【実施例】
【0061】
ここで、実施例及び比較例共通の積層フィルムの接着強度(剥離)試験の概要(試験規格、試験機、試験片、試験状況)について、参照等の便宜上、各図を用いて説明する。
【0062】
≪試験規格≫
JIS K 6854−2に規定する剥離強度試験
【0063】
≪ヒートシール試験機≫
富士インパルス社製シール剥離試験機
【0064】
≪ヒートシール強度試験機設定≫
チャック間距離:25mm
ヘッド速度:200mm/min
【0065】
≪試験片≫
図1に示す容器本体Pのうち、積層フィルム2がラミネートされた基材1のフランジ部13の一部(15mm幅)から側部12の一部にかけてカットする。このうち、カットしたフランジ部13の一部とは逆側のポリオレフィン非発泡体部分の幅方向に裏から裂け目を入れ、このフランジ部の一部側に向かって積層フィルム2を一部剥がすと共に、このフランジ部の一部とは逆側のポリオレフィン非発泡体部分をこの積層フィルムから剥がす。このようにして得られたものを試験片とする。
なお、フランジ部13が矩形状の場合、包装用容器の使用により基材1にラミネートした積層フィルムが剥離しやすい四つ角の一部からカットする。試験片の原形である基材は、上述した方法で成型されたものである。
【0066】
≪ヒートシール強度試験状況≫
ヒートシール強度試験機の一方のヘッドに、試験片のフランジ部13の一部とは逆側のポリオレフィン非発泡体部分を、他方のヘッドに、剥がした積層フィルム2をそれぞれ挟み込む。
その後、ヒートシール強度試験機の動作を開始すると、ヘッド間が自動的に拡がるにつれて積層フィルム2が引っ張られ、この積層フィルムがフランジ部13の一部のポリオレフィン非発泡体から剥離完了すると試験終了となる。
【0067】
このように、成型後の容器本体及び基材から採取した試験片を用いて、積層フィルムの接着強度評価、酸素バリア性評価、コスト評価、印刷明瞭性(見た目)評価及び賦型成評価を行った。
【0068】
まず、実施例1〜12の試験条件を以下に列挙する。
【0069】
≪実施例1≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
基材の層構成:(積層フィルムに近い方から)ポリプロピレン表層(PP表層)、無機フィラー入りポリプロピレン中間層(PPF中間層)、ポリプロピレン表層(PP表層)(以下、実施例2〜4、6〜10の基材の層構成も同等につき記載を省略)
なお、各実施例や比較例にて、PP表層に用いるポリプロピレン樹脂は融点165℃のポリプロピレンホモポリマーを用いているが、融点140℃前後のポリプロピレンランダムコポリマーを用いてもよく、PP樹脂のグレードに限定はない。
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)、印刷インキ(ink)、ドライラミ接着剤(ドライAdh、Adh:Adhesive)、ポリプロピレン(PP)
積層フィルムの厚み合計:50μm
【0070】
≪実施例2≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)、ドライラミ接着剤(ドライAdh)、印刷インキ(ink)、ポリプロピレン(PP)
積層フィルムの厚み合計:50μm
【0071】
≪実施例3≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法(共押出法で積層したフィルム含む)
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)及びポリプロピレン(PP)(以上、共押出法部分)、ドライラミ接着剤(ドライAdh)、印刷インキ(ink)、ポリプロピレン(PP)
積層フィルムの厚み合計:65μm
ラミネート時シート表面温度:200℃
【0072】
≪実施例4≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法(共押出法で積層したフィルム含む)
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の混合物、オレフィン系接着性樹脂(Adh)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)及びポリプロピレン(PP)(以上、共押出法部分)、ドライラミ接着剤(ドライAdh)、印刷インキ(ink)、ポリプロピレン(PP)
積層フィルムの厚み合計:65μm
【0073】
≪実施例5≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
基材の層構成:(積層フィルムに近い方から)ポリプロピレン表層(PP表層)、ポリオレフィン中間層(PO系中間層)、ポリプロピレン表層(PP表層)
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法(共押出法で積層したフィルム含む)
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の混合物、オレフィン系接着性樹脂(Adh)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)及びポリプロピレン(PP)(以上、共押出法部分)、ドライラミ接着剤(ドライAdh)、印刷インキ(ink)、ポリプロピレン(PP)
積層フィルムの厚み合計:65μm
【0074】
≪実施例6≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)、ガスバリア性ドライラミ接着剤(ガスバリア性ドライAdh、三菱瓦斯化学株式会社製「マクシーブ」(登録商標))、印刷インキ(ink)、ポリプロピレン(PP)
積層フィルムの厚み合計:50μm
【0075】
≪実施例7≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法(共押出法で積層したフィルム含む)
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)、印刷インキ(ink)、ドライラミ接着剤(ドライAdh)、(ここから)ポリプロピレン(PP)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)、ポリプロピレン(PP)(ここまで、以上、共押出法部分)
積層フィルムの厚み合計:65μm
【0076】
≪実施例8≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法(共押出法で積層したフィルム含む)
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)、ドライラミ接着剤(ドライAdh)、印刷インキ(ink)、(ここから)ポリプロピレン(PP)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)、ポリプロピレン(PP)(ここまで、以上、共押出法部分)
積層フィルムの厚み合計:65μm
【0077】
≪実施例9≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法(共押出法で積層したフィルム含む)
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)及びポリプロピレン(PP)(以上、共押出法部分)、ドライラミ接着剤(ドライAdh)、印刷インキ(ink)、ポリプロピレン(PP)
積層フィルムの厚み合計:40μm
【0078】
≪実施例10≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法(共押出法で積層したフィルム含む)
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)及びポリプロピレン(PP)(以上、共押出法部分)、ドライラミ接着剤(ドライAdh)、印刷インキ(ink)、ポリプロピレン(PP)
積層フィルムの厚み合計:80μm
【0079】
≪実施例11≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法(共押出法で積層したフィルム含む)
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の混合物、オレフィン系接着性樹脂(Adh)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)及びポリプロピレン(PP)(以上、共押出法部分)、ドライラミ接着剤(ドライAdh)、印刷インキ(ink)、ポリプロピレン(PP)
積層フィルムの厚み合計:65μm
ラミネート時シート表面温度:180℃
【0080】
≪実施例12≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法(共押出法で積層したフィルム含む)
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の混合物、オレフィン系接着性樹脂(Adh)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)及びポリプロピレン(PP)(以上、共押出法部分)、ドライラミ接着剤(ドライAdh)、印刷インキ(ink)、ポリプロピレン(PP)
積層フィルムの厚み合計:65μm
ラミネート時シート表面温度:220℃
【0081】
≪実施例1〜2の試験条件の補足≫
実施例1と実施例2との差異点は、印刷インキ(ink)の積層位置である。すなわち、実施例1では、印刷インキ(ink)が最内層側のポリプロピレン(PP)側に位置し、この場合、ドライラミ接着剤(ドライAdh)は最外層側のポリプロピレン(PP)側に塗布される。一方、実施例2では、印刷インキ(ink)が最外層側のポリプロピレン(PP)側に位置し、この場合、ドライラミ接着剤(ドライAdh)は最内層側のポリプロピレン(PP)側に塗布される。
【0082】
≪実施例3〜5の試験条件の補足≫
実施例3と実施例4〜5との差異点は、最内層の素材である。すなわち、実施例3では、最内層にポリプロピレン(PP)が採用されている。一方、実施例4〜5では、最内層にポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の混合物が採用されている。
実施例5と実施例3〜4との差異点は、基材である。すなわち、実施例5では、中間層に無機フィラーを含まないポリオレフィン全般(PP単独又はPPとPEとの混合物でもよい)が採用されている。一方、実施例3〜4では、中間層に無機フィラー入りポリプロピレン(PPF)が採用されている。
【0083】
≪実施例1〜2及び実施例3〜6、実施例3〜5及び実施例6の試験条件の補足≫
実施例1〜2と実施例3〜6との差異点は、ガスバリア層の有無である。すなわち、実施例1〜2では、ガスバリア層(EVOH)が積層されていない。一方、実施例3〜6では、ガスバリア層(EVOH)が積層されている。
実施例3〜5と実施例6との差異点は、ガスバリア層の位置である。すなわち、実施例3〜5では、共押出法で積層したフィルム内にガスバリア層が含まれている。一方、実施例6では、ドライラミ接着剤がガスバリア性を有しており、熱ラミネートフィルム内にガスバリア層が含まれている。
【0084】
≪実施例3〜5及び実施例7〜8の試験条件の補足≫
実施例1〜6と実施例7〜8との差異点は、共押出法で積層したフィルムに対する印刷インキ(ink)の積層位置である。すなわち、実施例3〜5では、共押出法で積層したフィルムより最外層側に印刷インキ(ink)の層が介在している。一方、実施例7〜8は、共押出法で積層したフィルムより最内層側に印刷インキ(ink)の層が介在している。
実施例7と実施例8との差異点は、印刷インキ(ink)の積層位置である。すなわち、実施例7では、印刷インキ(ink)が最内層側のポリプロピレン(PP)側に位置し、この場合、ドライラミ接着剤(ドライAdh)は最外層側のポリプロピレン(PP)側に塗布される。一方、実施例8では、印刷インキ(ink)が最外層側のポリプロピレン(PP)側に位置し、この場合、ドライラミ接着剤(ドライAdh)は最内層側のポリプロピレン(PP)側に塗布される。
【0085】
≪実施例9、実施例3及び実施例10の試験条件の補足≫
実施例9と実施例3と実施例10との差異点は、共押出法で積層したフィルムの厚みの違いに伴った積層フィルムの厚み合計である。すなわち、実施例9、実施例3及び実施例10の共押出法で積層したフィルムの厚みは、それぞれ15μm、40μm及び55μmであり、これに伴った積層フィルムの厚み合計は、それぞれ40μm、65μm及び80μmである。
【0086】
≪実施例11、実施例3及び実施例12の試験条件の補足≫
実施例11と実施例3と実施例12との差異点は、熱ラミネートする時のシートの表面温度である。すなわち、実施例9では180℃、実施例3では200℃、実施例10では220℃である。
【0087】
一方、比較例1〜7の試験条件を以下に列挙する。
【0088】
≪比較例1≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
基材の層構成:(積層フィルムに近い方から)ポリプロピレン表層(PP表層)、無機フィラー入りポリプロピレン中間層(PPF中間層)、ポリプロピレン表層(PP表層)(以下、比較例2〜6の基材の層構成も同等につき記載を省略)
積層フィルムの製造方法:共押出法
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)、印刷インキ(ink)
積層フィルムの厚み合計:25μm
【0089】
≪比較例2≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
積層フィルムの製造方法:共押出法
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)及びポリプロピレン(PP)(以上、共押出法部分)、印刷インキ(ink)
積層フィルムの厚み合計:40μm
【0090】
≪比較例3≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法(共押出法で積層したフィルム含む)
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリエチレンテフタレート(PET)、印刷インキ(ink)、ドライラミ接着剤(ドライAdh)、ポリ塩化ビニルデン(PVDC)、ドライラミ接着剤(ドライAdh)、ポリプロピレン(PP)
積層フィルムの厚み合計:60μm
【0091】
≪比較例4≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法(共押出法で積層したフィルム含む)
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の混合物、オレフィン系接着性樹脂(Adh)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)及びポリプロピレン(PP)(以上、共押出法部分)、ドライラミ接着剤(ドライAdh)、印刷インキ(ink)、ポリプロピレン(PP)
積層フィルムの厚み合計:35μm
【0092】
≪比較例5≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法(共押出法で積層したフィルム含む)
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の混合物、オレフィン系接着性樹脂(Adh)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)及びポリプロピレン(PP)(以上、共押出法部分)、ドライラミ接着剤(ドライAdh)、印刷インキ(ink)、ポリプロピレン(PP)
積層フィルムの厚み合計:100μm
【0093】
≪比較例6≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法(共押出法で積層したフィルム含む)
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の混合物、オレフィン系接着性樹脂(Adh)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)及びポリプロピレン(PP)(以上、共押出法部分)、ドライラミ接着剤(ドライAdh)、印刷インキ(ink)、ポリプロピレン(PP))
積層フィルムの厚み合計:65μm
ラミネート時シート表面温度:130℃
【0094】
≪比較例7≫
基材:ポリオレフィン系非発泡体
積層フィルムの製造方法:ドライラミネート法(共押出法で積層したフィルム含む)
積層フィルムの層構成:(基材に向かって)ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)の混合物、オレフィン系接着性樹脂(Adh)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、オレフィン系接着性樹脂(Adh)及びポリプロピレン(PP)(以上、共押出法部分)、ドライラミ接着剤(ドライAdh)、印刷インキ(ink)、ポリプロピレン(PP)
積層フィルムの厚み合計:65μm
ラミネート時シート表面温度:270℃
【0095】
≪比較例1〜2の試験条件の補足≫
比較例1と比較例2との差異点は、共押出法で積層したフィルムの有無及び積層フィルムの厚み合計である。すなわち、比較例1では、共押出法で積層したフィルムを含まず、積層フィルムの厚み合計が25μmである。一方、比較例2では、共押出法で積層したフィルムを含み、積層フィルムの厚み合計が40μmである。
【0096】
≪比較例4〜5の試験条件の補足≫
比較例4と比較例5との差異点は、共押出法で積層したフィルムの厚みの違いに伴った積層フィルムの厚み合計である。すなわち、比較例4及び比較例5の共押出法で積層したフィルムの厚みは、それぞれ10μm及び75μmであり、これに伴った積層フィルムの厚み合計は、それぞれ35μm及び100μmである。
【0097】
≪比較例6〜7の試験条件の補足≫
比較例6と比較例7との差異点は、熱ラミネート工程時の基材表面の温度である。すなわち、比較例6では130℃(プロピレン系樹脂の融点以下)、比較例7では270℃(プロピレン系樹脂の融点以上)である。
【0098】
≪試験結果≫
上述した接着強度試験の概要及び試験条件に基づいて行った実施例1〜12及び比較例1〜7の試験結果について説明する。
なお、「接着強度」とは、この試験により剥がれた箇所の強度を意味してもよく、「剥がれた箇所」とは、例えば、所定の実施例又は比較例によるドライラミ接着剤(ドライAdh)と印刷インキ(ink)との間や積層フィルムの最外層{ポリプロピレン(PP)}と
基材(ポリオレフィン系非発泡体)との間、比較例1及び比較例2では印刷インキ(ink)とコート剤との間としてもよい。また、接着強度の単位は、N/15mm(1kgf/15mm巾=9.8N/15mm)を用いる。また、実施例1〜10及び比較例1〜6の印刷インキには、粉体が5mg/m
2以上含まれていてもよい。
【0099】
まず、実施例1〜8及び比較例1〜2の評価結果を表1に示す。表1を用いて、基材に対する積層フィルムの接着方法(層構成)の違いによる接着強度、印刷層の明瞭性(印刷外観)及びコストの差異を説明する。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例1及び実施例2では、接着強度が4.0N/15mmであった。すなわち、1回のドライラミネート工程で積層フィルムを製造でき、印刷インキ(ink)の積層位置の影響を受けることなく、所望の接着強度を得られることを示している。さらに、印刷インキ(ink)が他層との間に位置しているため、基材(ポリオレフィン系非発泡体)に直接貼り付かず、印刷外観は良好であった。
【0102】
実施例3〜実施例5では、接着強度が4.0N/15mmであった。すなわち、共押出法によりガスバリア層と共に積層したフィルムを含み1回のドライラミネート工程で積層フィルムを製造できると共に、層の厚みが増えたとしても、基材(ポリオレフィン系非発泡体)に対して、所望の接着強度を得られることを示している。さらに、印刷インキ(ink)が他層との間に位置しているため、基材(ポリオレフィン系非発泡体)に直接貼り付かず、印刷外観は良好であった。
【0103】
実施例6では、接着強度が4.0N/15mmであった。すなわち、ガスバリア性を有するドライラミ接着剤でも、所望の接着強度を得られることを示している。さらに、印刷インキ(ink)が上述したドライラミ接着剤に接していても、他層との間に位置しているため、基材(ポリオレフィン系非発泡体)に直接貼り付かず、印刷外観は良好であった。
【0104】
実施例7及び実施例8では、接着強度が4.0N/15mmであった。すなわち、印刷インキ(ink)の積層位置がガスバリア性を有するドライラミ接着剤より最内層側であり、かつ基材(ポリオレフィン系非発泡体)に直接貼り付いていないことにより、所望の接着強度を得られるのみならず、印刷外観は良好であった。
【0105】
実施例1〜8では、1回のドライラミネート工程で積層フィルムを製造できるため、工程数に応じて嵩む材料費や工賃を抑えられ、コストも安価であった。
【0106】
一方、比較例1及び比較例2では、接着強度としては剥離不可(十分な強度)であったが、どちらも印刷インキ(ink)が基材(オレフィン系非発泡体)に直接貼り付いているため、表面の凹凸の影響を受け、印刷外観が不良であった。
なお、比較例1〜2でドライラミネート工程がないため、コスト上特段の問題はなかった(安価であった)。
【0107】
次に、実施例3及び比較例3の評価結果を表2に示す。表2を用いて、積層フィルムの製膜方法の違いによる基材に対する接着強度、印刷層の明瞭性(印刷外観)、コスト、成型した基材に対する賦型性{
容器本体形状に対する積層フィルムの追従性(延び具合)}及び包装用容器全体の成型性の差異を説明する。
なお、実施例3の接着強度、印刷明瞭性及びコストについては、表1にて説明したとおりであるため、説明を省略する。
【0108】
【表2】
【0109】
実施例3では、ポリプロピレン(PP)に伸縮性の問題はないため、賦型性が良好であった。
【0110】
一方、比較例3では、接着強度が4.0N/15mmであると共に、印刷インキ(ink)が他層との間に位置しているため、基材(ポリオレフィン系非発泡体)に直接ラミネートせず、印刷外観は良好であった。しかしながら、2回のドライラミネート工程で積層フィルムを製造しなければならず、工程数に応じて嵩む材料費や工賃も抑えにくいため、コストが高価であった。さらに、ポリエチレンテフタレート(PET)フィルムはポリプロピレン(PP)に比べて硬く、その分熱成型性に問題があるため、賦型性が不良であった。また、積層フィルムが3種類{ポリエチレンテフタレート(PET)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリプロピレン(PP)}で構成されており、適した成型条件(例えば、温度)の設定が困難なため、成型性が不良であった。
【0111】
次に、実施例9、実施例3及び実施例10、並びに比較例4〜5の評価結果を表3に示す。表3を用いて、積層フィルムの厚みの違いによる基材に対する積層フィルムの接着強度、印刷層の明瞭性(印刷外観)、コスト及び酸素バリア性(ガスバリア機能)の差異を説明する。
【0112】
【表3】
【0113】
実施例9、実施例3及び実施例10では、接着強度が4.0N/15mmであった。すなわち、積層フィルムの厚みが増しても、所望の接着強度を得られることを示している。さらに、印刷インキ(ink)が他層との間に位置しているため、基材(ポリオレフィン系非発泡体)に直接ラミネートせず印刷外観は良好であり、ガスバリア層が含まれているため、酸素バリア性も良好であり、1回のドライラミネート工程で積層フィルムを製造できるため、コストも安価であった。
【0114】
一方、比較例4では、接着強度が4.0N/15mmで、共押出法によるガスバリア層を含み1回のドライラミネート工程で積層フィルムを製造できるためコストも安価であったが、ガスバリア層を含む積層フィルムの厚みが10μmであり薄過ぎるため、酸素バリア性は不良であった。
また、比較例5では、接着強度が4.0N/15mmであったが、ガスバリア層を含む積層フィルムの厚みが75μmであり厚過ぎるため、酸素バリア性は良好であるものの、材料費が嵩むためコストが高価であった。さらに、共押出法により積層したフィルムが全体的に厚過ぎると、積層フィルムを基材(ポリオレフィン系非発泡体)に熱ラミネートする時に熱量が不足する。積層フィルムと基材(ポリオレフィン系非発泡体)とをロールで圧着して接着強度を発現させるが、積層フィルムが所定以上の厚さになると熱伝導が不足するためである。
【0115】
次に、実施例11、実施例3及び実施例12、並びに比較例6〜7の評価結果を表4に示す。表4を用いて、成型条件の違いによる基材に対する積層フィルムの接着強度、印刷層の明瞭性(印刷外観)及びコストの差異を説明する。詳細には、いずれも印刷インキ(ink)がドライラミ接着剤に面すると共に、このドライラミ接着剤と基材(ポリオレフィン系非発泡体)との間にあるため、熱ラミネート工程時での基材(ポリオレフィン系非発泡体)の表面温度が各評価項目に対してどのように影響するかに注目する。基材(ポリオレフィン系非発泡体)の表面温度が高すぎると、印刷インキ(ink)が溶けて光沢を失い、表面温度が低すぎると接着強度が不足するからである。
【0116】
【表4】
【0117】
実施例11、実施例3及び実施例12では、熱ラミネート工程での基材(ポリオレフィン系非発泡体)の表面温度が高温過ぎず、かつポリプロピレン(PP)の融点(165℃)以上であるため、接着強度が4.0N/15mmであった。さらに、印刷インキ(ink)が他層{ポリプロピレン(PP)}との間に位置して基材(ポリオレフィン系非発泡体)に直接ラミネートしないため印刷外観が良好であり、1回のドライラミネート工程で積層フィルムを製造できるためコストが安価であった。
【0118】
一方、比較例6では、熱ラミネート工程時での基材(ポリオレフィン系非発泡体)の表面温度(130℃)がポリプロピレン(PP)の融点(165℃)以下であるため、接着強度は1.0N/15mm未満であった。さらに、比較例7では、熱ラミネート工程時での基材(ポリオレフィン系非発泡体)の表面温度(270℃)がポリプロピレン(PP)の融点(165℃)以上であるため、接着強度は4.0N/15mmで良好だが、印刷インキ(ink)の光沢が失われたため印刷外観は不良であった。
【0119】
このように、本実施形態によれば、基材1に積層される積層フィルム2は、ポリオレフィン系樹脂層21と、印刷層22と、ポリプロピレン系樹脂層23とがドライラミネート法で積層され、この印刷層は、このポリオレフィン系樹脂層とポリプロピレン系樹脂層との間に介在していることにより、積層フィルムが所望の接着強度を有すると共に、1回のドライラミネート工程で積層フィルムを製造できるため、従来よりも低コスト化を期待できる。さらに、印刷層22が中間層となって基材1に直接ラミネートされないため、この基材のラミネート温度に左右されず、かつこの基材表面の凹凸の影響を受けず、印刷外観明瞭化かつ高接着強度を期待できる。
また、基材1として、無機フィラー入りポリプロピレン樹脂層(PPF)を中間層に採用することで、包装用容器として強度や剛性のみならず、耐熱性の向上も期待できるため有効である。
【0120】
また、積層フィルム2にガスバリア性を有するドライラミ接着剤層24が含まれていることにより、ガスバリア層を共押出法にて積層したフィルムをドライラミネート法で積層した積層フィルムよりも製造工程が少ないため、低コスト化を期待できる。
【0121】
また、ガスバリア層25を共押出法にて積層したフィルムをドライラミネート法で積層した積層フィルム2又はガスバリア性を有するドライラミ接着剤層24が含まれている積層フィルム2であっても、全体として薄化が実現するため、2.0N/15mm以上の剥離強度を確保することができ、袋化現象のみならず積層間同士の剥離も発生しにくく、高機能化を期待できる。したがって、厚みが嵩ばらず、トップシール用蓋材の開封に支障が生じにくいラミネートフィルムの剥離強度を有する包装用容器を提供することができる。
【0122】
また、基材1と積層フィルム2とが熱ラミネートされるときのこの基材の表面温度がこの積層フィルムのプロピレン系樹脂の融点(165℃)以上であることにより、所望の接着強度を得られるため、トップシール用蓋材の開封に支障(袋化現象)が生じにくくすることができる。