特許第6871737号(P6871737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6871737-ウロプラキン発現促進剤 図000003
  • 特許6871737-ウロプラキン発現促進剤 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871737
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】ウロプラキン発現促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/535 20060101AFI20210426BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20210426BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20210426BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210426BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20210426BHJP
【FI】
   A61K36/535
   A61P13/02
   A61P13/10
   A61P43/00 111
   A23L33/105
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-254865(P2016-254865)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-104382(P2018-104382A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100141771
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 宏和
(72)【発明者】
【氏名】北村 尚也
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−216592(JP,A)
【文献】 International Journal of Urology,2018年,25,pp.298-304
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/535
A61K 31/11
WPI
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シソ(Perilla frutescens)を水、エタノール及びヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出溶剤で抽出した抽出物を有効成分とする、ウロプラキン3A発現促進剤。
【請求項2】
シソ(Perilla frutescens)を水、エタノール及びヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出溶剤で抽出した抽出物を有効成分として含有する、ウロプラキン3A発現促進用飲食品組成物。
【請求項3】
シソ(Perilla frutescens)を水、エタノール及びヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出溶剤で抽出した抽出物を有効成分とする、膀胱尿管逆流症の予防又は改善剤。
【請求項4】
シソ(Perilla frutescens)を水、エタノール及びヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出溶剤で抽出した抽出物を有効成分として含有する、膀胱尿管逆流症の予防又は改善用飲食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウロプラキン発現促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
膀胱尿管逆流症とは、膀胱内に貯留した尿が膀胱尿管移行部の構造や異常により尿管、あるいは腎孟・腎実質にまで逆流する現象であり、小児の有熱性尿路感染の原因として最も多い疾患である。実際に、小児の尿路感染症のうち、26〜50%に膀胱尿管逆流症が発見され、1歳以下では70%、1〜2歳では40〜50%、成人では5.2%の頻度とされている(非特許文献1)。逆流の存在は上行性の尿路感染症による腎盂腎炎を起こす原因となり、繰り返すことで腎不全に陥る場合もある。また、排尿時に上部尿路に逆流した尿は、排尿後に膀胱内へ下降し残尿となるため、細菌が増殖して膀胱炎が発症し膀胱痛の原因となる。
【0003】
本明細書におけるウロプラキン(以降UPKという)は、尿路上皮に特異的に発現している膜タンパク質である。これまでに知られているUPKとしては、UPK1A、UPK1B、UPK2及びUPK3Aの4種類が挙げられ、膀胱尿管逆流症の原因の1つとしては、UPK3A及びUPK2の関与が示唆されている。実際にUPK3A、UPK2のノックアウトマウスでは、膀胱尿管逆流症が発症することや、バリア機能低下を示唆する膀胱上皮の肥厚が報告されている(非特許文献2参照)。また、UPK3A、UPK2のノックアウトマウスでは、水の膀胱組織中への透過性が亢進しており、UPKが膀胱上皮バリア機能に関与することが示されている(非特許文献3参照)。
また、UPK1AはUPK2と、UPK1BはUPK3Aと、それぞれヘテロダイマーを形成することが知られており、膀胱尿管逆流症を示すUPK2又はUPK3Aのノックアウトマウスにおいては、本来局在している上皮細胞の頂端膜のUPK1A、UPK1B発現量が減少することが報告されている(非特許文献4参照)。さらに、間質性膀胱炎患者では、UPK3Aの発現量が低下することも報告されている(非特許文献5参照)。
【0004】
膀胱尿管逆流症の治療には、軽度の場合は自然消失を待つ保存的療法がとられるが、消失しない場合は逆流防止術が実施されている。しかし、外科的な治療法は侵襲性が高く、非侵襲的な膀胱尿管逆流症の予防又は改善方法が望まれている。
【0005】
一方シソ(Perilla frutescens)は、シソ(Lamiaceae)科の一年草であり、食用としても用いられる。そして、その抽出物には、過活動膀胱の予防又は改善作用が知られている(特許文献1参照)。しかしながらシソ抽出物が、UPKの発現の促進や、膀胱尿管逆流症の予防や改善に有効であることは全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−216592号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】NEW泌尿器科学, 2007年, 改定第2版, p. 135
【非特許文献2】Ping Hu, et al., Journal of Cell Biology, 2000, vol. 151, p. 961-971
【非特許文献3】Ping Hu, et al., Am J Physiol Renal Physiol, 2002, vol. 283, p. F1200-F1207
【非特許文献4】Xiang-Tian Kong, et al., Journal of Cell Biology, 2004, vol. 167, p. 1195-1204
【非特許文献5】Jennifer Southgate, et al., BJU INTERNATIONAL, 2007, vol. 99, p. 1506-1516
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自然消失しない膀胱尿管逆流症の治療で実施される逆流防止術は侵襲性が高く、非侵襲的で効果的な治療法は存在しない。
これに対し、膀胱尿管逆流症の一因であると考えられる膀胱の上皮バリア機能低下を抑制することができれば、膀胱尿管逆流症の原因療法となり得る。
【0009】
そこで本発明は、膀胱上皮細胞におけるUPKの発現を促進する、UPK発現促進剤又はUPK発現促進用飲食品組成物の提供を課題とする。
また本発明は、前記UPK発現促進剤若しくはUPK発現促進用飲食品組成物の効能を生かし、またその投与の手段としての、膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善剤、又は膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善用飲食品組成物の提供を課題とする。
また本発明は、膀胱上皮細胞におけるUPKの発現を促進する、非治療的なUPK発現促進方法の提供を課題とする。
さらに本発明は、非治療的な膀胱尿管逆流症の予防又は改善方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題に鑑み、膀胱尿管逆流症の原因となる膀胱の上皮バリア機能低下を抑制しうる物質について鋭意検討を行った。その結果、シソ抽出物にUPK及びこれをコードする遺伝子の発現を促進する作用があり、膀胱尿管逆流症の予防又は改善に有用であることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0011】
本発明は、シソ抽出物を有効成分とする、UPK発現促進剤に関する。
また本発明は、シソ抽出物を有効成分として含有する、UPK発現促進用飲食品組成物に関する。
また本発明は、シソ抽出物を有効成分とする、膀胱尿管逆流症の予防又は改善剤に関する。
また本発明は、シソ抽出物を有効成分として含有する、膀胱尿管逆流症の予防又は改善用飲食品組成物に関する。
また本発明は、シソ抽出物を投与又は摂取させる、非治療的なUPKの発現促進方法に関する。
さらに本発明は、シソ抽出物を投与又は摂取させる、非治療的な膀胱尿管逆流症の予防又は改善方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のUPK発現促進剤及びUPK発現促進用飲食品組成物は、膀胱上皮細胞におけるUPKの発現を促進することができる。
また、本発明の膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善剤、並びに膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善用飲食品組成物は、膀胱尿管逆流症を予防又は改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ヘマトキシリン・エオジン染色を行った、対照群のラットの膀胱の光学顕微鏡写真(図面代用写真)を示す。
図2】ヘマトキシリン・エオジン染色を行った、シソ抽出物処理群のラットの膀胱の光学顕微鏡写真(図面代用写真)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において「予防」とは、個体における疾患若しくは症状の発症の防止若しくは遅延、又は個体の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。
また、本明細書において「改善」とは、疾患、症状若しくは状態の好転、疾患、症状若しくは状態の悪化の防止若しくは遅延、又は疾患、症状若しくは状態の進行の逆転、防止若しくは遅延をいう。
【0015】
本発明のUPK発現促進剤は、UPK1A、UPK1B、UPK2、及びUPK3A、並びにこれらをコードする遺伝子のいずれの発現の促進にも有効である。特に本発明のUPK発現促進剤は、UPK3A又はこれをコードする遺伝子の発現の促進に有効である。
ヒトのUPK1Aのアミノ酸配列情報と、それをコードする遺伝子(以下、「UPK1A遺伝子」ともいう)の塩基配列情報は、それぞれNCBI Reference Sequence:NP_001268372.1、NM_001281443.1、又はNP_008931.1、NM_007000.3として登録されており、NCBIより入手可能である。
ヒトのUPK1Bのアミノ酸配列情報と、それをコードする遺伝子(以下、「UPK1B遺伝子」ともいう)の塩基配列情報は、それぞれNCBI Reference Sequence:NP_008883.2、NM_006952.3として登録されており、NCBIより入手可能である。
ヒトのUPK2のアミノ酸配列情報と、それをコードする遺伝子(以下、「UPK2遺伝子」ともいう)の塩基配列情報は、それぞれNCBI Reference Sequence:NP_006751.1、NM_006760.3、として登録されており、NCBIより入手可能である。
ヒトのUPK3Aのアミノ酸配列情報と、それをコードする遺伝子(以下、「UPK3A遺伝子」ともいう)の塩基配列情報は、それぞれNCBI Reference Sequence:NP_001161046.1、NM_001167574.1、又はNP_008884.1、NM_006953.3として登録されており、NCBIより入手可能である。
また、これらのアイソフォーム、バリアント又はホモログは本発明の発現促進の対象となり得る。
【0016】
本発明のUPK発現促進剤、並びに膀胱尿管逆流症の予防又は改善剤(以下「本発明の予防又は改善剤」とも表記する)は、シソ抽出物を有効成分とする。また本発明のUPK発現促進用飲食品組成物、並びに膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善用飲食品組成物は、シソ抽出物を有効成分として含有する。
本発明で用いるシソ抽出物の原料に特に制限はないが、アオジソ(Perilla frutescens var.crispa f.viridis.Makino)、アカジソ(Perilla frutescens Britton var.acuta Kudo)、カタメンジソ(Perilla frutescens var.crispa f.discolor Makino)、チリメンジソ(学名:Perilla frutescens var.crispa f.crispa Decne)、マダラジソ(Perilla frutescens var.crispa f.rosea Kudo)等のシソ(Lamiaceae)科シソ(Perilla)属に属する一年草の植物が挙げられる。本発明では、これらの抽出物を1種単独で用いてもよく、2種以上の抽出物を混合して用いてもよい。本発明において、シソ抽出物の原料は、アオジソ、アカジソ、カタメンジソ、チリメンジソ、及びマダラジソからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アオジソがより好ましい。
【0017】
本発明における前記植物は、その植物の全ての任意の部分が使用可能である。例えば、上記植物の全草、根、根茎、茎、葉、花、種子、芽、花穂等の任意の部分、及びそれらの組み合わせのいずれか1つ又は2つ以上を使用することができる。
本発明においてシソ抽出物を得るには、シソの全草、葉、根、種子を抽出することが好ましく、葉を抽出することがより好ましい。また、シソ抽出物として市販品を用いてもよい。
【0018】
本発明で用いる、シソ抽出物の製造方法については特に限定はなく、上記植物を通常の方法で抽出することにより抽出物を得ることができる。具体的には、前記植物の各種抽出溶剤による粗抽出物、粗抽出物を分配又はカラムクロマトなどの各種クロマトグラフィーなどで精製して得られた抽出画分、水蒸気蒸留して得られる水蒸気蒸留物、圧搾抽出して得られる搾汁などの圧搾物などを本発明における抽出物として用いることができる。また、このようにして得られた抽出物は、必要により公知の方法により脱臭、脱色等の処理を施してから用いてもよい。
上記の植物はそのまま抽出に供することも可能であるが、より抽出効率を高めるために、乾燥、細断、粉砕等の工程を加えることも好ましい。また、本発明においては、前記抽出物、水蒸気蒸留物、圧搾物等のいずれかを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、本発明の植物抽出物としては、上記植物を水蒸気蒸留することにより得られた水蒸気蒸留物を用いるのが好ましい。
【0019】
抽出溶剤としては、極性溶剤、非極性溶剤のいずれをも使用することができ、これらを混合して用いることもできる。例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類等が挙げられる。あるいは、上記溶剤の2種以上を組み合わせた混合物を、抽出溶剤として用いることができる。
【0020】
本発明で用いられる抽出物を得るための抽出条件については、使用する溶剤によって異なり特に制限はなく、通常の条件を適用できる。例えば、上記植物1質量部に対して1質量部以上10質量部以下の溶媒を用い、0℃以上(好ましくは10℃以上)70℃以下(好ましくは30℃以下)で数時間〜数週間、好ましくは12時間以上2日間以下、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、超臨界抽出、超音波抽出及び/又はマイクロ波抽出を行えばよい。抽出効率を向上させるため、併せて攪拌を行ったり、溶媒中でホモジナイズ処理を行ってもよい。
【0021】
上記溶媒で抽出して得られた抽出物はそのまま使用してもよいが、さらに適当な分離手段、例えばゲル濾過、クロマトグラフィー、精密蒸留、活性炭処理等により活性の高い画分を分画して用いることもできる。本発明において、植物の抽出物とは、ソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて得られる各種溶剤抽出液、その希釈液、その濃縮液、その精製物又はそれらの乾燥末を包含するものである。
【0022】
本発明で用いるシソ抽出物の調製法としては、シソ、特に好ましくはアオジソ、の枝や葉を含むシソ全体を水蒸気蒸留した後、ヘキサン抽出を行い、シソ抽出物を調製する方法が好ましい。
【0023】
前述のように、UPK3A又はUPK2のノックアウトマウスでは、膀胱尿管逆流症が発症することが報告されている。また、UPK1AはUPK2と、UPK1BはUPK3Aと、それぞれヘテロダイマーを形成することが知られており、膀胱尿管逆流症を示すUPK2又はUPK3Aのノックアウトマウスにおいては、本来局在している上皮細胞の頂端膜のUPK1A、UPK1B発現量が減少することが報告されている。
これらの報告から、UPKの発現を促進することで、膀胱尿管逆流症を予防又は改善し得ると考えられる。
【0024】
後記実施例でも示すように、シソ抽出物は、膀胱上皮細胞のUPKの発現を促進する作用を有する。そのため、膀胱上皮細胞のUPKの発現を促進する作用を有するシソ抽出物は、膀胱尿管逆流症を予防又は改善するために使用することができる。
上記使用は、治療的使用(即ち医療行為)であっても非治療的使用(非医療的な行為)であってもよい。また、上記使用の対象は、ヒト、非ヒト動物、又はそれらに由来する検体であり得る。なお、前記「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処理行為を含まない概念である。
【0025】
本発明のUPK発現促進剤、並びに予防若しくは改善剤は、上記使用の具体的態様の1つであり、治療的用途(医療用途)、非治療用途(非医療用途)のいずれにも適用することができる。具体的には、医薬品、医薬部外品等としての使用することができる他、各種の飲食品、飼料、ペットフード等に本発明のUPK発現促進剤、又は予防若しくは改善剤を配合することもできる。
本発明のUPK発現促進剤、並びに予防若しくは改善剤は、液状、固形状、乳液状、ペースト状、ゲル状、パウダー状(粉末状)、顆粒状、ペレット状、スティック状等、ヒトや動物に適用されうる各種剤型をとることができる。
また、本発明のUPK発現促進剤、並びに予防若しくは改善剤は、有効成分である上記抽出物のみからなるものであってもよいし、効果に影響を与えない範囲で他の成分を含有するものであってもよい。他の成分とは、例えば下記の添加剤が挙げられる。
【0026】
本発明のUPK発現促進剤、並びに予防若しくは改善剤を医薬品、医薬部外品に適用する場合、前記抽出物を有効量含有させ、必要により添加剤を配合して各種剤形に調製することができる。例えば、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、腸溶剤、トローチ剤、ドリンク剤等の経口医薬として、又は、注射剤、坐剤、経皮吸収剤、外用剤等といった非経口医薬として調製することができる。これらの形態のうち、好ましい形態は経口医薬である。
種々の剤型に調製するには、添加剤を用いて常法に従って製造すればよい。添加剤は、通常用いられているものを使用することができる。添加剤の例としては、薬学的に許容される賦形剤、液体担体、油性担体、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤、崩壊剤、滑沢剤、増量剤、界面活性剤、分散剤、懸濁剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、矯臭剤、細菌抑制剤等が挙げられる。
【0027】
本発明のUPK発現促進剤、予防若しくは改善剤、又は前述の有効成分を飲食品、飼料、ペットフード等に配合適用し、飲食品組成物、飼料組成物、ペットフード組成物等とする場合、食用又は飲料用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して提供することができる。さらに、前記飲食品組成物は、一般飲食品の他、UPK発現促進、又は膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した美容食品、病者用食品、栄養機能食品、特定保健用食品又は機能性表示食品等の機能性飲食品の形態の飲食品組成物とすることができる。
飲食品への配合の例としては、小麦粉加工食品、米加工食品、菓子類、飲料類、乳製品、調味料、蓄肉加工食品、水産加工食品、調理油等が挙げられる。また、錠剤(タブレット)、カプセル等の錠剤食、濃厚流動食、自然流動食、半消化態栄養食、成分栄養食、ドリンク栄養食等の経口経腸栄養食品、機能性食品等の形態としてもよい。
飼料組成物としては、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、犬、猫、小鳥、リス等に用いるペットフード等が挙げられる。
これらの飲食品組成物、飼料組成物及びペットフード組成物等は、本発明のUPK発現促進剤、本発明の予防若しくは改善剤、又は前述の有効成分を含有し、これに食品原料、例えば、甘味剤、着色剤、抗酸化剤、ビタミン類、香料、ミネラル等の添加剤、タンパク質、脂質、糖質、炭水化物、食物繊維等を適宜組み合わせて、常法に従って調製することができる。
【0028】
本発明のUPK発現促進剤、予防若しくは改善剤、並びに飲食品組成物における前記有効成分の配合量又は含有量は、その使用形態により適宜決定することができる。
例えば、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤の場合は、剤又は組成物の総量中、シソ抽出物を固形分濃度(固形分換算)として0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。またその上限値は、90質量%が好ましく、50質量%がより好ましい。あるいは、0.001〜90質量%が好ましく、0.01〜50質量%がより好ましい。
本発明のUPK発現促進剤、又は予防若しくは改善剤を飲食品やペットフード等に配合する場合は、剤又は組成物の総量中、前記有効成分の配合量は固形分濃度として0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。またその上限値は、50質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。あるいは、0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましい。
なお、本発明において「固形分」とは、ロータリーエバポレーター等の減圧濃縮装置により抽出物から抽出溶媒を除いた残渣(蒸発残分)を意味する。
【0029】
本発明のUPK発現促進剤、予防若しくは改善剤、並びに飲食品組成物の投与又は摂取量は、個体の状態、体重、性別、年齢又はその他の要因に従って適宜選択、決定できる。例えば、成人(60kg)の1日の投与又は摂取量としては、前記有効成分とする抽出物の固形分換算で、0.001mg以上が好ましく、1mg以上がより好ましく、10mg以上がさらに好ましく、100mg以上がさらに好ましく、1,000mg以上がさらに好ましい。またその上限値としては、50,000mgが好ましく、40,000mgがより好ましく、30,000mgがさらに好ましく、20,000mgがさらに好ましく、15,000mgがさらに好ましい。あるいは、0.001〜50,000mgが好ましく、1〜40,000mgがより好ましく、10〜30,000mgがさらに好ましく、100〜20,000mgがさらに好ましく、1,000〜15,000mgがさらに好ましい。また、本発明のUPK発現促進剤、予防若しくは改善剤、並びに飲食品組成物は、1日1回〜数回に分け、又は任意の期間及び間隔で摂取・投与され得る。
また、前記有効成分の投与又は摂取は、全身への投与又は摂取でもよいし、局所への投与又は摂取でもよい。また、本発明のUPK発現促進剤、予防若しくは改善剤、並びに飲食品組成物は、UPKの発現が抑制されている条件下で適用することが好ましい。
【0030】
上記医薬品、医薬部外品又は飲食品組成物の摂取又は投与対象として特に限定されないが、膀胱尿管逆流症の予防、改善、治療を目的とするヒトやヒト以外の哺乳動物が好ましい。なお、摂取又は投与対象には、膀胱尿管逆流症の症状が認められるヒトやヒト以外の哺乳動物、及びそのおそれがあるヒトやヒト以外の哺乳動物、その疾患・症状の予防を期待するヒトやヒト以外の哺乳動物も含まれる。
【0031】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のUPK発現促進剤、予防若しくは改善剤、飲食品組成物、並びに方法を開示する。
【0032】
<1>シソ抽出物を有効成分とする、UPK発現促進剤、又は膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善剤。
<2>シソ抽出物を有効成分として含有する、UPK発現促進用飲食品組成物、又は膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善用飲食品組成物。
【0033】
<3>前記膀胱尿管逆流症の予防又は改善がUPKの発現の促進、好ましくは膀胱上皮細胞におけるUPKの発現の促進、によるものである、前記<1>又は<2>項に記載の膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善剤、又は膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善用飲食品組成物。
<4>前記UPKが、UPK1A、UPK1B、UPK2、及びUPK3Aからなる群より選ばれる少なくとも1種、好ましくはUPK3A、である、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の剤又は組成物。
<5>前記シソ抽出物がアオジソ抽出物である、前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の剤又は組成物。
<6>前記シソ抽出物がシソの葉の抽出物である、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の剤又は組成物。
<7>前記シソ抽出物が、シソ、特に好ましくはアオジソ、の枝や葉を含むシソ全体を水蒸気蒸留した後、ヘキサン抽出を行って調製したシソ抽出物である、前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の剤又は組成物。
<8>前記剤又は飲食品組成物の総量に対する、前記有効成分の配合量又は含有量が固形物換算で0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、90質量%以下、好ましくは50質量%以下、である、前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の剤又は組成物。
<9>前記剤又は飲食品組成物の総量に対する、前記有効成分の配合量又は含有量が固形物換算で0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、50質量%以下、好ましくは10質量%以下、である、前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の剤又は組成物。
【0034】
<10>シソ抽出物を投与又は摂取させる、非治療的なUPKの発現促進方法、又は非治療的な膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善方法。
<11>前記膀胱尿管逆流症の予防又は改善がUPKの発現の促進、好ましくは膀胱上皮細胞におけるUPKの発現の促進、によるものである、前記<10>に記載の方法。
<12>前記UPKが、UPK1A、UPK1B、UPK2、及びUPK3Aからなる群より選ばれる少なくとも1種、好ましくはUPK3A、である、前記<10>又は<11>項に記載の方法。
<13>前記シソ抽出物がアオジソ抽出物である、前記<10>〜<12>のいずれか1項に記載の方法。
<14>前記シソ抽出物がシソの葉の抽出物である、前記<10>〜<13>のいずれか1項に記載の方法。
<15>前記シソ抽出物が、シソ、特に好ましくはアオジソ、の枝や葉を含むシソ全体を水蒸気蒸留した後、ヘキサン抽出を行って調製したシソ抽出物である、前記<10>〜<14>のいずれか1項に記載の方法。
<16>前記シソ抽出物を、膀胱尿管逆流症の症状が認められるヒトやヒト以外の哺乳動物、及びそのおそれがあるヒトやヒト以外の哺乳動物、その疾患・症状の予防を期待するヒトやヒト以外の哺乳動物に投与又は摂取させる、前記<10>〜<15>のいずれか1項に記載の方法。
<17>前記シソ抽出物をUPKの発現が抑制されている条件下で適用する、前記<10>〜<16>のいずれか1項に記載の方法。
<18>前記シソ抽出物の成人(60kg)の1日当たりの摂取量が固形物換算で0.001mg以上、好ましくは1mg以上、より好ましくは10mg以上、さらに好ましくは100mg以上、さらに好ましくは1,000mg以上、50,000mg以下、好ましくは40,000mg以下、より好ましくは30,000mg以下、さらに好ましくは20,000mg以下、さらに好ましくは15,000mg以下、である、前記<10>〜<17>のいずれか1項に記載の方法。
【0035】
<19>UPK発現促進剤、又は膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善剤としての、シソ抽出物の使用。
<20>UPK発現促進剤、又は膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善剤の製造のための、シソ抽出物の使用。
<21>シソ抽出物を、UPK発現促進剤、又は膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善剤として使用する方法。
<22>シソ抽出物を使用する、UPKの発現促進方法、又は膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善方法。
<23>前記膀胱尿管逆流症の予防又は改善がUPKの発現の促進、好ましくは膀胱上皮細胞におけるUPKの発現の促進、によるものである、前記<19>〜<22>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<24>前記UPKが、UPK1A、UPK1B、UPK2、及びUPK3Aからなる群より選ばれる少なくとも1種、好ましくはUPK3A、である、前記<19>〜<23>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<25>前記シソ抽出物がアオジソ抽出物である、前記<19>〜<24>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<26>前記シソ抽出物がシソの葉の抽出物である、前記<19>〜<25>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<27>前記シソ抽出物が、シソ、特に好ましくはアオジソ、の枝や葉を含むシソ全体を水蒸気蒸留した後、ヘキサン抽出を行って調製したシソ抽出物である、前記<19>〜<26>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<28>前記シソ抽出物を、膀胱尿管逆流症の症状が認められるヒトやヒト以外の哺乳動物、及びそのおそれがあるヒトやヒト以外の哺乳動物、その疾患・症状の予防を期待するヒトやヒト以外の哺乳動物に適用する、前記<19>〜<27>のいずれか1項記載の使用又は方法。
<29>前記シソ抽出物をUPKの発現が抑制されている条件下で適用する、前記<19>〜<28>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<30>前記シソ抽出物を投与又は摂取させる、前記<19>、及び<21>〜<29>のいずれか1項記載の使用又は方法。
<31>前記シソ抽出物を1日1回〜数回に分け、又は任意の期間及び間隔で摂取又は投与され得る、前記<19>〜<30>のいずれか1項記載の使用又は方法。
<32>前記シソ抽出物の成人(60kg)の1日当たりの摂取量が固形物換算で0.001mg以上、好ましくは1mg以上、より好ましくは10mg以上、さらに好ましくは100mg以上、さらに好ましくは1,000mg以上、50,000mg以下、好ましくは40,000mg以下、より好ましくは30,000mg以下、さらに好ましくは20,000mg以下、さらに好ましくは15,000mg以下、である、前記<19>〜<31>のいずれか1項記載の使用又は方法。
<33>前記剤の総量に対する、前記シソ抽出物の配合量又は含有量が固形物換算で0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、90質量%以下、好ましくは50質量%以下、である、前記<19>〜<32>のいずれか1項記載の使用又は方法。
<34>前記剤の総量に対する、前記シソ抽出物の配合量又は含有量が固形物換算で0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、50質量%以下、好ましくは10質量%以下、である、前記<19>〜<32>のいずれか1項記載の使用又は方法。
<35>前記シソ抽出物を膀胱上皮細胞に適用する、前記<19>、及び<21>〜<34>のいずれか1項記載の使用又は方法。
<36>前記シソ抽出物を非治療的に使用する、前記<19>、及び<21>〜<35>のいずれか1項記載の使用又は方法。
【0036】
<37>膀胱尿管逆流症の治療方法のために用いる、シソ抽出物。
<38>膀胱尿管逆流症の非治療的な処置方法のための、シソ抽出物の使用。
<39>UPK発現促進薬、又は膀胱尿管逆流症の予防若しくは治療薬の製造のための、シソ抽出物の使用。
<40>前記膀胱尿管逆流症の予防又は改善がUPKの発現の促進、好ましくは膀胱上皮細胞におけるUPKの発現の促進、によるものである、前記<37>〜<39>のいずれか1項記載の抽出物又は使用。
<41>前記UPKが、UPK1A、UPK1B、UPK2、及びUPK3Aからなる群より選ばれる少なくとも1種、好ましくはUPK3A、である、前記<40>項に記載の抽出物又は使用。
<42>前記シソ抽出物がアオジソ抽出物である、前記<37>〜<41>のいずれか1項記載の抽出物又は使用。
<43>前記シソ抽出物がシソの葉の抽出物である、前記<37>〜<42>のいずれか1項記載の抽出物又は使用。
<44>前記シソ抽出物が、シソ、特に好ましくはアオジソ、の枝や葉を含むシソ全体を水蒸気蒸留した後、ヘキサン抽出を行って調製したシソ抽出物である、前記<37>〜<43>のいずれか1項に記載の抽出物又は使用。
<45>前記シソ抽出物を医薬組成物の形態で適用する、前記<37>〜<44>のいずれか1項記載の抽出物又は使用。
<46>前記シソ抽出物を食品又は飲料の形態で適用する、前記<37>〜<44>のいずれか1項記載の抽出物又は使用。
<47>食品又は飲料の形態が美容食品、病者用食品、栄養機能食品、特定保健用食品又は機能性表示食品である、前記<46>項記載の抽出物又は使用。
<48>前記シソ抽出物を、膀胱尿管逆流症の症状が認められるヒトやヒト以外の哺乳動物、及びそのおそれがあるヒトやヒト以外の哺乳動物、その疾患・症状の予防を期待するヒトやヒト以外の哺乳動物に適用する、前記<37>〜<47>のいずれか1項記載の抽出物又は使用。
<49>前記シソ抽出物をUPKの発現が抑制されている条件下で適用する、前記<37>〜<48>のいずれか1項記載の抽出物又は使用。
<50>剤の総量に対する、前記シソ抽出物の配合量又は含有量が固形物換算で0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、90質量%以下、好ましくは50質量%以下、である、前記<37>〜<49>のいずれか1項記載の抽出物又は使用。
<51>剤の総量に対する、前記シソ抽出物の配合量又は含有量が固形物換算で0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、50質量%以下、好ましくは10質量%以下、である、前記<37>〜<49>のいずれか1項記載の抽出物又は使用。
<52>前記シソ抽出物の成人(60kg)の1日当たりの摂取量が固形物換算で0.001mg以上、好ましくは1mg以上、より好ましくは10mg以上、さらに好ましくは100mg以上、さらに好ましくは1,000mg以上、50,000mg以下、好ましくは40,000mg以下、より好ましくは30,000mg以下、さらに好ましくは20,000mg以下、さらに好ましくは15,000mg以下、である、前記<37>〜<51>のいずれか1項記載の抽出物又は使用。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
調製例 シソ抽出物の調製
アオジソの葉の水蒸気蒸留品である香辛料抽出物製剤シソSP-61509(商品名、三栄源エフエフアイ社より入手)5Lにヘキサン5Lを加え、液々抽出を行った。水層はさらにヘキサン2Lでの抽出を2回繰り返した。得られたヘキサン抽出液(合計9L)を併せて、ロータリーエバポレーターで濃縮し、シソ抽出物(シソ抽出物固形分100%)を得た(収量:72.92g)。得られた抽出物を100%エタノール(WAKO社製)で溶解し、下記実施例で使用した。
なお、アオジソ抽出物溶液中の成分分析について、外部機関に分析依頼した。その結果、アオジソ抽出物100g中79gが、シソ精油成分として公知のペリルアルデヒドであった。
【0039】
試験例 シソ抽出物の経口投与による、ラット膀胱UPK3A発現量への影響
試験に用いるラットとして、SHR(38週齢、雌、日本SLC社より入手)20匹を使用した。
対照群には、コントロール食(5%コーン油、20%カゼイン、66.5%ポテトスターチ、4%セルロース、1%ビタミン(商品名:ビタミン混合AIN−76、オリエンタルバイオサービス社より入手))、3.5%ミネラル(商品名:ミネラル混合AIN−76、オリエンタルバイオサービス社より入手))を2週間経口摂取させた。これに対して、シソ抽出物処理群には、アオジソエキス含有食(5%コーン油、20%カゼイン、66%ポテトスターチ、4%セルロース、1%ビタミン、3.5%ミネラル、0.5%アオジソエキス)を2週間経口摂取させた。
コントロール食又はアオジソエキス含有食の摂取2週間後、イソフルラン麻酔下でラットを安楽死させ、膀胱を摘出した。
【0040】
(mRNA発現量解析)
RNeasy mini kit(Quiagen社製)を用いて、摘出した膀胱からRNAを抽出した。膀胱はRNA抽出溶液中でTissue LyserII(QIAGEN社)を用いて破砕した。抽出したRNA100μgから、High Capacity RNA to cDNA kit(Applied Biosystems社製)を用いてcDNAを合成し、Real-time PCRに供してUPK3A遺伝子の発現量を定量した。
UPK3A遺伝子を特異的に検出するTaqman Gene Expression Assay(Applied Biosystems社製)プローブは、UPK3A用プローブ(Rn01505982_m1)を用いた。シソ抽出物処理群のUPK3A遺伝子の発現量は、対照群のUPK3A遺伝子の発現量を1としたときの相対値で算出した。尚、UPK3A遺伝子の発現量は、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHの発現量で補正した。
得られた結果を表1に示す。
【0041】
(UPK3Aタンパク質量解析)
摘出した膀胱の一部(約5mm×5mm)をジルコニアビーズ(Bio Medical Science社)とTissue LyserII(QIAGEN社)を用いてホモゲナイズし、測定時まで−80℃で凍結保存した。凍結保存したホモジネートを自然解凍し、Pierce BCA Protein Assay Kit(Thermo Fisher Scientific社)を用いて総タンパク質量(BSA換算)を測定し、総タンパク質量を合わせた後、以下の測定に供した。
測定には、Enzyme-linked immunosorbent Assay Kit for Uroplakin 3A(CLOUD-CLONE Corp.社製)を用いた。UPK3Aタンパク質量は、サンプル中のUPK3Aタンパク質量を総タンパク質量で除した値として算出した。
得られた結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すように、対照群と比較し、シソ抽出物処理群では、UPK3AのmRNA発現量の平均値が増加すると共に、UPK3Aタンパク質の発現量は有意に増加した。
【0044】
(膀胱の組織学的解析)
摘出した膀胱を、O. C. T. Coumpound(Tissue-Tek社製)を用いて凍結包埋し、外部機関にヘマトキシリン・エオジン染色標本の作製を依頼した。光学顕微鏡で観察した結果を図1及び図2に示す。
【0045】
図1に示すように、対照群では全体的に膀胱上皮細胞が菲薄化し、被蓋細胞が存在しない部位も認められた。
これに対して、図2に示すように、シソ抽出物処理群では、対照群で見られたような、膀胱上皮細胞の菲薄化が改善し、被蓋細胞が回復傾向にあった。
さらにUPK3Aは、膀胱上皮細胞に局在して発現する。よって、シソ抽出物の摂取による膀胱上皮細胞層の回復は、UPK3A発現量の増加を組織学的にも示唆する結果であると考えられる。
【0046】
以上の結果から、シソ抽出物の摂取により、膀胱のUPK発現量が増加することが明らかとなった。
したがって、UPK発現を促進するシソ抽出物は、UPK発現促進剤、膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善剤、UPK発現促進用飲食品組成物、並びに膀胱尿管逆流症の予防若しくは改善用飲食品組成物の有効成分とすることができる。




図1
図2