【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、独立請求項中で定義された特徴により達成される。
本発明は、プロセス容器中の発泡を認識する装置であって、電磁信号および/または音響信号を検出する検出器を備えた装置に関する。本発明は、この装置がプロセス容器中に配置可能であることを特徴とする。このようにして、発泡を認識する装置をプロセス容器中に配置して、この中で作動させることができるので、コスト効率良いシステムの拡張が確保される。したがって、泡沫認識に合わせた特別なプロセス容器、例えば、窓および/または開口を容器壁に設けたプロセス容器は必要ではない。さらに、この検出器を用いて、プロセス容器内で、すなわち発生場所の近くで、発泡を認識可能である。容器壁の汚れは、したがって悪影響を及ぼさない。
【0014】
この装置は、さらに加えて、検出器により検出された信号を評価する評価ユニットを備えている。したがって、この装置は、この評価された信号を、制御ないしさらに処理するために利用可能である。この分野で一般的である評価ユニットは、増幅器と相関器とを含む。増幅器を用いて、信号は振幅値にまで上昇し、その結果、そのさらなる処理は容易に実現可能である。相関器は、信号のノイズ成分をフィルタリングして取り除く。あるいは、高域フィルタ、低域フィルタまたは帯域通過フィルタを、使用される信号のタイプに応じて使用することができる。最も単純な実施形態では、この信号は、比較器を用いてデジタル化され、その結果、泡沫の存在/非存在のみを示す。当然複雑な評価ユニットも考えられる。好ましくは、この評価ユニットは、唯一の導体基板上に、とりわけ検出器と同じ導体基板上に配置されている。
【0015】
評価ユニットは、検出された信号を装置中でその場で処理し、それに応じて評価された信号を転送する。評価された信号は、アナログでまたはデジタル化して転送することができる。検出された信号自体は、感度が高いか、またはノイズを受けやすい。この欠点は、評価ユニットが集積されることにより回避されるが、この理由は、信号が転送される前に評価が行われるからである。さらに、閉鎖されたユニット中に配置することにより、すでに評価され場合によってはデジタル化された信号を転送するための容易なインタフェースが利用可能となる。これにより、装置の取り扱いが、これ以外の公知のセンサ、例えば温度センサまたは圧力センサと類似または同様となる。
【0016】
評価された信号のデータ伝送のために、離散信号伝送またはこれ以外の形態のデータ伝送を行うこともできる。これに応じて、この装置は、評価された信号を伝送するためのデータインタフェースを有することができる。
【0017】
この装置は、さらに加えて電磁信号および/または音響信号を発生させるための発生源を有することができる。これにより、予め定義された電磁信号および/または音響信号を発生させることができ、これが、プロセス容器内で検出器により直接および/または間接的に検出される。したがって、この装置は、外部の、または追加的な発生源に依存しない。したがって、泡沫認識の信頼性が改良される。
【0018】
発生源から発生した信号、とりわけパルス信号は、人間の目および/または人間の聴覚にとって知覚可能ではない信号でありえる。この信号は、赤外光の使用に基づきうる。この際、発生源は、例えば850nmの領域での伝送窓を有する。この検出器は、とりわけ730〜1010nmの伝送窓を有する受信領域を含む。当然この信号は、電磁波としてとりわけラジオ周波数(無線波)領域内の様々な周波数帯域または高周波域、とりわけ0.1〜100GHzの範囲内で送信されうる。当然この信号は、超音波としても送信されうる。パルス信号を使用することにより、信号対雑音比(signal−to−noise−ratio)を改良できる。
【0019】
検出器の前に相応のフィルタを置いて狭帯域信号を使用することにより、信号対雑音比(signal−to−noise)を改良可能である。
【0020】
さらに、信号を発生源の側で変調して、検出器の側で相応に復調することも可能であり、これも、信号対雑音比(signal−to−noise−ratio)の改良に繋がる。
【0021】
最後に、疑似無作為信号(スペクトラム拡散)を用いることができる。検出器の後方で相関器を組み合わせることにより、これも信号対雑音比を改良し、外部信号に対する雑音排除性を改良することができる。
【0022】
検出器の前方に設置されたまたは下流で接続された応用特有のフィルタまたは前置フィルタは、泡沫の特徴的で無作為的な反射挙動に対して最適化されていることができる。この場合、最も簡単な実施形態は、高域フィルタの使用である。
【0023】
発生源は、狭帯域の光を発する発光ダイオード(LED、light−emitting−diode)、赤外線送信器、レーザダイオード、圧電スピーカ、圧電水晶発振器または圧電セラミック発振器でありえる。これに応じて、検出器は、例えばフォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトレジスタ(LDR、光依存性抵抗(light dependent resistor))、赤外線受信器または圧電センサ(指向性マイク)として構成されうる。この検出器は、容量性の検出器との組み合わせとして構成可能で、例えば赤外線検出器と容量性の検出器との組み合わせとして構成可能である。
【0024】
当然、プロセス容器中の動きを認識するために、1次元および/または2次元(1Dおよび2D)センサ、例えばCCD(電荷結合素子)画像センサを備えることができる。この際、好ましくは、画像センサは、動き、とりわけ発泡の認識を検出するために、十分な焦点深度を有する。
【0025】
この装置は、中に発生源と検出器とが配置されているユニットを有しうる。この際、このユニットは、個別のアセンブリとして構成可能であり、組み合わせられたセンサを用いることができる。このユニット内では、発生源と検出器とが互いに隣接して、または、間隔を空けて配置可能である。したがって、発生源と検出器とが隣接して位置付けられている場合には、泡沫から反射される信号を検出可能である。発生源と検出器とが距離を空けて互いに配置されている場合には、好ましくは1〜5cmの範囲で距離を空けている場合には、主に泡沫を透過した信号が検出される。後者の場合は、装置の発生源または検出器を含む領域が、プロセス容器のあるゾーンで、泡沫が存在するまたは泡沫が発生するゾーンに、位置付けられていることを前提とする。
【0026】
この装置のユニットはロッド形状で構成されていることができ、とりわけカプセル化されて、信号が透過するロッド中とりわけガラスロッドまたはプラスチックロッド中に配置されている。このようにして、このユニットは、プロセス容器内部に、とりわけ縦長に構成されたプロセス容器内部に、最適に位置付け可能であり、および/または、さらに続く構成部品、とりわけ蒸発システム、例えば蒸気導管などを貫通することができる。ロッド中にカプセル化されたユニットは、簡単に洗浄可能であるので有利である。例えば、このユニットは、信号が透過する管中に、好適にはガラス管またはプラスチック管中に押し込まれている。さらに、還流する凝縮物がカプセル化されたユニットを洗浄する。この際、同様に有利であるのは、カプセル化により、プロセス容器中の媒体が、管のガラスまたはプラスチックのみに接触しうるという点である。
【0027】
検出器が、泡沫から反射された信号および/または泡沫を透過した信号を検出するように、発生源と検出器とは、互いに対して相対的に配置可能である。このようにして、泡沫と相互作用した後に反射されまたは透過した信号は、検出器により検出されうる。受信信号に基づいて発泡が認識される。上述の泡沫は、ある物質もしくは物質混合物からなる媒体、および/または、ある液体もしくはある液体混合物からなる媒体、とりわけ一般的な溶剤を含む溶剤または溶剤混合物に由来する。
【0028】
通常蒸発システム中で利用される溶剤の一例は、アセトン、ベンゼン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジオキサン、酢酸、エタノール、酢酸エチル、へプタン、ヘキサン、メタノール、ペンタン、n−プロピルアルコール、テトラクロロエチレン、トルオール、トリクロロエチレン、トリクロロメタン、水およびキシロールである。当業者にはさらなる一般的な溶剤も公知である。
【0029】
検出器の前方には、絞り、鏡筒、光学系および/または望ましくない散乱信号を遮蔽し取り除くフィルタが配置可能である。同様に、これらに追加してまたはこれらに代えてグリッドおよび/またはマスクを使用することも可能である。この種の配置は、発生源の前方についても考えることができる。このようにして、受信信号および/または送信信号は、必然的にフィルタリングされうる。とりわけ、散乱光の検出および望ましくない反射が低減される。この結果、信号対雑音比が改良される。さらに、反射系では、発生源から検出器への直接的な透過的なクロストークを防ぐことができる。
【0030】
好適には、発生源は、赤外LED(発光ダイオード)として、放射角度が30°(±15°)でありえる。これに応じて、検出器は、絞りと赤外フィルタとを備えたフォトトランジスタである。
【0031】
この装置は、さらに加えてプロセス容器中および/または蒸発システム中の温度を検出する温度センサを有しうる。検出された温度は、蒸発システムの作動をオープンループ制御またはクローズドループ制御するために考慮されうるが、これは、プロセス特有のパラメータを予め定義された値に設定することにより行われる。蒸発システムのプロセス特有のパラメータには、加熱装置の温度、プロセス容器の回転速度および/またはシステム中にかけられる圧力が含まれる。このようにして、蒸発システムは、媒体を蒸発させるための最適な作動条件に設定可能である。別個の温度センサを追加することは必要ではない。
【0032】
さらに、発生源と検出器とは、測距システムとして構成可能である。この種のシステムは、例えば飛行時間型レーザ測距センサとして公知である。この場合、泡沫が存在しない場合、第1の障害物(これは、容器壁である)までの距離が計測されうる。泡沫が生じる際には、この計測距離はより短くなり、これにしたがって泡沫が検出される。測距を処理するために、距離制限が導入可能であり、この制限は、例えば容器壁までの距離以下である。帯域と付値関数とを用いた従来のシステムにおける処理も同様に可能である。計測信号は、誤った結果を導きうる不純物からの反射を防ぐために、妥当性と関連付けて試験される。これは、とりわけ比較器を用いて達成可能である。これは、それぞれ最小の距離に対して、および、最大の距離に対して行われる。泡沫認識は、その後、とりわけ距離信号が最小距離と最大距離との間にある場合にのみ行われる。比較器の前には、ノイズを回避するために、低域フィルタが設置されうる。
【0033】
この種の測距システムは、例えば、オイルタンク中などの産業用応用における充填レベル表示を行うために使用される大きなセンサ(10×5×5cm
3)において公知である。しかし、これは、通常ガラス壁の後ろに位置付けられ、従来、実験装置とりわけ蒸発システムには応用不可能であった。
【0034】
本発明は、さらに装置の使用にも関し、この装置はプロセス容器中に配置されている。この装置は上述の通りである。この装置をプロセス容器内に使用することにより、泡沫および/または発泡をプロセス容器中で直接認識することができ、早期に反応可能である。したがって、ノイズの影響が低減される。
【0035】
本発明のさらなる態様は、プロセス容器と、電磁信号および/または音響信号を検出する検出器を備えた発泡を認識する装置とを有する、蒸発システムとりわけ回転蒸発装置に関する。この際、この発泡を認識する装置は、プロセス容器中に配置可能でありまたは配置されている。さらに加えて、この装置は、検出器により検出された信号を評価するための評価ユニットを備えている。このようにして、発泡は、蒸発システムの動作中に、とりわけ物質または物質混合物が蒸発システム中で蒸発および/または気化する際に認識される。この装置は、上述のように構成可能で、これにしたがって上述の利点も有する。
【0036】
この際、さらに加えて、温度センサが、蒸発システム中とりわけプロセス容器中に配置可能である。プロセス容器の検出された温度は、蒸発システムにかけられるプロセスパラメータの制御、とりわけ加熱装置の温度、プロセス容器の回転速度および/または加圧の制御のために考慮可能である。
【0037】
この装置は、静的にまたは蒸気ピストンを用いて回転するように装着可能である。好適な設置の場合、この装置は、蒸発システムとりわけ回転蒸発装置の静的な部材に装着可能であり、蒸気導管を通ってプロセス容器中にまで達することができる。このようにして、蒸発システムとりわけ回転蒸発装置は、本発明による装置を用いて拡張可能である。
【0038】
蒸発システムは、プロセス容器中の泡沫を低減する手段を有しうる。上述の手段は、プロセス容器中の圧力を上昇させる装置、プロセス温度とりわけ加熱装置の温度を下降させる装置、プロセス容器の回転速度を変える装置および/または消泡剤を添加する装置を含む。上述の手段ないし方策により、認識された泡沫を低減させることができる。
【0039】
本発明のさらなる態様は、とりわけ蒸発システムのプロセス容器中の発泡を認識する方法であって、これは、発泡認識をするための装置または蒸発システムを備える。この装置または蒸発システムは、上述のように構成可能である。この際、この方法は、
i)プロセス容器中に配置されている装置の検出器を用いて、電磁信号および/または音響信号を検出する工程と、
ii)発泡を認識するために、検出された信号を、装置の評価ユニットを用いて所定の基準に応じて評価する工程とを
含む。この装置をプロセス容器中に配置することにより、泡沫および/または発泡を、プロセス容器中で直接認識でき、早い時点で反応することができる。ノイズの影響は低減される。この基準には、例えば信号および/もしくは信号強度とりわけ送信パルスの変化、ならびに/または、ノイズの規則的な減衰を含む。
【0040】
この方法は、プロセス容器中に配置されている発生源から、電磁信号および/または音響信号を送信する工程を含む。このようにして、送信される信号は、泡沫および/または発生した泡沫により変えられ、装置の検出器により検出されうる。泡沫の検出は、これにより、外部の発生源に依存せず、したがってノイズ影響はより少ない。
【0041】
この際、この発生源は、赤外領域の信号とりわけパルス信号で、とりわけ700〜1400nmの波長領域とりわけ850nmの領域で、および/または、音波とりわけ20kHz〜1GHzの周波数領域の超音波を放射可能である。この検出器は、送信信号領域を含む受信領域を有し、例えば730〜1010nmの範囲である。パルス信号の使用により、信号対雑音比(signal−to−noise−ratio)は改良される。当然、この信号は、電磁波としてとりわけラジオ周波数(無線波)中の様々な周波数帯域または高周波領域、とりわけ0.1〜100GHzの範囲内で送信されうる。検出器はこれに対して合わせられうる。発生源は、狭帯域の光を送信する発光ダイオード(LED、light−emitting−diode)、赤外線送信器、レーザダイオード、圧電スピーカまたは圧電水晶発振器または圧電セラミック発振器でありえ、検出器はフォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトレジスタ(LDR、光依存性抵抗(light dependent resistor))、赤外線受信器または圧電センサでありえる。
【0042】
検出器は、発生源から送信されかつプロセス容器中の泡沫で反射および/または透過することにより変えられた信号を検出可能である。このようにして、この信号は、媒体(とりわけ発生した泡沫)での反射後に、検出器を用いて検出されうる。
【0043】
この方法は、さらに、泡沫の存在時に泡沫を低減させる工程を含むが、これは、例えばプロセス容器中の圧力を上昇させる工程ならびに/またはプロセス温度を下降させる工程、とりわけプロセス容器中の温度および/もしくは冷却装置中の温度を下降させる工程、ならびに/またはプロセス容器の移動パラメータを変更する工程、ならびに/または消泡手段の導入も含む。
【0044】
泡沫認識の計測原理のある一例は、以下の通り実施される。パルスタイマーが、IR−LEDをオンにする。所定の調整時間後にAD変換器がトリガされ、受信器からの信号を計測する。その後、送信器がオフされる。実施形態に応じて、送信器用の増幅器および/または受信器用の増幅器が必須となる。AD変換器後の離散時間信号がさらに処理される。低域フィルタTP1を用いて、第1の計測信号の「DC値」が求められる。フィルタリングされた第2の有効計測信号のために、第1の計測信号から「DC値」を引き、2乗し、第2の低域フィルタTP2へ転送される。2乗することにより、正の値のみが生成され、例えばRMS検出器のように、より大きい信号をより強く重み付けする。低域フィルタTP2は高周波ノイズ成分を、フィルタリングして取り除き、低域フィルタTP1よりも高い制限周波数を有する。低域フィルタTP1は、非常に低い周波数成分をフィルタリングする。同時に動的閾値を導き出し、これは、センサの老化および不純物などを補償しうる。そのために、この計測信号をさらなる低域フィルタTP3でフィルタリングし、非線形の特性曲線で評価する。低域フィルタTP3は、フィルタTP1およびTP2よりも実質的により遅く設定され、したがって、時折泡沫が存在することにより影響を受けない。あるいは、非常に濃密な泡沫の場合、泡沫が存在しないある時点で(例えば、蒸留開始前)に、固定した閾値が導き出され、これが、全蒸留過程に渡って一定に保たれる。2つの方法を組み合わせることも可能である。フィルタリングされた有効な計測信号から、閾値が導き出される。減算の結果が>0の場合、泡沫が存在する。
【0045】
相関器を使った泡沫認識のある例示的な計測原理を以下で説明する。相関器を用いると、ノイズ光ないし散乱光に対する感度がさらに低減されうる。このために、送信信号は、パルスがオンされている間に、変調器で変調信号の形態に変調される。これは、単純な倍率器でありえる。この際、変調信号は、ノイズ光ないし散乱光を可能な限り持たない周波数領域中にある。あるいは、広い周波数成分を有する変調信号、例えば疑似無作為信号が用いられうる。変調された信号は、送信され、再度受信され、AD変換器で走査される。AD変換器のサンプル周波数は、この際、変調信号中の最大の周波数成分の少なくとも2倍である。このようにして走査された信号は、相互相関器に供給され、この相互相関器がこの信号を変調信号のコピーと比較する。パルス長に応じて、相互相関器は、1つまたは複数のピークを有し、これらのピークが、最大値検出器または知的検出器に供給される。その際、パルス長は、最も低い変調信号中の周波数成分の周期長の少なくとも2倍の長さである。この検出器の結果は、反射される光信号に比例し、ノイズ光の影響は最低限となる。相互相関器と検出器とは、各パルス後に再び初期化される。
【0046】
本発明を、以下に、例示的なある実施形態の図面に基づいてより詳細に説明する。