として、抗菌剤を有する抗菌性吸水性ポリマーを使用するところ、肌側層40及び非肌側層41における前記「吸水性ポリマーの含有量」は、抗菌剤の有無を問わず当該層40,41に存する全ての吸水性ポリマーの含有量である。
【0043】
前記のように、肌側層40を繊維高含有率層とし、非肌側層41を吸水性ポリマー高含有率層とすることにより、
図5(c)に示すように、尿等の排泄物Uは、これを吸収保持する能力を有する吸水性ポリマーを多量に含有する非肌側層41に集中し、この吸水性ポリマーの偏在による効果と、第2シート6の方が第1シート5に比して平面方向の液拡散性が高いことによる効果とが相俟って、肌側層40に排泄物Uがほとんど存在しないようになり得る。また、肌側層40が繊維高含有率層であることにより、肌側層40は、非肌側層41から発生し得る悪臭を効果的に封止する「蓋」として機能し得る。以上より、排泄物由来の悪臭が効果的に低減され、また、排泄物が着用者の肌と接触する機会が低減し、吸収性パッド1の着用に起因する肌トラブルを効果的に防止することが可能となる。尚、
図5(c)では、肌側層40の溝7、非肌側層41の溝8(
図2参照)の図示を省略している。
【0044】
肌側層40における、吸水性ポリマーの含有量に対する吸水性繊維の含有量の比(吸水性繊維の含有量/吸水性ポリマーの含有量)は、好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上、そして、好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。
非肌側層41における、吸水性ポリマーの含有量に対する吸水性繊維の含有量の比(吸水性繊維の含有量/吸水性ポリマーの含有量)は、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上、そして、好ましくは1.4以下、さらに好ましくは1.0以下である。
斯かる含有質量比(吸水性繊維の含有量/吸水性ポリマーの含有量)については、繊維高含有率層たる肌側層40の方が、吸水性ポリマー高含有率層たる非肌側層41よりも大きい。
【0045】
肌側層40における、吸水性繊維の含有量に対する吸水性ポリマーの含有量の比(吸水性ポリマーの含有量/吸水性繊維との含有量)は、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上、そして、好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.5以下である。
非肌側層41における、吸水性繊維の含有量に対する吸水性ポリマーの含有量の比(吸水性ポリマーの含有量/吸水性繊維との含有量)は、好ましくは0.7以上、さらに好ましくは1.0以上、そして、好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.2以下である。
斯かる含有質量比(吸水性ポリマーの含有量/吸水性繊維の含有量)については、前述した通り、吸水性ポリマー高含有率層たる非肌側層41の方が、繊維高含有率層たる肌側層40よりも大きい。
【0046】
肌側層40における吸水性繊維の含有量は、肌側層40の全質量に対して、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは67質量%以上、そして、好ましくは91質量%以下、さらに好ましくは83質量%以下である。
肌側層40における吸水性ポリマーの含有量は、肌側層40の全質量に対して、好ましくは9質量%以上、さらに好ましくは17質量%以上、そして、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは33質量%以下である。
【0047】
非肌側層41における吸水性繊維の含有量は、非肌側層41の全質量に対して、好ましくは33質量%以上、さらに好ましくは44質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
非肌側層41における吸水性ポリマーの含有量は、非肌側層41の全質量に対して、好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは66質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。
【0048】
また前述した、繊維高含有率層たる肌側層40の「蓋」としての機能による悪臭の封止効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、肌側層40は非肌側層41よりも吸水性繊維の坪量が多いことが好ましい。
肌側層40における吸水性繊維の坪量と非肌側層41における吸水性繊維の坪量との比率は、前者/後者として、好ましくは0.7以上、さらに好ましくは1.1以上、そして、好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.5以下である。
肌側層40における吸水性繊維の坪量は、好ましくは100g/m
2以上、さらに好ましくは150g/m
2以上、そして、好ましくは500g/m
2以下、さらに好ましくは400g/m
2以下である。
非肌側層41における吸水性繊維の坪量は、好ましくは100g/m
2以上、さらに好ましくは150g/m
2以上、そして、好ましくは450g/m
2以下、さらに好ましくは400g/m
2以下である。
【0049】
肌側層40における吸水性ポリマーの坪量は、好ましくは30g/m
2以上、さらに好ましくは50g/m
2以上、そして、好ましくは150g/m
2以下、さらに好ましくは120g/m
2以下である。
非肌側層41における吸水性ポリマーの坪量は、好ましくは100g/m
2以上、さらに好ましくは150g/m
2以上、そして、好ましくは500g/m
2以下、さらに好ましくは450g/m
2以下である。
【0050】
尚、吸収性物品の吸収性コア(肌側層、非肌側層)における吸水性繊維などの繊維及び吸水性ポリマーの坪量は、下記方法により測定できる。
他の測定と同様に、吸収性物品にコールドスプレー(ニチバン株式会社製、商品名)を吹きかけ、測定対象以外の吸収性物品の構成部材を丁寧に剥がして吸収性コアを取り出す。吸収性コアが多層構造の場合は、層毎に分離し、各層を測定する。吸収性コアが単層構造の場合は、単層構造の吸収性コアにおける厚みが最も厚い部分を厚み方向に二分して、肌側層と非肌側層に分離して測定する。その取り出した吸収性コアの各層から所定面積を切り出して測定サンプルとし、その測定サンプルの重量を測定し、その重量を面積で除して、該吸収性コアの坪量を算出する。また、測定サンプル(吸収性コア)中の吸水性ポリマー(前記抗菌性吸水性ポリマーを含む、測定サンプルに含まれる全ての吸水性ポリマー)の重量を定量し、既に算出した吸収性コアの坪量から該吸水性ポリマーの坪量を差し引き、測定サンプルにおける繊維の坪量を算出する。尚、前記の「測定サンプル(吸収性コア)中の吸水性ポリマーの重量」は、測定サンプルの重量・面積を測定した後、測定サンプルをアスコルビン酸溶液に浸漬し、日光暴露させることで測定サンプル中の吸水性ポリマーを溶解させ、その溶解物を水洗後に残存繊維重量を求め、測定サンプルの重量から該残存繊維重量を差し引くことで算出することができる。
【0051】
吸収性コア4に用いる吸水性繊維としては、この種の吸収性物品の吸収体の形成材料として従来使用されている親水性繊維を用いることができ、例えば、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプ、非木材パルプ等の天然繊維;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ;キュプラ、レーヨン等の再生繊維;アセテート等の半合成繊維;ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリロニトリル繊維等の親水性合成繊維;ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維等の疎水性合成繊維に親水化処理を施した繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
吸収性コア4に用いる吸水性ポリマーとしては、一般に粒子状のものが用いられるが、繊維状のものでも良い。粒子状の高吸水性ポリマーを用いる場合、その形状は球状、塊状、俵状又は不定形のいずれでも良い。吸水性ポリマーの平均粒子径は、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは100μm以上、そして、好ましくは1000μm以下、さらに好ましくは800μm以下である。吸水性ポリマーとしては、一般に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を用いることができる。その例としては、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリメタクリル酸及びその塩が挙げられる。ポリアクリル酸塩やポリメタクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸又はメタクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを吸水性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合させた共重合物も用いることができる。
【0053】
吸収性コア4は、吸水性繊維及び吸水性ポリマー(抗菌性吸水性ポリマー)を用いて常法に従って製造することができる。具体的には例えば、吸収性コア4(肌側層40、非肌側層41)の外形に対応する形状を有する集積用凹部内に、吸水性繊維及び吸水性ポリマー等の原材料を積繊させる方法によって製造することができる。斯かる原材料の積繊による吸収性コアの製造に適した製造装置としては、例えば、外周面に集積用凹部を有する回転ドラムと、該外周面に原材料を供給する供給路を内部に有するダクトとを備え、該回転ドラムを回転軸周りに回転させつつ、該外周面に原材料を飛散状態にて供給し、吸引孔が多数形成された多孔性部材からなる該集積用凹部の底部からの吸引により、原材料を該集積用凹部に積繊させる積繊装置を用いることができる。
【0054】
また、吸収性パッド1においては、前述した通り、吸収性コア4の肌対向面即ち肌側層40の肌対向面における前記排泄部対向部に、周辺部に比して低坪量の溝(開口部)7が形成されているところ、この溝7の存在によって、肌側層40における平面方向の液拡散性がより一層効果的に抑制されるため、前述した、シート5,6における平面方向の液拡散性(クレム吸水高さ及び液透過時間)の大小関係、及び吸収性コア4の厚み方向における吸水性ポリマーの偏在による作用効果と相俟って、肌側層40から非肌側層41への排泄物の移行がより一層促進され、肌側層40に排泄物がほとんど存在しないようになる。
【0055】
前述した作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、吸収性コア4の各部の寸法等は次のように設定することが好ましい。
肌側層40の坪量は、好ましくは180g/m
2以上、さらに好ましくは230g/m
2以上、そして、好ましくは550g/m
2以下、さらに好ましくは450g/m
2以下である。
非肌側層41の坪量は、好ましくは150g/m
2以上、さらに好ましくは300g/m
2以上、そして、好ましくは800g/m
2以下、さらに好ましくは700g/m
2以下である。
肌側層40の無荷重下における厚みは、好ましくは2.5mm以上、さらに好ましくは
4mm以上、そして、好ましくは12.5mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
非肌側層41の無荷重下における厚みは、好ましくは2.5mm以上、さらに好ましくは4mm以上、そして、好ましくは11.3mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
【0056】
肌側層40の一対の溝7,7それぞれの幅7W(
図3参照)は、好ましくは10mm以上、さらに好ましくは12mm以上、そして、好ましくは40mm以下、さらに好ましくは30mm以下である。
一対の溝7,7の間隔7P(
図3参照、最も狭い間隔)は、好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上、そして、好ましくは60mm以下、さらに好ましくは55mm以下である。
非肌側層41の一対の溝8,8それぞれの幅8W(
図3参照)は、好ましくは12mm以上、さらに好ましくは25mm以上、そして、好ましくは40mm以下、さらに好ましくは30mm以下である。
一対の溝8,8の間隔8P(
図3参照、最も狭い間隔)は、好ましくは12mm以上、さらに好ましくは15mm以上、そして、好ましくは50mm以下、さらに好ましくは40mm以下である。
【0057】
第1シート5の坪量は、好ましくは10g/m
2以上、さらに好ましくは11g/m
2以上、そして、好ましくは25g/m
2以下、さらに好ましくは20g/m
2以下である。
第2シート6の坪量は、好ましくは10g/m
2以上、さらに好ましくは11g/m
2以上、そして、好ましくは25g/m
2以下、さらに好ましくは20g/m
2以下である。
第1シート5の無荷重下における厚みは、好ましくは0.8mm以上、さらに好ましくは1mm以上、そして、好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1.8mm以下である。
第2シート6の無荷重下における厚みは、好ましくは0.8mm以上、さらに好ましくは1mm以上、そして、好ましくは2.5mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。
【0058】
尚、本明細書において、前記「無加圧下における厚み」とは、下記方法により測定される「0.05kPa圧力下での厚み」を意味する。
吸収性物品の表面シート側から、コールドスプレー(ニチバン株式会社製、商品名)を吹きかける。その後、吸収性物品から、測定対象(例えば吸収性コア)以外の吸収性物品の構成部材を丁寧に剥がす。測定台に重さ2.5g、半径12.5mmの円形プレートを載置し、その状態での円形プレートの上面の位置を測定の基準点Aとする。次に円形プレートを取り除き、測定台に測定対象を置き、その上に円形プレートを再び載置し、その状態での円形プレートの上面の位置を位置Bとする。測定機器にはレーザ変位計(株式会社キーエンス製、CCDレーザ変位センサーLK−080)を用いる。前記基準点Aと前記位置Bとの差を、測定対象の無加圧下における厚み、即ち、吸収体の0.05kPa圧力下での厚みとする。
【0059】
また、第1シート5又は肌側層40が、「物理吸着により消臭機能を発揮する消臭剤」を含有していると、悪臭の一層の低減が期待できる。即ち、吸収性パッド1においては、前述した通り、非肌側層41に排泄物が集中するため、非肌側層41を発生源とする悪臭が着用者の肌に向かって肌側層40、第1シート5を順次通過し得るところ、第1シート5、肌側層40が前記消臭剤を含有することで、これらを通過中の悪臭成分を捕捉することが可能となり、これにより悪臭のより一層の低減が期待できる。前記消臭剤としては、多孔性物質を用いることができ、具体的には例えば、活性炭、銀又は亜鉛や銅などの金属担持ゼオライト、銀担持ジビニルベンゼン/2-ビニルピリジン共重合体が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、銀又は亜鉛や銅などの金属担持ゼオライトが好ましい。
【0060】
肌側層40における前記消臭剤の含有量は、肌側層40の全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
第1シート5における前記消臭剤の含有量は、第1シート5の全質量に対して、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、そして、好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0061】
吸収性パッド1においては、前述した通り
図5(c)に示す如く、吸収性パッド1に存する排泄物Uの大部分が、吸水性ポリマーが偏在する非肌側層41に集中するようになされているところ、この排泄物が集中する非肌側層41で悪臭の原因となる菌の増殖を抑制するために、吸水性ポリマーとして、抗菌剤を有する抗菌性吸水性ポリマー(以下、「抗菌性SAP」ともいう)を使用する。抗菌性SAPの好ましい一例として、吸水性ポリマーの表面に抗菌剤が付着した形態のものが挙げられる。
【0062】
尚、本発明の吸収性物品においては、吸収性コア(肌側層、非肌側層)に含有されている吸水性ポリマーの全部が抗菌性SAPであっても良く、あるいは、該吸水性ポリマーの一部のみが抗菌性SAPであり、他は抗菌性を有しない吸水性ポリマーであっても良い。
【0063】
通常の吸水性ポリマーを含む吸収性物品においては、尿等の排泄物の多くは吸水性ポリマーに吸収されるので、菌にとって栄養分の多い吸水性ポリマーの表面は菌の繁殖部位となり得るところ、抗菌性SAPにおいて抗菌剤は吸水性ポリマーの表面に付着した状態で存在し得るため、菌の増殖を効果的に抑制することが可能となる。また前述したように、抗菌性SAPの使用によって、抗菌剤が尿中に溶解し、その抗菌剤を含む尿が肌と接触して肌トラブルを引き起こすことが懸念されるが、着用者の肌に相対的に近い位置に配されている肌側層40には、尿等の排泄物はほとんど存在しないため斯かる懸念は払拭されており、抗菌性SAPの使用に起因する肌トラブルは発生し難い。抗菌性SAPの詳細は後述する。
【0064】
図6及び
図7には、本発明に係る吸収性コアの他の実施形態が示されている。後述する他の実施形態については、前記実施形態と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前記実施形態の説明が適宜適用される。
【0065】
図6に示す吸収性コア4Aにおいては、少なくとも前記排泄部対向部が存する股下部Mにおいて、肌側層40は、非肌側層41の縦方向Xに沿う両側縁41S,41Sそれぞれから横方向Yの外方に延出している。即ち、少なくとも股下部Mにおいて、肌側層40は相対的に横方向Yの長さが長く幅広、非肌側層41は相対的に横方向Yの長さが短く幅狭であり、幅狭の非肌側層41は、幅広の肌側層40の横方向Yの中央部と重なっている。幅広の肌側層40の肌対向面と接する第1シート5は、該肌対向面の全域を被覆し、さらに肌側層40の縦方向Xに沿う両側縁40S,40Sそれぞれから横方向Yの外方に延出し、その延出部が非肌側層41側に垂下している。第2シート6は、幅狭の非肌側層41の肌対向面の全域を被覆するが、幅広の肌側層40の非肌対向面については、非肌側層41と重なる横方向Yの中央部のみを被覆しており、該肌側層40の非肌対向面の横方向Yの両側部は露出している。
【0066】
吸収性コア4Aによれば、悪臭を封止する「蓋」として機能し得る繊維高含有率層たる肌側層40が、排泄物が集中し悪臭の発生源となりやすい非肌側層41よりも幅広に構成されているため、肌側層40による悪臭の封止効果がより一層確実に奏されるようになり、悪臭がより一層低減され得る。斯かる作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、肌側層40における非肌側層41の側縁41Sから延出長さ40EL(
図6参照)は、好ましくは3mm以上、さらに好ましくは5mm以上、そして、好ましくは30mm以下、さらに好ましくは20mm以下である。
【0067】
図7に示す吸収性コア4Bは、肌側層40と非肌側層41とが一体となった単層構造を有している。即ち、単層構造の吸収性コア4Bにおける厚みが最も厚い部分(非肌側層41の配置部位)を厚み方向に二分した場合に、肌対向面側即ち第1シート5側が肌側層40、非肌対向面側即ち第2シート6側が非肌側層41である。この単層構造の吸収性コア4Bが尿等の排泄物を吸収した場合のその排泄物の分布状態は、
図5(b)に示す積層構造の吸収性コア4を構成する肌側層40におけるそれと実質的に同じである。
【0068】
吸収性コア4B全体の坪量は、好ましくは300g/m
2以上、さらに好ましくは400g/m
2以上、そして、好ましくは1200g/m
2以下、さらに好ましくは1000g/m
2以下である。また、吸収性コア4B全体の無荷重下における厚みは、好ましくは3mm以上、さらに好ましくは4mm以上、そして、好ましくは20mm以下、さらに好ましくは15mm以下である。吸収性コア4Bによっても、基本的に吸収性コア4と同様の効果が奏される。
【0069】
以下、本発明で用いる抗菌性SAPについて説明する。
抗菌性SAPは、少なくとも吸水性ポリマー及び抗菌剤を必須の構成成分とするものである。製造条件によっては、吸水性ポリマー及び抗菌剤に加えて、有機溶媒も抗菌性SAPの構成成分となることがある。さらに、無機微粒子も抗菌性SAPの構成成分となることがある。抗菌性SAPを構成する吸水性ポリマーとしては、水を吸収して膨潤して、水を保持し得る高分子材料を用いることができ、そのような高分子材料は当該技術分野において公知である。具体的には前記の吸水性ポリマーを例示できる。
【0070】
抗菌性SAPにおいて、抗菌剤は吸水性ポリマーの表面に付着した状態で存在することができる。また、抗菌性SAPの構成成分に有機溶媒、無機微粒子が含まれる場合には、これらも吸水性ポリマーの表面に付着した状態で存在することができる。
【0071】
抗菌剤としては有機化合物を用いることが好ましい。有機抗菌剤は、酸化亜鉛や銀含有抗菌剤等の無機抗菌剤に比べて抗菌効果が高いからである。
【0072】
抗菌剤は疎水性のものが好ましい。ここでいう疎水性は、水と混合した場合に水と完全に分離するような強い疎水性ではなく、一部は水に溶解するが大部分は水に溶解しない程度の疎水性が好ましい。具体的には、25℃の水に対する溶解度が0.1質量%以下、特に0.05質量%以下である疎水性抗菌剤が好ましい。このような疎水性抗菌剤は、親水性抗菌剤に比べて皮膚刺激性が低いため、本発明の吸収性物品に好適に用いられる。親水性抗菌剤は、親水性であるがゆえに皮膚に浸透しやすく、そのことに起因して皮膚に刺激を与えやすい。これとは対照的に、疎水性抗菌剤は、疎水性であるがゆえに皮膚に浸透しづらく、皮膚の表面にとどまりやすいので、皮膚に刺激を与えづらい。
【0073】
抗菌剤の溶解度は次の方法によって測定することができる。25℃の脱イオン水100gに対して、十分乾燥させた抗菌剤を投入し、スターラー又は振とう機で撹拌して溶解させ、1時間撹拌しても溶解できない直前の投入量の脱イオン水100gに対する割合を、当該抗菌剤の25℃の水に対する溶解度(質量%)とする。
【0074】
吸収性物品の吸収性コア中の吸水性ポリマーが抗菌剤を有している(抗菌性SAPである)か否かの確認は下記方法で行うことができる。
前述のコールドスプレーにより吸収性物品の構成部材どうしを接合している接着材を剥がして吸収性コアを取り出す。取り出した吸収性コアを粗いふるい(目開き850μm)にかけて吸水性ポリマーを含む画分を採取する。採取した画分をスクリュー管などのガラス製円筒容器に入れて回転させると、パルプなどの繊維材料と吸水性ポリマーとは比重の違いにより、繊維材料は上層に、吸水性ポリマーは下層に選別される。こうして選別された吸水性ポリマーに対し抗菌剤抽出処理を施す。即ち、メタノールを溶媒として吸水性ポリマーを投入し、その溶媒に対して超音波による振動と撹拌を行った後、該溶媒の上澄み液を溶媒系フィルター(関東化学株式会社製、PTFE樹脂製、孔径0.45μm、25mmφ)でろ過し、そのろ液中の溶媒を揮発させて固形分を得る。この固形分を、液体クロマトグラフィーなどの公知の分析手段を用いて、単一の化合物を得るように分離する。得られた化合物を、赤外吸収分光法、核磁気共鳴分光法などの周知の分析手段を用いて、どのような化学構造を有するものかを特定する。また、得られた各化合物を吸収紙に0.1重量%含ませて、JIS L 1902「繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果」を行い、その結果、大腸菌の抗菌活性値が2.0以上であれば、該化合物が抗菌剤であることが分かる。また、その抗菌剤が疎水性抗菌剤であるか否かは、前述の溶解度によって確認できる。尚、抽出した固形分の赤外吸収分光法、核磁気共鳴分光法の測定により得られたスペクトルにより、溶剤や無機物等の夾雑物の混入が有る場合は、同定された化合物と同一の化合物の市販品を購入して、溶解度その他の測定に使用しても良い。
【0075】
以上の通り、抗菌性SAPの構成成分たる抗菌剤としては、有機疎水性抗菌剤が好ましく用いられる。有機疎水性抗菌剤としては、例えば以下の式(1)又は(2)で表される有機化合物を用いることが好ましい。これらの有機化合物は、抗菌効果が高く、且つ皮膚刺激性が低いからである。これらの有機化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
前記式(1)で表される有機疎水性抗菌剤において、R
1及びR
2における炭素数は、メチル基、エチル基を除き、それぞれ独立に6以上であることが好ましく、8以上であることがさらに好ましく、10以上であることが一層さらに好ましく、また24以下であることが好ましく、22以下であることがさらに好ましく、20以下であることが一層さらに好ましい。
【0078】
前記式(1)で表される有機疎水性抗菌剤において、R
3及びR
4における炭素数は、メチル基、エチル基を除き、それぞれ独立に6以上であることが好ましく、8以上であることがさらに好ましく、10以上であることが一層さらに好ましく、また30以下であることが好ましく、24以下であることがさらに好ましく、22以下であることが一層さらに好ましい。
【0079】
前記式(1)で表される有機疎水性抗菌剤において、R
3及び/又はR
4がアルキルアルキレンオキサイド基である場合、該基におけるアルキル基の炭素数は、6以上であることが好ましく、8以上であることがさらに好ましく、また24以下であることが好ましく、22以下であることがさらに好ましい。アルキルアルキレンオキサイド基におけるアルキレン基の炭素数は、2以上であることがさらに好ましく、また6以下であることが好ましく、4以下であることがさらに好ましい。
【0081】
前記式(2)で表される有機疎水性抗菌剤において、R
5における炭素数は、1以上であることが好ましく、3以上であることがさらに好ましく、6以上であることが一層さらに好ましく、また30以下であることが好ましく、24以下であることがさらに好ましく、22以下であることが一層さらに好ましい。
【0082】
前記式(2)で表される有機疎水性抗菌剤において、R
5がシクロアルキル基である場合、該基における炭素数は、6以上であることが好ましく、7以上であることがさらに好ましく、また30以下であることが好ましく、24以下であることがさらに好ましい。
【0083】
前記式(2)で表される有機疎水性抗菌剤において、R
5がアリール基である場合、該基は、フェニル基、炭素数1〜18のアルキル基で置換されたフェニル基、ベンジル基、炭素数1以上18以下のアルキル基で置換されたベンジル基、炭素数7以上24以下のフェノキシアルキル基であることが好ましい。
【0084】
前記式(2)で表される有機疎水性抗菌剤において、R
5がアルキルアルキレンオキサイド基である場合、該基におけるアルキル基の炭素数は、6以上であることがさらに好ましく、また24以下であることが好ましく、22以下であることがさらに好ましい。アルキルアルキレンオキサイド基におけるアルキレン基の炭素数は、2以上であることがさらに好ましく、また6以下であることが好ましく、4以下であることがさらに好ましい。
【0085】
前記式(2)で表される有機疎水性抗菌剤において、R
6における炭素数は、1以上であることが好ましく、また6以下であることが好ましく、4以下であることがさらに好ましい。
【0086】
前記式(2)で表される有機疎水性抗菌剤において、R
6がシクロアルキル基である場合、該基はシクロペンチル基、シクロヘキシル基であることがさらに好ましい。
【0087】
前記式(2)で表される有機疎水性抗菌剤において、X
+がアルカリ金属イオンである場合、その例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンが挙げられる。X
+がアルカリ土類金属イオンである場合、その例としては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及びストロンチウムイオンが挙げられる。X
+が2価以上4価以下のカチオンである場合、その例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N置換エタノールアミン、N置換ジエタノールアミン、トリスヒドロキシアミノメタン、グアニジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミンのプロトン塩(アミンにH
+が付加したもの)が挙げられる。
【0088】
前記式(1)で表される有機疎水性抗菌剤の具体例としては、セチルリン酸ベンザルコニウムが挙げられる。セチルリン酸ベンザルコニウムとしては、花王株式会社より商品名サニゾールPとして販売されている抗菌剤を用いることができる。一方、式(2)で表される有機疎水性抗菌剤の具体例としては、1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(2,4,4−トリメチルペンチル)−2(1H)−ピリドン モノエタノールアミン塩〔1-Hydroxy-4-methyl-6-(2,4,4-trimethyl-pentyl)-2(1H)-pyridone; combination with 2-aminoethanol(1:1)〕(CAS登録番号68890−66−4、別名ピロクトンオラミン)が挙げられる。この抗菌剤は式(2A)で表され、クラリアント社により商品名オクトピロックスとして販売されている。
【0090】
前記以外の有機疎水性抗菌剤としては、例えば5−クロロ−2−[2,4−ジクロロフェノキシ]フェノールが挙げられる。この化合物はトリクロサンとも呼ばれている。
【0091】
抗菌性SAPは、抗菌剤(好ましくは有機疎水性抗菌剤)を有機溶媒に溶解して抗菌剤溶液となし、この抗菌剤溶液と吸水性ポリマーとを混合する工程を経て製造することができる。抗菌剤溶液と吸水性ポリマーとを混合することで、該吸水性ポリマーに均一に有機疎水性抗菌剤を付着させることができる。抗菌剤溶液は、抗菌剤を完全溶解している溶液であることが好ましい。未溶解の抗菌剤が抗菌剤溶液に存在している場合には、そのような抗菌剤溶液と吸水性ポリマーとを混合すると、抗菌剤が不均一に付着してしまう可能性がある。尚、抗菌剤溶液と吸水性ポリマーとを混合する工程を行うのに先立ち、吸水性ポリマーの表面を架橋する表面架橋工程を行っても良い。
【0092】
前記の有機溶媒は25℃において液体のものであることが好ましい。有機溶媒としては、抗菌剤(好ましくは有機疎水性抗菌剤)を溶解し得るものが用いられる。特に、抗菌剤の溶解度が好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、一層好ましくは15質量%以上である有機溶媒を用いることが有利である。ここで、溶解度がX質量%であるとは、100gの有機溶媒に対してXg以上の抗菌剤が溶解することをいう。抗菌剤の溶解度が温度に依存して変化する場合には、抗菌剤溶液を吸水性ポリマーと混合するときの温度における溶解度が前述の通りであることが好ましい。
【0093】
有機溶媒は低揮発性ないし不揮発性のものが好ましい。具体的には、25℃における蒸気圧が好ましくは30Pa以下、さらに好ましくは20Pa以下、特に好ましくは15Pa以下、一層好ましくは10Pa以下の低揮発性有機溶媒が好ましい。高揮発性有機溶媒を用いると、抗菌性SAPの製造過程において有機溶媒が揮発することがあるので、製造設備に排気装置を付設する必要が生じてしまう。これに対して低揮発性有機溶媒を用いれば、そのような装置の付設は不要である。また高揮発性有機溶媒は、引火や爆発のおそれがあることから、製造装置に防爆装置を付設する必要があるが、低揮発性有機溶媒を用いれば、そのような装置の付設も不要である。このように、低揮発性有機溶媒を用いることで、抗菌性SAPの製造工程において抗菌剤溶液と吸水性ポリマーとを混合した後、有機溶媒を抗菌性SAP中に残留させたままにしておくことができる。
【0094】
有機溶媒として用いられる好ましい化合物としては、例えば二価アルコール(ジオール)、三価アルコール(トリオール)及び四価以上のアルコールなどの多価アルコールのような水溶性有機溶媒が挙げられる。これら多価アルコールにおけるアルキル基の炭素数は、2以上であることが好ましい。また、アルキル基の炭素数は、18以下であることが好ましく、10以下であることがさらに好ましく、4以下であることが一層好ましい。
【0095】
特に多価アルコールのうち、炭素数が2以上4以下である低級二価アルコールを用いることが好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性有機溶媒を用いることが好ましい。これらの親水性有機溶媒は、人体に対する安全性が高く、悪臭を生じることがなく、除去工程が不要であり、引火や爆発のおそれが低いからである。プロピレングリコールとしては、1,2−プロピレングリコール及び1,3−プロピレングリコールを用いることができる。ブチレングリコールとしては、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール及び2,3−ブチレングリコールを用いることができる。
【0096】
以上の通り、抗菌性SAPの製造において抗菌剤溶液の溶媒として使用され、抗菌剤SAPの構成成分となり得る有機溶媒としては、抗菌剤(好ましくは有機疎水性抗菌剤)の溶解度が前記範囲にあってこれを溶解することができ、且つ低揮発性(不揮発性を含む)で親水性のものが好ましく用いられる。
【0097】
抗菌剤溶液における抗菌剤(好ましくは有機疎水性抗菌剤)の濃度は、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましく、3質量%以上であることが一層好ましく、5質量%以上であることがさらに一層好ましい。また、抗菌剤溶液における抗菌剤の濃度は、50質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましく、25質量%以下であることが一層好ましく、20質量%以下であることがさらに一層好ましい。この濃度範囲の抗菌剤溶液を用いることで、抗菌剤を吸水性ポリマーに均一に付着させることができる。
【0098】
抗菌剤溶液と吸水性ポリマーとの混合に際しては、吸水性ポリマーに抗菌剤溶液を添加しても良く、逆に抗菌剤溶液に吸水性ポリマーを添加しても良い。あるいは、抗菌剤溶液と吸水性ポリマーとを同時に添加しても良い。
【0099】
抗菌剤溶液と吸水性ポリマーとを混合するときの両者の比率は、吸水性ポリマーの質量を基準として、抗菌剤溶液中の抗菌剤(好ましくは有機疎水性抗菌剤)の質量が0.001質量%以上となる比率であることが好ましく、0.005質量%以上となる比率であることがさらに好ましく、0.01質量%以上となる比率であることが一層好ましく、0.05質量%以上となる比率であることがさらに一層好ましい。また、吸水性ポリマーの質量を基準として、抗菌剤溶液中の抗菌剤の質量が1質量%以下となる比率であることが好ましく、0.7質量%以下となる比率であることがさらに好ましく、0.5質量%以下となる比率であることが一層好ましい。抗菌剤溶液と吸水性ポリマーとをこの範囲の比率で混合することで、抗菌剤を吸水性ポリマーに均一に付着させることができる。また、両者を混合した後に、有機溶媒を残留させたままにしても、抗菌性SAPの取り扱い性、特に流動性を良好にすることができる。
【0100】
抗菌剤溶液と吸水性ポリマーとを混合した後は、必要に応じ加熱や減圧等の手段によって有機溶媒を除去しても良い。もちろん有機溶媒を除去せずに残留させておいても良い。何れの場合であっても、後工程として、混合後の吸水性ポリマーと無機微粒子とを混合する工程を更に行っても良い。この工程を行うことで、吸水性ポリマーに無機微粒子を付与することができる。無機微粒子の付与は、目的とする抗菌性SAPの粉体特性、特に流動性を向上させる点から有利である。無機微粒子としては、例えばシリカ微粒子、酸化ジルコニア、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛、金等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの無機微粒子の中でも特にシリカ微粒子を用いることが好ましい。
【0101】
以上の方法、即ち、抗菌剤を低揮発性且つ親水性の有機溶媒に溶解して抗菌剤溶液を得、該抗菌剤溶液と吸水性ポリマーとを混合する工程を経て得られた抗菌性SAPにおいては、該吸水性ポリマーの表面に抗菌剤が付着しており、場合によっては抗菌剤と有機溶媒とが付着している。特に、抗菌剤が有機疎水性抗菌剤である抗菌性SAPにおいては、抗菌剤の疎水性に起因にして、少なくとも抗菌剤が、吸水性ポリマーの表面に不連続に付着しており、場合によっては抗菌剤と有機溶媒とが、吸水性ポリマーの表面に不連続に付着している。換言すれば、本発明で好ましく用いられる抗菌性SAPにおいては、吸水性ポリマーの表面を海としたとき、少なくとも抗菌剤が、海の中に島状に点在した状態で存在しており、場合によっては抗菌剤と有機溶媒とが、海の中に島状に点在した状態で存在している。このような状態で少なくとも抗菌剤が吸水性ポリマーの表面を被覆していることで、抗菌性SAPはその流動性が一層向上する。この流動性の向上効果を一層顕著なものとする観点から、吸水性ポリマーの表面を被覆する抗菌剤の被覆率は、5%以上であることが好ましく、7%以上であることがさらに好ましく、15%以上であることが一層好ましい。また、抗菌剤の被覆率は、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、25%以下であることが一層好ましい。
【0102】
吸水性ポリマーの表面を被覆する抗菌剤の被覆率は、X線電子分光法(ESCA)によって測定することができる。具体的な測定方法は以下のとおりである。吸収性物品の構成部材を接合する接着剤の接着力をコールドスプレーによって弱め、丁寧に剥がすことによって吸収性コアを取り出す。目開き1mm〜5mmの篩を用い、吸収性コアから吸水性ポリマーを大まかに取り出す。さらに振動によって吸水性繊維と吸水性ポリマーとを分離し、吸水性ポリマーのみを取り出す。サンプル台に両面接着カーボンテープで吸水性ポリマーを均一に隙間なく固定する。このとき、吸水性ポリマーの表面が平坦になるようにする。測定装置はPHI Quantera SXM(ULVAC―PHI Inc.)を用いる。測定条件は、X線源が単色化AlKα線 1486.6eV,25W,15kV、ビーム系については500μm×500μm、Pass energyは280.OeV(survey) 112.OeV(narrow)、Stepは1.00eV(survey) 0.20eV(narrow)、帯電補正はNewtralizer及びAr
+照射、光電子取り出し角度は45degree、検出元素はC1s(15)、N1s(50)、01s(10)、Na1s(15)、Si2p(20)、結合エネルギー位置の補正は炭素のCHに由来するC1s284.8cVで行う。被覆率は、下記の式により計算する。
抗菌剤の被覆率=抗菌剤処理後の「Na」の表面元素濃度の減少量/未処理(母体吸収
性樹脂)の「Na」の表面元素濃度
【0103】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、肌側層40の溝7及び非肌側層41の溝8は、何れも当該層を厚み方向に貫通する開口部であったが、要は、周辺部に比して低坪量であれば良く、肌側層40又は非肌側層41の肌対向面及び/又は非肌対向面が凹状に窪んだ窪み部であっても良い。また、溝7,8のうちの何れか一方が前記開口部、他方が前記窪み部でも良い。また、前記実施形態においては、溝7が相対的に幅狭、溝8が相対的に幅広であったが、溝7,8の横方向Yの長さ即ち幅の大小関係はこれに限定されず、逆であっても良く、同じでも良い。また、肌側層40にのみ溝7が形成され、非肌側層41には溝(低坪量部)は形成されなくても良い。前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。
【0104】
本発明の吸収性物品には、吸収性パッド(尿取りパッド)の他、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナ(おりものシート)等の、尿、便、経血等の排泄物の吸収用途に使用可能な物品が含まれる。
【実施例】
【0105】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
尚、実施例4は参考例である。
【0106】
〔実施例1〜5及び比較例1〕
図1〜
図3に示す吸収性パッド1と同様の基本構成を有する尿取りパッド、即ち吸収性コアが肌側層及び非肌側層からなる2層構造を有する尿取りパッドを作製し、実施例2〜5のサンプルとした。また、2層構造の吸収性コアに替えて単層構造の吸収性コアを用いた以外は吸収性パッド1と同様の基本構成の尿取りパッドを作製し、実施例1及び比較例1のサンプルとした。
表面シートとしては、坪量20g/m
2の親水化処理した繊維で作成したエアースルー不織布を用いた。裏面シートとしては、坪量20g/m
2のポリエチレン製フィルムシートを用いた。防漏カフ形成用シートとしては、坪量15g/m
2のSMS不織布を用いた。抗菌性SAPとして、前記オクトピロックス(ピロクトンオラミン)をエタノール溶媒の10重量%溶液を作製して、吸水性ポリマーに対してその溶液を1重量%滴下して付着させ、エバポレータによりエタノールを蒸発させたもの、即ち、吸水性ポリマーに対して0.1%付着させたものを用いた。また、オクトピロックスの溶解度は、0.05質量%以下であった。各実施例及び比較例で用いた第1シート、第2シートとして用いた下記シートAないしCの詳細は下記の通り。
【0107】
・シートA:繊維材料(NBKP100質量%)を叩解機により叩解度500mlとし、紙力増強剤星光PMC株式会社製WS−4024を0.7質量%、カルボキシメチルセルロースを0.3質量%添加してスラリーを作製し、抄紙機で常法に従って湿式抄紙して、クレープ率10%、坪量16g/m
2となるシートを作製した。
・シートB:繊維材料(NBKP100質量%)を叩解機により叩解度500mlとし、紙力増強剤星光PMC株式会社製WS−4024を0.5質量%、消臭剤として水澤化学工業株式会社製ミズカナイト5.0質量%を添加してスラリーを作製し、抄紙機での抄紙直前に定着剤MTアクアポリマー株式会社アコフロックA95を0.05質量%添加し、常法に従って湿式抄紙して、クレープ率10%、坪量16g/m
2となるシートを作製した。
・シートC:繊維材料(NBKP60質量%、LBKP40質量%)を叩解機により叩解度500mlとし、紙力増強剤星光PMC株式会社製WS−4024を0.7質量%、カルボキシメチルセルロースを0.3質量%添加してスラリーを作成し、常法に従って湿式抄紙して、クレープ率10%、坪量16g/m
2となるシートを作製した。
【0108】
〔評価試験〕
各実施例及び比較例の尿取りパッドに対して、下記方法により、使用済みの尿取りパッドと同様の臭いがするように処理を行い、且つその処理済みの尿取りパッドを所定時間保存した後の臭いを評価した。その結果を下記表1に示す。
【0109】
<臭いの評価方法>
(手順1)評価対象の尿取りパッドで使用されている表面シートと同じものを用意し、該表面シートを水で濡らしてから硬く絞って湿潤状態とし、その湿潤状態の表面シートで健康な成人男性1名の肛門部周辺を清拭して、該表面シートに腸内細菌を付着させた。斯かる作業を成人男性2名以上に対して行い、清拭対象の異なる2種類以上の腸内細菌付着表面シートを作製した。そして、腸内細菌付着表面シートを人尿数mlと共に防水性の袋に入れ、室温36℃環境下で12時間放置して腸内細菌の増殖を促した。
(手順2)手順1の袋の内容物と人尿500mとをビーカに投入して混合した。
(手順3)手順2のビーカ内の人尿30mlを、評価対象の尿取りパッドの内面側の最表面(表面シートの肌対向面)に注入した後、該尿取りパッドを密閉容器に入れて36℃環境下で6時間保存した。
(手順4)保存後の尿取りパッドから、吸収体(表面シートと裏面シートとの間に配置されている構成部材)を縦方向(長手方向)に3分割した場合の中央部で且つ横方向長さの半分の部分を切り出し、測定サンプルとする。
(手順5)測定サンプルについて、環境省が定めた6段階臭気強度表示法に準ずる下記の6段階評価に従って、臭気官能レベルを調整した5名のモニターに臭気評価させた。下記評価基準において、評価点が3を超えると硫黄臭が混じり腐敗を感じさせる臭いとなる。評価点が低いほど、悪臭が低減されていると判断され、高評価となる。
評価基準
0:においが無い。
1:においが有る。
2:尿特有のにおいがわかる。
3:尿特有のにおいが楽にわかる。
4:尿特有のにおいが強くわかる。
5:尿特有のにおいが激しくわかる。
【0110】
【表1】